説明

車両用隙間閉塞部材及びこれを用いた隙間閉塞部材付き車両窓用板状体

【課題】車両の走行中に発生する擦れ音や叩き音などの異音発生を低減し、かつ、耐傷付き性をはじめとした機械的性能に優れる隙間閉塞部材を提供することを目的とする。
【解決手段】窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、温度変化に対する硬度変化の小さく、静止摩擦係数の小さい材料を主に用いることにより異音発生を低減し、耐傷付き性など機械的性能に優れる隙間閉塞部材を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓等に用いられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と車両窓用板状体の間の隙間を閉塞する樹脂製隙間閉塞部材及びこれを用いた隙間閉塞部材付き車両窓用板状体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の窓であるウインドシールドやサイドガラス等と車両本体の隙間を埋めるモール等の隙間閉塞部材においては、黒色の軟質塩化ビニル樹脂(以下PVC)など塩素系の熱可塑性エラストマー(以下TPEとも言う)が多用されている。しかし、PVCは、その耐久性や低温衝撃性能の更なる向上が望まれており、さらに他のTPEに比べ比重が高いという問題もあり、PVCより軟質の塩素系TPEは、接着性に劣るという問題がある。また、前述の塩素を含有した材料は焼却の際に腐食性のガスを発生しリサイクルし難いという問題もある。
【0003】
一方、自動車等の車両室内における静粛性への要求の高まりと共に、車両の発生するエンジン音、ロードノイズなどとともに、高速走行時における支配的なノイズである、車体のねじれなどで隙間閉塞部材のシール部が車両本体と接触することにより発生する擦れ音、叩き音、及び、風切り音などの異音の低減が強く望まれている。
【0004】
これらの異音は、走行中に車両本体とウインドシールドやサイドガラスに取り付けられた隙間閉塞部材のシール部が擦れたり、ばたついたりして発生する。これは、隙間閉塞部材のシール部に硬質な樹脂を用いた場合や、外気温が低く材料が硬化してしまうような使用環境において顕著である。
【0005】
PVCなど従来の樹脂材料は、温度変化に対する硬度変化(以下硬度の温度依存性という)が大きく、自動車等に求められる使用温度域で所望の硬度を得ることは難しい。また、隙間閉塞部材全体を軟らかくして異音を低減しようとすると、耐傷付き性が低下したり、ガラスとの接着性が低下したり、ガラス板と車両本体の適切な間隔を確保できない、成形時の表面性状が低下するなどの様々な問題が発生する。加えて、シール部も同一材料の隙間閉塞部材を形成した場合、シール性の低下も懸念される。
【0006】
そこで、硬質なモール本体にモール本体よりも軟質なリップ状のシール部を形成して走行中の異音を低減する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0007】
しかしながら、モール本体より軟質な樹脂をリップに用いる方法は、2種類以上の材料を組み合わせなくてはならず、接合部が剥がれるなどの耐久性や接着剤の選択が難しいなどの問題があった。また、設計の自由度が低下し、隙間閉塞部材の形成に手間がかかるという問題もあり、部品の品質管理が煩雑になる、リサイクルが難しいなど様々な理由から低コストこの方法を実現することは困難であった。
【0008】
このため、PVCよりも低温で硬化し難い材料を用いて、本体もシール部も同一の材料で形成される隙間閉塞部材は実現されておらず、同一材料によって形成され、様々な使用環境において所望の硬度を維持できる隙間閉塞部材が強く要望されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2002−129839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決すべくなされたものであり、硬度の温度依存性が小さく、静止摩擦係数の小さい材料を少なくとも車両本体との当接部に用いることで車両の走行中に発生する擦れ音や叩き音などの異音発生を低減し、さらに耐傷付き性をはじめとした機械的性能にも優れる隙間閉塞部材を提供することを目的とする。同時に本発明の隙間閉塞部材は、車両の軽量化に寄与し、設計の自由度が高めることができ、加えて、継ぎ目がなく耐久性にも優れ、製造及び部品管理も容易で、リサイクル性能も高く経済的な隙間閉塞部材を実現可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、車両の開口部に組付けられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、
(1)前記材料の硬度変化が次に式で表され
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
−30≦x≦80において、−0.25≦a≦0、70≦b≦85であり、
