説明

超音波測定装置

【目的】本発明は、弾性表面波速度及びその変化を高速に測定でき、機械的な移動精度に関係しない単純な機構により弾性表面波速度またはその変化の試料表面分布が表示する超音波測定装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する音響レンズ21と、該音響レンズ21と試料の距離をデフォーカスさせた位置に固定するZステージ36と、少なくとも試料からの直接反射成分と再放射成分が音響レンズ21にて重なり合う継続時間を有し搬送周波数が可変であるバースト波を発生する発振器31と、前記音響レンズ21の受波信号強度を出力する受信器31と、前記バースト波の搬送周波数を制御演算部30の制御により変化させ前記受信器31の出力を蓄積するサンプル&ホールド回路40,41と、前記スペクトラム測定手段に蓄積されたスペクトラムを表示する表示部34とを具備することを特徴とする超音波測定装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は試料の微小部分の弾性的性質を超音波を利用して測定する超音波測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、収束された超音波を試料に入射させて、その試料からの反射波を受波して超音波画像を作成し、またはV(Z)曲線を利用して試料の微小部分のヤング率等の弾性的性質を測定する装置として超音波顕微鏡が知られている。図5に従来の超音波顕微鏡の構成を示す。
【0003】この超音波顕微鏡の超音波送受信部は、バースト波を発生する送信部1と、そのバースト波を信号として一方向(圧電トランスデューサ2方向および圧電トランスデューサ2から前置増幅器3方向)のみに通過させるサーキュレータ4、送受信信号を電気音響変換する圧電トランスデューサ2、超音波を収束させる音響レンズ5、超音波を伝播させるカプラ液体6とで構成されている。また、前記カプラ液体6に接するように試料7が、X−Y走査部8によってX−Y方向に移動可能な試料台9に載置される。前記音響レンズ5は、Z走査部10によって垂直方向(Z方向)に移動可能になっている。
【0004】この超音波送受信部により出力された反射信号は、前記前置増幅器3で増幅された後、ゲート部11により必要な反射信号が抽出され、ピーク検出部12に入力される。前記ピーク検出部12は、前記反射信号のピーク値をホールドし、その出力はA/D変換部13によりデジタル信号に変換され、メモリ14に格納される。前記メモリ14に格納されたデータは、コンピュータ15の制御によって、表示部16に画像として表示される。また、これらの構成部材は、制御部17によって動作を制御されている。このように構成された前記超音波顕微鏡の動作を図6のタイムチャートを参照して説明する。
【0005】まず制御部17から、送信トリガが、図6(a)に示すように送信部1に入力されると送信部1は、図6(b)に示すようなタイミングで、数百MHz〜数GHzの周波数の数十周期の高周波バースト波を発生する。発生した送信波は、サーキュレータ4を通って、圧電トランスデューサ2に印加される。前記圧電トランスデューサ2では、前記送信バースト信号が超音波に変換されて、音響レンズ5によって、微小スポットに収束されて、試料台9上に載置された試料7に入射させる。
【0006】前記試料7と音響レンズ5の間は、超音波の減衰を妨ぐためのカプラ液体6で満たされている。試料7に入射した超音波は、試料で反射されて、受信信号として再びカプラ液体6、音響レンズ5を通ってトランスデューサ2で電気信号に変換され、サーキュレータ4を通り前置増幅器3で増幅される。
【0007】この受信信号は、図6(c)に示すように送信漏れ、レンズ第一反射、試料反射、レンズ第二反射等を含むため、図6(d)に示すように、制御部17からレンズの内部反射を除くようなタイミングのゲート信号をゲート部11に入力して、ゲートをあけ、必要な反射信号のみを抽出する。
【0008】このように抽出された反射信号は、ピーク検波部12によって図6(e)に示すようにピークホールドされ、A/D変換部13でディジタル信号に変換した後、メモリ14に記録される。
【0009】以上のようにして得られる情報は、試料7の一点の情報だけである。つまり画像化するときは、前記X−Y走査部8によって超音波の入射方向(Z軸)に対して垂直な平面(X−Y平面)に音響レンズ、または試料を2次元走査して、前述した検出動作を繰り返し行い、2次元情報をメモリ14に記録し、表示部16に表示する。
【0010】また試料の弾性性質を測定する場合には、Z走査部10によって、音響レンズ5と試料7との間の距離を変化させて前記検出動作をX−Y平面上の一点に対して行うことで、V(Z)曲線が得られ、コンピュータ16によりフーリエ変換等の演算処理を行い弾性表面波音速を求める。
【0011】このような弾性表面波速度は、膜構造試料の場合は膜厚に、結晶構造を有する試料の場合は結晶の面指数と波の伝播方向に、応力場の存在する試料の場合は主応力の大きさによって変化する。例えば音弾性理論によると弾性表面波速度の変化は試料表面の主応力に比例する。
【0012】そこで、弾性表面波速度あるいはその変化を検出することにより、試料表面の応力あるいはその分布を測定することが可能になる。反射型超音波顕微鏡においては弾性表面波速度は、圧電トランスデューサ103が受波する受波信号の振幅と位相の両方に影響を与える。前記振幅による弾性表面波速度の測定が前記のV(Z)曲線法である。
【0013】前記V(Z)曲線法においては、機械的にZ軸方向に音響レンズを移動させる必要があるので後述する様々の問題が生ずる。そこで、前述したように試料表面の弾性表面波速度の分布を測定する際には、位相を検出する方法が良く用いられる。
