説明

車両用温調装置

【課題】車室内空調装置の冷却性能を低下させることなく、車室内の内装材を十分に冷却できる車両用温調装置を得る。
【解決手段】車両用温調装置は、インストルメントパネル3裏面に貼り付けられる受熱部5と、車室2のシート12の下部に設けられる放熱部6と、これらの受熱部5と放熱部6を循環する媒体の循環経路7と、媒体を蓄えるリザーバータンク8と、このリザーバータンク8に蓄えた媒体を受熱部5へ送り出すポンプ9と、制御部10とから構成される。そして、受熱部5内の媒体と放熱部6内の媒体との温度差が所定値以上であれば循環経路7を介し媒体を循環して、受熱部5で高温となった媒体を戻して放熱部6で放熱し、リザーバータンク8内から低温の媒体を受熱部5へ送り出すことにより、インストルメントパネル3の冷却を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射によって温度が上昇する車室内の内装材を冷却可能な車両用温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炎天下で車両を駐車した場合には、車室前部の前面窓を介して車室内に日射が差し込んで、車室内の内装材、例えばインストルメントパネルが60〜80°Cもの高温になることがある。
【0003】
そこで従来、一端が車室内空調装置のエバポレータに接続されたヒートパイプを、車室内のインストルメントパネルの近傍まで敷設し、エバポレータからヒートパイプ内に冷媒を送ることにより、インストルメントパネルを冷却するようにしたものが提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−138366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、車室内空調装置のエバポレータからヒートパイプへ冷媒を送ってインストルメントパネルの冷却を行なうため、空調装置の冷却性能が低下する上、ヒートパイプ内を媒体が通過する際の熱交換量が少なく、インストルメントパネルを十分に冷却できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、車室内空調装置の冷却性能を低下させることなく、日射により加熱される車室内の内装材を冷却することが可能な車両用温調装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1にかかる発明にあっては、日射によって温度が上昇する第1の領域に設けられる受熱部(5)と、上記第1の領域より温度が低い第2の領域に設けられる放熱部(6)と、これらの受熱部(5)および放熱部(6)を循環する媒体の循環経路(7)と、上記媒体を循環させるポンプ(9)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2にかかる発明にあっては、上記放熱部(6)を車両(1)のシート(12)下に設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3にかかる発明にあっては、上記放熱部(6)を車両(1)のインストルパネル(3)内に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる発明によれば、日射によって温度が上昇する第1の領域に設けられる受熱部で媒体が高温となるので、この高温となった媒体を循環経路を介して流動させて、第1の領域より温度が低い第2の領域に設けられる放熱部で放熱するとともに、低温の媒体をポンプによって受熱部へ送り出すことで、日射により加熱される車室内の内装材の冷却を行なうことができる。これにより、受熱部で比較的大きな熱交換量が得られるので、受熱部で熱交換を行なうことにより車室内の内装材を十分に冷却することができる。また、車室内空調装置とは別個の循環経路および放熱部により媒体を循環させて放熱を行なうので、空調装置の冷却性能を低下させることなく、車室内の内装材を冷却できる。
【0010】
請求項2にかかる発明によれば、車両のシートによって日射が遮られることでシート下の部分では日射を受けないため、車両のシート下に設けた放熱部の温度上昇を抑えることができ、放熱部でより効果的に放熱することができる。
【0011】
本発明の請求項3にかかる発明によれば、インストルメントパネル内は日射が差し込まないため、インストルメントパネル内に設けた放熱部の温度上昇を抑えることができ、放熱部でより効果的に放熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる車両用温調装置のブロック図、図2は、図1の車両用温調装置によって車室内のインストルメントパネルを冷却する際の処理手順を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、車両1に形成される車室2の前部には、インストルメントパネル3が備えられ、このインストルメントパネル3内に、図示しない車両用空調装置が収納されている。
