説明

車両用前照灯ユニット

【課題】 複数のビームパターンを形成することのできる機能を備えた多機能化にも拘わらず、灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる。
【解決手段】 LED光源2は、第1LED8と、第1LED8よりも下方位置にある第2LED9とから構成されており、リフレクタ5は、第1LED8の上側に配置される第1リフレクタ10と、第2LED9の下側に配置される第2リフレクタ11と、投影レンズ3の外側に配置される第3リフレクタ12とから構成されており、第1LED8の発光により、第1リフレクタ10、シェード4、および投影レンズ3が協働して第1ビームパターンP1を形成すると共に、第2LED9の発光により、第2リフレクタ11、投影レンズ3、および第3リフレクタ12が協働して第2ビームパターンP2を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプハウジング内に、1個あるいは複数個を組み付けることによりヘッドランプを構成することができる、光源としてLED(発光ダイオード)を用いた車両用前照灯ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、この種の車両用前照灯ユニット100を示す(例えば、特許文献1参照)。この車両用前照灯ユニット100は、素通しの透光カバーとランプボディとで形成される灯室(図示せず)内に複数ユニットが組み込まれて車両用前照灯を構成することのできる単位ユニットである。
【0003】
この前照灯ユニット100は、投影レンズ3、シェード4、およびLED光源2が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されると共に、LED光源2の光を前方へ反射させるリフレクタ5がLED光源2の発光部2aに対向させて配置されて大略構成されている。
【0004】
このときLED光源2は、基板6に支持された状態で光軸Z上において鉛直方向上方に対して光軸Z回りに右方向へ15°回転した方向へ向けて配置されている。
【0005】
また、リフレクタ5は、LED光源2の上方側に設けられた略ドーム状の部材であって、LED光源2からの光を前方へ向けて光軸Z寄りに集光反射させる反射面5aを有して形成されている。そしてLED光源2の発光部2aは、反射面5aの第1焦点F1に配置されているので、LED光源2の光は、前方へ向けて光軸Z寄りに集光反射する際に、反射面5aの第2焦点F2に略集束する。
【0006】
また、投影レンズ3は、平凸レンズで構成されており、その後方側のレンズ焦点F3をリフレクタ5の反射面5aの第2焦点F2に対して僅かに後方に位置させるようにして光軸Z上に配置されている。
【0007】
さらに、シェード4は、リフレクタ5の下方に設けられた板状部材であって、灯具正面視において略ヘの字状に形成されており、その上面には反射処理が施された光制御面4aが形成されている。そして、このシェード4は、その光制御面4aによりリフレクタ5の反射面5aの反射光の一部を上向きに反射させることができるので、LED光源2の光の光束利用率を高めることができるようになっている。
【0008】
このように構成された前照灯ユニット100は、図5(b)に示すように、ホットゾーン形成用パターンPaを奏することができる。
【0009】
そして前照灯は、前照灯ユニット100と、LED光源の配置個数が多い点が相違するだけで他の構成は前照灯ユニット100と同様に構成されている他の前照灯ユニット(図示せず)とを同一のランプボディ内に組み込んで構成される。
【0010】
このように構成された前照灯は、総じて図5(b)の2点鎖線に示すように、水平および斜めカットオフラインCL1およびCL2を有するすれ違いビームとして好適なカットオフライン形成用パターンPbを奏することができる。
【0011】
また、図6(a)は、同一の前照灯に組み込まれるさらに他の前照灯ユニット101を示す(例えば、特許文献1参照)。この前照灯ユニット101は、LED光源2の光を直接投影レンズ3に到達するように構成した直射型である。
【0012】
すなわち前照灯ユニット101は、投影レンズ3、シェード4、およびLED光源2が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されることによって大略構成されている。
【0013】
このときLED光源2は、その発光部2aを光軸Z上において灯具前方へ向けるように配置した状態で、基板6を介して支持部材7に固定されている。シェード4は、LED光源2の前方近傍において光軸Zと直交する鉛直面に沿って延びる板状部材であって、その上端縁4bが光軸Zを水平方向に通るようにして支持部材7に固定されている。
