説明

車両用灯具

【課題】リフレクタユニットの収納スペースが広いという点にある。
【解決手段】5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rを車両Cの側方側Oから中央側Iにかけて配置し、1番側方側の第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を車両CのセンターラインCLとほぼ平行に向け、2番以降の第2、第3、第4、第5灯具L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5を、第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を基準として車両Cの側方側Oに徐々に振り向ける。この結果、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの収納スペースをコンパクトにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個の灯具により曲路用配光パターンを出射する車両用灯具に関するものである。ここで、前記複数個の灯具は、曲路(通常のカーブ、交差点、クランクなどの道路)専用の灯具であって、ヘッドランプと別個に新たに追加される追加灯である。
【背景技術】
【0002】
複数個の灯具により曲路用配光パターンを出射する車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、この車両用灯具について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1にそれぞれ対応する。この車両用灯具は、光照射方向が車両前方(F)に対して30°、45°、60°側方に設定された3つのリフレクタユニット(12A)、(12B)、(12C)を備えるものである。前記3つのリフレクタユニット(12A)、(12B)、(12C)を同時に点灯すると、車両前方(F)に対して側方約15°〜75°の範囲の斜め前方路面を照射する曲路用配光パターン(Pa)、(Pb)、(Pc)が得られるものである。
【0003】
ところが、前記の従来の車両用灯具は、1番内側(車両の中央側)のリフレクタユニット(12A)の光軸(Axa)が車両前方(F)に対して30°側方に設定されており、真ん中のリフレクタユニット(12B)の光軸(Axb)が車両前方(F)に対して45°側方に設定されており、1番外側(車両の側方側)のリフレクタユニット(12C)の光軸(Axc)が車両前方(F)に対して60°側方に設定されている。このために、前記の従来の車両用灯具は、3つのリフレクタユニット(12A)、(12B)、(12C)が光照射方向に行くに従って広がるように設定されているので、3つのリフレクタユニット(12A)、(12B)、(12C)の収納スペースが広いという課題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−87153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、3つのリフレクタユニット(12A)、(12B)、(12C)の収納スペースが広いという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の車両用灯具は、複数個の灯具が車両の側方側から車両の中央側にかけて配置されており、1番側方側の灯具の光軸が車両のセンターラインとほぼ平行に向いており、2番以降の灯具の光軸が1番側方側の灯具の光軸を基準として車両の側方側に徐々に振り向けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用灯具は、複数個の灯具が光の出射(放射、照射、投影)方向に行くに従って狭まるように配置されているので、3つのリフレクタユニットが光照射方向に行くに従って広がるように設定されている前記の従来の車両用灯具と比較して、複数個の灯具の収納スペースをコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。この実施例は、車両(自動車)Cが左側通行の場合の車両用灯具について説明する。車両Cが右側通行の場合の車両用灯具は、構造や配光パターンなどがほぼ左右逆となる。
【0009】
この明細書および図面において、符号「F」は、車両Cの前進方向であって、ドライバー側から見た前側を示す。符号「B」は、車両Cの前進方向と逆方向であって、ドライバー側から見た後側を示す。符号「U」は、ドライバー側から見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前側Fを見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前側Fを見た場合の右側を示す。符号「HL−HR」は、配光パターンが出射される25m先のスクリーン上の左右の水平線を示す。符号「VU−VD」は、同じく、配光パターンが出射される25m先のスクリーン上の上下の垂直線を示す。符号「I」は、車両Cの中央側を示す。符号「O」は、車両Cの側方側を示す。