【0014】例えば、K.K.Liang,S.D.Benett and G.S.Kino,“Precision Phase MeasurementwithShort Tone Burst Signals in AcousticMicroscopy”,Rev. Sci. Instrum. 57(3),March 1986,446−452.に提案されるように、試料に送波される収束超音波ビームのうち試料に垂直入射して反射される直接反射成分と弾性表面波を励起するような角度θSAW で斜入射し、試料表面を伝播した後再びθSAW で音響レンズに戻る再放射成分の位相差を、次のように求めている。音響レンズの焦点を試料に対しわずかにデフォーカスして固定する。
【0015】この試料からの直接反射成分と再放射成分が重ならない程度の短い継続時間を有するバースト波を送波し、受波信号において直接反射成分と再放射成分を時間ゲートで分離する。各々の信号に対し極めて狭帯域のフィルタリング処理をしてほぼ連続波とし、ロックインアンプで2成分の位相差を検出する装置が示されている。彼らはこの装置を用いて、ガラスに熱衝撃を加えて導入した応力の1次元の分布を得ている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来の超音波測定装置には次のような欠点があった。まず、V(Z)曲線法の欠点を列挙する。
【0017】(1)V(Z)曲線を得るには、音響レンズと試料の相対距離を変化させる必要がある。距離変化手段としては、例えばリニアモーションガイドで案内されたテーブルをパルスモータとボールネジで駆動するZステージが考えられる。こういった構造のステージの位置決め精度は1μm程度であり、弾性表面波速度vSAW=3430m/secの溶融石英を周波数ω/2π=400MHzで測定した場合のV(Z)曲線の変動周期ΔZ=18.6μmに対し5%の誤差を与えることになる。ステージの位置を測定するために、波長安定化レーザを光源に用い干渉器とコーナーキューブを組み合わせた干渉型測長器を使えば、ステージ位置の測定誤差は100nm以下とできるので比較的良好な精度のV(Z)測定が可能になる。しかし、上記のような干渉型測長器は大型でしかも高価であり実用的ではない。
【0018】(2)V(Z)曲線をフーリエ変換しそのスペクトラムのピーク周波数からΔZを求める前記の方法では、精密なピーク周波数を得るためにはピークの半値幅を狭くする必要がある。そこで音響レンズのデフォーカス量を大きくし、何周期ものV(Z)曲線の変動を測定することが行われる。上記の例で8周期の振動を観測するためには150μmのデフォーカス量が必要になる。焦点距離500μm、開口半角60°の音響レンズを用いたとき、試料表面のスポット径は500μmになり測定の局所性が著しく損なわれる。
【0019】(3)音響レンズを機械的に駆動するために1つのV(Z)曲線を得るのに1分程度の時間を要しており、弾性表面波速度の分布を得るには測定速度が十分でない。
【0020】(4)弾性表面波速度の1次元あるいは2次元分布を得るとき、当該の走査方向の軸に対しZ軸の垂直度を極めて高精度に保つ必要があり、ステージ構成が困難になる。
【0021】前述したLiang氏等に提案された装置を用いれば、前記(1),(2),(4)の問題点が解決できる。しかし、V(Z)曲線法は次の理由で測定速度が遅い。
【0022】前述したようにLiang氏等の装置では、短かな継続時間を有するバースト波を使って直接反射成分と再放射成分の位相差を測定しているが、数10MHzもの帯域幅を持つバースト波からわずかに100KHzの帯域幅で連続波を抜き出す。このため、前記連続波の振幅は非常に微弱なものになる。
【0023】そこで、ロックインアンプのローパスフィルタのカットオフ周波数を25Hzと低くしてSN比を大きくしなければならない。従って試料表面の所定箇所の位相差を検出するには少なくとも40msecの時間が必要になる。
【0024】そこで本発明は、弾性表面波速度及びその変化を高速に測定でき、機械的な移動精度に関係しない単純な機構により弾性表面波速度またはその変化の試料表面分布が表示する超音波測定装置を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する電気音響変換器と、前記集束超音波ビームを前記試料の表面にデフォーカスさせた位置に前記電気音響変換器と前記試料の距離を固定する高さ固定手段と、少なくとも前記試料からの直接反射成分と再放射成分が前記電気音響変換器にて重なり合う継続時間を有し搬送周波数が可変であるバースト波を発生する送信器と、直接反射成分と再放射成分の干渉部分の位相を測定する手段(スペクトラム測定手段または位相検波器)を有する超音波測定装置を提供する。
【0026】
【作用】以上のような構成の超音波測定装置では、試料と電気音響変換器との距離を変化させることなく弾性表面波速度またはその変化を高速に測定し、単純な機構により弾性表面波速度またはその変化の試料表面分布が表示される。また、弾性表面波速度またはその変化の測定には機械的な移動精度に関係せず、極めて高精度に測定される。
【0027】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0028】図1には、V(Z)曲線の一例を示し、本発明の概念を説明する。すなわち、本発明が基礎にしている位相ずれ量またはその変化量の検出の方法の理論的な背景及びこれらの量の物理的な意味について説明する。
【0029】この図1は、周波数400MHzのときの溶融石英に対するV(Z)曲線である。ここで、横軸はデフォーカス量Zとし、Z=0の時には、焦点が試料表面にある状態、Z<0の時には焦点が試料内部にある状態とする。縦軸は受波信号の振幅Vを示す。図1に示すV(Z)曲線の周期ΔZから、弾性表面波速度vSAW
【0030】
【数3】


