説明

超高強度コンクリート用骨材の選定方法

【課題】超高強度コンクリートを得るのに適した骨材を
効率的に得る。
【解決手段】採石場における骨材原石から砕石サンプルを5個以上採取し、当該各サンプルに切断平面を設け、その切断平面を研磨することにより研磨面とし、その研磨面について切断平面の縁から2mm以上離れた領域にISO 14577に従う微小硬度計を用いて圧子を押し込む手法により、各サンプルの単位損傷抵抗荷重(N/μm)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重を求め、前記平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μmとなる場合に、当該採石場で採取された前記砕石サンプルと同種の骨材原石から得られた骨材を超高強度コンクリート用骨材として選定する超高強度コンクリート用骨材の選定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮強度が180N/mm2程度以上の超高強度コンクリートを得るのに適した骨材を効率的に選定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高強度コンクリートを製造する場合、使用する骨材の機械的特性によってコンクリートの強度レベルに影響が生じやすいことが知られている。そのため、高強度コンクリートの強度レベルを精度良く管理するためには骨材の選定を適正に行うことが重要となる。特許文献1には高強度コンクリート用の粗骨材の選定方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−212933号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】桜本文敏、ほか2名、「超高強度コンクリートに関する開発研究(その3)」、日本建築学会大会学術講演梗概集、1990年10月、p.495−496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術によれば、高強度コンクリートの圧縮強度に応じて、適切な粗骨材を簡易に選定することができるという。しかしながら、特許文献1の手法では各種粗骨材の原石からコアボーリングにより圧縮強度試験片(例えばΦ50×100mm)を採取して、原石自体の圧縮強度を測定する必要がある。原石からこのような試験片を採取することには多大な労力とコストを要する。特に圧縮強度が180N/mm2程度以上の超高強度コンクリートの場合は、骨材品質のバラツキがコンクリートの強度に大きな影響を与えることから、信頼性の高い測定結果を得るためには多数のコアサンプルを確保する必要があり、特許文献1の手法を採石場や砕石工場で実施することは必ずしも容易ではない。
【0006】
本発明は、超高強度コンクリートの製造に適した骨材を、採石場や砕石工場にて精度良く効率的に選定する技術を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは詳細な研究の結果、採石場でサンプリングされた砕石サンプルについて、微小硬度計により求まる物性値を測定することによって、その砕石が圧縮強度180N/mm2程度以上の超高強度コンクリートに適したものであるかどうかを迅速かつ精度良く判定できることを見出した。
【0008】
すなわち上記目的は、ある採石場における骨材原石から砕石サンプルを5個以上採取し、当該各サンプルに切断平面を設け、その切断平面を研磨することにより研磨面とし、その研磨面について切断平面の縁から2mm以上離れた領域にISO 14577に従う微小硬度計を用いて圧子を押し込む手法により、各サンプルの単位損傷抵抗荷重(N/μm)、好ましくは更に押込み弾性係数(N/mm2)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重、好ましくは更に平均押込み弾性係数を求め、前記平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μmとなり、好ましくは更に前記平均押込み弾性係数が50×103〜75×103N/mm2となる場合に、当該採石場で採取された前記砕石サンプルと同種の骨材原石から得られた骨材を超高強度コンクリート用骨材として選定する超高強度コンクリート用骨材の選定方法によって達成される。
【0009】
上記の平均単位損傷抵抗荷重や平均押込み弾性係数の値を当該原石の代表値として決定する際の精度を高めるためには、1つのサンプルにつき下記条件1、2を満たすように配置された9箇所以上の測定点で単位損傷抵抗荷重(N/μm)あるいは更に押込み弾性係数(N/mm2)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重あるいは更に平均押込み弾性係数を求めることがより効果的である。