【実施例】
【0010】
図2、図5において、符号1L、1Rは、この実施例における車両用灯具である。以下、この実施例における車両用灯具1L、1Rの構成について説明する。前記車両用灯具1L、1Rは、複数個、この例では5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5R、L1L、L2L、L3L、L4L、L5Lと、ヘッドランプユニットLU、LDとから構成されているいわゆるフロントコンビネーションランプである。前記車両用灯具1L、1Rは、車両Cの前部の左右両側に搭載されている。以下、右側の車両用灯具1Rの構成について説明する。なお、左側の車両用灯具1Lの構成は、右側の車両用灯具1Rの構成のほぼ左右対称(左右逆)となる。
【0011】
前記車両用灯具1Rは、図3に示すように、灯室2を区画するランプハウジング3およびランプレンズ4(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、前記灯室2内に配置された前記5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5R(以下、単に灯具L0と称する場合がある)および前記ヘッドランプユニットLU、LDと、光軸調整装置と、を備えるものである。
【0012】
前記灯具L0は、図4に示すように、半導体型光源5と、レンズ6と、上ホルダ7およびシェード兼用の下ホルダ8とを備えるものである。前記半導体型光源5は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源5は、基板9と、前記基板9の一面に固定された微小な矩形形状(正方形形状)の光源チップ(半導体チップ)の発光体10と、前記発光体10を覆う光透過部材11と、前記基板9の他面に固定された放熱部材(図示せず)とから構成されている。前記半導体型光源5は、前記上ホルダ7および前記下ホルダ8により、前記発光体10がほぼ水平に配置されるように保持されている。
【0013】
前記上ホルダ7には、ほぼ回転楕円面の上反射面12が設けられており、一方、前記下ホルダ8には、下反射面13が設けられている。前記上反射面12の第1焦点(図示せず)近傍には、前記発光体10が位置する。また、前記上反射面12の第2焦点(図示せず)および前記レンズ6の焦点(図示せず)近傍には、シェード兼用の前記下ホルダ8が位置する。前記上ホルダ7および前記下ホルダ8には、前記レンズ6が保持されている。前記レンズ6は、前記発光体10からの光(図4(B)中の実線矢印を参照)であって、前記上反射面12および前記下反射面13で反射された反射光を光軸(レンズ6の中心軸)Z−Zに沿って所定の配光パターンで外部に出射する投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)である。なお、図4(A)は、前記コーナリングランプL0の平面図、図4(B)は、図4(A)におけるB−B線断面図、図4(C)は、図4(A)におけるC矢視図、図4(D)は、半導体型光源の平面図である。
【0014】
前記5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rは、図1および図3に示すように、車両Cの側方側Oから車両Cの中央側Iにかけて配置されている。1番側方側の第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1は、車両CのセンターラインCLとほぼ平行に向いている。2番以降の第2、第3、第4、第5灯具L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5は、前記第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を基準として車両Cの側方側Oに徐々に振り向けられている。
【0015】
上記の構成により、前記右側の車両用灯具1Rにおいて、前記第1灯具L1Rから出射される第1曲路用配光パターンCP1のほぼ中央は、図6(A)に示すように、上下垂直線VU−VDから右側Rに約10°のところに位置する。以下、同じく、前記第2灯具L2Rから出射される第2曲路用配光パターンCP2のほぼ中央は、図6(B)に示すように、上下垂直線VU−VDから右側Rに約15°のところに位置する。前記第3灯具L3Rから出射される第3曲路用配光パターンCP3のほぼ中央は、図6(C)に示すように、上下垂直線VU−VDから右側Rに約20°のところに位置する。前記第4灯具L4Rから出射される第4曲路用配光パターンCP4のほぼ中央は、図6(D)に示すように、上下垂直線VU−VDから右側Rに約30°のところに位置する。前記第5灯具L5Rから出射される第5曲路用配光パターンCP5のほぼ中央は、図6(E)に示すように、上下垂直線VU−VDから右側Rに約40°のところに位置する。
