説明

超広角レンズ系

【課題】Fナンバーが2.8程度で半画角が40°を超えるデジタルカメラ用の小型で高性能な超広角レンズ系を得る。
【解決手段】物体側から順に、負の焦点距離を有する前群と、正の焦点距離を有する後群からなる超広角レンズ系において、前群を、物体側から順に、第1正レンズ、第2負レンズ、第3負レンズ、及び第4正レンズから構成し、次の条件式(1)及び(2)を満足させた超広角レンズ系。
(1)0<f/f1-2<0.1
(2)0<SF1<3.0
但し、
f;全系の焦点距離、
1-2;第1正レンズの像側の面の焦点距離、
(f1-2=r2/(1−n1))
2;第1正レンズの像側の面の曲率半径、
1;第1正レンズの屈折率、
SF1;第1正レンズのシェーピング・ファクター、
(SF1=(r1+r2)/(r1−r2))
1;第1正レンズの物体側の面の曲率半径。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ用に好適な超広角レンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ用の広角レンズ系は、半画角が約30°程度までであった。半画角が40°を超えるフィルムカメラ用の超広角レンズとしては、特開平5−34592号公報などが知られているが、周辺光量が少なく、またテレセントリック性に考慮が払われていないためデジタルカメラ用としては適当でない。
【特許文献1】特開平5-34592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、Fナンバーが2.8程度で半画角が40°を超えるデジタルカメラ用の小型で高性能な超広角レンズ系を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、物体側から順に、負の焦点距離を有する前群と、正の焦点距離を有する後群からなる超広角レンズ系において、前群を、物体側から順に、第1正レンズ、第2負レンズ、第3負レンズ、及び第4正レンズから構成し、次の条件式(1)及び(2)を満足することを特徴としている。
(1)0<f/f1-2<0.1
(2)0<SF1<3.0
但し、
f;全系の焦点距離、
1-2;第1正レンズの像側の面の焦点距離、
(f1-2=r2/(1−n1))
2;第1正レンズの像側の面の曲率半径、
1;第1正レンズの屈折率、
SF1;第1正レンズのシェーピング・ファクター、
(SF1=(r1+r2)/(r1−r2))
1;第1正レンズの物体側の面の曲率半径、
である。
【0005】
本発明の超広角レンズ系の後群は、フォーカスレンズ群であることが好ましい。
【0006】
本発明の超広角レンズ系は、次の条件式(3)を満足することが好ましい。
(3)f/|fF|<0.45
但し、
F;前群の焦点距離(fF<0)、
である。
【0007】
また、次の条件式(4)及び(5)を満足することが好ましい。
(4)1.0<SF2<5.0
(5)1.0<SF3<5.0
但し、
SF2;第2負レンズのシェーピング・ファクター、
(SF2=(r3+r4)/(r3−r4))
3;第2負レンズの物体側の面の曲率半径、
4;第2負レンズの像側の面の曲率半径、
SF3;第3負レンズのシェーピング・ファクター、
(SF3=(r5+r6)/(r5−r6))
5;第3負レンズの物体側の面の曲率半径、
6;第3負レンズの像側の面の曲率半径、
である。
【0008】
絞りは、フォーカスレンズ群である後群中に配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Fナンバーが2.8で半画角が40°を超える高性能で小型軽量なデジタルカメラ用に適した超広角レンズ系を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態の超広角レンズ系は、図1、図3、図5及び図7の各実施例のレンズ構成図に示すように、物体側から順に、負の焦点距離を有する前群10、及び正の焦点距離を有する後群20からなっている。前群10は、物体側から順に、像側に凸の第1正レンズ、物体側に凸の第2負メニスカスレンズ、物体側に凸の第3負メニスカスレンズ、及び第4正レンズからなる。後群20中には、絞りSが配置されており、フォーカシングは、後群20で行う。
【0011】
本超広角レンズ系は、その前群の構成に特徴があり、後群の構成については自由度がある。これは、超広角レンズ系にとって、広画角を達成するためには、物体側のレンズ(群)の構成が重要であり、後群については正のパワーを有するという条件を満たせば種々の構成が採りうることによる。
【0012】
