説明

車両用前照灯ユニット

【課題】 走行状況に対応して前照灯の照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段への重量負荷を軽減すること。
【解決手段】 垂直軸5の軸線aに沿って配置されると共に車体フレーム14に固定されて光学系の光源を構成するLED13からなる線状光源11と、線状光源11の発光中心部位11aが前記光学系の焦点となるように垂直軸5を介して車体フレーム14に回動可能に取り付けられると共に、配光制御手段51により回動制御される線状光源11の光を前方へ照射する前方照射手段12とを備えている。配光制御手段51の回動制御対象が、光源11を切り離した前方照射手段12のみとなるので、配光制御手段51への重量負荷を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行状況に対応して前照灯の照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段、例えば適応型照明システム(AFS(Adaptive Front−lighting System))を備える車両用前照灯ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、この種の車両用前照灯100を示す(例えば、特許文献1参照)。この車両用前照灯100は、光源1の光をリフレクタ2で反射させた後、凸レンズ3を介して前方へ出射させるプロジェクタ型前照灯ユニット50が、自車の走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段(AFS)51により水平方向に回動制御されてランプハウジング60内に組み込まれて大略構成されている。
【0003】
この配光制御手段では、自車の走行状況を示す情報をセンサにより検出してその検出出力を電子制御ユニット56に出力する。このときのセンサは、例えば、ステアリングホイールの操舵角を検出するステアリングセンサと、自車の車速を検出する車速センサと、自車の水平状態(レベリング)を検出するために前後の車軸のそれぞれの高さを検出する車高センサとで構成されており、これら各センサが電子制御ユニット56に接続されている。電子制御ユニット56は、入力されたセンサの各出力に基づいて自動車の前部の左右にそれぞれ装備された、照射方向を左右方向に偏向制御してその配光特性を変化することが可能な前照灯ユニット50を制御する。このため配光制御手段は、電子制御ユニット56と、前照灯ユニット50を水平方向に回動する駆動モータ等の駆動力源を備えた駆動手段(アクチュエータ)57とを有して構成されている。図8中、符号58は、電子制御ユニット56とアクチュエータ57とを接続するコネクタである。
【0004】
前照灯ユニット50は、ランプハウジング60と、このランプハウジング60の前部開口に取り付けられるアウターレンズ52と、ランプハウジング60の後部開口に取り付けられる後カバー53とに囲繞されて形成される灯室54内に配設されている。
【0005】
前照灯ユニット50は、光源1として放電バルブが用いられており、灯室54内に固着された略コ字形状のブラッケット55の下板55aと上板55bとの間に挟まれた状態で支持されている。下板55aの下側には、アクチュエータ57が固定されており、アクチュエータ57の回転出力軸57aは下板55aの孔を貫通して上側に突出されている。そして前照灯ユニット50は、その上面に設けた軸部59を、上板55bに設けた軸受61に嵌合させ、かつその下面に設けた連結部62をアクチュエータ57の回転出力軸57aに嵌合させることによって連結されている。
【0006】
これにより前照灯ユニット50は、ブラッケット55に対して左右方向に回動可能とされ、かつアクチュエータ57の動作によって回転出力軸57aと一体に水平方向に回動動作されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−98851公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両用前照灯100は、プロジェクタ型前照灯ユニット50の高重量に起因してアクチュエータ57への負荷が増大し、ひいては配光制御手段51の故障を招き易い、という課題を有している。
【0008】
すなわち、前照灯ユニット50は、リフレクタ2および凸レンズ3と共に、光源1およびソケット等の光源付帯部品が組み込まれて全体構成され、かつその全体がアクチュエータ57の回動対象となるので、回動対象の重量が嵩み、ひいてはアクチュエータ57の負荷増大を招くことになる。
