説明

超音波流量計

【課題】 消費電流を減らして電池を小型・小容量にする。超音波の到達時間や総到達時間のサンプリング時点が脈動に同期しないようにして流量計測の精度を高める。
【解決手段】 送受波器2から超音波を順方向に送信し、送受波器3で受信する送受を連続してn回繰り返す。そして、総到達時間T11をカウンタ8で計数する。同様に逆方向の総到達時間T21を得る。このような測定をサンプリング間隔Tsで複数回(m回)繰り返す。総到達時間の順方向の総和ΣTiと逆方向の総和ΣTiを演算部9で求め、両総和に基づいて流速・流量を演算する。このような流量測定期間Tを時間間隔をおいて繰り返し、期間T毎の順方向総到達時間の最大値[Ti]maxを記憶し、期間T毎の変化が一定以上であると、サンプリング間隔Tsを変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計、特に電池電源で作動する超音波流量計の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計では、流体の流れと同じ順方向の超音波の伝搬時間と、流体の流れと逆の逆方向の超音波の伝搬時間とから流速を求め、この流速に流路断面積を乗じて流量(瞬間流量ともいう)を求めている。
【0003】
図1で、流管1内の上流側と下流側に距離Lをおいて送受波器2,3を配置し、送受波器2から流体の流れに沿った方向(順方向)に超音波を送信して、この超音波が受信側の送受波器3に到達するまでの順方向到達時間tと、下流側の送受波器3から流体の流れと逆方向に超音波を送信して、この超音波が受信側の送受波器2に到達するまでの逆方向到達時間tとから、流速・流量を求める、いわゆる時間差法が周知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
静止流体中の音速をC、流体の流速をVとすると、超音波の順方向伝搬速度は(C+V)となり、逆方向伝搬速度は(C−V)となる。順方向と逆方向計測時において、それぞれ送信側の送受波器2,3から受信側の送受波器3,2に超音波が到達するまでの、順方向と逆方向の各到達時間t,tは、
=L/(C+V) ・・・(1)
=L/(C−V) ・・・(2)
となる。一般に音速Cに比べて流速Vは小さく、C≧Vであるから、
−t=2LV/C ・・・(3)
を得る。したがって、順方向と逆方向の各到達時間(伝搬時間ともいう)を直接測定し、その差である時間差Δt=t−tを算出し、更に、流速Vを、
V=Δt・C/2L ・・・(4)
として演算し、この流速Vに流路断面積Sを乗じて流量(瞬間流量ともいう)を演算していた。このような流速・流量計測方法を時間差法と呼んでいる。
【0005】
順方向と逆方向の到達時間(伝播時間)t,tを計測した後、流速・流量を演算するのに、上記時間差法とは違う時間逆数差法も用いられていた(例えば、特許文献1参照)。これは、
1/t=(C+V)/L ・・・(5)
1/t=(C−V)/L ・・・(6)
の関係に注目して、流速Vを、
V={(1/t)−(1/t)}L/2 ・・・(7)
として求め、更に流量Qを、
Q=S・V ・・・(8)
として求めるものである。この時間逆数差法では、流速Vを求める(7)式にはC項を含まず音速に無関係に流速測定ができる。
【0006】
ところで、上記時間差法にしろ、時間逆数差法にしても、t,tは非常に小さいため、計測誤差が問題となる。そこで、送信側の送受波器2から超音波を送信して、受信側の送受波器の信号を入力とする(図示されていない)受信波検知部が受信波を検知すると、それと同時に再び送信側の送受波器2から超音波を送信させるようにし、このようにして一定回数(n回)連続して順方向への超音波の送信を繰り返すようにして、最初の送信から一定回数(n回)目の受信までの総到達時間Tを測定し、次に逆方向への超音波の送信を一定回数(n回)連続して繰り返して、その最初の送信から一定回数(n回)目の受信までの総到達時間Tを測定すると、もともと順方向到達時間tや逆方向到達時間tは極めて小さく、一定回数の連続繰り返し送受信の間には流速Vはほとんど変化せずほぼ一定と見なせるため、
=nt ・・・(9)
=nt ・・・(10)
と表せる。したがって、順方向の総到達時間Tと、逆方向の総到達時間Tとから、順方向到達時間tと逆方向到達時間tとを、
=T/n ・・・(11)
=T/n ・・・(12)
として演算し、(11)(12)式で求めたt,tを前記(3)式に代入して、(4)式で流速Vを演算し、更に流路断面積Sを乗じて流量Qを求めると、測定精度の高いT,Tに基づいて流速Vや流量Qを求めることができるため、流量計としての計測精度が向上する。例えば一定回数を整数nとすれば、計測精度はほぼn倍に向上する。
【0007】
また、総到達時間TとTとから、
n/T=1/t ・・・(13)
n/T=1/t ・・・(14)
を求め、これらを前記(7)式に代入すれば、時間逆数差法での計測精度を向上し、流速Vや流量Qを高精度で計測できることになる。このとき、流速Vは、
V={(1/T)−(1/T)}nL/2 ・・・(15)
となる。この流速Vに流路断面積Sを乗じて流量Qを求める。
【0008】
都市ガスの使用量を計量するガスメータとして用いる超音波流量計では、電池電源で作動する電池駆動のものが要望されるため、消費電流を軽減しないと実用的に満足できる電池寿命が得られない。そこで、一定のサンプリング間隔で前記到達時間tやt又は総到達時間TとTを計測して、計測した到達時間tとt又は総到達時間TとTに基づいて流速Vとか流量Qを演算して求めている。そして、流量Qを積算することでガス使用量を算出している。サンプリング間隔を大きく(長時間に)すれば、平均消費電流が減少して電池寿命が長くできる。
【0009】
また、ガスメータは、常時ガス流量を監視して、異常流量を検知するとガス供給を自動的に停止して、未然に事故を防止するためのセキュリティ機能(安全機能)が組み込まれるため、なるべく短時間で流量計測を行って、異常流量であるかないかの判断を速やかにできるようにしなければならない。また、ガスメータでは、ガス供給配管に接続されている他のガス機器の影響を受けて、ガス圧の脈動が発生し、ガス流量が脈動することがある。この脈動の周波数は3Hz〜60Hzである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−90029号公報(第2〜3頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記従来の技術では、脈動を平均化するためサンプリング間隔を小さくし多く測定する場合でも、順方向と逆方向の到達時間tとtを1回測定する都度流速・流量を演算していた。繰り返して連続的にn回送受信を行う方式の場合でも総到達時間TとTを1回測定する都度流速・流量の演算をしていた。これらの演算はメータ(流量計)に内蔵す
るマイコンで行っているため、演算の都度大きな電流を消費し、結果的に電池寿命に悪影響を与え、電池容量を大きくし、ガスメータの寸法、コストを上昇させる要因となるという第1の問題点があった。
