説明

車両用灯具点灯回路

【課題】電力投入後に一時的に過電流が負荷3に流れて負荷3が破損することを抑制する。
【解決手段】車両用灯具点灯回路は、入力電力を所定の出力電力へ変換して負荷3へ供給するスイッチングレギュレータ1と、負荷3に流れる電流IOUTを検出するための電流検出用部品4と、電流検出用部品4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧が印加されるフィードバック端子FBを備え、フィードバック端子FBに印加される電圧と所定の基準電圧とを比較して、出力電力の大きさをフィードバック制御するスイッチング制御部2と、スイッチングレギュレータ1及びスイッチング制御部2に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部2が起動するまでの間に限り、電流検出用部品4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧よりも大きい電圧Vpをフィードバック端子FBに対して印加する過電流保護部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に供給される電流をフィードバック制御する機能を備える車両用灯具点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各車両用灯具が有する光源のいずれかに異常が生じた場合に、これを光源に印加される電圧の変化を元に検出する点灯制御回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、電源スイッチが投入された後、一定期間だけスイッチングレギュレータから半導体光源に定格電流よりも小さい電流を供給する。そして、当該期間において半導体光源から発生するフォワード電圧と異常判定値とを比較することにより、半導体光源のフォワード電圧の変化に伴うリーク故障の有無を判定している。また、定格電流に比べて小さい電流を供給すると、正常な半導体光源のフォワード電圧の低下量に比べて、異常のある半導体光源のフォワード電圧の低下量が大きくなるので、判定精度が向上するとされている。
【0003】
また、図5に示す車両用灯具点灯回路が従来から知られている。スイッチSWが閉じるとバッテリーBATからスイッチングレギュレータ51及びスイッチング制御部52への電力供給が開始される。すると、スイッチングレギュレータ51は、入力される電力を所定の出力電力へ変換して車両用灯具を含む負荷53へ供給する。一方、電流検出用抵抗体54は負荷53に直列に接続され、スイッチング制御部52は、電流検出用抵抗体54に接続されたフィードバック端子fbに印加される電圧から負荷53に流れる電流IOUTを求め、スイッチングレギュレータ51から負荷53へ供給される出力電力の大きさをフィードバック制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−200610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング制御部52はマイコンなどの演算処理機能を有する部品で構成されるため、電力供給が開始されてから安定した動作が可能になるまで、つまりスイッチング制御部52の起動が完了するまでに所定の時間が必要となる。ところが、スイッチング制御部52と同時にスイッチングレギュレータ51にも電力供給が開始され、スイッチングレギュレータ51は、スイッチング制御部52の起動が完了する前から電力供給を開始してしまう。
【0006】
したがって、スイッチング制御部52が正常なフィードバック制御を行えない状態において、負荷53へ出力電力が供給されてしまい、図5(b)に示すように、負荷53の最大定格電流を上回る量の過電流が一時的に流れて、この過電流により負荷53が破損する場合がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することを抑制する車両用灯具点灯回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、入力される電力を所定の出力電力へ変換して負荷へ供給するスイッチングレギュレータと、負荷に流れる電流の大きさを検出するための電流検出用部品と、電流検出用部品により検出された電流の大きさを示す電圧が印加されるフィードバック端子を備え、フィードバック端子に印加される電圧の大きさと所定の基準電圧とを比較して、スイッチングレギュレータから負荷へ供給される出力電力の大きさをフィードバック制御するスイッチング制御部と、スイッチングレギュレータ及びスイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部が起動するまでの間に限り、電流検出用部品により検出された電流の大きさを示す電圧よりも大きい電圧をフィードバック端子に対して印加する過電流保護部とを備える車両用灯具点灯回路であることを要旨とする。