【0016】
前記ヘッドランプユニットLU、LDは、基本配光パターン、この例ではすれ違い用配光パターンLPを外部に出射させるものである。前記ヘッドランプユニットLU、LDは、前記灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの上下にそれぞれ配置された上側のヘッドランプユニット群LUと下側のヘッドランプユニット群LDとからなる。前記上側のヘッドランプユニット群LUは、LEDなどの半導体型光源からなる4個のヘッドランプユニットからなり、前記すれ違い用配光パターンLPの拡散配光もしくは拡散配光およびホットゾーンの配光を主に担うものである。一方、前記下側のヘッドランプユニット群LDは、同じくLEDなどの半導体型光源からなる3個のヘッドランプユニットからなり、前記すれ違い用配光パターンLPのカットオフラインもしくはカットオフラインおよびホットゾーンの配光を主に担うものである。
【0017】
前記灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rおよび前記ヘッドランプユニットLU、LDは、取付ブラケット14およびピボット機構15および上下方向の光軸調整機構16および左右方向の光軸調整機構17から構成されている前記共通の光軸調整装置を介して、前記ランプハウジング3に光軸調整可能に取り付けられている。すなわち、前記共通の光軸調整装置により、前記灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5と、前記ヘッドランプユニットLU、LDの光軸(図示せず)とは、一体に調整される。
【0018】
この実施例における車両用灯具1L、1Rには、図5に示すように、ヘッドランプスイッチ18、操舵角センサー19、車速センサー20、GPSレシーバー21、撮像装置22、コントロールユニット23を備えるものである。前記操舵角センサー19、前記車速センサー20、前記GPSレシーバー21、前記撮像装置22は、車両Cが走行する曲路(カーブ)の曲線半径(カーブ半径)を検知して曲線半径検知信号を出力する曲線半径検知装置である。
【0019】
前記ヘッドランプスイッチ18は、ドライバーがON、OFFを操作して前記ヘッドランプユニットLU、LDを点灯、消灯させるものであって、ONのときON信号(たとえば、ハイレベル信号)を出力し、OFFのときOFF信号(たとえば、ローレベル信号)を前記コントロールユニット23に出力するものである。
【0020】
前記操舵角センサー19は、ステアリングハンドル(ステアリングホイール、ハンドル)の操舵角(舵角)および操舵方向および角速度を検出して、操舵角信号および操舵方向信号および角速度信号を前記コントロールユニット23に出力するものである。すなわち、前記操舵角センサー19は、たとえば、車両Cが曲路(左カーブの道路や右カーブの道路)を走行する場合に、また、車両Cが交差路を左折したり右折したりする場合に、ドライバーが操舵するステアリングハンドルの操舵角(回転角)および操舵方向(回転方向)および角速度(回転速度)を検出して、操舵角信号および操舵方向信号および角速度信号を前記コントロールユニット23に出力するものである。前記操舵角信号および前記操舵方向信号は、たとえば、車両Cに搭載されている前記操舵角センサー19および前記コントロールユニット23がネットワーク化され、具体的な数値データとして得られる。具体的な数値データとしては、たとえば、ステアリングハンドルを右側に10°切ると、+10°の数値データ、一方、ステアリングハンドルを左側に10°切ると、−10°の数値データとして得られる。また、具体的な数値データとしては、たとえば、ステアリングハンドルを右側に10°切ると、「1000」のニュートラル数値に対して「990」の数値データ、一方、ステアリングハンドルを左側に10°切ると、「1000」のニュートラル数値に対して「1010」の数値データとして得られる。一方、前記操舵角信号および前記操舵方向信号は、たとえば、車両に搭載されている前記操舵角センサー19(たとえば、光学センサ)が前記コントロールユニット23に出力する電気信号として得られる。
【0021】
前記車速センサー20は、車速を検出して車速信号として前記コントロールユニット23に出力するものである。前記GPSレシーバー21は、GPSや地上局(電子基準点など)から出力される位置情報信号を受信して前記コントロールユニット23に出力するものである。前記撮像装置22は、たとえば、車両Cに搭載されたCCDカメラやCMOSカメラなどの半導体素子の撮像装置などであって、車両Cが走行する曲路の情報を撮像して画像処理した画像信号を前記コントロールユニット23に出力するものである。
