説明

車両カバー

【課題】不使用時に容易にコンパクト化でき、袋への収納も容易な車両カバーを提供する。
【解決手段】車両カバー1は、オートバイBを覆う車両カバー本体11と、車両カバー本体11を収納する袋12とを備えている。袋12は車両カバー本体11の収納時における外側面が反転されて内側面となった状態で車両カバー本体11の使用時における内側面上に取り付けられている。車両カバー本体11の不使用時には、袋12の中に片手を入れて、その片手に車両カバー本体11をコンパクトに集めた後、袋12の表裏を反転させながら包み込むことで、容易に車両カバー本体11を袋12に収納することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が風雨等に晒されることを防ぐための車両カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両カバーに関しては、従来からいくつかのアイディアが提供されてきている。
例えば、特許文献1に開示される車両カバーによれば、当該車両カバーの収納袋が車両カバー本体と一体化されているとともに当該収納袋が自動車のドアミラーに係止される部材を有することにより、強風時でも容易に当該車両カバーを当該自動車に装着させることが可能となっている。
また、特許文献2に開示される車両カバーによれば、当該車両カバー本体がスライドファスナーによって好適な形状に分解されることが可能になっており、二輪車のサドル後側部に設けられた収納袋に当該車両カバー本体を収納し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306875号公報
【特許文献2】実開昭58−192793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両カバーは一般的に車両全体を覆う必要があるため広いシート状をなし、不使用時に邪魔にならないようにコンパクトにする際に困難が伴う。例えば、比較的手軽な方法として、丸めた車両カバーを巾着型の袋に押し込むことにより不使用時の車両カバーをコンパクト化することが広く行われているが、袋の開口部の大きさに収まるサイズまで車両カバーをコンパクト化する作業が必ずしも容易ではなく、また、そのコンパクト化が不十分であれば袋に車両カバーを押し込む際にスムーズに入らず、手間と時間を要する。
【0005】
そこで、本発明は、不使用時に容易にコンパクト化でき、袋への収納も容易な車両カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的に鑑みて想到されたものであり、
車両を覆う車両カバー本体と、
前記車両カバー本体の不使用時に前記車両カバー本体を収納する袋と
を備え、
前記袋は、前記車両カバー本体の使用時における内側面上に、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面が外側面になるように反転された状態で連結されている
車両カバーを提供する(第1の実施態様)。
【0007】
また、上記の第1の実施態様において、
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の外側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における外側面上とを各々覆うように防水加工が施されており、
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の内側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面上とのいずれにも、それらを覆うような防水加工が施されていない
構成が採用されてもよい(第2の実施態様)。
【0008】
また、上記の第1の実施態様において、
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の外側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における外側面上とを各々覆うように防水素材が配置されており、
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の内側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面上とのいずれにも、それらを覆うような防水素材の配置が行われていない
構成が採用されてもよい(第3の実施態様)。
【0009】
上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面が外側面になるように反転され平面状に押し潰された状態で、かつ当該袋が前記車両カバー本体の収納を受け入れるために有する開口部が開口可能な状態で、当該袋の外縁を一周する部分が前記車両カバーに固定されている