【0014】
そして、本実施形態の車両用温調装置4は、日射によって温度が上昇する第1の領域に設けられる受熱部5と、前記の第1の領域より温度が低い第2の領域に設けられる放熱部6と、これらの受熱部5および放熱部6を循環する媒体、例えば冷却水の循環経路7と、媒体を蓄えるリザーバータンク8と、このリザーバータンク8内に蓄えた媒体を受熱部5へ送り出すポンプ9と、種々の制御を行なう制御部10とから構成されている。
【0015】
受熱部5は、例えば樹脂シートが袋状に形成されたLLCパックから構成されており、この受熱部5には、ポンプ9の停止時に媒体が溜まり、ポンプ9の作動時に媒体が流出入するようになっている。また、受熱部5は、日射による温度上昇が大きい内装材、例えばインストルメントパネル3裏面に貼り付けられている。
【0016】
放熱部6は、フィンタイプの放熱器からなるとともに電動ファン11を装備しており、車室2のシート12の下部に、リザーバータンク8とともに配設されている。ちなみに、インストルメントパネル3表面の温度が日射によって60〜80°Cまで上昇する場合であっても、車室2のシート12で日射が遮られてシート12下では日射を受けないため温度上昇が比較的小さくて済み、例えば30°Cまでの上昇で収まる。
【0017】
制御部10は、受熱部5内の媒体の温度を検出する温度センサ13、およびリザーバータンク8内の媒体の温度を検出する他の温度センサ14からの各温度信号を受信して、ポンプ9および電動ファン11の制御を行なうとともに、タイマ15による計時も行なうようになっている。
【0018】
そして、本実施形態にあっては、図2に示す処理手順にしたがって、車室2内のインストルメントパネル3の冷却を行なうようになっている。すなわち、車両1のドアを電子キー(図示せず)でロックすると一連の動作を開始し、まずステップS1として受熱部5内の媒体の温度を温度センサ13で検出するとともに、リザーバータンク8内の媒体の温度を温度センサ14で検出する。そして、制御部10によって、受熱部5内の媒体の温度とリザーバータンク8内の媒体の温度とを比較して、その温度差が所定値、例えば20°Cと同じか又はより大きい場合、ステップS2へ進む。ステップS2として制御部10より制御指令を出力し、ポンプ9および電動ファン11を稼動させるとともに、タイマ15による計時を開始する。次いで、受熱部5で高温となった媒体が循環経路7を介して戻されて、放熱部6で電動ファン11からの冷却風により放熱された後、この放熱された低温の媒体がリザーバータンク8に戻り、同時に、リザーバータンク8内から低温の媒体がポンプ9により受熱部5へ送り出される。次に、ステップS3として上記の受熱部5内の媒体の温度とリザーバータンク8内の媒体の温度との温度差が5°C以下となったか否かを判定して、上記温度差が5°C以下であればステップS4へ進んでポンプ9、電動ファン11、およびタイマ15を停止させて、上記のステップS1へ戻る。
【0019】
一方、ステップS3にて上記温度差が5°Cより大きい場合、ステップS4としてタイマ15による計時が所定時間、例えば10分経過したか否かを判定し、タイマ15による計時が上記所定時間経過したとき、ステップS4に進んでポンプ9、電動ファン11およびタイマ15を停止させて、上記ステップS1へ戻る。また、上記ステップS4にてタイマ15による計時が上記の所定時間経過しないときには、ステップS3へ戻るようになっている。
【0020】
このように構成した実施形態では、LLCパックからなる受熱部5を用いて比較的大きな熱交換量を得ることができるので、受熱部5で熱交換を行なうことにより車室2内のインストルメントパネル3を十分に冷却できる。しかも、フィンタイプの放熱器からなる放熱部6に電動ファン11で冷却風を送ることによって放熱容量を大きくすることができるともに、日射による温度上昇が比較的少ない車室2のシート12の下部に、放熱部6およびリザーバータンク8を配設したので、放熱部6およびリザーバータンク8での放熱を促進することができ、この点からも車室2内のインストルメントパネル3をさらに効果的に冷却できる。さらに、車室2内の空調装置とは別個の循環経路7および放熱部6を用いて媒体を循環させて放熱を行なうので、車室2内の空調装置の冷却性能を低下させることなく、インストルメントパネル3の冷却を行なうことができる。
【0021】
