説明

車両制御装置、車両情報監視装置および車両情報監視システム

【課題】複数の車両制御装置が変換規則の異なる車両情報をそれぞれ出力する場合でも、車両制御装置と通信する装置が、車種毎の変換規則を格納した変換規則テーブルを備える必要がなく、その更新の必要もないようにする。
【解決手段】車両制御装置は、外部との通信のための通信インタフェース22と、車両情報を要求する要求コードが通信インタフェース22によって受信されたことに応答して、その要求コードに対応する車両情報を含む応答データを通信インタフェース22から送信させる応答データ送信制御ユニット231と、車両情報を変換するための変換規則を要求する変換規則要求が通信インタフェース22によって受信されたことに応答して、その変換規則要求に対応する変換規則通信インタフェース22から送信させる変換規則送信制御ユニット232とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両制御装置、車両制御装置から車両情報を取得する車両情報監視装置、および車両情報監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車速その他の車両情報を表示する表示ユニットと、車両の各部(主として電装品)を制御するための車両制御ユニットとが備えられている。車両制御ユニットは、たとえば、車両のエンジンに備えられた点火プラグ、燃料噴射装置その他の電装品の動作を制御する。このような制御動作に必要なセンサ類が車両制御ユニットに接続されている。センサ類は、たとえば、車速センサ、エンジン回転速度センサ、冷却水温センサ、吸気温度センサ、スロットル開度センサを含む。
【0003】
表示ユニットは、車両制御ユニットとの通信によって必要な情報を取得するように構成されている。たとえば、表示ユニットは、車速、エンジン回転速度、冷却水温度等の情報を車両制御ユニットから取得し、それらの情報を表示するように構成されている。
特許文献1は、エンジンコントローラに接続される故障診断ツールを開示している。故障診断ツールは、エンジン関連データの取得要求をエンジンコントローラに与える。エンジンコントローラは、その取得要求に応答して、エンジン回転速度、車速等の各種パラメータの値を故障診断ツールに返信する。故障診断ツールは、パラメータ毎に予め記憶された物理量変換式を記憶した物理量変換情報記憶部を有している。故障診断ツールは、エンジンコントローラから受信したパラメータを、物理量変換情報記憶部に記憶された物理量変換式に従って、実際の物理量(エンジン回転速度や車速など)に合った値に変換する。物理量変換記憶部は、故障診断ツールに着脱されるメモリカートリッジ内に備えられる。
【0004】
車両制御ユニットには、車両情報を記憶するメモリと、このメモリから車両情報を読み出すための通信ポートとが備えられる場合がある。メモリに記憶された車両情報を、通信ポートを介して読み出すことにより、車両の故障診断を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−266642号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許文献1に示されているように、エンジンコントローラ等の車両制御装置が出力する車両情報は、そのまま用いることができる情報ではなく、物理量変換式その他の変換規則に従って変換する必要がある。しかし、変換規則は、たとえば車種毎に異なるので、車両制御装置との通信によって車両情報を取得する別の装置は、当該車両制御装置において採用されている変換規則を共有している必要がある。車両制御装置とともに車両に搭載されて車両制御装置と通信する専用の機器は、むろん、このような変換規則を共有することになる。また、車両制御装置と通信することによって車両情報を監視する車両情報監視装置においても、車両制御装置と同じ変換規則が共有されていなければならない。車両情報監視装置を複数種類の車種に共通に用いるように設計しようとするならば、その複数種類の車種名と対応する複数の変換規則とを格納した変換規則テーブルを車両情報監視装置に備えなければならない。このことは、新たな車種が開発されたときには、その変換規則テーブルを更新しなければならないことを意味する。よって、更新された変換規則テーブルを作成するために多大な労力を要し、さらに車両情報監視装置に更新された変換規則テーブルを書き込むためにさらに多大な労力を要する。
【0007】
この発明の一実施形態は、このような課題の発見に基づき、それを解決するための車両制御装置、車両情報監視装置および車両情報監視システムを提供する。
この発明の一実施形態は、外部との通信のための通信手段と、車両情報を要求する要求コードが前記通信手段によって受信されたことに応答して、その要求コードに対応する車両情報を含む応答データを前記通信手段から送信させる応答データ送信制御手段と、車両情報を変換するための変換規則を要求する変換規則要求が前記通信手段によって受信されたことに応答して、その変換規則要求に対応する変換規則を前記通信手段から送信させる変換規則送信制御手段とを含む、車両制御装置を提供する。
【0008】
この車両制御装置は、車両情報を要求する要求コードに応答するように構成されている。すなわち、通信手段によって要求コードが受信されると、その要求コードに対応する車両情報を含む応答コードが通信手段から送信される。それに加えて、この車両制御装置は、車両情報を変換するための変換規則を要求する変換規則要求に応答するように構成されている。すなわち、通信手段によって変換規則要求が受信されると、その要求に対応する変換規則が通信手段から送信される。したがって、当該車両制御装置と通信する他の装置は、変換規則要求を車両制御装置に与えて変換規則を取得し、さらに、要求コードを車両制御装置に与えて、車両制御装置からの応答コードに含まれる車両情報を取得できる。よって、当該他の装置は、車両情報を正しい変換規則で変換することができる。
【0009】
このような構成により、車両制御装置と通信する他の装置は、車両制御装置と同じ変換規則を予め共有している必要がない。よって、当該他の装置は、複数の車種にそれぞれ対応した複数の車両制御装置が変換規則の異なる車両情報をそれぞれ出力する場合でも、車種毎の変換規則を格納した変換規則テーブルを備える必要がなく、むろんその更新の必要もない。より具体的には、同一仕様の装置で複数種類の車種の車両制御装置が出力する車両情報を取得できる。
【0010】
前記車両情報の例としては、原動機回転速度、車速、冷却水温度、吸気温度、スロットル開度などを挙げることができる。車両の原動機は、内燃機関であってもよいし、電動モータであってもよい。