【0009】
さらには、前照灯ユニット50は、光源1として放電バルブが用いられているので、光源1の出射光の高熱エネルギーに耐えるため凸レンズ3をガラスで形成しなければならず、これによりユニット重量の増大を招いている。
【0010】
そこで、本発明は、走行状況に対応して前照灯の照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段への重量負荷を軽減することによって、配光制御手段の耐久性の向上を図ることができる車両用前照灯ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するため、請求項1記載の発明は、配光制御手段により垂直軸回りに回動制御されることによって走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる車両用前照灯ユニットであって、
前記垂直軸の軸線に沿って配置されると共に車体フレームに固定されて光学系の光源を構成する発光型半導体からなる線状光源と、
前記線状光源の発光中心部位が前記光学系の焦点となるように前記垂直軸を介して前記車体フレームに回動可能に取り付けられると共に、前記配光制御手段により回動制御される前記線状光源の光を前方へ照射する前方照射手段とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0012】
このため、請求項1記載の発明では、前照灯ユニットは、車体フレームに縦列に固定配置される線状光源と、配光制御手段により回動制御される前方照射手段とを備えて構成されている。
【0013】
ここで線状光源とは、複数個のLED(発光ダイオード)を線状に整列してなる線状光源、および線状に形成された面発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)からなる線状光源を含む概念として用いている。
【0014】
また、前方照射手段とは、光源を含めて光学系を構成する光源以外の部品で、例えば、凸レンズ、シェード、リフレクタの群から選択される1個あるいは複数個の組み合わせで構成されるものを言う。
【0015】
そして線状光源は、前方照射手段を介して前方に適宜の配光パターンの出射光を投影すると共に、車体フレームに固定されているにも拘わらず、配光制御手段による前方照射手段の回動により前記配光パターンの出射光を左又は右方向に可変することができる。
【0016】
このとき前方照射手段は、線状光源の発光中心部位が光学系の焦点となるように垂直軸を介して車体フレームに回動可能に取り付けられるものであるから、前方照射手段の回動中心、線状光源、および光学系の焦点が、前記垂直軸の軸線上に位置することになり、これにより前方照射手段の回動にも拘わらず前方照射手段と線状光源との相対的なずれが起きないので、回動前後の配光パターンのパターン形状を不変に保つことができる。
【0017】
また、線状光源は、点光源に比べてより多くの光量を確保することができると共に、発光型半導体で構成されているので、その光の熱エネルギーがフィラメント付き光源に比べて小さく、これにより灯室の過度の温度上昇を避けることができる。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記線状光源は、その発光部を後方に向けて配置されており、かつ
前記前方照射手段は、前記光学系の焦点を反射面の焦点とする前記線状光源の光を前方へ反射するリフレクタを少なくとも備えて構成されていることを特徴とする。
【0019】
このため、請求項2記載の発明では、前方照射手段は、回動中心を有すると共に反射面の焦点が光学系の焦点と合致するリフレクタのみで構成されるか、あるいは前記リフレクタと他の光学系構成部品、例えば、凸レンズやシェードとの組み合わせで構成されることになり、線状光源は、その発光部を後方に向けて、前記リフレクタの回動中心となる垂直軸の軸線に沿って縦列に配置されている。
【0020】
そして線状光源の光は、リフレクタの反射面で反射されて前方への出射光に変換されると共に、配光制御手段による前方照射手段の回動により前記出射光を左又は右方向に可変することができる。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記線状光源は、その発光部を前方に向けて配置されており、かつ
前記前方照射手段は、前記光学系の焦点をレンズ焦点とする前記線状光源の光を前方へ照射する凸レンズで構成されていることを特徴とする。
【0022】