となる(御子柴宣夫、生嶋明共編、「超音波スペクトロスコピー(応用編)」第7章超音波顕微鏡、培風館、1990、165頁参照)。ここで、vW :音響レンズと試料間に満たされる音響カプラの音速f:超音波の周波数
【0031】前記音響カプラに水を用いると、vW =1500m/secとなる。図1に示すV(Z)曲線に対して、f=400MHz,ΔZ=18.6μmとすると、(1)式により溶融石英の弾性表面波速度vSAW =3430m/secが得られる。
【0032】このようなV(Z)曲線における周期的な変動現象は、音響レンズの受波信号の直接反射成分と再放射成分の相対位相がZの変化に伴って変化し、結果として両成分の干渉振幅がZと共に変化するために起こる。音響レンズの材料の音速が無限大であるとし、音響レンズを試料表面に対しZ(<0)デフォーカスするとき、直接反射成分と再放射成分が音響レンズに到着する時間差Tは、
【0033】
【数4】


となる。また、(2)式に超音波の角周波数ωを乗ずると、両成分の相対位相差φが得られる。
【0034】
【数5】


また、θSAW はSnellの法則によって水の音速vW と試料の弾性表面波速度vSAW の比と関係付けられる。また、
【0035】
【数6】


(4)式を(3)式に代入し、(3)式中のcosθSAW をvSAW ,vW によって書き直すと、
【0036】
【数7】


となる。(5)式によれば、vSAW の変化ΔvSAW による直接反射成分と再放射成分の位相差の変化Δφは、
【0037】
【数8】


【0038】である。ここで、ω,Zは既知の量であり、θSAW つまりvSAW は、試料の一点で例えばV(Z)曲線法を用いて測定しておくことも可能であるし、弾性理論から導くことも可能であるから既知の量と考えることができる。
【0039】従って、両成分の位相差の変化を測定することによって、試料の弾性表面波速度の変化が分かる。この原理に基づいて弾性表面波速度の2次元分布を測定、表示する装置を後述する第3実施例にて提案する。
【0040】再び、V(Z)曲線に関して説明すると、直接反射成分と再放射成分の位相差φは(3)式に示すとおりZの変化に対して線形に変化する。従って、Zの変化に伴い、φ=−2nπ(n=1,2,…)が満たされる毎に周期的なVのディップが観測されることになる。その周期ΔZは周波数ω/2πを固定すると、
【0041】
【数9】


【0042】と一定になる。よって、Snellの法則(4)式を連立させると(1)式が得られる。この(7)式によれば、V(Z)曲線の周期は、周波数に反比例することが分かる。
【0043】図1に示したように、V(Z)曲線の各ディップに対して、|Z|の小さいものから順にD1 ,D2 ,…,Dk ,…とする。例えば、ω/2π=400MHzのとき、Z=−18.6μmにD1 が存在する。また周波数を上げて、ω/2π=800MHzとすると、Z=−18.6μmには、D2 が位置する。
【0044】以下同様に、Z=−18.6μmの位置には、400×kMHzの周波数に対してDk が存在する。すなわち、Z=−18.6μmのデフォーカス量に対し、Δω/2π=400MHzの繰り返しによりディップが観測される。
【0045】次に、ω/2π=400MHzに対して、Z=−37.2μmの位置にはD2が存在する。ω/2π=200MHzに対してはD1 が存在、ω/2π=600MHzではD3 の存在が観測される。すなわち、Z=−37.2μmではΔω/2π=200MHzの繰返しによりディップが観測される。以上のことから、(3)式から一般にデフォーカス量Zに対する繰返し周波数Δω/2πは、
【0046】
【数10】


となる。またΔω/2π=Δfと書くとき(8)式と(4)式から、
【0047】
【数11】


【0048】が得られ、Δfを求めれば弾性表面波速度が計算できることが分かる。試料の弾性表面波速度が大きいときは,(8)式のcosθSAW が大きくなるため、Δfも大きくなる。
(1+vW /2ZΔf)2 <<1と見なせる程度に弾性表面波速度が大きい試料に対しては(9)式を近似した
【0049】
【数12】


【0050】が成立する。そこで、デフォーカス量Zを固定したまま送信バースト波の搬送周波数fを変化させて、音響レンズの受波出力Vを測定すれば、その変動周期Δfから試料の弾性表面波速度を(9)式あるいは(10)式より求めることができる。以下では、この原理に基づく測定をV(f)曲線法と呼ぶことにする。V(f)曲線法を実現する装置を後述する第1実施例に提示する。
【0051】このようなV(f)曲線法では、周波数を連続的に変化させねばならないが、応力の測定の如く弾性表面波速度の変化を知るだけで良い応用に対しては、Δfだけ異なる2周波を送波することで十分である。音響レンズで検出される直接反射成分と再放射成分の重ね合わせとしての受波信号の振幅の絶対値2乗をとり、その干渉成分のみをVT (ω)とすると、
【0052】
【数13】


【0053】となる。ここでTは(2)式で与えられる両成分の時間差、R0 は直接反射成分の試料による反射率である。また励起される弾性表面波はRayleigh波であるとし、従って再放射成分の試料による反射率は1・exp[jπ]=−1であるとした。上記のV(f)曲線にてディップを与える角周波数のうち最低周波数をω0 (≠0)、ディップ間隔をΔωとする。またΔωを与えるような時間差をT0 とする。ω0 ,Δω,T0 の定義から、
【0054】
【数14】


が成立する。また2つの周波数ω0 及びω0 +Δωで干渉成分は(11),(12)式より、
【0055】
【数15】


【0056】となる。いま、試料の弾性表面波速度がΔvSAW だけ変化し、それに伴って時間差T0 がT=T0 +ΔTに変化したとする。このとき、受波信号の干渉部分
【0057】
【数16】


