説明

車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置

【課題】半ドアでの車両の停止・発進のたびにステップの展開・格納が繰り返し行われることを防止し得、アクチュエータの作動音の乗員に対する不快感の付与、並びにステップの作動回数増加に伴う該ステップの駆動機構の耐用年数の減少を回避し得る車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】車速Vが設定値以上(例えば、V≧8[km/h])ではない即ち車速Vが設定値未満(例えば、V<8[km/h])のときドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化を検出し、該ドア状態変化がない場合にはステップを展開させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、図4に示される如く、SUV(Sport Utility Vehicle)、ピックアップトラック等の車高の高い車両1では、乗員の乗降を補助するためにステップ2が設けられている。
【0003】
前記ステップ2は、車両1の左右両側における低い位置に搭載されるため、悪路走破性が悪化したり、外観意匠が損なわれたりするといった問題を有していた。
【0004】
こうした問題を解消するために、走行時には、前記ステップ2を展開した位置から格納できるようにした、いわゆる格納式乗降ステップが開発されている。
【0005】
従来の車両用格納式乗降ステップの制御装置は、例えば、図5及び図6に示される如く、車速Vを検出する車速センサ3と、4ドアの車両1の場合に前後左右それぞれのドアの開閉を検出するカーテシスイッチやドアラッチロックスイッチ等のドアスイッチ4と、前記ステップ2を展開・格納する左右のモータ等のアクチュエータ5と、該アクチュエータ5の駆動量に基づいてステップ2の展開量を検出する位置センサ6と、前記車速センサ3で検出される車速Vと前記ドアスイッチ4で検出されるドアの開閉状態と前記位置センサ6で検出されるステップ2の展開量とが入力され且つこれらの情報に基づいて前記アクチュエータ5へステップ2を展開又は格納させる駆動信号を出力する制御器7とを備えてなる構成を有している。
【0006】
そして、前記車両用格納式乗降ステップの制御装置においては、図7に示される如く、前記車速センサ3で検出される車速Vが設定値以上(例えば、V≧8[km/h])ではない即ち車速Vが設定値未満(例えば、V<8[km/h])のとき前記ドアスイッチ4によりドア開と検出された場合、前記制御器7からアクチュエータ5へステップ2を展開させる駆動信号が出力され、該ステップ2が展開する一方、前記車速センサ3で検出される車速Vが設定値以上のとき、前記制御器7からアクチュエータ5へステップ2を格納させる駆動信号が出力され、該ステップ2が格納され、以下、同様の作動が繰り返し行われる。
【0007】
尚、前述の如き車両用格納式乗降ステップの制御装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−24448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の如き従来の車両用格納式乗降ステップの制御装置においては、車両1が停止してドアが開かれ、ステップ2が展開されている状態から、ドアを閉じた際、該ドアが完全に閉まっていない、いわゆる半ドアの状態のまま気付かずに走行して車速Vが設定値以上になると、図7のフローチャートからも明らかなように、ステップ2は格納されるが、車両1が交差点で信号等により一時停止して車速Vが設定値未満となった場合、半ドアであるがゆえにドア開と検出され、制御器7からアクチュエータ5へステップ2を展開させる駆動信号が出力され、該ステップ2が展開してしまうという不具合を有していた。
【0010】
このように半ドアである場合に車両1が停止・発進するたびにステップ2が展開・格納を繰り返してしまうことは、アクチュエータ5の作動音が乗員に不快感を与えたり、ステップ2の作動回数が増加して該ステップ2の駆動機構の耐用年数が減少したりすることにつながり、改善が望まれていた。又、車両1に二輪車が併走していた場合や、歩行者が車両1近傍にいた場合には、ステップ2の展開により歩行者を驚かせてしまうこともあった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、半ドアでの車両の停止・発進のたびにステップの展開・格納が繰り返し行われることを防止し得、アクチュエータの作動音の乗員に対する不快感の付与、並びにステップの作動回数増加に伴う該ステップの駆動機構の耐用年数の減少を回避し得る車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、車速が設定値未満のときドア開で展開され且つドア閉で格納され、車速が設定値以上のとき格納される車両用格納式乗降ステップの制御方法において、
