説明

車両構体

【課題】窓開口部においても気圧変化に起因する外力に対抗する十分な強度を容易に確保することが可能な鉄道車両構体を提供すること
【解決手段】幕領域101及び腰領域103は、複数の押出型材を、車体の長手方向に沿わせて配置し、隣接する押出型材の各側部を互いに突き合わせて溶接することで形成されている。吹き寄せ領域102は、二枚の面板の間に車体の長手方向と略直交するように縦骨部材を配置し、二枚の面板それぞれに縦骨部材を接合することで形成されている。この鉄道車両構体BDを構成する側構体10は、吹き寄せ領域102を形成する二枚の面板と、幕領域101及び腰領域103を形成する押出型材とを接合することで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓開口部を有する側構体を備える車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両構体に関するものとして、二枚の面板及び二枚の面板同士を接合するリブから構成された押出型材を用いるいわゆるダブルスキン構造のものが知られている。ダブルスキン構造の車両構体は、押出型材を車体の長手方向に沿って複数配置し、それら複数の押出型材を互いに接合して形成されるものである(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
ダブルスキン構造の車両構体では、上述したように、押出型材を車体の長手方向に沿って複数配置し、それら複数の押出型材を互いに接合している。そのため、窓開口部を形成するにあたっては、複数の押出型材を接合した後に、窓開口部に相当する開口を切断若しくは削り出しによって形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−194117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ダブルスキン構造の車両構体が適用される鉄道車両の中には、高速でトンネルに出入りする新幹線に用いられるものもある。高速でトンネルに出入りした場合に発生する気圧変化による不快感を低減するため、新幹線では車体に気密構造を採用している。このように気密構造を採用した車体に用いられる車両構体には、気圧変化による伸縮作用が避けられないものである。気圧変化による伸縮作用が車両構体に及べば、押出型材の接合部分に接合を引き離す方向に力が働くことになる。幕部や腰部のように、車体の長手方向全てに渡って接合することが可能であれば、このような外力に対抗することは難しくない。しかしながら、窓開口部において窓間に押出型材の接合部分がくると接合長が短くなるため、気圧変化に起因する外力に対抗することが困難になる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダブルスキン構造を少なくとも一部に含む車両構体であって、窓開口部においても気圧変化に起因する外力に対抗する十分な強度を容易に確保することが可能な車両構体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る車両構体は、窓開口部を有する側構体を備える車両構体であって、前記側構体を、前記窓開口部及びその外周部を含む吹き寄せ領域と、前記吹き寄せ領域の上方に配置される幕領域と、前記吹き寄せ領域の下方に配置される腰領域とによって構成している。前記幕領域及び前記腰領域は、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成した複数の押出型材を、車体の長手方向に沿わせて配置し、隣接する前記押出型材の各側部を互いに突き合わせて溶接することで形成されている。前記吹き寄せ領域は、二枚の面板の間に車体の長手方向と略直交するように縦骨部材を配置し、前記二枚の面板それぞれに前記縦骨部材を接合することで形成されている。前記側構体は、前記吹き寄せ領域を形成する前記二枚の面板と、前記幕領域及び前記腰領域を形成する前記押出型材とを接合することで形成されている。
【0008】