【0022】
前記コントロールユニット23は、車両Cに搭載されているコンピュータ、たとえば、カーナビゲーション(ナビゲーションシステム)のコンピュータ、また、制御回路部やECU・電子制御ユニットのコンピュータなどを使用する。前記コントロールユニット23は、前記曲線半径検知装置からの曲線半径検知信号に基づいて調光制御信号を出力する調光制御装置と、前記調光制御装置からの調光制御信号に基づいて前記5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5R、L1L、L2L、L3L、L4L、L5Lからの出力光束を増減して後記曲路用配光パターンCPの範囲をほぼ変えずにホットゾーンHZの位置を変える調光装置(たとえば、電流制御装置)と、を備えるものである。
【0023】
以下、この実施例における車両用灯具1L、1Rの作用について図6〜図10を参照して説明する。図6〜図8は、コンピュータのシミュレーションで得られたスクリーン上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図であって、中央の等光度曲線は、高光度帯であって、その他の曲線は、外に行くにしたがって低くなる光度帯である。たとえば、図6(A)、(C)、(D)の中央の等光度曲線は、2000(cd)であり、以下、1000(cd)、500(cd)、200(cd)である。また、図6(B)の中央の等光度曲線は、5000(cd)であり、以下、2000(cd)、1000(cd)、500(cd)、200(cd)である。さらに、図7(A)、(B)の中央の等光度曲線は、10000(cd)であり、以下、5000(cd)、2000(cd)、1000(cd)、200(cd)である。さらにまた、図8(A)、(B)の中央の等光度曲線は、20000(cd)であり、以下、10000(cd)、5000(cd)、2000(cd)、1000(cd)、200(cd)である。
【0024】
また、図9、図10は、コンピュータのシミュレーションで得られた道路上の配光パターンを簡略化して示す等照度曲線の平面から見た説明図であって、中央の等照度曲線は、高照度帯であって、その他の曲線は、外に行くにしたがって低くなる照度帯である。たとえば、図9(A)、(B)の中央の等照度曲線は、70(lx)であり、以下、50(lx)、30(lx)、20(lx)、10(lx)、3(lx)である。また、図10(A)、(B)の中央の等照度曲線は、100(lx)であり、以下、70(lx)、50(lx)、30(lx)、20(lx)、10(lx)、3(lx)である。
【0025】
車両Cがたとえば右曲路を走行すると、曲線半径検知装置19、20、21、22が右曲路の曲線半径を検知して曲線半径検知信号をコントロールユニット23に出力する。このコントロールユニット23の調光制御装置および調光装置は、曲線半径検知信号に基づいて、右側の車両用灯具1Rの5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rを点灯させる。
【0026】
このとき、右曲路の曲線半径が比較的大きい場合(浅いカーブの場合)には、コントロールユニット23の調光制御装置および調光装置は、第1灯具L1Rからの光束出力をたとえば50%に制御して図6(A)に示す第1曲路用配光パターンCP1を右曲路に出射し、また、第2灯具L2Rからの光束出力をたとえば100%に制御して図6(B)に示す第2曲路用配光パターンCP2を右曲路に出射し、さらに、第3、4、5灯具L3R、L4R、L5Rからの光束出力をたとえば50%にそれぞれ制御して図6(C)、(D)、(E)に示す第3、4、5曲路用配光パターンCP3、CP4、CP5を右曲路にそれぞれ出射する。
【0027】
前記の第1、2、3、4、5曲路用配光パターンCP1、CP2、CP3、CP4、CP5を合成すると、図7(A)に示す曲路用配光パターンCPおよび図9(A)に示す道路上の配光パターンが得られる。この図7(A)に示す曲路用配光パターンCPのホットゾーンHZは、上下垂直線VU−VDから右側Rに約15°のところに位置する。この図7(A)に示す曲路用配光パターンCPおよび図9(A)に示す道路上の配光パターンは、曲線半径が比較的大きい右曲路の走行に適している配光パターンである。このように、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rは、曲路用配光パターンCPの一部分(パート)をそれぞれ担うものであり、この5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rで得られる第1、2、3、4、5曲路用配光パターンCP1、CP2、CP3、CP4、CP5を重ね合わせることにより、曲路用配光パターンCPが得られるものである。
【0028】
