説明

車両の電装品配設構造

【課題】蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121がエンジン200からの熱影響を受け難くするとともに、発電機85、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121を繋ぐハーネス86,94,95を出来る限り短くする。
【解決手段】発電機85を、両フロントサイドフレーム5間において車幅方向一側に片寄って配設されたエンジン200の前部に配設し、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121を、車両1の車幅方向他側に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を蓄電する蓄電装置等を備えた車両の電装品配設構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に、二次電池(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池)のような、電気を蓄電する蓄電装置を搭載することはよく知られている。この蓄電装置としては、二次電池以外にも、キャパシタが用いられることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような蓄電装置は、例えば特許文献2に示されているように、車両前部のエンジンルーム内に配設されることが多いが、特許文献1に示されているように、車室フロアの下側に配設される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−89040号公報
【特許文献2】特開2006−281806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンにより駆動されて発電する発電機(オルタネータ)による発電電力を蓄電装置に蓄える場合、高電圧でもって充電する方が効率的である。このようにすると、その蓄電装置に蓄えた電力を、鉛蓄電池等のバッテリや車両電気負荷に供給する場合には、DC/DCコンバータのような電力変換装置が必要になる。
【0006】
上記蓄電装置、上記電力変換装置及び上記バッテリは、通常、熱に弱く、また、蓄電装置が特にキャパシタで構成される場合には発熱するため、それら電装品を車両に配設する場合には、エンジンからの熱影響を出来る限り受けないようにする必要がある。また、上記発電機、上記蓄電装置、上記電力変換装置及び上記バッテリを繋ぐハーネスを出来る限り短くして、そのハーネスによる電力供給のロスを出来る限り少なくすることが望ましい。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリがエンジンからの熱影響を受け難くするとともに、発電機、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリを繋ぐハーネスを出来る限り短くしようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレーム間において車幅方向一側に片寄って配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を蓄える蓄電装置と、該蓄電装置からの電力を変換する電力変換装置と、該電力変換装置により変換された電力が供給されるバッテリと、上記発電機、上記蓄電装置、上記電力変換装置及び上記バッテリを繋ぐハーネスとを備えた車両の電装品配設構造を対象として、上記発電機は、上記エンジンの前部に配設され、上記蓄電装置、上記電力変換装置及び上記バッテリは、上記車両の車幅方向他側に配設されている、という構成とした。
【0009】
上記の構成により、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリが、車幅方向のエンジンが片寄っている側である一側とは反対側である他側に配設されているので、それら電装品がたとえエンジンルーム内(つまり両フロントサイドフレーム間)に配設されていたとしても、エンジンからの熱影響を受け難くなる。また、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリを繋ぐハーネスを、車両の車幅方向他側の部分のみを通すだけで済む。ここで、エンジンに設けられる発電機は、通常、車両の車幅方向一側に配設されることになるが、エンジンとラジエータを支持するシュラウドとの間には、車幅方向全体に亘ってスペースが存在する。そこで、発電機をエンジンの前部に配設することで、発電機と蓄電装置とを繋ぐハーネスを、上記スペースにおいて、車幅方向一側から他側に向かって車幅方向に略真っ直ぐに通すことが可能になる。したがって、発電機、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリを繋ぐハーネスを出来る限り短くすることができる。
【0010】
上記車両の電装品配設構造において、上記蓄電装置は、上記他側の上記フロントサイドフレームの車幅方向外側に配設されている、ことが好ましい。
【0011】
このことにより、蓄電装置がエンジンからの熱影響をより一層受け難くなるとともに、蓄電装置を、車両走行風によって冷却することが可能になる。
【0012】
上記車両の電装品配設構造において、上記蓄電装置は、上記車両の上記他側の前輪よりも車両前側に配設され、上記電力変換装置は、上記他側の前輪よりも車両後側に配設されており、上記蓄電装置と上記電力変換装置とを繋ぐハーネスが、上記他側の前輪の上側に形成されたホイールアーチに沿って配索されている、ことが好ましい。
【0013】
このことで、発電機と蓄電装置とを車両前後方向において略同じ位置に位置させることができ、発電機と蓄電装置とを繋ぐハーネスが、発電機から蓄電装置に向かって車幅方向に延びるだけで済み、車両前後方向に大きく折り曲げる必要がなくなり、この結果、発電機と蓄電装置とを繋ぐハーネスの長さを出来る限り短くすることができる。また、蓄電装置と電力変換装置とを繋ぐハーネスについては、ホイールアーチに沿って配索することで、前輪に干渉しないようにしつつ、蓄電装置と電力変換装置とを繋ぐハーネスの長さを出来る限り短くすることができる。さらに、蓄電装置が前輪よりも車両前側に配設されることで、蓄電装置を、車両走行風によって確実に冷却することができる。