をΔT/T0 でティラー展開し、(12)式を考慮すると、
【0058】
【数17】


が得られる。(15)式と(14)式の差をとって、
【0059】
【数18】


とするとΔT/T0 =0の3次迄の精度で、
【0060】
【数19】


となる。(12)式によりω0 ,Δωを消去すると
【0061】
【数20】


【0062】と時間差の変化率の2乗に比例する強度が得られる。ここでR0 は定数なので、周波数ω0 とω0 +Δωの2点で受波信号強度を測定することにより、時間差の変化率を求めることができる。(6)式をωで割ることによって時間差の変化率は弾性表面波速度の変化率に比例することが分かる。この原理を応用して、弾性表面波速度の分布を測定する装置は後述する第2実施例に提示する。次に、図2に本発明による第1実施例の超音波測定装置の構成を示し、説明する。
【0063】まず、超音波送受信部を構成する音響レンズ21はロッド形状のZカットサファイアの片端面を凹球面に研摩され、反対側の端面には、ZnO等の圧電トランスデューサ22が設けられる。前記圧電トランスデューサ22には、発振信号及び受信信号を伝送するための高周波コネクタ23が接続される。
【0064】前記超音波送受信部は、円筒形の支持部材24内に固定される。この支持部材24は測定時には、音響カプラの水25で満たされた水槽26に没する試料27上に載置されるものであり、前記音響レンズ21と試料27の表面との距離は、試料表面に対する音響レンズ21のデフォーカス量が、Z(<0)になるように設置される。
【0065】前記高周波コネクタ23は、高周波スイッチ28の切り替え端子28aに接続される。前記高周波スイッチ28の端子Tには、例えばGaAsからなる高周波スイッチを多段に接続してアイソレーションを上げる構成にしたパルス変調器29に接続される。前記パルス変調器29には、コンピュータから成る制御演算部30により指定された周波数を発振する周波数可変可能な発振器31が接続され、発振された連続波が入力される。前記高周波スイッチ28の切り替え動作及び前記パルス変調器29の駆動は、制御演算部30によって、制御されている。
【0066】このパルス変調器30により、周波数1GHzで、80dB程度のON/OFF比、及び5nsec程度の立上り、立下り速度のパルス変調が比較的容易に実現できる。
【0067】また前記高周波スイッチ28の端子Rには、前記音響レンズ21からの受波信号(反射信号)を受信する受信器32が接続され、この受信器22からの出力は、A/D変換器33でデジタル信号に変換され、前記制御演算部30に入力するように接続されている。この受信器32は、高周波増幅器及び検波器から成り、超音波反射信号の振幅を出力する。前記A/D変換器33は、前記制御演算部30の命令により前記超音波反射信号の振幅をA/D変換し制御演算部30に渡す。そして前記制御・演算部はこのデータを処理しCRT等の表示部34に表示する。次に、このように構成された第1実施例の動作について説明する。前記発振器31は、制御演算部30によって指定された周波数fSTART 、例えば、300MHzの連続波を発生する。
【0068】前記パルス変調器29は、前記連続波から時間幅τ(例えば200nsec)のバースト波を切り出す。このバースト波は、T側に切換えられている高周波スイッチ28、高周波コネクタ23を介して圧電トランスデューサ22を励振する。前記圧電トランスデューサ22により発生した平面超音波は、音響レンズ21の凹球面部により収束超音波となって、試料27に投射される。前記音響レンズ21の焦点は、試料表面に対して、“Z”だけデフォーカスされているため、反射波は直接反射成分と再放射成分の2成分となる。
【0069】前記圧電トランスデューサ22は、前記2成分の重ね合わせから成る反射信号を出力する。前記反射信号は、高周波コネクタ23及びR側に切換えられている高周波スイッチ28を介して受信器32に入って増幅・検波された後、A/D変換器33にてディジタル信号となり、前記制御演算部30に周波数fSTART に対応する反射振幅V(fSTART )これをV0 とする形で記憶される。
【0070】次に前記制御演算部30は、発振器31の周波数をfSTEP(例えば1MHz)だけ上げてfSTART +1・fSTEPとして、前述した動作を行い、反射振幅V(fSTART +1・fSTEP)(以下、V1 と称する)を記憶する。以上のプロセスをn+1回繰り返すと、
【0071】
【数21】


が得られる。
【0072】ここでfSTOP=fSTART +nSTEPであり、例えばn=200なら5000MHzである表示部34にはこのグラフV(f)が表示される。また、制御演算部30では、
【0073】
【数22】


【0074】となるようなディップ周波数fi を検出し、隣り合うディップの周波数の差Δfを求め、(9)式から弾性表面波速度vSAWを計算するように構成し、表示部34に表示する。このような第1実施例の効果について述べる。
【0075】従来の弾性表面波速度vW を求めるV(Z)曲線法では、音響レンズのデフォーカス量Zを変化させるための精密なステージが必要であったのに対し、本実施例では“Z”を固定することができるため、センサ部が小型となる。従って、試料上にセンサ部を載置するだけの簡単な操作によって実現でき、同時に試料の大きさに影響されないという効果がある。
【0076】本実施例では、音響レンズ21の代わりに収束超音波を発生させる素子全てを使用することができる。例えば凹球面状に加工した圧電トランスデューサでも良いし、線収束型の音響レンズでも良い。また、Zステージを備えたV(Z)曲線用の装置でも、Zを固定することにより同様の送受信部及び信号処理法を使ってV(f)を測定できる。また、前記制御演算部30は、ディップ間周波数を求めるとしたがピーク間周波数を求めるようにしても良いことは明らかである。またV(f)曲線をフーリエ変換しそのピーク周波数を検出してV(f)曲線の変動周期を求める構成でも良い。Δfのデータから(9)式あるいは(10)式の計算を行い表示させる構成でも良い。
【0077】次に図3に第2実施例の超音波測定装置の構成を示し、説明する。ここで、第2実施例を構成する構成部材において、第1実施例と同等のものは、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。
【0078】超音波送受信部上に設けられたX走査部35は、例えば平行板バネで支持されたボイスコイル(図示せず)で構成され、音響レンズ21を50Hz程度の駆動電流の印加で1mm程度の振幅でX方向に、往復走査させる。
【0079】前記X走査部15上には、Zステージ36が設けられ、これはボールネジ駆動,リニアモーションガイド案内のメカニカルステージであり、前記X走査部35及び音響レンズ21を垂直方向(Z方向)に移動し、かつ固定することが可能なように構成される。さらに前記Zステージ36上にノブ37が設けられ、Zステージ36のボールネジに固定される。
【0080】また前記Zステージ36を固定する台座38上にY走査部39が設けられ、該Y走査部39は、パルスモータで駆動されるボールネジとリニアモーションガイドで案内される電動ステージで構成され、前記試料27をY方向に0.1mm/sec程度の速度で移動する。
【0081】そして、受信器32は、前記音響レンズ21からの反射信号を増幅した後、ダイオードによる2乗検波をする。次に第1サンプル&ホールド回路(以下、S&Hと称する)40及び、第2サンプル&ホールド回路(S&H)41は、それぞれ前記制御演算部30から指定された時刻に、前記受信器32の出力電圧を保持すると共に、前記第1S&H40,41の出力は、前記制御演算部30より、“0”にすることもできる。
【0082】前記演算器42は、前記第1S&H40と第2S&H41の出力電圧の差を算出した後、直接若しくは、その電圧差の平方根をとって、A/D変換器33に出力する。
【0083】前記制御演算部30は、前記A/D変換器33からの出力を記憶する画像メモリを内蔵し、表示部34に表示することも可能である。また走査駆動部43は、前記制御演算部30から指定される変位量をX走査部35、Y走査部39に与える。次に、このように構成された第2実施例の動作について説明する。
【0084】まず、試料27のV(f)曲線を測定する。そのために、X走査部35及びY走査部39を固定し、Zステージ36を用いて、音響レンズ21の焦点を試料27の表面に対し、Z(<0)だけデフォーカスして固定する。
【0085】前記制御演算部30は、前記第1S&H40の出力を“0”に設定すると共に、前記演算器42が平方根を演算しないモードに設定する。そして制御演算部30は、所定周波数を掃引しながら、前記第2S&H41で保持される反射信号強度を取り込むことによってV(f)曲線を測定する。さらにこのV(f)曲線の任意のディップ周波数ω0 及びディップ間隔Δωを計算し、第1段階を終了する。
【0086】次に、第1段階で測定した点に対する他の点の弾性表面波速度の変化を2次元表示する。このために、X走査部35、Y走査部39を駆動し、前記音響レンズ21が、試料27の表面を2次元走査するようにする。前記演算器42は、平方根を演算して出力するモードに設定する。
【0087】そして測定するための超音波の送受が、前記試料27の表面上の任意の各点で2回行なわれる。1回目は、前記制御演算部30が前記発振器31の周波数をω0 に設定して、ω0 に対する反射波の強度は、
【0088】
【数23】