このため請求項3記載の発明では、前方照射手段は、回動中心を有すると共にレンズ焦点が光学系の焦点と合致する凸レンズで構成されており、線状光源は、その発光部を前方に向けて、前記凸レンズの回動中心となる垂直軸の軸線に沿って縦列に配置されている。
【0023】
そして線状光源の光は、直射光として凸レンズに到達し凸レンズを介して前方への出射光となると共に、配光制御手段による凸レンズの回動により前記出射光を左又は右方向に可変することができる。
【0024】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記線状光源は、その発光部を前方に向けて配置されており、かつ
前記前方照射手段は、凸レンズ、シェード、および前記光学系の焦点を反射面の焦点とするリフレクタを、前方よりこの順に配置して全体構成されていることを特徴とする。
【0025】
このため、請求項4記載の発明では、前方照射手段は、凸レンズ、シェード、およびリフレクタを前方よりこの順に配置すると共に前記リフレクタに回動中心を有して構成されており、線状光源は、その発光部を前方に向けて、前記リフレクタの回動中心となる垂直軸の軸線に沿って縦列に配置されている。
【0026】
そして線状光源の光は、直射光およびリフレクタによる反射光として、シェードを介して凸レンズに到達し、かつ凸レンズを介して前方への出射光となると共に、配光制御手段による前方照射手段全体の回動により前記出射光を左又は右方向に可変することができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、前照灯ユニットを、車体フレームに縦列に配置される線状光源と、配光制御手段により回動制御され線状光源の光を前方へ照射する前方照射手段とを備えて構成したので、配光制御手段により回動制御される対象が、光源を切り離した前方照射手段のみとなり、これにより配光制御手段への重量負荷をその分軽減することができ、ひいては配光制御手段の耐久性の向上を図ることができる。
【0028】
また、請求項1記載の発明によれば、前方照射手段の回動にも拘わらず前方照射手段と線状光源との相対的なずれが起きないので、回動前後の配光パターンのパターン形状を不変に保つことができるので、走行状況に対応した優れた追従性能を奏することができる。
【0029】
その上、請求項1記載の発明によれば、光源を発光型半導体からなる線状光源としたので、前照灯としての充分な光量を確保することができると共に、その光の熱エネルギーもフィラメント付き光源に比べて小さくなるので、灯室の過度の温度上昇を避けることができ、ひいては配光制御手段の耐久性の一層の向上を図ることができる。
【0030】
また、請求項2記載の発明によれば、線状光源の光を、リフレクタで反射させることにより、前方への出射光に変換するタイプの車両用前照灯を、前述した請求項1記載の発明と同様な効果を伴って提供することができる。
【0031】
また、請求項3記載の発明によれば、線状光源の光を直射光として凸レンズを介して前方への出射するタイプの車両用前照灯を、前述した請求項1記載の発明と同様な効果を伴って提供することができる。
【0032】
また、請求項4記載の発明によれば、線状光源の光を、直射光およびリフレクタによる反射光として、シェードを介して凸レンズに到達し、かつ凸レンズを介して前方へ出射するタイプの車両用前照灯を、前述した請求項1記載の発明と同様な効果を伴って提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図8に開示したものと同一機能を奏する構成要素は、同一符号を付して説明する。
【0034】
図1および図2は、本発明の第1実施形態としての車両用前照灯ユニット10を示す。
【0035】
この前照灯ユニット10は、配光制御手段51により垂直軸5回りに回動制御されることによって走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させるものであって、従来と同様に、ランプハウジング(図示せず)と、このランプハウジングの前部開口に取り付けられるアウターレンズ(図示せず)とにより区画される灯室(図示せず)内に配設されることによって車両用前照灯を構成することができるものである。配光制御手段51は、例えば、従来と同様に構成されており、車体フレーム14に適宜固定されている。
【0036】
前照灯ユニット10は、光学系の光源を構成する発光型半導体からなる線状光源11と、配光制御手段51により回動制御される線状光源11の光を前方へ照射する前方照射手段12とを備えて大略構成されている。
【0037】