〔条件1〕ある測定点Aから最近接測定点までの距離を、測定点Aの最近接測定点間距離Lminと呼ぶとき、全ての測定点のLminが2.0mm以下であること。
〔条件2〕切断平面上において互いに直交するx方向およびy方向を定め、x方向における測定点の分布幅をWx、y方向における測定点の分布幅をWyとするとき、x方向をどのように定めても、Wxが3.0mm以上、かつWyが3.0mm以上となること。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、採石場で採取された骨材原石が圧縮強度180N/mm2程度以上の超高強度コンクリートの製造に適したものであるかどうかを、採石場あるいは砕石工場で迅速かつ精度良く判定することが可能となった。砕石の機械的特性の測定には規格化された微小硬度計を用いるため、測定試料の準備工程ではコア抜き等の煩雑な作業が不要となる。また、コア抜きによる圧縮試験片の作製を考慮する必要がないため、用意するサンプルも比較的サイズの小さい砕石を利用することができる。これにより、超高強度コンクリートの調合設計および製造計画の過程が大きく合理化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】樹脂に埋め込まれたナノインデンテーション試験用試料の測定面を模式的に例示した図。
【図2】切断平面における測定点の配置例を示した図。
【図3】ナノインデンテーション試験によって求めた平均単位損傷抵抗荷重および平均押込み弾性係数と、得られたコンクリートの圧縮強度の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、ナノインデンテーション試験により砕石サンプルの機械的特性を測定し、その測定結果に基づいて超高強度コンクリート用粗骨材に適しているかどうかを判定する。ナノインデンテーション試験は、ダイヤモンド等の硬質材料からなる微小な圧子(コーン)を被測定材料の表面に一定の荷重で押しつけ、押し込み深さと、押し込み後に残る圧痕の深さから被測定材料の表層部付近における硬さや弾性率を評価する試験である。測定装置としてはISO 14577に従う微小硬度計を利用する。この種の微小硬度計は圧子の変位量がナノメートルオーダーで制御できる性能を有し、従来から主として金属材料、ファインセラミックス、薄膜試料などの機械的特性を調べる目的で利用されている。
【0013】
コンクリート用骨材をはじめとする天然岩石は、ファインセラミックス等の工業生産物とは異なり、材料の機械的特性は測定部位によって大きく変動する。すなわち、天然岩石からなる骨材は「不均質材料」である。そのため、コンクリート用骨材の機械的特性を微小硬度計による測定結果で代表させることには無理があると考えられており、従来、微小硬度計による骨材の評価は実施されてこなかった。
【0014】
しかしながら発明者らは、詳細な検討の結果、砕石サンプルの機械的特性をナノインデンテーション試験によって測定する際に、測定点の数および分布状態を適切に設定すれば、当該サンプルを代表する信頼性の高い測定結果を定めることが可能であることを見出した。また、その測定結果に基づいて、圧縮強度180N/mm2以上の超高強度コンクリートの製造に適した骨材であるかどうかを精度良く評価することが可能であることを確認した。
具体的には以下のような手法にて機械的特性の測定および評価を行う。
【0015】
〔砕石サンプルの採取〕
ある採石場における骨材原石から砕石サンプルを5個以上採取する。各砕石サンプルは、評価対象となる範囲の骨材原石から無作為に採取する。砕石工場で粗骨材用に調整された砕石の中からサンプリングしてもよい。採取する砕石サンプルのサイズは50mm2以上の切断平面が確保できる大きさとすることが望ましい。砕石サンプルの数が5個未満だと、当該骨材原石の特性を代表する機械的特性値を定める上で、十分な信頼性を確保できない場合がある。
【0016】
〔測定試料の作製〕
砕石サンプルを砥石カッターなどによって用いて切断し、切断平面を形成する。その際、後述の条件1、2を満たす測定点配置が可能で、かつ、切断平面の縁から各測定点まで2mm以上の距離が確保できるように十分な面積の切断平面を形成することが重要である。次に、その切断平面を研磨して平滑面とする。試料は研磨に供する便宜のため、および微小硬度計の試料ステージへの取り付けの便宜のために、遅くとも仕上げ研磨工程の前には樹脂に埋め込んでおくことが望ましい。仕上げ研磨は、例えば回転機構を持つ高精度の自動研磨琢磨装置を用いて行うことができる。
【0017】
〔ナノインデンテーション試験〕
図1に、樹脂に埋め込まれたナノインデンテーション試験用試料の測定面を模式的に例示する。砕石サンプルの切断平面1の中に、測定領域4が設けられる。測定領域4は微小硬度計によって圧子を押し込む範囲を意味し、圧子を押し込む点を「測定点」と呼ぶ。安定した測定精度を得るために、測定領域4は切断平面の縁3に近い部分を除いた範囲に設けられる。具体的には切断平面の縁3から各測定点までの距離が2mm以上となるようにする。この図では測定領域4を矩形としているが、他の形状(例えば円)としても構わない。
