説明

車両用冷却装置

【課題】 電気ヒータ等電力消費量の大きい発熱素子を必要とせずに、内燃機関に供給される吸気の吸気温度を可変できる車両用冷却装置を提供すること。
【解決手段】 車両用冷却装置20は、吸気が取り込まれる吸気孔11aを有し、車両1の駆動源であるエンジン11と、車両1の駆動源であるモータ10と、吸気孔11aに吸気を供給する第1吸気通路21と、モータ10を制御するPCU12と、PCU12を介して吸気孔11aに吸気を供給する第2吸気通路22と、第1吸気通路21及び第2吸気通路22の少なくとも1つの開口面積を調整する第1調整弁23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力源である内燃機関及び回転機を備えた車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境変化の高まりを受け、燃料の消費量や排ガスの排出量を低減可能な車両の開発が進んでいる。このような車両として、内燃機関及びモータの両方を駆動源とするハイブリッド車(以下、HV車と称する)がある。
【0003】
このような環境変化の高まりに対し、内燃機関においては、効率よく内燃機関を作動させ、燃費を向上させることが求められている。例えば、特許文献1に記載のように、内燃機関が低負荷時には吸気温度を上昇させて燃焼効率を高め、内燃機関の負荷上昇に伴い吸気温度を低下させてノッキングを抑制して、燃費の向上を図るものが知られている。また、特許文献2では、内燃機関に供給される吸気の吸気温度を上昇させるために、吸気加熱用の電気ヒータを用いることが知られている。
【0004】
一方、HV車に用いられるモータは、車両の駆動源となるべく高出力であり、モータの電源装置やインバータ等、モータの制御装置の発熱量は非常に高いものとなる。例えば特許文献3では、内燃機関の冷却回路とは別に、モータやモータの制御装置を冷却する冷却回路が備えられ、冷却水によってモータの制御装置を冷却することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−283618号公報
【特許文献2】特開昭62−35053号公報
【特許文献3】特開2005−104404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように内燃機関の負荷に応じて吸気温度を可変させるためには、特許文献2のような電力消費量の大きい電気ヒータを用いる必要があり、電気ヒータの作動によって電力を消費する。するとHV車においては、モータへの電力供給量が減少して、モータによる駆動力の確保が難しくなる。結果、内燃機関を作動させて不足したモータの駆動力を補う必要があり、燃費悪化の一因となりうる。
【0007】
また、特許文献3のように、モータやモータの制御装置を冷却水によって冷却する場合は、冷却水を循環させるポンプや、冷却水の熱を外部に放出するラジエータを備える必要がある。従って、多くの部品が必要となり、HV車の価格が上昇する一因となりうる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電気ヒータ等電力消費量の大きい発熱素子を必要とせずに、内燃機関に供給される吸気の吸気温度を可変できる車両用冷却装置を提供することにある。また、従来の冷却水による水冷を行なわずに、モータやモータの制御装置を冷却できる車両用冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために本発明に講じられた特長構成は、吸気が取り込まれる吸気孔を有し、車両の駆動源である内燃機関と、前記車両の駆動源である回転機と、前記吸気孔に吸気を供給する第1吸気通路と、前記回転機を制御する制御部と、前記制御部を介して前記吸気孔に吸気を供給する第2吸気通路と、前記第1吸気通路及び前記第2吸気通路の少なくとも1つの開口面積を調整する第1調整弁と、を備えることである。
【0010】
本特徴構成によれば、内燃機関への吸気を回転機の制御部を介してから供給できるため、吸気は制御部の熱を受熱し、内燃機関が要求する吸気温度にすることができる。よって、内燃機関の燃費向上に貢献できる。
【0011】
また、内燃機関への吸気を回転機の制御部を介してから供給できるため、大風量の吸気が制御部に作用できる。よって、従来水冷で冷却した制御部を、空冷に置き換えることができ、冷却水や冷却水を冷却するラジエータ等の部品を削減できる。
【0012】
更に、制御部の熱は、外部に放出せずに吸気を介して内燃機関に供給できるため、本発明は熱効率の観点からも優れている。
【0013】
なお、制御部とは、回転機を制御するインバータ、昇圧回路及び電源装置の他、回転機本体も含むものとする。また、回転機とは、電動機及び発電機の少なくとも1つを指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る車両の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る車両用冷却装置の第1調整弁が第1状態のときをを示す概略図である。
【図3】本発明に係る車両用冷却装置の第1調整弁が第1状態のときをを示す概略図である。
【図4】本発明に係る車両用冷却装置の第1調整弁が第3状態のときをを示す概略図である。
【図5】本発明に係る車両用冷却装置の第1調整弁が第1状態のときをを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施形態を、図面に基づき説明する。