構成が採用されてもよい(第4の実施態様)。
【0010】
また、上記の第1乃至4のいずれかの実施態様において、
前記袋は、前記車両カバー本体の使用時における内側面上の一部の領域を覆うように配置され当該一部の領域に固定されたシート状部材と、前記車両カバー本体のうち前記シート状部材と層をなして重なる部分とにより構成される
構成が採用されてもよい(第5の実施態様)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の実施態様にかかる車両カバーによれば、袋に片手を入れて、袋越しに車両カバー本体を袋内の手で掴みながら丸めてゆき、コンパクトに丸めた後、袋を表裏反転させながら丸めた車両カバー本体を袋でくるむように収納することができる。そのため、仮に車両カバー本体の丸め方が多少不十分であっても、袋の反転時に車両カバー本体を圧縮しながら取り込むことができるため、例えば、表裏反転させない袋に丸めた車両カバー本体を押し込む従来の方法と比較して、よりスピーディーかつ確実に車両カバー本体の収納を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明の第1の実施態様にかかる車両カバーによれば、袋が車両カバー本体に連結されているため、袋が紛失するおそれがないだけでなく、埃や泥等によって汚れる機会が多い袋の車両カバー本体収納時における外側面が、不使用時には表裏反転され内側面となった状態で、使用時の車両カバー本体の内側面上に配置されることになるため、袋の汚れが車両カバー本体により覆われる車両を汚すことがない。さらに、使用時には袋が車両カバー本体により覆われ、外の風雨に晒されることがないため、使用時における袋の外側面(車両カバー本体の収納時の内側面)が埃や泥等により汚れることがない。
【0013】
また、本発明の第2の実施態様にかかる車両カバーによれば、車両カバー本体の使用時における外側面に防水加工が施されているため、使用時において雨水等により車両が濡れることがなく、また袋の車両カバー本体収納時における外側面に防水加工が施されているので、不使用時に袋に収納されている車両カバー本体が薄い等により濡れることがない。また、雨水等により埃や汚れが流れ落ちるため、車両カバーに付く汚れが低減される。
【0014】
また、本発明の第3の実施態様にかかる車両カバーによれば、埃や泥等によって汚れる機会が多い車両カバー本体の使用時における外側面および袋の車両カバー本体収納時における外側面が防水素材によって作られているので、上述の第2の実施態様に関し述べたものと同様の効果が得られる。
【0015】
また、本発明の第4の実施態様にかかる車両カバーによれば、袋の外縁部が一周に渡り車両カバー本体の使用時における内側面上に固定されているので、袋が車両カバー本体から容易に外れてしまう危険性が無くなるとともに、袋の中に車両カバー本体を収納する際に車両カバー本体と袋が滑ったりずれたりせず、ユーザの収納作業が楽になる。さらに、車両カバー本体と袋との間に余計な隙間がないので、そこに埃や泥等がたまる危険性もない。
【0016】
また、本発明の第5の実施態様にかかる車両カバーによれば、袋が、シート状部材と当該シート状部材に対向する位置に存在する車両カバー本体の領域とによって構成されるので、例えば予め袋状に成形された部材を車両カバー本体に取り付ける場合と比較し、少ない材料で本発明にかかる車両カバーの製造が可能であるとともに、袋の製造工程を簡素化できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明にかかる車両カバーをオートバイに装着した場合の側面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる車両用カバーを表裏反対にして裏面を外側面とした場合の側面図である。
【図3】図3は、車両用カバー本体を袋に収納する手順を説明するための図である。
【図4】図4は、車両用カバー本体を袋に収納する手順を説明するための図である。
【図5】図5は、車両用カバー本体を袋に収納する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本発明の一具体例である実施形態を、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態にかかる車両カバー1をオートバイBに被せた状態、すなわち使用時の側面図である。
【0019】
車両カバー1は、オートバイBを覆う車両カバー本体11と、不使用時に車両カバー本体11を収納する袋12と、車両カバー本体11をオートバイBに被せた(装着した)状態で車両カバー本体11越しに当該オートバイBの胴体近辺を締め付ける胴体締め付け機構13と、車両カバー本体11をオートバイBに被せた状態で車両カバー本体11の外縁部をなす裾の部分を当該オートバイBの前後方向に締め付ける外縁部締め付け機構14とを備える。