線状光源11は、垂直軸5の軸線aに沿って配置されると共に車体フレーム14に固定されることによって取り付けられている。本実施形態では、線状光源11は、3個のLED(発光ダイオード)13を直線状に縦列状態に整列させることによって構成されており、アルミニウム基板6を介してヒートシンク7に固定されると共に、ヒートシンク7を介して車体フレーム14に固定されている。
【0038】
より詳しくは、ヒートシンク7は、リフレクタ2の内部に配置される内部起立片7aと、その外部に配置される外部起立片7bとを有して形成されており、内部起立片7aには、線状光源11を構成する3個のLED13が、発光部13aを後方に向けて配置されており、かつ外部起立片7bには、放熱フイン8が設けられている。
【0039】
また、前方照射手段12は、線状光源11の発光中心部位11aが光学系の焦点となるように垂直軸5を介して車体フレーム14に回動可能に取り付けられている。本実施形態では、前方照射手段12は、光学系の焦点を反射面2aの焦点F1とする、線状光源11の光を前方へ反射するリフレクタ2を少なくとも備えて構成されている。
【0040】
より詳しくは、前方照射手段12は、レンズホルダ9内に、凸レンズ3、シェード4、およびリフレクタ2を前方よりこの順に配置して全体構成されている。すなわち、レンズホルダ9は、先端から後端に向かって内径が段階的に大きくなる筒状に形成されており、その先端に凸レンズ3を加締めにより固着すると共に、後端側に略U字形状断面のリフレクタ2を開口部を先端側に向けて取り付け、かつ板状体からなるシェード4をリフレクタ2の開口部の下側部分を覆うようにして取り付けることによって、前方照射手段12を構成している。
【0041】
また、リフレクタ2は、内側に、回転楕円面あるいは回転楕円面を基本にする自由曲面からなる反射面2aを有し、かつ後部の下側部分にヒートシンク7を遊挿する孔部2bを有して形成されており、垂直軸5は、リフレクタ2の反射面2aの第1焦点F1を通り光軸Zに直交する軸線aに沿って、レンズホルダ9の後端側の外側部分の上、下部分にそれぞれ突設される上、下軸部5a、5bで構成されている。
【0042】
しかして、前照灯ユニット10は、上軸部5aを車体フレーム14の軸受15に挿入すると共に、下軸部5bを配光制御手段51の出力軸51aに連結することによって前方照射手段12を車体フレーム14に取り付けると共に、内部起立片7aを孔部2bを経由してリフレクタ2の内側に配置してヒートシンク7を車体フレーム14に固着することによって線状光源11を取り付けることができ、これによって全体構成される。
【0043】
このように構成された前照灯ユニット10は、線状光源11の発光中心部位11aがリフレクタ2の反射面2aの第1焦点F1に合致し、シェード4の上端エッジ部4aがリフレクタ2の反射面2aの第2焦点F2に合致し、かつ凸レンズ3のレンズ焦点FRがリフレクタ2の反射面2aの第2焦点F2に合致する光学系を有している。
【0044】
この前照灯ユニット10によれば、線状光源11の光は、リフレクタ2の反射面2aで反射されて前方への出射光Lに変換されると共に、シェード4を経由して凸レンズ3に達し、凸レンズ3を介して前方へ出射される。
【0045】
すなわち、線状光源11は、前方照射手段12を介して前方に適宜の配光パターン(図4(a)の配光パターンP1参照)の出射光を投影すると共に、車体フレーム14に固定されているにも拘わらず、配光制御手段51による前方照射手段12の回動により前記配光パターンの出射光Lを左又は右方向に可変することができる。
【0046】
このように前照灯ユニット10は、配光制御手段51により回動制御される対象が、線状光源11を切り離した前方照射手段12のみとなり、これにより配光制御手段51への重量負荷をその分軽減することができ、ひいては配光制御手段51の耐久性の向上を図ることができる。
【0047】
また、前方照射手段12は、線状光源11の発光中心部位11aが光学系の焦点となるように垂直軸5を介して車体フレーム14に回動可能に取り付けられるものであるから、前方照射手段12の回動中心、線状光源11、および光学系の焦点(反射面2aの第1焦点F1)が、垂直軸5の軸線a上に位置することになり、これにより前方照射手段12の回動にも拘わらず前方照射手段12と線状光源11との相対的なずれが起きないので、回動前後の配光パターンのパターン形状を不変に保つことができる。これを図3及び図4に基づいて説明する。
【0048】