本発明に係る車両構体では、幕領域及び腰領域を、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成した複数の押出型材を互いに突き合わせて溶接することで形成しているので、車両構体の多くの部分をダブルスキン構造とし、強度面及び製造容易性の面でダブルスキン構造の利点を享受できるものとしている。一方、吹き寄せ領域は、二枚の面板の間に車体の長手方向と略直交するように縦骨部材を配置し、二枚の面板それぞれに縦骨部材を接合することで形成しているので、隣接する窓開口部の間に面板の接合部分を形成することなく一体的に構成することが可能である。更に、二枚の面板それぞれに縦骨部材を接合しているので、気圧変化に起因する外力に対抗する十分な強度を確保することができる。車両構体を構成する側構体全体としては、吹き寄せ領域を形成する二枚の面板と、幕領域及び腰領域を形成する押出型材とを接合することで形成しているので、ダブルスキン構造の利点を生かしつつ、窓開口部における強度確保も実現することができると共に、強度を確保しつつも容易に製造することが可能なものとなっている。
【0009】
また本発明に係る車両構体では、前記吹き寄せ領域は、第一の窓開口部の外周部を縦割りにした一方を形成する第一縦割り部分と、前記第一の窓開口部に隣接する第二の窓開口部の外周部を縦割りにした一方を形成する第二縦割り部分と、前記第一縦割り部分と前記第二縦割り部分とを繋ぐ窓間部分とによって構成される複数の吹き寄せブロックを有し、前記吹き寄せ領域は、隣接する前記吹き寄せブロックの一方の第一縦割り部分と他方の第二縦割り部分とを繋ぎ合わせることで形成されていることも好ましい。
【0010】
この好ましい態様では、吹き寄せ領域を同じ形状の複数の吹き寄せブロックを組み合わせて構成することができるので、生産効率が向上する。また、各吹き寄せブロックは、第一の窓開口部の外周部を縦割りにした一方を形成する第一縦割り部分と、第一の窓開口部に隣接する第二の窓開口部の外周部を縦割りにした一方を形成する第二縦割り部分と、第一縦割り部分と第二縦割り部分とを繋ぐ窓間部分とによって構成されるので、吹き寄せブロック同士の接合部分は窓間部分ではなく、窓開口部の上方及び下方の外周部に位置することになる。従って、気圧変化によって最も大きな外力が作用する縦方向中央近傍に接合部分を形成する必要がなくなるので、窓開口部周辺における強度確保も実現することができる。
【0011】
また本発明に係る車両構体では、前記縦骨部材は、前記窓間部分に配置されていることも好ましい。この好ましい態様では、窓間部分に縦骨部材を配置するので、気圧変化によって最も大きな外力が作用する縦方向中央近傍を確実に補強することができる。
【0012】
また本発明に係る車両構体では、前記複数の吹き寄せブロックそれぞれは、前記第一縦割り部分と前記窓間部分と前記第二縦割り部分とに渡って、車体の長手方向に沿わせて横骨部材を配置し、前記二枚の面板それぞれに前記横骨部材を接合して形成され、前記吹き寄せ領域は、隣接する前記吹き寄せブロックに設けられた前記横骨部材の各端部を結合部材によって接合することで形成されていることも好ましい。
【0013】
この好ましい態様では、吹き寄せ領域は、隣接する吹き寄せブロックに設けられた横骨部材の各端部を結合部材によって接合することで形成されているので、横骨部材が連結された補強構造を車両の長手方向に渡って形成することができ、車両構体の強度向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダブルスキン構造を少なくとも一部に含む車両構体であって、窓開口部においても気圧変化に起因する外力に対抗する十分な強度を容易に確保することが可能な車両構体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の実施形態である鉄道車両構体を示す概略図である。
【図2】図1に示す鉄道車両構体の吹き寄せブロック近傍を拡大して示す図である。
【図3】図1に示す鉄道車両構体に用いられる吹き寄せブロックを示す分解斜視図である。
【図4】図1に示す鉄道車両構体の吹き寄せブロック同士を接合する状態を示す図である。
【図5】図1に示す鉄道車両構体の吹き寄せブロックと腰領域を構成する押出型材とを接合する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
本発明の実施形態である鉄道車両構体について図1を参照しながら説明する。図1は、鉄道車両構体BDの側構体10を示す図である。鉄道車両構体BDは、車体長手方向に対して左右の面を形成する側構体10の他に、図1には明示されていないが、車体長手方向に対して両端を閉鎖する面を形成する妻構体、屋根を形成する屋根構体、及び床面を構成する台枠を備えている。
