説明

超軟質ポリウレタンの製造方法。

【課題】 超軟質ポリウレタンの製造方法を提供する。
【解決手段】加熱硬化後の成型品のショア00硬度が20ないし80、密度が0.65ないし0.85及びtanδが0.3以上である超軟質ポリウレタンの製造方法であって、A)ポリオールに密度0.035ないし0.050の充填剤、硬化触媒、助触媒及び脱水剤を添加して、水分率550ppm以下のポリオール成分を調製し、その際、前記充填剤の配合量は、ポリオール及び充填剤の総質量に基づいて1.0質量%以上である調製工程と、
B)前記ポリオール成分を均一混和条件の下、イソシアネート成分と混合する混合工程と、
C)B)で得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化して、前記超軟質ポリウレタンを製造する硬化工程とを含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超軟質ポリウレタンの製造方法に関するものであり、詳細には、長いポットライフと短い硬化速度を有し、加熱硬化後には、エネルギー吸収性に優れ、ブロッキングするほどのべたつきが無く且つ軽量である成型品となる、超軟質ポリウレタンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンをワンショット法で製造する場合、通常、ポリオール、イソシアネート、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、耐候剤からなる配合液を混合撹拌してモールドに注型し、熱硬化することにより行われており、これにより所望の成型品を得ている。
軟質ポリウレタンは、エネルギー吸収性に優れ、衝撃吸収用途(靴のインナーソール、ヘルメットの緩衝、ひじひざ等のプロテクター、運搬時の緩衝材、等)、振動吸収用途(
精密部品の保護、試験機、精密機器の防振免振、重量機器の免振、等)、圧力分散用途(
いす、ベッド、座布団などの敷物、枕など体圧分散)などに好適である。
【0003】
軟質ポリウレタンの製造方法は既に知られており、例えば、特公昭62−26330号公報には、ポリ(1.2−プロピレングリコール)とN、N´、N´−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンとの配合物を化学両論量未満の少なくとも一種の芳香族イソシアネートと反応させることからなるポリウレタンエラストマーの製造方法が記載されている。
しかしこのウレタンエラストマーは温度に依存したエネルギー吸収性(衝撃減衰性)を示すので、それを改善するために、更に一価のアルコール成分を添加することが特開昭61−19618号公報により提案された。
しかしながらこのウレタンエラストマーもべたつきを有することから特開平6−73150号公報で、分子量1000〜6000のポリオキシプロピレンポリオール90〜65wt%と分子量60〜700の低分子量多価アルコール10〜35wt%とポリイソシアネートと、ポリオール総量に対する等量比で表して炭素数10以下の1価アルコール0.15〜0.5とを、OH/NCO比で1.0で反応させることからなるポリウレタンエラストマーの製造方法が提案されている。
また軟質ポリウレタンエラストマーの耐熱性改良方法として特開昭60−67524号公報においてグリセリンをベースとした3官能ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートを反応させる際にNCO/OH当量比が0.4〜0.95である軟質ポリウレタンエラストマーの製造方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62−26330号公報
【特許文献2】特開昭61−19618号公報
【特許文献3】特開平6−73150号公報
【特許文献4】特開昭60−67524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長いポットライフと短い硬化速度を有し、加熱硬化後には、エネルギー吸収性に優れ、ブロッキングするほどのべたつきが無く且つ軽量である注型硬化品となるところの超軟質ポリウレタン、即ち、具体的な性能評価で表すと、加熱硬化後の成型品のショア00硬度が20ないし80、密度が0.65ないし0.85及びtanδが0.3以上
である超軟質ポリウレタンの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
軟質ポリウレタンが用いられる用途において要求される特性としては、エネルギー吸収性を有する粘弾性体であることはもちろん、他にブロッキングするほどのべたつきが無いこと、また特別な場合を除き、軽量であることが要求される。