車両制御装置は、たとえば、車両に備えられた電装品を制御するように構成されていてもよい。電装品は、たとえば、原動機の一例としてのエンジンに関連する電装品を含む。このような電装品の具体例は、点火プラグ(点火コイル)、燃料噴射装置、燃料ポンプその他エンジンの駆動に関連する部品を含む。車両制御装置には、センサ類の出力信号が入力されている。センサ類の具体例は、車速センサ、エンジン回転速度センサ、冷却水温度センサ、吸気温度センサを含む。エンジン回転速度センサは、たとえば、エンジンのクランク軸の回転角を検出するクランク角センサを含む。
【0011】
また、変換規則の例としては、分解能のような変換パラメータのほか、分解能を指定する分解能指定コードや変換式を指定する変換式指定コードのように変換規則を指定する変換規則指定コードを挙げることができる。分解能とは、或る車両情報の最小単位が表す実際の物理量である。たとえば、車両情報の一例として、原動機回転速度を例にとり、その原動機回転速度を1バイト(0〜255)のデータで車両制御装置が出力すると仮定する。この場合に、分解能が「30(rpm)」であるとすれば、たとえば、原動機回転速度データ「100」は、3000(=100×30)rpmを意味することになる。つまり、変換式は、「原動機回転速度データ×分解能」であり、その変換式の一つのパラメータ(変換パラメータ)が分解能である。分解能指定コードとは、選択可能な複数種類の分解能が予め定められており、それらのうちの一つを選択して指定するためのコード(たとえば番号)である。同様に、変換式指定コードとは、選択可能な複数種類の変換式が予め定められており、それらのうちの一つを選択して指定するためのコード(たとえば番号)である。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記通信手段が、車両情報を表示する車両情報表示装置と通信するための通信ポートを含む。この構成によれば、車両情報表示装置を接続するための通信ポートを利用して、車両制御装置から情報を取得できる。たとえば、当該通信ポートに車両情報監視装置を接続して、車両制御装置からの車両情報を取得できる。たとえば、自動二輪車その他の鞍乗り型車両の車両制御装置は、取り付けスペースの制約から、サイズが厳しく制限される。そのため、故障診断等のための専用の通信ポートを備える余裕はない。したがって、車両情報表示装置のための通信ポートを故障診断等のために共用できることにより、車両制御装置の大型化を回避しながら、故障診断機能を付加できる。
【0013】
この発明の一実施形態は、前述のような車両制御装置から車両情報を取得する車両情報監視装置であって、前記車両制御装置の前記通信手段と通信する第1通信手段と、前記第1通信手段から車両情報を要求する要求コードを送信させる要求コード送信制御手段と、前記第1通信手段から車両情報の変換規則を要求する前記変換規則要求を送信させる変換規則要求送信制御手段と、前記第1通信手段によって前記車両制御装置から前記要求コードに対応する応答コードを受信する応答コード受信制御手段と、前記第1通信手段によって前記車両制御装置から前記変換規則要求に対応する変換規則を受信する変換規則受信制御手段と、前記応答コード受信制御手段によって受信された応答コードに含まれる車両情報を、前記変換規則受信制御手段によって受信された変換規則に従って変換する変換手段とを含む、車両情報監視装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、車両情報監視装置は、車両制御装置に要求コードを与え、それに応答して車両制御装置から送信されてくる応答コードを受信することにより、車両情報を取得する。また、車両情報監視装置は、車両制御装置に変換規則要求を与え、それに応答して車両制御装置から送られてくる変換規則を取得する。そして、車両情報監視装置は、応答コードに含まれる車両情報を変換規則に従って変換し、それによって、変換後の車両情報(実際の物理量)を得る。このような構成により、車両情報監視装置は、車両制御装置と同じ変換規則を予め共有することなく、車両情報を正しい変換規則で変換することができる。よって、車両情報監視装置は、複数の車両制御装置が変換規則の異なる車両情報をそれぞれ出力する場合でも、車種毎の変換規則を格納した変換規則テーブルを備える必要がなく、むろんその更新の必要もない。つまり、同一仕様の車両情報監視装置で複数種類の車種の車両制御装置が出力する車両情報を監視できる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記車両情報監視装置は、前記車両制御装置の通信手段と通信して車両情報を表示するための車両情報表示装置と通信する第2通信手段と、前記応答コード受信制御手段によって応答コードが受信されたときに、前記第2通信手段から応答コードを送信させる応答コード送信制御手段と、をさらに含み、前記要求コード送信制御手段が、前記第2通信手段が要求コードを受信したときに、前記第1通信手段から要求コードを送信させるように構成されている。
【0016】
車両情報表示装置は、車両制御装置に接続されたときに、車両制御装置との通信によって、車両情報を取得できる。具体的には、車両情報表示装置は、必要な情報を要求する要求コードを生成する。車両制御装置は、要求コードを受け取ると、その要求コードに対応する応答データ(車両情報を含む)を生成する。車両情報表示装置は、応答データに含まれる車両情報を用いて、必要な表示を行う。
【0017】
車両情報監視装置は、第1通信手段によって車両制御装置と通信し、第2通信手段によって車両情報表示装置と通信するように構成されている。したがって、車両情報監視装置は、車両情報表示装置と車両制御装置との間の通信を中継することができる。つまり、車両情報監視装置は、車両情報表示装置から受信した要求コードを車両制御装置に送信し、その要求コードに対する応答データを車両制御装置から受信して、車両情報表示装置に送信することができる。これにより、車両情報監視装置は、車両情報表示装置に対して、必要な情報を提供でき、かつ車両情報を監視できる。つまり、車両情報表示装置での表示動作を継続させながら、車両情報を監視できる。
【0018】
車両情報表示装置が表示する車両情報は、たとえば、車速、原動機回転速度、冷却水温度、吸気温度、警報、変速段、燃料残量のうちの1つ以上を含む。すなわち、これらの情報が車両制御装置から与えられてもよい。冷却水温度とは、原動機の一例であるエンジンを冷却する冷却水の温度である。吸気温度とは、エンジンに吸入される空気の温度であり、環境温度の代替指標として用いることができる。警報とは、故障その他の異常を告知する情報である。変速段とは、車両に備えられた変速機の変速段を表す情報である。
【0019】
この発明の一実施形態は、前述のような車両制御装置および車両情報監視装置を含む、車両情報監視システムを提供する。
