説明

車両内通信システム

【課題】メーターECUと車両後端に配置した通信ECUとの間で直流電源の供給と信号の送受信を単一回路上で行なうことで車両後端に配置された複数のランプを操作する。
【解決手段】車両内通信システムは、インストルメントパネルに配置され、直流電源を供給するメーターECU(親機)1と、車両後端部に配置される通信ECU(子機)2と、メーターECU(親機)1および通信ECU(子機)2間を接続する単一の伝送路Lとを備える。メーターECU(親機)1は、スイッチの信号に応じて直流電源(バッテリー3)の電圧をパルス状列の電圧に変換する手段を備える。通信ECU(子機)2は、パルス状列の電圧を監視する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内通信システムに係わり、特に、ワイヤーハーネスの省線化による省スペース化・軽量化およびコストダウンを図ることができる車両内通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の車両内通信システムとしては、図4に示すようなものが知られている。
【0003】
同図において、従来の車両内通信システムは、エンジンルームまたはインストルメントパネル周辺に配置されるスイッチ群100、メーター200、リレー群300およびバッテリー400と、車両後端部に配置されるランプ群500とを備えており、バッテリー400はリレー群300を構成する第1〜第4のリレー300a〜300dに接続され、第1のリレー300aにはスイッチ群100を構成するペダルスイッチ100aおよび第1の通信線Laを介してランプ群500を構成するストップランプ500aが接続されている。また、第2のリレー300bにはシフトレバースイッチ100b、メーター200および第2の通信線Lbを介してバックランプ500bが、第3のリレー300cにはライトスイッチ100c、メーター200および第3の通信線Lcを介してクリアランプ500cが、第4のフラッシュリレー300dにはライトスイッチ100c、メーター200および第4の通信線Ldを介してターンランプ500dがそれぞれ接続されている。
【0004】
このような構成の車両内通信システムにおいては、ドライバーの操作した例えばペダルスイッチ100aの信号によって第1のリレー300aが駆動され、バッテリー400から直流電源が供給されることでストップランプ500aが点灯されるように構成されている。
【0005】
しかしながら、このような構成の車両内通信システムにおいては、次のような難点があった。
【0006】
第1に、各ランプにそれぞれリレーおよび通信線が割り当てられるため、車両前後に配策される電線束径が太くなり、ひいては電線が重くなることで、車両の重量が増加し、室内空間が圧迫される。
【0007】
第2に、一般的な乗用車のバッテリーは直流12Vであるところ、LEDや電子制御ユニット、すなわち車載ECU(Electronic Control Unit)は,必ずしも12Vの電源を必要としないことから、電源を必要な電圧値・電流値まで降下させて使用する必要がある。
【0008】
第3に、リレーからランプまでの通信線が長く、また他の機器に繋がる複数の長い電線が束ねられて併走するため、他の機器が動作した場合に当該電線がアンテナのように作用することで信号線に微弱電流が流れ、ひいては通常のバルブ(ランプ)より消費電力の少ないLEDが誤動作する虞がある。
【0009】
このため、(イ)車載された各電装機器間を繋ぐ通信線を廃止し、直流電源(バッテリー)から繋がる電源線に信号を重畳し、単一の回路で電源供給と通信を行うことで各機器を動作させるもの(例えば、特許文献1等)や、(ロ)エアバック制御ECUとエアバックセンサを繋ぐ単一の回路で電源供給と通信を行うことでセンサを動作させるもの(例えば、特許文献2等)が開発されている。
【0010】
ここで、(イ)の車両内通信システムにおいては、各ECUはそれぞれ電源線に繋がる通信用の送信回路、受信回路を有しており、各ECUは送信したい信号を搬送波に重畳して電源線に乗せ、受信側は電源線から搬送波の周波数成分を取り出してそれを信号として受信する。なお、ECUの電源は常に供給されている。
【0011】
しかしながら、(イ)の車両内通信システムにおいては、ワイヤーハーネスの省線化によるスペース効率アップ・軽量化およびコストダウンを図ることができるものの、信号が搬送波に重畳されて電源線に乗せられることから、電源線が長くなると信号が劣化する上、ノイズの重畳が大きくなり、また搬送波に近い周波数のノイズを判別することが困難であるという難点があった。
【0012】