【0020】
車両カバー本体11は、使用時において、オートバイBの形状に沿った立体的形状を構成するように、各々所定の形状に切断された複数のシート状部材が互いに縫製等により連結されることにより形成されている。
【0021】
車両カバー本体11を構成するシート状部材は、例えばナイロンの布地の一方の面に合成樹脂がコーティングされたものである。当該一方の面とは、車両カバー本体11の上述の使用時における外側面のことであり、以下この面を「表面」と呼ぶ。当該表面に施された上述の合成樹脂のコーティングは防水を目的としたものであり、この防水加工により表面側からの雨水等の浸透を防ぐことができる。なお、当該表面と反対側の面を以下「裏面」と呼ぶが、当該裏面には例えば防水加工が施されていない。裏面が雨水等に触れる機会は少ないため、裏面に防水加工を行わないことにより車両カバー1の製造コストを抑えることができるためである。
【0022】
袋12は、車両カバー本体11の不使用時に車両カバー本体11を収納するためのものであり、車両カバー本体11を収納する状態での外側面を以下「表面」と呼び、当該表面と反対側の面を以下「裏面」と呼ぶ。
【0023】
袋12は、例えば、表面を内側面にして裏面を外側面にした場合、中に何も収納していない状態で平らに置かれると矩形状の形状を成し、当該矩形の4辺のうちの3辺が閉じており当該3辺以外の1辺が開口している。後述するように、この開口部を通じて車両カバー本体11が袋12に収納される。
【0024】
また、袋12は、例えば、矩形状の形状を有する1枚のシートを半分に折り畳んで略正方形に近い矩形状の形状とし、当該折り畳みにおける折り目以外の3辺のうち2辺の各々に関し、層を成している2枚のシートをその縁部において互いに縫い合わせることにより、袋状に作られている。
【0025】
また、袋12の素材としては、例えば、ナイロンの布地の表面側に合成樹脂をコーティングすることにより防水加工が施されたものが用いられている。なお、例えば、袋12の裏面には防水加工が施されていない。
【0026】
また、袋12は、表面を内側面にした状態で、例えば、車両カバー本体11の使用時における前側部の上下方向の中間よりやや下の位置において、その裏面上に縫い付けられている。袋12の車両カバー本体11に対する縫い付け方法に関しより詳しく説明すると、袋12の開口部が使用時における車両カバー本体11の下側に開口するように袋12を配置し、その状態で袋12の外縁を一周するように、袋12を車両カバー本体11の内側面上に縫い付ける。その際、袋12の開口が塞がれないように、袋12の開口部を構成する1辺に関しては、層を成す2枚のシートのうち車両カバー本体11に接する側の1枚のみを車両カバー本体11に対し縫い付ける。これにより、裏面を外側面とする袋12が下方に開口した状態で車両カバー本体11の内側面に固定される。
【0027】
なお、袋12は、例えば、車両カバー本体11の裏面上に固定された状態で、上述の開口部の構成する1辺と当該1辺に対向する1辺との間の長さが約40センチメートルであり、当該1辺に垂直な対向する2辺どうしの間の長さが約35センチメートルである。ただし、袋12の大きさはこれに限られず、収納する車両カバー本体11の大きさや厚さ等に応じておのずと決まってくるものである。
【0028】
また、袋12は、例えば、上述の開口部を構成する1辺の先端部分が袋12の表面側から裏面側に向かって折り返されて、当該開口部の一周に渡って紐121が通るトンネルが構成される。当該トンネルには、その内側を通り抜けるように紐121が配置され、この紐121が引き絞られることにより当該開口部がギャザー状になって閉じられる。その結果、袋12が車両カバー本体11をしっかりと収納することができる。
【0029】
胴体締め付け機構13は、例えば、右側面のベルト状部材131R、左側面のベルト状部材131L、右側面の紐状部材132R、左側面の紐状部材132L、オス構造を有するバックル用部材133M、メス構造を有するバックル用部材133Fとから構成される。
【0030】
ベルト状部材131Rおよびベルト状部材131Lは、例えば、ナイロン100パーセントのグログランテープである。また、ベルト状部材131Rおよびベルト状部材131Lのサイズは、例えば、長手方向の長さが約10センチメートルであり、当該長手方向と垂直な方向の幅の長さが約2センチメートルである。
【0031】
ベルト状部材131Rおよびベルト状部材131Lは、車両カバー本体11における使用時の右側部および左側部の各々の前後方向における中間付近の表面側の下から10センチメートルほどの位置に、長手方向が地面と平行になる状態で、その両端部分が車両カバー本体11に縫い付けられている。それにより、ベルト状部材131Rおよびベルト状部材131Lは、幅が約9センチメートル程度の隙間、すなわち輪っかを構成する。