上記要求される特性を満たし得るように、ポリオール成分への有機マイクロバルーンの添加を検討したが、ポリオールとの大きな比重の差により、極めて短時間に浮遊分離するため、使用する際には充分撹拌する必要があるが、この際生じるエアーの巻き込みにより水分の混入を生じさせ易いことが判った。
そして、水が混入した場合、水分の影響を受けにくい鉛系触媒を用いれば、水による失活は殆どないものの、鉛系触媒は環境影響等の観点から使用されない傾向にあり、また、水分の影響を受ける触媒を用いると触媒失活による硬化速度遅延、発泡などが生じやすく、非常に大きなマイナス要因となることが判った。
特に、軟質ポリウレタンは一般にNCO/OH当量比が低いことから通常のポリウレタンより硬化が遅く、そのため、上記水分の影響があると更に硬化が遅くなり、場合によっては生産不可となる。
上記の際、ポリオール成分に脱水剤を添加して、水分率を特定の範囲に調整したところ、水分の影響を受ける触媒を用いた場合であっても触媒失活による硬化速度遅延等を引き起こさないことが判った。
【0007】
本発明者等は、上記知見に基いて、更に検討した結果、ポリオールに特定範囲の密度を有する特定量の充填剤、硬化触媒、助触媒及び脱水剤を添加することにより、水分率550ppm以下のポリオール成分を調製し、該ポリオール成分を均一混和条件の下、イソシアネート成分と混合し、得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化すると、上記硬化触媒が鉛系触媒でない場合であっても、要求されるポットライフと硬化速度を満たし、即ち、長いポットライフと短い硬化速度を有し、また、加熱硬化後には、エネルギー吸収性に優れ、ブロッキングするほどのべたつきが無く且つ軽量である、超軟質ポリウレタンの注型硬化品となることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)加熱硬化後の成型品のショア00硬度が20ないし80、密度が0.65ないし0.85及びtanδが0.3以上である超軟質ポリウレタンの製造方法であって、
A)ポリオールに密度0.035ないし0.050の充填剤、硬化触媒、助触媒及び脱水剤を添加して、水分率550ppm以下のポリオール成分を調製し、その際、前記充填剤の配合量は、ポリオール及び充填剤の総質量に基づいて1.0質量%以上である調製工程と、
B)前記ポリオール成分を均一混和条件の下、イソシアネート成分と混合する混合工程と、
C)B)で得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化して、前記超軟質ポリウレタンを製造する硬化工程とを含む製造方法、
(2)前記充填剤が、ポリ塩化ビニリデン主体の共重合体からなる粒径40ないし60μmの有機マイクロバルーンである前記(1)記載の製造方法、
(3)前記硬化触媒が、オクチル酸ビスマスである前記(1)又は(2)記載の製造方法、
(4)前記脱水剤が、合成ゼオライトである前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の製造方法、
(5)前記調製工程において、脱水剤の添加によりポリオール成分の水分率を300ppm以下とする前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の製造方法、
(6)前記ポリオール成分の均一混和が該ポリオール成分を無端のパイプライン中で循環
させるパイプライン循環により行われる前記(1)ないし(5)の何れか1つに記載の製造方法、
(7)前記硬化工程において、2分以上のポットライフを有し、10分以内に脱型可能となり且つ60分以内に最終硬度に達するところの注型硬化品を得ることを特徴とする前記(1)ないし(6)の何れか1つに記載の製造方法、
に関するものである。
尚、本願明細書中、超軟質ポリウレタンとは、加熱硬化後の成型品のショア00硬度が20ないし80の範囲となるポリウレタンを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、即ち、長いポットライフと短い硬化速度を有し、加熱硬化後には、エネルギー吸収性に優れ、ブロッキングするほどのべたつきが無く且つ軽量である注型硬化品となる、超軟質ポリウレタンの製造方法が提供される。
本発明は、有機マイクロバルーン等の密度の小さな充填剤を用いた場合にも、該充填剤の浮遊分離を抑制するものであるが、これにより、均一のまま硬化後の注型硬化品を軽量とすることができ、更に、べたつきを抑制するという効果も奏する。
また、本発明は、系中の水分率を特定の範囲以下に設定することにより、鉛系触媒ではない、例えば、ビスマス系触媒を使用しても、長いポットライフと短い硬化速度を達成することができるため、環境保護の観点からも優れた方法といえる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ショア00硬度とtanδの相関を示すグラフである。