条件式(1)は、前群中の特に第1正レンズの像側の面の面パワーに関する条件式である。前群の第1正レンズの像側の面は、像面側に凸形状である。条件式(1)の上限を越えると、高次の歪曲収差が発生して、中間画角から対角にかけて歪曲収差が戻るようになり、樽型と糸巻き型の組み合わさったいわゆる陣笠型の歪曲収差量が増大する。条件式(1)の下限を越えると、第1正レンズの像側の面が凹面になり、歪曲収差の補正が困難になる。すなわち、第1正レンズの像側の面は、像側に凸であることが必須である。
【0013】
条件式(2)は、第1正レンズのシェーピング・ファクターに関する条件式である。条件式(2)の上限を越えると、歪曲収差の戻り量が増大する。条件式(2)の下限を越えると、歪曲収差の補正が困難になる。
【0014】
条件式(3)は、前群の負のパワーに関する条件式である。条件式(3)の上限を越えると、フォーカシング時の収差の変動が増大する。
【0015】
本超広角レンズ系は、前群中の第2負レンズと第3負レンズの形状も重要な要素である。条件式(4)は、第2負レンズの形状に関する条件式である。条件式(4)の上限を越えると、半画角が40°を越えることができない(超広角レンズ系にならない)。条件式(4)の下限を越えると、非点収差が増大し、非点収差の補正が困難になる。
【0016】
条件式(5)は、前群中の第3負レンズの形状に関する条件式である。条件式(5)の上限を越えると、半画角が40°を越えることができない(超広角レンズ系にならない)。条件式(5)の下限を越えると、非点収差が増大し、非点収差の補正が困難になる。
【0017】
次に具体的な実施例を示す。諸収差図及び表中、SAは球面収差、SCは正弦条件、球面収差で表される色収差(軸上色収差)図及び倍率色収差図中のd線、g線、C線はそれぞれの波長に対する収差、yは像高、Sはサジタル、Mはメリディオナル、FはFナンバー、fは全系の焦点距離、mは全系の横倍率、Wは半画角(°)、fBはバックフォーカス、rは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、Nd はd線の屈折率、νはアッベ数を示す。
【実施例1】
【0018】
図1および図2と表1は本発明による超広角レンズ系の実施例1を示している。図1はレンズ構成図(無限遠物体撮影時)、図2はその諸収差図、表1はその数値データである。表中に複数の表記がある欄は、無限遠物体撮影時/最短撮影距離物体撮影時の順の値である。負の前群10は、物体側から順に、像側に凸の第1正レンズ、物体側に凸の第2負メニスカスレンズ、物体側に凸の第3負メニスカスレンズ、及び像側に凸のメニスカスレンズからなる第4正レンズからなり、後群20は、物体側から順に、物体側の正レンズと像側の負レンズの貼合せレンズ、物体側に凸の負レンズ、正レンズ、正レンズ、絞りS、負レンズ、正レンズ、及び正レンズからなる。後群20の後方には、CCD(撮像素子)の前方に位置するカバーガラス(フィルタ類)C(2枚)が位置している。絞りSは、第18面の極から前方1.24にある。
(表1)
F = 1: 2.8
f = 4.00
m = 0.000 / -0.071
W = 43.4
fB = 0.00 / 0.00
面NO. r d Nd ν
1 -500.000 1.50 1.69680 55.5
2 -127.316 0.10 - -
3 12.067 0.90 1.72916 54.7
4 5.908 1.61 - -
5 12.539 0.80 1.78590 44.2
6 5.093 2.24 - -
7 -55.462 1.70 1.84666 23.8
8 -13.494 1.00-0.69 - -
9 18.286 3.00 1.48749 70.2
10 -4.323 0.80 1.69100 54.8
11 -6.122 0.10 - -
12 10.849 0.80 1.80400 46.6
13 2.694 0.73 - -
14 9.159 1.50 1.80518 25.4
15 -80.878 0.43 - -
16 -4.329 1.70 1.48749 70.2
17 -3.749 1.80 - -
18 -15.997 1.42 1.78472 25.7
19 11.712 0.15 - -
20 18.831 1.70 1.49700 81.6
21 -4.502 0.10 - -
22 23.869 1.50 1.48749 70.2
23 -10.955 8.54-8.85 - -
24 ∞ 0.90 1.51633 64.1
25 ∞ 1.00 - -
26 ∞ 0.50 1.51633 64.1
27 ∞ - - -
【実施例2】
【0019】
図3および図4と表2は本発明による超広角レンズ系の実施例2を示している。図3はレンズ構成図(無限遠物体撮影時)、図4はその諸収差図、表2はその数値データである。基本的なレンズ構成は実施例1と同様である。絞りSは、第18面の極から前方1.24にある。