【0032】
紐状部材132Rおよび紐状部材132Lもまた、例えば、ナイロン100パーセントのグログランテープである。
【0033】
紐状部材132Rのサイズは、例えば、長手方向の長さが約2メートルであり、当該長手方向と垂直な方向の幅の長さが約2センチメートルである。また、紐状部材132Lのサイズは、例えば、長手方向の長さが約5センチメートルであり、当該長手方向と垂直な方向の幅の長さが約2センチメートルである。
【0034】
紐状部材132Rは、車両カバー本体11における使用時の右側部の前後方向における中間付近の表面側の下から50センチメートルほどの位置に、下向きにぶら下がるように、その一端が車両カバー本体11に縫い付けられている。また、紐状部材132Lは、車両カバー本体11における使用時の左側部の前後方向における中間付近の表面側の下から50センチメートルほどの位置に、下向きにぶら下がるように、その両端が車両カバー本体11に縫い付けられている。
【0035】
バックル用部材133Mはオス構造を有する合成樹脂製の部材であり、バックル用部材133Fはメス構造を有する合成樹脂製の部材である。当該オス構造とメス構造が互いに嵌合することにより、バックル用部材133Mとバックル用部材133Fが係合した状態で固定される。
【0036】
また、バックル用部材133Mにおけるオス構造と反対側の部分には、「日」の字形状のコキが設けられており、紐状部材132Rの一端がこのコキの2つの細長い矩形状の孔に通されることにより、長さ調整可能に取り付けられる。
【0037】
また、バックル用部材133Fにおけるメス構造と反対側の部分には、「ロ」の字形状の角カンが設けられており、紐状部材132Lがこの角カンの細長い矩形状の孔を通り抜けた状態で、その両端が車両カバー本体11に縫い付けられている。その結果、バックル用部材133Fは、紐状部材132Lが車両カバー本体11に縫い付けられている位置から2.5センチメートル程下の位置にぶら下がることになる。
【0038】
車両カバー本体11の使用時において、紐状部材132Rの取り付けられたバックル用部材133Mをベルト状部材131Rの上述した輪っかを通した後、オートバイBの右側面下方より車両カバー本体11の下側(前輪と後輪との間)を通してオートバイBの左側面に引き出し、さらにベルト状部材131Lの上述した輪っかを通した後、紐状部材132Lにぶら下がっているバックル用部材133Fに係合させることにより、車両カバー本体11をオートバイBの胴体に対し締め付ける。その際、車両カバー本体11とオートバイBとの間に緩みがある場合には、紐状部材132Rの一端を引っ張ってバックル用部材133Mの位置を移動させることにより当該緩みを解消する。このような胴体締め付け機構13による締め付けにより、車両カバー本体11の胴体付近が風等によってバタバタすることがない。
【0039】
外縁部締め付け機構14は、ベルト状部材141F、ベルト状部材141B、紐状部材142R、紐状部材142L、バネ式固定具143F、バネ式固定具143Bとから構成される。
【0040】
ベルト状部材141Fおよびベルト状部材141Bは、例えば、ナイロン100パーセントのグログランテープである。ベルト状部材141Fおよびベルト状部材141Bのサイズは、例えば、長手方向の長さが約10センチメートルであり、当該長手方向と垂直な方向の幅の長さが約2センチメートルである。
【0041】
ベルト状部材141Fおよびベルト状部材141Bは各々、車両カバー本体11における使用時の前側部および後側部の各々の表面側の下から50センチメートルほどの位置において、長手方向が地面と平行になるようにその両端部分が車両カバー本体11に縫い付けられている。それにより、ベルト状部材141Fおよびベルト状部材141Bは、幅が約9センチメートル程度の隙間、すなわち輪っかを構成する。
【0042】
紐状部材142Rおよび紐状部材142Lは、例えば、ナイロン100パーセントで、直径が約4ミリメートルの紐状体である。
【0043】
ところで、車両カバー本体11の外縁部をなす裾の部分は、例えば、当該外縁の一周に渡って表面側から裏面側に向かって2センチメートルほど折り込まれて先端部分が外縁の一周に渡って縫い付けられている。これにより、車両カバー本体11の裾の部分には、外縁を一周する細いトンネルが形成されている。紐状部材142Rおよび紐状部材142Lは、車両カバー本体11のこのトンネルの内側を通り抜けるように配置され、車両カバー本体11の外縁部を1周している。
【0044】