車速が設定値未満のときドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化を検出し、該ドア状態変化がない場合にはステップを展開させないことを特徴とする車両用格納式乗降ステップの制御方法にかかるものである。
【0013】
又、本発明は、車速を検出する車速センサと、
ドアの開閉を検出するドアスイッチと、
ステップを展開・格納するアクチュエータと、
前記車速センサで検出される車速が設定値未満のとき前記ドアスイッチによりドア開と検出された場合、前記アクチュエータへステップを展開させる駆動信号を出力し、前記車速センサで検出される車速が設定値以上のとき前記アクチュエータへステップを格納させる駆動信号を出力する制御器と
を備えた車両用格納式乗降ステップの制御装置において、
前記車速センサで検出される車速が設定値未満のときドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化を前記ドアスイッチにて検出し、該ドア状態変化がない場合には前記制御器からアクチュエータへステップを展開させる駆動信号を出力しないよう構成したことを特徴とする車両用格納式乗降ステップの制御装置にかかるものである。
【0014】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0015】
車両が停止してドアが開かれ、ステップが展開されている状態から、ドアを閉じた際、該ドアが完全に閉まっていない、いわゆる半ドアの状態のまま気付かずに走行して車速が設定値以上になると、ステップは格納されるが、車両が交差点で信号等により一時停止して車速が設定値未満となった場合、半ドアであったとしても、ドア状態変化がない限りは制御器からアクチュエータへステップを展開させる駆動信号が出力されないため、該ステップが展開してしまうことがなくなる。
【0016】
このように半ドアである場合に車両が停止・発進するたびにステップが展開・格納を繰り返してしまうことが防止されるため、アクチュエータの作動音が乗員に不快感を与えたり、ステップの作動回数が増加して該ステップの駆動機構の耐用年数が減少したりすることも避けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置によれば、半ドアでの車両の停止・発進のたびにステップの展開・格納が繰り返し行われることを防止し得、アクチュエータの作動音の乗員に対する不快感の付与、並びにステップの作動回数増加に伴う該ステップの駆動機構の耐用年数の減少を回避し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の実施例を示す電気回路図である。
【図3】本発明の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の実施例を示すフローチャートである。
【図4】車両に設けられる乗降ステップの一例を示す斜視図である。
【図5】従来の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の一例を示すブロック図である。
【図6】従来の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の一例を示す電気回路図である。
【図7】従来の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図3は本発明の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置の実施例であって、図中、図4〜図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4〜図7に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1〜図3に示す如く、車速センサ3で検出される車速Vが設定値以上(例えば、V≧8[km/h])ではない即ち車速Vが設定値未満(例えば、V<8[km/h])のときドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化をドアスイッチ4にて検出し、該ドア状態変化がない場合には制御器7からアクチュエータ5へステップ2を展開させる駆動信号を出力しないよう構成した点にある。
【0021】
本実施例の場合、ステップ2の駆動機構に飛び石等の異物が噛み込んだり、泥水が付着したり、或いは凍結したりして、該ステップ2が展開されるべきときに格納されたままとなったり、格納されるべきときに展開されたまま保持されたりする誤作動が生じた際に、該誤作動を位置センサ6の検出値に基づき制御器7において判断し、図示していないインストルメントパネルに設けたインジケータランプ8を点灯させるようにしてある。
【0022】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0023】