一方、(ロ)の車両内通信システムにおいては、(イ)の車両内通信システムと同様に、ワイヤーハーネスの省線化による省スペース化・軽量化およびコストダウンを図ることができるものの、エアバックセンサの消費電流がある程度小さく安定していることが必要であるため、大きな負荷を駆動することができず、また、電源の供給を受ける側の機器(以下「子機」という。)の定格消費電流により電源を供給する側の機器(以下「親機」という。)の閾値を調整する必要があり、さらに、定格電流の異なる子機を接続することが困難になるという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−156953号公報
【特許文献2】特開平11−53677号公報
【特許文献3】特開2001−144659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、メーターECUと車両後端に配置した通信ECUとの間で直流電源の供給と信号の送受信を単一回路上で行なうことで車両後端に配置された複数のランプを操作することができる車両内通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様である車両内通信システムは、インストルメントパネルに配置され、直流電源を供給するメーターECUと、車両後端部に配置される通信ECUと、メーターECUおよび通信ECU間を接続する単一の伝送路とを備え、メーターECUは、スイッチの信号に応じて直流電源の電圧をパルス状列の電圧に変換する手段を備え、通信ECUは、パルス状列の電圧を監視する手段を備えるものである。
【0016】
第1の態様である車両内通信システムによれば、第1に、ワイヤーハーネスの省線化による軽量化・省スペース化およびワイヤーハーネス部材のコストダウンを図ることができ、第2に、伝送路にパルス状列の電圧に変換した信号が印加されることで、伝送路(電源線)が長い場合でも信号が劣化せず、ノイズの重畳による誤通信も少なくできる。
【0017】
第3に、閾値を調整することで直流電源(バッテリー)の劣化や、オルタネータ(発電機)のオン/オフ等による電源の揺らぎによる誤通信を改善することができる。
【0018】
第4に、一般的な直流デジタル回路で構成することで、既存のシステムへの追加を容易に行うことができる。
【0019】
本発明の第2の態様は、第1の態様である車両内通信システムにおいて、通信ECUは、パルス状列の電圧がLo(低電位)電圧のときに、伝送路を電気的に切離する手段、通信ECUの各部回路を駆動する手段およびメーターECUへ信号を送出する手段を備えるものである。
【0020】
第2の態様である車両内通信システムによれば、第1の態様である車両内通信システムの作用・効果に加え、通信ECUからメーターECUへ信号を送出することができる。
【0021】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である車両内通信システムにおいて、伝送路の通信ECU側には、通信ECUと同一構成の他の通信ECUが通信ECUと並列に接続されているものである。
【0022】
第3の態様である車両内通信システムによれば、第1の態様または第2の態様である車両内通信システムの作用・効果に加え、他の通信ECUからメーターECUへ信号を送出することができ、一の通信ECUと他の通信ECU間で信号の送受信が可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の態様乃至第4の態様の車両内通信システムによれば、次のような効果がある。
【0024】
第1に、ワイヤーハーネスの省線化による軽量化・省スペース化およびワイヤーハーネス部材のコストダウンを図ることができる。
【0025】
第2に、伝送路にパルス状列の電圧に変換した信号が印加されることで、搬送波を用いた通信よりも伝送路(電源線)が長い場合でも信号が劣化せず、ノイズの重畳による誤通信も少なくできる。
【0026】
第3に、閾値を調整することで直流電源(バッテリー)の劣化や、オルタネータ(発電機)のオン/オフ等による電源の揺らぎによる誤通信を改善することができる。
【0027】
第4に、一般的な直流デジタル回路で構成することで、既存のシステムへの追加を容易に行うことができる。
【0028】
第5に、メーターECUと通信ECU若しくは通信ECUどうしの送受信が可能になることで、例えば通信ECUからの情報により、バルブ(ランプ)切れなどの車両情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の車両内通信システムの一例を模式的に示す説明図。