【0018】
側構体10は、窓開口部WD及びその外周部を含む吹き寄せ領域102と、吹き寄せ領域102の上方に配置される幕領域101と、吹き寄せ領域102の下方に配置される腰領域103とによって構成されている。鉄道車両構体においては一般的に、窓の上部を構成する部分を「幕」、窓の下部を構成する部分を「腰」、「幕」と「腰」との間に存在し、隣接する窓の間を構成する部分を「吹き寄せ」と呼んでいる。従って、本実施形態の吹き寄せ領域102は、一般的な「吹き寄せ」に加えて、一般的な「幕」の下部及び一般的な「腰」の上部を含む領域となっている。
【0019】
幕領域101は、押出型材101a及び押出型材101bによって構成されている。押出型材101aは、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成し、トラス状の断面を持つ金属押出部材である。押出型材101bも同様に、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成し、トラス状の断面を持つ金属押出部材である。押出型材101aと押出型材101bとは、溶接接合されている。
【0020】
腰領域103は、押出型材103a及び押出型材103bによって構成されている。押出型材103aは、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成し、トラス状の断面を持つ金属押出部材である。押出型材103bも同様に、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成し、トラス状の断面を持つ金属押出部材である。押出型材103aと押出型材103bとは、溶接接合されている。
【0021】
吹き寄せ領域102は、押出型材102a及び押出型材102bと、吹き寄せブロック20及び吹き寄せブロック21とによって構成されている。
【0022】
押出型材102a及び押出型材102bは、ドアDRが配置される近傍を形成する部材である。押出型材102aは、一枚の面板にリブを一体的に構成した金属押出部材である。押出型材102bも同様に、一枚の面板にリブを一体的に構成した金属押出部材である。押出型材102aと押出型材102bとは、溶接接合されている。このように押出型材102a,102bは、ドアDRの戸袋部分を構成する部材を収めるためにシングルスキン構造となっている。上述した押出型材101b,103a,103bも同様に、ドアDRの戸袋部分を構成する部材を収めるためにドアDRの近傍部分はシングルスキン構造となっている。
【0023】
吹き寄せブロック21は、窓開口部WDを形成するための部材である。吹き寄せブロック21が配置されている近傍の拡大図を図2に示す。図2では、窓開口部WD1(第一の窓開口部、図1の窓開口部WDの一つに相当)と、窓開口部WD1に隣接する窓開口部WD2(第二の窓開口部、図1の窓開口部WDの一つに相当)とを示している。窓開口部WD1の全周を囲む外周部WD1a、及び窓開口部WD2の全周を囲む外周部WD2aが形成されている。外周部WD1aと外周部WD2aとの間には、窓間部分WDmが形成されている。
【0024】
吹き寄せブロック21は、窓開口部WD1の外周部WD1aを縦割りにした一方を形成する第一縦割り部分21aと、窓開口部WD1に隣接する窓開口部WD2の外周部WD2aを縦割りにした一方を形成する第二縦割り部分21bと、第一縦割り部分21aと第二縦割り部分21bとを繋ぐ窓間部分21cとによって構成されている。吹き寄せ領域102は、隣接する吹き寄せブロック21の一方の第一縦割り部分21aと他方の第二縦割り部分21bとを繋ぎ合わせることで形成されている
【0025】
続いて、吹き寄せブロック21の分解斜視図を図3に示し、図3を参照しながら説明する。図3に示すように、吹き寄せブロック21は、外板211と、内板212と、横骨部材213,213と、縦骨部材214,214とによって構成されている。
【0026】
