説明

車両用カバー

【課題】車両からのカバーの取り外しをスムーズに行い得るようにする。
【解決手段】前面シート1、上面シート2、左側面シート3、右側面シート4の4枚のシート片の各辺同士を縫合することによってカバーを構成する。この前面シート1と上面シート2には、並べて設けた相手方のシート側に延伸する舌片9が形成されている。この舌片9の大きさは、前面シート1側に形成したものの方が、上面シート2側に形成したものよりも大きく、両舌片9、9の外縁を縫合することによって、上面シート2側に傾けつつ起立部6を起立させることができる。この起立部6は自転車本体から立ち上がるように形成されているのでその掴み代が大きく、カバーの取り外しをスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自転車や自動二輪車等の車両の保管時に、これらを覆うための車両用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用カバーは、自転車や自動二輪車等の車両の保管時に、この車両を雨や埃から保護したり、盗難やいたずらを防止したりするために、この車両を覆うものである。この車両用カバーとして、例えば特許文献1に示す態様のものがある。このカバーは、風雨によってばたつきが生じないように、車両の外形にフィットするように弛みなく形成されている。
【特許文献1】特開2002−87357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献1に示すカバーは、上述したように弛みがないため、このカバーを取り外す際の掴み代がほとんどない。このため、このカバーを掴みにくく、その取り外しに手間取ることが多い。
【0004】
そこで、この発明は、車両からのカバーの取り外しをスムーズに行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、この発明は、車両に被せて、その全体を覆うようにした袋状の車両用カバーにおいて、カバーを構成するシートのシート面から立ち上がる起立部を形成し、カバーの取り外しの際にはこの起立部を掴んで行い得るようにした。この起立部は、車両本体から立ち上がるように形成されているのでその掴み代が大きく、カバーの取り外しを容易に行い得る。
【0006】
前記構成においては、前記シートが第1のシートと、第2のシートとで構成され、前記第1のシートに舌片を形成するとともに、前記第2のシートにも舌片を形成し、両シートを面方向に並べて広げつつ、両舌片の外縁同士を繋ぎ合わせ、この両舌片をシートから立ち上がらせて起立部とすることができる。
【0007】
この舌片の長さ(突出量)が前記起立部の高さに相当し、この舌片の長さを変えることによって、使用者が容易に掴むことができるように起立部の高さを適宜調節することができる。
【0008】
この舌片の形状は、起立部の形状に対応して適宜決定することができるが、前記第1のシートに形成した舌片の外縁の長さよりも、前記第2のシートに形成した舌片の外縁の長さの方を短くするように成形することもできる。
【0009】
この外縁の長さを両舌片で異ならせると、両外縁を繋ぎ合わせる際にひずみが生じる。すなわち、長い外縁側にはシートをたわませる力が作用するのに対して、短い外縁側にはシートを引き伸ばす力が作用する。この引き伸ばす力はその舌片をそのシート側に倒すように作用するため、起立部は短い外縁側つまり第2のシート側に傾く。
【0010】
また、前記シートが第1のシートと、第2のシートとで構成され、前記第1のシートにのみ舌片を形成し、両シートを面方向に並べて広げつつ、前記第1のシートの舌片の外縁と第2のシートの外縁とを繋ぎ合わせ、この舌片をシートから立ち上がらせて起立部とすることもできる。
【0011】
この場合、舌片を形成した側の外縁の長さは、舌片を形成しないシートの外縁の長さより、その湾曲の分だけ長くなる。このため、上述したのと同様に、起立部は舌片を形成しない第2のシート側に傾く。
【0012】
上述のように起立部を第2のシート側に傾けるようにした各構成においては、この第2のシートの起立部に空気孔を形成することもできる。
【0013】
この空気孔を形成することによって、車両用カバーの下側からその内側を通ってこの空気孔外に排出される空気の一連の流れが形成される。このため、特に夏場等にカバー内に熱がこもって、サドル等の部品が異常に高温になるのを防止することができる。
また、この起立部は、この第2のシート側に傾いていて、両シートの繋ぎ目が庇状に突出しているので、空気孔をこの起立部に形成しても、この空気孔から直接雨水が入り込む恐れは低い。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、起立部を掴んで、車両からのカバーの取り外しをスムーズに行い得る。このため、車両をすぐに使用可能な状態とすることができ、利便性が非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明に係る車両用カバーを図1及び2に示す。この図示のカバーは自転車用のものであって、自転車のハンドル幅、全長、サドル高さ等に対応してその形状が設計されている。このため、車体に対するカバーのフィット性が確保されていて、風雨によってばたつきが生じないようにしている。
【0016】
このカバーは、前面シート1、上面シート2、左側面シート3、右側面シート4の4枚のシート片の各辺同士を縫合することによって構成されている。この前面シート1及び上面シート2は左右非対称となっているが(図2(b)及び(c)を参照)、自転車は、通常、ハンドルが左又は右の一方に傾いた状態で駐輪されることに対応したものである。
また、左側面シート3及び右側面シート4の前端側には、チェーン孔5が形成してあって、このチェーン孔5にチェーン等の盗難防止器具を通して、自転車の前輪をロックできるようにしている。
【0017】
この前面シート1と上面シート2との縫合部の要部を図3及び4を参照して説明する。この両シート1、2はカバー上方に立ち上がりつつ縫合されていて、起立部6を形成している。この縫合部には両シート1、2とは色の異なるバイアステープ7が設けられている。このバイアステープ7は、手でこの起立部6を掴む際の滑り止め作用と、この起立部6の位置が明確に分かるように目印の役目とを有している。