【図2】図1に示すメーターECU(親機)の一例を示すブロック図。
【図3】図1に示す通信ECU(子機)の一例を示すブロック図。
【図4】従来の車両内通信システムの一例を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の車両内通信システムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明における車両内通信システムの一実施例を模式的に示す説明図、図2は、本発明の車両内通信システムにおけるメーターECUの一実施例を示すブロック図、図3は、本発明の車両内通信システムにおける通信ECUの一実施例を示すブロック図である。
【0032】
図1において、本発明における車両内通信システムは、インストルメントパネル(不図示)に配置され、直流電源を供給するメーターECU(親機)1と、車両後端部に配置される通信ECU(子機)2と、メーターECU(親機)1および通信ECU(子機)2間を電気的に接続する単一の伝送路Lとを備えており、メーターECU1には直流電源としてのバッテリー3およびペダルスイッチ4a、シフトレバースイッチ4b、ライトスイッチ4c等から構成されるスイッチ群4が接続され、通信ECU2にはストップランプ5a、バックランプ5b、クリアランプ5c、ターンランプ5d等から構成されるランプ群5が接続されている。
【0033】
メーターECU(親機)1は、図2に示すように、送信回路(以下「親機送信回路」という。)11と、受信回路(以下「親機受信回路」という。)12と、伝送路Lの電圧を調整するレギュレータ(以下「親機レギュレータ」という。)13と、各部(回路)を制御するマイクロコンピュータ(以下「親機マイクロコンピュータ」という。)14とを備えており、伝送路Lの一端部には直流電源としてのバッテリー3が接続され、さらにその下流側(通信ECU(子機)2側)には下流側に向かって順次親機レギュレータ13、親機送信回路11および親機受信回路12が接続されている。
【0034】
また、ペダルスイッチ4a、シフトレバースイッチ4b、ライトスイッチ4c等のスイッチ群4は親機マイクロコンピュータ14にそれぞれ接続され、親機マイクロコンピュータ14には親機レギュレータ13、親機送信回路11および親機受信回路12が接続されている。
【0035】
親機送信回路11は、第1〜第4の電気抵抗11a〜11dと、第1〜第3のトランジスタ11e〜11gと、直流電源としてのバッテリー3の電圧をパルス状列の電圧に変換する手段としての電界効果トランジスタ(FET)11hとを備えており、電界効果トランジスタ11hのドレインは伝送路Lのバッテリー3側に、ソースは伝送路Lの通信ECU2側に、ゲートは第4の電気抵抗11dを介して第2、第3のトランジスタ11f、11gに接続されている。
【0036】
親機受信回路12は、第1、第2の電気抵抗12a、12bと、コンパレータ(以下「親機コンパレータ」という。)12cおよび閾値電圧(以下「親機閾値電圧」という。)V1とを備えており、親機コンパレータ12cの入力側には、分圧抵抗としての第1、第2の電気抵抗12a、12bの接続部P1と親機閾値電圧V1のプラス側が接続され、親機コンパレータ12cの出力側には親機マイクロコンピュータ14が接続されている。
【0037】
一方、通信ECU(子機)は、図3に示すように、受信回路(以下「子機受信回路」という。)21と、送信回路(以下「子機送信回路」という。)22と、伝送路Lを電気的に切離する機能を有する整流子23としてのダイオードと、所定時に通信ECU(子機)の各部回路を駆動する手段としてのコンデンサ24と、伝送路Lの電圧を調整するレギュレータ(以下「子機レギュレータ」という。)27と、各部(回路)を制御するマイクロコンピュータ(以下「子機マイクロコンピュータ」という。)25と、第1〜第4のトランジスタ26a〜26dと、第1〜第4の電気抵抗Ra〜Rdとを備えており、伝送路Lの他端部にはスイッチ群5が接続され、さらにその上流側(メーターECU(親機)1側)には上流側に向かって順次子機レギュレータ27、コンデンサ24、整流子23としてのダイオード、子機送信回路22および子機受信回路21が接続されている。ここで、コンデンサ24は伝送路Lと対地間に接続され、整流子23としてのダイオードのアノードは伝送路LのメーターECU(親機)1側に、カソードは伝送路Lのコンデンサ24側に接続されている。
【0038】
子機受信回路21は、第1、第2の電気抵抗21a、21bと、コンパレータ(以下「子機コンパレータ」という。)21c、および閾値電圧(「子機閾値電圧」という。)V2とを備えており、子機コンパレータ21cの入力側には、分圧抵抗としての第1、第2の電気抵抗21a、21bの接続部P2と子機閾値電圧V2のプラス側が接続され、子機コンパレータ21cの出力側には子機マイクロコンピュータ25が接続されている。