すなわち、図3は、前方照射手段12の回動の前後のリフレクタ2と線状光源11との位置関係を示すもので、前方照射手段12は、軸線aを回動中心として、2点鎖線で示す正面位置のリフレクタ2から実線で示す回動後の位置のリフレクタ2まで、回動角度θだけ回動した状態を示しており、リフレクタ2と線状光源11との相対的位置関係を回動の前後で不変に保つことができる。
【0049】
また、図4は、前方照射手段12の回動前後における前照灯ユニット10の出射光の配光パターンを示しており、前方照射手段12が正面位置にあるときは、スクリーン上の中央部分を照明する配光パターンP1(図4(a))を奏することができ、他方前方照射手段12が回動後の位置にあるときは、配光パターンP1と同一のパターン形状を有し、回動方向に水平に移動したスクリーン上の偏倚部分を照明する配光パターンP2(図4(b))を奏することができる。
【0050】
このように前照灯ユニット10は、前方照射手段12の回動にも拘わらず前方照射手段12と線状光源11との相対的なずれが起きないので、回動前後の配光パターンP1、P2のパターン形状を不変に保つことができるので、走行状況に対応した優れた追従性能を奏することができる。
【0051】
また、線状光源11は、点光源(LED単体)に比べてより多くの光量を確保することができると共に、発光型半導体で構成されているので、その光の熱エネルギーがフィラメント付き光源に比べて小さく、これにより灯室の過度の温度上昇を避けることができる。
【0052】
このため前照灯ユニット10を組み込んだ車両用前照灯は、前照灯としての充分な光量を確保することができると共に、灯室の温度上昇の抑制に起因して配光制御手段の耐久性の一層の向上を図ることができる。
【0053】
また、灯室の温度上昇の抑制に起因して凸レンズ3を合成樹脂材で形成することができ、この場合は、前方照射手段12の重量を軽減することができ、これにより配光制御手段51の重量負荷を軽減して、配光制御手段51の耐久性の一層の向上を図ることができる。前照灯ユニット10は、例えば、プロジェクタ型ヘッドランプとして好適である。
【0054】
図5は、本発明の第2実施形態としての前照灯ユニット20を示す。この前照灯ユニット20は、線状光源11の光を、リフレクタで反射させることにより、前方への出射光に変換するタイプの車両用前照灯に適用されるもので、前方照射手段12をリフレクタ16のみで構成する点が相違するだけで、他の構成は前照灯ユニット10と同様に構成されている。
【0055】
すなわち、リフレクタ16は、内側に、回転放物面あるいは回転放物面を基本にする自由曲面からなる反射面16aを有し、かつ後部の下側部分にヒートシンク7を遊挿する孔部16bを有して形成されており、その開口縁部に形成された係合片16cを筒状のホルダ部17の係合孔17aに係合させることによってホルダ部17に取り付けられている。
【0056】
また、前方照射手段12の垂直軸5は、リフレクタ16の反射面16aの焦点Fを通り光軸Zに直交する軸線aに沿って、ホルダ部17の外側部分の上、下部分にそれぞれ突設される上、下軸部5a、5bで構成されている。
【0057】
しかして、前照灯ユニット20は、上軸部5aを車体フレーム14の軸受15に挿入すると共に、下軸部5bを配光制御手段51の出力軸51aに連結することによって、前方照射手段12を構成するリフレクタ16を車体フレーム14に取り付けると共に、内部起立片7aを孔部16bを経由してリフレクタ16の内側に配置してヒートシンク7を車体フレーム14に固着することによって線状光源11を取り付けることができ、これによって全体構成される。線状光源11は、その発光中心部位11aがリフレクタ16の反射面16aの焦点Fに合致するように取り付けられる。
【0058】
この前照灯ユニット20によれば、線状光源11の光は、リフレクタ16の反射面16aで反射されて前方への出射光Lに変換されると共に、前方にスポット状の配光パターン(図示せず)の出射光を投影し、かつ配光制御手段51による前方照射手段12(リフレクタ16)の回動により前記配光パターンの出射光Lを左又は右方向に可変することができる。
【0059】
このように前照灯ユニット20によれば、前方照射手段12をリフレクタ16のみで構成したので、前方照射手段12の重量を一層軽減することができ、これにより前述した前照灯ユニット10の作用効果に加えて、配光制御手段51の耐久性の一層の向上を図ることができる。前照灯ユニット20は、例えば、フォグランプや、走行ビームランプや、ヘッドランプに追加される補助ランプとして好適である。
【0060】