【0012】
また、サンプリング時期がガスの脈動と同期すると、計測値に大きな片寄りが発生して、流量Qの測定誤差が大きくなってガスメータのセキュリティ機能の判断に大きな誤差となるという第2の問題点があった。
【0013】
そこで、本発明はこれらの問題点を解消できるガスメータに好適な超音波流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記第1の目的を達成するために、参考例1のものは、超音波の到達時間の計測を、順方向と逆方向について行う流量計であって、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を一定のサンプリング間隔で一定複数回繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回での総和と、逆方向の超音波の到達時間の一定複数回での総和とに基づいて流量を演算することを特徴とする超音波流量計である。
【0015】
交互に順方向と逆方向の送受信を複数回(m回)繰り返したときの各回毎の超音波の到達時間を順に、t11,t21,t12,t22,…,ti,t2i,…,tm,tmとすると、順方向の到達時間の総和Σtiは、
Σti=t11+t12+…+ti+…+t
となり、また、逆方向の到達時間の総和Σtiは、
Σti=t21+t22+…+ti+…+t
となるため、これらの総和ΣtiとΣtiとを用いて流量を演算する。こうすることで、順方向と逆方向の到達時間を1回測定する都度、例えばt11とt21を測定したら直ちにt11とt21を用いて流速Vを演算する従来方式と比較して、流量演算の回数が1/mに減る。よって、演算に要する消費電流が少なくて済む。
【0016】
参考例2のものは、参考例1の超音波流量計において、前記一定のサンプリング間隔の1/2の間隔で順方向の超音波の到達時間と逆方向の超音波の到達時間の計測を行うことを特徴とするものである。
【0017】
参考例3のものは、同じく第1の目的を達成するために、まず送信側の送受波器から超音波を送信し、受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると同時に再び送信側の送受波器から超音波を送信することを連続して一定回数繰り返して、最初の送信から一定回数目の受信までの総到達時間を計測するとともに、このようにして計測する総到達時間を順方向と逆方向について求める流量計であって、
順方向と逆方向の超音波の総到達時間の計測を一定のサンプリング間隔で一定複数回繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の総到達時間の一定複数回での総和と、逆方向の超音波の総到達時間の一定複数回での総和とに基づいて流量を演算することを特徴とする超音波流量計である。
【0018】
このものでは、順方向と逆方向の総到達時間(Ti,Ti)を交互に測定し、その複数回(m回)を終了してからそれらの総和ΣTiとΣTiを演算し、この総和に基づいて流量を算出する。
【0019】
ΣTi=T11+T12+…+Ti+…+T
ΣTi=T21+T22+…+Ti+…+T
である。T11〜Tmは順方向の各総到達時間、T21〜Tmは逆方向の各総到達時間で、この場合も従来技術と比較して流量演算回数が1/mに減少し、消費電流が減らせる。
【0020】
参考例4のものは、参考例3の超音波流量計において、前記一定のサンプリング間隔の
1/2の間隔で順方向の超音波の総到達時間と逆方向の超音波の総到達時間の計測を行うことを特徴とするものである。
【0021】
前記第1と第2の目的を達成するために、参考例5のものは、参考例1乃至4のいずれかに記載の超音波流量計において、1回の流量測定期間(T)の間に、複数回(m回)の到達時間又は総到達時間の計測を行い、このような流量測定をある測定間隔で行う流量計であって、
各到達時間又は総到達時間の順方向最大値[ti]max又は[Ti]max、順方向最小値[ti]min又は[Ti]min、逆方向最大値[ti]max又は[Ti]max、あるいは逆方向最小値[ti]min又は[Ti]minのうち何れか1種類の値の流量測定期間毎の変化を監視し、その変化が一定以上のときには、サンプリング間隔(Ts)を変更するように構成したことを特徴とするものである。
【0022】
脈動の周波数は通常数Hz以上で、同じ脈動が連続的に継続する。従って、脈動分を含めない真のガス流量が一定なら、脈動を含むガス流量の極大値と極小値は時間的にほぼ一定となる。従って、m回の到達時間計測のどれかが極大極小をとらえれば、それらは最大値、最小値となり、毎回殆ど一定の値となる。しかし、サンプリングが同期あるいは同期に近い状態となると、図2のように極大極小をとらえていないため、最大値、最小値は毎回どの位置で同期するかにより、異なった値となる。よって、順方向か逆方向の最大値か最小値のいずれかの変化を監視することでサンプリングが同期していることを検知して同期しないようにサンプリング間隔(周期)を変更する。
【0023】
図2は、実線で脈動と示したのは、脈動を含むガス流量を示し、脈動の周波数が36Hz、サンプリング間隔が28mSの場合である。図中、白丸は順方向の総到達時間の計測時点を、四角は逆方向の総到達時間の測定時点を示す。サンプリング間隔(周期)と脈動周期との関係で、測定時点が脈動のどの部分に相当するか次第に変わっていく状況がわかる。図2は、ほぼ同期した状態を示す。この測定では偶然計測の最大値が真の極大値となっているが、この測定で得られた最小値Qminは極小値をとらえていない。
【0024】
参考例6のものは、参考例1乃至4のいずれかの超音波流量計において、1回の流量測定期間(T)の間に、複数回(m回)の到達時間(ti,ti)又は総到達時間(Ti,Ti)の計測を行い、このような流量測定をある測定間隔で行う流量計であって、
各流量測定期間(T)毎の到達時間又は総到達時間の順方向あるいは逆方向の、最大値と最小値を出力できるようにし、各流量測定毎の最大値又は最小値の、前回の流量測定時からの変化が今回の(最大値−最小値)の一定分の1より大きいときに、前記サンプリング間隔(Ts)を変更するように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
到達時間測定又は総到達時間測定が脈動に同期していなくて真の最大値、最小値を検知できている場合、最大値と最小値の差に比べて、最大値あるいは最小値のそれぞれ変化は小さいといえる。よって、今回の(最大値−最小値)と、(前回最大値−今回最大値)の絶対値又は(前回最小値−今回最小値)の絶対値を比較することで確実に同期しているかどうかの判断が可能である。
【0026】
参考例7のものは、参考例1乃至4又は6のいずれかの超音波流量計において、1回の流量測定期間(T)の間に、複数回(m回)の到達時間(ti,ti)又は総到達時間(Ti,Ti)の計測を行い、このような流量測定をある測定間隔で(即ちある測定期間(T)毎に)行う流量計であって、