【0009】
スイッチングレギュレータ及びスイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部が起動するまでの間に限り、電流検出用部品により検出された電流の大きさを示す電圧よりも大きい電圧をフィードバック端子に対して印加することにより、スイッチング制御部は、電流検出用部品により検出された電流よりも大きい電流が負荷に流れていると認識して、スイッチングレギュレータから負荷へ供給される出力電力を小さくする。これにより、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することを抑制することができる。
【0010】
本発明の特徴において、スイッチングレギュレータ及びスイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部が起動するまでの間に限り、過電流保護部は、所定の基準電圧よりも大きい電圧をフィードバック端子に対して印加し、スイッチング制御部は、スイッチングレギュレータから負荷への出力電力の供給を停止してもよい。これにより、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することをより強く抑制することができる。
【0011】
本発明の特徴において、スイッチングレギュレータは、第1のスイッチング素子のオン/オフの時間の割合(デューティー比)を変化させることにより出力電力の大きさを調整し、スイッチング制御部は、スイッチングレギュレータ及びスイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部が起動するまでの間に限り、第1のスイッチング素子のオンの時間の割合を零にして、スイッチングレギュレータから負荷への出力電力の供給を停止してもよい。第1のスイッチング素子のデューティー比を変化させることにより出力電力の大きさを調整可能なスイッチングレギュレータに対しては、第1のスイッチング素子のオンの時間の割合を零にして、スイッチングレギュレータから負荷への出力電力の供給を一時的に停止すれば、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することをより強く抑制することができる。
【0012】
本発明の特徴において、過電流保護部は、直列接続された抵抗体及びキャパシタと、抵抗体とキャパシタの間の電位が制御端子に印加され、第1の電極端子に所定の基準電圧よりも大きい電圧が印加され、第2の電極端子がフィードバック端子に接続された第2のスイッチング素子とを備え、スイッチングレギュレータ及びスイッチング制御部に対する電力の供給が開始されると同時に、直列接続された抵抗体及びキャパシタの両端子間に電圧の印加が開始され、当該電圧の印加が開始されてからスイッチング制御部が起動するまでの間に限り、第2のスイッチング素子をオン状態に制御してもよい。
【0013】
抵抗体とキャパシタの間の電位は、当該電圧の印加が開始されてから時間の経過に応じて変化する。よって、抵抗体とキャパシタの間の電位を第2のスイッチング素子の制御端子に印加することで、当該電圧の印加が開始されてから所定期間、第2のスイッチング素子をオン状態に制御することができる。よって、抵抗体及びキャパシタの大きさを調整することにより、スイッチングレギュレータ及びスイッチング制御部に対する電力の供給が開始されてからスイッチング制御部が起動するまでの間に限り、第2のスイッチング素子をオン状態に制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の車両用灯具点灯回路によれば、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係わる車両用灯具点灯回路の構成を示す回路図である。
【図2】スイッチSWの開閉状態、過電流保護部5が出力する電圧Vp、及び負荷3に流れる電流IOUTの大きさの時間変化を示すグラフである。
【図3】図1に示した車両用灯具点灯回路の具体的な回路構成の実施例を示す回路図である。
【図4】スイッチSWの開閉状態、電源端子Vccの電圧、抵抗体Raの両端の電圧V、第2のスイッチング素子FET2のオン/オフ状態、フィードバック端子FBに印加される電圧VFB、パスル信号OUTのデューティー比、及び負荷3に流れる電流IOUTの大きさの時間変化を示すグラフである。