【0014】
また、投影レンズ3は、その後方側のレンズ焦点F3をシェード4の上端縁4bと光軸Zとの交点に位置させるようにして光軸Z上に配置されている。
【0015】
このように構成された前照灯ユニット101は、スポット状の配光パターンを奏することができる。
【0016】
そして前照灯ユニット101と、LED光源の配置個数が多い点が相違するだけで他の構成は前照灯ユニット101と同様に構成されている他の前照灯ユニット(図示せず)とを同一のランプボディ内に組み込んで構成される前照灯は、総じて図6(b)に示すように、中心部から周縁部へ向けて光度が減少する光度分布を有する、走行ビームとして好適なハイビーム用配光パターンPHを奏することができる。
【特許文献1】特開2004−95479公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように従来の車両用前照灯ユニットは、前照灯ユニット100で代表される、すれ違いビームとして好適なカットオフライン形成用パターンPbを奏することができるものか、あるいは前照灯ユニット101で代表される、走行ビームとして好適なハイビーム用配光パターンPHを奏することができるものとして構成されている。
【0018】
このため、従来の車両用前照灯ユニットを用いて、すれ違いビームおよび走行ビームの両機能を備えた多機能型前照灯を開発しようとすると、前照灯ユニット100で代表される前照灯ユニットと、前照灯ユニット101で代表される前照灯ユニットとの両方のユニットを同一のランプボディに組み込む必要があるので、灯具全体の大型化を招くばかりでなく、取付も煩雑になってひいてはコスト高をも招く、という課題を有している。
【0019】
そこで、本発明は、例えばすれ違いビームおよびハイビームのように複数のビームパターンをそれぞれ形成することのできる機能を備えた多機能化にも拘わらず、灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる車両用前照灯ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記した目的を達成するため、請求項1記載の発明は、投影レンズ、シェード、およびLED光源が前方からこの順に光軸に沿って配置されると共に、前記LED光源の光を前方へ反射させるリフレクタが前記LED光源の発光部に対向させて配置されている車両用前照灯ユニットにおいて、
前記LED光源は、前記光軸上で光軸に対して上方向に略垂直配置される第1発光部を有する第1LEDと、前記光軸よりも下方位置で下方向に略垂直配置される第2発光部を有する第2LEDとから構成されており、
前記リフレクタは、前記第1発光部に対向させて前記第1LEDの上側に配置される第1リフレクタと、前記第2発光部に対向させて前記第2LEDの下側に配置される第2リフレクタと、前記投影レンズの外側に配置され投影レンズを介して出射される前記第2リフレクタの反射光を前方へ反射させる第3リフレクタとから構成されており、
前記第1LEDの発光により、前記第1リフレクタ、前記シェード、および前記投影レンズが協働して第1ビームパターンを形成すると共に、前記第2LEDの発光により、前記第2リフレクタ、前記投影レンズ、および前記第3リフレクタが協働して第2ビームパターンを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
このため、請求項1記載の発明では、第1LEDの発光により第1発光部から出射した光は、第1リフレクタで反射されると共に、シェードを経由して投影レンズに到達し、投影レンズを介して灯具前方へ出射する。このときシェードを経由する際に、反射光の一部がシェードにより遮光される。これによって、灯具前方への出射光は、シェードの上端縁の形状に相似するカットラインを有する第1ビームパターンを形成する。
【0022】
また、第2LEDの発光により第2発光部から出射した光は、第2リフレクタで反射されると共に、シェードと干渉すること無く投影レンズに到達し、投影レンズを透過した後更に第3リフレクタで反射されて灯具前方へ出射する。
【0023】
このとき第2LEDが光軸よりも下方位置で下方向に略垂直配置される第2発光部を有して構成されており、かつ第2リフレクタが前記第2発光部に対向させて前記第2LEDの下側に配置されて構成されているので、第2リフレクタの第2焦点と投影レンズの光軸上にあるレンズ焦点との間には、位置ずれ、および光線角度ずれがあるため、配光が基準方向よりも上方方向に形成される。そしてこの配光は、投影レンズを透過した後第3リフレクタで更に反射されて上方方向から前方方向に補正されることによって第2ビームパターンを形成する。
