説明

超音波美容装置

【課題】振動板を安全かつ安定に振動動作する超音波美容装置を提案する。
【解決手段】使用者が分割抽出回路において指定した超音波振動子の振動レベルになるように、超音波出力設定回路の出力設定信号によって発振回路の超音波駆動出力を制御するようにしたことにより、簡易な構成によって超音波振動子を安全かつ安定な振動レベルで振動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波美容装置に関し、特に超音波振動を与えるプローブを安定に動作させるものである。
【背景技術】
【0002】
この種の超音波美容装置として、美容処理を受ける被施術者の肌に直接接触する金属性振動板を、ピエゾ素子などの振動子を用いて超音波振動させるプローブを有し、当該プローブによって美容処理を受ける被施術者の肌に超音波振動を与えることにより美容効果を得るようにしたものが用いられている。
【0003】
ところがこのプローブは、振動板が肌に接触している時には振動振幅が小さいので、振動子の電気的インピーダンスが大きくなるのに対して、肌に接触しなくなると振動板の振動振幅が最大になるため振動子の電気的インピーダンスが激減するような状態になり、これを放置すると、金属性振動板が加熱することになる。
【0004】
この振動板の加熱を防止する手法として、特許文献1に記載のように、金属板が肌に接触していない時これを検出して超音波振動子の駆動レベルを低い値に設定するのに対して、振動板に肌が接触した時超音波振動子に対する駆動レベルを大きくするようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特開平11−114000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところがこの従来の構成は、振動板が肌に接触しているか否かを検出して振動子の駆動レベルを切り換える構成が複雑であると共に、振動板の振動レベルを大きく変化させるため安定動作の点で問題がある。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、簡略な電気回路を用いて超音波振動子を常に安定に駆動することができるようにした超音波美容装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、被施術者の肌に接触する振動板12を振動させる超音波振動子13を有する超音波美容装置1において、超音波振動子13に超音波駆動出力を供給する発振回路42と、超音波駆動出力を分割抽出処理することにより超音波振動子13の振動レベルを指定する抽出信号S2を得る分割抽出回路43と、抽出信号S2のピークを検出してピーク検出信号S3を得るピーク検出回路44と、ピーク検出信号S3に応じて発振回路42に対して超音波駆動出力を指定された振動レベルに制御する出力指定信号S4を得る超音波出力設定回路45とを設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分割抽出回路において予め設定した超音波振動子の振動レベルになるように、超音波出力設定回路の出力設定信号によって発振回路の超音波駆動出力を制御するようにしたことにより、簡易な構成によって超音波振動子を常に安全かつ安定な振動レベルで振動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0010】
図1及び図2において、1は全体として美容ユニットを示し、絶縁性断面U字状縦長のケース本体部2Aの前表面に長方形状の絶縁性パネルシート部2Bを形成したケース2を有する。
【0011】
パネルシート部2Bの上側部分には、円筒状プローブ3が前方に突出するように設けられていると共に、当該プローブ3の上側位置にこれと隣接するようにミスト噴霧開口4が穿設されている。
【0012】
プローブ3は図3に示すように、ケース2のパネルシート部2Bに取り付けられた絶縁性台部材11の先端に、肌に美容効果を与える振動板として、チタニウム金属材料でなる円形キャップ状のヘッド部12が接合部12Aによって嵌め込み及び接着により保持されている。
【0013】
ヘッド部12の内側にはピエゾ素子でなる超音波振動子13が取り付けられ、そのリード線13Aを介して超音波振動駆動回路41から1.4〔MHz〕の超音波駆動電流SOUTが与えられたとき、超音波振動子13がヘッド部12と一体に振動するようになされている。
【0014】
ミスト噴霧開口4は、ケース2のパネルシート部2Bと上面板部2Cとが連接する角部を前上方から削り落とすことにより、前方から見たとき卵型形状を呈するような凹形状の内壁面4Aを形成している。
【0015】
この凹形状の内壁面4Aの奥行き方向の突き当たり部分に、断面円形の透孔4Bが形成され、この透孔4B内に噴霧機15のノズル15Aの噴霧口部材15Bが配設されている。
【0016】