【0039】
子機送信回路22は、第1〜第3の電気抵抗22a〜22cと、第1、第2のトランジスタ22d、22eとを備えており、第2のトランジスタ22eのエミッタ側はコンデンサ24に、コレクタ側は整流子23としてのダイオードのアノード側に接続されている。また、第1のトランジスタ22dのベース側は第1の電気抵抗22aを介して子機マイクロコンピュータ25に接続され、コレクタ側は第2の電気抵抗22bを介して第2のトランジスタ22eのベース側に接続されている。
【0040】
子機マイクロコンピュータ25は子機レギュレータ27、第1〜第4の電気抵抗Ra〜Rdに接続され、第1の電気抵抗Raには第1のトランジスタ26aを介してストップランプ5aが接続され、第2の電気抵抗Rbには第2のトランジスタ26bを介してバックランプ5bが接続され、第3の電気抵抗Rcには第3のトランジスタ26cを介してクリアランプ5cが接続され、第4の電気抵抗Rdには第4のトランジスタ26dを介してターンランプ5dが接続されている。
【0041】
次に、このように構成された本発明の車両内通信システムの動作について説明する。
【0042】
例えば、ペダルスイッチ4aがオンすると、親機マイクロコンピュータ14においてペダルスイッチ4aが押されたことが認識され、当該親機マイクロコンピュータ14からペダルスイッチ4aのオン信号が第1のトランジスタ11eへ送出され、これにより第1のトランジスタ11eが動作し、さらに第2、第3のトランジスタ11f、11gが動作することでペダルスイッチ4aのオン信号が電界効果トランジスタ11hへ送出される。
【0043】
これにより、次のようにして、親機送信回路11から伝送路L上の直流電源の電圧を断続させた信号、すなわち直流電源の電圧をパルス状列の電圧に変換された信号が伝送路Lに重畳される。
【0044】
先ず、本発明のメーターECU(親機)1においては、当該メーターECU(親機)1から優先的に信号を送出するように構成され、また伝送路L上の信号の送受信を容易にするための設定が行われる。
【0045】
具体的には、本発明におけるメーターECU(親機)1と通信ECU(子機)2間では、伝送路L上の電圧がHi(高電位「12V」)かLo(低電位「0V」)かで信号の送受信が行なわれる。このため、複数のECUから同時に信号が送出されると、信号の判断が不可能になり、ひいては信号の送受信が不可能になる。例えば一のECUが信号をLo(低電位「0V」)にしようとしても、他のECUからの信号がHi(高電位「12V」)の状態にあると、伝送路L上の電圧がHi(高電位「12V」)になってしまうからである。
【0046】
このように、Lo(低電位「0V」)の信号よりHi(高電位「12V」)の信号が優先されることで、一度に送信するECUを一つに限定し、それ以外のECUはLo(低電位「0V」)状態で待機させる必要がある。
【0047】
このような観点から、本発明においては、複数の信号が同時に送信されるのを防止するため、メーターECU(親機)1において、信号を送信するタイミングを管理している。
【0048】
具体的には、次のようにして、伝送路L上の信号(電圧)を変化させることで、同時に信号を送出しないように設定している。
【0049】
例えば、メーターECU(親機)1に、伝送路Lを介して二つの通信ECU(子機)2が並列に接続されている場合において、メーターECU(親機)1が「1100」を、右ランプとしての一方の通信ECU(子機)2が「1100」を、左ランプとしての他方の通信ECU(子機)2が「1011」をそれぞれ送信する場合を想定すると、メーターECU(親機)1は信号のヘッドに「0」をつけて伝送路L上の電圧を親機送信回路11において「0(0V:0.1ms)」→「1(12V:0.1ms)」→「1(12V:0.1ms)」→「0(0V:0.1ms)」→「0(0V:0.1ms)」と変化させる。その後、メーターECU(親機)1は二つの通信ECU(子機)2が送信できるように、Lo(低電位「0V」)で0.1ms×8bit=0.8ms待機することになる。
【0050】
そして、一方の通信ECU(子機)2はメーターECU(親機)1からの最初の信号0(Lo「低電位」)を受信してから0.1ms×5bit=0.5ms待ってから子機送信回路22より伝送路Lを「1(12V:0.1ms)」→「1(12V:0.1ms)」→「0(0V:0.1ms)」→「0(0V:0.1ms)」と変化させる。また、他方の通信ECU(子機)2はメーターECU(親機)1からの最初の信号0(Lo「低電位」)を受信してから0.1ms×9bit=0.9ms待ってから子機送信回路22より伝送路Lを「1(12V:0.1ms)」→「0(0V:0.1ms)」→「1(12V:0.1ms)」→「1(12V:0.1ms)」と変化させる。