となる。ただし、12 は再放射成分の反射率の絶対値2乗を意味する。この反射波の強度を第1S&H40が保持する。次に制御演算部30が発振器31の周波数をω0 +Δωに設定して、ω0 +Δωに対する反射波の強度は、
【0089】
【数24】


となり、この反射波の強度を第2S&H41が保持する。前記演算器42は、これら2信号の差
【0090】
【数25】


【0091】をとり、さらにその平方根を演算して、時間差の変化率|ΔT|/T0 |に比例する電圧を出力する(前記(16)式を参照する)。この電圧を前記A/D変換器33によってデジタル化し、前記制御演算部30の画像メモリに記憶する。以上の測定を前記X走査部35、前記Y走査部39を駆動しながら行い、試料27の表面における時間差の変化率分布を前記表示部34に表示する。ここで表示された画像は、(6)式から分かるように弾性表面波速度の変化の絶対値に比例したコントラストを持つ。次に第2実施例の効果について述べる。
【0092】この第2実施例では、弾性表面波速度の変化による、直接反射成分と再放射成分の音響レンズへの到着時間差の変化を、2つの異なる周波数での反射強度を測定するだけで検出可能とした。焦点距離500μmの音響レンズを使用したとき、送波から受波までに要する時間は、10μsec程度なので、640×480画素の時間差変化画像を10秒以内に得ることができる。これは前記のLiangらの装置(1点の受波信号の位相を得るための時間は40msec以上)に比べ1000倍以上の速度である。
【0093】第2実施例では、ω0 を最低ディップ周波数としたが、任意のディップ周波数としても良い。このとき(16)式の比例係数が変化するだけである。また同じ理由でω0 をV(f)曲線のピークを与える周波数の1つにしても良い。また同一種類の試料を多数測定する場合や試料の一部の弾性表面波速度が既知である場合には、制御演算部30にω0 ,Δωを記憶させておき、このパラメータにより画像化しても良い。このとき、画像化前のV(f)曲線の測定は不要となる。また図3において、
【0094】
【数26】


【0095】を求めるために、前記演算器42によるアナログ信号処理を使用したが、前記第1S&H40,第2S&H41の出力をそれぞれディジタル信号に変換し、異なる画像メモリに取り込んでも良い。このとき、画像メモリ間の演算すなわち差をとる演算と平方根をとる演算には、高速のディジタルシグナルプロセッサが利用可能である。
【0096】また第2実施例の構成では、“Z”を大きくとる程、試料によっては受信器の出力のSN比が悪化する。このときは、送波を同一周波数で複数回行ないボックスカー積分器等の平均化手段を受信器に設けても良い。
【0097】次に図4に第3実施例の超音波測定装置の構成を示し、説明する。ここで、ここで、第3実施例を構成する構成部材において、第2実施例と同等のものは、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。
【0098】この第3実施例の超音波測定装置において、高周波増幅器44は、反射信号を所望の電圧まで増幅する。例えば、試料27が完全反射体(反射率100%)のとき、50Ω終端時2Vp-p 程度の出力電圧が得られるように増幅率が設定される。
【0099】また、直交位相検波器45は、特開平3−182645号広報に述べられているもので、90°ハイブリッド,2個のダブルバランスミクサー及び2個のローパスフィルタで構成される。この直交位相検波器45への入力信号は、高周波増幅器44から出力された反射信号と発振器31から出力された参照波であり、該直交位相検波器45からの出力信号は、反射信号のうち参照波と同一位相の成分(インフエーズ成分)の振幅と90°位相がずれている成分(クォードラチュア成分)の振幅の2つである。
【0100】第3サンプル&ホールド回路(以下、第3S&H)46と、第4S&H47は制御演算部30の指示する同一のタイミングで、前記直交位相検波器44の出力電圧を保持する。そして、A/D変換器48とA/D変換器49は、前記第3S&H46と前記第4S&H47から出力された各出力電圧を例えば、8ビットのディジタル信号に変換する。ここで、前記A/D変換器48の出力信号をVI 、前記A/D変換器49の出力信号をVQ とする。よって、ROM50は、例えばアドレス16ビット、データ16ビットのROMであり、アドレスバスの上位8ビットにはVI 、下位8ビットにはVQ が入力される。また前記ROM50のアドレス(abcd)H には、
【0101】
【数27】


