説明

起伏ゲート

【課題】「親しみやすい起伏ゲート」を求める周辺の市民の声に対応する、新しい起伏ゲートを提供しようとするものである。
【解決手段】上流に回転軸を有する鋼製扉体の上部を下流側に傾けて起伏自在に据付けた主起伏ゲートに対し、下流側の適当に低い位置に回転軸を有する鋼製扉体の上部を上流側に傾け、さらに主起伏ゲートの鋼製扉体の下側に挿入しつつ起伏自在に据付けて副起伏ゲートとする。
加えて、副起伏ゲートの鋼製扉体の先端の操作ローラーが、主起伏ゲートの鋼製扉体を支持するよう組み合わせた上で、副起伏ゲートの鋼製扉体を陸上の操作装置によって起伏操作することにより、主起伏ゲートの鋼製扉体を起伏操作する。
そして、前記主起伏ゲートの鋼製扉体の先端に、構成扉体の回転軸と平行な回転軸によって回転自由な副導流板を、副起伏ゲートの上方に突き出すと同時に、副起伏ゲートの鋼製扉体の上面に、前記副導流板の先端を支持しつつ摺動させる摺動材を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水路の底部に設けた回転軸によって自在に起立または倒伏を行なうことにより、水路の流水を堰上げまたは放流する目的で使用される起伏ゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、起伏ゲートとしては、水圧力を受ける鋼板(止水板)に対し十分に強固な横桁や縦桁を配置した鋼製扉体の頭部にワイヤロープやチェーンを取り付けて、これを陸上の巻上機で巻き取りまたは巻き戻して起立または倒伏の操作をする形式のものや、同様の鋼製扉体を下流側水路底に設けた油圧シリンダで押し上げて起立させ、逆に油圧シリンダを縮めて倒伏させる形式のものなどが種々開発され、使用されてきた。
【0003】
また近年は、ゴム引布製の柔軟で強固な帯で水路底に繋留した鋼製扉体の下流の根本部に設置した空気袋の内部に空気を圧入して空気袋を膨張させることにより鋼製扉体を起伏させ、逆に空気袋から圧力を有する空気を排出することにより、空気袋が縮んで鋼製扉体を倒伏させる形式のものも開発されて使用されている。
【0004】
ところで、起伏ゲートは、水路を流れて来た水が一旦は堰止められるけれどその鋼製扉体の先端を越流してさらに下流に流れていく構造であり、水の流れの自然に順応した経済性、安全性、操作性などに優れたゲートである。
【0005】
しかし最近では、ゲート部の景観や近隣に迷惑の及ばない公共設備を求める市民の声が高まり、
1)起伏ゲートに関しては越流していないときは如何にも人工物の外観でなじみにくい。
2)多量に越流しているときは荒々しく感じ、落下する水の音も大きくて迷惑である。
3)魚や水中生物の生活環境を分断して環境を破壊する。
など、批判が多く聞かれるようになってきた。
【0006】
そこで出願人は、このような「親しみやすい起伏ゲート」を求める周辺の市民の声に対応する地域に優しい起伏ゲートを実現するために、従来、1枚の鋼製扉体を起立または倒伏させることにより、流水の堰上げまたは放流を行ってきた起伏ゲートを、2枚の鋼製扉体を使用する起伏ゲートに改良するという提案を、特願2001−256610(特開2003−64651公報、特許文献1参照)において行っている。
【0007】
すなわち、上流に回転軸を有する鋼製扉体の上部を下流側に傾けて起伏自在に据付けた主起伏ゲートに対し、下流側の適当に低い位置に回転軸を有する鋼製扉体の上部を上流側に傾け、さらに主起伏ゲートの鋼製扉体の下側に挿入しつつ起伏自在に据付けて副起伏ゲートとする。
【0008】
加えて、副起伏ゲートの鋼製扉体の先端の操作ローラーが、主起伏ゲートの鋼製扉体を支持するよう組み合わせた上で、副起伏ゲートの鋼製扉体を陸上の空気操作装置によって起伏操作することにより、主起伏ゲートの鋼製扉体を起伏操作するのである。
【0009】
このように構成すれば、主起伏ゲートの鋼製扉体は、起伏ゲート本来の流水を堰上げしたり放流したりする機能を担当し、副起伏ゲートの鋼製扉体は起伏ゲートで生じた水面の落差を流下する水の勢いを分散して景観の荒々しさと騒音を和らげると同時に、下流側からの起伏ゲートの景観を自然の河川の急流部に似たものとして違和感を和らげる機能を担当すると同時に主起伏ゲートの操作装置の一部としての機能をも担当するのである。