【0024】
このように第1LEDと第2LEDの点灯を切替えることにより、一つのユニットで二つの配光機能を奏することができる。
【0025】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記第1および第2LEDは、放熱部材を備えた取付板の表面および裏面にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする。
【0026】
このため、請求項2記載の発明では、第1LEDおよび第2LEDが放熱部材を共有することになるので、各LED毎に放熱部材を設けるのに比べて、放熱部材の取付スペースを節約できる。
【0027】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記第1ビームパターンは、すれ違いビームパターンであり、前記第2ビームパターンは、ハイビームパターンであることを特徴とする。
【0028】
このため、請求項3記載の発明では、一つのユニットで、すれ違いビームとハイビームの二つの配光機能を奏することができる。
【0029】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記シェードは、前記第2LEDの発光による前記第2リフレクタの反射光を透過させる開口部を有して前記第2リフレクタに延設されていることを特徴とする。
【0030】
このため、請求項4記載の発明では、シェードを第2リフレクタに一体に設けたので、シェードの開口部を第2リフレクタの反射光との関係で精度良く位置決めすることができる。
【0031】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記第3リフレクタは、前記投影レンズを支持するレンズホルダに延設されることによって形成されていることを特徴とする。
【0032】
このため、請求項5記載の発明では、第3リフレクタは、既存のレンズホルダに一体に形成されるので、専用の支持部材を何等必要としないばかりか、投影レンズとの光学的位置決めを精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1記載の発明によれば、第1LEDと第2LEDの点灯を切替えることにより、一つのユニットで二つの配光機能を奏することができるので、機能毎にユニットを組み込む必要が無くなり、これにより灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる車両用前照灯ユニットを提供することができる。
【0034】
また、請求項2記載の発明によれば、第1LEDおよび第2LEDが放熱部材を共有することになるので、放熱部材の取付スペースを節約でき、これにより請求項1記載の発明の効果に加えて、ユニット自体の大きさを抑制することができ、ひいては灯具全体の大型化をも抑制することができる。
【0035】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、一つのユニットで、すれ違いビームとハイビームの二つの配光機能を奏することができる車両用前照灯ユニットを提供することができる。
【0036】
また、請求項4記載の発明によれば、シェードの開口部を第2リフレクタの反射光との関係で精度良く位置決めすることができるので、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、シェードの開口部に対する第2リフレクタの反射光の透過効率を高水準で安定化させることができ、ひいては高品質の第2ビームパターンを形成することができる。
【0037】
その上、シェードが第2リフレクタに延設されることにより部品数の増加を抑制することができる。
【0038】
また、請求項5記載の発明によれば、第3リフレクタは、既存のレンズホルダに形成されるので、専用の支持部材を何等必要としないので、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、部品点数の増加をも抑制することができる。
【0039】
その上、第3リフレクタと投影レンズとの光学的位置決めを精度良く行うことができるので、投影レンズを透過した第2リフレクタの反射光を第3リフレクタで効率よく前方へ出射することができ、ひいては高品質の第2ビームパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図5および図6に開示したものと同一機能を奏する構成要素は、同一符号を付して説明する。
【0041】