外板211は、第一縦割り部分211aと、第二縦割り部分211bと、窓間部分211cとを有し、全体として「エ」字状の部材である。内板212は、第一縦割り部分212aと、第二縦割り部分212bと、窓間部分212cとを有し、全体として「エ」字状の部材である。内板212は、窓を組み込むスペースを考慮し、外板211よりもやや細めに形成されている。具体的には、外板211と内板212との外形寸法は同一であって、第一縦割り部分211aよりも第一縦割り部分212aがやや細く(図中寸法d1a>d3a、d1b>d3b)、第二縦割り部分211bよりも第一縦割り部分212bがやや細く(図中寸法d1a>d3a、d1b>d3b)、窓間部分211cよりも窓間部分212cがやや細く(図中寸法d2>d4)なっている。また、第一縦割り部分211a及び第二縦割り部分211bと窓間部分211cとの間の角のRは、第一縦割り部分212a及び第二縦割り部分212bと窓間部分212cとの間の角のRよりも大きくなっている。
【0027】
外板211の第一縦割り部分211a及び内板212の第一縦割り部分212aは、吹き寄せブロック21の第一縦割り部分21aに相当する。外板211の第二縦割り部分211b及び内板212の第二縦割り部分212bは、吹き寄せブロック21の第二縦割り部分21bに相当する。外板211の窓間部分211c及び内板212の窓間部分212cは、吹き寄せブロック21の窓間部分21cに相当する。
【0028】
横骨部材213は、第一縦割り部分211a,212aと窓間部分211c,212cと第二縦割り部分211b,212bとに渡って、車体の長手方向に沿わせて配置されている。横骨部材213は、二枚の面板である外板211及び内板212それぞれに接合されている。横骨部材213は、角パイプ形状を成しており、金属製であっても炭素繊維強化プラスチック製であってもよく、その他の強度が確保できる材料で形成されていてもよい。横骨部材213が金属製の場合は、外板211及び内板212には溶接にて接合される。横骨部材213が炭素繊維強化プラスチック製の場合は、外板211及び内板212には接着して接合される。尚、横骨部材213が炭素繊維強化プラスチック製の場合は、リベットやボルトを用いた機械的な接合によって接合されることも好ましい。
【0029】
縦骨部材214は、窓間部分211c,212cに配置されている。縦骨部材214は、主に窓間部分211c,212cに配置されていればよく、その一部が第一縦割り部分211a,212a及び第二縦割り部分211b,212bにかかっていても構わない。縦骨部材214は、一対の横骨部材213,213を繋ぐように配置されている。縦骨部材214は、角パイプ形状を成しており、金属製であっても炭素繊維強化プラスチック製であってもよく、その他の強度が確保できる材料で形成されていてもよい。縦骨部材214が金属製の場合は、外板211及び内板212には溶接にて接合される。縦骨部材214が炭素繊維強化プラスチック製の場合は、外板211及び内板212には接着して接合される。尚、縦骨部材214が炭素繊維強化プラスチック製の場合は、リベットやボルトを用いた機械的な接合によって接合されることも好ましい。横骨部材213と縦骨部材214とは、溶接や接着や機械的接合によって接合されることも好ましい。
【0030】
隣接する吹き寄せブロック21,21を接合する状態を図4に示す。図4に示すように、隣接する吹き寄せブロック21と吹き寄せブロック21とは、それぞれの横骨部材213と横骨部材213の各端部を結合部材215によって接合されている。結合部材215は、矩形の板状部材である。横骨部材213が金属製の場合は、結合部材215は溶接にて接合される。横骨部材213が炭素繊維強化プラスチック製の場合は、結合部材215は接着して接合される。一方の外板211と他方の外板211とは溶接接合され、一方の内板212と他方の内板212とも溶接接合されている。
【0031】
腰領域103を形成する押出型材103aと、吹き寄せブロック21とを接合する状態を図5に示す。図5に示すように、押出型材103aの上端には突起31,31が形成されている。吹き寄せブロック21の外板211が一方の突起31の外側に位置し、内板212が他方の突起31の外側に位置するように、押出型材103aに吹き寄せブロック21が戴置され、溶接にて接合される。尚、幕領域101を形成する押出型材101bと吹き寄せブロック21との接合も同様に行われる。
【0032】
吹き寄せブロック20は、吹き寄せブロック21を半分に切断した形状を成し、押出型材102a及び押出型材102bに繋げるために配置される部材である。吹き寄せブロック20の形態は、吹き寄せブロック21を半分に切断した形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