【0010】
このようにこの発明は、従来の起伏ゲートの鋼製扉体の下流側に逆向きの副起伏ゲートを相互に干渉し合う位置に追加設置することにより、新しい社会的要請に応えることができる新しい起伏ゲートの提供を可能にしたものである。
【特許文献1】特願2001−256610(特開2003−64651公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが前記先行する起伏ゲートにおいては、主起伏ゲートが起立した状態において起伏ゲートの扉体の上端から越流してきた水等が副起伏ゲートの扉体の上面を打ち、副起伏ゲートの扉体が損傷を受けたり、耐久性の面で不安感を引き起こしやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこでこの発明の起伏ゲートは、主起伏ゲートの扉体の上部に副導流板を回転自由に取り付けることにより、起立状態においてのみならず倒伏状態においても、主起伏ゲートの扉体を越流して副起伏ゲートの扉体の上面を流れる水等を副導流板で緩やかに流れるようにして、越流する水の激しさを緩和するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の起伏ゲートによれば、主起伏ゲートの扉体の上部に副導流板を回転自由に取り付けることにより、主起伏ゲートの扉体を越流して副起伏ゲートの扉体の上面を流れる水の激しさを緩和することができた。
【0014】
もちろん、この発明の起伏ゲートによれば、上流側に水を堰上げる1枚の起伏扉体の下流側に、この起伏扉体を起伏操作する装置の一部であると同時に、下流側の越流水を穏やかに流下させる傾斜面の機能を有するもう1枚の起伏扉体を設置したことにより、種々の効果を得ることができた。すなわち、
a)起伏ゲートの景観、特に下流からの景観が非常に穏やかとなった。特に副起伏ゲートの上面に石を張るなどの配慮も可能となった。
b)起伏ゲートの騒音を少なくすることができた。起伏ゲートを越流する水は堰上高を一挙に落下するのではなく傾斜面を流下するので、騒音の発生量は非常に小さくなる。
c)流木などによる倒伏障害の不安が解消された。
d)起伏ゲートが魚道の機能を兼ねることも可能になった。起立時の副起伏ゲートの傾斜角を緩やかにすることや表面の加工で可能となる。
以上のように、この発明の起伏ゲートは環境との調和に優れた起伏ゲートであり、新しい時代の河川工作物として貴重なものとなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の起伏ゲートの実施の形態を、図面に基いて詳細に説明する。
【0016】
図1ならびに図2はこの発明の起伏ゲートの先行技術を示すものであり、図1は起立状態の起伏ゲートの断面図であり、図2は倒伏状態の起伏ゲートの断面図、図3ならびに図4はこの発明の起伏ゲートの他の先行技術を示すものであり、図3は起立状態の起伏ゲートの断面図であり、図4は倒伏状態の起伏ゲートの断面図、図5ならびに図6はこの発明の起伏ゲートの1実施例を示すものであり、図5は起立状態の起伏ゲートの断面図であり、図6は倒伏状態の起伏ゲートの断面図である。
【0017】
図1ならびに図2に示す先行技術において、断面が長方形の水路の底部1のアンカー金物2の軸受3と鋼製の扉体4の下端の軸受5が軸6によって回転自由に組み立てられて上部を下流側に傾けて起伏自在であり、アンカー金物2の上面にボルト7と押え板8によって1辺を取り付けられたゴム板9の他辺をボルト10と押え板11によって扉体4の下部に取り付けて扉体4とアンカー金物2との間の漏水を防止して主起伏ゲートとする。
【0018】
この扉体4は、水圧力を直接受ける止水板12、横桁13、縦桁14、頭部で下流側に突き出た導流板15等で構成する。このとき、縦桁14の止水板12の反対側は、扉体4の起立または倒伏を制御する操作ローラー16の転動面17であり、その上部にはローラー止め18が下流側に突き出して導流板15を支持する役目も果たしている。
【0019】
