説明

車両用灯具

【課題】 他の車両に対する視認性向上と、灯具のデザイン要求とに応えることが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】 本発明に係る車両用灯具1は、ハウジング2と、ハウジング2に形成された開口3を閉塞する透明なアウターレンズと、ハウジング2内に平行に配設される透光性を有する複数枚のインナーレンズ5と、インナーレンズ5に向けて平行光束を照射する光源とを備えている。インナーレンズ5には、平行光束を開口3を介して車両外方へ反射するとともに、車両外方より開口3を介して侵入した外光を当該車両外方に折り返し反射させる反射部12が散点状に形成されている。さらに、反射部12は、平行光束の光軸方向において他のインナーレンズ5に設けられた他の反射部12と重ならず、且つ、いずれかのインナーレンズ5に形成された反射面12によって平行光束が車両外方へ反射されるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジングに形成された開口を閉塞する透明なアウターレンズと、ハウジング内に配設されるインナーレンズと、インナーレンズに向けて平行光束を照射する光源とを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後続車両等の運転者に対する視認性や注意喚起性を向上するために、尾灯等の不点灯時に外光を再帰反射させて輝光するリフレックスリフレクタ(再帰反射板)が設置されている車両用灯具が知られている。
【0003】
このリフレックスリフレクタは、例えば、バルブ光源を内包する灯室の開口部を閉塞するようにして配設されたレンズの外側に対して、外部入射光を反射させるためにステップ状に形成されたレンズを配設することによって形成されることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−50207号公報(第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近時では、レンズをクリアにして灯室内を外部から見えるようにした車両用灯具が開発されており、クリアレンズを用いたクリアな外観を備える車両用灯具に対する要望が大きい。一方で、上述したようにレンズの外側に形成されたステップ状のレンズによりリフレックスリフレクタが形成されている車両用灯具では、レンズをクリアにすることが困難であり、デザイン要求に対応することが難しかった。
【0005】
また、リフレックスリフレクタの設置には、法規上の様々な制約が生ずるため、灯具のレンズにリフレックスリフレクタを設置するには、設置スペースや認証等が必要となるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、他の車両に対する視認性向上と、灯具のデザイン要求とに応えることが可能な車両用灯具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明に係る車両用灯具は、ハウジングと、該ハウジングに形成された開口を閉塞する透明なアウターレンズと、前記ハウジング内に平行に配設される透光性を有する複数枚のインナーレンズと、該インナーレンズに向けて平行光束を照射する光源とを備え、前記インナーレンズには、前記平行光束を前記開口を介して車両外方へ反射するとともに、該車両外方より前記開口を介して侵入した外光を当該車両外方に折り返し反射させる反射部が散点状に形成され、該反射部は、前記平行光束の光軸方向において他のインナーレンズに設けられた他の反射部と重ならず、且つ、いずれかのインナーレンズに形成された反射面によって前記平行光束が車両外方へ反射されるように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用灯具によれば、光源より平行光束が照射された場合、平行光束は、各インナーレンズに形成された反射面で反射され、アウターレンズを介し車外に放出される。このとき、インナーレンズ毎に設置された反射面が、インナーレンズの配設により重ね合わされてインナーレンズの全面に隙間なく配列された状態となっているので、平行光束を全て車両外方に照射させることができ、平行光束を有効に利用することができる。
【0009】
また、光源より平行光束が照射されていない場合、反射面が車両外方から開口を介して入射した外光をそのまま車両外方に折り返し反射するので、他の車両等に対して灯具を際立たせて自車両をアピールすることが可能となる。
【0010】
また、反射面が形成されており、従来のようにアウターレンズにリフレックスリフレクタを設ける必要がないので、アウターレンズをクリアレンズにして灯具のクリア感を高めることができ、デザイン要求を容易に満たすことが可能となる。
【0011】
さらに、インナーレンズの反射部により平行光束が反射されて車両外方向に照射されるので、従来の車両用灯具のように光源をアウターレンズ及びインナーレンズの背面に設置する必要がない。このため、光源をインナーレンズの下側等に設置することによって、灯具本体の薄型化を図ることが容易となる。
【0012】
また、インナーレンズの設置枚数を調整することによって灯具の点灯面積を変更することができるので、灯具を大型化することなく点灯面積を拡大させることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用灯具を、図面を用いて詳述する。
【0014】
図1、2に示すように、実施例1に係る車両用灯具1は、ハウジング2と、ハウジング2に形成された開口3を閉塞するアウターレンズ4と、ハウジング2内に設置される複数のインナーレンズ5と、ハウジング2の下部に設けられるバルブ光源6と、バルブ光源6の上方に設置されるフレネルレンズ7とを備えている。
【0015】
アウターレンズ4は、樹脂製の透明なレンズ(クリアレンズ)であって、ハウジング2の開口に設置される。アウターレンズ4がハウジング1の開口3を閉塞することによって灯室8が形成される。
【0016】
アウターレンズ4が透明なレンズとなっているため、アウターレンズ4を介して灯室8内を車外から視認することが可能となっている。灯室8には、インナーレンズ5を等間隔に設置するための複数の設置棚9が開口3方向に対して直交するようにして配設されている。ハウジング4の灯室8の下方には、フレネルレンズ7によって仕切られるバルブ収納空間10が形成されている。
【0017】
インナーレンズ5は、樹脂製の透明平板によって形成されており、側方視で45度の角度を保つようにして設置棚9に上下5枚、左右6列、合計30枚配設されている。フレネルレンズ7は、インナーレンズ5を下側から見上げるようにして、灯室8の底面に6枚設置されており、各フレネルレンズ7の下方には、バルブ光源6が光軸を上方向に向けて設けられている。