また、この発明の一実施形態は、前述のような車両制御装置と、前述のような車両情報監視装置と、前記第2通信手段と通信する車両情報表示装置とを含む、車両情報監視システムを提供する。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記車両制御装置と前記車両情報表示装置とが、互いに結合可能な第1コネクタおよび第2コネクタを途中に有する有線通信ラインで接続できるように構成されており、前記第1コネクタが前記車両制御装置に接続され、前記第2コネクタが前記車両情報表示装置に接続されており、前記第1通信手段が前記第1コネクタに接続される第1接続部を含み、前記第2通信手段が前記第2コネクタに接続される第2接続部を含む。
【0021】
この構成によれば、車両制御装置と車両情報表示装置とは、有線通信ラインで接続されており、この有線通信ラインの途中に互いに結合可能な第1コネクタおよび第2コネクタが設けられている。車両の通常の使用状態では、第1コネクタおよび第2コネクタが結合され、車両制御装置と車両情報表示装置とが、直接的に、情報通信を実行する。車両情報を取得するときには、第1コネクタおよび第2コネクタの結合が解かれ、第1コネクタおよび第2コネクタが車両情報監視装置の第1接続部および第2接続部にそれぞれ接続される。これにより、車両制御装置と車両情報表示装置とは、車両情報監視装置によって中継されながら互いに通信できる。換言すれば、車両情報監視装置は車両制御装置および車両情報表示装置とそれぞれ通信する。このように、第1コネクタおよび第2コネクタの結合を解いて、それらを車両情報監視装置に接続することによって、容易に、車両情報を取得することができる。通常の使用状態においては、車両情報監視装置を接続しておく必要はないから、車両情報監視装置の設置スペースを車両に設けておく必要はない。
【0022】
「有線通信ラインの途中」とは、有線通信ラインの一方端から他方端までのいずれかの位置を指す。つまり、有線通信ラインの中間部、一方端部および他方端部は、いずれも「有線通信ラインの途中」に該当する。
この発明の一実施形態では、前記車両情報監視装置が、前記車両制御装置と前記車両情報表示装置との間で要求コードおよび応答データを中継する。
【0023】
この構成によれば、車両情報監視装置は、車両制御装置と車両情報表示装置との間を中継することによって、それらの間の通信を行わせながら、車両情報を取得できる。したがって、車両の運転状態で車両情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る車両情報監視装置が適用可能な車両の電気的構成を説明するためのブロック図であり、車両の通常の使用状態を示す。
【図2】図2は、この発明の一実施形態に係る車両情報監視装置の構成を説明するためのブロック図であり、車両情報を取得するときの構成を示す。
【図3】図3は、車両制御ユニットおよび車両情報監視装置の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、車両の通常の使用状態(図1参照)において、有線通信ラインに現れるデータの例を示す図である。
【図5】図5は、車両の通常の使用状態(図1参照)における表示ユニットと車両制御ユニットとの間の通信タイミングを示す図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、表示ユニットと車両制御ユニットとの間に車両情報監視装置を接続した場合(図2参照)における通信手順を説明するための図である。
【図7A】図7Aは、図6Aの通信手順に対応する通信タイミングを示すタイミング図である。
【図7B】図7Bは、図6Bの通信手順に対応する通信タイミングを示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態を適用することができる車両の電気的構成を説明するためのブロック図である。車両10は、エンジン1と、車両制御装置の一例としての車両制御ユニット2と、車両情報表示装置の一例としての表示ユニット3とを含む。車両制御ユニット2は、車両10に関連する電装品の動作を制御するようにプログラムされている。より具体的には、車両制御ユニット2は、エンジン1に備えられた電装品およびエンジン1に関連する電装品の動作を制御する。エンジン1は、この実施形態では、内燃機関である。エンジン1には、電装品として、点火コイル11および燃料噴射装置12が備えられている。点火コイル11は、点火プラグに放電させるための高電圧印加するように構成されている。点火プラグは、エンジン1の燃焼室内で放電する放電部を含む。燃料噴射装置12は、エンジン1の吸気ポートに向けて燃料を噴射する装置である。燃料噴射装置12に燃料を供給するための燃料ポンプ18も、エンジン1に関連する電装品の一つである。燃料ポンプ18の動作も、車両制御ユニット2によって制御される。
【0026】
エンジン1は、さらに、クランク角センサ13、冷却水温度センサ14、吸気温度センサ15、およびスロットル開度センサ16を備えている。クランク角センサ13は、エンジン1のクランク軸の回転角を検出するように構成されている。冷却水温度センサ14は、エンジン1を冷却するための冷却水の温度を検出するように構成されている。吸気温度センサ15は、エンジン1に取り込まれる空気(吸気)の温度を検出するように構成されている。スロットル開度センサ16は、エンジン1に備えられたスロットル弁の開度を検出するように構成されている。これらのセンサ13,14,15,16の出力信号は、車両制御ユニット2に入力されている。
【0027】
車両制御ユニット2には、さらに、車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ17が接続されている。車両制御ユニット2は、センサ類13〜17からの検出信号が入力される入力インタフェース20を備えている。車両制御ユニット2は、さらに、エンジン1に備えられた電装品(アクチュエータ)や車両10のエンジン1以外の部分に備えられた電装品(アクチュエータ。たとえば燃料ポンプ)を駆動するためのアクチュエータ駆動回路21を備えている。車両制御ユニット2は、さらに、通信手段としての通信インタフェース22と、マイクロコンピュータ23と、車両情報メモリ24と、変換規則メモリ26とを備えている。
【0028】
通信インタフェース22は、通信ケーブル25との間でコマンドおよびデータの授受を行うように構成されており、表示ユニット3と通信するための通信ポートを提供する。マイクロコンピュータ23は、入力インタフェース20に入力されるセンサ類の出力信号等に応じてアクチュエータ駆動回路21を制御するようにプログラムされている。車両情報メモリ24は、たとえば、入力インタフェース20に入力されたセンサ類の出力信号、およびアクチュエータ駆動回路21による電装品の制御履歴を車両情報(車両制御情報)として保持するように構成されている。より具体的には、マイクロコンピュータ23が、それらの車両情報を車両情報メモリ24に書き込むように構成されている。マイクロコンピュータ23は、また、通信インタフェース22が受信する要求コードに応じて、必要な車両情報を車両情報メモリ24から読み出し、その車両情報を含む応答データを通信ケーブル25へと送出するようにプログラムされている。