また、夜間の走行時において、ヘッドランプスイッチ18をON操作してヘッドランプユニットLU、LDを点灯させると、図8(A)に示すすれ違い用配光パターン(図7(A)に示す曲路用配光パターンCPと合成されたすれ違い用配光パターン)LP、および、図10(A)に示す道路上の配光パターン(図9(A)に示す道路上の配光パターンと合成された道路上の配光パターン)が得られる。この図8(A)に示すすれ違い用配光パターンLPの10000(cd)の高光度帯は、上下垂直線VU−VDの左側L約10°から右側R約20°までの範囲と、左右水平線HL−HRの約0°から下側D約3.5°までの範囲の左右に細長い帯形状をなす。この図8(A)に示すすれ違い用配光パターンLPおよび図10(A)に示す道路上の配光パターンは、曲線半径が比較的大きい右曲路の夜間走行に適している配光パターンである。
【0029】
一方、たとえば、急クランクや交差点旋回などにおいて、右曲路の曲線半径が比較的小さい場合(深いカーブの場合)には、コントロールユニット23の調光制御装置および調光装置は、第1、2、3、5灯具L1R、L2R、L3R、L5Rからの光束出力をたとえば50%にそれぞれ制御し、かつ、第4灯具L4Rからの光束出力をたとえば100%に制御して、第1、2、3、4、5曲路用配光パターンを右曲路にそれぞれ出射させる。
【0030】
前記の第1、2、3、4、5灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rから出射される曲路用配光パターンを合成すると、図7(B)に示す曲路用配光パターンCPおよび図9(B)に示す道路上の配光パターンが得られる。この図7(B)に示す曲路用配光パターンCPのホットゾーンHZは、上下垂直線VU−VDから右側Rに約30°のところに位置する。この図7(B)に示す曲路用配光パターンCPおよび図9(B)に示す道路上の配光パターンは、曲線半径が比較的小さい右曲路の走行に適している配光パターンである。
【0031】
また、夜間の走行時において、ヘッドランプスイッチ18をON操作してヘッドランプユニットLU、LDを点灯させると、図8(B)に示すすれ違い用配光パターン(図7(B)に示す曲路用配光パターンCPと合成されたすれ違い用配光パターン)LP、および、図10(B)に示す道路上の配光パターン(図9(B)に示す道路上の配光パターンと合成された道路上の配光パターン)が得られる。この図8(B)に示すすれ違い用配光パターンLPの10000(cd)の高光度帯は、上下垂直線VU−VDの左側L約10°から右側R約12°までの範囲と、左右水平線HL−HRの約0°から下側D約2.5°までの範囲と、上下垂直線VU−VDの右側R約26°から右側R約34°までの範囲と、左右水平線HL−HRの約0.5°から下側D約3.5°までの範囲とに2個に分割されている。しかも、この図8(B)に示すすれ違い用配光パターンLPの1000(cd)および200(cd)の出射範囲は、図8(A)に示すすれ違い用配光パターンLPの1000(cd)および200(cd)の出射範囲とほぼ同一である。すなわち、この図8(B)に示すすれ違い用配光パターンLPは、図8(A)に示すすれ違い用配光パターンLPと比較して、1000(cd)および200(cd)の出射範囲が変わらずに、10000(cd)の高光度帯が2個に分割されて1個の位置が変化した配光パターンである。この図8(B)に示すすれ違い用配光パターンLPおよび図10(B)に示す道路上の配光パターンは、曲線半径が比較的小さい右曲路の夜間走行に適している配光パターンである。
【0032】
そして、右曲路の曲線半径が異なれば、コントロールユニット23は、右側の車両用灯具1Rの5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光束出力を右曲路の曲線半径に合致させて制御する。このために、曲線半径が異なる右曲路走行および夜間の右曲路走行に適した曲路用配光パターンCPおよびすれ違い用配光パターンLPがそれぞれ得られる。また、左曲路の走行の場合においても、前記の右曲路の走行の場合と同様に、左曲路走行および夜間の左曲路走行に適した曲路用配光パターンおよびすれ違い用配光パターンがそれぞれ得られる。
【0033】
ここで、上下方向の光軸調整機構16を操作すると、取付ブラケット14を介して、右側の車両用灯具1Rの5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5と、ヘッドランプユニットLU、LDの光軸(図示せず)とがピボット機構15の中心と左右方向の光軸調整機構17の中心とを結ぶ水平軸回りに上下方向に回転して調整される。一方、左右方向の光軸調整機構17を操作すると、同じく、取付ブラケット14を介して、右側の車両用灯具1Rの5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5と、ヘッドランプユニットLU、LDの光軸とがピボット機構15の中心と上下方向の光軸調整機構16の中心とを結ぶ垂直軸回りに左右方向に回転して調整される。