各流量測定期間(T)内において、順方向あるいは逆方向の各到達時間又は総到達時間の増減回数を計数するとともに、計数した増減回数が一定以下のときは、前記サンプリ
ング間隔(Ts)を変更することを特徴とするものである。
【0027】
脈動の周期が長いとき、サンプリング間隔(Ts)が小さすぎると、脈動の1部しか測定できず1回の測定では真の流量を得られないことが起きる。脈動の周期のちょうど整数倍の時間測定して流量を演算することが有効であるが、脈動の周期が分からないためそれは難しい。
【0028】
結局、脈動の数周期(3周期以上)に相当する流量測定期間(T)とすることが望ましい。
【0029】
サンプリング周期が脈動周期より十分小さければ、到達時間や総到達時間の増減回数が、到達時間測定が脈動の何周期にわたっているかを示すことになり、その値が小さいときは平均化が効率よく行われていないことが分かる。その場合、サンプリング間隔を長くすることで、脈動の数周期間の測定にできる。
【0030】
また、サンプリングが同期している場合、増減数が周期数を正しく反映しないことがあるが、参考例6のものを併用すると、同期することがないため更に有効である。
【0031】
また、サンプリングと脈動の同期を防ぐことで、サンプリング間隔をそれほど小さくしないで脈動する流量の効率の良い平均化が可能である。図10にサンプリング周期が脈動周期に比べ大きいケースでの脈動に同期していない例を示す。サンプリングが脈動のいろいろな位相にばらついていて効率よく平均化ができている。(真の流量ゼロに、±1m3
/hの脈動がある場合。増減回数は、増と減の両方をカウント。平均はゼロ(真値)に近い値に平均化されている。)
図3は、脈動の1.3周期分程度しか測定を行っていないケースである。1周期分はうまくキャンセルされるが、残りの0.3周期分は誤差になる。
【0032】
参考例8のものは、参考例7の超音波流量計において、1回の流量測定期間(T)における順方向あるいは逆方向の到達時間(ti,ti)又は総到達時間(Ti,Ti)の測定値がサンプリング毎に得られるたびに、それらの測定値の最大値と最小値及びそれらの中間値を得られるようにするとともに、取得した到達時間又は総到達時間が前記中間値を横切る回数を計数することで増減回数を検知することを特徴とするものである。
【0033】
脈動はきれいな正弦波とは限らないため(主たる大きな周期の脈動、短い周期の小さな脈動が重畳されているような場合に)、単純に到達時間又は総到達時間の増減では脈動の何周期にわたって測定したかがわからないことが起こる。
【0034】
このものでは、最大値と最小値の中間値を横切る回数を増減回数としているので、重畳された小さな脈動に惑わされることなく、主たる大きな脈動に対して何周期測定したかを知ることが可能である。
【0035】
請求項1の発明は、前記第1と第2の目的を達成するために、
超音波の到達時間の計測を、順方向と逆方向について行う流量計であって、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を所定のサンプリング間隔で行い、それらの到達時間に基づいて流量を演算する通常モードと、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を前記所定のサンプリング間隔と異なるサンプリング間隔で一定複数回(m回)繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和と、逆方向での超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和とに基づいて流量を演算する脈動モードとを具備し、
前記通常モードにおいて、一定以上の流速変化を認めたときに、通常モードから脈動モードに移行するとともに、
前記脈動モードにおいて、各到達時間の最大値と最小値の差が一定以下のときに脈動モードから通常モードに戻すことを特徴とする超音波流量計である。
【0036】
通常モードでは、順方向や逆方向の到達時間の計測を所定のサンプリング間隔で行い、それらの到達時間又はその総和に基づいて流量を演算する。そして、一定以上の流量変化があると脈動モードに移行する。
【0037】
脈動モードでは、前記所定のサンプリング間隔と異なるサンプリング間隔で一定複数回(m回)の到達時間の総和を計測する。順方向到達時間の総和は、例えば、
Σti=t11+t12+…+ti+…+t
であり、逆方向到達時間の総和は、例えば、
Σti=t21+t22+…+ti+…+t
である。
【0038】
これらの総和ΣtiとΣtiとに基づいて脈動時の流量を演算する。流量演算は、複数回(m回)の到達時間の計測毎に行うだけであるので、演算に要する消費電流は少なくなる。
【0039】
また、通常モードでは、流量の脈動がない定常流のときに使用するため、所定のサンプリング間隔を長く(大きく)定めても流量計測誤差は大きくならず、そのぶん消費電流を軽減できる。
【0040】
請求項2の発明は、請求項1の超音波流量計で、脈動モードにおいて、まず送信側の送受波器から超音波を送信し、受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると同時に再び送信側の送受波器から超音波を送信することを連続して一定回数(n回)繰り返して、最初の送信から一定回数(n回)目の受信までの総到達時間を計測するとともに、このようにして計測する総到達時間を前記到達時間として使用することを特徴とするものである。
【0041】
こうすることで、順方向の総到達時間の総和ΣTiは、
ΣTi=T11+T12+…+Ti+…+T
と表され、逆方向の総到達時間の総和ΣTiは、
ΣTi=T21+T22+…+Ti+…+T
となる。
【0042】
請求項3の発明は、請求項1又は2の超音波流量計において、複数の脈動モードを具備し、各脈動モードが異なるサンプリング間隔で超音波の到達時間の計測を行うことを特徴とするものである。
【0043】
この発明では、脈動の状態、例えば脈動の周波数に対応して脈動モード時のサンプリング間隔を切り替えて、計測誤差を軽減することができる。
【0044】
請求項4の発明は、請求項1,2又は3の超音波流量計において、通常モードのサンプリング間隔よりも、脈動モードのサンプリング間隔を短く定めたことを特徴とするものである。
【0045】
この発明では、脈動モードにおけるサンプリング間隔を短く(小さく)することにより、脈動、即ち流量変動に追従して正確な計測を行うことができる。
【0046】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちの何れかの超音波流量計で、通常モードの
測定において、前回の測定値と今回の測定値との差が一定以上のときに脈動モードに移行することを特徴とするものである。
【0047】
この発明では、所定のサンプリング間隔で測定した到達時間の前回の測定値と今回の測定値との差に基づいて計測モードを通常モードから脈動モードに簡単に切り替えることができる。
【0048】