上述したように本実施形態に係る鉄道車両構体BDは、窓開口部WDを有する側構体10を備える。側構体10は、窓開口部WD(WD1,WD2)及びその外周部WD1a,WD2aを含む吹き寄せ領域102と、吹き寄せ領域102の上方に配置される幕領域101と、吹き寄せ領域102の下方に配置される腰領域103とによって構成されている。
【0034】
幕領域101及び腰領域103は、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成した複数の押出型材101a,101b,103a,103bを、車体の長手方向に沿わせて配置し、隣接する押出型材の各側部を互いに突き合わせて溶接することで形成されている。
【0035】
吹き寄せ領域102は、二枚の面板である外板211及び内板212の間に車体の長手方向と略直交するように縦骨部材214,214を配置し、二枚の面板である外板211及び内板212それぞれに縦骨部材214,214を接合することで形成されている。
【0036】
側構体10は、吹き寄せ領域102を形成する外板211及び内板212と、幕領域101及び腰領域103を形成する押出型材101b,103aとを接合することで形成されている。
【0037】
本実施形態に係る鉄道車両構体では、幕領域101及び腰領域103を、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成した複数の押出型材101a,101b,103a,103bを互いに突き合わせて溶接することで形成しているので、鉄道車両構体BDの多くの部分をダブルスキン構造とし、強度面及び製造容易性の面でダブルスキン構造の利点を享受できるものとしている。
【0038】
一方、吹き寄せ領域102は、二枚の面板である外板211及び内板212の間に車体の長手方向と略直交するように縦骨部材214を配置し、二枚の面板である外板211及び内板212それぞれに縦骨部材214を接合することで形成しているので、隣接する窓開口部WDの間に面板である外板211及び内板212の接合部分を形成することなく一体的に構成することが可能である。
【0039】
更に、二枚の面板である外板211及び内板212それぞれに縦骨部材214を接合しているので、気圧変化に起因する外力に対抗する十分な強度を確保することができる。鉄道車両構体BDを構成する側構体10全体としては、吹き寄せ領域102を形成する二枚の面板である外板211及び内板212と、幕領域101及び腰領域102を形成する押出型材101b,103aとを接合することで形成しているので、ダブルスキン構造の利点を生かしつつ、窓開口部WDにおける強度確保も実現することができると共に、強度を確保しつつも容易に製造することが可能なものとなっている。
【0040】
また本実施形態では、吹き寄せ領域102は、窓開口部WD1の外周部WD1aを縦割りにした一方を形成する第一縦割り部分21aと、窓開口部WD1に隣接する窓開口部WD2の外周部WD2aを縦割りにした一方を形成する第二縦割り部分21bと、第一縦割り部分21aと第二縦割り部分21bとを繋ぐ窓間部分21cとによって構成される複数の吹き寄せブロック21を有している。吹き寄せ領域102は、隣接する吹き寄せブロック21の一方の第一縦割り部分21aと他方の第二縦割り部分21bとを繋ぎ合わせることで形成されている。
【0041】
このように、吹き寄せ領域102を同じ形状の複数の吹き寄せブロック21を組み合わせて構成しているので、生産効率が向上する。また、各吹き寄せブロック21は、窓開口部WD1の外周部WD1aを縦割りにした一方を形成する第一縦割り部分21aと、窓開口部WD1に隣接する第二の窓開口部WD2の外周部WD2aを縦割りにした一方を形成する第二縦割り部分21bと、第一縦割り部分21aと第二縦割り部分21bとを繋ぐ窓間部分21cとによって構成されるので、吹き寄せブロック21同士の接合部分は窓間部分WDmではなく、窓開口部WDの上方及び下方の外周部に位置することになる。従って、気圧変化によって最も大きな外力が作用する縦方向中央近傍に接合部分を形成する必要がなくなるので、窓開口部WD周辺における強度確保も実現することができる。
【0042】
また本実施形態では、縦骨部材214は、窓間部分WDmに配置されている。このように、窓間部分WDmに縦骨部材214を配置するので、気圧変化によって最も大きな外力が作用する縦方向中央近傍を確実に補強することができる。