【図2】マイクロバルーンの密度とその破壊率(0.3MPaダイアフラムポンプを使用したパイプライン循環72時間後)の相関を示すグラフである。
【図3】ポリオール成分の水分率(ppm)と、注型硬化品の脱型可能時間(分)の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の超軟質ポリウレタンの製造方法は、
A)ポリオールに密度0.035ないし0.050の充填剤、硬化触媒、助触媒及び脱水剤を添加して、水分率550ppm以下のポリオール成分を調製し、その際、前記充填剤の配合量は、ポリオール及び充填剤の総質量に基づいて1.0質量%以上である調製工程と、
B)前記ポリオール成分を均一混和条件の下、イソシアネート成分と混合する混合工程と、
C)B)で得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化して、前記超軟質ポリウレタンを製造する硬化工程とを含む。
【0012】
本発明の工程A)で使用可能なポリオールとしては、軟質ポリウレタンを製造するために使用し得るポリオール(ポリオール配合物)であれば特に限定されるものではなく、例えば、以下に示されるような配合のポリオールを用いることができる。
(1)平均分子量2000を有するポリ(1,2−プロピレングリコール)とN,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンとの配合物。
【0013】
(2)平均分子量1000〜6000のポリオキシプロピレンポリオール90〜65質量%と、平均分子量60〜700の低分子量多価アルコール10〜35質量%と、炭素数10以下の1価アルコール0.15〜0.5(プロピレンポリオールに対する当量比:一価アルコールは、炭素数10個以下の脂肪族第1アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エ
チルヘキシルアルコール等を上げることができる。またアルキルエーテルアルコールを用いることもできる。)との配合物。
【0014】
(3)平均分子量1500〜2500のポリ(1,2−プロピレングリコール)90〜65wt%と、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン10〜35wt%と、炭素数3〜10の1価アルコール0.15〜0.5(プロピレンポリオール総量に対する当量比:一価アルコールは、炭素数10個以下の脂肪族第1アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等を上げることができる。またアルキルエーテルアルコールを用いることもできる。)との配合物。
【0015】
(4)平均分子量400〜6000が適当な2ないし8官能性のポリエーテルポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジヒドロキシジフェニルプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ジプロピレングリコール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、アミノフェノール、アミノナフトール、フェノールホルムアルデヒド縮合物、フロログルシン、メチルジエタノールアミン、エチルジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキサン)、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ナフタレンジアミンなどにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどを1種又は2種以上付加させて得られるポリエーテルポリオール、またはポリエステルポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−または1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリットなどのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド付加物などの1種又は2種以上と、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの1種または2種以上とからのポリエステルポリオール、または、プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステルを開環重合したポリオール;さらに上記ポリオールと環状エステルとより製造したポリエステルポリオール、及び上記ポリオール、2塩基酸、環状エステル3種より製造したポリエステルポリオール、或いは、1,2−ポリブタジエンポリオール、1,4−ポリブタジエンポリオール、ポリクロロプレンポリオール、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ポリオール、ポリジメチルシロキサンジカルビノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒマシ油のようなリシノール酸エステル、前記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させて得たポリマーポリオール。