【0051】
一方、通信ECU(子機)2の各部(回路)の電源はメーターECU(親機)2のHi(高電位「12V」)の信号に依存していることから、通信ECU(子機)2へ電源を供給するためには、可能な限りメーターECU(親機)1をHi(高電位「12V」)の状態にしておく必要があり、また、前述のように信号を送出できるのは1個のECUのみであることから、メーターECU(親機)1が優先されるようにしておく必要がある。
【0052】
以上のようにして、親機送信回路11から通信ECU(子機)2へ送信したい信号(例えばペダルスイッチ4aのオン信号)がパルス状列の電圧に変換されて伝送路Lに重畳される。
【0053】
しかして、伝送路Lに重畳されたパルス状列の電圧(信号)は、通信ECU(子機)2の子機受信回路21において、次のようにして監視される。
【0054】
すなわち、伝送路Lに重畳されたパルス状列の電圧(信号)が第1の電気抵抗21aを介して子機コンパレータ21cに入力すると、当該パルス状列の電圧と子機閾値電圧V2とが比較され、当該比較データが子機マイクロコンピュータ25へ送出され、子機マイクロコンピュータ25において伝送路Lの電圧の監視、すなわち伝送路L上におけるパルス状列の電圧が子機閾値電圧V2より高いか/低いかが判断される。
【0055】
ここで、子機閾値電圧V2の閾値およびその調整について述べる。
【0056】
先ず、直流電源としてのバッテリー3の正常時の電圧は12Vであるところ、バッテリー3が劣化すると、バッテリー3の電圧が例えば11V→10V→9Vと低下する。また、オルタネータ(発電機)でバッテリーを充電しているオン状態の時は14V程度の電圧が発生し、バッテリーに接続される電装品にも14Vの電圧が供給されることになる。
【0057】
また、バッテリー3の電圧は正常時は12Vであるところ、実際に電装品が車両に搭載されると、メーターECU(親機)1と通信ECU(子機)2を接続する伝送路Lは、電源の供給と信号の送受信を共有しているため、バッテリー3の電圧が上下すると送受信される信号の電圧も上下することでノイズとなり、良好な状態で信号を送受信できない虞がある。また、ある車両では良好に信号を送受信できるのに他の異なる形状の車両では良好に信号を送受信できないなどの現象がある。
【0058】
この場合、従来の搬送波を用いる技術では、伝送路Lから特定の周波数のノイズを減衰させつつ、送信される別の周波数の信号は増幅させる等の複雑な対応が必要になるところ、本発明においては、子機コンパレータ21cに印加される閾値電圧V2の閾値を変化させることで調整が可能となる。
【0059】
具体的には、送信側が1(Hi「高電位」)信号を送信しているのに、受信側が0(Lo「低電位」)と認識する場合は子機閾値電圧V2の閾値を引き下げる。逆に、送信側が0(Lo「低電位」)信号を送信しているのに、受信側が1(Hi「高電位」)と認識する場合は子機閾値電圧V2の閾値を引き上げる。例えば、子機閾値電圧V2の閾値の初期値が11Vの場合、直流電源としてのバッテリー3が劣化して10Vに低下すると、送信側の1(Hi「高電位」)信号は10Vにしかならないため、受信側において0(Lo「低電位」)と認識されることになる。そこで、このような可能性のある車両(車種)の場合には、子機閾値電圧V2の閾値を例えば8Vに設定するとで、場合によっては、バッテリー3が劣化し8Vに降下するまで、長期間通信性能を維持することができる。
【0060】
以上のようにして、通信ECU(子機)2において、信号(ペダルスイッチ4aのオン信号)を読み取ることでストップランプ5aが点灯・消灯する。
【0061】
この場合、ストップランプ5aは信号を直接電源として駆動するため、瞬断(最大で2ms程度)するが、通信ECU(子機)2は後述するように一時的にコンデンサ24に蓄電しておいた電荷が放電することで、また各種ランプの瞬断は極めて短いためランプが消灯するよりも早く通信が終了することから性能上問題が生じない。また、問題が生ずる場合、コンデンサ24から給電する(図3はコンデンサ24から給電する場合の図)。
【0062】
以上述べたように、本発明の車両内通信システムによれば、次のような効果がある。
【0063】
第1に、ワイヤーハーネスの省線化による軽量化・省スペースおよびワイヤーハーネス部材のコストダウンを図ることができる。
【0064】