請求項6の発明は、前記第1と第2の目的を達成するために、超音波の到達時間の計測を、順方向と逆方向について行う流量計であって、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を所定のサンプリング間隔で行い、それらの到達時間に基づいて流量を演算する通常モードと、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を前記所定のサンプリング間隔と異なる第1のサンプリング間隔で一定複数回(m回)繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和と、逆方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和とに基づいて流量を演算する第1の脈動モードと、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を前記所定のサンプリング間隔及び第1のサンプリング間隔とは異なる第2のサンプリング間隔で一定複数回(m回)繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和と、逆方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和とに基づいて流量を演算する第2の脈動モードとを具備し、
前記通常モードにおいて、一定以上の流速変化を認めたときに、通常モードから第1の脈動モードに移行するとともに、
各脈動モードにおいて、各到達時間の最大値と最小値の差及び各到達時間の増減回数に基づいてモードの切り替え又は継続を決めることを特徴とする超音波流量計である。
【0049】
この発明では、各脈動モードにおいて、各到達時間の最大値と最小値の差、及び各到達時間の増減回数に基づいてモードの切り替え又は継続を決めるので、脈動の状態に応じて、よりきめ細かい対応ができ、そのぶん計測精度が向上する。
【0050】
なお、各到達時間の最大値と最小値は、前記参考例5又は6の場合と同様にして求めることができ、また各到達時間の増減回数は、前記参考例7の場合と同様にして求めることができる。
【0051】
請求項7の発明は、請求項6の超音波流量計で、第1と第2の各脈動モードにおいて、まず送信側の送受波器から超音波を送信し、受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると同時に再び送信側の送受波器から超音波を送信することを連続して一定回数(n回)繰り返して、最初の送信から一定回数(n回)目の受信までの総到達時間を計測するとともに、このようにして計測する総到達時間を前記到達時間として使用することを特徴とするものである。
【0052】
この発明では、脈動時に、順方向と逆方向について、それぞれn×m回の送受信の到達時間の和を直接計測し、その和に基づいて流量を演算できるため、計測精度がより向上する。
【0053】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7の超音波流量計で、通常モードの測定において、前回の測定値と今回の測定値との差が一定以上のときに脈動モードに移行することを特徴とするものである。
【0054】
この発明では、通常モード時において、前回と今回の測定値の差が一定以上の時に、流量変動が一定以上になったと判断して第1の脈動モードに切り替え、脈動に対応したサンプリングを行う。
【発明の効果】
【0055】
参考例1〜8のものでは、流量演算の回数が従来技術の1/mと少なくなり、そのぶん消費電流が小さくなるため、電池の小型化を図ることができ、電池駆動の超音波流量計の実用化に寄与する。
【0056】
また、サンプリング時点が脈動に同期することを防止でき、流量計測の精度が高くなる。そして、サンプリング間隔を最適値にすることができるため、脈動の数周期分を流量測定の1回分としてサンプリングすることが可能となり、この面からも流量計の計測精度を高くできる。
【0057】
また更に、サンプリングの周期を脈動の周期に比べそれほど小さくすることなく脈動する流量の平均化が可能なため、更に消費電流を抑えることが可能である。
【0058】
そして、請求項1〜8の発明では、脈動モード時の流量演算の回数が1/mに減少するので、そのぶん流量計の消費電流が減少する。
【0059】
また、脈動がない定常流量時は、通常モードで、サンプリング間隔を長く(大きく)することにより、その計測モードでの消費電流を、脈動とは無関係に下げることができるため、結局、流量計としての消費電流が低減できる。
【0060】
更にまた、特に参考例5〜8や請求項1〜8の発明では、サンプリング時点から脈動と同期することを回避できるため、同期による計測誤差を軽減でき、超音波流量計をガスメータとして利用する場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】超音波流量計の動作原理の説明図。
【図2】流量の脈動とサンプリング時点を示す図。
【図3】流量の脈動とサンプリング時点を示す図。
【図4】実施例1を示す図で、(a)は流量計のブロック図、(b)は総到達時間の測定タイミングを示す図、(c)は同図(b)の一部を拡大した図。
【図5】図4のカウンタ8の詳細ブロック図。
【図6】実施例1のタイミング図。
【図7】実施例2の要部ブロック図。
【図8】実施例3の要部ブロック図。
【図9】実施例4の要部ブロック図。
【図10】参考例8のものを説明するための説明図で、流量の脈動とサンプリング時点を示す図。
【図11】実施例5のフロー図。
【図12】実施例5の流量脈動とサンプリング時点を示す図。
【図13】実施例5の流量脈動とサンプリング時点を示す図。
【図14】実施例6のフロー図。
【図15】実施例6のフロー図。
【図16】実施例6のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
次に、本発明の好ましい実施の形態をいくつかの実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0063】
図4(a)において、送受波器2と3は図1で説明したと同様に上流側と下流側に距離Lだけ離れて配設された送受波器で、超音波振動子で構成され、送信側としても受信側としても作動できるもので、切替スイッチS1とS2が図示の状態のときは、送受波器2は送波器駆動部4に接続されて送信側として作動し、送受波器3は受信波検知部5に接続されて受信側として作動する。
【0064】
送波器駆動部4は測定制御部6からの第1送信指令信号を受けると送信側の送受波器(この場合2)をまず駆動し、その後は受信側の送受波器(この場合3)に接続された受信波検知部5より受信波検知信号を受ける都度、送信側の送受波器(2)を駆動する。ただし、第1のカウンタ7から第n受信波検知信号を受けると、それ以後は新たに第1送信指令信号を受けるまでは駆動を停止する。
【0065】
本実施例2では無意味なn+1回目の駆動を行ってしまうようになっているが、受信側で無視するので問題はない。
【0066】