【0016】
(4)(a)一級ヒドロキシル基を末端に有し、2500〜8000の範囲の分子量、好ましくは2500〜4000の範囲の分子量を有する、2ないし6、好ましくは、2〜3の範囲の官能性を有するポリオールと、(b)多価アルコール、例えば、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,2−プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ヒドロキノンのビス(ヒドロキシエチルエーテル)、1,1',1'',1'''−エチレンジニトリロテトラ−(2−プロパノール)と、(c)10以下の炭素原子をもつ脂肪族1
価一級アルコール、好ましくは炭素原子数1ないし6の範囲内の、メチルアルコールからn−ヘキサノールまでのものからなるアルコールとの配合物。
【0017】
好ましいポリオール(ポリオール配合物)としては、(2)平均分子量1000〜6000のポリオキシプロピレンポリオール90〜65質量%と、平均分子量60〜700の低分子量多価アルコール10〜35質量%と、炭素数10以下の1価アルコール0.15〜0.5(プロピレンポリオールに対する当量比:一価アルコールは、炭素数10個以下の脂肪族第1アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等を上げることができる。またアルキルエーテルアルコールを用いることもできる。)との配合物が挙げられる。
【0018】
より好ましい、ポリオール(ポリオール配合物)としては、(3)平均分子量1500〜2500のポリ(1,2−プロピレングリコール)90〜65wt%と、N,N,N'
,N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン10〜35wt%と、
炭素数3〜10の1価アルコール0.15〜0.5(プロピレンポリオール総量に対する当量比:一価アルコールは、炭素数10個以下の脂肪族第1アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等を上げることができる。またアルキルエーテルアルコールを用いることもできる。)との配合物が挙げられる。
【0019】
本発明の工程A)で使用可能な充填剤としては、例えば、有機マイクロバルーンを使用することができ、該有機マイクロバルーンとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン主体の共重合体からなる有機マイクロバルーンを使用するのが好ましい。
上記充填剤は、密度0.035ないし0.050であり、ポリオール及び充填剤の総質量に基いて1.0質量%以上の量を使用する。
密度が、0.035より小さくなると、均一混和中、例えば、パイプライン循環中にバルーンの破壊率が増加し、結果として成型品の密度を向上させるため、好ましくない。
また、充填剤の量が、1.0質量%未満の場合、成形品の密度が大きくなると共に、ブロッキング(べたつき)が発生するため好ましくない。
尚、充填剤の粒径は、40ないし60μmの範囲が好ましい。
【0020】
本発明の工程A)で使用可能な硬化触媒としては、通常のポリウレタン製造のために使用される鉛、錫、コバルト、ビスマス系の種々の金属触媒等が考慮される。
しかし、鉛系触媒のような環境汚染の点で問題となる触媒の使用は好ましくなく、そのため、例えば、環境汚染の点で問題とならない、ビスマス系触媒等の使用が好ましい。
ビスマス系触媒としては、例えば、オクチル酸ビスマスが好ましい。
触媒の使用量としては、ポリオール及び充填剤の総質量100質量部に対して、0.01ないし0.5質量部、好ましくは、0.01ないし0.20質量部の範囲である。
0.01質量部未満であると、後硬化の触媒効果が不足し、0.5質量部を超えると超軟質ポリウレタンの物性を低下させるため好ましくない。
【0021】
本発明の工程A)で使用可能な助触媒としては、例えば、カルボン酸が挙げられ、好ましくは、オクチル酸が挙げられる。
助触媒の使用量としては、ポリオール及び充填剤の総質量100質量部に対して、0.1ないし3.0質量部、好ましくは、0.1ないし2.0質量部の範囲である。
【0022】