かつ、
(2)前記リップ部の静止摩擦係数μがμ≦0.14である
ことを特徴とする隙間閉塞部材を特徴とする隙間閉塞部材を提供する。
【0012】
本発明の第2の態様は、車両の開口部に組付けられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、
前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、
(1)前記材料の硬度変化が次に式で表され、
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
−30≦x≦80において、−0.2≦a≦0、74≦b≦86であり、
かつ
(2)前記リップ部の静止摩擦係数μがμ≦0.16である
ことを特徴とする隙間閉塞部材を特徴とする隙間閉塞部材を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様は、車両の開口部に組付けられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、
前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、
(1)前記材料の硬度yが
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
y=−0.2x+85、 y=−0.2x+75、 x=−30、 x=80
の直線に囲まれた範囲に含まれ
かつ
(2)前記リップ部の静止摩擦係数μがμ≦0.16である
ことを特徴とする隙間閉塞部材を特徴とする隙間閉塞部材を提供する。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記隙間閉塞部材は、同一の樹脂材料で形成される態様1、2又は3に記載の隙間閉塞部材を特徴とする隙間閉塞部材を提供する。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記材料が非塩素系熱可塑性エラストマーである態様1、2、3又は4に記載の隙間閉塞部材を特徴とする隙間閉塞部材を提供する。
【0016】
本発明第6の態様は、態様1〜5のいずれかに記載の隙間閉塞部材を用いた隙間閉塞部材付き車両窓用板状体を提供する。
【0017】
一般に、隙間閉塞部材に用いられる材料は温度に対して負の温度依存性を示す。ここで、硬度の温度依存性の小さいとは、車両の使用温度域として想定される−30〜80℃において、常温での硬度に近い値を示すことである。具体的には、20℃における汎用PVCと同等の硬度60〜90程度となることが最も望ましい。
【0018】
又は、硬度の温度依存性が従来の塩素系TPEより小さいこと、具体的には、材料の硬度変化が次に式で表されるとき
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
傾きaの値が、基本的に負の値であるが、−0.25以上であることである。さらに好ましくは−0.2以上であることである。また、このときの切片bが70以上であれば、高温硬度がPVCの硬度よりも高く保持でき、76≦であれば、80℃での硬度を60よりも硬く制御することが容易になる。bが85以下であれば高温硬度がPVCの硬度よりも低く保持でき、76≦であれば、−30℃での硬度を90よりも柔らかく制御することが容易になる。
【0019】
静止摩擦係数の小さい材料とは、現在異音低減用の材料として隙間閉塞部材のリップ部に用いられている材料と比べて、静止摩擦係数が同等以下であることである。具体的には常温において、静止摩擦係数μの値が0.16以下であれば汎用の塩素系TPE同等の異音低減効果が期待でき、さらに好ましくは0.14以下であれば従来の隙間閉塞部材のリップ部の以上の異音低減効果が期待できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両に用いられる隙間閉塞部材は、硬度の温度依存性が小さく、かつ、静止摩擦係数の小さい材料を用いて少なくとも車両本体との当接部を形成することにより、車両の走行中に発生する擦れ音や叩き音などの異音発生を低減することができる。また、少なくとも隙間閉塞部材の本体部とリップ部を同一の材料で形成することにより耐久性にも優れ、耐傷付き性など機械的性能に優れる隙間閉塞部材を実現する。同時に、本発明の隙間閉塞部材は、車両の軽量化に寄与し、設計の自由度が高めることができ、加えて、製造及び部品管理も容易で、リサイクル性能も高く経済的な隙間閉塞部材を実現可能にする。
【0021】
硬度の温度依存性が小さいことにより、車両の使用温度域において所望の材料硬度を得ることができる。その結果、硬度が高い場合に顕著に発生する車両本体と隙間閉塞部材の擦れ音などの異音を低減に効果がある。また、高温での使用においても適切な硬度を維持できるため、高速走行時のシール部のばたつきによる叩き音などの異音を低減に効果がある。また、硬度変化の大きな材料に比べ耐傷付き性が向上すると共に、窓用板状体の組み付け後の位置精度が向上する、車両本体とのシール性が向上するなどの効果が得られる。さらに、窓用板状体の車両本体への組み付け工程において、作業性が向上する。