図6は、本発明の第3実施形態としての前照灯ユニット30を示す。この前照灯ユニット30は、線状光源11の光を直接凸レンズ3を介して前方への出射する直射型の車両用前照灯に適用されるもので、前方照射手段12を凸レンズ3のみで構成した点および線状光源11の発光部を前方に向けた点が相違するだけで、他の構成は前照灯ユニット10と同様に構成されている。
【0061】
すなわち、前照灯ユニット30では、線状光源11は、その発光部13aを前方に向けて配置されており、かつ前方照射手段12は、光学系の焦点をレンズ焦点FRとする線状光源11の光を前方へ照射する凸レンズ3で構成されている。
【0062】
より詳しくは、凸レンズ3は、筒状のレンズホルダ9の先端に取り付けられており、前方照射手段12の垂直軸5は、凸レンズ3のレンズ焦点FRを通り光軸Zに直交する軸線aに沿って、レンズホルダ9の外側部分の上、下部分にそれぞれ突設される上、下軸部5a、5bで構成されている。
【0063】
また、線状光源11は、3個のLED(発光ダイオード)13を、直線状の整列状態でアルミニウム基板6を介してヒートシンク7に固定することによって構成されている。ヒートシンク7は、略T字状断面の本体部7cを有して形成されており、その本体部7cの一辺の先端に線状光源11が固着されると共に、その他辺に放熱フイン8が固着されている。
【0064】
しかして、前方照射手段12を構成する凸レンズ3は、上軸部5aを車体フレーム14の軸受15に挿入すると共に、下軸部5bを配光制御手段51の出力軸51aに連結することによって車体フレーム14に回動制御可能に取り付けられる。
【0065】
また、線状光源11は、発光部13aを前方へ向けて垂直軸5の軸線aに沿って縦列になり、かつその発光中心部位11aが凸レンズ3のレンズ焦点FRに一致するように、ヒートシンク7を車体フレーム14に固着することによって車体フレーム14に固定される。
【0066】
そして前照灯ユニット30は、車体フレーム14に回動制御可能に取り付けられる凸レンズ3と、車体フレーム14に固定される線状光源11とにより構成されている。
【0067】
このように構成された前照灯ユニット30は、線状光源11と、線状光源11の発光中心部位11aに合致するレンズ焦点FRを有する凸レンズ3とからなる光学系を有している。
【0068】
この前照灯ユニット30によれば、線状光源11の光は、直接凸レンズ3に達し、凸レンズ3を介して前方にスポット状の配光パターン(図示せず)の出射光Lを投影することができると共に、配光制御手段51による凸レンズ3の回動により前記配光パターンの出射光Lを左又は右方向に可変することができる。
【0069】
このように前照灯ユニット30は、前方照射手段12を凸レンズ3のみで構成したので、前方照射手段12の軽量化に起因して配光制御手段51への重量負荷を軽減することができ、ひいては配光制御手段51の耐久性の向上を図ることができる。凸レンズ3は、合成樹脂材で成形することができ、その場合は、前照灯ユニット10と同様に配光制御手段51の耐久性の一層の向上を図ることができる。その他前照灯ユニット30は、前述した前照灯ユニット10と同様な作用効果を奏することができることは言うまでもない。
【0070】
また、前照灯ユニット30は、例えば、ホグランプや、走行ビームランプや、ヘッドランプに追加される補助ランプとして好適である。
【0071】
図7は、本発明の第4実施形態としての前照灯ユニット40を示す。この前照灯ユニット40は、線状光源が相違するだけで、他の構成は前述した前照灯ユニット10と同様に構成されている。
【0072】
すなわち、前照灯ユニット40の前方照射手段12は、前照灯ユニット10と同様に、凸レンズ3、シェード4、および光学系の焦点を反射面2aの焦点F1とするリフレクタ2を、前方よりこの順に配置して全体構成されており、その線状光源は、前照灯ユニット30に適用されている本体部7cを有するヒートシンク7に固定された線状光源11が用いられており、かつ前照灯ユニット30と同様に配置固定されている。
【0073】
このため前照灯ユニット40では、前方照射手段12は、リフレクタ2に回動中心(垂直軸5)を有して構成されており、線状光源11は、その発光部13aを前方に向けて、リフレクタ2の回動中心となる垂直軸5の軸線aに沿って縦列に配置されている。
【0074】
このように構成された前照灯ユニット40は、線状光源11の光を、直射光およびリフレクタ2による反射光として、シェード4を介して凸レンズ3に到達し、かつ凸レンズ3を介して前方へ適宜の配光パターンの出射光Lを出射すると共に、配光制御手段51による前方照射手段12全体の回動により出射光Lを左又は右方向に可変することができる。これにより前照灯ユニット40は、前述した前照灯ユニット10と略同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