【0043】
また本実施形態では、複数の吹き寄せブロック21それぞれは、第一縦割り部分21aと窓間部分21cと第二縦割り部分21bとに渡って、車体の長手方向に沿わせて横骨部材213を配置し、二枚の面板である外板211及び内板212それぞれに横骨部材213を接合して形成される。吹き寄せ領域102は、隣接する吹き寄せブロック21に設けられた横骨部材213の各端部を結合部材215によって接合することで形成されている。
【0044】
このように、吹き寄せ領域102は、隣接する吹き寄せブロック21に設けられた横骨部材213の各端部を結合部材215によって接合することで形成されているので、横骨部材213が連結された補強構造を車両の長手方向に渡って形成することができ、鉄道車両構体BDの強度向上に寄与することができる。
【0045】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
10:側構体
20:吹き寄せブロック
21:吹き寄せブロック
21a:第一縦割り部分
21b:第二縦割り部分
21c:窓間部分
31:突起
101:幕領域
101a:押出型材
101b:押出型材
102:吹き寄せ領域
102a:押出型材
102b:押出型材
103:腰領域
103a:押出型材
103b:押出型材
211:外板
211a:第一縦割り部分
211b:第二縦割り部分
211c:窓間部分
212:内板
212a:第一縦割り部分
212b:第二縦割り部分
212c:窓間部分
213:横骨部材
214:縦骨部材
215:結合部材
BD:鉄道車両構体
DR:ドア
WD:窓開口部
WD1:窓開口部
WD1a:外周部
WD2:窓開口部
WD2a:外周部
WDm:窓間部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口部を有する側構体を備える車両構体であって、
前記側構体を、前記窓開口部及びその外周部を含む吹き寄せ領域と、前記吹き寄せ領域の上方に配置される幕領域と、前記吹き寄せ領域の下方に配置される腰領域とによって構成し、
前記幕領域及び前記腰領域は、二枚の面板及びその二枚の面板を繋ぐリブを一体的に構成した複数の押出型材を、車体の長手方向に沿わせて配置し、隣接する前記押出型材の各側部を互いに突き合わせて溶接することで形成され、
前記吹き寄せ領域は、二枚の面板の間に車体の長手方向と略直交するように縦骨部材を配置し、前記二枚の面板それぞれに前記縦骨部材を接合することで形成され、
前記吹き寄せ領域を形成する前記二枚の面板と、前記幕領域及び前記腰領域を形成する前記押出型材とを接合することで、前記側構体が形成されていることを特徴とする車両構体。
【請求項2】
前記吹き寄せ領域は、第一の窓開口部の外周部を縦割りにした一方を形成する第一縦割り部分と、前記第一の窓開口部に隣接する第二の窓開口部の外周部を縦割りにした一方を形成する第二縦割り部分と、前記第一縦割り部分と前記第二縦割り部分とを繋ぐ窓間部分とによって構成される複数の吹き寄せブロックを有し、
前記吹き寄せ領域は、隣接する前記吹き寄せブロックの一方の第一縦割り部分と他方の第二縦割り部分とを繋ぎ合わせることで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両構体。
【請求項3】
前記縦骨部材は、前記窓間部分に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両構体。
【請求項4】
前記複数の吹き寄せブロックそれぞれは、前記第一縦割り部分と前記窓間部分と前記第二縦割り部分とに渡って、車体の長手方向に沿わせて横骨部材を配置し、前記二枚の面板それぞれに前記横骨部材を接合して形成され、
前記吹き寄せ領域は、隣接する前記吹き寄せブロックに設けられた前記横骨部材の各端部を結合部材によって接合することで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両構体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66679(P2012−66679A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212579(P2010−212579)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)