【0034】
以下、この実施例における車両用灯具1L、1Rの効果について説明する。この実施例における車両用灯具1L、1Rは、図1に示すように、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rを車両Cの側方側Oから車両Cの中央側Iにかけて配置し、1番側方側の第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を車両CのセンターラインCLとほぼ平行に向け、2番以降の第2、第3、第4、第5灯具L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5を、第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を基準として車両Cの側方側Oに徐々に振り向けるものである。この結果、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、図1に示すように、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rを光の出射方向に行くに従って狭まるように配置することできるので、3つのリフレクタユニット(12A)、(12B)、(12C)が光照射方向に行くに従って広がるように設定されている前記の従来の車両用灯具と比較して、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの収納スペースをコンパクトにすることができる。特に、この実施例の車両用灯具1L、1Rのように、ランプレンズ4の水平断面(横断面)が車両Cの中央側Iから車両Cの側方側Oにかけてスラント(傾斜、湾曲)している車両用灯具の灯室2内に5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rを収納するのに最適である。
【0035】
また、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、図1に示すように、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rを光の出射方向に行くに従って狭まるように配置するので、灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの間の隙間を無くすことができ、その分、外側から灯室2内を見た際の見栄えが向上される。
【0036】
さらに、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、図1に示すように、1番側方側の第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を車両CのセンターラインCLとほぼ平行に向け、2番以降の第2、第3、第4、第5灯具L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5を、第1灯具L1Rの光軸Z1−Z1を基準として車両Cの側方側Oに徐々に振り向けるものであるから、曲路用配光パターンCPのうち、特に車両Cの側方側Oの配光を効率良く形成することができる。このために、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、車両Cの側方側Oに広がった曲路用配光パターンCPが得られ、曲路走行時における視認性が確実に確保され、交通安全に貢献することができる。
【0037】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、図1に示すように、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5がクロスするので、曲路用配光パターンCP中のホットゾーンHZを効率良く形成することができる。しかも、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、コントロールユニット23が曲線半径検知装置19、20、21、22からの曲線半径検知信号に基づいて、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rからの出力光束を増減して曲路用配光パターンCPおよびすれ違い用配光パターンLPの範囲をほぼ変えずにホットゾーンHZの位置を変えることができる。このために、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、ホットゾーンHZを曲路用配光パターンCP中の希望とする位置に容易に形成することができ、視認性が優れた曲路用配光パターンCPを形成するの最適である。
