説明

車両用灯具

【課題】一時的に使用電力が増加するランプ機能を使用したときでも、車載バッテリに与える負荷を軽減する車両用灯具を提供する。
【解決手段】制御装置40は、灯室外にある車載バッテリ50と灯室内にあるキャパシタから電力を受け取り、光源14の点消灯を制御する。制御装置40は、車両用灯具の作動状態に応じて、車載バッテリ50とキャパシタのいずれから光源14に電力を供給させるかを選択可能に構成される。制御装置40は、光源14を点滅させるとき、または光源14の照度を一時的に増大させるとき、車載バッテリ50とキャパシタの両方から光源14に電力を供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される電装部品の増加に伴い、自動車用の蓄電池として、エネルギー密度が高く充放電性能に優れたリチウムイオンキャパシタが注目されつつある。また、高性能のキャパシタと従来の鉛蓄電池とを組み合わせることで、車両用電源装置としての性能を改善することも試みられている。例えば、特許文献1には、バッテリと電源用のキャパシタ装置とを併用する車両用電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−12728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用灯具は、単に点灯され続けるだけでなく、点消灯を繰り返したり光量を増大させるなど、一時的に使用電力が増加するような使われ方をすることがある。一般に、車載バッテリとして使われる鉛蓄電池等は、出力の一時的な増加が頻繁に生じると負荷がかかり、バッテリの容量や寿命等の性能が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、一時的に使用電力が増加するランプ機能を使用したときでも、車載バッテリに与える負荷を軽減する車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、灯室内に配置される光源と、灯室外にある車載バッテリと灯室内にあるキャパシタから電力を受け取り、前記光源の点消灯を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、車両用灯具の使用電力が一時的に増大する場合、車載バッテリとキャパシタの両方から光源に電力を供給させる。
【0007】
一般に、鉛蓄電池等のバッテリに比べて、キャパシタは電流の放出頻度が高くても、容量や寿命などの性能の劣化が少ないという特性を有している。そこで、一時的に使用電力が増大するような場合に、その増加分をキャパシタに負担させることで、車載バッテリに与える負荷を軽減することができる。
【0008】
制御装置は、光源を点滅させるとき、または光源の照度を一時的に増大させるとき、車載バッテリとキャパシタの両方から光源に電力を供給してもよい。光源を点滅させるときには、例えばパッシングやハザードランプの点灯時が含まれる。光源の照度を一時的に増大させるときには、例えばモーターウェイモードにおける照度の増加時が含まれる。
【0009】
光源の前方でシェードを移動させて配光パターンを変化させるシェード駆動モータをさらに備え、制御装置は、キャパシタからシェード駆動モータに電力を供給させてもよい。これによると、配光パターン変化時のシェード駆動モータの駆動により車載バッテリに負荷がかかることがなくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両用灯具の使用電力が一時的に増大する場合、車載バッテリとキャパシタの両方から光源に電力を供給させることで、車載バッテリに与える負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具の内部構造を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る別の車両用灯具の内部構造を説明する概略断面図である。
【図3】車両用灯具ユニット内の各構成要素間、および車両側に搭載される機器との間の接続を示す模式的な回路図である。
【図4】車両用灯具がハイビームとして使用されている場合の電力供給の切替を説明する表である。
【図5】モーターウェイモードを有する車両に設置されたロービームとして使用される車両用灯具における電力供給の切替を説明する表である。
【図6】モーターウェイモードを有する車両において、図2のシェード付きの車両用灯具を使用するときの電力供給の切替を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具100の内部構造を説明する概略断面図である。図1は、灯具の光軸Xを含む鉛直平面によって切断された断面を示している。車両用灯具100は、車両の車幅方向の左右に一灯ずつ配置されるハイビーム用灯具またはロービーム用灯具である。
【0013】
車両用灯具100は、車両前方および後方に開口部を有するランプボディ12と、このランプボディ12の前方開口部を覆う透明のアウターカバー18と、ランプボディ12の後方開口部を覆うキャップ13とで形成される灯室22を有する。灯室22には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット10が収納されている。
【0014】
灯室22の内壁面、例えば灯具ユニット10の下方位置には、灯具ユニット10の点消灯制御を実行する制御装置40が配置されている。
【0015】
灯具ユニット10は、光源14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17および投影レンズ20で構成される。光源14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、光源14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16は光源14から放射される光を反射する。光源14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、投影レンズ20へと導かれる。