【0022】
静止摩擦係数の小さい材料を用いることにより、隙間閉塞部材と車両本体の当接面での摩擦によって発生する擦れ音や叩き音の低減に効果がある。また、組み付け性が向上すると共に表面の滑りが良くなったことで表面性状の向上も期待できる。
【0023】
隙間閉塞部材の少なくとも本体部とリップ部を同一の材料で形成することにより接着剤の選択が容易となる。また、隙間閉塞部材全体を同一の材料で形成した構成では、継ぎ目がないため継ぎ目からの剥離などによる破壊の心配がなくなり耐久性が高まる。また、材料及び部品点数が削減されて製造が容易になると共に設計の自由度が高まる。さらに、製造工程及び部品管理も容易になると共に廃棄する際に分別の必要がなくなりリサイクル性能も高まり、低コストの隙間閉塞部材を実現可能にする。
【0024】
隙間閉塞部材の材料に非塩素系熱可塑性エラストマーを用いた構成では、従来のPVC製隙間閉塞部材に比べて車両の軽量化に寄与する。また、接着性が向上し車両本体への組み付け信頼性が向上すると共に組み付け作業における接着方法の制限を緩和できる。
【0025】
また、前述の隙間閉塞部材を用いた隙間閉塞部材付き車両窓用板状体を用いることにより、前述の効果に加え、車両本体の組立工程における部品点数を削減し車両本体への組み付けが容易な隙間閉塞部材付き車両窓用板状体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について図を参照しながら詳細に説明する。
なお、本発明において、隙間閉塞部材とは、車両窓用板状体と車両本体開口部の隙間を閉塞するために用いられる、ガスケット、モール、ウェザーストリップあるいはシールゴム等を総称したものであり、主に樹脂材料によって形成される部材を指すこととする。
【0027】
以下ここでは、本発明を自動車のウインドシールド(フロントガラス)用のモールに用いた場合を例に説明する。よって、以下の例においてウインドシールドに用いられるウインドウガラスの接着剤で固着された側を車内側(図2における下側)、その反対側を車外側、ウインドウガラスの端部に向かう方向を周縁側、ウインドウガラスの中心に向かう方向を中心側、車両に組付けられたときの上下方向を上側、下側と呼ぶこととする。
【0028】
図1は、本発明の隙間閉塞部材であるモール3を窓用板状体であるウインドウガラス2の周縁に取付けた自動車10の斜視図である。ウインドウガラス2は、車両本体1の開口部に組付けられ、モール3は、ウインドウガラス2と車両本体1の隙間を塞ぐようにウインドウガラス2の上下辺と側辺に沿って取り付けられる。
【0029】
図2は、本発明にかかる隙間閉塞部材の構成の一例を示した断面図である。図2に示したようにウインドウガラス2の周縁部にモール3を備える。モール3はウインドウガラス2と固着される本体部3aとウインドウガラス2の外周側に張り出して車両本体の内壁面42と当接するリップ部3bを備える。また、ウインドウガラス2の車内側面には周縁部に沿って帯状に接着剤仕切り部材20が設けられ、その外周側に塗布された接着剤22によってウインドウガラス2及びモール3が車両本体のフランジ面40に固着される。
【0030】
図3は、本発明にかかる隙間閉塞部材の他の構成の一例を示した断面図である。図2の態様に加えて、ウインドウガラス2の周縁部にモールにカバー部3cを備える構成である。モール3はウインドウガラス2と固着される本体部3aと、ウインドウガラス2の周縁側に張り出して車両本体の内壁面42と当接するリップ部3bと、ウインドウガラス2の外周側に張り出して車両本体1とモール本体3aの隙間を隠蔽するように形成されるカバー部3cを備える。カバー部3cはモールの本体部3aから連続して形成され、車両本体の車外側表面44とウインドウガラス2の段差を小さくするように本体部3aの上面から車両本体の車外側表面44まで滑らかに連続する断面略帆状に形成される。
【0031】
本発明においてモール3に用いられる樹脂は、熱可塑性であって、硬度の温度依存性が小さく、静止摩擦係数の小さい材料であり、成形後に隙間閉塞部材として必要な機械的特性、耐寒性、耐候性を示すものが好適に用いられる。本発明にかかるモールは、該材料を用いて射出成形又は押し出し成形によって成形することが可能である。これによれば、隙間閉塞部材を効率よく製造できる。また、隙間閉塞部材は熱可塑性エラストマーであるので界面の接着性にも優れる。
【0032】
これらの諸条件を満たす樹脂原料としては、ポリエチレン若しくはポリプロピレン、塩素含有高分子化合物系の熱可塑性樹脂を用いることができる。しかし、前述の条件を満たし、かつ、環境に対する配慮から塩素等のハロゲンを含まない樹脂が好ましく、リサイクル性等の観点からポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0033】
また、材料の静止摩擦係数は、前述の樹脂材料に公知の滑材を添加、又は塗布して表面改質処理を行うことにより静止摩擦係数を低下させ必要な特性を付与することも可能である。この場合に用いられる滑材は、公知のシリコーン粒子、アクリルシリコーン樹脂、フッ素系潤滑剤などを用いることができる。