【0018】
この起立部6は上面シート2側(カバーの後方)に傾いていて、その上面シート2の起立部6にはメッシュ状の空気孔8が形成されている。この空気孔8を形成することによって、カバーの下側からその内側を通ってこの空気孔外に排出される空気の一連の流れが形成される。このため、夏場等にカバー内に熱がこもって、サドル等の部品が異常に高温になるのを防止することができる。また、カバー内に湿気がこもりにくいので、車体に錆が発生するのも防止できる。
【0019】
また、この起立部6は、上面シート2側(後方側)に傾いており、かつ、前面シート1と上面シート2との縫合部及びこの縫合部に設けたバイアステープ7は、庇状に後方に突出している。このため、空気孔8がこの起立部6の下側となって、この空気孔8から直接雨水が入り込む恐れは低い。
【0020】
また、このバイアステープ7は、その両端が上面シート2と左側面シート3又は右側面シート4との縫合とともに、上面シート2側(後方側)に倒された状態で縫合されている。この縫合によって、起立部6が上面シート2側に引き寄せられ、その傾いた状態が確実に維持される。
【0021】
次に、この前面シート1と上面シート2を展開した状態の要部を図5(a)に示す。この両シート1、2には、並べて設けた相手方のシート側に延伸する舌片9(各シート1、2に示した仮想線よりも先端の部分)が形成されている。この舌片9の大きさは、前面シート1側に形成したものの方が、上面シート2側に形成したものよりも大きい。つまり、前面シート1の舌片9の外縁の長さL1は、上面シート2の舌片9の外縁の長さL2よりも長い。この外縁の両端を一致させつつ(AとA’及びBとB’をそれぞれ一致させつつ)、舌片9同士を両外縁でもって縫合すると、両外縁の長さが異なる(L1>L2)ことに起因して、この縫合部にひずみが生じる。このひずみは、両舌片9、9からなる起立部6を上面シート2側(後方側)に傾けるように作用する。
【0022】
この舌片9の形状はこれに限定されない。例えば、同図(b)は、前面シート1にのみ舌片9を形成し、上面シート2にはこの舌片9を形成しない態様を示す。この態様でも上述したのと同様に、縫合部にひずみを生じさせて、起立部6を上面シート2側に傾けるようにすることができる。
【0023】
また、同図(c)は、前面シート1及び上面シート2の両方に同じ形状の舌片9をそれぞれ形成した態様を示す。この態様では、両舌片9、9の外縁の長さが等しい(L1=L2)ので前記ひずみは生じない。このため、起立部6はほぼ直立した状態で起立する。
【0024】
この起立部6を傾けるようにするか、又は、直立させるかについては、この起立部6の掴みやすさを考慮した上で適宜選択し得るが、空気孔8を形成する際には雨水が入り込むのを防ぐために、傾けるようにするのが好ましい。
【0025】
本実施形態においては、起立部6をカバーの上面側(前面シート1と上面シート2の縫合部)に形成したが、その位置は上面側に限定されない。例えば、本実施形態における左側面シート3を前後に二分割した形態とし、この前後のシートの縫合部に起立部6を形成するようにしてもよい。
【0026】
また本実施形態では、自転車用のカバーを例示して説明したが、用途は自転車用に限定されない。例えば、自動二輪車等の車両、水上バイク等の乗り物用のカバーにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図
【図2】同実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図
【図3】図1のA視要部を示す斜視図
【図4】図3のX−X断面図
【図5】各シートの展開図を示し、(a)は同実施形態、(b)は他の実施形態、(c)はさらに他の実施形態
【符号の説明】
【0028】
1 前面シート(第1のシート)
2 上面シート(第2のシート)
3 左側面シート
4 右側面シート
5 チェーン孔
6 起立部
7 バイアステープ
8 空気孔
9 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に被せて、その全体を覆うようにした袋状の車両用カバーにおいて、
カバーを構成するシートのシート面から立ち上がる起立部(6)を形成したことを特徴とする車両用カバー。
【請求項2】
前記シートが第1のシート(1)と、第2のシート(2)とで構成され、前記第1のシート(1)に舌片(9)を形成するとともに、前記第2のシート(2)にも舌片(9)を形成し、両シート(1、2)を面方向に並べて広げつつ、両舌片(9、9)の外縁同士を繋ぎ合わせ、この両舌片(9、9)をシートから立ち上がらせて前記起立部(6)としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用カバー。
【請求項3】
前記第1のシート(1)に形成した舌片(9)の外縁の長さ(L1)よりも、前記第2のシート(2)に形成した舌片(9)の外縁の長さ(L2)の方が短いことを特徴とする請求項2に記載の車両用カバー。
【請求項4】
前記シートが第1のシート(1)と、第2のシート(2)とで構成され、前記第1のシート(1)にのみ舌片(9)を形成し、両シート(1、2)を面方向に並べて広げつつ、前記第1のシート(1)の舌片(9)の外縁と第2のシート(2)の外縁とを繋ぎ合わせ、この舌片(9)をシートから立ち上がらせて起立部(6)としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用カバー。
【請求項5】
前記第2のシート(2)の起立部(6)に空気孔(8)を形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−83389(P2010−83389A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256198(P2008−256198)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(391025257)パーフェクト商事株式会社 (1)