【0016】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸X上に配置され、光源14は投影レンズ20の後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具ユニット前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0017】
平板状のキャパシタ46aは、灯具ユニット10の下部とランプボディ12の底面との間の隙間に配置される。同じく平板状のキャパシタ46bは、灯具ユニット10の後部とキャップ13との間の隙間に配置される。
【0018】
キャパシタ46a、46b(以下、合わせて「キャパシタ46」と呼ぶ)は、例えばリチウムイオンキャパシタである。リチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度および出力密度が高く高容量のキャパシタとして知られており、光源14等への電力の供給用途に適している。個々のリチウムイオンキャパシタは、セパレータを介して積層された正極および負極をパッケージ材で封止して、平板状またはフィルム状になるように成形されている。このようなリチウムイオンキャパシタの構造自体は周知なので、本明細書では詳細な説明を省略する。なお、略平板状またはフィルム状に成形することができれば、リチウムイオンキャパシタ以外のキャパシタを使用してもよい。
【0019】
このように、灯具に電力を供給するキャパシタと、キャパシタを制御する制御装置とを車両用灯具ユニットの灯室内に設けることで、車両用灯具ユニットと車体間の配線が簡素になり、車体への取り付けが容易になる。
【0020】
キャパシタ46は、一例として、図1に示すような略平板状またはフィルム状に加工された薄型であることが好ましい。略平板状に成形されたキャパシタを採用することで、キャパシタを積層したり折り曲げたりして、灯室内の限られた空間に多数のキャパシタを搭載して蓄電容量を高めることができる。しかしながら、灯室内の空間に配置することができれば、キャパシタは任意の形状であってよい。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る別の車両用灯具200の内部構造を説明する概略断面図である。車両用灯具200は、以下で説明するものを除き、図1で説明した車両用灯具100と同様の構成を備える。
【0022】
図2の構成では、灯具ユニット10は、回転シェード36bを含むシェード機構36をさらに備える。光源14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部が回転シェード36bを経て投影レンズ20へと導かれる。シェード機構36の回転制御は制御装置40により実行される。
【0023】
回転シェード36bは、回転軸36aを中心にシェード回転モータ(図示せず)により回転される円筒形状の部材であり、円筒の外周面上に板状のシェードプレート(図示せず)を複数保持している。回転シェード36bは、その回転角度に応じて投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面の位置にシェードプレートのいずれか一つを移動させることができる。そして、回転シェード36bの回転角度に対応して光軸X上に位置するシェードプレートの稜線部の形状に従う配光パターンが形成される。形成される配光パターンは、例えばロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、モーターウェイモード(後述する)用配光パターンなどである。
【0024】
図3は、車両用灯具100、200の各構成要素間および車両側に搭載される機器との間の接続を示す模式的な回路図である。図中、シェード駆動モータ36cは、車両用灯具200のみに含まれる。
【0025】
鉛蓄電池等の車載バッテリ50は、制御装置40内のスイッチ42と接続される。スイッチ42は、キャパシタ46、光源14、シェード駆動モータ36cとも接続される。
【0026】
車体と車両用灯具100との間には、CAN(Car Area Network)60と切替制御部44との間でデータを送受信するための通信経路が設けられている。切替制御部44は、例えばウインカーレバーの位置情報、ハザードランプスイッチのオンオフ情報、モーターウェイモード切替スイッチのオンオフ情報、車速センサ、車載バッテリ50の蓄電量などの情報をCAN60から取得する。また、切替制御部44は、キャパシタ46の蓄電量の情報も取得する。切替制御部44は、これらの情報に基づきスイッチ42を操作するように構成される。
【0027】
スイッチ42は、切替制御部44からの指令に応じて、車載バッテリ50またはキャパシタ46のいずれかと、光源14またはシェード駆動モータ36cとを接続できるように構成されている。したがって、スイッチ42を切り替えることで、切替制御部44は、車載バッテリ50から光源14への給電、キャパシタ46から光源14への給電、キャパシタ46からシェード駆動モータ36cへの給電、車載バッテリ50によるキャパシタ46の充電のうち一つまたは複数を選択することができる。
【0028】
切替制御部44は、車両用灯具の作動状態に応じて、車載バッテリ50とキャパシタ46のいずれから、光源14およびシェード駆動モータ36cに電力を供給するかを決定する。より具体的には、車両用灯具の光源14がパッシングやハザードを出すときのように点滅されるとき、または車両用灯具の使用電力が一時的に増大するときには、キャパシタ46から光源14またはシェード駆動モータ36cに電力が供給されるようにスイッチ42を切り替える。
【0029】
以下、車両用灯具の作動状態に応じた切替制御部44による電力供給の切替の実施例について説明する。
【0030】
図4は、車両用灯具100がハイビーム用ランプである場合の電力供給の切替を説明する表110を示す。通常のハイビーム時、すなわち光源14を点灯し続ける場合、切替制御部44は、車載バッテリ50から光源14に電力が供給されるようにスイッチ42を切り替える。パッシング時またはハザード時、すなわち光源14を点滅させる場合、切替制御部44は、車載バッテリ50およびキャパシタ46の両方から光源14に電力が供給されるようにスイッチ42を切り替える。キャパシタの蓄電量が所定値以下となりキャパシタの充電が必要と切替制御部44が判断した場合、車載バッテリ50からキャパシタ46に充電されるようにスイッチ42を切り替える。
【0031】