第1のカウンタ7は受信波検知部5からの受信波検知信号を計数し、n番目の受信波検知信号を第n受信波検知信号として出力する。この第1のカウンタ7は測定制御部6からの第1送信指令信号でリセットされるようになっている。
【0067】
第2のカウンタ8は、図6のように、測定開始信号を入力リセットされた後、送信方向信号によって、順方向測定時の第1送信指令信号でカウントスタートし、第n受信波検知信号でカウントストップすることを繰り返し、総到達時間(T11,T12,…,Ti,Tm)の総和を計数測定する。また、同様に、逆方向測定時の第1送信指令信号から
第n受信波検知信号までの総到達時間(T21,T22,…,Ti,Tm)の総和を計数測定する。測定値の総到達時間の総和は順方向の値と逆方向の値とが別々にマイコンからなる演算部9が測定制御部6の測定終了信号が入力された後に読み取る(図4,図6参照)。
【0068】
測定制御部6はマイコンからなる演算部9から測定開始信号が入力されると、送信方向信号を順方向のまま第1送信指令信号を出力し、一定時間後、送信方向信号を反転させて逆方向とし、再び第1送信指令信号を出力することを、演算部9のマイコンが設定した一定の複数回(m回)繰り返すように構成してある。図4(b)(c)や図6に示す第1送信指令信号の間隔TsとTsも演算部9を構成するマイコンが測定制御部6に設定(セット)するようになっているが、これらの流れは図示していない。
【0069】
また、測定制御部6は、前述のように演算部9を構成するマイコンにより設定(セット)された一定の複数回(m回)第1送信指令信号を出力後、間隔Tsをおいて測定終了信号をマイコンに出力し、マイコンはこの信号を受け取ると第2のカウンタ8の順方向総到達時間の総和ΣTiと逆方向総到達時間の総和ΣTiであるカウント値(測定値)を読み取る。演算部9は、こうして順方向総到達時間Tiの総和ΣTiと、逆方向総到達時間Tiの総和ΣTiを読み取り、両総和に基づいて流量を演算する。演算部9を構成するマイコンは、サンプリング期間Tより長い時間間隔で測定開始信号を出力し、そして測定終了信号を受ける毎に上記動作を行い流量演算する。総和ΣTiと総和ΣTiは次式で表される。
【0070】
ΣTi=T11+T12+T13+…+T−1+Tm ・・(16)
ΣTi=T21+T22+T23+…+T−1+Tm ・・(17)
もっともカウンタ8aと8bは式(16)と(17)の演算は行わないで、直接ΣTiとΣTiを計測する。
【0071】
図5は、図4(a)の第2のカウンタ8の構成を示す。順方向総到達時間総和カウンタ8aと、逆方向総到達時間総和カウンタ8bは、ともに測定開始信号でカウント値(総到達時間の総和の測定値)が零リセットされ、第1送信指令信号で、基準クロック発振部8cからの基準クロックのカウント(計数)を開始し、第n受信波検知信号でカウントを停止するように構成されている。基準クロックは、送信方向信号で切り換えられるスイッチS3によって、順方向測定時は順方向総到達時間総和カウンタ8aのみに、逆方向測定時は逆方向総到達時間総和カウンタ8bのみに入力される。こうして、順方向と逆方向の各総到達時間の総和ΣTi,ΣTiを夫々カウンタ8aと8bで別々に測定する(図4(b)(c)、図6参照)。
【0072】
なお、図4(b)(c)と、図6で、Tsは一定のサンプリング間隔、Tsは順方向測定とそれに続く逆方向測定との間隔時間、Tsは逆方向測定とそれに続く順方向測定との間隔時間で、必ずしもTs=Tsに定める必要はないが、参考例2と参考例4ではTs=Tsに限定している。
【0073】
上記実施例1では、順方向と逆方向にそれぞれ連続して一定回数(n回)の超音波の送受を繰り返して、順方向と逆方向毎の総到達時間の総和T11+T12+…+Ti+…+TmとT21+T22+…+Ti+…+Tmを計測し、これらに基づいて流量を算出する。ΣTiとΣTiは順方向と逆方向にそれぞれn×m回の送受を行った到達時間の総和、例えば(n×m)tと(n×m)tに相当するので、次の(18)式を用いて、時間差法に準じて流速Vを求め、流路断面積を乗じて流量を求める。
【0074】
V=(ΣTi−ΣTi)C/2L(n×m)・・・(18)
この(18)式を用いて時間差法に準じて流速Vを求める代わりに、次のようにして、
時間逆数差法に準じて流速Vを求めることもできる。
【0075】
この方法は、順逆それぞれの平均の到達時間を先ず求めて、それらを用いて流速Vを求める考え方とも言える。
【0076】
即ち、
=ΣTi/n・m ・・・(19)
=ΣTi/n・m ・・・(20)
であり、時間逆数差法は前記(7)式のように次式であらわされる。
【0077】
V={(1/t)−(1/t)}L/2 ・・・(7)
この(7)式に(19)(20)式を代入すれば、
V={(1/ΣTi)−(1/ΣTi)}n・m・L/2・・・(21)
となり、この(21)式を用いることで、到達時間の総和に相当するΣTiとΣTiを用いて、時間逆数差法に準じて、流速Vを求めることもできる。
【0078】
なお、実施例1のように、順方向と逆方向の超音波の送受を一定回数(n回)ずつ連続して繰り返すことなく、1回ずつの送受にして、直接到達時間tとtをm回測定し、Σti、すなわち、
Σti=t11+t12+…+ti+…+t
Σti=t21+t22+…+ti+…+t
として、順方向到達時間tiの総和Σtiと逆方向到達時間tiの総和Σtiに基づいて流速・流量を演算するようにすることもできる(参考例1,2)。
【実施例2】
【0079】
図7は参考例5のものに対応する実施例2で、流量計全体の構成は図4(a)と類似で、その第2のカウンタ8の構成が図7のようになっていて、図4,5の実施例1と構成が異なる。
【0080】
この実施例2では、総到達時間カウンタ8Aとその最大値を保持する最大値ホールダ10が図5の構成に追加されて図7のブロック図の構成になっている。最大値ホールダには送信方向信号が入力されていて図6の測定開始信号が入力されると内容が零リセットされ、図4(b)や図6に示す1回の流量測定期間Tの間の順方向総到達時間Tiの最大値[Ti]maxを保持して図4(a)の演算部9へ出力する。
【0081】
演算部9はこの最大値[Ti]maxを記憶し、前回の流量測定期間Tの間の順方向総到達時間の最大値の記憶値と比較して、その差を求め、差、すなわち変動が一定以上に大きいときは、一定複数回繰り返す総到達時間の総和の測定がガス流量の脈動と同期していると見なして、サンプリング間隔Tsを変更する。こうすることで、脈動との同期を避けて、誤差の少ない流量計測を行う。
【0082】
脈動の周波数は数Hz以上で、ほとんど変化しない。従って、脈動を除いた真の流量(ガスの使用流量)が一定なら、脈動を含むガス流量の最大値と最小値は変化せず、ほぼ一定値を保つと考えられる。しかし、総到達時間測定のサンプリング間隔Tsが脈動と同期していると、図2のように、真の最大値や最小値を捉えていないため、流量測定毎に毎回異なった値になる。よって、順方向か逆方向の最大値か最小値のいずれかの変化を監視して、変化が一定以上のときは、サンプリング時期が脈動に同期していると見なして、サンプリング間隔を変え、測定誤差を小さくするものである。
【0083】