この主起伏ゲートの下流側の適当量低い水路底に設置した支持台19の軸受20と副起伏ゲートの扉体21の下端の軸受22とが軸23によって回転自由に組み立てられて起伏自在であり、その上方を主起伏ゲートの扉体4の下に挿入し、さらに先端に回転自由に取り付けた操作ローラー16によって主起伏ゲートの扉体4の縦桁14の転動面17を支持している。
【0020】
また、副起伏ゲートの扉体21の下端上面には、強度と弾性を有する板により下端導流板24を設けて主起伏ゲートの扉体4の上部から導流板15、副起伏ゲートの扉体21の止水板25と、順次越流してきた水を支持台19より下流に放流する。
【0021】
他方、扉体21の上端上面には、越流する水が導流板15より扉体21に移る際に扉体4と扉体21との隙間にこぼれないようにする止水板25の曲げ上げ部26を有する。このとき、主起伏ゲートの軸6と副起伏ゲートの軸23は平行であり、適当量だけ軸23を低くしてあり、扉体4と扉体21、操作ローラー16の寸法を正しく選択することにより、副起伏ゲートが起立または倒伏の操作を行なうとき、これに寄り掛かるように下流側に傾いた主起伏ゲートの扉体4の縦桁14の転動面17を操作ローラー16が常に支持しているから、主起伏ゲートも起立または倒伏することになる。
【0022】
今、このように組み合わせて据付けした主起伏ゲートと副起伏ゲートにおいて、副起伏ゲートの扉体21の軸23に近い位置の水路底に、空気を排出したとき平らな長方形に縮小する3辺が閉じ、1辺が開いたゴム引布製の空気袋28の開いた辺をアンカーボルト29と押え板30とによって押えつけることによって開いた辺を密閉しつつ固定する。その上で、空気袋28の下部の口金31に接続した空気管32を水路のコンクリートに埋設するなどして陸上に導き、空気操作装置の排気用開閉弁33、排気用流量調整弁34、排気放出部35、給気用開閉弁36、給気用流量調整弁37、空気圧縮機38に図1および図2のように接続する。
【0023】
そして、空気圧縮機38から給気用流量調整弁37、給気用開閉弁36、空気管32、口金31を経由して空気袋28の内部に空気を圧入した結果、空気袋28が副起伏ゲートの扉体21の下面の鋼板27を押し上げて扉体21を起立させ、その結果操作ローラー16が扉体4の転動面17を押上げて扉体4が起立した状態の断面図が図1である。
【0024】
このとき、扉体21の上方下面においてボルト39と押え板40とで一端を固定した十分な強度を有するゴム引布製の帯41の他端を空気袋28の接触するより上流側の水路底にアンカーボルト42と押え板43とで固定してあるため、この帯41に作用する張力により扉体21が停止している。すなわち、操作ローラー16は扉体4の縦桁14上端のローラー止め18には接触していない。ローラー止め18は、帯41が破損した場合の安全策として設けてある。
【0025】
図1において扉体4が上流に堰上げた水の圧力と扉体4の自重は扉体4を軸6によって時計回りに倒伏させようとするけれども、操作ローラー16に支持されている。この操作ローラー16は、扉体21の先端に回転自由に取り付けられており、縦桁14の転動面17と操作ローラー16の中心と扉体21の軸23の中心とを結ぶ線の交わる角度閘が90ーより十分大きく設定してある。したがって扉体4によって操作ローラー16に加えられる力は、扉体21を軸23によって反時計回りに倒伏させるように作用する。しかし、空気袋28が水路底と扉体21の鋼板27の間において圧力を有する空気によって膨張しており、扉体21を支持するから、全体が安定して起立しているのである。
【0026】
他方、空気圧縮機38を停止し、給気用開閉弁36を閉じ、排気用開閉弁33を開いて排気用流量調整弁34によって制御しつつ排気放出部35から空気袋28の内部の圧力を有する空気を大気中へ放出した結果、空気袋28が平らに縮小して副起伏ゲートの扉体21が倒伏し、その結果、操作ローラー16による支持を失った扉体4も倒伏した状態の断面図が図2である。操作ローラー16が台44に支持されるから、扉体21は操作ローラー16と軸23に支持され、扉体4は操作ローラー16と軸6に支持されて各々安定しており、同時に扉体4と扉体21の止水板の面は上流から下流に向けて適当な傾斜を有しているから水や土砂は支障なく流下することができる。このとき、扉体4と扉体21の下方に生じた漏水は、排水孔45によって起伏ゲートの下流に排出されて支障はない。