【0014】
上記車両の電装品配設構造において、上記各フロントサイドフレームの前端には、クラッシュカンがそれぞれ配設されており、上記蓄電装置は、上記他側の上記クラッシュカンよりも車両後側に配設されている、ことが好ましい。
【0015】
こうすることで、蓄電装置が車両の前部(特に前輪よりも車両前側)に配設されていたとしても、車両の前面衝突時に、蓄電装置がクラッシュカンによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも、蓄電装置の破損も防止することができる。
【0016】
上記車両の電装品配設構造において、左右両端部にて左右の前輪をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバを更に備え、上記サスペンションクロスメンバは、上記他側の上記フロントサイドフレームの下側にて該他側のフロントサイドフレームに略沿って前方へ延びる前方延設部を有しており、上記蓄電装置は、車両前後方向において上記前方延設部の前後方向の一部と同じ位置に配設され、上記蓄電装置の下端が、上記前方延設部の下端よりも上側に位置している、ことが好ましい。
【0017】
このことにより、蓄電装置が路面と干渉するのを抑制して、蓄電装置を適切に保護することができる。
【0018】
上記車両の電装品配設構造において、上記エンジンは、出力軸が車幅方向に延びるように横置き状態で配置され、上記エンジンの前部に、吸気ダクトが配設されており、上記発電機は、上記エンジンの前部における上記吸気ダクトの側方に配設されている、ことが好ましい。
【0019】
このことで、発電機が排気熱の影響を受け難くなり、エンジンに設けられる発電機も、エンジンからの熱影響を受け難くすることができる。また、発電機に車両走行風を当てるようにすることも可能になる。
【0020】
上記車両の電装品配設構造において、上記エンジンの車幅方向の上記他側に変速機が配設され、上記バッテリは、上記変速機の上側に配設されている、ことが好ましい。
【0021】
すなわち、変速機の上下寸法は、通常、エンジンの上下寸法よりも小さいので、変速機の上側にバッテリを配設することで、エンジンからの熱影響を受け難くしつつ、バッテリをエンジンルーム内にスペース効率良く配設することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の車両の電装品配設構造によると、発電機を、両フロントサイドフレーム間において車幅方向一側に片寄って配設されたエンジンの前部に配設し、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリを、車両の車幅方向他側に配設したことにより、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリがエンジンからの熱影響を受け難くするとともに、発電機、蓄電装置、電力変換装置及びバッテリを繋ぐハーネスを出来る限り短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る電装品配設構造が適用された車両の構造を示す平面図である。
【図2】上記車両の前部の要部を示す平面図である。
【図3】上記車両のフロントサイドフレーム及びサスペンションクロスメンバを示す、車両左斜め前側かつ下側から見た斜視図である。
【図4】発電機の近傍を示す、車両左側かつ上側から見た斜視図である。
【図5】上記車両の前部の要部を示す、車両左側から見た側面図である。
【図6】第2及び第3ハーネスを示す、車両左斜め前側かつ下側から見た斜視図である。
【図7】フロアパネルにおけるフロントフロア部の前側部分の下面を示す底面図である。
【図8】フロントフロア部下面の第2及び第3ハーネス配索部を示す正面断面図である。
【図9】フロアパネル上面における電力変換装置の近傍を拡大して示す平面図である。
【図10】発電機、蓄電装置、電力変換装置、バッテリ及び車両電気負荷の電気接続関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る電装品配設構造が適用された車両1の構造を示す。この車両1の前部におけるエンジンルーム2内には、エンジン200及び変速機201が車幅方向に並んで配設されており、このエンジン200及び変速機201により当該車両1の左右の前輪3(図5参照)が駆動されるようになっている。以下、上記車両1についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。
【0026】
上記エンジンルーム2の車幅方向(左右方向)両端部には、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が配設されている。上記エンジン200は、出力軸(クランク軸)が車幅方向に延びるように横置き状態で、両フロントサイドフレーム5間(つまりエンジンルーム2)において車幅方向一側(本実施形態では、右側)に片寄って配設されている。上記エンジン200の前側は吸気側であり、後側は排気側である。エンジン200の前部には、吸気マニホールド200a(吸気ダクト)が設けられており、後部には、不図示の排気マニホールドが設けられている。また、変速機201は、エンジン200の車幅方向他側(本実施形態では、左側)に配設されている。この変速機201の上下寸法は、エンジン200の上下寸法よりも小さくて、変速機201の上端がエンジン200の上端よりも低い位置にある。
【0027】
上記各フロントサイドフレーム5の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部5a(特に図3参照)とされている。このキック部5aと略同じ前後位置には、上記エンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル9が設けられている(図3では、ダッシュパネル9の記載を省略している)。
【0028】