【0016】
図1に基づいて、車両1の全体構成を説明する。
【0017】
車両1の前後には、前輪2と後輪3とが、それぞれ左右一対配置される。この車両1は、前輪2が駆動輪であり、モータ10もしくはエンジン11が駆動すると、その動力がドライブシャフト4を介して前輪2に伝達される。なお、車両1は前輪駆動車に限らず、後輪駆動車や4輪駆動車であっても構わない。
【0018】
車両1の下部にはモータ10の電源となるバッテリ13が搭載される。バッテリ13は、後述するPCU12を介してモータ10に電気的に接続されている。
【0019】
モータ10とバッテリ13との間には、インバータや昇圧回路を備えたパワーコントロールユニット(以下、PCUと称す)12が電気的に接続されている。バッテリ13からの直流電流は、PCU12で昇圧され交流電流に変換されることにより、モータ10を駆動できるように構成されている。車両1の減速時に、モータ10が発電機として機能し、モータ10で発電された電力がPCU12を介してバッテリ13への回生充電が行なわれるように構成すると好ましい。
【0020】
次に、図2〜図5に基づき、車両1に搭載される車両用冷却装置20を説明する。
【0021】
車両用冷却装置20は、吸気が取り込まれる吸気孔11aを有し、車両1の駆動源であるエンジン11と、車両1の駆動源であるモータ10と、吸気孔11aに吸気を供給する第1吸気通路21と、モータ10を制御するPCU12と、PCU12を介して吸気孔11aに吸気を供給する第2吸気通路22と、第1吸気通路21及び第2吸気通路22の少なくとも1つの開口面積を調整する第1調整弁23と、を備える。更に、第2吸気通路22に備えられた冷却ファン24と、冷却ファン24を介して第2吸気通路22を流通する吸気を外部に放出する放出孔22aと、放出孔22aの開口面積を調整する第2調整弁25と、を備え、PCU12には、PCU12の熱を第2吸気通路22側に放熱する放熱部12aを備えている。なお、放熱部12aは、放熱フィン等の吸気との接触面積を増大させ、熱の授受が積極的に行なえるものが好ましい。
【0022】
第1調整弁23は、第1供給通路21と吸気孔11aとの連通を禁止、かつ、第2吸気通路22と吸気孔11aとの連通を許可する第1状態(図2及び図5の状態)と、第1吸気通路21及び第2吸気通路22の開口面積を調整する第2状態(図3の状態)と、第1吸気通路21と吸気孔11aとの連通を許可、かつ、第2吸気通路22と吸気孔11aとの連通を禁止する第3状態(図4の状態)と、で切換可能に構成される。
【0023】
図2は、第1調整弁23が第1状態のときの概略図である。このとき、第2調整弁25は、第2吸気通路22と放出孔22aとの連通を禁止している。エンジン11が要求する吸気温度が、外気温度(車両用冷却装置20に供給される吸気温度)よりも高い場合、PCU12を介して吸気を供給する。この場合、吸気はPCU12を通過する際に、PCU12からの発熱を放熱部12aにて受熱し、吸気温度を上昇させる。従って、吸気の吸気温度は上昇し、エンジン11が要求する吸気温度に近づけることができる。
【0024】
図3は、第1調整弁23が第2状態のときの概略図である。このとき、第2調整弁25は、第2吸気通路22と放出孔22aとの連通を禁止している。エンジン11が要求する吸気温度が、外気温度(車両用冷却装置20に供給される吸気温度)よりも高い場合、かつ、エンジン11が要求する吸気温度が放熱部12aにより受熱した第2吸気通路22内の吸気温度よりも低い場合は、第1調整弁23は第1吸気通路21及び第2吸気通路22の両方の連通を許可(調整)する。従って、第1調整弁23により第1吸気通路21及び第2吸気通路22の開口面積を調整することにより、吸気の吸気温度を調整し、エンジン11が要求する吸気温度に近づけることができる。
【0025】
図4は、第1調整弁23が第3状態のときの概略図である。このとき、第2調整弁25は、第2吸気通路22と放出孔22aとの連通を許可している。また、第2調整弁25が第2供給通路22と放出孔22aとの連通を許可している場合は、冷却ファン24が作動する。エンジン11が要求する吸気温度が外気温度(車両用冷却装置20に供給される吸気温度)以下の場合は、PCU12を介さず放熱部12aの熱を受熱せずに吸気を供給する。従って、吸気の吸気温度は上昇せず、エンジン11が要求する吸気温度から遠ざかることを抑制できる。
【0026】
もしくは、エンジン11の停止時かつモータ10の作動時は、第1調整弁23は第3状態となる。この場合、車両用冷却装置20に供給される吸気は、エンジン11に供給されない。車両用冷却装置20に供給される吸気は、PCU12からの発熱を放熱部12aにて受熱し、冷却ファン24によって放出孔22aから外部に放出する。従って、吸気はPCU12を空冷する冷却風となり、PCU12を適正な温度とすることができる。
【0027】
図5は、第1調整弁23が第1状態のときの概略図である。一方、図2の状態とは異なり、第2調整弁25は、第2吸気通路22と放出孔22aとの連通を許可している。放熱部12aによる放熱量よりもPCU12による発熱量の方が大きい場合は、車両用冷却装置20に供給される吸気はPCU12を通過するようにする。この場合、吸気はPCU12を通過する際に、PCU12からの発熱を放熱部12aにて受熱し、吸気温度が上昇する。PCU12を通過した吸気は、エンジン11に供給されると共に、冷却ファン24によって放出孔22aから外部に放出する。このとき、エンジン11に供給される吸気の吸気温度が、エンジン11が要求する吸気温度から遠ざかる場合であっても、放熱部12aによる放熱量よりもPCU12による発熱量の方が大きい場合は、吸気はPCU12を通過させる。一般的に、エンジン11に供給される吸気の吸気温度が、エンジン11が要求する吸気温度から遠ざかる場合は、エンジン11の燃費悪化となりうる。一方、放熱部12aによる放熱量よりもPCU12による発熱量の方が大きい場合は、PCU12が壊れる可能性がある。従って、放熱部12aによる放熱量よりもPCU12による発熱量の方が大きい場合は、エンジン11の燃費向上よりもPCU12の保護を優先させる。