【0027】
図3ならびに図4はこの発明の起伏ゲートの他の先行技術を示すものであって、図3は起立状態の起伏ゲートの断面図であり、図4は倒伏状態の起伏ゲートの断面図である。
【0028】
図3ならびに図4において、断面が長方形の水路の底部1のアンカー金物2の軸受3と鋼製の扉体4の下端の軸受5が軸6によって回転自由に組み立てられて上部を下流側に傾けて起伏自在であり、アンカー金物2の上面にボルト7と押え板8によって1辺を取り付けられたゴム板9の他辺をボルト10と押え板11によって扉体4の下部に取り付けて扉体4とアンカー金物2との間の漏水を防止して主起伏ゲートとする。
【0029】
この扉体4は、水圧力を直接受ける止水板12、横桁13、縦桁14、頭部で下流側に突き出た導流板15等で構成する。このとき、縦桁14の止水板12の反対側は、扉体4の起立または倒伏を制御する操作ローラー16の転動面17であり、その上部にはローラー止め18が下流側に突き出して導流板15を支持する役目も果たしている。
【0030】
この主起伏ゲートの下流側の適当量低い水路底に設置した支持台19の軸受20と副起伏ゲートの扉体21の下端の軸受22とが軸23によって回転自由に組み立てられて起伏自在であり、その上方を主起伏ゲートの扉体4の下に挿入し、さらに先端に回転自由に取り付けた操作ローラー16によって主起伏ゲートの扉体4の縦桁14の転動面17を支持している。
【0031】
また、副起伏ゲートの扉体21の下端上面には、強度と弾性を有する板により下端導流板24を設けて主起伏ゲートの扉体4の上部から導流板15、副起伏ゲートの扉体21の止水板25と、順次越流してきた水を支持台19より下流に放流する。
【0032】
他方、扉体21の上端上面には、越流する水が導流板15より扉体21に移る際に扉体4と扉体21との隙間にこぼれないようにする止水板25の曲げ上げ部26を有する。このとき、主起伏ゲートの軸6と副起伏ゲートの軸23は平行であり、適当量だけ軸23を低くしてあり、扉体4と扉体21、操作ローラー16の寸法を正しく選択することにより、副起伏ゲートが起立または倒伏の操作を行なうとき、これに寄り掛かるように下流側に傾いた主起伏ゲートの扉体4の縦桁14の転動面17を操作ローラー16が常に支持しているから、主起伏ゲートも起立または倒伏することになる。
【0033】
今、このように組み合わせて据付けした主起伏ゲートと副起伏ゲートにおいて、副起伏ゲートの扉体21の軸23より十分に上流側に寄った位置の水路底に、油圧ジャッキ50を上部を適度に下流側に傾けて、そのロッド51の先端のローラー52が扉体21の下面の鋼板27を押し上げる姿勢として設置する。その上で油圧ジャッキ50に接続した送油管53を水路のコンクリートに埋設するなどして陸上に導き、油圧操作装置の倒伏弁54、倒伏時流量調整弁55、起立弁56、起立時流量調整弁57、油圧ポンプ58、油タンク59に図3および図4のように接続する。
【0034】
そして、油タンク59から油圧ポンプ58によって起立時流量調整弁57、起立弁56、送油管53を経由して油圧ジャッキ50に作動油を圧入した結果、油圧ジャッキ50が伸長しロッド51の先端のローラー52が副起伏ゲートの扉体21の下面の鋼板27を押上げて扉体21を起立させ、その結果操作ローラー16が扉体4の転動面17を押し上げて扉体4が起立した状態の断面図が図3である。
【0035】
このとき、扉体21の上方下面においてボルト39と押え板40とで一端を固定した十分な強度を有するゴム引布製の帯41の他端を油圧ジャッキ50より上流側の水路底にアンカーボルト42と押え板43とで固定してあるため、この帯41に作用する張力により扉体21が停止している。すなわち、操作ローラー16は扉体4の縦桁14上端のローラー止め18には接触していない。ローラー止め18は、帯41が破損した場合の安全策として設けてある。
【0036】