図1は、本発明の第1実施形態としての車両用前照灯ユニット1を示す。この車両用前照灯ユニット1は、投影レンズ3、シェード4、およびLED光源2が前方からこの順に光軸Zに沿って配置されると共に、LED光源2の光を前方へ反射させるリフレクタ5がLED光源2の発光部に対向させて配置されていることにより大略構成されている。
【0042】
このときLED光源2は、光軸Z上で光軸Zに対して上方向に略垂直配置される第1発光部8aを有する第1LED8と、光軸Zよりも下方位置で下方向に略垂直配置される第2発光部9aを有する第2LED9とから構成されている。
【0043】
また、リフレクタ5は、第1発光部8aに対向させて第1LED8の上側に配置される第1リフレクタ10と、第2発光部9aに対向させて第2LED9の下側に配置される第2リフレクタ11と、投影レンズ3の外側に配置され投影レンズ3を介して出射される第2リフレクタ11の反射光を前方へ反射させる第3リフレクタ12とから構成されている。
【0044】
そして更に、前照灯ユニット1は、第1LED8の発光により、第1リフレクタ10、シェード4、および投影レンズ3が協働して第1ビームパターンP1(図2参照)を形成すると共に、第2LED9の発光により、第2リフレクタ11、投影レンズ3、および第3リフレクタ12が協働して第2ビームパターンP2(図3参照)を形成するように構成されている。
【0045】
本実施形態では、第1および第2リフレクタ10および11は、それぞれ回転放物面あるいは回転放物面を基本とする自由曲面からなる第1および第2反射面10aおよび11aを内側に有してドーム状に形成されており、第1および第2反射面10aおよび11a同士を対向させて上下方向に突き合わせることによりケーシングの一部を構成するように形成されている。上下方向に突き合わせするときの突き合わせ部位は、図1(b)中、符号Aで示す。
【0046】
また、第1LED8は、その第1発光部8aを第1反射面10aの第1焦点F1の近傍に位置させて取り付けられており、かつ第2LED9は、その第2発光部9aを第2反射面11aの第1焦点F4の近傍に位置させて取り付けられている。
【0047】
また、シェード4は、所望の第1ビームパターンP1のカットラインCLに相似した断面形状の上端縁4aを有して形成されており、その上端縁4aを第1反射面10aの第2焦点F2の近傍に位置させると共に、その下端縁4bと第2リフレクタ11との間に隙間Dを有して取り付けられている。
【0048】
また、投影レンズ3は、平凸レンズで構成されており、そのレンズ焦点F3を第1反射面10aの第2焦点F2の近傍に位置させて取り付けられている。
【0049】
さらに、第3リフレクタ12は、第3反射面12aを下面に有して、投影レンズ3の上側部分から庇状に前方に突出させて形成されている。詳しくは、第3リフレクタ12は、略中央から前側半分の部分が斜め上方に傾けて形成されており、その前側半分の部分の下面に第3反射面12aが形成されている。
【0050】
このように構成された前照灯ユニット1は、第1LED8の発光により第1発光部8aから出射した光L1(図1(a)中、破線で示す)は、第1リフレクタ10の第1反射面10aで反射されると共に、シェード4を経由して投影レンズ3に到達し、投影レンズ3を介して灯具前方へ出射する。このときシェード4を経由する際に、反射光の一部がシェード4により遮光される。これによって、灯具前方への出射光は、シェード4の上端縁4aの形状に相似するカットラインCLを有する第1ビームパターンP1(図2参照)を形成する。
【0051】
また、第2LED9の発光により第2発光部9aから出射した光L2(図1(a)中、実線で示す)は、第2リフレクタ11の第2反射面11aで反射されると共に、シェード4と干渉すること無く隙間Dを透過して投影レンズ3に到達し、投影レンズ3を透過した後更に第3リフレクタ12の第3反射面12aで反射されて灯具前方へ出射する。
【0052】
このとき第2LED9が光軸Zよりも下方位置で下方向に略垂直配置される第2発光部9aを有して構成されており、かつ第2リフレクタ11の第2反射面11aが第2発光部9aに対向させて第2LED9の下側に配置されて構成されているので、第2リフレクタ11の第2反射面11aの第2焦点F5と投影レンズ3の光軸Z上にあるレンズ焦点F3との間には、位置ずれ、および光線角度ずれがあるため、配光L2が基準方向よりも上方方向に形成される。そしてこの配光L2は、投影レンズ3を透過した後第3リフレクタ12の第3反射面12aで更に反射されて上方方向から前方方向に補正されることによって第2ビームパターンP2(図3参照)を形成する。
【0053】