左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側には、上記前輪3の上側を覆う円弧状のマッドガード93がそれぞれ設けられている。左右のマッドガード93の上側には、サスペンションタワー13がそれぞれ設けられている。左右のサスペンションタワー13の上端部は、前後方向に延びる左右一対のエプロンレインメンバー16にそれぞれ固定され、左右のサスペンションタワー13の下端部は、左右のフロントサイドフレーム5にそれぞれ固定されている。
【0029】
上記車両1の前端部には、不図示のフロントバンパーが設けられ、このフロントバンパー内に、車幅方向に延びるバンパービーム18が設けられている。このバンパービーム18が、車両1の前面衝突時の衝突荷重を受ける。
【0030】
左右のフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカン6がそれぞれ配設されている。具体的には、各フロントサイドフレーム5の前端にフランジ部5bが形成され、クラッシュカン6の後端にもフランジ部6aが形成されている。これら互いのフランジ部5b,6aが合わされた状態で、ボルト及びナットからなる締結部材7(図3参照)によって固定されている。尚、左右のクラッシュカン6の前後方向位置は同じである。また、上述した左右にそれぞれ設けられたものは、基本的に、車両1の車幅方向中央を通りかつ前後方向に延びる鉛直面に対して対称の関係にある。
【0031】
上記バンパービーム18の左右両端部は、左右のクラッシュカン6の前端にそれぞれ締結固定されている。これら左右のクラッシュカン6は、バンパービーム18が車両1の前面衝突時の衝突荷重を前側から受けたときに、前後方向に潰れることで、その衝撃吸収を行うようになっている。尚、軽衝突時には、クラッシュカン6及びフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れることで衝撃吸収を行えるが、クラッシュカン6のみでは衝撃吸収を行えないような重衝突時には、フロントサイドフレーム5も前後方向に潰れることで衝撃吸収を行う。
【0032】
バンパービーム18の後方における左右のクラッシュカン6の間には、不図示のラジエータを支持する枠状のシュラウド20(図2〜図6参照)が配設されている。図2に示すように、このシュラウド20の上側部分を構成するアッパーメンバー21が車幅方向外側かつ後方に延び、アッパーメンバー21の両端部が連結部材22を介して上記左右のエプロンレインメンバー16の前端にそれぞれ結合されている。これにより、シュラウド20は、左右のエプロンレインメンバー16に支持されることになる。
【0033】
上記シュラウド20の下側部分には、歩行者保護用のスティフナー(図示せず)が、シュラウド20の左側方から右側方に亘って前側に突出するように固定されている。このスティフナーは、車両1の前面に衝突した歩行者の脚部の下部に接触して該脚部を払うことで、該歩行者を車両1側に転倒させ、これにより歩行者の脚部における骨折等の傷害の発生を可及的に防止するものである。上記スティフナーの前側は、上記フロントバンパーにより覆われる。
【0034】
サスペンションタワー13と略同じ前後位置には、車幅方向に延びかつ左右両端部にて左右の前輪3をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバ31が配設されている(図2、図3等参照)。このサスペンションクロスメンバ31は、車幅方向に延びる本体部31aと、この本体部31aの左右両端部の前縁からそれぞれ前方へ延びる左右の前方延設部31bとを有している。上記本体部31aの左右両端部に、左右の前輪サスペンションアーム(ロアアーム)がそれぞれ支持されており、該前輪サスペンションアームを介して前輪3がサスペンションクロスメンバ31に支持される。本体部31aの上面における左右両端部には、上方へ延びる上方延設部31cがそれぞれ設けられ、左右の上方延設部31cの上端部が、左右のフロントサイドフレーム5の下面にそれぞれ固定されている。
【0035】
左側の前方延設部31bは、左側のフロントサイドフレーム5の下側にて該左側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。右側の前方延設部31bは、右側のフロントサイドフレーム5の下側にて該右側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。左右の前方延設部31bは、車両1の車幅方向中央を通りかつ前後方向に延びる鉛直面に対して対称の関係にある。
【0036】
左右の前方延設部31bの下面における前端部同士は、車幅方向に延びる連結クロスメンバ32によって連結されている。こうして、サスペンションクロスメンバ31の本体部31a及び左右の前方延設部31b並びに連結クロスメンバ32は、平面視で略矩形枠状をなすペリメータフレーム(車体部材)を構成している。
【0037】
上記各前方延設部31bの前側部分は、後側部分よりも高い高さ位置にある。また、各前方延設部31bの上面における前端部には、上方へ延びる円筒部材35がそれぞれ固定され、各円筒部材35の上端が、各フロントサイドフレーム5のフランジ部5bにおける水平に折り曲げられた部分にそれぞれ締結固定される。また、各前方延設部31bの前端には、上記スティフナーの左右両端部に結合される結合部材36が締結固定されている。
【0038】
上記ダッシュパネル9の下端部は、上記車室の底面を形成するフロアパネル8の前端部と接続されている。このフロアパネル8は、フロントフロア部8aと、このフロントフロア部8aの後側に位置し、フロントフロア部8aの後端から立ち上がってフロントフロア部8aよりも上側の高さ位置に位置するリヤフロア部8bとを有している。
【0039】
フロアパネル8のフロントフロア部8a上には、左右2つのフロントシート221(一方が運転席シートであり、他方が助手席シートである)が車幅方向に並んで配設されている。フロアパネル8上におけるフロントシート221の後側(つまり、リヤフロア部8b上)には、リヤシート222が配設されている。フロントフロア部8aにおけるフロントシート221の後側部分(フロントシート221とリヤシート222との間の部分)は、リヤシート222に着座した乗員の足置き場となる部分である。
【0040】
フロアパネル8のフロントフロア部8aの車幅方向中央部(左右2つのフロントシート221間)には、トンネル部8cが形成されている。また、フロントフロア部8aの上面におけるトンネル部8cの左右両側部分には、車幅方向に延びる前側及び後側クロスメンバ216,217が互いに前後方向に間隔をあけて配設されている。