【0018】
1つの砕石サンプルにつき測定点の数は9箇所以上とする。それより少ないと、天然砕石は不均質材料であることから、ナノインデンテーション試験によって機械的特性を精度良く定量化することが難しい。より高い定量化精度を望む場合は、1つの砕石サンプルに50箇所以上の測定点を設けることが好ましく、100箇所以上の測定点を設けるように管理してもよい。
【0019】
発明者らは種々の骨材原石についてナノインデンテーション試験における測定点の配置と、測定結果の信頼性との関係について詳細に検討した。その結果、以下の条件1、2を満たすことによって、不均質材料である骨材原石の機械的特性をナノインデンテーション試験によって評価することが可能となることを見出した。
〔条件1〕ある測定点Aから最近接測定点までの距離を、測定点Aの最近接測定点間距離Lminと呼ぶとき、全ての測定点のLminが2.0mm以下であること。
〔条件2〕切断平面上において互いに直交するx方向およびy方向を定め、x方向における測定点の分布幅をWx、y方向における測定点の分布幅をWyとするとき、x方向をどのように定めても、Wxが3.0mm以上、かつWyが3.0mm以上となること。
【0020】
図2に、切断平面における測定点の配置例を示す。黒い点が測定点の位置を意味する。図2(a)は正方形の測定領域4の中に測定点を規則正しく100箇所配置した例である。この場合、いずれの測定点についても最近接測定点までの距離は一定である。例えば測定点Aに着目すると、C、D、Eの3点が最近接測定点に該当し、測定点Aから最近接測定点までの距離(最近接測定点間距離)Lminは点Aと点B(またはC、D、E)の中心間距離となる。図2(b)は正方形の測定領域4の中に測定点を比較的不規則に50箇所配置した例である。この場合は、個々の測定点ごとに最近接測定点間距離Lminは相違する。例えば測定点Fについて着目すると、最近接測定点は点Gとなるので、測定点Fについての最近接測定点間距離Lminは点Fと点Gの中心間距離となる。
【0021】
不均質材料である天然砕石の機械的特性を評価するためには、各測定点が切断平面内で適度に分散していることが重要である。個々の測定点の間隔が離れすぎている場合は、微小な領域での不均質性を把握することが難しくなり、当該砕石サンプルを代表する特性値を精度良く定めることができない。種々検討の結果、1つの砕石サンプルにおいて、各測定点の最近接測定点間距離Lminがすべて2.0mm以下であることが必要である。したがって上記条件1の規定を設けた。各測定点の最近接測定点間距離Lminは1.0mm以下であることがより好ましい。
【0022】
また、天然砕石の機械的特性評価においては、測定領域の面積を十分に確保することも重要である。上記条件2の「x方向における測定点の分布幅Wx」、および「y方向における測定点の分布幅Wy」は、切断平面上での測定点の拡がりを示す指標である。Wxは、切断平面上のある方向をx方向と定めるとき、x方向における一方の端部に位置する測定点と、他方の端部に位置する測定点のx方向距離である。Wyは、同様に切断平面上のy方向における一方の端部に位置する測定点と、他方の端部に位置する測定点のy方向距離である。ここで、x方向とy方向のなす角度は90°とする。
【0023】
図2(a)〜(c)には、矩形の測定領域4における1つの辺に平行な方向をx方向、それに直交する方向をy方向とした場合のWx、Wyを例示してある。測定点を比較的ランダムに配置した図2(b)の例では、x方向における一方の端部に位置する測定点Pと、他方の端部に位置する測定点Qのx方向距離がWxとなる。同様にy方向における一方の端部に位置する測定点Rと、他方の端部に位置する測定点Sのy方向距離がWyとなる。発明者らの詳細な検討によれば、切断平面上にx方向をどのように定めた場合であっても、常にWxが3.0mm以上、かつWyが3.0mm以上となるように各測定点を配置させることが、砕石サンプルの機械的特性を精度良く評価する上で極めて有効であることが明らかとなった。上記条件2はこのような知見に基づいて設定したものである。Wxが5.0mm以上、かつWyが5.0mm以上となるように各測定点を配置させることが、より好ましい。なお、図2(c)は比較的一方向に長い測定領域4を設定して51個の測定点を均等に配置した例であるが、この場合、図中に示したWyが少なくとも3.0mm以上であることが必要である。
【0024】