本発明の工程A)において、調製されるポリオール成分の水分率は、脱水剤の添加により、550ppm以下に調整される。
脱水剤としては、通常使用される脱水剤を用いることができるが、例えば、合成ゼオラ
イト粉末、好ましくは、粉末のモレキュラーシーブ(例えば、3A)を使用することができる。
脱水剤を添加した際、ポリオール成分の水分率が550ppmを超えると、脱型可能時間が10分を超えるため好ましくない。
また、該水分率は、好ましくは300ppm以下である。
上述の通り、脱水剤の使用量は、ポリオール成分の水分率を550ppm以下とし得る量であるが、通常、ポリオール及び充填剤の総質量100質量部に対して、0.3ないし5質量部の範囲、好ましくは、0.5ないし3質量部の範囲である。
0.3質量部未満では、水分率を550ppm以下とすることが困難であり、5質量部を越えると機械強度が低下するため好ましくない。
また、脱水剤の添加は、ポリオールと充填剤からなる混合物に、硬化触媒及び助触媒を添加する際に生じる充填剤の沈降、浮遊を解消するための攪拌時に行うこともできるが、ポリオールと充填剤からなる混合物に脱水剤を添加しておき、その後、硬化触媒及び助触媒を添加し、充填剤の沈降、浮遊の解消のために攪拌、脱泡することもできる。
【0023】
上記で調製されたポリオール成分を、充填剤が沈降、浮遊しないよう、均一混和しながら、イソシアネート成分と混合する。
上記均一混和は、充填剤を沈降、浮遊させない条件であれば特に限定されないが、無端のパイプライン中で循環させるパイプライン循環が好ましい。
また、上記パイプライン循環は、ダイアフラムポンプ、例えば、0.3MPaダイアフラムポンプ等を用いて行うことができる。
【0024】
本発明の工程B)で使用可能なイソシアネート成分としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート(水素化MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体等が挙げられる。
【0025】
上記イソシアネート成分は単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
イソシアネート成分の使用量は、該イソシアネート成分中に含有されるNCO基の量の、ポリオール中に含有されるOH基の総量に対する当量比(NCO/OH当量比)が0.4ないし1.4の範囲であり、好ましくは、0.5ないし1.2の範囲であり、より好ましくは、0.6ないし1.0の範囲である。
【0026】
上記で得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化することにより、加熱硬化後の注型硬化品のショア00硬度が20ないし80、密度が0.65ないし0.85及びtanδが0.3以上である超軟質ポリウレタンが製造されることとなる。
モールドへの注型は通常の方法を用いることができるが、ディスペンサーにて計量吐出してモールドに注型するのが好ましい。
また、加熱硬化は、通常の硬化条件を用いることができるが、60ないし80℃に加熱硬化するのが好ましい。
上記の加熱硬化により、得られる注型硬化品は、2分以上のポットライフを有し、10分以内に脱型可能となり且つ60分以内に最終硬度に達する。
【0027】
本発明において、上記成分に加えて、更に、充填材(通常使用される無機系の充填剤、
例えば、炭酸カルシウム、ガラス繊維、等)、可塑剤(DOPのような通常使用されるもの)、安定剤等の当技術分野において周知の他の添加剤を加えることもできる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
軽量化剤としての充填剤であるポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなる松本油脂(株)製のマイクロバルーン(粒径40〜60μm、密度0.043)2質量部を含んだポリオール(粘弾性ポリウレタン用ポリオール A−013(平均水酸基価86.8)(触媒未添加品):三井化学(株)製)100質量部(ポリオールとしての使用量は98質量部)を、保管時に浮遊分離しているバルーンを再分散させるために攪拌し、これに触媒としてオクチル酸ビスマス(ブキャット25:日本化学産業(株)製)0.05質量部及び助触媒としてオクチル酸0.30質量部を添加し、これに更に脱水剤(モレキュラーシーブ3A:ユニオン昭和(株)製)0.50質量部を添加し攪拌した。脱水剤添加攪拌後の混合物の水分率を表1に示した。
次いでこの混合物はパイプラインを循環させながら再凝集を防ぎ、ディスペンサーにて、別タンクで保管されているイソシアネート(カルボジイミド変性MDI コスモネートLK(NCO% 28.3):三井化学(株)製)17.0質量部(NCO/OH当量比=0.74)と定量吐出してモールドに注型し、70℃に加熱して硬化促進し、脱型可能時間、最終硬度到達時間、最終硬度、ブロッキングの有無、密度及びtanδを測定した。