【0102】のデータを記録しておく。前記ROM50のデータは、前記制御演算部30の画像メモリのフレーム1に送られる。また、ROM51も例えばアドレス16ビット、データ16ビットのROMであり、アドレスバスの上位8ビットにはVI 、下位8ビットにはVQ が入力される。またROM51のアドレス(abcd)Hには、
【0103】
【数28】


【0104】のデータを記録しておく。前記ROM51のデータは、前記制御演算部30の画像メモリのフレーム2に送られる。前記制御演算部30は、画像メモリのフレーム1、フレーム2の画像を表示部34に表示する。次に、このように構成された第3実施例の動作について説明する。
【0105】まず、ノブ37を回転させて、Zステージ36を駆動し、音響レンズ21の焦点を試料27の表面に対して、Z(<0)だけデフォーカスさせた位置で、前記Zステージ36を固定する。
【0106】そして、前記制御演算部30は、発振器31の発振周波数を“ω”に固定する。この周波数ωは、例えば前記音響レンズ21に含まれる圧電トランスデューサ(図示せず)の厚さをt,音速をcとしたとき、C・2π/ω=2tとなるように設定する。
【0107】従って、前記周波数ωの連続波は、分配され、一方はパルス変調器29に入力されて、時間幅τのバースト波に変調される。この第3実施例でも試料27からの直接反射成分と再放射成分の干渉を利用するため、バースト波の時間幅τは、(2)式で与える両成分の時間差Tよりも大きく設定する。
【0108】前記発振器31の分配された出力の他方は、連続波の状態で、直交位相検波器45に入力され、位相検波の参照波として利用される。前記パルス変調器29から出力されたバースト波は、高周波スイッチ28を介して、音響レンズ21に入り、収束超音波となって試料27に放射される。また前記音響レンズ21は、“Z”だけデフォーカスされているため、その出力信号は、直接反射成分と再放射成分の重ね合わせとなり、それに帰因する位相変化((3)式にωを乗じた位相)を受ける。以下、これを反射信号と称する。
【0109】前記反射信号は、前記高周波スイッチ28を介して高周波増幅器44に入力され、所定の増幅率で増幅された後、前記直交位相検波器45によって、インフェーズ成分,クォードラチュア成分に分離される。各々の成分は、送信バースト波の時間幅τ程度(ω/2π=400MHzではτは数百nsec)の継続時間しか持たないため、第3S&H46,第4S&H47で振幅を保持された後、前記A/D変換器48、49によって、ディジタル信号VI ,VQ となる。
【0110】この両信号から、前記ROM50は反射信号の振幅Aを、前記ROM51は反射信号の位相φを出力し、それぞれ画像メモリのフレーム1,フレーム2に取り込まれ、X走査部35、Y走査部39を駆動しながら、前述した測定工程を繰り返す実施し、画像メモリのフレーム1には試料表面の振幅像A(x,y),フレーム2には試料表面の位相像φ(x,y)が蓄積される。
【0111】ここで、各φ(x,y)には、前記発振器31から出力された波が、反射波となって、前記直交位相検波器45に入力されるまでの伝播遅延時間による位相遅れが含まれる。
【0112】前記音響レンズ21のデフォーカス量Zが一定のとき、伝播遅延時間も一定である。φ(x,y)からこの一定量の位相遅れを引くことにより、純粋に直接反射成分と再反射成分の干渉効果の位相φI (x,y)をとり出すことができる。前記制御演算部30によって、前述し演算を行い、φI (x,y)を画像メモリのフレーム3(図示せず)に蓄積する。フレーム1(図示せず)及び前記フレーム3の内容は、前記表示部34に表示される。特に前記フレーム3を画像表示する、すなわち位相画像を表示すると、そのコントラストは、(6)式に示したように弾性表面波速度vSAW の変化率に比例したものである。次に第3実施例の超音波測定装置の効果を説明する。
【0113】第3実施例では、弾性表面波速度の変化による直接反射成分と再放射成分の音響レンズへの到着時間差に伴う位相情報を含む反射信号の振幅と位相を、1つの周波数で検出可能とした。第3実施例は、前述した第2実施例と同様に振幅像、位相像の両方を得るために必要な時間が、10秒以内と従来法に比べ非常に高速になる。
【0114】弾性表面波速度の変化率は、例えば試料に存在する応力に比例する。すなわち位相像は応力分布像に読み換えることができる。一方、超音波の振幅像は試料表面に存在するクラック等に敏感である。そこで、振幅像にてクラックを検出し、位相像にてクラックの周囲に発生している残留応力を測定するとにより、クラック進展の予測等材料の力学的な総合評価が可能になる。また、これまで述べてきた実施例では、測定の局所性を上げるために、デフォーカス量|Z|を小さくしなければならない。第1実施例及び第2実施例では、|Z|に反比例してΔfが大きくなってしまうため、前記|Z|を小さくすることが必然的に広帯域の圧電トランスデューサを要求することになる。
【0115】例えば、焦点距離500μm、開口半角60°、動作中心周波数600MHzの音響レンズと弾性表面波速度vSAW =3430m/sの溶融石英を用い、Z=−18.6μmとすると超音波のスポット径は約65μmになり、従来の問題点てあったスポット径に比べ約1桁の改善がなされる。但し、ディップ周波数は、400MHz,800MHz,…と400MHzきざみになり、音響レンズは少なくとも67%の比帯域幅を持たねばならない。一方、第3実施例では、動作周波数を1点に固定されるため、音響レンズの音響的、電気的な整合がとり易く高感度なシステムが実現できる。
