説明

車両換気構造

【課題】サイドウインドウ部材近傍で温度が低下した空気によって、乗員の体感する暖房性能の影響を減少させる車両換気構造を提供する。
【解決手段】車両の車室2前方から外気を導入して、車室2内を通過させて、車外に排気する車両換気構造であって、車室2の側面に設けられたサイドウインドウの内側近傍を通過する空気を車室外へ排気するドラフタ開口部19a,21aを、車室側部に位置するセンタサイドピラー部材18及びリアサイドピラー部材20にそれぞれ設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドラフタを用いて、車室内の乗員が快適となるように空気調整を行う車両換気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示す様に、車両1の車室2内空気を車室外に排気するドラフタ構造が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このようなドラフタ構造では、換気口3aを有する樹脂製チャンバー本体3が、軟質弾性樹脂からなるシール材を介して、リヤタイヤホイールハウス後方に開口形成された車体側開口部4に装着されている。
【0004】
そして、樹脂製パンパ部材5によって、この樹脂製チャンバー本体3の外側が覆われるように構成されている。
【0005】
次に、図4及び図5を用いて、このような従来のドラフタ構造の作用について説明する。
【0006】
このように構成された従来のドラフタ構造では、車室2内を暖房した空気6が、車室2後部のリヤパーセル7周縁から、トランクルーム8内に流入する。
【0007】
そして、リヤタイヤホイールハウス後方で、トランクルーム8の側面に位置する車体側開口部4に設けられた樹脂製チャンバー本体3の換気口3aから、排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−332836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のドラフタ構造では、図5に示す様に、サイドウインドウガラス10の内側面付近を通過した空気6は、外気との温度差で、このサイドウインドウガラス10を介し熱交換されて、温度が低下した状態で、後部座席9に着座している乗員Pに流れる。
【0010】
このため、後部座席9の暖房性を維持する為に、サイドウインドウの内側近傍を通過し温度が低下した空気を暖める暖房エネルギーが必要となる為、結果的にエネルギーロスとなってしまう。
【0011】
そこで、この発明は、サイドウイドウ近傍で温度が低下した空気によって、乗員の体感する暖房性能の影響を減少させる車両換気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の車両換気構造では、車両の車室前方から外気を導入して、車室内を通過させて、車外に排気する車両換気構造であって、前記車室の側面に設けられたサイドウインドウの内側近傍を通過する空気を車室外へ排気するドラフタ開口部を、車室側部に位置するサイドピラー部材に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両換気構造では、前記車室の側面に設けられたサイドウインドウの内側近傍を通過する空気が、車室側部に位置するサイドピラー部材に設けられたピラーベントから、車外側に排気される。
【0014】
このため、前記サイドウインドウの内側近傍を通過する温度が低下した空気を、車室後方へ戻すこと無く、前記ピラーベントのドラフタ開口部から吸い込まれて、車外側に放出出来る為、エネルギーの無駄を減少させることが出来る。
【0015】
従って、結果的に投入する暖房エネルギーを低減させることができる。
【0016】
また、前記サイドウインドウの内側近傍を通過する空気が、サイドウインドウガラスに沿って流れやすくなるため、該サイドウインドウガラスの窓晴れ維持性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の車両換気構造で、空気流れの様子を説明する模式的な車両の側面図である。
【図2】実施の形態の車両換気構造で、要部の空気流れの様子を説明する模式的な車両の右側上面図である。
【図3】従来例のベント構造で、車両後部のドラフタを説明する一部分解斜視図である。
【図4】従来例のベント構造で、空気流れの様子を説明する模式的な車両の側面図である。
【図5】従来例のベント構造で、要部の空気流れの様子を説明する模式的な車両の右側上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の車両換気構造を、図面に基づいて説明する。
【0019】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0020】
図1,図2は、この実施の形態の車両換気構造が適用される車両11を示している。
【0021】
まず、構成から説明すると、この実施の形態の車両11には、車室2前方から、車室2内空間に、空気を導入する図示省略のエアーコンディショナー装置又はエアベンチレータ装置(以下、エアコンと記す。)が設けられている。
【0022】
このエアコンの吹出口は、主に、車幅方向に沿って延設されるインストルメントパネル部材12に左右略対称位置に、各々対となるように開口形成されるサイドデフ吹出口13,13と、サイドベント吹出口14,14及び、足元に空気6を送気可能とするフット吹出口15,15とを有して構成されている。
【0023】
また、この実施の形態の車両換気構造では、車室2の左・右側面には、ガラス製の前・後席サイドウインドウ部材16,17が設けられている。
【0024】
これらの前・後席サイドウインドウ部材16,17の間には、車室側部に位置するサイドピラー部材の一つとしてのセンタサイドピラー部材18,18が設けられている。
【0025】
このセンタサイドピラー部材18には、センタピラーベント19が設けられている。
【0026】
このセンタピラーベント19には、前席サイドウインドウ部材16の内側近傍を通過する空気を吸気するドラフタ開口部19aが、車体ウエストラインより上方に位置するように開口形成されている。
【0027】
また、このセンタピラーベント19には、車体両側面下方に設けられたサイドシル部材11aに開口形成されて、サイドシル部材11aの内外を連通する車体下側開口部11bが設けられている。
【0028】