各測定結果を表1に示した。
尚、実施例1で製造された注型硬化品は、極めて軟質である、ショア00硬度30度の場合の代表例である。
【0029】
また、表中の「脱型時間」とは、最終到達硬度の70%の硬度に達するまでの時間(分
)であって、取り出し時の応力で変形せず、シリコン離型紙にも付着しない状態になるまでの時間を表し、「ブロッキングの有無」とは、成型品を重ね、50℃で24時間オーブン中に放置し、取り出し、冷却後はがした時の構造崩壊が有るか無いかを表すものであり、また、表中のtanδは、以下の測定条件により測定した結果を表す。
装置:SOLID ANALYZER RSA II(ティー・エイ・インスツルメント社製)
変形モード:圧縮
振動モード:30Hz
測定温度:25℃
【0030】
実施例2
イソシアネート(カルボジイミド変性MDI コスモネートLK:三井化学(株)製)の使用量を18.5質量部(NCO/OH当量比=0.81)に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表1に示した。
尚、実施例2で製造された注型硬化品は、ショア00硬度50度の場合の代表例である。
【0031】
実施例3
イソシアネート(カルボジイミド変性MDI コスモネートLK:三井化学(株)製)の使用量を20.5質量部(NCO/OH当量比=0.90)に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表1に示した。
尚、実施例3で製造された注型硬化品は、ショア00硬度70度の場合の代表例である。
【0032】
実施例4
脱水剤(モレキュラーシーブ3A:ユニオン昭和(株)製)の使用量を1.5質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表1に示した。
【0033】
実施例5
充填剤(ポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなるマイクロバルーン、粒径40〜60μm、密度0.043:松本油脂(株)製)の使用量を1.4質量部に変え、ポリオール(粘弾性ポリウレタン用ポリオール A−013(触媒未添加品):三井化学(株)製)の使用量を98.5質量部に変え且つ脱水剤(モレキュラーシーブ3A:ユニオン昭和(株)製)の使用量を1.0質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表1に示した。
【0034】
実施例6
充填剤(ポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなるマイクロバルーン、粒径40〜60μm、密度0.043:松本油脂(株)製)の使用量を2.8質量部に変え、ポリオール(粘弾性ポリウレタン用ポリオール A−013(触媒未添加品):三井化学(株)製)の使用量を97.2質量部に変え且つ脱水剤(モレキュラーシーブ3A:ユニオン昭和(株)製)の使用量を1.0質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表1に示した。
【0035】
比較例1
充填剤を使用せず、ポリオール(粘弾性ポリウレタン用ポリオール A−013(触媒未添加品):三井化学(株)製)の使用量を100質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表2に示した。
【0036】
比較例2
充填剤(ポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなるマイクロバルーン、粒径40〜60μm、密度0.043:松本油脂(株)製)の使用量を0.5質量部に変え、ポリオール(粘弾性ポリウレタン用ポリオール A−013(触媒未添加品):三井化学(株)製)の使用量を99.5質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表2に示した。
【0037】
比較例3
充填剤を、密度0.028のポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなるマイクロバルーン(粒径40〜60μm、密度0.043:松本油脂(株)製)に代え、0.3MPaダイアフラムポンプによるパイプライン循環直後に、ディスペンサーにて、別タンクで保管されているイソシアネートと定量吐出してモールドに注型した以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表2に示した。
【0038】
比較例4