バネ式固定具143Fおよびバネ式固定具143Bは、各々、円筒形状を有する本体部分と、バネと、当該円筒形状の底に当該バネを介して取り付けられた押圧部材とから構成されている。バネ式固定具143Fの本体部分の円筒内には、紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの各々の前方側の端部が、またバネ式固定具143Bの本体部分の円筒内には、紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの各々の後方側の端部が各々通され、バネ式固定具143Fのバネの付勢によりそれらの端部に対し押圧部材が押圧されることにより、紐状部材142Rおよび紐状部材142Lにバネ式固定具143Fが固定される。なお、押圧部材がバネの付勢に逆らうように外部から押下されると、紐状部材142Rおよび紐状部材142Lに対する押圧部材の押圧が緩み、バネ式固定具143Fおよびバネ式固定具143Bの紐状部材142Rおよび紐状部材142Lに対する位置が変更可能となる。
【0045】
上述の構成により、バネ式固定具143Fおよびバネ式固定具143Bは、車両カバー1の前下方および後下方における裾部分の引き締めを可能とする。具体的には、車両カバー本体11の使用時において、紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの前方端部をオートバイBの前方向に引っ張りながら、バネ式固定具143Fの押圧部材を押下しながらオートバイBの後方向に向けて押しやる。それにより、車両カバー1の前下方の裾部分が紐状部材142Rおよび紐状部材142Lにより引き締められる。その状態で、バネ式固定具143Fの押圧部材に対する押下を解放すれば、その位置でバネ式固定具143Fが紐状部材142Rおよび紐状部材142Lに対し固定される。その結果、車両カバー1の前下方の裾部分における引き締めが固定される。紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの後方端部においても、バネ式固定具143Bを用いて、同様の引き締めとその固定が行われる。これにより、車両カバー本体11の前側部分と後側部分における緩みが解消される。
【0046】
このような外縁部締め付け機構14による締め付けにより、車両カバー本体11がオートバイBの下側部分にしっかりと沿うことになり、その結果、車両カバー本体11の使用時において、車両カバー本体11の前側および後側の下側付近が風によってバタバタすることがない。
【0047】
なお、上記の引き締めに伴い紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの先端付近の部分が車両カバー本体11の裾部分のトンネルの外側に長く引き出されるため、そのままではそれらの先端が地面に垂れ下がり汚れてしまう。そこで、ベルト状部材141Fの輪っかおよびベルト状部材141Bの輪っかに紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの先端部分を通し、縛りつける等により、紐状部材142Rおよび紐状部材142Lの汚れを防止することができる。
【0048】
以上のように構成される車両カバー1の使用方法の一例を、以下に説明する。
【0049】
先ず、車両カバー1の使用時においては、図1に示されるように、車両カバー1がオートバイBを覆うように被されている。
【0050】
この状態のオートバイBから胴体締め付け機構13および外縁部締め付け機構14による締め付けを解除して車両カバー1を取り外し、車両カバー本体11の表面を内側面にする。そうすると、車両カバー1は、図2に示されるような状態になる。この状態においては、袋12の裏面が外側面となっており、袋12の表面が内側面となっている。
【0051】
この状態で、図3に示されるように、袋12の開口部から袋12の中に片手(以下、右手とする)を差し入れて、手のひらを開く。
【0052】
次に、もう一方の手(すなわち、この場合は左手)で車両カバー本体11の端々を順次、掴み、それらの端々を袋12の中の右手に引き渡していくことにより、車両カバー本体11の全体を右手に集めていく。この場合、車両カバー本体11の表面が内側面である状態を維持するように左手から右手へと車両カバー本体11の端々を引き渡す作業を行うことが望ましい。車両カバー本体11の裏面は埃や泥等によって汚される機会が少ないので、当該裏面を外側面にして作業することにより、袋12の裏面を汚さずに済むためである。なお、袋12の裏面を汚さない利点については後述する。
【0053】
そして、図4に示されるように、車両カバー本体11の全体がコンパクトに丸められて右手に掴まれた状態となったら、袋12の表面を外側面とするように袋12を反転させながら、袋12の裏面が車両カバー本体11の全体を包み込むように収納する。これにより、車両カバー本体11は、図5(a)に示されるように袋12に収納された状態となる。続いて、袋12の紐121を引き絞ることによって、車両カバー本体11が袋12の開口部からはみ出してこないようにする。