このように、前照灯ユニット1は、第1LED8と第2LED9の点灯を切替えることにより、一つのユニットで二つの配光機能を奏することができる。このとき第1および第2ビームパターンP1およびP2は、例えばすれ違いビームパターンおよびハイビームパターンとすることができる。
【0054】
このため前照灯ユニット1は、機能毎にユニットを組み込む必要が無くなり、これにより灯具全体の大型化およびコスト高を共に抑制することができる。
【0055】
また好ましくは、本実施形態のように、第1および第2LED8および9は、放熱部材13を備えた取付板14の表面および裏面にそれぞれ取り付けられてサブアッシ20を構成している。このときのサブアッシ部材20を図4に示す。
【0056】
すなわち、図4に示すように、取付板14は、水平板14aと垂直板14bをT字状に結合することによって構成されており、水平板14aには、その表面および裏面にそれぞれ第1および第2LED8および9が取り付けられており、垂直板14bには、その前面および後面に放熱部材13が取り付けられている。図4では、第2LED9は水平板14aで隠されて見えない。図4中、符号21は第1LED8の取付用ビスである。
【0057】
このとき水平板14aは、その表面に取り付けた第1LED8を光軸Zの位置に略合致させたときに、その裏面に取り付けた第2LED9が光軸Zから所望の距離だけ下方位置になるような厚みdを有して形成されている。また、水平板14aは、その表面が第1リフレクタ10の取付部位となっており、その裏面が第2リフレクタ11の取付部位となっている。図4中、水平板14aの表面の2点鎖線は第1リフレクタ10の輪郭を示しており、符号22は第1リフレクタ10の取付用ビスを示している。
【0058】
このサブアッシ部材20を構成要素として組み込むことにより、第1LED8、第2LED9、第1リフレクタ10、および第2リフレクタ11の相互の光学的位置関係を精度良く設定することができる。
【0059】
また、放熱部材13は、例えばヒートシンクや、ヒートパイプ等で構成されるものであって、第1および第2LED8および9で発生した熱を冷却する機能を有している。
【0060】
この構成では、第1LED8および第2LED9が放熱部材13を共有することになるので、各LED8,9毎に放熱部材13を設けるのに比べて、放熱部材13の取付スペースを節約でき、これによりユニット自体の大きさを抑制することができ、ひいては灯具全体の大型化をも抑制することができる。
【0061】
また好ましくは、本実施形態のように、シェード4は、第2LED9の発光による第2リフレクタ11の第2反射面11aの反射光L2を透過させる開口部Dを有して第2リフレクタ11に延設される。すなわち、シェード4は、第2リフレクタ11に一体的に形成されている。
【0062】
この構成では、シェード4の開口部Dを第2リフレクタ11の反射光L2との関係で精度良く位置決めすることができるので、開口部Dに対する反射光L2の透過効率を高水準で安定化させることができ、ひいては高品質の第2ビームパターンP2を形成することができる。その上、シェード4が第2リフレクタ11に延設されることにより部品数の増加を抑制することができる。
【0063】
さらに好ましくは、本実施形態のように、第3リフレクタ12は、投影レンズ3を支持するレンズホルダ17に延設されることによって形成される。
【0064】
詳しくは、レンズホルダ17は、上下に2分割されたドーム形状の上部ホルダ15と、下部ホルダ16とから構成されている。上部ホルダ15と下部ホルダ16とは、突き合わせ部位A(図1(b)参照)で突き合わされてレンズホルダ17を構成している。上部および下部ホルダ15および16は、前端縁に沿って内側に開口する溝部15aおよび16aが形成されており、この溝部15aおよび16aに投影レンズ3の薄肉のフランジ部3aを嵌入させて、相互に突き合わせることによって投影レンズ3を支持している。
【0065】
第3リフレクタ12は、上部ホルダ15の上部に属する溝部15aの溝壁に延設されることによって形成されている。
【0066】
この構成では、第3リフレクタ12は、既存のレンズホルダ17(正確には、上部ホルダ15)に一体に形成されるので、専用の支持部材を何等必要としないばかりか、投影レンズ3との光学的位置決めを精度良く行うことができる。
【0067】