【0041】
左側のフロントサイドフレーム5に対して車幅方向外側(左側)の近傍つまりエンジンルーム2の左外側の近傍でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置には、電気を蓄電する蓄電装置70が配設されている。この蓄電装置70は、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに支持されている。このことで、蓄電装置70は、車両1の左側部分、つまり、車幅方向のエンジン200が片寄っている側(右側)とは反対側に配設されていることになる。また、蓄電装置70は、車両正面視で、左側の前輪3(車両直進状態にあるとき)に対して車幅方向内側にずれた位置に配設されているとともに、前後方向において後述の発電機85と略同じ位置に配設されている。尚、蓄電装置70は、左側のクラッシュカン6のフランジ部6aに支持されるようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、蓄電装置70は、キャパシタからなる複数の蓄電素子を有するものであって、保持部材77(図5参照)を介して左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに取付固定されている。
【0043】
ここで、上記車両1において前面衝突が生じた場合、その前面衝突が、クラッシュカン6及びフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れるような軽衝突であるときには、左右のクラッシュカン6がバンパービーム18から衝突荷重を受けて前後方向に潰れることで、その衝撃吸収が行われる。このとき、蓄電装置70がクラッシュカン6よりも後側に位置するので、蓄電装置70がクラッシュカン6による衝撃吸収作用を阻害するようなことはない。また、蓄電装置70が破損するようなこともない。
【0044】
上記前面衝突が、クラッシュカン6及びフロントサイドフレーム5の両方が潰れるような重衝突時には、左右のフロントサイドフレーム5の前後方向の潰れによって、その衝撃吸収が行われる。このとき、左側のフロントサイドフレーム5の潰れに伴って蓄電装置70が後退する。この後退時に、蓄電装置70が左側の前輪3と干渉すると、フロントサイドフレーム5による衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、本実施形態では、蓄電装置70が、車両正面視で、左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置(車幅方向において左側の前輪3と左側のフロントサイドフレーム5との間の位置)に配設されているので、基本的に、蓄電装置70が左側の前輪3と干渉することがなく、フロントサイドフレーム5による良好な衝撃吸収性能を確保することができる。尚、蓄電装置70を、車両正面視で、左側の前輪3に対して車幅方向にずれた位置に配設することは必ずしも必要ではなく、蓄電装置70を、車幅方向において左側の前輪3と略同じ位置に配設するようにしてもよい。
【0045】
蓄電装置70は、上下方向に延びる形状をなしていて、前後方向において前方延設部31bの前側部分と同じ位置に位置している。そして、蓄電装置70の上端はフロントサイドフレーム5の上端面と略同じ高さ位置にあり、蓄電装置70の下端は、前方延設部31bの前側部分の下端よりも下側に位置しているが、前方延設部31bの後側部分の下端よりも上側に位置している。すなわち、蓄電装置70は、前後方向において左側の前方延設部31bの前後方向の一部と同じ位置に配設され、この蓄電装置70の下端が、左側の前方延設部31bの下端よりも上側に位置していることになる。これにより、蓄電装置70が路面と干渉するのを抑制して、その干渉による蓄電装置70の損傷を抑制することができる。
【0046】
エンジン200の前部の右側部分(吸気マニホールド200aの右側側方)には、図1、図2及び図4に示すように、エンジン200により駆動されて発電する発電機85(オルタネータ)が配設されている。すなわち、この発電機85は、エンジン200のクランク軸により、エンジン200の右側の端面に設けられたベルトを介して回転駆動されて発電する。この発電機85による発電電力が蓄電装置70に供給されて蓄電される。発電機85は、特に、車両1の減速時に車両1の運動エネルギーを電力(回生電力)に変換し、この回生電力が蓄電装置70に蓄えられる。上記発電機85と蓄電装置70とは、図1、図2及び図4に示すように、第1ハーネス86により繋がれており、この第1ハーネス86を介して発電機85による電力が蓄電装置70に供給される。
【0047】
発電機85は、エンジンルーム2内の右側部分において、フロントサイドフレーム5と略同じ高さ位置で連結クロスメンバ32の後側に位置している。そして、第1ハーネス86は、発電機85から連結クロスメンバ32の車幅方向中央に向かって斜め下側に延びる垂下部87と、連結クロスメンバ32に沿って車幅方向に延びる水平部88(図4参照)とを有し、この水平部88の左側端部が、上側に折れ曲がって、上記保持部材77に設けられた接続部78(図5参照)に接続されている。上記垂下部87は、吸気マニホールド200aの下側を通っている。
【0048】
連結クロスメンバ32の後面には、第1ハーネス86の水平部88を保護する第1プロテクタ部材89が設けられている。この第1プロテクタ部材89は、第1ハーネス86の水平部88が挿通される角パイプ状のプロテクタ本体部90と、このプロテクタ本体部90に設けられた取付ブラケット91とを有している。この取付ブラケット91が、連結クロスメンバ32の上面に、ボルトや係止具等の固定部材を介して固定されることにより、第1ハーネス86の水平部88が、第1プロテクタ部材89により保持された状態で連結クロスメンバ32の後面に止着される。このように水平部88を連結クロスメンバ32に止着することで、第1ハーネス86を安定して支持することができる。また、第1ハーネス86(水平部88)を連結クロスメンバ32の後面に止着することで、車両1の前面衝突時に、その衝撃荷重から第1ハーネス86を効果的に保護することができるとともに、シュラウド20又はシュラウド20に支持されたラジエータの後方変位が第1ハーネス86により阻害されるという事態の発生を防止することができる。