かくして噴霧機15はノズル15Aの噴霧口部材15Bからミスト噴霧開口4を通して円錐形状の噴霧ミストを放射し、これを被施術者の肌に噴霧することにより、肌に化粧水を与えながらプローブ3のヘッド部12における超音波振動美容処理及び又はイオン導入処理を行うことができるようになされている。
【0017】
この実施の形態の場合、ケース2のパネルシート部2Bの下側部分には、動作モード選択ボタン35と、液晶表示部材で構成された動作モード表示部36とが設けられ、動作モード選択ボタン35を構成する電源ボタン35Aと、肌に噴霧ミストを噴霧するミストモードボタン35Bと、肌に超音波振動を与える超音波モードボタン35Cと、肌にイオン導入電流を与えるイオン導入モードボタン35Dとを操作することにより、美容処理モードを選択できるようになされている。
【0018】
超音波振動子13のリード線13Aは図4に示す超音波振動駆動回路41に接続され、これにより超音波モードボタン35Cが操作されたとき、超音波振動子13を振動動作させる。
【0019】
超音波振動駆動回路41は、NPN型バイポーラトランジスタでなる発振動作用トランジスタQ1を含む発振回路42を有し、発振動作用トランジスタQ1のエミッタ及びアース間に直列に接続されたインダクタンスL2及びL1と、発振動作用トランジスタQ1のベース接続抵抗R3及びアース間に直列に接続されたコンデンサC3及びC1とによって発振動作用トランジスタQ1のベースに対する正帰還回路を形成することにより発振回路を構成している。
【0020】
インダクタンスL1及びL2の接続中点P1はコンデンサC1及びC3の接続中点に接続され、当該接続中点P1から直流阻止用コンデンサC2及び出力端子T1及びT2を介しさらにリード線13Aを介して、発振動作用トランジスタQ1から与えられる超音波駆動電流SOUTを超音波振動子13に与える。
【0021】
接続中点P1の電圧は、超音波駆動電流SOUTによる超音波振動子13の駆動レベルを表す駆動出力信号S1として分割抽出回路43の固定抵抗R11の一端に与えられる。
【0022】
分割抽出回路43の固定抵抗R11の他端は、半固定抵抗でなる分割比率設定抵抗R12を通してアースに接続され、これにより駆動出力信号S1を分割比率設定抵抗R12と固定抵抗R11との抵抗比に対応する分割比率で分割した値の抽出信号S2を抽出し、この抽出信号S2をピーク検出回路44に与える。
【0023】
ピーク検出回路44は、抽出信号S2をコンデンサC11を介してアノードをアースに接続されたダイオードD11のカソードに与えると共に、整流用ダイオードD12のアノードに与える。
【0024】
整流用ダイオードD12のカソードはコンデンサC12及び抵抗R13でなる平滑回路に与えられ、これにより平滑回路の出力端に抽出信号S2のピーク電圧を表すピーク検出信号S3を得、これを超音波出力設定回路45に与える。
【0025】
超音波出力設定回路45は、エンハンスメント型電界効果トランジスタでなる出力設定用トランジスタQ11を有し、そのドレインを電源接続用抵抗R1を介して電源+B1に接続すると共に、ソースをアースに接続し、これにより電源接続用抵抗R1及び出力設定用トランジスタQ11のドレイン及びソース間抵抗によって電源+B1を分圧してなる出力設定信号S4を出力設定用トランジスタQ11のドレインに得る。
【0026】
かくして出力設定用トランジスタQ11のドレインに得られる出力設定信号S4は、ドレイン及びアース間に接続されたコンデンサC4と、直列接続された出力用抵抗R2及びインダクタンスL3とでなる出力回路を通じて発振回路42の発振動作用トランジスタQ1のベース接続抵抗R3に、動作点電位を指定する電圧信号として与えられる。
【0027】
以上の構成において、超音波振動駆動回路41は、分割抽出回路43の分割比率設定抵抗R12の設定抵抗値によって設定された値によって決まる目標出力レベルの超音波駆動電流SOUTをコンデンサC2を介して超音波振動子13に与える。
【0028】
この目標出力レベルは、超音波振動子13が設けられているヘッド部12に被施術者の肌が接触しているとき(このときヘッド部12の振動振幅は小さくなるので超音波振動子13のインピーダンスが大きい状態になる)、超音波振動子13が肌に対して適正な美容効果を与えるような振動レベルで振動するように選定されている。
【0029】
ここで、分割抽出回路43の分割比率設定抵抗R12の値は、目標出力レベルとして適正な超音波振動をヘッド部12から肌に与えることができる駆動出力信号S1が得られるような分割比率になるように予め設定される。
【0030】
分割比率設定抵抗R12によって設定された分割比率で駆動出力信号S1を分割することにより抽出された抽出信号S2のピーク値は、ピーク検出回路44においてピーク検出信号S3として検出されて超音波出力設定回路45の出力設定用トランジスタQ11に与えられる。
【0031】