図3において扉体4が上流に堰上げた水の圧力と扉体4の自重は扉体4を軸6によって時計回りに倒伏させようとするけれども、操作ローラー16に支持されている。この操作ローラー16は、扉体21の先端に回転自由に取り付けられており、縦桁14の転動面17と操作ローラー16の中心と扉体21の軸23の中心とを結ぶ線の交わる角度閘が90ーより十分大きく設定してある。したがって扉体4によって操作ローラー16に加えられる力は、扉体21を軸23によって反時計回りに倒伏させるように作用する。しかし、油圧ジャッキ50が水路底と扉体21の鋼板27の間において作動油を圧入されて伸長しており、ロッド51の先端のローラー52が鋼板27を押し上げて扉体21を支持するから、全体が安定して起立しているのである。
【0037】
他方、油圧ポンプ58を停止し、起立弁56を閉じ、倒伏弁54を開いて倒伏時流量調整弁55によって制御しつつ油圧ジャッキ50の内部の圧力を有する作動油を送油管53を経由して油タンク59に戻すことにより、油圧ジャッキ50が縮小した結果、ロッド51の先端のローラー52による支持がなくなって副起伏ゲートの扉体21が倒伏し、その結果操作ローラー16による支持を失った扉体4も倒伏した状態の断面図が図4である。このとき、操作ローラー16は台44に支持されるから、扉体21は操作ローラー16と軸23に支持され、扉体4は操作ローラー16と軸6に支持されて各々安定しており、同時に扉体4と扉体21の止水板の面は上流から下流に向けて適当な傾斜を有しているから水や土砂は支障なく流下することができる。このとき、扉体4と扉体21の下方に生じた漏水は、排水孔45によって起伏ゲートの下流に排出されて支障はない。
【0038】
図5ならびに図6はこの発明の起伏ゲートの1実施例を示すものであって、図5は起立状態の起伏ゲートの断面図であり、図6は倒伏状態の起伏ゲートの断面図である。
【0039】
図5ならびに図6において、断面が長方形の水路の底部1のアンカー金物2の軸受3と鋼製扉体61の下端の軸受5が軸6によって回転自由に組み立てられて上部を下流側に傾けて起伏自在であり、アンカー金物2の上面にボルト7と押え板8によって1辺を取り付けられたゴム板9の他辺をボルト10と押え板11によって扉体61の下部に取り付けて扉体61とアンカー金物2との間の漏水を防止して主起伏ゲートとする。
【0040】
この扉体61は、水圧力を直接受ける止水板62、横桁63、縦桁64、縦桁上部の軸受65で構成し、軸受65には軸66によって副導流板67の軸受68が回転自由に組立てられ副導流板67が導流板69の下流側に突き出ている。
このとき、縦桁64の止水板62の反対側は、扉体61の起立または倒伏を制御する操作ローラー16の転動面17である。
また副導流板67の先端70は副起伏ゲートの扉体21の上面の摺動材71に支持されて安定している。
【0041】
この主起伏ゲートの下流側の適当量低い水路底に設置した支持台19の軸受20と、副起伏ゲートの扉体21の下端の軸受22とが軸23によって回転自由に組み立てられて起伏自在であり、その上方を主起伏ゲートの扉体61の下に挿入し、さらに先端に回転自由に取り付けた操作ローラー16によって主起伏ゲートの扉体61の縦桁64の転動面67を支持している。
この実施例においては、副起伏ゲートの扉体21と油圧ジャッキ50、ロッド51の先端のローラー52、送油管53、その他油圧操作装置との関係は、図3ならびに図4の実施例と同一であるから、油圧ジャッキ50の伸張によって主起伏ゲートの扉体61が起立し、油圧ジャッキ50の縮小によって主起伏ゲートの扉体61が倒伏して起伏ゲートとして機能することができる。
【0042】
この実施例においては、主起伏ゲートの扉体61の上部に副導流板67を回転自由に取り付けることにより、主起伏ゲートの扉体61を越流して副起伏ゲートの扉体21の上面を流れる水の激しさを緩和することができた。
なお、この実施例に示す起伏ゲートは、主起伏ゲートの扉体61の起立状態において、主起伏ゲートの扉体61に対する副起伏ゲートの扉体21先端の操作ローラー16の当接部位が、主起伏ゲートの扉体61の上端よりやや下側に位置しているときに特に有効であり、起伏ゲートの大型化に容易に対応することができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上記実施例においては、副起伏ゲートの扉体の起伏動作を油圧ジャッキによって行なった場合について説明したが、ゴム引布製の空気袋に圧入ないし排出する空気の圧力で副起伏ゲートの扉体の起伏動作を行なってもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の起伏ゲートの先行技術の一例を示し、起伏ゲートが起立した状態の断面図である。
