説明

車両用ドアロック装置

【課題】
ドアロック装置とドアパネルとの取付け部の防水性及び防塵性の向上を図りつつ、余分なスペースを必要とせず、多種多様な車種にも展開することが可能である汎用性の高い車両用ドアロック装置を提供することである。
【解決手段】
車両100のインナーパネルPの取付穴P1に配設され、内部にドアロック機構10が収容され、取付穴P1を貫通する突起部3が外部に備えられたハウジング4と、ハウジング4とインナーパネルPとの間で突起部3の外周に沿ってシール部材5を備え、突起部3を取付穴P1に取付けた状態で突起部3に嵌合させることによりシール部材5を圧潰させて、インナーパネルPを挟持するように固定部材6を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを構成するドアパネルに取り付ける際に防水性及び防塵性を向上させることができるとともに、製造コストを低減させることができる車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ドアロック装置として、防水性及び防塵性を維持させることができる車両用ドアロック装置が引用文献1には開示されている。
【0003】
引用文献1によれば、図1に示すように従来の車両用ドアロック装置は、固定部材150を内側パネルP´に固定したことにより、開口部140の周縁部140bに設けた当接部材170を内側パネルP´の開口穴P3の開口縁部に当接させられるので、コネクタ130をハウジングの外部に表出する開口部140の防水性、防塵性を維持することができるようになっている。
【特許文献1】特開2005−113374号公報(第6頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用ドアロック装置については、固定部材150は、開口部140より離間した位置に設けられているため、当接部材170を内側パネルP´に押し付ける押し付け力が不十分となってしまう可能性がある。そのため、満足した開口部140の防水性、防塵性を実現できない恐れがある。また、固定部材150が開口部140よりも離間した位置に設けられているため、ドア内に取付け座面のスペースを確保しなければならない。更に取付け座面を多種多様な車両毎にドアロック装置の取付け姿勢に合わせて新たに設定する必要性があるため非常に煩雑となってしまうという問題があった。更に、汎用性の高い車両用ドアロック装置と言うことはできなかった。
【0005】
このために、本発明の課題は、ドアロック装置とドアパネルとの取付け部の防水性及び防塵性の向上を図りつつ、余分なスペースを必要とせず、多種多様な車種にも展開することが可能である汎用性の高い車両用ドアロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的課題を解決するために講じた第1の技術的手段は、車両のドアパネルの取付穴に配設され、内部にドアロック機構が収容され、前記取付穴を貫通する突起部が外部に備えられたハウジングと、前記ハウジングと前記ドアパネルとの間で前記突起部の外周に沿って弾性部材を備え、前記突起部を前記取付穴に取り付けた状態で前記突起部に嵌合させることにより前記弾性部材を圧潰させて、固定部材が配設されたことである。
【0007】
この場合、前記突起部と前記固定部材とは螺合させると良い。
【0008】
また、前記ドアパネルには、前記突起部と前記固定部材との嵌合による荷重が掛からないようにすると良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハウジングとドアパネルの間で突起部の外周に沿って設けた弾性部材を、突起部を取付穴に取り付けた状態で突起部に固定部材を嵌合させる構成としたので、弾性部材を好適に圧潰させることができる。したがって、防水性及び防塵性が高く、汎用性も高い車両用ドアロック装置を提供することができる。
【0010】
また、突起部と固定部材とは螺合する構成とすれば、より好適に弾性部材を圧潰させることができる。したがって、品質の高い車両用ドアロック装置を提供することができる。
【0011】
更に、ドアパネルは、突起部と固定部材との嵌合による荷重がかからないような構成とすれば、インナーパネルの耐久性を向上させることができる。したがって、品質の高い車両用ドアロック装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して以下に説明する。
【0013】
図2は本発明に係るドアロック装置1を図6に示す車両100のドア40の内側から見た斜視図を示す。図3は、図2におけるA−A断面模式図を示す。
【0014】
本実施例のドアロック装置1は、車両100のドア40を構成するアウトサイドハンドル41を備えたアウターパネル42とアウターパネル42よりも室内側に備えられたインナーパネルPとの間にネジ等により取り付けられている。また、ドアロック装置1は、図2に示すようにドア40を車両100に対して閉じた時にその閉鎖状態を保持するドアロック機構2を備えており、樹脂等で成形されたハウジング4内に収容されている。更に、ドアロック装置1は、図2,4に示すようにインナーパネルPに設けられた取付穴P1を介して挿通可能な突起部3を備えている。
【0015】
ドアロック機構2は、車両100に設けられたストライカ(不図示)に係合することによってドア40の閉鎖状態を保持するラッチ機構10と、車両100の室内側に設けられたインサイドハンドル(不図示)や、アウターパネル42に設けられたアウトサイドハンドル41の解錠操作力をラッチ機構10に伝達しないようにするロック状態と、ラッチ機構10に伝達するようにするアンロック状態を選択可能なロック機構20と、車両100の室内側に設けられたスイッチ(不図示)等を操作することによりロック機構20を電気的に駆動させることによりロック状態もしくはアンロック状態に切り替えるアクチュエータ機構30とから構成されている。
【0016】
ラッチ機構10は、従来のドアロック装置に採用されているものと同等のものであるため、詳細には図示しないが、金属製のベースプレート11に軸支され、ドアを閉めた時に車両100に設けられたストライカが切欠部13を通過して当接することにより回転させられるラッチ12と、ラッチ12に設けられた係合溝(不図示)に係合してラッチ12がストライカとの係合を解除する方向に回転することを阻止するポール(不図示)とを備えている。
【0017】