【図5】図5(a)は従来の車両用灯具点灯回路の構成例を示す回路図であり、図5(b)は電源投入後の負荷53に流れる電流IOUTの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0017】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係わる車両用灯具点灯回路の構成を説明する。本発明の実施の形態に係わる車両用灯具点灯回路は、車両用灯具点灯回路全体に供給される電力を蓄電するバッテリーBATと、バッテリーBATに直列に接続されたスイッチSWと、バッテリーBATが蓄える電力が入力され、入力される電力を所定の出力電力へ変換するスイッチングレギュレータ1と、スイッチングレギュレータ1により変換された出力電力が供給される負荷3と、負荷3に流れる電流の大きさを検出するための電流検出用部品としての電流検出用抵抗体4と、負荷3に流れる電流の大きさに基づいて、スイッチングレギュレータ1から負荷3へ供給される出力電力の大きさをフィードバック制御するスイッチング制御部2と、負荷3に過電流が流れることを抑制するための過電流保護部5とを備える。
【0018】
スイッチングレギュレータ1、スイッチング制御部2及び過電流保護部5は、バッテリーBATに対してそれぞれ直列に接続されている。よって、スイッチSWが閉じると、スイッチングレギュレータ1、スイッチング制御部2及び過電流保護部5にバッテリーBATが蓄える電力が同時に供給され、動作をそれぞれ開始する。
【0019】
スイッチングレギュレータ1の出力側には負荷3と電流検出用抵抗体4が直列に接続されている。負荷3と電流検出用抵抗体4には、スイッチングレギュレータ1により変換された出力電力が供給されて電流IOUTが流れる。なお、負荷3の例として、ヘッドランプ、ストップ&テールランプ、フォグランプ、ターンシグナルランプなどの各種車両用灯具として使用される半導体発光素子(LED)やフィラメントなどがある。
【0020】
スイッチング制御部2は、例えばマイコンなどの演算処理機能を有する部品で構成され、電流検出用抵抗体4の両端の電位差が入力されるフィードバック端子FBを備える。電流検出用抵抗体4の両端の電位差は電流IOUTの大きさに応じて変化するため、電流検出用抵抗体4の抵抗値を予め求めておけば、フィードバック端子FBに印加される電圧から負荷3に流れる電流IOUTの大きさを求めることができる。このように、フィードバック端子FBには電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧が印加される。
【0021】
そして、スイッチング制御部2は、フィードバック端子FBに印加される電圧と所定の基準電圧とを比較して両者の差異が無くなるように、スイッチングレギュレータ1から負荷3へ供給される出力電力の大きさをフィードバック制御する。これにより、車両用灯具点灯回路は、電流IOUTの大きさが予め定めた一定値になるような定電流制御を行うことができる。ここで、「所定の基準電圧」は、予め定めた一定値と電流検出用抵抗体4の抵抗値から求めることができる。
【0022】
図2を参照して、スイッチSWの開閉状態、過電流保護部5が出力する電圧Vp、及び負荷3に流れる電流IOUTの大きさの時間変化について説明する。スイッチSWが開いた状態(OFF)から閉じた状態(ON)へ変化すると、バッテリーBATが蓄える電力が、スイッチングレギュレータ1、スイッチング制御部2及び過電流保護部5のそれぞれに供給され始める。
【0023】
スイッチング制御部2はマイコンなどの演算処理機能を有する部品で構成されるため、電力供給が開始されてから安定した動作が可能になるまで、つまりスイッチング制御部2の起動が完了するまでに所定の時間が必要となる。ところが、スイッチング制御部2と同時にスイッチングレギュレータ1にも電力供給が開始され、スイッチングレギュレータ1は、スイッチング制御部2の起動が完了する前から電力供給を開始してしまう。このように、スイッチングレギュレータ1内の部品定数やスイッチング制御部2の設定の組み合わせによって、スイッチング制御部2によるフィードバック制御が遅れてしまい、この間(例えば数十msec)に、スイッチングレギュレータ1が負荷3へ定格電流以上の電流を一時的に流してしまう場合がある。半導体発光素子(LED)等の電子部品からなる車両用灯具は、一時的な過電流によって破損してしまう場合がある。
【0024】
過電流保護部5は、スイッチSWが閉じてバッテリーBATからの電力供給が開始された後の一定の期間Tsにかぎり、電流検出用抵抗体4により検出された電流の大きさを示す電圧よりも大きい電圧Vpをフィードバック端子FBに対して印加する機能を備える。
