説明

踏力測定装置

【課題】 高い強度の取付板を用いて確実に既設ペダルの踏動板への挟持固定を可能にし、試験中の脱落の虞れもない踏力測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 略方形の基板1上面に踏力センサ3を配設するとともに、前記基板1に重合させた取付板2に取付部2Aを形成し、これら取付部2Aに対応させて背面側に配置した挟持板4との間にて前記既設ペダルの踏動板9を挟持固定したことにより、踏力センサ3にて検出すべき取付板2に作用した踏力は、取付板2の取付部2Aと挟持板4との間で高い強度で緊締されていることにより、確実に既設ペダルの踏動板9に伝達されていくので、踏力測定装置10が妄りに既設ペダルの踏動板9からずれたり脱落することがなく、試験中の高精度で継続的な踏力検出値が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における既設ペダルの踏動板に装着される踏力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設置されているブレーキペダルやアクセルペダルさらにはクラッチペダルはその操作によって動力系の制御がなされるため、それらの踏力を精度よく検出することは重要である。特に、車両の各種走行試験を行う際には、被試験車両の既設ペダルの踏動板に踏力測定装置を装着してペダルの踏力を測定している。とりわけ、ブレーキペダルの踏力検出の精度は加減速を伴う他の制御系との関連制御において重要な要素である。既設ペダルの踏動板に装着される踏力測定装置として、現在は図4に示したような踏力測定装置(下記非特許文献1参照)が使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】東京測器研究所「自動車関連計測システム車載計測」カタログ「MLA−NA踏力計1kN」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記図4に示した従来例のものは、上面に踏力を検出する踏力センサ23が設置された平板状の取付板22と、その下面に平行に配置された馬蹄形の挟持板24とで、図示省略の車両における既設ペダルの踏動板を挟持固定するに際して、図4(B)に示したように、側面視でコの字形を呈するように取付板22と挟持板24とを端部近傍に配設した厚さ調節部(シム等の選択的介在にて長さを調節する)27にて接続し、既設ペダルの踏動板への挟持部を確保するためにそれを回避して、厚さ調節部27の近傍にて取付ボルト26を締め付けるように構成したものである。
【0005】
以上のような構成の踏力測定装置を試験車両における既設ペダルの踏動板に装着して、例えばブレーキペダルに装着することによって、踏力の検出によるアンチスキッド制御等の各種ブレーキ制御、トラクションコントロールとの関連制御等が、試験車両における既設ペダルの踏動板に何らの改造を加えることなく簡便に行えるようになった。しかしながら、前述したような従来の踏力測定装置にあって、既設ペダルの踏動板への挟持部を確保するために、その挟持部を回避して偏位した部位に厚さ調節部27や取付ボルト26を設置していた。そのために、取付ボルト26のみによる既設ペダルの踏動板への挟持力では充分とは言い難く、試験中の踏動の繰返しによって踏力測定装置が既設ペダルの踏動板からずれたり、場合によっては外れてしまい、試験中であってもその都度、挟持固定し直さねばならず煩わしく、試験結果の精度も充分とは言い難かった。
【0006】
そこで本発明は、前記従来の踏力測定装置の課題を解決して、高い強度の取付板を用いて確実に既設ペダルの踏動板への挟持固定を可能にし、試験中の脱落の虞れもない踏力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、車両における既設ペダルの踏動板に装着される踏力測定装置において、略方形の基板上面に踏力センサを配設するとともに、前記基板に重合させた取付板に取付部を形成し、これら取付部に対応させて背面側に配置した挟持板との間にて前記既設ペダルの踏動板を挟持固定したことを特徴とする。また本発明は、前記踏力センサを基板の中央に配設するとともに、前記取付部を取付板の両側部に形成し、これら取付部に対応させて背面側に所定間隔を置いて配置した一対の挟持板との間にて緊締ボルト等により前記既設ペダルの踏動板を挟持固定したことを特徴とする。また本発明は、前記取付板における取付部と挟持板とが平面視で略直交配置されたことを特徴とする。また本発明は、前記取付板における取付部と挟持板とが平面視で略平行配置されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両における既設ペダルの踏動板に装着される踏力測定装置において、略方形の基板上面に踏力センサを配設するとともに、前記基板に重合させた取付板に取付部を形成し、これら取付部に対応させて背面側に配置した挟持板との間にて前記既設ペダルの踏動板を挟持固定したことにより、踏力センサにて検出すべき取付板に作用した踏力は、取付板の取付部と挟持板との間で高い強度で緊締されていることにより、確実に既設ペダルの踏動板に伝達されていくので、踏力測定装置が妄りに既設ペダルの踏動板からずれたり脱落することがなく、試験中の高精度で継続的な踏力検出値が得られる。