【0054】
このように袋12にしっかりと収納された状態の車両カバー1は、いかようにも扱うことが可能である。例えば、オートバイBに収納スペースがあればそこに収納してもよいし、倉庫等にしまってもよい。
【0055】
以上のように説明してきた車両カバー1は、車両カバー1において汚れる可能性のある部分が車両カバー本体11および袋12の表面となっており、当該汚れる可能性のある部分(すなわち、表面)は、上述の使用方法の一例の説明においても理解されるように、車両カバー本体11および袋12の裏面とが互いに接触しないように、車両カバー本体11の袋12に対する収納を行うことが容易である。したがって、車両カバー本体11および袋12の裏面を常に汚されていない状態に保つことができ、その使用においてオートバイBに車両カバー1から汚れが付着したり、車両カバー本体11の袋12に対する収納においてユーザの身体や衣服等に車両カバー1から汚れが付着したりする問題が回避される。
【0056】
なお、袋12が車両カバー本体11の前側部の下方位置にその開口部が下方に開口するように配置されていることにより、車両カバー11の全体を集める上述の動作が容易である。より具体的には、車両カバー本体11のうちオートバイBのハンドル部を覆うために伸びている部分が袋12の中に入れた右手の近くに位置するとともに、その他の部分も含め車両カバー本体11の全体が袋12の位置を概ね一方の端部として伸びることになるので、袋12の中に入れた右手から遠い位置の車両カバー本体11の端々を左手で掴む際に手が届きやすく、便利である。
【0057】
(変形例)
上述した実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形が可能である。
【0058】
例えば、車両カバー1は、オートバイBに使用するものとしたがそれ以外の車両、すなわち自動車や自転車等に使用されてもよい。
【0059】
また、車両カバー1は、胴体締め付け機構13および外縁部締め付け機構14を備えるものとしたが、それらは同様な機能を有するいかなる機構によって代替されてもよいし、必要に応じて無くてもよい。
【0060】
また、上述した車両カバー1の各要素の形状、大きさ、材料、製造方法、特定の位置、およびそれらを限定する数値は、あくまでも一例であり、必要に応じてその他のいかなる形状、大きさ、材料、製造方法、特定の位置、およびそれらを限定する数値が用いられてもよい。例えば、縫い付けにより固定されるとした部分は、熱溶着、接着剤による固着、その他のいかなる方法によって固定されてもよい。
【0061】
また、車両カバー本体11および袋12は、各々ナイロンの布地の一方の面に合成樹脂がコーティングされることにより防水加工施されるものとしたが、その他のいかなる方法によって防水加工が施されてもよいし、場合によっては防水加工が施されなくてもよい。さらに、表裏両方の面に防水加工が施されていてもよい。
【0062】
また、車両カバー本体11および袋12は、一方の面が防水加工される代わりに、一方の面が防水素材によって作られていてもよい。さらに、表裏両方の面が防水素材によって作られていてもよい。
【0063】
また、袋12は、紐121が引き絞られることにより開口部がギャザー状になって閉じられるものとしたが、その他のいかなる方法によって開口部が閉じられてもよいし、場合によって開口部を閉じる手段が用いられなくてもよい。例えば、袋12が車両カバー本体11を収納した状態で、当該開口部がスナップボタンによって閉じられるようにしてもよい。また、上述したバネ式固定具によって、開口部が閉じられてもよい。
【0064】
また、袋12は、例えば、矩形状の形状を有する1枚のシートを半分に折り畳んで略正方形に近い矩形状の形状を構成し、当該折り畳みの際の折り目を除く3辺のうちの2辺において層をなす2枚のシートを互いに縫い合わせることにより固定するものとしたが、これは本発明を限定するものではない。例えば、1枚の矩形状のシートを折り畳まずに車両カバー本体11の裏面上に配置し、その状態で当該シートの3辺を車両カバー本体11に縫製等により固定することによって、他の1辺において開口部を有する袋12を構成してもよい。この場合、袋12の構成要素は当該シートおよび当該シートと対向する位置にある車両カバー本体11の一部分である。したがって、当該車両カバー本体11の一部分は、車両カバー本体11の構成要素と袋12の構成要素とを兼ねることになる。
【0065】