車両1が停止してドアが開かれ、ステップ2が展開されている状態から、ドアを閉じた際、該ドアが完全に閉まっていない、いわゆる半ドアの状態のまま気付かずに走行して車速Vが設定値以上になると、図1のフローチャートからも明らかなように、ステップ2は格納されるが、車両1が交差点で信号等により一時停止して車速Vが設定値未満となった場合、半ドアであったとしても、ドア状態変化がない限りは制御器7からアクチュエータ5へステップ2を展開させる駆動信号が出力されないため、該ステップ2が展開してしまうことがなくなる。
【0024】
このように半ドアである場合に車両1が停止・発進するたびにステップ2が展開・格納を繰り返してしまうことが防止されるため、アクチュエータ5の作動音が乗員に不快感を与えたり、ステップ2の作動回数が増加して該ステップ2の駆動機構の耐用年数が減少したりすることも避けられる。
【0025】
尚、前記ドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化がある場合には、従来と同様、前記ドアスイッチ4によりドア開と検出されると、前記制御器7からアクチュエータ5へステップ2を展開させる駆動信号が出力され、該ステップ2が展開する一方、前記車速センサ3で検出される車速Vが設定値以上のとき、前記制御器7からアクチュエータ5へステップ2を格納させる駆動信号が出力され、該ステップ2が格納され、以下、同様の作動が繰り返し行われる。
【0026】
因みに、前述の如く半ドアの状態のまま気付かずに走行して車速Vが設定値以上になり、ステップ2が格納された後、車両1が目的地等に到着して車速Vが設定値未満となった場合、半ドアの状態からドアを開けると、ドア状態変化がないため、制御器7からアクチュエータ5へステップ2を展開させる駆動信号が出力されず、該ステップ2は展開しないことになるが、このようなケースはごく稀であり、一旦ドアを閉じれば、ドア状態変化ありとなり、ドアが開いているか又は閉じているかの判断に移行し、元の制御に戻るため、前記ステップ2が展開しなくなるのは一回だけであり、ほとんど問題とはならない。
【0027】
一方、本実施例の場合、ステップ2の駆動機構に飛び石等の異物が噛み込んだり、泥水が付着したり、或いは凍結したりして、該ステップ2が展開されるべきときに格納されたままとなったり、格納されるべきときに展開されたまま保持されたりする誤作動が生じた際には、該誤作動が位置センサ6の検出値に基づき制御器7において判断され、図示していないインストルメントパネルに設けたインジケータランプ8が点灯するため、運転者はステップ2に何らかの不具合が生じていることを把握可能となる。
【0028】
こうして、半ドアでの車両の停止・発進のたびにステップ2の展開・格納が繰り返し行われることを防止し得、アクチュエータ5の作動音の乗員に対する不快感の付与、並びにステップ2の作動回数増加に伴う該ステップ2の駆動機構の耐用年数の減少を回避し得る。又、インジケータランプ8の点灯によりステップ2の誤作動を運転者に認識させることもできる。
【0029】
尚、本発明の車両用格納式乗降ステップの制御方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、車両の左右両側に配設されるステップに限らず、リヤドアの下方に配設されるステップにも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両
2 ステップ
3 車速センサ
4 ドアスイッチ
5 アクチュエータ
7 制御器
V 車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速が設定値未満のときドア開で展開され且つドア閉で格納され、車速が設定値以上のとき格納される車両用格納式乗降ステップの制御方法において、
車速が設定値未満のときドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化を検出し、該ドア状態変化がない場合にはステップを展開させないことを特徴とする車両用格納式乗降ステップの制御方法。
【請求項2】
車速を検出する車速センサと、
ドアの開閉を検出するドアスイッチと、
ステップを展開・格納するアクチュエータと、
前記車速センサで検出される車速が設定値未満のとき前記ドアスイッチによりドア開と検出された場合、前記アクチュエータへステップを展開させる駆動信号を出力し、前記車速センサで検出される車速が設定値以上のとき前記アクチュエータへステップを格納させる駆動信号を出力する制御器と
を備えた車両用格納式乗降ステップの制御装置において、
前記車速センサで検出される車速が設定値未満のときドア開からドア閉或いはドア閉からドア開となるドア状態変化を前記ドアスイッチにて検出し、該ドア状態変化がない場合には前記制御器からアクチュエータへステップを展開させる駆動信号を出力しないよう構成したことを特徴とする車両用格納式乗降ステップの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28220(P2013−28220A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164295(P2011−164295)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】