【0038】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、灯具L0の光源として半導体型光源5を使用するものであるから、灯具L0の光束出力を制御するのに最適である。このために、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、曲路用配光パターンCPおよびすれ違い用配光パターンLPのホットゾーンHZの位置を曲路の曲線半径の大きさに合わせて正確に変えることができるので、視認性が優れた曲路用配光パターンCPおよびすれ違い用配光パターンLPを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0039】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、ヘッドランプユニットLU、LDの光軸と5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸とを共通の光軸調整装置14,15,16、17により一体に調整するので、ヘッドランプユニットLU、LDの光軸を調整する際に、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rの光軸も同時に追従して調整されるので、曲路用配光パターンCPを合成したすれ違い用配光パターンLPにおいて、配光が乱れるような虞がない。このために、この実施例における車両用灯具1L、1Rは、常時、配光設計どおりのすれ違い用配光パターン(曲路用配光パターンCPを合成したすれ違い用配光パターン)LPが得られるので、交通安全に貢献することができる。
【0040】
図11は、灯具に使用される半導体型光源の変形例を示す説明図である。この変形例の半導体型光源50は、微小な矩形形状(正方形形状)の光源チップ(半導体チップ)の発光体100が複数個、この例では4個、田の字に実装されたものである。この複数個の発光体100が実装された半導体型光源50を使用した場合には、灯具の個数をたとえば図12に示すように5個から4個に減らすことができるので、その分、製造コストが安価となる。しかも、4個の発光体100が実装されている半導体型光源50を使用することにより、灯具を5個から4個に減らしても、複数個のパートの曲路用配光パターンをスムーズに連続的につなげることができるので、配光むらがない合成された全体の曲路用配光パターンCPが得られる。
【0041】
図12は、4個の灯具を配置した車両用灯具10Rを示す説明図である。この車両用灯具10Rにおいて、1番側方側の第1灯具L11Rの光軸Z11−Z11は、車両CのセンターラインCLとほぼ平行に向いている。2番以降の第2、第3、第4灯具L12R、L13R、L14Rの光軸Z12−Z12、Z13−Z13、Z14−Z14は、前記第1灯具L11Rの光軸Z11−Z11を基準として車両Cの側方側Oに徐々に振り向けられている。そして、第3灯具L13Rの光軸Z13−Z13は、第2灯具L12Rの光軸Z12−Z12よりも側方側Oに大きく振り向けられている。また、第4灯具L14Rの光軸Z14−Z14は、第3灯具L13Rの光軸Z13−Z13よりも側方側Oにさらに大きく振り向けられている。
【0042】
この4個の灯具L11R、L12R、L13R、L14Rからなる車両用灯具10Rは、前記の5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5Rからなる車両用灯具1L、1Rとほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、光源として、複数個の発光体100が実装されている半導体型光源50を使用することにより、前記の車両用灯具1L、1Rとほとんど変わらない作用効果を達成することができる。
【0043】
なお、この実施例においては、5個の灯具L1R、L2R、L3R、L4R、L5R、L1L、L2L、L3L、L4L、L5Lと、ヘッドランプユニットLU、LDとから構成されているいわゆるフロントコンビネーションランプの車両用灯具について説明するものである。ところが、この発明においては、複数個の灯具を単独とする車両用灯具でも良い。
【0044】
また、この実施例においては、ヘッドランプユニットLU、LDから出射される基本配光パターンがすれ違い用配光パターンLPについて説明するものである。ところが、この発明においては、ヘッドランプから出射される基本配光パターンとして、モータウエイ用配光パターンや走行用配光パターンでも良い。
【0045】
さらに、この実施例においては、半導体型光源5、50としてLEDについて説明するものである。ところが、この発明においては、半導体型光源としてEL(有機EL)でも良い。
【0046】
さらにまた、この実施例においては、光源として半導体型光源5、50を使用するものである。ところが、この発明においては、光源として、ハロゲンバルブ、白熱バルブなどを光源としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示す説明図である。