【図2】起伏ゲートが倒伏した状態の断面図である。
【図3】この発明の起伏ゲートの先行技術の他の例を示し、起伏ゲートが起立した状態の断面図である。
【図4】起伏ゲートが倒伏した状態の断面図である。
【図5】この発明の起伏ゲートの1実施例を示し、起伏ゲートが起立した状態の断面図である。
【図6】起伏ゲートが倒伏した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 底部
2 アンカー金物
3 軸受
4 扉体
5 軸受
6 軸
7 ボルト
8 押え板
9 ゴム板
10 ボルト
11 押え板
12 止水板
13 横桁
14 縦桁
15 導流板
16 操作ローラー
17 転動面
18 ローラー止め
19 支持台
20 軸受
21 扉体
22 軸受
23 軸
24 導流板
25 止水板
26 曲げ上げ部
27 鋼板
28 空気袋
29 アンカーボルト
30 押え板
31 口金
32 空気管
33 排気用開閉弁
34 排気用流量調整弁
35 排気放出部
36 給気用開閉弁
37 給気用流量調整弁
38 空気圧縮機
39 ボルト
40 押え板
41 帯
42 アンカーボルト
43 押え板
44 台
45 排水孔
50 油圧ジャッキ
51 ロッド
52 ローラー
53 送油管
54 倒伏弁
55 倒伏時流量調整弁
56 起立弁
57 起立時流量調整弁
58 油圧ポンプ
59 油タンク
61 扉体
62 止水板
63 横桁
64 縦桁
65 軸受
66 軸
67 副導流板
68 軸受
69 導流板
70 先端
71 摺動材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が長方形の水路の水路底を横断して設置した回転軸によって、上部を下流側に傾けて起伏自在に据付けた長方形の鋼製扉体の下流面に、上流面に作用する水圧力や扉体の自重等の荷重による転倒モーメントを支持して鋼製扉体の起立または倒伏を制御する操作ローラーを誘導する曲線に仕上げた転動面を有し、鋼製扉体が、起立すれば流水を堰上げ、倒伏すれば放流するようにした主起伏ゲートと、
この主起伏ゲートの下流側の適当に低い水路底に設置した、主起伏ゲートの回転軸に平行な回転軸によって、上部を上流側に傾け、主・副起伏ゲートの回転軸と平行な回転軸によって回転自由に操作ローラーを取り付けた先端を主起伏ゲートの鋼製扉体の下に挿入しつつ、起伏自在に据付けた長方形で十分な曲げ強度と圧縮強度を有する鋼製扉体の下端に導流板を取り付けて、主起伏ゲートの鋼製扉体を越流した水と流芥が該鋼製扉体の上面を流下し、さらに導流板の上から水路の下流方向に流れるようにした副起伏ゲートから構成され、
前記主起伏ゲートの鋼製扉体の先端に、構成扉体の回転軸と平行な回転軸によって回転自由な副導流板を、副起伏ゲートの上方に突き出すと同時に、副起伏ゲートの鋼製扉体の上面に、前記副導流板の先端を支持しつつ摺動させる摺動材を設け、
前記副起伏ゲートの下部に設置した空気袋又はシリンダーにより、副起伏ゲートを起伏操作すれば、主起伏ゲートも起伏操作されるようにしたことを特徴とする起伏ゲート。
【請求項2】
請求項1の起伏ゲートにおいて、堰幅の小さい複数の起伏ゲートを回転軸の方向に並べて堰幅の大きい起伏ゲートとしたことを特徴とする起伏ゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−70924(P2007−70924A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260491(P2005−260491)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(592106487)
【出願人】(592106498)
【Fターム(参考)】