【0049】
図1及び図9に示すように、左側のフロントシート221(シートクッション)とフロアパネル8(フロントフロア部8a)との間には、蓄電装置70からの電力を変換する電力変換装置92が配設されている。この電力変換装置92は、該電力変換装置92の上側に設けられたブラケット257を介して、フロアパネル8における前側及び後側クロスメンバ216,217間の部分に支持されている。ブラケット257の前端部は、ボルト262により前側クロスメンバ216の上面に取付固定され、ブラケット257の後端部は、ボルト264により、フロアパネル8の上面に突出するように設けた支持部材258(図9参照)に取付固定されることで、該支持部材258を介して、フロアパネル8に取付固定されている。こうして、電力変換装置92は、フロアパネル15(フロントフロア部8a)に対して上側に離間した状態で、フロアパネル8に支持されることになる。これにより、電力変換装置92の下面に設けた不図示のヒートシンクとフロアパネル8との間に隙間を設けるようにして、該ヒートシンクにより、電力変換装置92に生じた熱の放散を十分に行えるようにしている。尚、ブラケット257は、リヤシート222に着座している乗員の足の先端部がフロントシート221(シートクッション)とフロアパネル8との間に入ってきた場合の該足から電力変換装置92を保護する役割も有している。
【0050】
図10に示すように、本実施形態では、蓄電装置70から、電力変換装置92を介して、一般的な鉛蓄電池で構成されたバッテリ121と車両1の車両電気負荷245とに、上記蓄電した電気(電力)が供給されるように構成されている。車両電気負荷245は、例えばオーディオ装置、ナビゲーション装置、照明装置等である。蓄電装置70からの、車両電気負荷245で使い切れない余剰分の電気(電力)が、車両電気負荷245に電気(電力)を供給するバッテリ121に供給されて蓄電される。
【0051】
電力変換装置92は、蓄電装置70からの電力を降圧してバッテリ121及び車両電気負荷245へ出力するDC/DCコンバータを含む。すなわち、本実施形態では、発電機85及び蓄電装置70側の電圧(例えば25V)が、バッテリ121及び車両電気負荷245側の電圧(12V)よりも高いために、蓄電装置70からバッテリ121及び車両電気負荷245へ電力を供給する際に変圧する必要があり、そのためにDC/DCコンバータを含む電力変換装置92が設けられる。このように発電機85及び蓄電装置70側の電圧を高くした方が、発電機85による発電電力を効率良く蓄電装置70に蓄えることが可能になる。尚、これに限らず、バッテリ121及び車両電気負荷245側の電圧の方が高い場合であってよく、この場合には、電力変換装置92としては、蓄電装置70からの電力を昇圧してバッテリ121及び車両電気負荷245へ出力するものとすればよい。
【0052】
電力変換装置92は、蓄電装置70と同様に、車両1の左側部分に配設されていることになる。また、蓄電装置70は、左側の前輪3よりも前側に配設されている一方、電力変換装置92は、左側の前輪3よりも後側に配設されている。これら蓄電装置70と電力変換装置92とは、左側の前輪3の上側を通る第2ハーネス94により繋がれており、この第2ハーネス94を介して蓄電装置70から電力が電力変換装置92に供給される。第2ハーネス94は、左側の前輪3の上側の位置においては、該前輪3の上側に配置されたマッドガード93により形成されたホイールアーチに沿って配索されている。
【0053】
上記電力変換装置92と上記バッテリ121とは、第3ハーネス95により繋がれており、この第3ハーネス95を介して電力変換装置92から電力がバッテリ121に供給される。
【0054】
図9に示すように、電力変換装置92の車幅方向外側部分には、ハーネス接続部253が設けられている。このハーネス接続部253の上側は、ブラケット257により覆われてはおらず、露出している。ハーネス接続部253には、2本のボルト253aが立設されている。一方、上記第2及び第3ハーネス94,95の後端部には、ボルト挿通孔が形成された接続用金具237がそれぞれ取り付けられており、このボルト挿通孔にボルト253aを挿通した状態で、このボルト253aに不図示のナットを締結することで、接続用金具237、ボルト253a及びナットを介して第2及び第3ハーネス94,95が電力変換装置92と電気的に接続される。
【0055】
第2及び第3ハーネス94,95は、後方に延びながら、フロアパネル8(フロントフロア部8a)におけるハーネス接続部253の前側に形成された挿通孔99を通って、フロアフロアパネル8の下側から上側に導出されて、ハーネス接続部253まで延びている。
【0056】
第2ハーネス94は、図5及び図6に示すように、左側の前輪3の上側のマッドガード93(ホイールアーチ)に沿って、車両側面視で上方に湾曲した円弧状部102と、図6に示すように、ダッシュパネル9の左側側辺部前面に沿って、後側に向かって下側に延びる垂下部103と、図7に示すように、ダッシュパネル9の下端部ないしフロアパネル8の前端部下面に沿って車幅方向に延びる側方延長部104と、同じく図7に示すように、側方延長部104の車幅方向内側端からフロアパネル8の下面に沿って後側へ延びる後方延長部105と、上記挿通孔99から車室内(フロアパネル8上)に導入されて電力変換装置92に接続される車室内導入部106と、図5に示すように、円弧状部102の前端から下側(蓄電装置70の側)へ向かって延びてその下端部が蓄電装置70の接続部78に接続される蓄電装置側延設部107とを有している。
【0057】
第2ハーネス94の円弧状部102は、第3ハーネスの後述の円弧状部122と共に被覆チューブ108により覆われた状態で、マッドガード93(図5及び図6では、マッドガード93の記載を省略している)とその上方に設置されたホイールエプロンメンバ16との間に配設されているとともに、ホイールエプロンメンバ16に複数個の係止具109を介して係止されている。これにより、第2ハーネス94の円弧状部102が、マッドガード93及びホイールエプロンメンバ16間に安定した状態で支持され、左側の前輪3に干渉することが防止される。
【0058】