ナノインデンテーション試験は、ISO 14577に従う微小硬度計を用いて行う。載荷荷重は300〜5000mNの範囲とすることが望ましい。各測定点について単位損傷抵抗荷重(N/μm)を測定する。必要に応じて押込み弾性係数(N/mm2)も測定する。そして、すべての砕石サンプルのすべての測定値を算術平均することによって、当該骨材原石を代表する平均単位損傷抵抗荷重、あるいは更に平均押込み弾性係数を求める。
【0025】
〔超高強度コンクリート用骨材としての適正評価〕
骨材の機械的特性は、コンクリートの強度特性に大きな影響を及ぼす。特に、超高強度コンクリートを得るためには、使用する骨材自体の「圧縮強度」が大きいことが重要となる。また、コンクリートのヤング係数を重視する場合には、骨材自体の「弾性係数」を把握する必要がある。発明者らの詳細な検討の結果、上述の方法に従うナノインデンテーション試験によって得られた平均単位損傷抵抗荷重および平均押込み弾性係数の値は、それぞれ当該骨材の「圧縮強度」および「弾性係数」の大きさを定量的に評価する指標として有効であることが確認された。
【0026】
発明者らは種々の骨材原石を用いて多くの実験を行った。その結果、前記平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μmとなるとき、当該骨材原石は180N/mm2以上の超高強度コンクリートを得るための骨材原石として極めて有用であることを見出した。したがって本発明では、前記平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μmとなる場合に、前記ナノインデンテーション試験に供した砕石サンプルと同種の骨材原石から得られた骨材を超高強度コンクリート用骨材として選定する。特に、平均単位損傷抵抗荷重が1.2〜1.7N/μmとなる場合を選定基準とすることがより好ましい。また、そのような超高強度コンクリートにおいてヤング係数をも重視する場合には、更に前記平均押込み弾性係数が50×103〜75×103N/mm2となる骨材原石を選定すればよい。ここで、「砕石サンプルと同種の骨材原石」は、同じ採石場で産出される骨材原石のうち、試験用砕石サンプルを無作為に採取する際のサンプリング対象範囲にある骨材原石である。
【実施例】
【0027】
各地の採石場で産出された種々の骨材原石を用いて、ナノインデンテーション試験により高強度コンクリート用骨材としての適正を判定した。表1に使用した骨材原石を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
各骨材原石から得られた砕石の中から、ナノインデンテーション試験に供するための砕石サンプルを無作為に複数個採取した。各砕石サンプルを樹脂に埋め込み、砥石カッターにて切断して砕石サンプルの切断平面が表面に現れる状態としたのち、回転式自動研磨琢磨装置を用いて研磨面を形成した。その研磨面の中央部に図1の符号4に示したように正方形の測定領域を設定した。測定領域は切断平面の縁(図1の符号3)から2mm以上の距離を有する。測定領域の大きさ、および測定領域内の測定点の数については表2に示す5つの試験ケースを設定した。それぞれの試験ケースにおいて、測定点は測定領域内に概ね均等に分布するように配置した。各原石について適用した試験ケースは表3中に記載してある。
【0030】
【表2】

【0031】
ナノインデンテーション試験は微小硬度計(フィッシャー社製;HM2000)を用いて載荷荷重1800mNにて行い、各測定点で単位損傷抵抗荷重および押込み弾性係数を測定した。各骨材原石について、各試験ケース毎に平均単位損傷抵抗荷重および平均押込み弾性係数を求めた。そして、平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μmとなる試験ケースを、圧縮強度180N/mm2以上の超高強度コンクリート用骨材として「適正」であると判定し、それ以外を「不適正」と判定した。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3からわかるように、超高強度コンクリート用骨材として適しているかどうかについて、原石Iを除き、試験ケースによる評価の相違はみられなかった。すなわち、いずれの試験ケースの測定条件に基づいて評価した場合にも、原石A、B、G、Hは適正、C、D、E、F、Jは不適正と判定された。ただし、原石Iにおいては試験ケースによって評価が分かれた。
【0034】