【0009】
また、前記踏力センサを基板の中央に配設するとともに、前記取付部を取付板の両側部に形成し、これら取付部に対応させて背面側に所定間隔を置いて配置した一対の挟持板との間にて緊締ボルト等により前記既設ペダルの踏動板を挟持固定した場合は、踏力センサにて検出すべき取付板の略中央に作用した踏力は、取付板の両側部の取付部と挟持板との間で緊締ボルト等によりバランス良く高い強度で緊締されていることにより、より確実に既設ペダルの踏動板に伝達されていくので、踏力測定装置が妄りに既設ペダルの踏動板からずれたり脱落することがなく、試験中の高精度で継続的な踏力検出値が得られる。さらに、前記取付板における取付部と挟持板とが平面視で略直交配置された場合は、取付板の両側の取付部と一対の挟持板とが緊締ボルトを介して四角形状の構造体を構成するので、より高い強度と剛性を持ってバランス良く既設ペダルの踏動板に踏力測定装置を装着することが可能となる。さらにまた、前記取付板における取付部と挟持板とが平面視で略平行配置された場合は、既設ペダルの踏動板とレバーとの関連構成により、取付板や挟持板の配置に制約を受けるような条件のもとでも、それらの構成等に対応させて、踏力センサの両側にてバランス良く、平面視で平行配置された取付部と挟持板とで装着すべき既設ペダルの踏動板を確実に挟持固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の踏力測定装置の第1実施例を示すもので、図1(A)は踏力測定装置の平面図、図1(B)は側面図、図1(C)は正面図、図1(D)(E)は取付板の平面および側面図、図1(F)(G)は挟持板の平面および側面図である。
【図2】同、第1実施例の踏力測定装置が既設ペダルに装着された状態の斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例の踏力測定装置が既設ペダルに装着された状態の斜視図である。
【図4】従来の踏力測定装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の踏力測定装置の第1実施例を示すもので、図1(A)は踏力測定装置の平面図、図1(B)は側面図、図1(C)は正面図、図1(D)(E)は取付板の平面および側面図、図1(F)(G)は挟持板の平面および側面図、図2は第1実施例の踏力測定装置が既設ペダルに装着された状態の斜視図、図3は第2実施例の踏力測定装置が既設ペダルに装着された状態の斜視図である。本発明の踏力測定装置10は、図2に示すように、車両における既設ペダルの踏動板9に装着される踏力測定装置10において、略方形の基板1上面に踏力センサ3を配設するとともに、前記基板1に重合させた取付板2に取付部2Aを形成し、これら取付部2Aに対応させて背面側に配置した挟持板4との間にて前記既設ペダルの踏動板9を挟持固定したことを特徴とする。
【実施例1】
【0012】
本発明の踏力測定装置の第1実施例を図1および図2を用いて説明する。図1(A)に示すように、ほぼ正方形状の基板1の略中央部の上面に踏力を検出する踏力センサ3が設置される。基板1上部の三角形状部は前記踏力センサ3からの検出値等を取り出すケーブル等を固定する配線板部である。図1(B)(C)の側面図および正面図から良く理解されるように、基板1の下部に重合して取付板2が溶接ないし図1(D)に示すようなビス11等により接合され、それらの重合部から両側にはみ出した取付板2の両側に取付部2A、2Aが形成される。該取付部2Aにはその長さ方向に沿って、例えば図示の例ではそれぞれ3か所のボルト孔5・・が穿設される。
【0013】
図1(A)〜(C)にて良く理解されるように、取付板2におけるこれら取付部2Aに対応させて背面側(図1(A)の紙背側、図1(C)の下側)に、既設ペダルの踏動板9のほぼ厚みに相当する所定間隔を置いて配置した一対の挟持板4、4との間にて緊締ボルト6、6・・(図示の例では、前記3か所のボルト孔5の両端部側の2か所を使用している)等により前記既設ペダルの踏動板9を挟持固定する。図1(F)(G)に示すように挟持板4は、平板状を呈しており、本実施例では前記取付板2における両側の取付部2A、2A間に渡設される長さを有する。前記取付部2Aに対応して挟持板4の両端部近傍にはボルト孔8、8が穿設され、これらボルト孔5、8を貫通して前記緊締ボルト6が取り付けられて、その螺合部に取付ナット7が螺合され、それにより、既設ペダルの踏動板9を挟持して固定される。
【0014】