実施例2は、順方向総到達時間の流量測定期間T毎の最大値の変化に注目したが、順方向総到達時間の流量測定期間T毎の最小値を監視して同期の有無を判断しても良いし、逆方向総到達時間の流量測定期間T毎の最大値又は最小値の変化を捉えて同期の有無を判断しても良い。
【0084】
また、総到達時間ではなくて、1回の送受の到達時間を複数回(m回)繰り返して計測し、その総和ΣtiとΣtiとから流量を求める参考例1や2のものにおいても同様にして脈動との同期を避けて計測精度の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0085】
実施例3を図8と前記実施例の図4〜6を用いて説明する。この実施例は参考例6のもののうち、総到達時間を計測して流量演算を行うものに対応する。
【0086】
第2のカウンタ8の構成を図8に示す。順方向最大値と順方向最小値は演算部9に出力される。図7の説明と同様であるが、最小値ホールダ11は送信方向信号が順方向を示すときのみ総到達時間の最小値を検知記憶し、測定開始信号入力時は、全ビット1(カウントできる最大数)にセットされる。その値より小さな総到達時間があればその値を記憶し続けるため測定終了時は総到達時間の最小値を記憶していることになる。
【0087】
演算部9は、測定終了信号が測定制御部6より入力されると、順逆の総到達時間の総和とともに、この順方向最大値と順方向最小値を読み取り、順方向最大値の前回値との差を求め、(順方向最大値−順方向最小値)×1/4より大きいときは、制御部6へセットするサンプリング間隔を変更する。また、今回読み取った該最大値は、次回のための前回値として記憶する。
【0088】
また、演算部9において、(順方向最大値−順方向最小値)が一定値より小さいときは、制御部6へセットするサンプリング間隔を変更することで後述する請求項1〜8の実施例5,6とできる。
【実施例4】
【0089】
次に、参考例7と8のもののうち、総到達時間を計測して流量演算を行うものに対応する実施例を、図4〜6と図9に従って説明する。
【0090】
この実施例4における第2のカウンタ8の構成を図9に示す。最大値最小値ホールダ10,11は図8の場合と同じで順方向の最大値、最小値をホールドする。これらの出力は中間値出力部12に入力されていて、中間値出力部12は2つの入力の中間値を出力する。なお、中間値出力部12は加算器で構成されている。
【0091】
この中間値は比較器13のA入力に総到達時間カウンタの出力がB入力に入力されている。この比較器13の出力はA入力がB入力より大きいと“High”となる信号で、出力更新信号として入力されている方向信号と第n受信波検知信号で出力が更新されるようになっている。したがって、総到達時間カウンタがカウントアップする過程では出力は変化せず、あくまで順方向測定終了毎の結果を出力する。
【0092】
よって、比較器13の出力は、到達時間が中間値より小さいとき“High”、等しいか大きいとき“Low”となる。カウンタ14はこの出力の立ち上がりをカウントする。したが
って、出力されるカウント値は到達時間が中間値より小さくなる回数をカウントすることになる。増減という見方でいうと減の数をカウントするものとできる。
【0093】
回路の変更により、増をカウントするようにしても、増と減の両方をカウントするようにしても良い。
【実施例5】
【0094】
次に請求項1〜5の発明に対応する実施例5を説明する。この実施例は、流量計全体のハードウェアの構成は、図4(a)を使う。その動作を図11のフロー図に従って説明する。図4(a)自体の説明は前述の説明で詳記されているので、あらためて記述しない

【0095】
図11において、ステップ101で通常モードの測定を行う。この通常モードでは、所定のサンプリング間隔Tsで順方向と逆方向の総到達時間を一定の複数回(m回)計測する。順方向と逆方向の測定間隔Tsは、サンプリング間隔Tsに比較して小さい値に定める。そして、逆方向と次の順方向の測定間隔TsはTsに近い値に定める。換言すれば、
Ts≪Ts
Ts≒Ts
Ts≪Ts
に定める。
【0096】
連続した送受信回数は、順方向と逆方向それぞれについて、n=100回とし、所定のサンプリング間隔Tsを1秒としている。こうすることで、n=100回分の総到達時間を、順方向と逆方向の両方について、2秒のサンプリング間隔で計測し、定常時の流量を2秒毎に演算する。
【0097】
そして、ステップ101の通常モードでの前回値と今回値との差が一定以上かどうか判断し、一定以上の時、つまり一定より大きい時は、流量の変化があるので脈動があると判断して、ステップ105の脈動モードに移行する(切り替える)。なお、ステップ103では、ステップ101の通常モードで計測した前回の到達時間(厳密には総到達時間)と今回の到達時間(総到達時間)との差から判断しても良いし、到達時間(厳密には総到達時間)から演算した前回の流量と今回の流量との差から判断しても良い。要するに、前回の計測値である総到達時間又は流量と、今回の計測値である到達時間又は流量との差が一定以上であるかないかで判断する。これが一定以上でない時、即ち、小さい時は脈動がない定常流と判断してステップ101に戻る。
【0098】
ステップ105の脈動モードでは、サンプリング間隔Tsは56ms、連続する送受信回数nは4回、期間T間に行うサンプリング回数、即ち前記一定複数回のnは16回と定めている。従って、4回の総到達時間を16回のサンプリング回数まとめて計測した総到達時間の順方向と逆方向後との総和に基づいて流量を演算する。
【0099】
なお、この実施例5では、脈動モードにおけるサンプリング間隔Ts=56msの1/2の間隔でTsとTsが定めてあり、Ts=Ts=Ts/2としてある。こうすることで、脈動の1周期の1/2以下のサンプリング間隔をもたせて、流動変動の全体像を確実に捉えることができ、いわゆるシャノンの定理に沿って、計測精度を高めることが可能となる。
【0100】
本実施例では、2秒に1回通常モードによる定常測定か、脈動モードによる脈動時測定を行うが、ステップ103での差が一定以上の時は、再測定として脈動モードでの脈動測定を続けて実行することも可能である。実際に脈動であった場合、より正確な測定結果を得ることができる。またステップ103で流量変化を検知した結果を放棄し、変化前(即ち脈動が起こる前)の結果である前回値を採用することも可能である。
【0101】
ステップ105の脈動モードによる脈動時測定では、順方向と逆方向のそれぞれについて、連続したn=4回の繰り返し送受信で、サンプリング間隔56msで16回ずつ行うサンプリングの(送受信回数がn×m回)の総到達時間の総和から流量を演算するが、各サンプリング間隔毎に測定した総到達時間のうち順方向のみの最大値と最小値を基準発振部のクロック数で記憶するようになっている(ステップ106)。
【0102】
そして、その(最大値)−(最小値)が一定値より大きい時は、サンプリングが脈動に同期していないと判断して(ステップ107)、そのままのサンプリング周期56msで脈動測定を継続する。即ち、ステップ106からステップ105に戻る。また、ステップ107で(最大値)−(最小値)が一定値より大きくない時(小さい時)は、サンプリングが脈動と同期していると判断して、ステップ109に移行し、サンプリング間隔(周期)Tsを違う値16msに変更して脈動時測定を続ける。