(表2)
F = 1: 2.8
f = 4.00
m = 0.000 / -0.071
W = 43.4
fB = 0.00 / 0.00
面NO. r d Nd ν
1 ∞ 1.50 1.69680 55.5
2 -153.570 0.10 - -
3 12.493 0.90 1.72916 54.7
4 5.929 1.61 - -
5 13.502 0.80 1.78590 44.2
6 5.196 2.24 - -
7 -55.037 1.70 1.84666 23.8
8 -13.258 1.06-0.74 - -
9 16.344 3.00 1.48749 70.2
10 -4.350 0.80 1.69100 54.8
11 -6.185 0.10 - -
12 11.373 0.80 1.80400 46.6
13 2.702 0.73 - -
14 9.129 1.50 1.80518 25.4
15 -91.656 0.43 - -
16 -4.423 1.70 1.48749 70.2
17 -3.805 1.80 - -
18 -15.641 1.42 1.78472 25.7
19 11.936 0.15 - -
20 19.566 1.70 1.49700 81.6
21 -4.474 0.10 - -
22 23.693 1.50 1.48749 70.2
23 -11.068 8.66-8.98 - -
24 ∞ 0.90 1.51633 64.1
25 ∞ 1.00 - -
26 ∞ 0.50 1.51633 64.1
27 ∞ - - -
【実施例3】
【0020】
図5および図6と表3は本発明による超広角レンズ系の実施例3を示している。図5はレンズ構成図(無限遠物体撮影時)、図6はその諸収差図、表3はその数値データである。基本的なレンズ構成は実施例1と同様である。絞りSは、第18面の極から後方1.24にある。
(表3)
F = 1: 2.8
f = 4.00
m = 0.000 / -0.071
W = 43.4
fB = 0.00 / 0.00
面NO. r d Nd ν
1 1000.000 1.50 1.69680 55.5
2 -173.383 0.10 - -
3 12.545 0.90 1.72916 54.7
4 5.945 1.61 - -
5 13.408 0.80 1.78590 44.2
6 5.157 2.24 - -
7 -57.714 1.70 1.84666 23.8
8 -13.369 1.05-0.74 - -
9 16.637 3.00 1.48749 70.2
10 -4.327 0.80 1.69100 54.8
11 -6.150 0.10 - -
12 11.245 0.80 1.80400 46.6
13 2.702 0.73 - -
14 9.143 1.50 1.80518 25.4
15 -89.964 0.43 - -
16 -4.406 1.70 1.48749 70.2
17 -3.796 1.80 - -
18 -15.740 1.42 1.78472 25.7
19 11.906 0.15 - -
20 19.438 1.70 1.49700 81.6
21 -4.479 0.10 - -
22 23.667 1.50 1.48749 70.2
23 -11.111 8.64-8.95 - -
24 ∞ 0.90 1.51633 64.1
25 ∞ 1.00 - -
26 ∞ 0.50 1.51633 64.1
27 ∞ - - -
【実施例4】
【0021】
図7および図8と表4は本発明による超広角レンズ系の実施例4を示している。図7はレンズ構成図(無限遠物体撮影時)、図8はその諸収差図、表4はその数値データである。基本的なレンズ構成は実施例1と同様である。絞りSは、第18面の極から前方1.24にある。
(表4)
F = 1: 2.8
f = 4.00
m = 0.000 / -0.071
W = 43.4
fB = 0.00 / 0.00
面NO. r d Nd ν
1 500.000 1.50 1.69680 55.5
2 -198.547 0.10 - -
3 12.444 0.90 1.72916 54.7
4 5.964 1.61 - -
5 13.068 0.80 1.78590 44.2
6 5.068 2.24 - -
7 -65.969 1.70 1.84666 23.8
8 -13.689 1.02-0.70 - -
9 17.820 3.00 1.48749 70.2
10 -4.292 0.80 1.69100 54.8