充填剤を、密度0.028のポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなるマイクロバルーン(粒径40〜60μm、密度0.043:松本油脂(株)製)に代え、0.3MPaダイアフラムポンプによるパイプライン循環を72時間行った後に、ディスペンサーにて、別タンクで保管されているイソシアネートと定量吐出してモールドに注型した以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表2に示した。
【0039】
比較例5
脱水剤(モレキュラーシーブ3A:ユニオン昭和(株)製)を使用しなかった以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表2に示した。
【0040】
比較例6
脱水剤(モレキュラーシーブ3A:ユニオン昭和(株)製)の使用量を0.25質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作及び測定を行い、各測定結果を表2に示した。
【0041】
参考例1:鉛触媒を使用した場合の成型加工例
軽量化剤としての充填剤であるポリ塩化ビニリデンを主体とした共重合体からなる松本油脂(株)製のマイクロバルーン(粒径40〜60μm、密度0.043)2質量部を含んだポリオール(粘弾性ポリウレタン用ポリオール A−013(触媒未添加品):三井化学(株)製)100質量部(ポリオールとしての使用量は98質量部)を、保管時に浮遊分離しているバルーンを再分散させるために攪拌し、これに触媒としてオクチル酸鉛(BTP24:活剤ケミカル(株)製)0.35質量部及び助触媒としてオクチル酸0.25質量部を添加し攪拌した。該混合物の水分率を表2に示した。
次いでこの混合物はパイプラインを循環させながら再凝集を防ぎ、ディスペンサーにて、別タンクで保管されているイソシアネート(カルボジイミド変性MDI コスモネートLK:三井化学(株)製)17.0質量部と定量吐出してモールドに注型し、70℃に加熱して硬化促進し、脱型可能時間、最終硬度到達時間、最終硬度、ブロッキングの有無、密度及びtanδを測定した。
各測定結果を表2に示した。
【0042】
【表1】

【表2】

【0043】
結果
実施例1ないし6から、A)ポリオールに密度0.035ないし0.050の充填剤、硬化触媒、助触媒及び脱水剤を添加して、水分率550ppm以下のポリオール成分を調製し、その際、前記充填剤の配合量は、ポリオール及び充填剤の総質量に基づいて1.0質量%以上である調製工程と、B)前記ポリオール成分を均一混和条件の下、イソシアネート成分と混合する混合工程と、C)B)で得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化して、前記超軟質ポリウレタンを製造する硬化工程とを含む本発明の超軟質ポリウレタンの製造方法により、加熱硬化後の注型硬化品のショア00硬度が20ないし80、密度が0.65ないし0.85及びtanδが0.3以上となる超軟質ポリウレタンが得られることが明確に示された。
尚、実施例2及び3は、イソシアネート成分の添加量(NCO/OH当量比)を増やして、最終硬度(ショア00)を増加させた例である。
ショア00硬度とtanδの相関を示すグラフを図1として示した。
図1から、ショア00硬度が80以下であれば、tanδが0.3以上となることが判る。
また、実施例4は、脱水剤(モレキュラーシーブ3A)の添加量を増やして、系中の水分率を低下させた例である。
また、実施例5,6は、脱水剤(モレキュラーシーブ3A)の添加量を増やすと共に、充填剤であるマイクロバルーンの添加量を変化させ、実施例5では添加量を減らして注型硬化品の密度を増加させ、実施例6では添加量を増やして注型硬化品の密度を低下させた例である。
【0044】
一方、充填剤であるマイクロバルーンを使用しなかった比較例1では、ブロッキングが発生すると伴に、注型硬化品の密度が1.09となり、0.65ないし0.85を超えてしまった。
また、マイクロバルーンの添加量がポリオール及び充填剤の総質量に基づいて1.0質量%未満の0.5質量%である比較例2でも、ブロッキングが発生すると伴に、注型硬化品の密度が0.93となり、0.65ないし0.85を超えてしまった。
また、充填剤として、密度0.035ないし0.050より小さな0.028であるマイクロバルーンを使用し、且つ、衝撃の少ない0.3MPaダイアフラムポンプを使用して圧送し、パイプライン循環直後に、ディスペンサーにて、別タンクで保管されているイソシアネートと定量吐出してモールドに注型した比較例3では、マイクロバルーンの破壊を回避したため、密度は0.62となり密度の増加は避けられたものの、得られた注型硬化品の機械強度は低いものであった。
比較例3と、パイプライン循環を72時間行ったことのみ異なる比較例4では、衝撃の少ない0.3MPaダイアフラムポンプを使用したにも拘らず、マイクロバルーンの破壊が起こり、結果として、注型硬化品の密度は1.03となり、0.65ないし0.85の密度範囲を超えてしまった。