第2に、伝送路Lにパルス状列の電圧に変換した信号が印加されることで、伝送路(電源線)Lが長い場合でも信号が劣化せず、ノイズの重畳による誤通信も少なくできる。
【0065】
第3に、子機受信回路21の閾値電圧V2の閾値を調整することでバッテリー3の劣化や、オルタネータ(発電機)のオン/オフ等による電源の揺らぎによる誤通信を改善することができる。
【0066】
第4に、一般的な直流デジタル回路で構成することで、既存のシステムへの追加を容易に行うことができる。
【0067】
次に、通信ECU(子機)2からメーターECU(親機)1へ信号を送出する場合の動作について説明する。
【0068】
先ず、前述のように、伝送路L上の同時にHi(高電位「12V」)信号とLo(低電位「0V」)信号が同時に送出されると、伝送路L上の信号がHi(高電位「12V」)になるため、通信ECU(子機)2からはメーターECU(親機)1がLo(低電位「0V」)状態の場合しか送出できないことになる。
【0069】
そこで、本発明においては、伝送路L上のパルス状列の電圧がLo(低電位)電圧になると、整流子23としてのダイオードにより伝送路Lが電気的に切り離される。しかして、当該伝送路Lが電気的に切り離されると、コンデンサ24に蓄電された電荷が放電され、これにより、通信ECU(子機)2の各部回路へ電源が供給され、通信ECU(子機)2の各部回路が能動状態になる。ここで、子機送信回路20から所定の信号を伝送路Lへ重畳させることで、メーターECU(親機)1の親機受信回路12において当該信号を受信することができる。
【0070】
以上のように、この実施例においては、伝送路Lを電気的に切離する手段、通信ECUの各部回路を駆動する手段およびメーターECUへ信号を送出する手段を備えることを通信ECU(子機)2からメーターECU(親機)1へ信号を送出することができる。
【0071】
なお、これまで本発明について、図面に示した特定の実施の形態をもって本発明を説明しているが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られているいかなる構成であっても採用することができる。
【0072】
例えば、前述の実施例では、1個のメーターECU(親機)1に1個の通信ECU(子機)2を接続しているが、1個のメーターECU(親機)2に複数個の同じ構成の通信ECU(子機)を接続してもよい。この場合には、メーターECU(親機)1と通信ECU(子機)2若しくは一の通信ECU(子機)2と他の通信ECU(子機)2どうしの送受信が可能になることで、例えば通信ECU(2)からの情報により、バルブ(ランプ)切れなどの車両情報を取得することができる。
【0073】
また、前述の実施例における通信のルールは、同時に送信が起こらないようにするための一例であり、データの長さ、送信の順序、送信の時間等は設計者の任意の値を使用してもよい。この場合、マイクロコンピュータのプログラムを変更することで実現できる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・メーターECU(親機)
11・・・送信回路(親機送信回路)
11h・・・電界効果トランジスタ
2・・・通信ECU(子機)
21・・・受信回路(子機受信回路)
23・・・整流子(ダイオード)
24・・・コンデンサ
V2・・・閾値電圧
3・・・直流電源(バッテリー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに配置され、直流電源を供給するメーターECUと、車両後端部に配置される通信ECUと、前記メーターECUおよび前記通信ECU間を接続する単一の伝送路とを備え、
前記メーターECUは、スイッチの信号に応じて前記直流電源の電圧をパルス状列の電圧に変換する手段を備え、
前記通信ECUは、前記パルス状列の電圧を監視する手段を備えることを特徴とする車両内通信システム。
【請求項2】
前記通信ECUは、前記パルス状列の電圧がLo(低電位)電圧のときに、前記伝送路を電気的に切離する手段、前記通信ECUの各部回路を駆動する手段および前記メーターECUへ信号を送出する手段を備えることを特徴とする請求項1記載の車両内通信システム。
【請求項3】
前記伝送路の前記通信ECU側には、前記通信ECUと同一構成の他の通信ECUが前記通信ECUと並列に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両内通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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