このときの出力設定用トランジスタQ11のドレイン及びソース間抵抗と電源接続用抵抗R1との分割比に応じた電圧値の出力設定信号S4が、発振回路42の発振動作用トランジスタQ1のベースにその発振動作の動作点を設定する電圧として与えられ、その結果発振動作用トランジスタQ1は分割比率設定抵抗R12によって設定された分割比率に応じた値の超音波駆動電流SOUTを超音波振動子13に流し、これにより超音波振動子13はプローブ3のヘッド部12を介して被施術者の肌に対して出力目標値に見合った超音波振動によって美容処理を行う。
【0032】
この状態においてプローブ3のヘッド部12が被施術者の肌から離れると、ヘッド部12の負荷が軽くなることにより、超音波振動子13の振動振幅が大きくなるためその電気的インピーダンスが小さくなる。
【0033】
このとき発振動作用トランジスタQ1を通って電源+B0から超音波振動子13に流れる駆動電流が大きくなろうとする(その結果超音波振動子13の発熱量が増大しようとする)。このとき駆動出力信号S1の信号レベルが上昇することによりピーク検出回路44のピーク検出信号S3の電圧値が上昇する。
【0034】
しかしながらこのときピーク検出信号S3の上昇に伴って出力設定用トランジスタQ11のドレインソース間抵抗が低下するので、出力設定信号S4の電圧値が低下し、これが発振回路42のベース電位(従って発振動作用トランジスタQ1の動作点)を低下させることにより、電源+B0から発振動作用トランジスタQ1を流れる電流が抑制される。
【0035】
かくして超音波振動子13に流れる電流が抑制されると、駆動出力信号S1の電圧値が出力目標値に戻されることにより、ピーク検出回路44のピーク検出信号S3も出力目標値に見合った電圧値に抑制され、これにより出力設定用トランジスタQ11のドレイン・ソース間抵抗の低下も抑制される。
【0036】
かくして超音波振動駆動回路41は、超音波振動子13に対する負荷の変動に応じて発振動作用トランジスタQ1に流れる超音波駆動電流をフィードバック制御することができ、その結果超音波振動子13には、常に、分圧抽出回路43の分圧比率設定抵抗R12の設定値によって決まる出力目標値に見合った電流が流れるように、制御されることになる。
【0037】
かくして上述の構成によれば、美容ユニット1を用いて超音波振動モードで美容処理をする際に、プローブ3を肌に接触させたり離したりすることにより、プローブ3のヘッド部12を介して超音波振動子13に対して与えられる負荷の変動があったとしても、超音波振動子13に流れる超音波駆動電流を、常に、プローブ3のヘッド部12が肌に接触している状態と同じ振動動作状態に安全かつ安定に保持させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は超音波振動子を用いた超音波美容装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態による美容ユニットを示す斜視図である。
【図2】図1の美容ユニットの正面図である。
【図3】図1のプローブ3の詳細構成を示す部分的断面図である。
【図4】超音波振動駆動回路を示す電気的接続図である。
【符号の説明】
【0040】
1……美容ユニット、2……ケース、2A……ケース本体部、2B……パネルシート部、2C……上面板部、3……プローブ、4……ミスト噴霧開口、4A……内壁面、11……台部材、12……ヘッド部、12A……接合部、13……超音波振動子、13A……リード線、15……噴霧機、15A……ノズル、15B……噴霧口部材、41……超音波振動駆動回路、42……発振回路、43……分割抽出回路、44……ピーク検出回路、45……超音波出力設定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の肌に接触する振動板を振動させる超音波振動子を有する超音波美容装置において、
上記超音波振動子に超音波駆動出力を供給する発振回路と、
上記超音波駆動出力を分割抽出処理することにより上記超音波振動子の振動レベルを指定する抽出信号を得る分割抽出回路と、
上記抽出信号のピークを検出してピーク検出信号を得るピーク検出回路と、
上記ピーク検出信号に応じて上記発振回路に対して上記超音波駆動出力を上記指定された振動レベルに制御する出力指定信号を得る超音波出力設定回路
とを具えることを特徴とする超音波美容装置。
【請求項2】
被施術者の肌に接触する振動板を振動させる超音波振動子を有する超音波美容装置において、
発振動作用トランジスタを有し、上記発振動作用トランジスタの発振出力電流を上記超音波振動子に供給する発振回路と、
上記発振出力電流に対応する駆動出力信号を受けて予め設定された分割比率で抽出して抽出信号を得る分割抽出回路と、
上記抽出信号のピークを検出してピーク検出信号を得るピーク検出回路と、
上記ピーク検出信号に応じて上記発振動作用トランジスタに対する動作点設定電圧を得る超音波出力設定回路と
を具えることを特徴とする超音波美容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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