図2は踏力測定装置が既設ペダルに装着された状態の斜視図で、取付板2における取付部2A、2Aが車体の前後方向の前後に配置されるよう装着される。本第1実施例では、取付板2における取付部2Aと挟持板4とが平面視で略直交配置され、取付板2の両側の取付部2A、2Aと一対の挟持板4、4とが緊締ボルト6、6、6、6を介して四角形状の構造体を構成するので、より高い強度と剛性を持ってバランス良く既設ペダルの踏動板9に踏力測定装置を装着することが可能となる。したがって、踏力センサ3にて検出すべき取付板2の略中央に作用した踏力は、取付板2の両側部の取付部2A、2Aと挟持板4、4との間でバランス良く高い強度で緊締されていることにより、確実に既設ペダルの踏動板9に伝達されていくので、踏力測定装置が妄りに踏動板9からずれたり脱落することがなく、試験中の高精度で継続的な踏力検出値が得られる。なお、配線板部1Aの長孔に係合したリングを介して、鋼線等の非伸縮性ひも13がペダル戻り方向の延長線上に配設したストローク計12との間に張設され、踏力センサ3への踏力作用に伴うペダル9のストロークを検出するように構成される。
【実施例2】
【0015】
図3は第2実施例の踏力測定装置が既設ペダルに装着された状態の斜視図である。本実施例では、踏力測定装置10の取付板2における取付部2A、2Aが車体の左右方向の左右に配置されるよう装着される。そして、取付板2における取付部2Aと挟持板4とが平面視で略平行配置されて、踏力測定装置10を既設ペダルの踏動板9に装着される。挟持板4に関しては、左右の取付部2A、2Aに渡設される程の長さは必要ではないが、取付部2Aと挟持板4とが平面視で略平行に配置できるので、既設ペダルの踏動板9とそのレバーとの関連構成等によっては、取付板2や挟持板4の配置に制約を受けるような条件のもとでも、それらの構成等に対応させて、踏力センサ3の両側にてバランス良く、取付板2における両側の取付部2A、2Aと一対の挟持板4、4により確実に挟持固定することが可能となる。
【0016】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、本発明の踏力測定装置が装着される既設ペダルの種類(好適にはブレーキペダルに装着されて使用されるが、アクセルペダルやクラッチペダルにも適用が可能である)、その踏動板の形状、形式、基板の形状(好適には三角形等の適宜形状の配線板部を形成した略方形とされるが、既設ペダルの踏動板の平面形状に適合される)、基板への踏力センサの設置形態、踏力センサの形状、形式、取付板の形状、形式およびその基板との接合形態(実施例のビス等による接合の他、溶接等でもよいし、場合によっては基板と取付板とを一体に成形することも可能である)、取付板における取付部の形状(好適には直線状を呈するが、既設ペダルの踏動板の平面形状に適合させて例えば曲線状になることも妨げない)、形式、挟持板の形状(好適には取付板における取付部の形状と同様の直線状にされるが、既設ペダルの踏動板の平面形状に適合させて例えば曲線状になることも妨げない)、緊締ボルト等による取付部と挟持板とを介した既設ペダルの踏動板への挟持固定形態(緊締ボルトを用いずに、例えばワンタッチトグル機構等を用いて取付部と挟持板とを近接挟持させることもできる)等については適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、車両における既設ペダルの踏動板に装着される踏力測定装置に関し、特に車両に設置されているブレーキペダルの踏動板に装着されて使用されるが、アクセルペダルやクラッチペダルに装着しての使用にも供用され、それらのペダルの操作によって動力系の制御のための踏力を精度よく検出する踏力測定装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 基板
1A 配線板部
2 取付板
2A 取付部
3 踏力センサ
4 挟持板
5 ボルト孔
6 緊締ボルト
7 取付ナット
8 ボルト孔
9 既設ペダルの踏動板
10 踏力測定装置
11 ビス
12 ストローク計
13 非伸縮性ひも

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における既設ペダルの踏動板に装着される踏力測定装置において、略方形の基板上面に踏力センサを配設するとともに、前記基板に重合させた取付板に取付部を形成し、これら取付部に対応させて背面側に配置した挟持板との間にて前記既設ペダルの踏動板を挟持固定したことを特徴とする踏力測定装置。
【請求項2】
前記踏力センサを基板の中央に配設するとともに、前記取付部を取付板の両側部に形成し、これら取付部に対応させて背面側に所定間隔を置いて配置した一対の挟持板との間にて緊締ボルト等により前記既設ペダルの踏動板を挟持固定したことを特徴とする請求項1に記載の踏力測定装置。
【請求項3】
前記取付板における取付部と挟持板とが平面視で略直交配置されたことを特徴とする請求項2に記載の踏力測定装置。
【請求項4】
前記取付板における取付部と挟持板とが平面視で略平行配置されたことを特徴とする請求項2に記載の踏力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−197182(P2010−197182A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41685(P2009−41685)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】