説明

車両用内装部品

【課題】加飾表皮の周縁端末の処理に要する工数を低減し、併せて、製造時のライン編成を短縮することができる車両用内装部品を提供する。
【解決手段】車両用内装部品である中接部材の芯材13は、芯材本体14と、芯材本体14の周縁にヒンジ部16を介して回動自在に設けられるとともに加飾表皮20の周縁端末が接着される巻き込み部15とを備えている。この芯材13は、加飾表皮20が外側に向くように巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返すことにより、加飾表皮20の周縁端末を芯材13の裏面側へと巻き込み処理する。また、巻き込み部15は、先端部が屈曲形状を備えており、巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返した場合に、先端部の屈曲部位17が貫通孔に嵌め合わされるとともに、ツメ部19が巻き込み部15の先端部と係合することにより折り返し状態が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インテリアの装飾性を高めるため、車両用内装部品(例えばサイドドアのドアトリム)について、布地シートといった加飾表皮を含む種々の表皮を芯材に貼着して仕上げる手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような内装部品を製造する場合には、まず、一般部、すなわち、芯材の表面(意匠面)又は表皮の対応する領域に接着材を塗布し、これを乾燥させた後に、圧着処理することにより芯材と表皮とを接着する。また、表皮は芯材の表面サイズに対して一回り程度大きなサイズを備えており、表皮の周縁端末は、芯材の裏面側へと巻き込まれることにより処理される。具体的には、芯材周縁領域の裏面又は表皮の周縁端末における裏面に接着材を塗布し、これを乾燥させる。その後、手作業又は巻き込み機により、表皮の周縁端末は芯材の裏面に沿って折り返されて接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来手法では、加飾表皮の周縁端末を処理する際に、加飾表皮の周縁端末を芯材の裏面に接着固定するために、接着材の塗布工程が必要となり、また、初期タックを上げるために乾燥工程が必要となる。また、巻き込み作業を手作業で行う場合には、熟練した技術が必要であり、また、これを自動化する場合には設備投資によるコストアップが懸念される。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表皮の周縁端末の処理に要する工数を低減し、併せて、かかる処理を容易な作業で達成することができる車両用内装部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、芯材と、芯材の表面に接着固定される表皮とを備える車両用内装部品を提供する。ここで、芯材は、芯材本体と、芯材本体の周縁にヒンジ部を介して回動自在に設けられるとともに表皮の周縁端末が接着される巻き込み部とを備え、表皮が外側に向くように巻き込み部を芯材本体に対して折り返すことにより、表皮の周縁端末を芯材の裏面側へと巻き込み処理する。また、巻き込み部は、先端部が屈曲形状を備え、巻き込み部を芯材本体に対して折り返した場合に、先端部の屈曲部位が芯材本体側に形成された貫通孔に嵌め合わされるとともに、芯材本体側に形成されたツメ部が先端部と係合することにより折り返し状態が保持される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表皮の芯材本体への接着とともに、その周縁端末を巻き込み部に接着することができる。これにより、周縁端末に対して、別途の工程として接着材を塗布する必要がなく、また、その際の乾燥工程も必要がなくなる。さらに、表皮の周縁端末に対する巻き込み処理は、ヒンジ部を中心として巻き込み部を芯材本体に対して折り返すことで足りる。そのため、巻き込み処理に対して熟練した技術も必要なく、容易な作業で完結するので、自動化といった設備投資によるコストアップも抑制することができる。これにより、表皮の周縁端末の処理に要する工数を低減し、併せて、容易な作業で処理を達成することができる。
【0009】
また、先端部の屈曲部位と貫通孔とを嵌め合わせる、及び、ツメ部と巻き込み部の先端部との係合により、巻き込み部の折り返し状態を保持することができる。このような二段階の工夫により、巻き込み部が外力や表皮の弾性力によって自然状態に復帰して、表皮の周縁端末が適切に処理されないといった不都合を抑制することができる。
【0010】
さらに、先端部の屈曲部位を貫通孔に嵌め合すことで、当該貫通孔を塞ぐことにも機能するので、貫通孔を設けることにより、表皮の対応部位が窪み、仕上がり状態の見栄えが悪化するという不都合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用内装部品としてのドアトリムが適用された車両のサイドドアを模式的に示す側面図