【図2】同じく車両用灯具を装備した車両を示す平面図である。
【図3】同じくランプレンズを取り除いた状態の正面図である。
【図4】同じく灯具を示す説明図である。
【図5】同じく車両用灯具の構成を示すブロック図である。
【図6】同じく各コーナリングランプから出射されるスクリーン上の曲路用配光パターンを示す説明図である。
【図7】同じく5個のコーナリングランプから出射される曲路用配光パターンを合成したスクリーン上の曲路用配光パターンを示す説明図である。
【図8】同じく曲路用配光パターンが合成されたスクリーン上のすれ違い用配光パターンを示す説明図である。
【図9】同じく5個のコーナリングランプから出射される曲路用配光パターンを合成した道路上の曲路用配光パターンを示す説明図である。
【図10】同じく曲路用配光パターンが合成された道路上のすれ違い用配光パターンを示す説明図である。
【図11】半導体型高原の変形例を示す説明図である。
【図12】4個の灯具からなる車両用灯具を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1L、1R、10R 車両用灯具
2 灯室
3 ランプハウジング
4 ランプレンズ
5、50 半導体型光源
6 レンズ
7、8 ホルダ
9 基板
10、100 発光体
11 光透過部材
12、13 反射面
14 取付ブラケット
15 ピボット機構
16 上下方向の光軸調整機構
17 左右方向の光軸調整機構
18 ヘッドランプスイッチ
19 操舵角センサー
20 車速センサー
21 GPSレシーバー
22 撮像装置
23 コントロールユニット
C 車両
F 前側
B 後側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
I 車両の中央側
O 車両の側方側
CL 車両のセンターライン
HL−HR 左右の水平線
VU−VD 上下の垂直線
L0 灯具
L1R、L11R 右側の第1灯具
L2R、L12R 右側の第2灯具
L3R、L13R 右側の第3灯具
L4R、L14R 右側の第4灯具
L5R 右側の第5灯具
L1L 左側の第1灯具
L2L 左側の第2灯具
L3L 左側の第3灯具
L4L 左側の第4灯具
L5L 左側の第5灯具
LU、LD ヘッドランプユニット
LP すれ違い用配光パターン
CP 曲路用配光パターン
CP1 第1曲路用配光パターン
CP2 第2曲路用配光パターン
CP3 第3曲路用配光パターン
CP4 第4曲路用配光パターン
CP5 第5曲路用配光パターン
HZ ホットゾーン
Z−Z 光軸
Z1−Z1、Z11−Z11 第1光軸
Z2−Z2、Z12−Z12 第2光軸
Z3−Z3、Z13−Z13 第3光軸
Z4−Z4、Z14−Z14 第4光軸
Z5−Z5 第5光軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の灯具により曲路用配光パターンを出射する車両用灯具において、
前記複数個の灯具は、車両の側方側から車両の中央側にかけて配置されており、
1番側方側の前記灯具の光軸は、車両のセンターラインとほぼ平行に向いており、
2番以降の前記灯具の光軸は、1番側方側の前記灯具の光軸を基準として車両の側方側に徐々に振り向けられている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
車両が走行する曲路の曲線半径を検知して曲線半径検知信号を出力する曲線半径検知装置と、
前記曲線半径検知装置からの曲線半径検知信号に基づいて調光制御信号を出力する調光制御装置と、
前記調光制御装置からの調光制御信号に基づいて前記複数個の灯具からの出力光束を増減して前記曲路用配光パターンの範囲をほぼ変えずにホットゾーンの位置を変える調光装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数個の灯具は、
1個もしくは複数個の発光体から構成されている半導体型光源と、
前記発光体からの光を反射させる反射面と、
前記反射面からの反射光を前記曲路用配光パターンの一部分を担うパート用配光パターンとして外部に出射するレンズと、
から構成されているプロジェクタタイプのランプユニットであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記基本配光パターンを外部に出射するヘッドランプと、
前記ヘッドランプの光軸と前記複数個の灯具の光軸とを一体に調整する共通の光軸調整装置と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−172829(P2006−172829A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361654(P2004−361654)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】