また、ダッシュパネル9の左側側辺部前面には、図6に示すように、第2ハーネス94の垂下部103を保護する第2プロテクト部材110が取り付けられている。この第2プロテクト部材110には、ダッシュパネル9の前面に突設された係止ピン111が挿入されて係止される係止孔112が形成されている。そして、第2ハーネス94(垂下部103)をダッシュパネル9の左側側辺部前面に沿って配索した後、その前側から第2ハーネス94の垂下部103を覆うように第2プロテクト部材110を設置して係止ピン111を係止孔112に挿入することにより、第2ハーネス94が、ぐらつきが防止された状態でダッシュパネル9の左側側辺部前面に止着されるようになされている。
【0059】
フロアパネル8(フロントフロア部8a)の下面には、図7に示すように、第2ハーネス94の側方延長部104及び後方延長部105の前部を保護する第3プロテクト部材113と、後方延長部105の後部を保護する第4プロテクト部材114とが取り付けられている。これら第3及び第4プロテクト部材113,114は、第2プロテクト部材110と同様に、フロアパネル8の下面に突設された係止ピンが係止孔に挿入されることで、フロアパネル8の下面に止着されるようになされている。
【0060】
第3プロテクト部材113は、フロアパネル8の前端部に沿って車幅方向に延びる横架部115と、フロアパネル8の下面に設けられかつ左側のフロントサイドフレーム5に接続されたフロアフレーム116の車幅方向外側(左側)の面に沿って前後方向に延びる前後部117とを有している。そして、第3プロテクト部材113の横架部115により、第2ハーネス94の側方延長部104がフロアパネル8の前端部下面に止着されるとともに、第3プロテクト部材113の前後部117により、第2ハーネス94の後方延長部105の前部がフロアパネル8の左側側部下面に止着される。
【0061】
ここで、第2ハーネス94の後方延長部105は、上記フロアフレーム116の近傍、つまりフロアパネル8の左側端縁から出来る限り離れた位置に位置させることが好ましい。こうすることで、車両1の左側側面に対して側突が生じたとしても、その衝撃荷重から第2ハーネス94を効果的に保護することができるようになる。そのために、側方延長部104を設けて後方延長部105を上記フロアフレーム116の近傍を通すようにしている。
【0062】
第4プロテクト部材114は、上記フロアフレーム116の車幅方向外側(左側)の面に沿って前後方向に延びる前方部118と、その後端部から後方かつ車幅方向外側に向けて延びる傾斜部119と、その後端部から後方へ真っ直ぐに延びる後方部120とを有している。上記前方部118は、第3プロテクト部材113の後端から後側に所定距離を置いて配設されている。この第4プロテクト部材114により第2ハーネス94の後方延長部105の後部がフロアパネル8の下面に止着されるとともに、その後方延長部105の後部の中間部が、傾斜部119により、後方かつ車幅方向に延びるように屈曲している。
【0063】
尚、上記のように側突対策の面からは、第4プロテクト部材114を、傾斜部119を省略して、上記フロアフレーム116の車幅方向外側の面に沿って直線的に延びるようにすることが好ましい。しかし、このように構成した場合には、第2ハーネス94の、フロアフレーム116の車幅方向外側の面に沿って直線的に延びる後方延長部105を、上方に折り曲げてフロアパネル8の挿通孔99(挿通孔99もフロアフレーム116の車幅方向外側の面の近傍に設ける)に挿通させた後、電力変換装置92のハーネス接続部253に向かうように、車幅方向外側に折り曲げて、更に後方に折り曲げる必要がある。ここで、第2ハーネス94等は、所定の外形と比較的大きな剛性とを有しているので、短い距離の範囲内で各種の方向に折り曲げることは困難である。したがって、上記のように第4プロテクト部材114に傾斜部119を設けて、挿通孔99の前側に所定距離だけ離間した位置で、後方延長部105を上記のように屈曲させることが望ましい。これにより、第2ハーネス94の後方延長部105が短い距離の範囲内で各種の方向に折り曲げられるのを防止することができる。
【0064】
また、図8に示すように、第3及び第4プロテクト部材113,114の上下寸法は、フロアパネル8の下面に沿って設置されたフロアフレーム116(つまりフレーム部材)の上下寸法よりも小さく設定されている。これにより、第3及び第4プロテクト部材113,114の下端面が、フロアフレーム116の下端面よりも上側に位置することになり、第3及び第4プロテクト部材113,114が路面と干渉するのを抑制して、その損傷を抑制することができる。
【0065】
図1及び図2に示すように、上記バッテリ121は、エンジンルーム2内における左側フロントサイドフレーム5の車幅方向内側の面に接するように配設されている。このバッテリ121は、変速機201の上側に位置していて、左側のフロントサイドフレーム5に固定されている。このようにバッテリ121を、エンジン200よりも高さが低い変速機201の上側に配設することで、バッテリ121をエンジンルーム2内にスペース効率良く配設することができる。こうして、バッテリ121も、蓄電装置70及び電力変換装置92と同様に、車両1の左側部分に配設されることになる。
【0066】
電力変換装置92とバッテリ121とを繋ぐ第3ハーネス95は、基本的には、上記第2ハーネス94と平行に配索されている。すなわち、第3ハーネス95は、第2ハーネス94と同様に、上記ホイールアーチに沿って、車両側面視で上方に湾曲した円弧状部122と、ダッシュパネル9の左側側辺部前面に沿って、後側に向かって下側に延びる垂下部123と、ダッシュパネル9の下端部ないしフロアパネル8の前端部下面に沿って車幅方向に延びる側方延長部124と、側方延長部124の車幅方向内側端からフロアパネル8の下面に沿って後側へ延びる後方延長部125と、上記挿通孔99から車室内(フロアパネル8上)に導入されて電力変換装置92に接続される車室内導入部126と、円弧状部122の前端から車幅方向内側(バッテリ121の側)へ向かって延びてその内側端部がバッテリ121の端子に接続されるバッテリ側延設部127とを有している。第3ハーネス95は、円弧状部122、垂下部123、側方延長部124、後方延長部125において、第2ハーネス94の各対応する部分と一体的に束ねられている。
【0067】