また、以上述べた実施形態では、光学系の光源として、複数個のLED(発光ダイオード)13を線状に整列してなる線状光源11を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、線状に形成された面発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)からなる線状光源をも適用することができ、この場合も線状光源11と同様の作用効果を奏することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用前照灯ユニットで、図2のI−I線に沿う縦断側面図である。
【図2】図1の車両用前照灯ユニットの正面図である。
【図3】図1の車両用前照灯ユニットの作動を説明する概略平面図である。
【図4】図1の車両用前照灯ユニットの出射光の配光パターンを示すグラフで、(a)は前方照射手段の回動前(正面位置)、(b)は前方照射手段の回動後をそれぞれ示す。
【図5】本発明の第2実施形態としての車両用前照灯ユニットの縦断側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態としての車両用前照灯ユニットの縦断側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態としての車両用前照灯ユニットの縦断側面図である。
【図8】従来のプロジェクタ型車両用前照灯の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0077】
2 リフレクタ
2a 反射面(リフレクタの)
3 凸レンズ
4 シェード
5 垂直軸
10、20、30、40 前照灯ユニット(車両用前照灯ユニット)
11 線状光源
11a 発光中心部位(線状光源の)
12 前方照射手段
13 LED(発光型半導体)
14 車体フレーム
13a 発光部(LEDの)
51 配光制御手段
a 軸線(垂直軸の)
F1 第1焦点(反射面の焦点)
FR レンズ焦点
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配光制御手段により垂直軸回りに回動制御されることによって走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる車両用前照灯ユニットであって、
前記垂直軸の軸線に沿って配置されると共に車体フレームに固定されて光学系の光源を構成する発光型半導体からなる線状光源と、
前記線状光源の発光中心部位が前記光学系の焦点となるように前記垂直軸を介して前記車体フレームに回動可能に取り付けられると共に、前記配光制御手段により回動制御される前記線状光源の光を前方へ照射する前方照射手段とを備えて構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記線状光源は、その発光部を後方に向けて配置されており、かつ
前記前方照射手段は、前記光学系の焦点を反射面の焦点とする前記線状光源の光を前方へ反射するリフレクタを少なくとも備えて構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項3】
請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記線状光源は、その発光部を前方に向けて配置されており、かつ
前記前方照射手段は、前記光学系の焦点をレンズ焦点とする前記線状光源の光を前方へ照射する凸レンズで構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項4】
請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記線状光源は、その発光部を前方に向けて配置されており、かつ
前記前方照射手段は、凸レンズ、シェード、および前記光学系の焦点を反射面の焦点とするリフレクタを、前方よりこの順に配置して全体構成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−179246(P2006−179246A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369995(P2004−369995)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】