このためこの構成を具備した前照灯ユニット1は、部品点数の増加を抑制することができるばかりでなく、投影レンズ3を透過した第2リフレクタ11の反射光L2を第3リフレクタ12で効率よく前方へ出射することができ、ひいては高品質の第2ビームパターンP2を形成することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上部ホルダ15は、その前端に第3リフレクタ12を一体に形成すると共に、その後端に第1リフレクタ10を一体に形成することによって、全体で1個の上部ケーシングを構成しており、かつ下部ホルダ16は、その後端に第2リフレクタ11を一体に形成すると共に、その中間部位にシェード4を一体に形成することによって、全体で1個の下部ケーシングを構成しており、上部および下部ケーシングを相互に突き合わせて合体することにより、前照灯ユニット1の全体ケーシングを構成することができる。
【0069】
このため前照灯ユニット1は、第3リフレクタ12、投影レンズ3、シェード4、第1リフレクタ10の第1反射面10a、第2リフレクタ11の第2反射面11a、第1LED、および第2LEDの相互の光学的位置関係を精度良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用前照灯ユニットで、(a)はその概略縦断面図、(b)はその正面図である。
【図2】図1の車両用前照灯ユニットが形成する第1ビームパターンを示すグラフである。
【図3】図1の車両用前照灯ユニットが形成する第2ビームパターンを示すグラフである。
【図4】図1の車両用前照灯ユニットに組み込まれるサブアッシ部材の斜視図である。
【図5】従来の車両用前照灯ユニットで、(a)はその概略縦断面図、(b)は得られるビームパターンを示すグラフである。
【図6】従来の他の車両用前照灯ユニットで、(a)はその概略縦断面図、(b)は得られるビームパターンを示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 前照灯ユニット(車両用前照灯ユニット)
2 LED光源
3 投影レンズ
4 シェード
5 リフレクタ
8 第1LED
8a 第1発光部
9 第2LED
9a 第2発光部
10 第1リフレクタ
11 第2リフレクタ
12 第3リフレクタ
13 放熱部材
14 取付板
17 レンズホルダ
D 隙間(開口部)
L1 反射光(第1LEDの発光)
L2 反射光(第2LEDの発光)
P1 第1ビームパターン
P2 第2ビームパターン
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズ、シェード、およびLED光源が前方からこの順に光軸に沿って配置されると共に、前記LED光源の光を前方へ反射させるリフレクタが前記LED光源の発光部に対向させて配置されている車両用前照灯ユニットにおいて、
前記LED光源は、前記光軸上で光軸に対して上方向に略垂直配置される第1発光部を有する第1LEDと、前記光軸よりも下方位置で下方向に略垂直配置される第2発光部を有する第2LEDとから構成されており、
前記リフレクタは、前記第1発光部に対向させて前記第1LEDの上側に配置される第1リフレクタと、前記第2発光部に対向させて前記第2LEDの下側に配置される第2リフレクタと、前記投影レンズの外側に配置され投影レンズを介して出射される前記第2リフレクタの反射光を前方へ反射させる第3リフレクタとから構成されており、
前記第1LEDの発光により、前記第1リフレクタ、前記シェード、および前記投影レンズが協働して第1ビームパターンを形成すると共に、前記第2LEDの発光により、前記第2リフレクタ、前記投影レンズ、および前記第3リフレクタが協働して第2ビームパターンを形成するように構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記第1および第2LEDは、放熱部材を備えた取付板の表面および裏面にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記第1ビームパターンは、すれ違いビームパターンであり、前記第2ビームパターンは、ハイビームパターンであることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記シェードは、前記第2LEDの発光による前記第2リフレクタの反射光を透過させる開口部を有して前記第2リフレクタに延設されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記第3リフレクタは、前記投影レンズを支持するレンズホルダに延設されることによって形成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−107875(P2006−107875A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291454(P2004−291454)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】