また、袋12は、例えば、車両カバー本体11の裏面上において車両カバー本体11の使用時における前側部の上下方向中間付近よりやや下に固定されているものとしたが、これは本発明を限定するものではない。例えば、袋12は、車両カバー本体11の裏面上において車両カバー11の使用時における後側部の上下方向中間付近よりやや下に固定されていてもよいし、必要に応じて、車両カバー本体11の裏面上のいずれの場所に固定されていてもよい。
【0066】
また、袋12の開口部の開口の方向は、車両カバー本体11の使用時における下方であるものとしたが、これは本発明を限定するものではない。例えば、袋12の開口部の開口の方向が車両カバー本体11の使用時における上方向や前方向、後方向等となるような袋12の配置が採用されてもよい。
【0067】
また、袋12はその外縁の一周全てが車両カバー本体11に固定されているものとしたが、これは本発明を限定するものではない。すなわち、袋12の4辺のうち任意の1辺、任意の2辺、もしくは任意の3辺のみが車両カバー本体11に固定されていてもよいし、袋12の車両カバー本体11に対向する面の全領域やそのうちの任意の一部領域のみが車両カバー本体11に固定されていてもよい。
【0068】
また、袋12は中に何も収納していない状態で平らに置かれた場合の形状が略矩形であるものとしたが、これは本発明を限定するものではない。例えば、その形状が半楕円などの他の形状であってもよい。
【0069】
また、上述した車両カバー1の使用方法はあくまでも一例であって、車両カバー1はその他のいかなる方法によって使用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる車両カバーは、車両を使用する多くのユーザにより用いられると考えられ、いわゆる製造業や卸売り・小売り等のサービス業において利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…車両カバー、11…車両カバー本体、12…袋、13…胴体締め付け機構、14…外縁部締め付け機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を覆う車両カバー本体と、
前記車両カバー本体の不使用時に前記車両カバー本体を収納する袋と
を備え、
前記袋は、前記車両カバー本体の使用時における内側面上に、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面が外側面になるように反転された状態で連結されている
車両カバー。
【請求項2】
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の外側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における外側面上とを各々覆うように防水加工が施されており、
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の内側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面上とのいずれにも、それらを覆うような防水加工が施されていない
請求項1に記載の車両カバー。
【請求項3】
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の外側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における外側面上とを各々覆うように防水素材が配置されており、
前記車両カバー本体の使用時における前記車両カバー本体の内側面上と、前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面上とのいずれにも、それらを覆うような防水素材の配置が行われていない
請求項1に記載の車両カバー。
【請求項4】
前記袋が前記車両カバー本体を収納する状態における内側面が外側面になるように反転され平面状に押し潰された状態で、かつ当該袋が前記車両カバー本体の収納を受け入れるために有する開口部が開口可能な状態で、当該袋の外縁を一周する部分が前記車両カバーに固定されている
請求項1乃至3のいずれかに記載の車両カバー。
【請求項5】
前記袋は、前記車両カバー本体の使用時における内側面上の一部の領域を覆うように配置され当該一部の領域に固定されたシート状部材と、前記車両カバー本体のうち前記シート状部材と層をなして重なる部分とにより構成される
請求項1乃至4のいずれかに記載の車両カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131241(P2012−131241A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282466(P2010−282466)
【出願日】平成22年12月18日(2010.12.18)
【出願人】(595176294)岡田商事株式会社 (3)