【0116】さらに第2実施例においては、弾性表面波速度変化の絶対値のみが画像化されるのに対し、この第3実施例では、(6)式から分かるように、符号付で弾性表面波速度の変化を検出することができる。
【0117】また、試料が膜構造を有するときには一般化Lamb波と呼ばれる速度分散性のある表面波が励起される。第1実施例、第2実施例では周波数を変化させる必要があるため、膜構造を有する試料の弾性表面波速度の変化を解析するのは困難である。一方、本実施例では周波数を固定しているので、このような試料でも容易に解析することができる。
【0118】第3実施例においては、A/D変換器のインフェーズ出力とクォードラチュア出力をROM50とROM51によって、振幅Aと位相φに翻訳したが、画像メモリに4つのフレームを用意し、第1,第2のフレームにそれぞれインフェーズ出力とクォードラチュア出力を蓄積しても良い。このとき、高速のディジタル信号処理器を制御・演算部に内蔵し、第1,第2フレームのデータを振幅と位相に翻訳し第3,第4のフレームに蓄積すれば良い。また、直交位相検波器25の代わりに、参照波の位相を任意に変化する移相器と任意に変化された参照波と高周波増幅器の出力を乗算しローパスフィルターを通す位相検波器としても良い。このときには位相器の移相量を90°変化させて、各々の移相量に対し送受波を行うことで直交位相検波と同様の作用ができる。
【0119】さらに、試料面の弾性表面波速度の変化が小さいときは、走査開始点での位相検波器の出力を“0”にしておくことにより、走査時の位相検波器の出力は、直接位相の変化量であると見なすことができ、前述したROM等の翻訳手段が不要になる。また本発明は、前述した一実施例に限定されるものではなく、他にも発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0120】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、試料と電気音響変換器との距離を変化させることなく弾性表面波速度またはその変化を高速に測定することができる。このため単純な機構により弾性表面波速度またはその変化の試料表面分布を表示することが可能になる。また、弾性表面波速度またはその変化の測定には機械的な移動精度は関係しないので、極めて高精度な測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の概念を説明するためのV(Z)曲線の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例の超音波測定装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施例の超音波測定装置の構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施例の超音波測定装置の構成を示す図である。
【図5】図5は、従来の超音波顕微鏡の構成を示す図である。
【図6】図6は、従来の超音波顕微鏡の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…送信部、2,22…(圧電)トランスデューサ、3…前置増幅器、4…サーキュレータ、5,21…音響レンズ、6、25…カプラ液体、7,27…試料、8,35…X走査部、9…試料台、10…Z走査部、11…乗算部、12…ピーク検出部、13,33,48,49…A/D変換部、14…メモリ、15…コンピュータ、16,34…表示部、17…制御部、23…高周波コネク、24…支持部材、26…水槽、28…高周波スイッチ、29…パルス変調器、30…制御演算部、31…発振器、32…受信器、36…Zステージ、37…ノブ、38…台座、39…Y走査部、40,41,46,47…S&H、42,48,49…演算器、45…直交位相検波器、50,51…ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する電気音響変換器と、前記集束超音波ビームを前記試料の表面に対しデフォーカスさせた位置に前記電気音響変換器と前記試料の距離を固定する高さ固定手段と、少なくとも前記試料からの直接反射成分と再放射成分が前記電気音響変換器にて重なり合う継続時間を有し搬送周波数が可変であるバースト波を発生する送信器と、前記電気音響変換器の受波信号強度を出力する受信器と、前記バースト波の搬送周波数を変化し前記受信器の出力を蓄積するスペクトラム測定手段と、前記スペクトラム測定手段に蓄積されたスペクトラムを表示する表示手段とを具備することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項2】 請求項1記載超の前記スペクトラム測定手段は、スペクトラムの変動周期Δfを計算する演算器を含み、前記表示手段は前記変動周期を表示する部分を含むことを特徴とする超音波測定装置。
【請求項3】 請求項2記載の前記演算器は、スペクトラムのディップ間周波数及びピーク間周波数のいずれか一方を算出する周期算出部を具備し、前記受信器は平均化手段を具備することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項4】 請求2項記載の前記演算器は、スペクトラムをフーリエ変換するフーリエ変換部と該フーリエ変換部の出力のピーク周波数を検出するピーク検出部と該ピーク周波数の逆数をとる逆数演算部を含むことを特徴とする超音波測定装置。
【請求項5】 請求項2記載の前記演算器は、水の音速vW と前記集束超音波ビームのデフォーカス量|Z|を記憶するパラメータ記憶部と、関数演算
【数1】