【0034】
また、ここでは、モール3を四周に沿って設ける例を示したが、下辺を除く3辺にモール3を設けてもよい。また、モール3は、例えば辺ごとに複数の部材で構成してもよく、一体の部材でもよい。また、モール3にレインガーターなどの付加機能を備えてもよい。
【0035】
また、モール3のウインドウガラス2との接着面については、図2及び3ではウインドウガラス2を挟持するように車外側面、車内側面、小口面の3面にモールを設けた例を示した。しかし、本発明はこれに限定されず、ウインドウガラス2との接触面は、上記の面のうちいずれか1面のみ、車内側面と小口面や車内側面と車外側面など2面を選択的に用いてもよい。
【0036】
ウインドウガラス2は、形状的には平板状又は湾曲状のもの、構成的には普通単板ガラス、強化ガラス、複層ガラス、合わせガラス、金属線入りガラスなど、材質的には無機ガラスの他、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレート類等のいわゆる有機透明樹脂ガラス、これらの単独又は2種以上の積層物等を用いることができる。
【0037】
また、所定形状に成形された色付きの透明又は無色透明なガラス(複数枚のガラス板を樹脂からなる中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスを含む)、若しくは、同様の合成樹脂製の板材であるウインドウガラス2には、各種フィルム(例えば、断熱フィルムや撥水フィルム、UVカットフィルム、スモーク用フィルム等)が付与されてよく、また、アンテナ線や熱線等が付与されてもよい。また、周縁には視界隠蔽用の着色層(例えば濃色セラミック層)が形成されてよい。また、周縁部には、可視光を低減する染め分け層(サンシェード)を備えてもよく、ウインドウガラス2の染め分け層は上端に沿って帯状に形成されることが好ましい。
【0038】
さらに、モ−ル3は、緩衝部材、表面材、クリップや芯材などのインサート部材を備えてもよく、また、接着剤や樹脂材料の仕切り部材など、モール3に付属しウインドウガラス2と車両本体1の間で用いられる様々な部材を備えてもよい。
【0039】
さらに、ウインドウガラスに無機ガラスを用いる場合、ウインドウガラスの周縁部に事前にプライマーを塗布してもよい。シランカップリング剤を含有するウレタン系のガラス接着用プライマーであることが好ましい。これによれば、ウレタン系のプライマーを用いることにより、プライマーと接着性付与層とが充分に接着する。また、シランカップリング剤を含有することで、特にウインドウガラス2が無機ガラスである場合に、ガラス側との充分な接着強度を得ることができる。
【0040】
また、本発明の成形工程におけるウインドウガラス2の温度が120〜200℃となるように行うことが好ましい。上記の温度範囲のガラスウインドウを用いて成形を行うことにより、不要な隙間閉塞部材の加熱を防ぎつつ、隙間閉塞部材とウインドウガラス2との充分な接着強度を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の具体的態様を例により説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の組成物は、各成分を機械的に溶融混練する通常の方法によって製造することができる。かかる方法に用いられる溶融混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ロール等を挙げることができる。溶融混練は好ましくは145〜300℃の温度範囲で実施される。また、組成物の射出温度は160〜220℃、射出圧力は装置によって適宜設定可能である。
【0042】
[例1]
非塩素系TPEとして、硬度75のスチレン系熱可塑性樹脂を用いて射出成形装置で隙間閉塞部材付きガラス板(窓用板状体)の作成を行った。ガラス板は、150×25mm×厚さ5mmの強化ガラス板を用い、事前にガラス板の周縁部にプライマーを塗布して金型に装着し、ガラス板の周縁部に金型の内壁によってキャビティ空間を形成した。射出成形時のガラス板の温度が80℃になるようにガラス板を加熱した後、上記樹脂組成物キャビティ内に射出し、固化させ隙間閉塞部材付きウインドウガラスを得た。また、同様に射出成形により、幅50mm、長さ250mm、厚さ2mmの平状のシート(試験体A)を製造した。この試験体A及び、これから切り出した試験体B、Cを用いて後述の方法で、各温度のおける硬度、静止摩擦係数、初期グロス、及び、耐傷付き性能の試験を行った。
【0043】
[例2]
非塩素系TPEとして、硬度65のオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて行った以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0044】
[例3]