尚、マイクロバルーンの密度とその破壊率(0.3MPaダイアフラムポンプを使用したパイプライン循環72時間後)の相関を示すグラフを図2として示した。
該グラフから判るように、マイクロバルーンの密度が0.035より小さくなる場合、その破壊率は60%を超えることになる。
また、脱水剤(モレキュラーシーブ3A)を使用しなかった比較例5では、混合物の水分率が550ppmを越える1000ppmとなり、触媒(オクチル酸ビスマス)の活性が水により失活し、結果として、得られる注型硬化品の脱型時間は、10分を超える20分となり、最終硬度到達時間は60分を超える120分となってしまった。
また、脱水剤(モレキュラーシーブ3A)の添加量が少なく、混合物の水分率が550ppmを越える700ppmとなる比較例6でも、注型硬化品の脱型時間は、10分を超える13分となり、最終硬度到達時間は60分となった。
尚、ポリオール成分の水分率(ppm)と、注型硬化品の脱型可能時間(分)の相関を示すグラフを図3として示した。
該グラフから判るように、ポリオール成分の水分率(ppm)が550ppmを超えると注型硬化品の脱型可能時間(分)が10分を超えることが判る。
【0045】
また、参考例1は、従来、広く使われた鉛触媒を用いる成型加工例であるが、脱水剤(モレキュラーシーブ3A)を使用せず、そのためポリオール成分の水分率が550ppmを越える800ppmとなるものの、水により触媒活性が失活せず、そのため、得られる注型硬化品の脱型時間は、10分以内となる7分となり、最終硬度到達時間は60分以内となる30分となった。
しかし、上述の通り、鉛触媒は環境問題を有するため、該触媒を含む参考例1で製造される注型硬化品はその使用において問題を有する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、健康、スポーツ、医療、精密部品の保護、運送など幅広い分野で利用可能で、通常の使い方では物性上の問題も無く、人が軽量と感じる比重(0.65〜0.85)を有し、保存、2次加工時問題となるブロッキングを生じることが無く、tanδが0.3以上の優れたエネルギー吸収性能を有する超軟質ポリウレタン成型物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱硬化後の成型品のショア00硬度が20ないし80、密度が0.65ないし0.85及びtanδが0.3以上である超軟質ポリウレタンの製造方法であって、
A)ポリオールに密度0.035ないし0.050の充填剤、硬化触媒、助触媒及び脱水剤を添加して、水分率550ppm以下のポリオール成分を調製し、その際、前記充填剤の配合量は、ポリオール及び充填剤の総質量に基づいて1.0質量%以上である調製工程と、
B)前記ポリオール成分を均一混和条件の下、イソシアネート成分と混合する混合工程と、
C)B)で得られた混合物をモールドに注型し、加熱硬化して、前記超軟質ポリウレタンを製造する硬化工程とを含む製造方法。
【請求項2】
前記充填剤が、ポリ塩化ビニリデン主体の共重合体からなる粒径40ないし60μmの有機マイクロバルーンである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記硬化触媒が、オクチル酸ビスマスである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記脱水剤が、合成ゼオライトである請求項1ないし3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記調製工程において、脱水剤の添加によりポリオール成分の水分率を300ppm以下とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール成分の均一混和が該ポリオール成分を無端のパイプライン中で循環させるパイプライン循環により行われる請求項1ないし5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記硬化工程において、2分以上のポットライフを有し、10分以内に脱型可能となり且つ60分以内に最終硬度に達するところの注型硬化品を得ることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180348(P2010−180348A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26117(P2009−26117)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(592178163)三進興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】