一例として、本出願人により、外気温40°C、湿度50%、日射1045W/mhの条件下にて60分車両1を駐車し、当該車両用温調装置4で車室2内のインストルメントパネル3の冷却実験を行なった結果、インストルメントパネル3の表面温度(3点平均値)は43°Cであるのに対し、上記冷却を行なわない場合にはインストルメントパネル3の表面温度(3点平均値)は98°Cであった。したがって、本実施形態による冷却によってインストルメントパネル3の表面温度が55°C低下し、インストルメントパネル3からの輻射温度が15°C低下するため、インストルメントパネル3を十分に冷却できること、ならびにインストルメントパネル3からの輻射熱により乗員が感じる熱感を抑制できることが確認できた。ちなみに、従来の文献やテスト結果により、インストルメントパネル3の表面温度が10°C低下すると、人体への輻射は約3°C低下することが知られている。
【0022】
さらに、上述したようにインストルメントパネル3の冷却を行なった後、車両1を40kmで10分間走行したとき、車室2内の温度(8点平均値)は33.2°Cであり、車室2内へのベント吹出し温度(4点平均値)は11.5°Cであり、空調装置エバポレータ前の吸込み温度は39.6°Cであった。一方、上記のインストルメントパネル3の冷却を行なうことなく、車両1を40kmで10分間走行した場合、車室2内の温度(8点平均値)は36°Cであり、車室2内へのベント吹出し温度(4点平均値)は14.5°Cであり、空調装置エバポレータ前の吸込み温度は43.3°Cであった。したがって、上記インストルメントパネル3の冷却により車室2内の温度は2.8°C低下し、車室2内へのベント吹出し温度は3°C低下し、空調装置エバポレータ前の吸込み温度は3.7°C低下したことから、空調装置の内気吸込み温度の低下により、車室2内のクールダウン(冷却)性能が向上することを確認できた。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、受熱部5を、日射によって温度が上昇するインストルメントパネル3の裏面に設けた場合について例示したが、日射による温度上昇が大きい他の内装材、例えば車室2の天井16に受熱部5を設けてもよい。また、放熱部6を、比較的温度が低い車室2のシート12の下部に設けた場合を例示したが、車室2のシート12の下部の代わりに、比較的温度が低い他の箇所、例えばインストルメントパネル3内に放熱部6を設けてもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、図2のステップS1にて受熱部5内の媒体の温度とリザーバータンク8内の媒体の温度とを比較し、その温度差が所定値と同じか又はより大きい場合にポンプ9および電動ファン11を稼動させるようにしたが、受熱部5内の媒体の温度自体が所定値と同じか又はより大きくなった場合にポンプ9および電動ファン11を稼動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用温調装置を示すブロック図である。
【図2】図1の車両用温調装置によって車室内のインストルメントパネルを冷却する際の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
2 車室
3 インストルメントパネル(内装材)
4 車両用温調装置
5 受熱部
6 放熱部
7 循環経路
8 リザーバータンク
9 ポンプ
10 制御部
11 電動ファン
12 シート
13,14 温度センサ
15 タイマ
16 天井(内装材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射によって温度が上昇する第1の領域に設けられる受熱部(5)と、前記第1の領域より温度が低い第2の領域に設けられる放熱部(6)と、これらの受熱部(5)および放熱部(6)を循環する媒体の循環経路(7)と、前記媒体を循環させるポンプ(9)とを備えたことを特徴とする車両用温調装置。
【請求項2】
前記放熱部(6)を車両(1)のシート(12)下に設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用温調装置。
【請求項3】
前記放熱部(6)を車両(1)のインストルパネル(3)内に設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用温調装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−12980(P2008−12980A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184299(P2006−184299)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】