及び、
【数2】


のいずれか一方を行なう関数演算部を含み、表示部は関数演算部の出力を表示する部分を含むことを特徴とする超音波測定装置。
【請求項6】 試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する電気音響変換器と、前記集束超音波ビームを前記試料の表面にデフォーカスさせた位置に前記電気音響変換器と前記試料の距離を調整自在に固定する高さ固定手段と、前記試料の表面に対向する面内にて前記電気音響変換器と試料の相対位置を変化させる走査手段と、少なくとも前記試料からの直接反射成分及び、再放射成分が前記電気音響変換器にて重なり合う継続時間を有し、搬送周波数が可変であるバースト波を発生する送信器と、前記電気音響変換器の受波信号強度を出力する受信器と、前記走査手段を停止させた状態で前記バースト波の搬送周波数を変化し前記受信器の出力を蓄積するスペクトラム測定手段と、該スペクトラム測定手段に蓄積されたスペクトラムの変動周期Δfを計算する演算器と、前記走査手段を駆動させた状態で前記試料の所定箇所に対し搬送周波数がΔf異なる複数のバースト波を前記送信器に送信させる周波数設定手段と、少なくとも各々のバースト波に対する前記受信器の出力の差をとる差動演算器と、該差動演算器の出力を蓄積する画像メモリと該画像メモリの内容を表示する表示部を有することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項7】 請求項6記載の周期Δf異なる複数の前記バースト波が、前記スペクトラムの隣り合うディップ周波数及び隣り合うピーク周波数のいずれか一方を前記搬送周波数とし、前記差動演算器が平方根演算を含み、前記受信器が平均化手段を備えることを特徴とする超音波測定装置。
【請求項8】 試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する電気音響変換器と、前記集束超音波ビームを前記試料の表面に対しデフォーカスさせた位置に前記電気音響変換器と前記試料の距離を調整自在に固定する高さ固定手段と、前記試料の表面に対向する面内にて前記電気音響変換器と試料の相対位置を変化させる走査手段と、少なくとも前記試料からの直接反射成分と再放射成分が前記電気音響変換器にて重なり合う継続時間を有し搬送周波数が可変であるバースト波を発生する送信器と、前記電気音響変換器の受波信号強度を出力する受信器と、変動周期Δfだけ異なる複数の周波数データを記憶するパラメータ記憶器と、前記走査手段を駆動させた状態で前記試料の1点に対し搬送周波数がΔf異なる複数のバースト波を前記送波器に送波させる周波数設定手段と、少なくとも各々のバースト波に対する前記受信器の出力の差をとる差動演算器と、該差動演算器の出力を蓄積する画像メモリと該画像メモリの内容を表示する表示部を有することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項9】 請求項8記載の前記パラメータ記憶器が周波数データを装置外部より入力する入力部と、前記受信器が平均化手段とを具備することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項10】 試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する電気音響変換器と、前記集束超音波ビームを前記試料の表面に対しデフォーカスさせた位置に前記電気音響変換器と前記試料の距離を調整自在に固定する高さ固定手段と、前記試料の表面と対向する面内にて前記電気音響変換器と試料の相対位置を変化させる走査手段と、少なくとも前記試料からの直接反射成分と再放射成分が前記電気音響変換器にて重なり合う継続時間を有し搬送周波数が可変であるバースト波を発生する送信器と、前記電気音響変換器の受波信号強度を出力する受信器と、前記走査手段を駆動させた状態で前記試料の所定箇所に搬送周波数が変動周期Δf異なる複数のバースト波を前記送信器に送信させる周波数設定手段と、少なくとも3つのフレームを具備する画像メモリと、該画像メモリの第1のフレームと第2のフレームにそれぞれ搬送周波数の異なるバースト波に対する前記受信器の出力を選択的に蓄積する受波信号選択手段と、前記画像メモリの第1のフレームと第2のフレームのデータを演算して第3のフレームに蓄積するディジタル信号処理器と、前記画像メモリに蓄積された画像を表示する表示手段を有することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項11】 請求項10記載の前記ディジタル信号処理器は差演算及び平方根演算のいずれか一方を含み、前記受信器が平均化手段を備えることを特徴とする超音波測定装置。
【請求項12】 試料に集束超音波ビームを送波し、該試料からの反射超音波ビームを受波する電気音響変換器と、前記集束超音波ビームを前記試料の表面に対しデフォーカスさせた位置に前記電気音響変換器と前記試料の距離を調整自在に固定する高さ固定手段と、前記試料の表面に対向する面内にて前記電気音響変換器と試料の相対位置を変化させる走査手段と、高周波連続波を発生する発振器と、少なくとも前記試料からの直接反射成分と再放射成分が前記電気音響変換器にて重なり合う継続時間を有するバースト波に前記高周波連続波の一部を変調するパルス変調器と、前記電気音響変換器の受波信号を増幅する高周波増幅器と、前記高周波連続波の他の一部を参照波とし前記受波信号の少なくとも位相を検出する検出器と、前記走査手段を駆動させた状態で少なくとも前記位相を蓄積する画像メモリと、前記画像メモリに蓄積された画像を表示する表示手段を具備することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項13】 請求項12記載の前記検出器が、検出された位相から一定量の位相を差し引く演算器と、前記受信器が平均化手段とを具備することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項14】 請求項12記載の前記検出器は、直交位相検波器であり、画像メモリは少なくとも3つのフレームとディジタル信号処理器を有し、前記画像メモリの第1のフレームは前記直交位相検波器のインフェーズ出力を蓄積し第2のフレームは前記直交位相検波器のクォードラチュアフェーズ出力を蓄積し、前記ディジタル信号処理器は第1フレームと第2フレームのデータの比演算、Arctan演算及び符号判定に従う±πの加算を行い第3のフレームに蓄積することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項15】 請求項12記載の前記検出器は直交位相検波器であり、画像メモリは少なくとも4つのフレームとディジタル信号処理器を有し、前記画像メモリの第1のフレームは前記直交位相検波器のインフェーズ出力を蓄積し第2のフレームは前記直交位相検波器のクォードラチュアフェーズ出力を蓄積し、前記ディジタル信号処理器は第1フレームと第2フレームのデータの2乗和の平方根をとって第3のフレームに蓄積しかつ第1フレームと第2フレームのデータの比演算、Arctan演算及び符号判定に従う±πの加算を行い第4のフレームに蓄積することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項16】 請求項12記載の前記検出器は、直交位相検波器と該直交位相検波器の各出力をディジタル化するAD変換器と少なくとも2バイトのアドレスバスを有する少なくともROM手段を具え、該アドレスバスの各バイトにはそれぞれAD変換器のインフェーズ出力、クォードラチュアフェーズ出力が接続されかつ前記ROM手段のデータは対応するアドレスの上位バイトと下位バイトの比に対しArctan及び符号判定に従う±πの加算をされたものであることを特徴とする超音波測定装置。
【請求項17】 請求項12記載の前記検出器は、直交位相検波器と該直交位相検波器の各出力をディジタル化するAD変換器と、少なくとも2バイトのアドレスバスを有するROM手段を備え、各ROM手段のアドレスバスの各バイトには、それぞれAD変換器のインフェーズ出力、クォードラチュアフェーズ出力が接続され、第1のROM手段のデータは対応するアドレスの上位バイトと下位バイトの2乗和の平方根であり、第2のROM手段のデータは対応するアドレスの上位バイトと下位バイトの比に対しArctan及び符号判定に従う±πの加算をされたものであることを特徴とする超音波測定装置。
【請求項18】 請求項12記載の前記検出器は、移相量が可変の移相器と該移相器の移相量を設定する位相設定手段と位相検波器を備え、参照波は前記移相器に入力されることを特徴とする超音波測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−126806
【公開日】平成5年(1993)5月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−285077
【出願日】平成3年(1991)10月30日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)