そして、このセンタピラーベント19では、前記ドラフタ開口部19aから、前記センタサイドピラー部材18及びサイドシル部材11aの内部の空間内を介して、前記車室2の外へ排気が行われるように構成されている。
【0029】
また、この実施の形態の車両換気構造では、更に後席サイドウインドウ部材17の後方で、車室側部に位置するサイドピラー部材の一つとしてのリヤサイドピラー部材20,20が設けられている。
【0030】
このリヤサイドピラー部材20には、リヤピラーベント21が設けられている。
【0031】
このリヤピラーベント21には、後席サイドウインドウ部材17の内側近傍を通過する空気を吸気するドラフタ開口部21aが、車体ウエストラインより上方に位置するように開口形成されている。
【0032】
そして、このリヤピラーベント21には、車体のリヤタイヤホイールハウス後方で、トランクルーム8の側面に車室2の外へ排気する車体側開口部4が設けられている。
【0033】
次に、この実施の形態の車両換気構造の作用効果について説明する。
【0034】
この実施の形態の車両換気構造では、前記車室2の前席側で、車幅方向左右両側面に設けられた前席サイドウインドウ部材16の内側近傍を通過する空気が、車室2の車幅方向左右側部に各々位置するセンタサイドピラー部材18に設けられたセンタピラーベント19から、車外に排気される。
【0035】
このため、前記前席サイドウインドウ部材16の内側近傍を通過し温度が低下した空気が、車室2後方に位置する後席9に着座した乗員Pの上半身や顔面方向へ流れること無く、このセンタピラーベント19のドラフタ開口部19aから吸い込まれて、車外側に放出される。
【0036】
よって、エアーコンディショナー装置又はエアベンチレータ装置の暖房量を増大させなくても、後席9に着座した乗員Pは、適度な暖房感が得られる。
【0037】
このように、エネルギーの無駄を減少させることにより、結果的に投入する暖房エネルギーを低減させることができる。
【0038】
そして、前記前席サイドウインドウ部材16の内側近傍を通過する空気によって、車室2内後方の後席9に着座した乗員Pに与えられる影響が少なくなり、また、前席サイドウインドウ部材16の窓晴れ維持性を向上させることが出来る。
【0039】
更に、この実施の形態の車両換気構造では、前記車室2の後席側で、車幅方向左右両側面に設けられた後席サイドウインドウ部材17の内側近傍を通過する空気が、車室2の車幅方向左右側部で、これらの後席サイドウインドウ部材17の後方に位置するリヤサイドピラー部材20,20のリヤピラーベント21から、車外側に排気される。
【0040】
このため、前記前席サイドウインドウ部材16及び後席サイドウインドウ部材17を通過した空気が、このリヤピラーベント21のドラフタ開口部21aから吸い込まれて、車外に放出されて、車室2内の後席9に着座した乗員Pの上半身や顔面方向へ流れる虞が減少する。
【0041】
よって、暖房感を損なうこと無く、前記従来のように、リヤタイヤホイールハウス後方で、トランクルーム8の側面に位置するドラフタの車体側開口部4から排出されるエネルギーロスや、前・後席サイドウインドウ部材16,17からのエネルギーロスを気流のコントロールで、最小限に抑制出来る。
【0042】
従って、吹き出し温度を下げることが出来るので、省動力化が可能となる。
【0043】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の車両換気構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0044】
即ち、前記実施の形態の車両換気構造では、センタサイドピラー部材18には、センタピラーベント19が、また、リヤサイドピラー部材20には、リヤピラーベント21が各々設けられているが、特にこれに限らず、例えば、センタピラーベント19または、リヤピラーベント21のうち、少なくとも一方が、車室2の外へ排気するドラフタ開口部19aを有して、車室2側部に位置するサイドピラー部材に設けられていればよく、ピラーベントのドラフタ開口部等の形状、数量、及び材質が、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
前記実施の形態では、この発明の車両換気構造として、車両11の車室2内に熱負荷低減構造を適用するものを用いて説明してきたが、例えば、車両11の前記前部空間部に位置する駆動源が、エンジン等、内燃機関によるものに限定されること無く、電気自動車或いは、ハイブリッドカー等の電動AC或いは、HVACに用いることにより、エアコン装置自体の小型軽量化を図れ、低コスト化が可能となる。
【0046】
前記実施の形態では、この発明の車両換気構造が適用される構成の一例として、に用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 車室
4 車体側開口部
11 車両
16 前席サイドウインドウ部材
17 後席サイドウインドウ部材
18 センタサイドピラー部材(サイドピラー部材の一つ)
19 センタピラーベント
19a,21a ドラフタ開口部
20 リヤサイドピラー部材(サイドピラー部材の一つ)
21 リヤピラーベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室前方から外気を導入して、車室内を通過させて、車外に排気する車両換気構造であって、
前記車室の側面に設けられたサイドウインドウの内側近傍を通過する空気を車室外へ排気するドラフタ開口部を、車室側部に位置するサイドピラー部材に設けたことを特徴とする車両換気構造。
【請求項2】
前記サイドピラー部材は、センタサイドピラー部材であって、該センタサイドピラー部材に、前記ドラフタ開口部を有するセンタピラーベントが設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両換気構造。
【請求項3】
前記サイドピラー部材は、リヤサイドピラー部材であって、該リヤサイドピラー部材に、前記ドラフタ開口部を有するリヤピラーベントが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35341(P2013−35341A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171058(P2011−171058)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】