図5は、モーターウェイモードを有する車両に搭載された、ロービーム用ランプとして使用される車両用灯具100における電力供給の切替を説明する表120を示す。ここで、「モーターウェイモード」とは、高速道路の走行時に灯具の照度を高めるモードであり、ユーザによる切替スイッチの操作に応じて、または車速が所定値を超えた場合に自動的に選択される。
【0032】
通常のロービーム時、すなわち光源14を点灯し続ける場合、切替制御部44は、車載バッテリ50から光源14に電力が供給されるようにスイッチ42を切り替える。モーターウェイモード時、すなわち光源の照度を増大させる場合、切替制御部44は、車載バッテリ50およびキャパシタ46の両方から光源14に電力が供給されるようにスイッチ42を切り替える。キャパシタ46の充電が必要と切替制御部44が判断した場合、車載バッテリ50からキャパシタ46に充電されるようにスイッチ42を切り替える。
【0033】
図6は、モーターウェイモードを有する車両に搭載された、配光可変機能付きの車両用灯具200における電力供給の切替を説明する表130を示す。この組み合わせでは、モーターウェイモードの選択時、光源14の照度を高める代わりに、高速走行に適した配光パターンを実現するシェードが焦点位置に来るようにシェード駆動モータ36cが作動する。
【0034】
通常のロービーム時、すなわち光源14を点灯し続ける場合、切替制御部44は、車載バッテリ50から光源14に電力が供給されるようにスイッチ42を切り替える。モーターウェイモード時には、切替制御部44は、車載バッテリ50から光源14に電力が供給されるとともに、キャパシタ46からシェード駆動モータ36cに電力が供給されるように、スイッチ42を切り替える。キャパシタ46の充電が必要と切替制御部44が判断した場合、車載バッテリ50からキャパシタ46に充電されるようにスイッチ42を切り替える。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、光源が点滅されたり、一時的に光源の照度が増大したり、またはシェード駆動モータが駆動されるときのように、車両用灯具の使用電力が一時的に増加するときに、車載バッテリのみからではなくキャパシタからも光源またはモータに電力が供給されるようにした。一般に、鉛蓄電池等のバッテリに比べて、キャパシタは電流の放出頻度が高くても、容量や寿命などの性能の劣化が少ないという特性を有している。そこで、一時的に使用電力が増大するような場合に、その増加分をキャパシタに負担させることで、車載バッテリの性能劣化を抑制することができる。
【0036】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0037】
実施の形態では、ハイビームまたはロービームとして用いられる車両用灯具について説明したが、ターンランプやブレーキランプなどの点滅動作のある他の車両用灯具についても本発明を適用することができる。
【0038】
図1および図2に示したように、灯室内の空いた空間にキャパシタ46を配置する代わりに、ランプボディやエクステンション自体を、所定の形状に折り曲げられた平板状キャパシタで形成するようにしてもよい。平板状のキャパシタを折り曲げて灯室を形成する構造材として代用することで、灯室内の空間体積が小さく十分な量のキャパシタを配置できない場合でも、キャパシタを増やして蓄電容量を増大させることができる。
【0039】
車載バッテリから車両用灯具への給電が非接触方式で行われてもよい。例えば、車載バッテリ50に接続された送電端子と、スイッチ42に接続された受電端子とを、ランプボディ12の車両後方側の壁面を挟んで対向して配置し、送電端子と受電端子の間で非接触伝送を行うようにしてもよい。非接触での電力供給は、例えば、送電端子と受電端子とをコイルで構成し、一方のコイルに電流を流したときに発生する磁束を介して隣接する他方のコイルに起電力を発生させる電磁誘導方式によって行ってもよい。または、電流を電磁波に変換し、アンテナを介して送受信する電波方式などの、既知のまたは将来開発される任意の技術を利用することができる。
【0040】
実施の形態では、配光パターンを変化させるためにシェードを移動させるシェード駆動モータについて述べたが、任意の他のアクチュエータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
12 ランプボディ、 14 光源、 16 リフレクタ、 18 アウターカバー、 36 シェード機構、 36c シェード駆動モータ、 40 制御装置、 42 スイッチ、 44 切替制御部、 46a、46b キャパシタ、 50 車載バッテリ、 100、200 車両用灯具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯室内に配置される光源と、
灯室外にある車載バッテリと灯室内にあるキャパシタから電力を受け取り、前記光源の点消灯を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、車両用灯具の使用電力が一時的に増大する場合、前記車載バッテリと前記キャパシタの両方から前記光源に電力を供給させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記制御装置は、前記光源を点滅させるとき、前記車載バッテリと前記キャパシタの両方から前記光源に電力を供給させることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記制御装置は、前記光源の照度を一時的に増大させるとき、前記車載バッテリと前記キャパシタの両方から前記光源に電力を供給させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源の前方でシェードを移動させて配光パターンを変化させるシェード駆動モータをさらに備え、
前記制御装置は、前記キャパシタから前記シェード駆動モータに電力を供給させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82355(P2013−82355A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224221(P2011−224221)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】