【0029】
変換規則メモリ26は、車両制御ユニット2が通信インタフェース22から送信する車両情報を実際の物理量に変換するための変換規則を記憶している。より具体的には、車両制御ユニット2が通信インタフェース22から送信するエンジン回転速度データおよび車速にそれぞれ対応したエンジン回転速度分解能および車速分解能が、変換規則として、変換規則メモリ26に格納されている。エンジン回転速度分解能とは、エンジン回転速度データの最小単位が表す実際の物理量である。たとえば、エンジン回転速度データが1バイト(0〜255)のデータであると仮定する。この場合に、分解能が「30(rpm)」であるとすれば、たとえば、エンジン回転速度データ「100」は、3000(=100×30)rpmを意味することになる。つまり、変換式は、「エンジン回転速度データ×エンジン回転速度分解能」であり、その変換式の一つのパラメータ(変換パラメータ)がエンジン回転速度分解能である。同様に、車速分解能とは、車速データの最小単位が表す実際の物理量である。たとえば、車速データが1バイト(0〜255)のデータであると仮定する。この場合に、分解能が「0.5(km/h)」であるとすれば、たとえば、車速データ「100」は、50(=100×0.5)km/hを意味することになる。つまり、変換式は、「車速データ×車速分解能」であり、その変換式の一つのパラメータ(変換パラメータ)が車速分解能である。
【0030】
マイクロコンピュータ23は、通信インタフェース22が受信する変換規則要求を含むパケットに応じて、対応する変換規則を通信規則メモリ26から読み出し、その通信規則を含むパケットを通信ケーブル25へと送出するようにプログラムされている。
通信ケーブル25の先端には、第1コネクタ(カプラ)41が結合されている。
表示ユニット3は、通信ケーブル35に接続されている。通信ケーブル35の先端には、第2コネクタ(カプラ)42が結合されている。第1コネクタ41および第2コネクタ42は、互いに結合したり、その結合を解除したりすることができるように構成されている。
【0031】
表示ユニット3は、メータ表示部31と、通信インタフェース32と、マイクロコンピュータ33と、変換規則メモリ34とを含む。変換規則メモリ34には、車両制御ユニット2の変換規則メモリ26と同じ変換規則が格納されている。メータ表示部31は、たとえば、車速、エンジン回転速度、警報、冷却水温度および吸気温度を表示できるように構成されている。表示すべき情報は、通信インタフェース32によって、通信ケーブル25,35を含む有線通信ライン30を介して、車両制御ユニット2から取得される。マイクロコンピュータ33は、通信インタフェース32から通信ケーブル35へと、表示に必要な車両情報を要求する要求コードを送出するようにプログラムされている。さらに、マイクロコンピュータ33は、通信ケーブル35から通信インタフェース32において受信される応答コードから車両情報を抽出するように構成されている。マイクロコンピュータ33は、さらに、当該抽出された車両情報を、メータ表示部31に表示させるように、メータ表示部31を制御するようにプログラムされている。
【0032】
マイクロコンピュータ33は、通信インタフェース32によってエンジン回転速度データを取得すると、変換規則メモリ34からエンジン回転速度分解能を読み出し、エンジン回転速度データにエンジン回転速度分解能を乗じて、エンジン回転速度を求める。マイクロコンピュータ33は、さらに、その求めたエンジン回転速度に応じたエンジン回転速度表示制御信号をメータ表示部31に与える。同様に、マイクロコンピュータ33は、通信インタフェース32によって車速データを取得すると、変換規則メモリ34から車速分解能を読み出し、車速データに車速分解能を乗じて、車速を求める。マイクロコンピュータ33は、さらに、その求めた車速に応じた車速表示制御信号をメータ表示部31に与える。
【0033】
図2は、車両情報監視装置5の構成を説明するためのブロック図である。車両情報監視装置5は、車両制御ユニット2と表示ユニット3との間に接続されて、車両制御ユニット2と表示ユニット3との間の情報通信を中継するように構成されている。すなわち、車両情報監視装置5は、車両制御ユニット2と表示ユニット3との間の情報通信を中継する中継ユニットとして機能するように構成されている。
【0034】
車両情報監視装置5は、第1接続部51および第2接続部52を有している。第1接続部51は、車両制御ユニット2に通信ケーブル25を介して接続された第1コネクタ41と接続される。第2接続部52は、表示ユニット3に通信ケーブル35を介して接続された第2コネクタ42と接続される。より具体的には、第1接続部51は、第1コネクタ41と結合可能なコネクタの形態を有している。同様に第2接続部52は、第2コネクタ42と結合可能なコネクタの形態を有している。第1接続部51は、通信ケーブル53を介して、車両情報監視装置5の筐体内に設けられた回路基板に接続されている。同様に、第2接続部52は、通信ケーブル54を介して、車両情報監視装置5の筐体内に設けられた回路基板に接続されている。
【0035】
車両情報監視装置5は、第1通信手段としての第1通信インタフェース61と、第2通信手段としての第2通信インタフェース62と、マイクロコンピュータ55と、第3通信インタフェース63と、変換規則メモリ56と、不揮発性メモリ58とを備えている。第1通信インタフェース61は、車両制御ユニット2との通信のための通信インタフェースである。第2通信インタフェース62は、表示ユニット3との通信のための通信インタフェースである。第3通信インタフェース63は、外部の処理装置(たとえば、所定のツールを組み込んだパーソナルコンピュータ)との通信のための通信インタフェースである。
【0036】
変換規則メモリ56は、表示ユニット3から受信した変換規則を一時的に記憶するための記憶ユニットである。不揮発性メモリ58は、車両制御ユニット2から取得された応答データ(車両情報)を記憶するための記憶ユニットである。変換規則を用いて実際の物理量に変換する必要のある車両情報については、変換後の車両情報が不揮発性メモリ58に格納される。
【0037】