非塩素系TPEとして、硬度65のオレフィン系熱可塑性樹脂を用い、射出成形前にシリコーン粒子2%添加して表面改質処理を行った以外は例2と同様に試験を行った。
【0045】
[例4]
非塩素系TPEとして、硬度65のオレフィン系熱可塑性樹脂を用い、射出成形前にシリコーン粒子4%添加して表面改質処理を行った以外は例2と同様に試験を行った。
【0046】
[例5]
非塩素系TPEとして、硬度65のオレフィン系熱可塑性樹脂を用い、射出成形後にアクリルシリコーン樹脂を塗布して表面改質処理を行った以外は例2と同様に試験を行った。
【0047】
[例6]
非塩素系TPEとして、硬度65のオレフィン系熱可塑性樹脂を用い、射出成形後にフッ素系潤滑剤を塗布して表面改質処理を行った以外は例2と同様に試験を行った。
【0048】
[例7]
非塩素系TPEとして、硬度60のオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて行った以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0049】
[例8]
塩素系TPEとして、硬度60の塩素化エチレン熱可塑性樹脂を用いて行った以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0050】
[例9]
塩素系TPEとして、硬度70の塩素化エチレン熱可塑性樹脂を用いて行った以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0051】
[例10]
塩素系TPEとして、硬度65のポリ塩化ビニル系熱可塑性樹脂を用いて行った以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0052】
[例11]
塩素系TPEとして、硬度80のポリ塩化ビニル系熱可塑性樹脂を用いて行った以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0053】
以上の結果を表1〜3に示した。なお、例1、例4及び例5が実施例、例2、例3及び6〜11が比較例にあたる。各例のモール(隙間閉塞部材)材料の評価にあたっての評価方法は以下の通りである。
硬度: 平板状の試験体A(50mm×250mm×2mm)からダンベル状試験片(JIS K6251に記載のゴム3号形)を打ち抜き、これを用いて、JIS K6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法)に準じて、島津製作所社製、「デュロメーターA 硬度計」)を使用して測定した。
【0054】
静止摩擦係数:図4は、摩擦係数の測定装置30を示した図である。図に示したように、治具31を用いて平板状の試験体B(40mm×80mm×2mm)の上端部を垂直に挟持する。挟持した試験体Bに対して水平方向からボデー用塗装板を100mm/secで移動しながら、試験体Bとガラス板Gの接触長さがLとなるように移動させる。このとき、架台33重り35を載せ平板状の試験体Bに200gの荷重がかかるようにして加重計37を用いて静止摩擦係数を測定し接触長さLで割った値とした。
【0055】
表面の傷付き性: 底面が20×20mmの金属製治具の底面にJIS L0803(染色堅ろう度試験用添付しろ布)に規定された綿帆かなきん3号を巻きつけ上から5Nの荷重を加え、平板状の試験体C(40mm×110mm×2mm)の表面を最大で100回こすり、傷付き程度を目視観察で評価し、傷の程度として、傷がない場合を「1」とし、傷が僅かに見える場合を「2」、傷がやや目立つ場合を「3」、傷が明らか目立つ場合を「3」、傷が著しい場合を「5」とする5段階評価で行った。
【0056】
表面光沢(グロス): 耐擦傷性試験前後の前記平板状の試験体Cの表面を、JIS Z8741(鏡面光沢度−測定方法)の方法3(60°鏡面光沢)に準じて、表面光沢計(日本電色工業社製、グロスメーター)を用いて測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
表1はモール材料の硬度と温度の関係の測定結果及びその結果を
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
で表される直線で近似したときの近似式である。
また、表2は、前記前記近似式の傾き(a)と静止摩擦係数の測定結果を示した一覧である。
【0061】
表1及び表2示したように、他の例との対比から例1、例2〜6は、車両の使用温度域として想定される−30〜80℃において、汎用のPVCである例10、例11よりその硬度の温度依存性が小さく、例8、例9に示した異音低減用に隙間閉塞部材のリップ部に用いられている塩素化エチレンTPE相当又はそれより好ましい硬度の値及び硬度の温度依存性となっていることがわかる。
【0062】
また、同様に例1〜7は、硬度の温度依存性の大きさを示すaの値が−0.25以上で例8、例9の塩素化エチレンTPE相当以上に硬度の温度依存性が小さいことがわかる。さらに静止摩擦係数は、例8、例9と比べて同等以下であることがわかる。よって、例1、例4、例5のモール材料は、従来の異音低減用材料である塩素系TPE同等以上の異音低減効果が実現できる。