【図2】図1に示すドアトリムのAA断面図
【図3】芯材の構成を模式的に示す断面図
【図4】中接部材の製造工程を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、車両用内装部品としてのドアトリム10が適用された車両のサイドドアを模式的に示す側面図であり、図2は、図1に示すドアトリム10のAA断面図である。サイドドアのドアインナパネル(図示せず)は、車室の側壁パネルの一部を構成し、その側面にはトリム材としてのドアトリム10が装着されている。
【0013】
ドアトリム10の主要部をなすドアトリム本体11は、保形性並びにドアパネルへの取付剛性を備えた樹脂芯材の表面に表皮を貼り合わせて構成されている。例えば、樹脂芯材としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を使用することができ、この素材がプレス成形若しくはモールドプレス成形工法により所要形状に成形され、樹脂芯材の成形時に表皮が一体貼着される。表皮としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シートを使用することができる。
【0014】
ドアトリム本体11の表面略中央部には、加飾を目的とした中接部材12が装着されている。中接部材12は、芯材13の表面に加飾表皮20を貼り合わせて構成されている。
【0015】
芯材13としては、樹脂や木質繊維板等を使用することができる。芯材13は、車室側に露出する表面(意匠面)に相当する芯材本体14が所望の形状・模様等に形成されており、その芯材本体14の裏面側には、芯材本体14に対して折り返えされた状態で固定された巻き込み部15が設けられている。この巻き込み部15には、加飾表皮20の周縁端末が接着されており、加飾表皮20が外側に向くように巻き込み部15が折り返されることにより、加飾表皮20の周縁端末を芯材13の裏面側へと巻き込み処理することができる。
【0016】
図3は、芯材13の展開状態を模式的に示す説明図である。このような巻き込み部15の折り返し構造に起因して、巻き込み部15は、芯材本体14の周縁にヒンジ部16を介して回動自在に設けられている。
【0017】
また、巻き込み部15は、先端部が屈曲形状を備えており、この巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返した場合に、先端部の屈曲部位17が芯材本体14側に形成された貫通孔18に嵌め合わされる。さらに、芯材本体14には、この貫通孔18に臨んだ突起を備えるツメ部19が一体成形されている。このツメ部19は、巻き込み部15の先端部と係合することで、巻き込み部15の折り返し状態を保持する。
【0018】
加飾表皮20としては、ドアトリム本体11の表皮に対して外観上のアクセント効果を付与するため、クロス等の布地シートを用いることができる。加飾表皮20は、芯材13又は加飾表皮20の対応領域に塗布された接着材により、芯材13に接着固定されている。この加飾表皮20は、意匠面となる芯材本体14の表面サイズよりも一回り程度大きなサイズに形成されており、その周縁端末は、ヒンジ部16よりも周縁側の領域、すなわち、巻き込み部15の表面に接着固定されている。なお、加飾表皮20は、ツメ部19による係合を阻害しないように、芯材13の表面全域を覆うことなく、当該巻き込み部15の先端部側の一部で芯材13そのものが露出するように設定されている。
【0019】
以下、図4を参照し、中接部材12の製造工程を説明する。まず、コア側金型30及びキャビティー側金型31を用いた成形工法により、芯材13を作成する(図4(a))。
【0020】
つぎに、芯材13の表面又はこれに対応する加飾表皮20の領域に接着材を塗布し、乾燥させた後、受け治具と加圧治具とを備える圧着装置により、芯材13の表面と加飾表皮20との圧着を行う(図3(b))。
【0021】
つぎに、作業者による手作業により、加飾表皮20が外側に向くように巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返す。この折り返しにともない、巻き込み部15の屈曲部位17が、芯材本体14側の貫通孔18に嵌め合わされるとともに、先端部の頂部をツメ部19と係合させることにより、巻き込み部15の折り返し状態を保持する。
【0022】
このようにして製造された中接部材12は、図示しないクリップ等の係止手段を用いて、ドアトリム本体11の組み付け部11aに組み付けられる(図2参照)。
【0023】