【0103】
なお、ステップ106で、m回のサンプリング毎の最大値と最小値を、順方向だけについて記憶するようにし、それらの値の差が一定値以上のとき(ステップ107)に、同期していないと判断して脈動モード105に戻る条件にしたが、順方向と逆方向の両方向の最大値と最小値を記憶するようにして、(最大値)−(最小値)が順方向と逆方向の両方について、一定値より大きい時にサンプリングが脈動に同期していないと判断して、ステップ107からステップ105に戻るように条件付けをするようにすることもできる。このように順逆両方向の値に基づいて判断した方が精度良く判定できる。
【0104】
さて、ステップ109の脈動時測定の数値に基づき、(最大値)−(最小値)が一定以上に大きい時(ステップ111)は脈動があり同期を回避したと判断してサンプリング間隔はそのままでステップ105に戻る。また、(最大値)−(最小値)が一定未満の時は脈動はなく、定常流と判断してステップ101の通常モードに戻す。
【0105】
なお、上記説明では、ステップ103からステップ105に移行して、サンプリング間隔を56msに変え、ステップ107からステップ109に移行してサンプリング間隔を16msに変えたが、サンプリング間隔を上記説明と逆の関係、即ちステップ103からステップ105への移行で16ms、ステップ109で56msと定めても良い。
【0106】
サンプリング間隔Tsが56msの場合で、脈動の周波数が37Hz、Ts=Ts=Ts/2、サンプリング開始点が脈動の波の0点から脈動の周期の1/10の点である場合の流量波形(脈動波形)と順方向、逆方向の測定点(サンプリング点)との関係を図12に示す。この条件の場合、流量の真の平均値は0、脈動の振幅は1m3/hで、サン
プリング点が脈動と同期しているため測定値の平均は0.58m3/hとなった。なお、
図12で横軸は時間、縦軸は流量で、流量変動は正弦波状の脈動そのものであり、平均値は0である。同期のため、(最大値)−(最小値)は一定値未満である。この脈動を16msの間隔でサンプリングしたのが図13である。同期を回避して、脈動の最大と最小を捉えていて、(最大値)−(最小値)が脈動のP−Pの幅とほぼ同じになり、大きな値となっている。ここでは、脈動波形に対してサンプリング点がばらつくことで、脈動波形のいろいろな位相で測定することになり、測定値の平均を求めることで真の平均値が得られる。
【0107】
上記実施例では、56msと16msの2つのサンプリング間隔(周期)を用いたが、同じ脈動周期に2つともが同期することがないように選べば、他のサンプリング間隔の組み合わせでも問題ない。また、2つではなく、3つ以上のサンプリング間隔を用意して、3つのサンプリング周期のすべてで最大値と最小値の差が一定未満のときに通常モードに切り替えて、定常測定をするようにしてもよい。
【実施例6】
【0108】
次に、請求項6〜8に対応する実施例6を説明する。ハードウェアの構成は実施例5と同様に図4(a)を使う。その動作を図13〜15のフロー図に従って説明する。図14,15,16の各フロー図は全体のフローを分解した図で、図15は図14のaに、図16は図14のbに接続されるものである。
【0109】
本実施例でも流量変化やサンプリングの同期判断結果により測定モードを切り替えるもので、測定モードとして、通常モード、第1の脈動モード及び第2の脈動モードの3つを持つものである。
【0110】
通常モードは、脈動(流量変動)がないときの測定モードで、順方向逆方向の両方でそれぞれmが32回の繰り返し測定を実施し、その両方の総到達時間の総和より流量を求めるモードであり、第1の脈動モード、第2の脈動モードは、実施例では連続してn=4回の測定を順逆交互に等間隔(決められたサンプリング間隔)で各方向16回、計64回行い、各方向の総到達時間の総和より流量を求めるものである。第1の脈動モードと第2の脈動モードではサンプリング間隔が異なる。
【0111】
図14〜16のフロー16,15,14図に沿って説明する。このフローは、2秒に1回実行されるものである。上記3つのモードに相当する図16,15,14の3つの大きな流れに分けられている。
【0112】
1)通常モードからの切換
脈動のない(変動の小さい)ときは、図16の流れで、測定は通常モード(ステップ203)がセットされていて通常モードで測定を行う。
【0113】
脈動もしくは流量変化により前回値との差がある範囲を超えたとき流量変化ありと判断し(ステップ205)、測定方法を通常モードから第1の脈動モードに変更する(ステップ207)。
【0114】
このときの流量値は、脈動による変化の影響が考えられるため、前回値を採用することも可能である。超えない場合は流量変化無しとして、通常モードを継続する(ステップ209)。
【0115】
2)第1の脈動モードからの切換
脈動モードでは、1サンプリングであるn=4回の連続送受信の各総到達時間(実際は基準クロックのカウント値)のうち、順方向の最大値及び最小値と増減回数を記憶するようになっている。この点は実施例2と4に類似である。
【0116】
第1の脈動モードでは、フロー図において図15の流れとなる(ステップ211)。はじめに最大と最小の差が一定値より小さいと判断したとき(ステップ213)は定常流、またはサンプリングによる同期と考えられ、測定モードを第2の脈動モードに変更する(ステップ215)。
【0117】
差が一定値より大きい時は増減回数を確認し(ステップ215)、ある回数より多い場合は脈動をうまく捉えているものとして第1の脈動モードを継続する(ステップ217)。
【0118】
少ない場合は、脈動の周期が長く収束が遅いと考えられるが、第2の脈動モードから第1の脈動モードに変更されて測定を行った場合(ステップ219でYES)は、第1の脈動モードを優先し継続する(ステップ217)。
【0119】
通常のモードから変更された場合(ステップ219でNO)は第2の脈動モードに変更する。
【0120】
3)第2の脈動モードからの切換
第2の脈動モード(ステップ221)では図14の流れとなる。第1の脈動モード(図15のステップ211)と同様に最大値、最小値、増減回数が記憶されており、最大と最小の差が小さいとき(ステップ223でNO)は、第1の脈動モードで測定した最大、最小の差を確認(ステップ225)し、一定値より小さい場合は定常流と判断し、通常モードに変更する(ステップ227)。
【0121】
ステップ225において、第1の脈動モードで差が一定値より大きかったが増減数が少なかったため、第2の脈動モードに移行していた場合(ステップ225)は、第2の脈動
モードではサンプリングに同期しているものと判断し、第1の脈動モードに変更する(ステップ235)。
【0122】
第2の脈動モードでの差が大きいとき(ステップ223でYES)は、第1の脈動モードと同様に増減回数を確認(ステップ229)し、一定回数より多いときは第2の脈動モードを継続する(ステップ231)。