マイクロコンピュータ55は、第2通信インタフェース62が表示ユニット3から受信した要求コードを第1通信インタフェース61から車両制御ユニット2へと送出させるようにプログラムされている。また、マイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61が車両制御ユニット2から受信した応答コードを第2通信インタフェース62から表示ユニット3へと送出させるようにプログラムされている。さらに、マイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61が車両制御ユニット2から受信した応答データの一部または全部を、そのまま、または変換規則に基づいて変換して、不揮発性メモリ58に書き込むようにプログラムされている。さらにまた、マイクロコンピュータ55は、第3通信インタフェース63を介して、外部の処理装置70から、応答データの出力要求を受け付けるようにプログラムされている。さらに、マイクロコンピュータ55は、当該出力要求に応答して、不揮発性メモリ58からその記憶データを読み出し、第3通信インタフェース63から送出するようにプログラムされている。マイクロコンピュータ55は、不揮発性メモリ58の記憶データの代わりに、第2通信インタフェース62が受信する応答データを第3通信インタフェース63から出力する動作モードを有していてもよい。
【0038】
マイクロコンピュータ55は、さらに、第1通信インタフェース61から車両制御ユニット2に対して、変換規則の送信を要求する変換規則要求を送信するようにプログラムされている。そして、マイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61が車両制御ユニット2から変換規則を受信すると、その変換規則を変換規則メモリ56に格納するようにプログラムされている。さらにまた、マイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61が応答データを受信すると、その応答データ中の車両情報の種類に応じて変換規則メモリ56に格納された変換規則を適用し、当該車両情報を変換するようにプログラムされている。
【0039】
車両情報監視装置5は、たとえば、車両10のメンテナンスを行うサービスセンター等に備えられる。すなわち、車両10の通常の使用状態においては、車両情報監視装置5は、車両10に搭載されない。つまり、通常の車両10の使用状態では、車両10の電気的構成は、図1に示す通りとなる。よって、車両制御ユニット2と表示ユニット3とは、有線通信ライン30を介して相互に情報通信を行う。
【0040】
車両10がサービスセンター等に持ち込まれて、車両制御ユニット2内の車両情報の取得が必要になると、車両情報監視装置5が車両制御ユニット2と表示ユニット3との間に接続され、図2に示す構成となる。この状態で車両10を運転することにより、車両情報を車両制御ユニット2から取得して、不揮発性メモリ58に格納することができる。車両制御ユニット2から受信した車両情報および不揮発性メモリ58に格納された車両情報は、第3通信インタフェース63を介して、外部に取り出すことができる。不揮発性メモリ58は、車両情報監視装置5に着脱可能なメモリユニットにより構成されていてもよい。このようなメモリユニットの具体例は、メモリカードおよびUSBメモリに代表されるフラッシュメモリユニットである。この場合、車両情報監視装置5には、メモリユニットに対するデータを読み書きするためのリーダ/ライターユニットが備えられる。
【0041】
図3は、車両制御ユニット2および車両情報監視装置5の主要部の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
車両制御ユニット2のマイクロコンピュータ23は、ソフトウェア処理により実現される複数の機能処理部を実質的に含む。この複数の機能処理部は、応答データ送信制御ユニット231と、変換規則送信制御ユニット232とを含む。応答データ送信制御ユニット231は、車両情報を要求する要求コードが通信インタフェース22によって受信されたことに応答して、その要求コードに対応する車両情報を車両情報メモリ24から読み出し、その車両情報を含む応答データを通信インタフェース22から送信させるように構成されている。変換規則送信制御ユニット232は、車両情報を変換するための変換規則を要求する変換規則要求が通信インタフェース22によって受信されたことに応答して、その変換規則要求に対応する変換規則を、変換規則メモリ26から読み出して、通信インタフェース22から送信させるように構成されている。
【0042】
車両情報監視装置5のマイクロコンピュータ55は、ソフトウェア処理により実現される複数の機能処理部を実質的に含む。この複数の機能処理部は、要求コード送信制御ユニット551と、変換規則要求送信制御ユニット552と、応答コード受信制御ユニット553と、変換規則受信制御ユニット554と、変換ユニット555と、応答コード送信制御ユニット556とを含む。要求コード送信制御ユニット551は、第2通信インタフェース62が要求コードを受信したときに、車両情報を要求する要求コードを第1通信インタフェース61から送信させるように構成されている。変換規則要求送信制御ユニット552は、車両情報の変換規則を要求する変換規則要求を第1通信インタフェース61から送信させるように構成されている。応答コード受信制御ユニット553は、第1通信インタフェース61によって車両制御ユニット2から前記要求コードに対応する応答コードを受信するように構成されている。変換規則受信制御ユニット554は、第1通信インタフェース61によって車両制御ユニット2から前記変換規則要求に対応する変換規則を受信するように構成されている。この受信された変換規則は、変換規則メモリ56に格納される。変換ユニット555は、応答コード受信制御ユニット553によって受信された応答コードに含まれる車両情報を、変換規則受信制御ユニット554によって受信されて変換規則メモリ56に格納されている変換規則に従って変換するように構成されている。変換後の車両情報は、不揮発性メモリ58に格納される。応答コード送信制御ユニット556は、応答コード受信制御ユニット553によって応答コードが受信されたときに、第2通信インタフェース62から応答コードを送信させるように構成されている。
【0043】
図4は、車両10の通常の使用状態(図1参照)において、有線通信ライン30に現れるデータの例を示す図である。表示ユニット3は、予め定められた周期(例えば15.625msec)で、有線通信ライン30に要求コードを送出する。要求コードは、1バイトのデータであってもよい。車両制御ユニット2から取得すべき情報に応じて、要求コードの値が定められている。たとえば、要求コードの値を「0x01」とすることにより、この要求コードは水温データを要求する要求コードとなる。この場合、車両制御ユニット2は、水温データを応答データとして送出する。
【0044】