このように本実施形態において、車両用内装部品である中接部材12の芯材13は、芯材本体14と、芯材本体14の周縁にヒンジ部16を介して回動自在に設けられるとともに加飾表皮20の周縁端末が接着される巻き込み部15とを備えている。この芯材13は、加飾表皮20が外側に向くように巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返すことにより、加飾表皮20の周縁端末を芯材13の裏面側へと巻き込み処理する。
【0024】
かかる構成によれば、加飾表皮20の芯材本体14への接着とともに、その周縁端末を巻き込み部15に接着することができる。これにより、周縁端末に対して、別途の工程として接着材を塗布する必要がなく、また、その際の乾燥工程も必要がなくなる。さらに、加飾表皮20の周縁端末に対する巻き込み処理は、ヒンジ部16を中心として巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返すことで足りる。そのため、巻き込み処理に対して熟練した技術も必要なく、容易な作業で完結するので、自動化といった設備投資によるコストアップも抑制することができる。これにより、加飾表皮の周縁端末の処理に要する工数を低減し、併せて、容易な作業で処理を達成することができる。
【0025】
また、本実施形態において、巻き込み部15は、先端部が屈曲形状を備えており、巻き込み部15を芯材本体14に対して折り返した場合に、先端部の屈曲部位17が芯材本体14側に形成された貫通孔18に嵌め合わされる。また、巻き込み部15は、芯材本体14側に形成されたツメ部19が、巻き込み部15の先端部と係合することにより折り返し状態が保持される。
【0026】
かかる構成によれば、屈曲部位17と貫通孔18とを嵌め合わせることにより、巻き込み部15の折り返し状態を保持することができる。また、ツメ部19が巻き込み部15の先端部と係合することで、同様に、巻き込み部15の折り返し状態を保持することができる。このような二段階の工夫により、巻き込み部15が外力や加飾表皮20の弾性力によって自然状態に復帰して、加飾表皮20の周縁端末が適切に処理されないといった不都合を抑制することができる。
【0027】
また、屈曲部位17と貫通孔18とを嵌め合わせることにより、巻き込み部15の折り返し状態を保持するが、この貫通孔18により、加飾表皮20の対応部位が窪み、仕上がり状態の見栄えが悪化するという虞がある。しかしながら、本実施形態によれば、先端部の屈曲部位17を貫通孔18に嵌め合すことで、当該貫通孔18を塞ぐことにも機能するので、前述のような見栄えの悪化を抑制することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態にかかる自動車用内装部品について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、自動車用内装部品としては、ドアトリムに取り付けられる中接部材の他、ドアトリム本体であってもよく、センターピラーガーニッシュや、フロントピラーガーニッシュ、リヤピラーガーニッシュ、アームレスト等の種々の部品に適用することができる。また、布地シートといった加飾表皮以外にも、種々の表皮について適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ドアトリム
11 ドアトリム本体
11a 組み付け部
12 中接部材
13 芯材
14 芯材本体
15 巻き込み部
16 ヒンジ部
17 屈曲部位
18 貫通孔
19 ツメ部
20 加飾表皮
30 コア側金型
31 キャビティー側金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部品において、
芯材と、
前記芯材の表面に接着固定される表皮とを備え、
前記芯材は、
芯材本体と、
前記芯材本体の周縁にヒンジ部を介して回動自在に設けられるとともに前記表皮の周縁端末が接着される巻き込み部とを備え、
前記表皮が外側に向くように前記巻き込み部を前記芯材本体に対して折り返すことにより、前記表皮の周縁端末を前記芯材の裏面側へと巻き込み処理し、
前記巻き込み部は、先端部が屈曲形状を備え、前記巻き込み部を前記芯材本体に対して折り返した場合に、前記先端部の屈曲部位が前記芯材本体側に形成された貫通孔に嵌め合わされるとともに、前記芯材本体側に形成されたツメ部が前記先端部と係合することにより折り返し状態が保持されることを特徴とする車両用内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91441(P2013−91441A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235192(P2011−235192)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】