【0025】
電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧よりも大きい電圧Vpをフィードバック端子FBに対して印加することにより、スイッチング制御部2は、電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTよりも大きい電流が負荷3に流れていると認識して、スイッチングレギュレータ1から負荷3へ供給される出力電力の大きさを小さくなるようにフィードバック制御を行う。なお図2の例では、過電流保護部5が印加する電圧Vpを所定の基準電圧よりも大きい電圧にして、一定の期間Tsが経過するまでスイッチングレギュレータ1から負荷3への電力供給を停止して電流IOUTの大きさを零にしている。
【0026】
一定の期間Tsの長さは、スイッチングレギュレータ1及びスイッチング制御部2に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部2が起動するまでの期間の長さに応じて予め定める。これにより、電力供給が開始されてから安定した動作が可能になるまで、つまりスイッチング制御部2の起動が完了するまで、一時的な過電流から負荷3を保護することができる。
【0027】
一定の期間Tsが経過した後のスイッチSWが閉じた状態において、スイッチング制御部2は正常なフィードバック制御が可能となるので、過電流保護部5は電圧Vpを出力せずに、電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧がフィードバック端子FBに対して印加され、上記したスイッチング制御部2によるフィードバック制御が開始される。
【実施例】
【0028】
図3を参照して、図1に示した車両用灯具点灯回路の具体的な回路構成の実施例を説明する。
【0029】
バッテリーBATの低電位側電極は接地され、バッテリーBATの高電位側電極にスイッチSWの一方の端子が接続されている。そして、スイッチSWの他方の端子は、スイッチングレギュレータ1、スイッチング制御部2及び過電流保護部5が接続されている。
【0030】
スイッチングレギュレータ1は、フライバック側のDC/DCコンバータで構成され、トランス11にパスルを入力し、入力側コイルと出力側コイル間の相互誘導によって出力電圧を生成する。入力側コイルに直列接続された第1のスイッチング素子FET1のオン/オフの時間の割合(デューティー比)を変化させることにより出力電力の大きさを調整する。具体的には、第1のスイッチング素子FET1の制御端子にパスル信号を繰返し入力し、パスル信号のデューティー比を変化させて出力電力の大きさを調整する。その他、スイッチングレギュレータ1は、出力側コイルに直列接続された保護ダイオード12及び並列接続されたキャパシタ13を備える。
【0031】
スイッチング制御部2は、フィードバック端子FBに印加される電圧と所定の基準電圧Vrefとを比較する比較器CMPと、スイッチSWの他方の端子に接続された電源端子Vccとを備える。スイッチング制御部2は、比較器CMPからの出力に応じてパスル信号OUTのデューティー比を演算し、第1のスイッチング素子FET1の制御端子へパスル信号OUTを出力する。
【0032】
過電流保護部5は、直列接続された抵抗体Ra及びキャパシタCと、抵抗体RaとキャパシタCの間の電位が制御端子CTに印加され、第1の電極端子FTに所定の基準電圧Vrefよりも大きい電圧が印加され、第2の電極端子STがフィードバック端子FBに接続された第2のスイッチング素子FET2とを備える。
【0033】
具体的に、スイッチSWの他方の端子は抵抗体Raに接続され、抵抗体Raに接続されたキャパシタCの他方の電極は接地されている。抵抗体RaとキャパシタCの中間の電位は、抵抗Rbを介して第2のスイッチング素子FET2の制御端子へ入力されている。スイッチSWの他方の端子は第2のスイッチング素子FET2の第1の電極端子FTにも接続され、第1の電極端子FTには、所定の基準電圧Vrefよりも大きい電圧の例としてバッテリー電圧VBATが印加される。
【0034】
第2のスイッチング素子FET2は、制御端子CTに第1の電極端子FT対する所定の負電圧が加わった時にチャネルが形成されて第1の電極端子FTと第2の電極端子ST間に電流が流れ、電圧が加っていない時はチャネルは形成されず電流は遮断されるエンハンスト側の電界効果型トランジスタで構成されている。「所定の負電圧」とは、第2のスイッチング素子FET2に固有なしきい値電圧以上の電圧をいう。「しきい値電圧」とは、一般的なトランジスタのチャンネルを形成する為に最低限必要な電圧である。