要求コードに応答して車両制御ユニット2が有線通信ライン30に送出する応答データは、たとえば、データD1,D2,D3,D4およびD5からなる。データD1〜D5は、たとえば、それぞれ1バイトのデータである。すなわち、車両制御ユニット2は、一つの要求コードに応答して5バイトの応答データを送出するように構成されている。この実施形態では、データD1はエンジン回転速度を表し、データD2は車速を表し、データD3は警報情報を表し、データD4は要求コードの内容に応じた車両情報(水温など)を表し、データD5はデータD1〜D4のチェックサムデータを表す。警報情報とは、故障の有無および故障の種類を表す情報である。チェックサムデータは、たとえば、データD1〜D4の積算値の下位8ビットであってもよい。
【0045】
5バイトの応答データのうち、始めの3バイトのデータD1〜D3は、要求コードを受信するたびに車両制御ユニット2が送出するデータである。すなわち、要求コードの内容によらずに、エンジン回転速度、車速および警報情報が、有線通信ライン30に送出される。これは、表示ユニット3における表示優先順位の高い第1車両情報である。5バイトの応答データのうち、4バイト目のデータD4は、車両制御ユニット2が受信した要求コードの内容に応じて変動する第2車両情報を含む。第2車両情報は、表示ユニット3における表示優先順位が第1車両情報よりも低い情報である。
【0046】
図5は、車両10の通常の使用状態(図1参照)における表示ユニット3と車両制御ユニット2との間の通信タイミングを示す図である。表示ユニット3は、予め定められた一定の周期で要求コードA,B,Cを順次送出する。要求コードA,B,Cを受信した車両制御ユニット2は、応答データD1〜D5をその都度送出する。これらの応答データD1〜D5が表示ユニット3によって受信される。表示ユニット3からの要求コードの送出と、車両制御ユニット2からの応答データD1〜D5の送出とが、表示ユニット3による要求コード生成周期内に完了するようになっている。
【0047】
図6Aおよび図6Bは、表示ユニット3と車両制御ユニット2との間に車両情報監視装置5を接続した場合(図2参照)における通信手順を説明するための図である。図7Aおよび図7Bは、その通信タイミングを示すタイミング図である。
まず、図6Aおよび図7Aを参照して、接続直後における変換規則情報の交換について説明する。
【0048】
車両情報監視装置5と車両制御ユニット2とを接続し、双方の電源が投入されると、車両情報監視装置5のマイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61から車両制御ユニット2に対して通信モード切り換え要求を送出し、多バイト通信モードへの切り換えを要求する。車両制御ユニット2のマイクロコンピュータ23は、通信インタフェース22が通信モード通信要求を受信すると、通常の通信モードであるシングルバイトの通信モードから、多バイト通信モードへと通信モードを切り換える。
【0049】
その後、車両情報監視装置5のマイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61から車両制御ユニット2に対して、変換規則要求を送信する(図6AのS1)。車両制御ユニット2のマイクロコンピュータ23は、通信インタフェース22が変換規則要求を受信すると、変換規則メモリ26から変換規則を読み出し、その読み出した変換規則を、通信インタフェース22から車両情報監視装置5へと送信する(図6AのS2)。車両情報監視装置5のマイクロコンピュータ55は、第1通信インタフェース61が変換規則を受信すると、その変換規則を変換規則メモリ56に格納する。
【0050】
車両制御ユニット2から取得される変換規則は、たとえば、エンジン回転速度、車速、冷却水温度等のように数値を表す車速情報に関連する分解能を含む。一回の通信で必要な全ての変換規則(たとえば分解能)を取得できないときには、車両情報監視装置5のマイクロコンピュータ55は、変換規則要求を繰り返し第1通信インタフェース61から送出させる。具体的には、マイクロコンピュータ55は、車両情報の種類(エンジン回転速度、車速等)を特定して、当該特定された車両情報の変換規則を要求する変換規則を第1通信インタフェース61から送出させるように構成されていてもよい。
【0051】
こうして、変換規則交換動作が終了し、車両情報監視装置5が車両制御ユニット2から変換規則を取得すると、作業者は、車両制御ユニット2の電源を遮断する。具体的には、車両制御ユニット2が搭載された車両10の電源が遮断される。その後、作業者は、再び車両制御ユニット2(より具体的には車両10)の電源を投入する。これにより、車両制御ユニット2の通信モードが、通常の通信モード(シングルバイト通信モード)に復帰する。
【0052】
図6Bおよび図7Bを参照して、変換規則情報の交換を終えて、車両情報監視装置5が車両制御ユニット2および表示ユニット3の間の通信を中継しながら車両情報をモニタする動作を説明する。表示ユニット3は、通常の使用状態の場合と同じく、予め定められた周期(たとえば15.625msec)で要求コードA,B,Cを通信ケーブル35に送出する(図6BのS3)。表示ユニット3が送出した要求コードは、車両情報監視装置5によって受信される。車両情報監視装置5は、表示ユニット3から受信した要求コードを、通信ケーブル53を介して車両制御ユニット2へと送信する(図6BのS4)。車両制御ユニット2のマイクロコンピュータ23は、通信インタフェース22が要求コードを受信すると、その要求コードに対応した車両情報を含む応答データを通信インタフェース2から送信する(図6BのS5)。この応答データを受信した車両情報監視装置5は、その応答データを通信ケーブル54から表示ユニット3へと送信する(図6BのS6)。
【0053】
車両情報監視装置5においては、第1通信インタフェース61が車両制御ユニット2から応答データを受信すると、マイクロコンピュータ55は、それらの応答データを第2通信インタフェース62から表示ユニット3へと送信させる。その一方で、マイクロコンピュータ55は、受信した応答データを不揮発性メモリ58に格納する。その際、マイクロコンピュータは、応答データ中に含まれている車両情報のうち、エンジン回転速度、車速等のような数値データについては、変換規則メモリ56に格納されている変換規則に基づく変換を行って、その変換後の値を不揮発性メモリ58に書き込む。
【0054】
表示ユニット3においては、マイクロコンピュータ33は、応答データを受信すると、その応答データに基づいてメータ表示部31の表示制御を行う。応答データ中に含まれている車両情報のうち、エンジン回転速度、車速等のような数値データについては、変換規則メモリ34に格納されている変換規則に基づく変換を行って、その変換後の値に基づいてメータ表示部31の表示制御を実行する。
【0055】