【0063】
表3は、モール材料の初期グロス値と表面の傷付き性試験結果を示した表である。例1と他の例を比較するとグロスが低下せず、加えて試験前後のグロス変化率が小さい。また、100回の傷付き試験後でも僅かに傷が見える程度であり、高い耐傷付き性と外観の高グロスとを両立している。一方で、例4は他の例に比べてグロス値が10以下と著しく小さく、グロスの変化は目視では視認し難い。つまり、高い耐傷付き性と外観のつや消し性を両立しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の非塩素系TPE製の隙間閉塞部材、及び、これを用いた隙間閉塞部材付き車両窓用板状体は、硬度の温度依存性が小さく、また、静止摩擦係数も小さい隙間閉塞部材を用いることで、車両の走行中に発生する擦れ音や風切り音の発生を低減した。また、耐傷付き性をはじめとした機械的性能に優れる隙間閉塞部材を提供する可能であり、その他モール等の隙間閉塞部材に求められる性能を十分に満たしている。また、同一材料により隙間閉塞部材を形成することにより、継ぎ目がなくなり耐久性が向上した隙間閉塞部材を実現した。よって、自動車のみならず、列車、船舶や航空機などの窓や建造物、遊戯具などの開口部など開口部と窓用板状体を備えるあらゆる場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のモール付きウインドウガラスの周縁に取付けた自動車の斜視図である。
【図2】本発明にかかる隙間閉塞部材の構成の一例を示した断面図である。
【図3】本発明にかかる隙間閉塞部材の他の構成の一例を示した断面図である。
【図4】静止摩擦係数測定装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0066】
1:車両本体
2:ウインドウガラス(窓用板状体)
3:モール(隙間閉塞部材)
3a:本体部(モール)
3b:リップ部(モール)
3c:カバー部(モール)
10:自動車
20:接着剤仕切部材
22:接着剤
40:フランジ面(車両本体)
42:内壁面(車両本体)
44:車外側表面(車両本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部に組付けられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、
前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、
(1)前記材料の硬度変化が次に式で表され
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
−30≦x≦80において、−0.25≦a≦0、70≦b≦85であり、
かつ、
(2)前記リップ部の静止摩擦係数μがμ≦0.14である
ことを特徴とする隙間閉塞部材。
【請求項2】
車両の開口部に組付けられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、
前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、
(1)前記材料の硬度変化が次に式で表され、
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
−30≦x≦80において、−0.2≦a≦0、74≦b≦86であり、
かつ
(2)前記リップ部の静止摩擦係数μがμ≦0.16である
ことを特徴とする隙間閉塞部材。
【請求項3】
車両の開口部に組付けられる窓用板状体の周縁部に取付けられ、車両本体開口部と窓用板状体の間の隙間を閉塞する隙間閉塞部材であって、
前記隙間閉塞部材は、窓用板状体に固着される本体部と車両本体と当接するリップ部を備え、少なくとも該本体部と該リップ部は同一の材料で形成されており、
(1)前記材料の硬度yが
y=−ax+b y:硬度、x:温度(℃)
y=−0.2x+85
y=−0.2x+75
x=−30
x=80
の直線に囲まれた範囲に含まれ
かつ
(2)前記リップ部の静止摩擦係数μがμ≦0.16である
ことを特徴とする隙間閉塞部材。
【請求項4】
前記隙間閉塞部材は、同一の樹脂材料で形成される請求項1、2又は3に記載の隙間閉塞部材。
【請求項5】
前記材料が非塩素系熱可塑性エラストマーである請求項1、2、3又は4に記載の隙間閉塞部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の隙間閉塞部材を用いた隙間閉塞部材付き車両窓用板状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−24249(P2008−24249A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201759(P2006−201759)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)