【0035】
図4は、スイッチSWの開閉状態、電源端子Vccの電圧、抵抗体Raの両端の電圧V、第2のスイッチング素子FET2のオン/オフ状態、フィードバック端子FBに印加される電圧VFB、パスル信号OUTのデューティー比、及び負荷3に流れる電流IOUTの大きさの時間変化を示すグラフである。
【0036】
図4に示すように、スイッチSWが閉じると同時に電源端子Vccの電圧はバッテリー電圧VBATまで上昇する。抵抗体RaとキャパシタCの間の電位は、スイッチSWが閉じてバッテリー電圧VBATの印加が開始されてから時間の経過に応じて変化する。具体的に、バッテリー電圧VBATの印加が開始された直後、キャパシタCは電荷を蓄えていないので、抵抗体Raの両端にはバッテリー電圧VBATが加わるが、時間の経過と共にキャパシタCの両端に加わる電圧が増加して、抵抗体Raの両端の電圧Vは零まで減少する。
【0037】
よって、バッテリー電圧VBATを第2のスイッチング素子FET2のしきい値電圧VGSよりも大きく設定することにより、バッテリー電圧VBATの印加が開始されてから所定期間Tsに限り、第2のスイッチング素子FET2をオン状態に制御することができる。さらに、抵抗体Ra及びキャパシタCの大きさを第2のスイッチング素子FET2のしきい値電圧を調整することにより、スイッチングレギュレータ1及びスイッチング制御部2に対する電力の供給が開始されてからスイッチング制御部2が起動するまでの間に限り、第2のスイッチング素子FET2をオン状態に制御することができる。
【0038】
第2のスイッチング素子FET2がオン状態になると、抵抗Rc及び抵抗Reを介して、バッテリー電圧VBATがフィードバック端子FBに印加される。バッテリー電圧VBATは所定の基準電圧Vrefよりも大きい電圧(図4では、基準電圧Vrefの2倍)であるので、スイッチング制御部2は、第1のスイッチング素子FET1のオンの時間の割合を零にする。これにより、スイッチングレギュレータ1から負荷3への出力電力の供給が停止されて電流IOUTの大きさが零になる。
【0039】
所定期間Tsが経過して抵抗体Raの両端の電圧Vがしきい値電圧VGSよりも小さくなると、第2のスイッチング素子FET2はオフ状態に変化し、フィードバック端子FBに印加される電圧VFBは零になる。スイッチング制御部2は、パスル信号OUTのデューティー比を最大値(例えば80%)までオンデューティーを上昇させる。その後は、電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧がフィードバック端子FBに対して印加され、スイッチング制御部2による通常のフィードバック制御が行われる。
【0040】
一定の期間Tsが経過した後、スイッチング制御部2は正常なフィードバック制御が可能となるので、図4のP及びPに示すように、スイッチング制御部2は電流IOUTの大きさに追従することができ、過電流の発生が抑制される。そして、時刻Tc以降は電流IOUTを一定値(例えば、100mA)に安定させることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施の形態及び実施例によれば、以下の作用効果が得られる。
【0042】
図2に示すように、スイッチングレギュレータ1及びスイッチング制御部2に対する電力の供給が開始された後からスイッチング制御部2が起動するまでの間Tsに限り、電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTの大きさを示す電圧よりも大きい電圧Vpをフィードバック端子FBに対して印加する。これにより、スイッチング制御部2は、電流検出用抵抗体4により検出された電流IOUTよりも大きい電流が負荷3に流れていると認識して、スイッチングレギュレータ1から負荷3へ供給される出力電力を小さくする。これにより、電力投入後に一時的に過電流が負荷3に流れること(オーバーシュート)及びこの過電流により負荷3が破損することを抑制することができる。
【0043】
所定の基準電圧Vrefよりも大きい電圧をフィードバック端子FBに対して印加してスイッチングレギュレータ1から負荷3への出力電力の供給を停止することにより、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することをより強く抑制することができる。
【0044】
第1のスイッチング素子FET1のオン/オフの時間の割合(デューティー比)を変化させることにより出力電力の大きさを調整可能なスイッチングレギュレータ1に対して、第1のスイッチング素子FET1のオンの時間の割合を零にして、スイッチングレギュレータ1から負荷3への出力電力の供給を一時的に停止すれば、電力投入後に一時的に過電流が負荷に流れること及びこの過電流により負荷が破損することをより強く抑制することができる。