このような動作が繰り返されることにより、車両情報監視装置5は、車両制御ユニット2と表示ユニット3との間の通信を中継し、車両情報を必要に応じて変換しながら、不揮発性メモリ58に蓄積できる。
以上のように、この実施形態によれば、車両情報監視装置5を車両制御ユニット2と表示ユニット3との間の有線通信ライン30の途中に接続することによって、車両情報を取得することができる。したがって、車両制御ユニット2には、車両情報モニタ用の専用のポートまたはインタフェースを備える必要がない。たとえば、自動二輪車その他の鞍乗り型車両の車両制御ユニットは、取り付けスペースの制約から、サイズが厳しく制限される。そのため、故障診断等のための専用の通信ポートを備える余裕はない。この実施形態によれば、表示ユニット2のための通信ポートを故障診断等のために共用できることにより、車両制御ユニット2の大型化を回避しながら、故障診断機能を付加できる。
【0056】
また、車両情報監視装置5は、表示ユニット3と車両制御ユニット2との間の情報通信を中継するように構成されているので、表示ユニット3と車両制御ユニット2との間の情報通信が行われている状態で、車両情報を取得できる。したがって、車両10の運転状態で車両情報を取得することができる。これにより、車両10の運転状態で生じる様々な車両情報を取得できるから、多様な車両情報の取得が可能になる。したがって、取得された車両情報に基づいて、適切なメンテナンス作業を実行できる。
【0057】
さらに、車両制御ユニット2は、車両情報を変換するための変換規則を要求する変換規則要求に応答するように構成されている。すなわち、車両制御ユニット2の通信インタフェース22によって変換規則要求が受信されると、その要求に対応する変換規則が当該通信インタフェース22から送信される。したがって、車両情報監視装置5は、変換規則要求を車両制御ユニット2に与えて変換規則を取得し、さらに、要求コードを車両制御ユニット2に与えて、車両制御ユニット2からの応答コードに含まれる車両情報を取得できる。よって、車両情報監視装置5は、車両情報を正しい変換規則で変換することができる。変換規則を車両制御ユニット2から取得できるので、車両情報監視装置5は、車両制御ユニット2が用いる変換規則を予め有している必要がない。よって、異なる車種に搭載された複数の車両制御ユニット2が変換規則の異なる車両情報をそれぞれ出力する場合でも、車両情報監視装置5は、車種毎の変換規則を格納した変換規則テーブルを備える必要がなく、むろんその更新の必要もない。つまり、同一仕様の車両情報監視装置5で複数種類の車種の車両制御ユニット2が出力する車両情報を監視できる。
【0058】
前述の特許文献1に記載された先行技術は、エンジンコントローラから与えられるパラメータを実際の物理量に変換する物理量変換式が、パラメータの種類毎に予め定められていることを前提としている。したがって、同種のパラメータに対して異なる物理量変換式を用いるべき複数の車種があれば、それらの車種毎に異なる物理量変換式を準備し、それを車種毎のメモリカートリッジに格納しなければならない。よって、複数の車種に対応するためには、多種類のメモリカートリッジを開発して、それを製造する必要があり、それに応じてコストが嵩む。
【0059】
具体的な例として、最高エンジン回転速度が異なる複数の車種があり、それぞれの車種の車両において、エンジン回転速度情報を一定情報量(たとえば1バイト)で車両制御ユニットから表示ユニットに送信するシステムを考える。この場合、車種毎に最高回転速度をエンジン回転速度データの最高値に対応付けることにより、エンジン回転速度データのダイナミックレンジが最も大きくなり、詳細なエンジン回転速度表示が可能になる。しかし、エンジン回転速度データの分解能は、車種毎に異なることになるから、同一の物理量変換式を適用しても、実際のエンジン回転速度を演算できない。よって、特許文献1の先行技術を適用するならば、分解能の異なる複数の車種に対応して、複数のメモリカートリッジを開発して製造しておく必要がある。仮に、複数車種に対応した複数の物理量変換式を格納したメモリカートリッジを準備したとしても、そのメモリカートリッジの開発後に市場に提供されることになる新型の車両には対応できない。したがって、メモリカートリッジを繰り返し開発しなければならない。
【0060】
この実施形態は、このような課題に対する解決手段をも提供する。
また、この実施形態では、車両制御ユニット2と表示ユニット3とが、互いに結合可能な第1コネクタ41および第2コネクタ42を途中に有する有線通信ライン30で接続できるように構成されている。車両情報監視装置5は、第1コネクタ41および第2コネクタ42にそれぞれ接続できる第1接続部51および第2接続部52を有しており、それらが第1および第2通信インタフェース61,62にそれぞれ接続されている。これにより、車両の通常の使用状態では、第1コネクタ41および第2コネクタ42が結合され、車両制御制御ユニット2と表示ユニット3とが、直接的に、情報通信を実行する。車両情報を取得するときには、第1コネクタ41および第2コネクタ42の結合が解かれ、第1コネクタ41および第2コネクタ42が車両情報監視装置5の第1接続部51および第2接続部52にそれぞれ接続される。これにより、車両制御ユニット2と表示ユニット3とは、車両情報監視装置5によって中継されながら互いに通信できる。換言すれば、車両情報監視装置5は車両制御ユニット2および表示ユニット3とそれぞれ通信する。このように、第1コネクタ41および第2コネクタ42の結合を解いて、それらを車両情報監視装置5に接続することによって、容易に、車両情報を取得することができる。通常の使用状態においては、車両情報監視装置5を接続しておく必要はないから、車両情報監視装置の設置スペースを車両に設けておく必要はない。
【0061】
「有線通信ラインの途中」とは、有線通信ラインの一方端から他方端までのいずれかの位置を指す。つまり、有線通信ラインの中間部、一方端部および他方端部は、いずれも「有線通信ラインの途中」に該当する。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、変換規則の例として変換パラメータである分解能を例示したけれども、分解能を指定する分解能指定コードや変換式を指定する変換式指定コードのように変換規則を指定する変換規則指定コードを「変換規則」として、車両制御ユニット2が送信するようにしてもよい。分解能指定コードとは、選択可能な複数種類の分解能が予め定められており、それらのうちの一つを選択して指定するためのコード(たとえば番号)である。同様に、変換式指定コードとは、選択可能な複数種類の変換式が予め定められており、それらのうちの一つを選択して指定するためのコード(たとえば番号)である。
【0062】