第3ハーネス95の円弧状部122は、上記の如く、第2ハーネス94の円弧状部102と共に被覆チューブ108により被覆された状態で、マッドガード93とその上方に設置されたホイールエプロンメンバ16との間に配設されているとともに、ホイールエプロンメンバ16に複数個の係止具109を介して係止されている。また、第3ハーネス95の垂下部123は、第2ハーネス94の垂下部103と共に、第2プロテクト部材110によりダッシュパネル9の左側側辺部前面に止着されている。さらに、第3ハーネス95の側方延長部124及び後方延長部125は、第2ハーネス94の側方延長部104及び後方延長部105と共に、第3及び第4プロテクト部材113,114によりフロアパネル8の下面に止着されている。また、第3ハーネス95の車室内導入部126がフロアパネル8の上側(車室内)において、第2ハーネス94の車室内導入部106と平行にハーネス接続部253に向かって延びている。
【0068】
第3ハーネス95のバッテリ側延設部127は、図2及び図5に示すように、円弧状部122の前側端で第2ハーネス94から分かれて、バッテリ121へ向かうように、車幅方向内側で上側かつ後側に延びている。このバッテリ側延設部127の端部がバッテリ121に接続される。
【0069】
このように第3ハーネス95により電力変換装置92とバッテリ121とが接続されることによって、電力変換装置92から降圧された電圧でもって電力がバッテリ121に供給されて蓄電される。尚、バッテリ121と車両電気負荷245とは、不図示のハーネスを介して接続されており、バッテリ121から該ハーネスを介して車両電気負荷245に電力が供給されるととともに、蓄電装置70から第2ハーネス94、電力変換装置92、第3ハーネス95及び上記不図示のハーネスを介して車両電気負荷245に電力が供給される。
【0070】
したがって、本実施形態では、エンジン200が、左右一対のフロントサイドフレーム5間において車幅方向一側(右側)に片寄って配設され、このエンジン200の前部に発電機85が配設され、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121が、車両1の車幅方向他側(左側)、つまり車幅方向のエンジン200が片寄っている側とは反対側に配設されているので、エンジンルーム2内に配設されたバッテリ121、及び、エンジンルーム2に対して車幅方向外側(左側)の近傍に配設された蓄電装置70が、エンジン200からの熱影響を受け難くなる。特に発熱する蓄電装置70が、エンジンルーム2の外側でかつ前輪3よりも前側に配設されているので、エンジン200からの熱影響が蓄電装置70に及ぶのを効果的に防止しながら、蓄電装置70を車両走行風によって効率良く冷却することができる。
【0071】
また、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121が、車両1の車幅方向の同じ側(左側)に配設されているので、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121を繋ぐ第2及び第3ハーネス94,95を、車両1の左側部分のみを通すだけで済み、第2及び第3ハーネス94,95を短くすることが可能になる。そして、発電機85は、エンジン200の前部に配設されるために、車両1の右側部分に位置しているが、発電機85と蓄電装置70とを繋ぐ第1ハーネス86を、エンジン200とシュラウド20との間を車幅方向に略真っ直ぐに通すことで、第1ハーネス86も短くすることが可能になる。しかも、発電機85と蓄電装置70とが前後方向において略同じ位置に位置するので、第1ハーネス86を前後方向に大きく曲げる必要がない。したがって、第1〜第3ハーネス86,94,95のトータル長さを出来る限り短くすることができる。
【0072】
さらに、蓄電装置70と電力変換装置92とを繋ぐ第2ハーネス94が、マッドガード93により形成されたホイールアーチに沿って配索されているので、左側の前輪3を挟んでその前後に蓄電装置70と電力変換装置92とを配設したとしても、第2ハーネス94が左側の前輪3と干渉することはなく、第2ハーネス94の長さを出来る限り短くすることができる。しかも、第2ハーネス94が、マッドガード93とその上側のホイールエプロンメンバ16との間に配索されて、ホイールエプロンメンバ16に係止されているので、第2ハーネス94の設置状態を安定させることができるとともに、車両1の走行時に第2ハーネス94に雨水や小石等が当たるのを防止することができる。このような効果は、ホイールアーチに沿って配索される第3ハーネス95においても同様に得られる。
【0073】
また、バッテリ121がエンジンルーム2内の左側の前輪3の近傍に配設されているので、電力変換装置92とバッテリ121とを繋ぐ第3ハーネス95を基本的に第2ハーネス94と一体的に束ねることができ、第2及び第3ハーネス94,95の配索が容易になる。
【0074】
また、第2及び第3ハーネス94,95が、ダッシュパネル9の左側側辺部前面に沿って配索されているとともに、それらを保護する第2プロテクタ部材110が左側側辺部前面に沿って設置されているので、ホイールアーチ及びダッシュパネル9の左側側辺部前面に沿って配索された第2及び第3ハーネス94,95にねじれが生じるのを効果的に防止して、第2及び第3ハーネス94,95の設置状態をより一層安定させることができる。
【0075】
さらに、電力変換装置92がフロアパネル8の上側に配設されているので、電力変換装置92に雨水や小石等が当たるのを防止することができる。そして、電力変換装置92が、フロントシート221の下側に配設されているとともに、第2及び第3ハーネス94,95が、電力変換装置92の設置部の近傍(挿通孔99の位置)までフロアパネル8の下面に沿って配索されているので、フロントシート221に着座する乗員の足元部が狭められるいう事態を生じさせることなく、電力変換装置92並びに第2及び第3ハーネス94,95を配設することができる。
【0076】
特に運転席シートの下側に電力変換装置92を配設する場合においては、ダッシュパネル9に第2及び第3ハーネス94,95用の挿通孔を形成して、その挿通孔から第2及び第3ハーネス94,95を車室内に導入することも可能であるが、各種ペダル部材を避けて第2及び第3ハーネス94,95を配索する必要がある。これに対し、上記のように第2及び第3ハーネス94,95をフロアパネル8の下面に沿って配索するようにすれば、各種ペダル部材等との干渉を考慮することなく、第2及び第3ハーネス94,95を容易にかつ適切に配索することができる。