【0045】
上記のように、本発明は、1つの実施形態及びその実施例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。すなわち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 スイッチングレギュレータ
2 スイッチング制御部
3 負荷
4 電流検出用抵抗体(電流検出用部品)
5 過電流保護部
11 トランス
12 保護ダイオード
13、C キャパシタ
BAT バッテリー
CMP 比較器
CT 制御端子
FB フィードバック端子
FET1 第1のスイッチング素子
FET2 第2のスイッチング素子
FT 第1の電極端子
OUT 負荷3に流れる電流
OUT パスル信号
Ra 抵抗体
Rb〜Re 抵抗
ST 第2の電極端子
SW スイッチ
Ts 所定期間
BAT バッテリー電圧
FB フィードバック端子に印加される電圧
GS しきい値電圧
Vcc 電源端子
Vref 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される電力を所定の出力電力へ変換して負荷へ供給するスイッチングレギュレータと、
前記負荷に流れる電流の大きさを検出するための電流検出用部品と、
電流検出用部品により検出された電流の大きさを示す電圧が印加されるフィードバック端子を備え、フィードバック端子に印加される電圧の大きさと所定の基準電圧とを比較して、前記スイッチングレギュレータから前記負荷へ供給される出力電力の大きさをフィードバック制御するスイッチング制御部と、
前記スイッチングレギュレータ及び前記スイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後から前記スイッチング制御部が起動するまでの間に限り、前記電流検出用部品により検出された電流の大きさを示す電圧よりも大きい電圧をフィードバック端子に対して印加する過電流保護部と
を備えることを特徴とする車両用灯具点灯回路。
【請求項2】
前記スイッチングレギュレータ及び前記スイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後から前記スイッチング制御部が起動するまでの間に限り、前記過電流保護部は、前記所定の基準電圧よりも大きい電圧をフィードバック端子に対して印加し、前記スイッチング制御部は、前記スイッチングレギュレータから前記負荷への出力電力の供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具点灯回路。
【請求項3】
前記スイッチングレギュレータは、第1のスイッチング素子のオン/オフの時間の割合(デューティー比)を変化させることにより出力電力の大きさを調整し、前記スイッチング制御部は、前記スイッチングレギュレータ及び前記スイッチング制御部に対する電力の供給が開始された後から前記スイッチング制御部が起動するまでの間に限り、第1のスイッチング素子のオンの時間の割合を零にして、前記スイッチングレギュレータから前記負荷への出力電力の供給を停止することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具点灯回路。
【請求項4】
前記過電流保護部は、
直列接続された抵抗体及びキャパシタと、
前記抵抗体と前記キャパシタの間の電位が制御端子に印加され、第1の電極端子に前記所定の基準電圧よりも大きい電圧が印加され、第2の電極端子が前記フィードバック端子に接続された第2のスイッチング素子とを備え、
前記スイッチングレギュレータ及び前記スイッチング制御部に対する電力の供給が開始されると同時に、前記直列接続された抵抗体及びキャパシタの両端子間に電圧の印加が開始され、当該電圧の印加が開始されてから前記スイッチング制御部が起動するまでの間に限り、第2のスイッチング素子をオン状態に制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用灯具点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−244704(P2010−244704A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88883(P2009−88883)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】