また、前述の実施形態では、有線通信ライン30の中間部に第1コネクタ41および第2コネクタ42による接続部が設けられているけれども、有線通信ライン30の両端のうちの一方または両方に、同様の接続部を設けてもよい。たとえば、表示ユニット3に、有線通信ライン30を構成する通信ケーブルとのコネクタを設けてもよい。このコネクタを車両情報監視装置5の第2接続部52に接続し、前記通信ケーブルを車両情報監視装置5の第1接続部51に接続すればよい。むろん、車両制御ユニット2に同様のコネクタを設けてもよい。
【0063】
さらに、前述の実施形態では、車両情報監視装置5が、車両制御ユニット2と表示ユニット2との間の通信を中継する構成を示したけれども、車両によっては、車両制御ユニット2と計器類とが通信を行わない場合もある。このような場合でも、車両制御ユニット2の通信ポートに車両情報監視装置5を接続すれば、車両情報を取得できる。すなわち、車両情報監視装置5は、表示ユニット2と車両制御ユニット2との通信を中継する必要は無い。
【0064】
また、車両情報監視装置5は、車両情報等を表示するための表示装置が接続可能に構成されていてもよい。表示装置は、不揮発性メモリ58に格納された車両情報を表示可能に構成されていてもよい。
さらに、前記実施形態の車両情報監視装置5は、不揮発性メモリ58を備えているけれども、この不揮発性メモリ58を省いてもよい。この場合、マイクロコンピュータ55は、たとえば、第1通信インタフェース61が受信した応答データを第3通信インタフェース63から外部処理装置70へと出力するように動作する。これにより、外部処理装置70において車両情報(ログデータ)を蓄積できる。
【0065】
また、不揮発性メモリ58の代わりに、ハードディスクドライブを用いたり、バックアップ電源付の揮発性メモリ(DRAM)を用いたりしてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
2 車両制御ユニット
3 表示ユニット
5 車両情報監視装置
10 車両
11 点火コイル
12 燃料噴射装置
13 クランク角センサ
14 冷却水温度センサ
15 吸気温度センサ
16 スロットル開度センサ
17 車速センサ
18 燃料ポンプ
20 入力インタフェース
21 アクチュエータ駆動回路
22 通信インタフェース
23 マイクロコンピュータ
231 応答データ送信制御ユニット
232 変換規則送信制御ユニット
24 車両情報メモリ
25 通信ケーブル
26 変換規則メモリ
30 有線通信ライン
31 メータ表示部
32 通信インタフェース
33 マイクロコンピュータ
35 通信ケーブル
41 第1コネクタ
42 第2コネクタ
51 第1接続部
52 第2接続部
53 通信ケーブル
54 通信ケーブル
55 マイクロコンピュータ
551 要求コード送信制御ユニット
552 変換規則要求送信制御ユニット
553 応答コード受信制御ユニット
554 変換規則受信制御ユニット
555 変換ユニット
556 応答コード送信制御ユニット
56 変換規則メモリ
58 不揮発性メモリ
61 第1通信インタフェース
62 第2通信インタフェース
63 第3通信インタフェース
70 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との通信のための通信手段と、
車両情報を要求する要求コードが前記通信手段によって受信されたことに応答して、その要求コードに対応する車両情報を含む応答データを前記通信手段から送信させる応答データ送信制御手段と、
車両情報を変換するための変換規則を要求する変換規則要求が前記通信手段によって受信されたことに応答して、その変換規則要求に対応する変換規則を前記通信手段から送信させる変換規則送信制御手段とを含む、車両制御装置。
【請求項2】
前記通信手段が、車両情報を表示する車両情報表示装置と通信するための通信ポートを含む、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両制御装置から車両情報を取得する車両情報監視装置であって、
前記車両制御装置の前記通信手段と通信する第1通信手段と、
前記第1通信手段から車両情報を要求する要求コードを送信させる要求コード送信制御手段と、
前記第1通信手段から車両情報の変換規則を要求する前記変換規則要求を送信させる変換規則要求送信制御手段と、
前記第1通信手段によって前記車両制御装置から前記要求コードに対応する応答コードを受信する応答コード受信制御手段と、
前記第1通信手段によって前記車両制御装置から前記変換規則要求に対応する変換規則を受信する変換規則受信制御手段と、
前記応答コード受信制御手段によって受信された応答コードに含まれる車両情報を、前記変換規則受信制御手段によって受信された変換規則に従って変換する変換手段とを含む、車両情報監視装置。
【請求項4】
前記車両制御装置の通信手段と通信して車両情報を表示するための車両情報表示装置と通信する第2通信手段と、
前記応答コード受信制御手段によって応答コードが受信されたときに、前記第2通信手段から応答コードを送信させる応答コード送信制御手段と、をさらに含み、
前記要求コード送信制御手段が、前記第2通信手段が要求コードを受信したときに、前記第1通信手段から要求コードを送信させるように構成されている、請求項3に記載の車両情報監視装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の車両制御装置と、
請求項3または4に記載の車両情報監視装置とを含む、車両情報監視システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の車両制御装置と、
請求項4に記載の車両情報監視装置と、
前記第2通信手段と通信する車両情報表示装置とを含む、車両情報監視システム。
【請求項7】
前記車両制御装置と前記車両情報表示装置とが、互いに結合可能な第1コネクタおよび第2コネクタを途中に有する有線通信ラインで接続できるように構成されており、
前記第1コネクタが前記車両制御装置に接続され、前記第2コネクタが前記車両情報表示装置に接続されており、
前記第1通信手段が前記第1コネクタに接続される第1接続部を含み、前記第2通信手段が前記第2コネクタに接続される第2接続部を含む、請求項6に記載の車両情報監視システム。
【請求項8】
前記車両情報監視装置が、前記車両制御装置と前記車両情報表示装置との間で要求コードおよび応答データを中継する、請求項7に記載の車両情報監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2013−71565(P2013−71565A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211387(P2011−211387)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)