【0018】
インナーレンズ5には、マスク蒸着により反射面12が散点状(スポット的、部分的)に形成されている。具体的に反射面12は、図3に示すように、側面視凹状湾曲形状を呈する鏡面によって形成されており、この凹状湾曲形状によって、フレネルレンズ7により平行光束とされたバルブ光を前方に反射させ(図2、3の矢印α)つつ、正面より侵入する外光(図2、3の矢印β)をそのまま正面方向に反射させる(図2、3の矢印γ)ことができる。
【0019】
反射面12は、上下に配設されるインナーレンズ5毎に異なる位置に形成されており、下方からインナーレンズ5を見上げた場合に、各インナーレンズ5に設置された反射面12がインナーレンズ5の配設により重ね合わされてインナーレンズ5の全面に隙間なく配列された状態となる。また、反射面12の設置面積の割合は、各インナーレンズ5に対してほぼ均等な割合となっており、さらに、設置箇所は1枚のインナーレンズ5内で偏りが生じないように設置される。
【0020】
このようにして構成された車両用灯具1のバルブ光源6を点灯させると、フレネルレンズ7によって、バルブ光源6の照明光がフレネルレンズ7面に垂直な方向に整えられて、真下方向からインナーレンズ5へ照射される。
【0021】
照射された光は、各インナーレンズ5に形成された反射面12で反射され、アウターレンズ4を介し車外に放出される。このとき、インナーレンズ5毎に設置された反射面12は、インナーレンズ5の配設により重ね合わされてインナーレンズ5の全面に隙間なく配列された状態となっているので、フレネルレンズ7を透過する照明光は全て車両外方に照射され、照射光を有効に利用することができる。さらに、各インナーレンズ5の反射面12の設置面積はほぼ均等な割合であり、反射面12が1枚のインナーレンズ5内で偏りの生じない位置に設置されるので、外部から見てインナーレンズ5がほぼ均等な明るさで点灯しているように見え、点灯ムラが発生しない。
【0022】
一方、バルブ光源6を点灯させない場合、反射面12が側面視凹状湾曲形状を呈する鏡面によって形成されているので、外部から灯室8内に入射された外光が鏡面によりそのまま外光の侵入方向に反射され、他の車両等に対して灯具を際立たせて自車両をアピールすることが可能となる。
【0023】
また、リフレックスリフレクタをアウターレンズ4等に設ける必要がないので、アウターレンズ4をクリアレンズにして灯具のクリア感を高めることができ、デザイン要求を容易に満たすことが可能となる。
【0024】
さらに、インナーレンズ5が透明な平板基板によって形成されているので、外部から灯具を見た場合に、ハウジング2の内側の壁面をアウターレンズを介して見ることができる。このため、ハウジング2の内側面を赤色や橙色にすることによって、クリアレンズを介して灯具全体を赤色・橙色に見せることができる。さらに、反射面12を赤色又は橙色にしてマスク蒸着を行うことによって、バルブ光源6を点灯した時に、インナーレンズ5を赤色又は橙色に光らせることが容易となり、高い安全性を確保することが可能となる。また、反射面12の色を他の色にしてマスク蒸着を行うことによって、外光がない場合であってもクリアレンズ等により反射面を発色させることができるので、灯具の意匠性を高めることができる。
【0025】
さらに、光源が下側に設けられているので、灯具の奥行きを薄くして灯具の設置容積を低減させることができ、さらに、インナーレンズの設置枚数を調節することによって灯具の点灯面積を容易に拡縮することができるので、灯具の奥行きを厚くすることなく、点灯面積の大型化を容易に実現することが可能となる。
【0026】
なお、本実施例においては、フレネルレンズ7を用いてバルブ光源6の照明光を平行光束にしてインナーレンズ5に照射させていたが、必ずしもフレネルレンズ7を用いて照明光を平行光束にする必要はない。例えば、図4に示すように、バルブ光源6の照明光をリフレクタ14で一度反射させることによって、平行光束にしてインナーレンズ5に照射する構造としてもよい。このような構造とした場合であっても、リフレクタ14により照明光が平行光束となるので、同様の効果を奏することが可能である。
【0027】
以上、本発明に係る車両用灯具を、実施例に基づいて説明したが、本発明に係る車両用灯具は上述した実施例に限定されるものではなく、他の構成によるものであってもよい。例えば、実施例1においてインナーレンズを30枚用いたが、インナーレンズの数は30枚に限定されず、何枚であってもよい。また、光源は必ずしもバルブ光源である必要はなく、LED光源等を用いてもよい。
【0028】
さらに、光源は必ずしもインナーレンズの下方に設置する必要はなく、インナーレンズの側方に光源を設置し、側方から入射した平行光束を、インナーレンズの反射面により車両外方向に反射させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係る車両用灯具を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A断面を矢印方向に見た断面図である。
【図3】図2のインナーレンズ、フレネルレンズ、バルブ光源の位置関係を示した概略断面図である。
【図4】バルブ光源にリフレクタが設けられ車両用灯具を示した断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両用灯具
2 ハウジング
4 アウターレンズ
5 インナーレンズ
6 バルブ光源
7 フレネルレンズ
8 灯室
9 設置棚
12 反射面
14 リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに形成された開口を閉塞する透明なアウターレンズと、前記ハウジング内に平行に配設される透光性を有する複数枚のインナーレンズと、該インナーレンズに向けて平行光束を照射する光源とを備え、
前記インナーレンズには、前記平行光束を前記開口を介して車両外方へ反射するとともに、該車両外方より前記開口を介して侵入した外光を当該車両外方に折り返し反射させる反射部が散点状に形成され、
該反射部は、前記平行光束の光軸方向において他のインナーレンズに設けられた他の反射部と重ならず、且つ、いずれかのインナーレンズに形成された反射面によって前記平行光束が車両外方へ反射されるように形成されることを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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