11 -6.085 0.10 - -
12 10.907 0.80 1.80400 46.6
13 2.701 0.73 - -
14 9.213 1.50 1.80518 25.4
15 -88.770 0.43 - -
16 -4.357 1.70 1.48749 70.2
17 -3.776 1.80 - -
18 -15.922 1.42 1.78472 25.7
19 11.807 0.15 - -
20 18.815 1.70 1.49700 81.6
21 -4.500 0.10 - -
22 23.625 1.50 1.48749 70.2
23 -11.094 8.60-8.92 - -
24 ∞ 0.90 1.51633 64.1
25 ∞ 1.00 - -
26 ∞ 0.50 1.51633 64.1
27 ∞ - - -
【0022】
各実施例の各条件式に対する値を表5に示す。
(表5)
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
条件式(1) 0.022 0.018 0.016 0.014
条件式(2) 1.683 1.000 0.704 0.432
条件式(3) 0.300 0.303 0.304 0.303
条件式(4) 2.918 2.807 2.802 2.841
条件式(5) 2.368 2.251 2.250 2.267
【0023】
表5から明らかなように、実施例1ないし4は条件式(1)〜(5)を満足しており、また諸収差図から明らかなように諸収差も比較的よく補正されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による超広角レンズ系の実施例1のレンズ構成図である。
【図2】図1の構成における諸収差図である。
【図3】本発明による超広角レンズ系の実施例2のレンズ構成図である。
【図4】図3の構成における諸収差図である。
【図5】本発明による超広角レンズ系の実施例3のレンズ構成図である。
【図6】図5の構成における諸収差図である。
【図7】本発明による超広角レンズ系の実施例4のレンズ構成図である。
【図8】図7の構成における諸収差図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の焦点距離を有する前群と、正の焦点距離を有する後群とからなる超広角レンズ系において、
前群は、物体側から順に、第1正レンズ、第2負レンズ、第3負レンズ、及び第4正レンズからなり、
次の条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とする超広角レンズ系。
(1)0<f/f1-2<0.1
(2)0<SF1<3.0
但し、
f;全系の焦点距離、
1-2;第1正レンズの像側の面の焦点距離、
(f1-2=r2/(1−n1))
2;第1正レンズの像側の面の曲率半径、
1;第1正レンズの屈折率、
SF1;第1正レンズのシェーピング・ファクター、
(SF1=(r1+r2)/(r1−r2))
1;第1正レンズの物体側の面の曲率半径。
【請求項2】
請求項1記載の超広角レンズ系において、上記後群は、フォーカスレンズ群である超広角レンズ系。
【請求項3】
請求項1または2記載の超広角レンズ系において、次の条件式(3)を満足する超広角レンズ系。
(3)f/|fF|<0.45
但し、
F;前群の焦点距離(fF<0)。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の超広角レンズ系において、次の条件式(4)及び(5)を満足する超広角レンズ系。
(4)1.0<SF2<5.0
(5)1.0<SF3<5.0
但し、
SF2;第2負レンズのシェーピング・ファクター、
(SF2=(r3+r4)/(r3−r4))
3;第2負レンズの物体側の面の曲率半径、
4;第2負レンズの像側の面の曲率半径、
SF3;第3負レンズのシェーピング・ファクター、
(SF3=(r5+r6)/(r5−r6))
5;第3負レンズの物体側の面の曲率半径、
6;第3負レンズの像側の面の曲率半径。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の超広角レンズ系において、後群中に絞りが位置している超広角レンズ系。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−285026(P2006−285026A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106433(P2005−106433)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】