【0123】
回数が少ないとき(ステップ229のYES)は、第1の脈動モードで差が一定値より大きかったが増減回数が少なくて第2の脈動モードに移行していた場合(ステップ233のNO)には第1の脈動モードを優先し第1の脈動モードに変更する(ステップ235)、第1の脈動モードで差が一定値より小さくて第2の脈動モードへ移行していた場合(ステップ233のYES)は第2の脈動モードを維持する。
【0124】
本実施例では、総到達時間の増減回数が一定値以下の場合の時はサンプリングが脈動に同期していると判断しサンプリング間隔を切り替えるようにしているので、サンプリングの脈動同期に近い状態も検知できてサンプリング間隔を変更できるため、より効果的に脈動する流量の平均化が可能で、より精度の良い流量計測ができる。
【0125】
なお、この実施例6の場合も、前の実施例5と同様にTs=Ts=Ts/2に定めていて、計測精度を高めるようにしている。
【0126】
また、いずれの実施例も流量を時間的に積算してガス使用量を算出し、ガスメータとして活用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 流管
2,3 送受波器
4 送波器駆動部
5 受信波検知部
7 第1のカウンタ
8 第2のカウンタ
8A 総到達時間カウンタ
8a 順方向総到達時間総和カウンタ
8b 逆方向総到達時間総和カウンタ
9 演算部
10 最大値ホールダ
11 最小値ホールダ
13 比較器
14 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の到達時間の計測を、順方向と逆方向について行う流量計であって、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を所定のサンプリング間隔で行い、それらの到達時間に基づいて流量を演算する通常モードと、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を前記所定のサンプリング間隔と異なるサンプリング間隔で一定複数回(m回)繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和と、逆方向での超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和とに基づいて流量を演算する脈動モードとを具備し、
前記通常モードにおいて、一定以上の流速変化を認めたときに、通常モードから脈動モードに移行するとともに、
前記脈動モードにおいて、各到達時間の最大値と最小値の差が一定以下のときに脈動モードから通常モードに戻すことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
脈動モードにおいて、まず送信側の送受波器から超音波を送信し、受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると同時に再び送信側の送受波器から超音波を送信することを連続して一定回数(n回)繰り返して、最初の送信から一定回数(n回)目の受信までの総到達時間を計測するとともに、このようにして計測する総到達時間を前記到達時間として使用することを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項3】
複数の脈動モードを具備し、各脈動モードが異なるサンプリング間隔で超音波の到達時間の計測を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波流量計。
【請求項4】
通常モードのサンプリング間隔よりも、脈動モードのサンプリング間隔を短く定めたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の超音波流量計。
【請求項5】
通常モードの測定において、前回の測定値と今回の測定値との差が一定以上のときに脈動モードに移行することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れかに記載の超音波流量計。
【請求項6】
超音波の到達時間の計測を、順方向と逆方向について行う流量計であって、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を所定のサンプリング間隔で行い、それらの到達時間に基づいて流量を演算する通常モードと、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を前記所定のサンプリング間隔と異なる第1のサンプリング間隔で一定複数回(m回)繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和と、逆方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和とに基づいて流量を演算する第1の脈動モードと、
順方向と逆方向の超音波の到達時間の計測を前記所定のサンプリング間隔及び第1のサンプリング間隔とは異なる第2のサンプリング間隔で一定複数回(m回)繰り返し、こうして計測した順方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和と、逆方向の超音波の到達時間の一定複数回(m回)での総和とに基づいて流量を演算する第2の脈動モードとを具備し、
前記通常モードにおいて、一定以上の流速変化を認めたときに、通常モードから第1の脈動モードに移行するとともに、
各脈動モードにおいて、各到達時間の最大値と最小値の差及び各到達時間の増減回数に基づいてモードの切り替え又は継続を決めることを特徴とする超音波流量計。
【請求項7】
第1と第2の各脈動モードにおいて、まず送信側の送受波器から超音波を送信し、受信側送受波器の信号を入力とする受信波検知部が受信波を検知すると同時に再び送信側の送受波器から超音波を送信することを連続して一定回数(n回)繰り返して、最初の送信から一定回数(n回)目の受信までの総到達時間を計測するとともに、このようにして計測する総到達時間を前記到達時間として使用することを特徴とする請求項6記載の超音波流量計。
【請求項8】
通常モードの測定において、前回の測定値と今回の測定値との差が一定以上のときに脈動モードに移行することを特徴とする請求項6又は7記載の超音波流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−19858(P2010−19858A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245474(P2009−245474)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【分割の表示】特願2003−345454(P2003−345454)の分割
【原出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】