【0028】
なお、図5の状態において、吸気の供給先は、エンジン11と冷却ファン24との2つであるため、図2〜図4の状態と比較して、車両用冷却装置20に供給される吸気量は多い。従って、PCU12からの発熱を放熱部12aにて受熱する熱量は、図2〜図4の状態と比較して多いものとなる。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、エンジン11が要求する吸気温度に応じて、放熱部12aから熱を受熱して吸気を供給できる。更に、放熱部12aによる放熱量よりもPCU12による発熱量の方が大きい場合は、PCU12の保護を優先させ、信頼性の向上に貢献できる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・車両
2・・・前輪
3・・・後輪
4・・・ドライブシャフト
10・・・モータ(回転機)
11・・・エンジン(内燃機関)
11a・・・吸気孔
12・・・PCU(制御部)
12a・・・放熱部
13・・・バッテリ
20・・・車両用冷却装置
21・・・第1吸気通路
22・・・第2吸気通路
22a・・・放出孔
23・・・第1調整弁
24・・・冷却ファン
25・・・第2調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気が取り込まれる吸気孔を有し、車両の駆動源である内燃機関と、
前記車両の駆動源である回転機と、
前記吸気孔に吸気を供給する第1吸気通路と、
前記回転機を制御する制御部と、
前記制御部を介して前記吸気孔に吸気を供給する第2吸気通路と、
前記第1吸気通路及び前記第2吸気通路の少なくとも1つの開口面積を調整する第1調整弁と、を備える車両用冷却装置。
【請求項2】
前記第2吸気通路に備えられた冷却ファンと、
前記冷却ファンを介して前記第2吸気通路を流通する吸気を外部に放出する放出孔と、
前記放出孔の開口面積を調整する第2調整弁と、を備える請求項1に記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
前記制御部には、前記制御部の熱を前記第2吸気通路側に放熱する放熱部を備える請求項1または2に記載の車両用冷却装置。
【請求項4】
前記第1調整弁は、
前記第1吸気通路と前記吸気孔との連通を禁止、かつ、前記第2吸気通路と前記吸気孔との連通を許可する第1状態と、
前記第1吸気通路及び前記第2吸気通路の開口面積を調整する第2状態と、
前記第1吸気通路と前記吸気孔との連通を許可、かつ、前記第2吸気通路と前記吸気孔との連通を禁止する第3状態と、で切換可能に構成される請求項3に記載の車両用冷却装置。
【請求項5】
前記内燃機関が要求する吸気温度が外気温度よりも高い場合は、前記第1状態を呈する請求項4に記載の車両用冷却装置。
【請求項6】
前記第2調整弁により前記第2吸気通路と前記放出孔との連通を禁止する請求項5に記載の車両用冷却装置。
【請求項7】
前記内燃機関が要求する吸気温度が外気温度よりも高い場合、かつ、前記内燃機関が要求する吸気温度が前記放熱部により受熱した前記第2吸気通路内の吸気温度よりも低い場合は、前記第2状態を呈する請求項4に記載の車両用冷却装置。
【請求項8】
前記第2調整弁により前記第2吸気通路と前記放出孔との連通を禁止する請求項7に記載の車両用冷却装置。
【請求項9】
前記内燃機関が要求する吸気温度が外気温度以下の場合は、前記第3状態を呈する請求項4に記載の車両用冷却装置。
【請求項10】
前記内燃機関の停止時、かつ、前記回転機の作動時は、前記第3状態を呈する請求項4に記載の車両用冷却装置。
【請求項11】
前記第2調整弁により前記第2供給通路と前記放出孔との連通を許可する請求項9または10に記載の車両用冷却装置。
【請求項12】
前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態の何れかの状態であっても、前記放熱部による放熱量よりも前記制御部による発熱量の方が大きい場合は、前記第1調整弁は前記第1状態を呈すると共に、前記第2調整弁は前記第2吸気通路と前記放出孔との連通を許可する請求項4〜11の何れかに記載の車両用冷却装置。
【請求項13】
前記第2調整弁が前記第2供給通路と前記放出孔との連通を許可している場合は前記冷却ファンが作動し、前記第2調整弁が前記第2供給通路と前記放出孔との連通を禁止している場合は前記冷却ファンが停止する請求項2〜12の何れかに記載の車両用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230616(P2011−230616A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101689(P2010−101689)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】