【0077】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、エンジン200が両フロントサイドフレーム5間において右側に片寄って配設され、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121が車両1の左側部分に配設されているが、エンジン200が両フロントサイドフレーム5間において左側に片寄って配設されていてもよく、この場合には、蓄電装置70、電力変換装置92及びバッテリ121が車両1の右側部分に配設されればよい。
【0079】
また、上記実施形態では、電力変換装置92が、左側のフロントシート221とフロアパネル8(フロントフロア部8a)との間に配設されているが、蓄電装置70及びバッテリ121を上記実施形態と同様に配設して、電力変換装置92を、例えばエンジンルーム2内におけるバッテリ121の後側(バッテリ121とダッシュパネル9との間)に配設してもよい。こうすれば、電力変換装置92を車室内に配設する場合に比べて、第2及び第3ハーネス94,95の長さを極力短くすることができる。
【0080】
さらに、上記実施形態では、蓄電装置70がキャパシタで構成されているが、キャパシタ以外のもの(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池等の二次電池)で構成してもよい。但し、キャパシタの方が、蓄電装置70に対する電気の入出力が素早く行えて好ましい。
【0081】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を蓄える蓄電装置と、該蓄電装置からの電力を変換する電力変換装置と、該電力変換装置により変換された電力が供給されるバッテリとを備えた車両の電装品配設構造に有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 車両
2 エンジンルーム
5 フロントサイドフレーム
6 クラッシュカン
8 フロアパネル
9 ダッシュパネル
31 サスペンションクロスメンバ
31b 前方延設部
70 蓄電装置
85 発電機
86 第1ハーネス
92 電力変換装置
93 マッドガード(ホイールアーチ)
94 第2ハーネス
95 第3ハーネス
121 バッテリ
200 エンジン
200a 吸気マニホールド(吸気ダクト)
201 変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレーム間において車幅方向一側に片寄って配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を蓄える蓄電装置と、該蓄電装置からの電力を変換する電力変換装置と、該電力変換装置により変換された電力が供給されるバッテリと、上記発電機、上記蓄電装置、上記電力変換装置及び上記バッテリを繋ぐハーネスとを備えた車両の電装品配設構造であって、
上記発電機は、上記エンジンの前部に配設され、
上記蓄電装置、上記電力変換装置及び上記バッテリは、上記車両の車幅方向他側に配設されていることを特徴とする車両の電装品配設構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の電装品配設構造において、
上記蓄電装置は、上記他側の上記フロントサイドフレームの車幅方向外側に配設されていることを特徴とする車両の電装品配設構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の電装品配設構造において、
上記蓄電装置は、上記車両の上記他側の前輪よりも車両前側に配設され、
上記電力変換装置は、上記他側の前輪よりも車両後側に配設されており、
上記蓄電装置と上記電力変換装置とを繋ぐハーネスが、上記他側の前輪の上側に形成されたホイールアーチに沿って配索されていることを特徴とする車両の電装品配設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の電装品配設構造において、
上記各フロントサイドフレームの前端には、クラッシュカンがそれぞれ配設されており、
上記蓄電装置は、上記他側の上記クラッシュカンよりも車両後側に配設されていることを特徴とする車両の電装品配設構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の電装品配設構造において、
左右両端部にて左右の前輪をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバを更に備え、
上記サスペンションクロスメンバは、上記他側の上記フロントサイドフレームの下側にて該他側のフロントサイドフレームに略沿って前方へ延びる前方延設部を有しており、
上記蓄電装置は、車両前後方向において上記前方延設部の前後方向の一部と同じ位置に配設され、
上記蓄電装置の下端が、上記前方延設部の下端よりも上側に位置していることを特徴とする車両の電装品配設構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の電装品配設構造において、
上記エンジンは、出力軸が車幅方向に延びるように横置き状態で配置され、
上記エンジンの前部に、吸気ダクトが配設されており、
上記発電機は、上記エンジンの前部における上記吸気ダクトの側方に配設されていることを特徴とする車両の電装品配設構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両の電装品配設構造において、
上記エンジンの車幅方向の上記他側に変速機が配設され、
上記バッテリは、上記変速機の上側に配設されていることを特徴とする車両の電装品配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−107513(P2013−107513A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254272(P2011−254272)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)