そこで次に、実際に各骨材原石から得た粗骨材および細骨材を使用して、超高強度コンクリートの作製を試みることによって、前記評価の妥当性を検証した。コンクリートの調合および使用材料は表4中に示してある。得られたコンクリート供試体について、標準養生91日の圧縮強度およびヤング係数を測定した。結果を表4に示す。また、図3に、ナノインデンテーション試験によって求めた平均単位損傷抵抗荷重および平均押込み弾性係数と、得られたコンクリートの圧縮強度の関係を示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4に示されるように、細骨材および粗骨材を原石A、B、G、Hから得たもので構成した配合において、圧縮強度180N/mm2以上の超高強度コンクリートを実現することができた。したがって、結果的に、原石A、B、G、Hが超高強度コンクリート用として適正であり、それ以外の原石は不適正であった。この結果を表3に示したナノインデンテーション試験による評価結果と照合すると、試験ケースa、b、cはいずれも前述の条件1、2を満たすものであり、正確な評価を導き出したと言える。試験ケースd、eは前述の条件1、2を満たさないものであり、やや判定精度に劣る場合が見られた。その要因として、ケースdは測定点の分布範囲が狭いこと、またケースeは測定点の間隔が大きいことが挙げられる。条件1、2を満たさない測定条件で測定を行うにあたっては、例えば各サンプル間での測定値のバラツキが経験的に大きいと思われる場合などに、条件1、2を満たす測定条件に切り替えることで、実用上問題のない評価が可能となる。そのような経験等に基づく判断を不要とするためには、条件1、2を満たす測定条件を採用することが望まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 砕石サンプルの切断平面
2 樹脂
3 切断継面の縁
4 測定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある採石場における骨材原石から砕石サンプルを5個以上採取し、当該各サンプルに切断平面を設け、その切断平面を研磨することにより研磨面とし、その研磨面について切断平面の縁から2mm以上離れた領域にISO 14577に従う微小硬度計を用いて圧子を押し込む手法により、各サンプルの単位損傷抵抗荷重(N/μm)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重を求め、前記平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μmとなる場合に、当該採石場で採取された前記砕石サンプルと同種の骨材原石から得られた骨材を超高強度コンクリート用骨材として選定する超高強度コンクリート用骨材の選定方法。
【請求項2】
ある採石場における骨材原石から砕石サンプルを5個以上採取し、当該各サンプルに切断平面を設け、その切断平面を研磨することにより研磨面とし、その研磨面について切断平面の縁から2mm以上離れた領域にISO 14577に従う微小硬度計を用いて圧子を押し込む手法により、各サンプルの単位損傷抵抗荷重(N/μm)および押込み弾性係数(N/mm2)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重および平均押込み弾性係数を求め、前記平均単位損傷抵抗荷重が1.0〜1.7N/μm、かつ前記平均押込み弾性係数が50×103〜75×103N/mm2となる場合に、当該採石場で採取された前記砕石サンプルと同種の骨材原石から得られた砕石を超高強度コンクリート用骨材として選定する超高強度コンクリート用骨材の選定方法。
【請求項3】
1つのサンプルにつき下記条件1、2を満たすように配置された9箇所以上の測定点で単位損傷抵抗荷重(N/μm)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重を求める、請求項1に記載の超高強度コンクリート用骨材の選定方法。
〔条件1〕ある測定点Aから最近接測定点までの距離を、測定点Aの最近接測定点間距離Lminと呼ぶとき、全ての測定点のLminが2.0mm以下であること。
〔条件2〕切断平面上において互いに直交するx方向およびy方向を定め、x方向における測定点の分布幅をWx、y方向における測定点の分布幅をWyとするとき、x方向をどのように定めても、Wxが3.0mm以上、かつWyが3.0mm以上となること。
【請求項4】
1つのサンプルにつき下記条件1、2を満たすように配置された9箇所以上の測定点で単位損傷抵抗荷重(N/μm)および押込み弾性係数(N/mm2)を測定し、それらの測定値を全サンプルについて平均することにより平均単位損傷抵抗荷重および平均押込み弾性係数を求める、請求項1に記載の超高強度コンクリート用骨材の選定方法。
〔条件1〕ある測定点Aから最近接測定点までの距離を、測定点Aの最近接測定点間距離Lminと呼ぶとき、全ての測定点のLminが2.0mm以下であること。
〔条件2〕切断平面上において互いに直交するx方向およびy方向を定め、x方向における測定点の分布幅をWx、y方向における測定点の分布幅をWyとするとき、x方向をどのように定めても、Wxが3.0mm以上、かつWyが3.0mm以上となること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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