ロック機構20は、従来のドアロック装置に採用されているものと同等のものであるため、詳細には図示しないが、車両100の室内側に設けられたロックノブ(不図示)に接続されたアクティブレバー21と、車両100の室内側に設けられたインサイドハンドルやアウターパネル42に設けられたアウトサイドハンドル41がケーブル(不図示)等を介して接続されたオープンレバー(不図示)とを備えている。アクティブレバー21は、ロックノブの操作により支持軸21aを中心に回転し、インサイドレバーとポールとを係脱することにより、インサイドハンドル及びアウトサイドハンドル41の操作によるドア40の解錠操作を有効または無効にする。
【0018】
アクチュエータ機構30についても従来のドアロック装置に採用されているものと同等のものであるため、詳細には図示しないが、電動モータ(不図示)と電動モータの駆動により回転させられるモータ軸(不図示)とモータ軸に噛合し、モータ軸の回転力を減速するホイールギヤ(不図示)とを備えている。電動モータは、ハウジング4のモータ収容部4cに収容され、突起部3の内部に収容されている後述するコネクタ接続部3aを介して電気が供給されるように接続されている。モータ軸は、電動モータの駆動により回転し、噛合させられているホイールギヤにその力を伝達する。これによりホイールギヤも回転し、アクティブレバー21を回転させるように構成されている。車両の室内に設けられているドアロック施解錠スイッチ(不図示)もしくは外部からドアロック装置の施解錠指令信号を発信する遠隔スイッチ(不図示)等の操作により、制御手段(不図示)が電動モータを駆動させ、ロック機構20のアクティブレバー21を回転させるようになっている。
【0019】
突起部3は中空の円筒状に形成され、ドアロック装置1のハウジング4の取付面4bに対して略垂直に突出している。突起部4の内部には、アクチュエータ機構30を駆動させるための電気を供給するコネクタ部6aが接続するコネクタ接続部3aが収容されている。また、突起部3の外周は、外ネジ部3bが螺設されている。一方でコネクタ接続部3aに接続するアクチュエータ機構30に電気を供給するためのコネクタ部6aは、円筒状の固定部材6の内部に収容され、固定部材6の内周には突起部3の外ネジ部3bに螺合する内ネジ部6bが螺設されている。なお、固定部材6を突起部3に螺合させてもコネクタ部6aは固定部材6と一体的に移動しないような構成となっている。
【0020】
図3に示すように、突起部3の外周縁にはシール部材5(弾性部材)が設けられている。更に、シール部材5は、インナーパネルPと、ハウジング4との間に挟持された形態で配置されている。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、ハウジング4とインナーパネルPの間で突起部3の外周縁に沿って設けたシール部材5を、突起部3を取付穴P1に取り付けた状態で突起部3に固定部材6を嵌合させる構成としたので、シール部材5を好適に圧潰させることができる。したがって、インナーパネルPと突起部3との密着性を向上させることができ、ひいてはドアロック装置1の防水性及び防塵性を向上させることができる。更に、固定部材6を取付ける座面を新たに設ける必要性がないためドアロック装置1をコンパクトにすることができ、多種多様な車種に対して汎用性のあるドアロック装置1にすることができる。
【0022】
また、突起部3と固定部材6とは互いに螺合することによりインナーパネルPを介してシール部材5を好適に圧潰させることができる。したがって、防水性がさらに向上した車両用ドアロック装置1を提供することができる。
【0023】
更に、インナーパネルPは、突起部3と固定部材6との嵌合による荷重がかからないような構成とすれば、インナーパネルPの耐久性を向上させることができる。したがって、品質の高い車両用ドアロック装置1を提供することができる。
【0024】
また、本実施例では、図5のように突起部3に外ネジ部3bを、固定部材6に内ネジ部6bをそれぞれ螺設し、両者を螺合させることによりシール部材5を圧潰するようにした例を説明したが、本発明はこれに限らず図5に示すように突起部3に内ネジ部3cを固定部材6に外ネジ部6cを螺設する構成にしても同様の効果を奏する。
【0025】
また、本実施例では、突起部3及び固定部材6に互いに螺合するネジ部を螺設し、それらを螺合することによりシール部材5を圧潰するような構成について説明をしたが、本発明はこれに限らず、例えば固定部材6の内周に係合爪を設け、突起部3の内周に係合爪が係合する被係合部を設けた所謂スナップフィット結合にしても良い。更に係合爪と被係合部の配置関係を逆の構成にしても特に問題はない。
【0026】
以上、本発明を上記実施の態様に則して説明したが、本発明は上記態様にのみ限定されるものではなく、本発明の原理に準ずる各種態様を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車両用ドアロック装置の従来技術を示す。
【図2】本発明に係る車両用ドアロック装置の斜視図を示す。
【図3】図2に示す車両用ドアロック装置のA−A断面模式図を示す。
【図4】本発明に係る車両用ドアロック装置がドアパネルに取り付けられた状態を示す斜視図を示す。
【図5】図3のその他の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る車両用ドアロック装置が搭載された車両側面図を示す。
【符号の説明】
【0028】
P インナーパネル(ドアパネル)
P1 取付穴
1 ドアロック装置
2 ドアロック機構
3 突起部
4 ハウジング
5 シール部材(弾性部材)
6 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアパネルの取付穴に配設され、内部にドアロック機構が収容され、前記取付穴を貫通する突起部が外部に備えられたハウジングと、前記ハウジングと前記ドアパネルとの間で前記突起部の外周に沿って弾性部材を備え、前記突起部を前記取付穴に取り付けた状態で前記突起部に嵌合させることにより前記弾性部材を圧潰させて、前記ドアパネルを挟持する固定部材が配設されたことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記突起部と前記固定部材は螺合することを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記ドアパネルには、前記突起部と前記固定部材との嵌合による荷重が掛かっていないことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−248590(P2008−248590A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92015(P2007−92015)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】