説明

車両用ウィンドウの水滴除去装置

【目的】撥水処理を施したウィンドシールドにおけるジャダーを防止するとともに撥水処理層の保護を図った自動車等の車両用水滴除去装置を提供する。
【構成】車体フレーム1に圧電振動子2が固定される。この圧電振動子2を介して、接着剤3により窓ガラス4が車体フレーム1に取付けられる。窓ガラス4には前述の撥水処理が施されている。雨天走行時には、圧電振動子2に高周波電源より駆動電圧を印加し所定の周波数で撥水処理された窓ガラス4を振動させる。これにより、窓ガラス面上の水滴がガラス面を滑って落下する。この場合、振動によりガラス面上の小水滴が寄せ集められ水滴が大きくなって自重により落下作用が促進される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車両用ウィンドウの水滴除去装置に関し、特に撥水処理を施したウィンドウに適用する水滴除去装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のウィンドシールドには雨天運転時にガラス面の雨水を除去するためにワイパー装置が設けられている。このような従来のワイパー装置は、ワイパーアーム先端に取付けたブレードを一定圧力でガラス面に押し付けながら移動させガラス面を払拭するものである。
【0003】図2は、従来のワイパー装置のブレード断面を示す。ゴム等の弾性材料からなるブレード15の先端15aを、窓ガラス(図示しない)に対し一定圧力で押し付けた状態で窓ガラス面上を摺動し、ガラス表面を擦りながら表面の雨水を払拭して除去する。この場合、通常のガラス表面には水膜が形成されるため、この水膜がブレードの摩擦力を減少させワイパー動作が円滑に行われる。
【0004】一方、自動車の窓ガラスに撥水処理を施したウィンドシールドが従来から用いられている。この撥水処理としては、例えばポリジメチルシロキサンと室温で液状の炭化水素とからなる溶液中に無機ガラスを浸漬し、ディッピング法により塗布した後、これを焼き付けて形成する方法や、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物あるいはその他のフッ素系撥水処理剤をガラス面に塗布する方法等が用いられている。このような撥水処理を施すことにより、ガラス面上の雨水がはじかれて水滴を形成しガラス面上での水膜形成が防止され、ガラス面を濡らす面積が減って視界が良好に保たれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、撥水処理を施したウィンドシールドのガラス表面には撥水処理のため水膜ができず、従って、雨天走行時にウィンドシールドの水滴を除去するためにワイパーを動作させると、ワイパーのブレードとガラス面が直接擦れ合う状態となるため、摩擦係数が大きくなりブレードの移動に伴いこれが脈動(ジャダー)を起こし、不快騒音を発生したり雨水による水滴の円滑な除去ができなくなるという問題を生ずる。また、ブレードが撥水処理面上を大きな摩擦力で摺動するため、撥水処理剤が剥げ落ちたり撥水効果の低下や撥水層としての使用寿命の短縮という問題を生じていた。
【0006】本発明は上記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、ウィンドシールドにおけるワイパーによるジャダーを防止し得る自動車等の車両用水滴除去装置の提供を目的とする。
【0007】本発明はまた、撥水処理を施したウィンドシールドにおけるワイパーによるジャダーを防止するとともに撥水処理層の保護を図った自動車等の車両用水滴除去装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明では、窓ガラスと車体フレームとの間に高周波振動手段を設けたことを特徴とする車両用ウィンドウの水滴除去装置を提供する。
【0009】好ましい実施例においては、前記高周波振動手段は圧電振動子からなることを特徴としている。
【0010】前記窓ガラスは、撥水処理が施された窓ガラスであると特に好ましい。
【0011】
【作用】ウィンドウの高周波振動(超音波振動)によりガラス面上の小水滴が寄せ集められ比較的大きな水滴となって自重によりガラス面上を滑って落下する。
【0012】
【実施例】図1は本発明の実施例に係る水滴除去装置の要部構成図である。車体フレーム1に圧電振動子2が固定される。この圧電振動子2を介して、接着剤3により窓ガラス4が車体フレーム1に取付けられる。窓ガラス4には前述の撥水処理が施されている。5は、雨水侵入防止および装飾用のモールである。雨天走行時には、圧電振動子2に高周波電源(図示しない)より駆動電圧を印加し所定の周波数で撥水処理された窓ガラス4を振動させる。これにより、窓ガラス面上の水滴がガラス面を滑って落下する。この場合、振動によりガラス面上の小水滴が寄せ集められ水滴が大きくなって自重による落下作用が促進される。
【0013】窓ガラス4を振動させる場合、その振動が人間の目の視認性にほとんど影響を与えない周波数帯域を用いることが好ましい。このような周波数帯域の高周波電源を用いることにより、雨天走行時のウィンドシールドの振動が運転者の視認性を低下させることはなく安全運転が確保される。
【0014】また、ウィンドシールド上の汚れの除去のため、従来からある通常のワイパー装置を併用することも好ましい。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、本発明においては、圧電振動子等を用いてウィンドシールドのガラス自体を振動させてその表面の水滴を除去しているため、従来のワイパーのように摩擦接触によるジャダーがなくなり、特に撥水処理されたガラス面の水滴を効果的に円滑に除去することができ、雨天走行時の視界を良好に保ち、視認性の向上が図られ事故防止に寄与することができる。また、従来のようにブレードがガラス面に摺接しないため撥水処理層が擦られることがなく、撥水機能の低下が防止され長期にわたって撥水効果を持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る水滴除去装置の要部構成図。
【図2】従来のワイパーの断面図。
【符号の説明】
1:車体フレーム
2:圧電振動子
3:接着剤
4:窓ガラス
5:モール

【特許請求の範囲】
【請求項1】窓ガラスと車体フレームとの間に高周波振動手段を設けたことを特徴とする車両用ウィンドウの水滴除去装置。
【請求項2】前記高周波振動手段は圧電振動子からなることを特徴とする請求項1に記載の車両用ウィンドウの水滴除去装置。
【請求項3】前記窓ガラスは、撥水処理が施された窓ガラスであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ウィンドウの水滴除去装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開平8−268232
【公開日】平成8年(1996)10月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−73630
【出願日】平成7年(1995)3月30日
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)