説明

車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造

【課題】本発明は、車両外側から車両窓用ガラス板を介して内装部品の修理等を容易に行うことができる車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造を提供する。
【解決手段】本発明は、フロントコーナーガラス10全体を車体16から取り外すのではなく、フロントコーナーガラス10のうち、内装部品の修理等において必要とする部分のみを取り外すようにした。すなわち、前記必要とする部分のフロントコーナーガラス10に切り欠き部30Aを形成し、この切り欠き部30Aに、開口部32A付きベース部材32を取り付け、このベース部材32の開口部32Aにキャップ部材24を着脱自在に係合させ、内装部品の修理等の際にキャップ部材24のみを取り外す。これにより、実施の形態のフロントコーナーガラス10によれば、車両外側からフロントコーナーガラス10を介して内装部品の修理等を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造に係り、特に自動車の車体の開口部に固定されるフロントコーナーガラス等の固定窓に適用される車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図5に示すように自動車の側方及び後方を確認するドアサイドミラーを、フロントサイドドアに取り付けるドアミラー取付構造体1が開示されている。
【0003】
このドアミラー取付構造体1は、一部に嵌込み凹部3(本発明の切り欠き部に相当)が設けられたフロントコーナーガラス2と、この嵌込み凹部3内に配置可能な取付プレート4とを備えている。取付プレート4のうち、嵌込み凹部3の周縁3aに臨む接合縁4aには接合モールド6が成形されており、この接合モールド6には、フロントコーナーガラス2の嵌込み凹部3の周縁に嵌め込み可能な嵌合溝6aが形成されている。また、この接合モールド6を取付プレート4に成形する際に、接合モールド6と一体に外縁モールド7が成形されている。接合モールド6及び外縁モールド7を一体に成形した後、フロントコーナーガラス2の嵌込み凹部3の周縁に接合モールド6の嵌合溝6aが嵌め込まれるともに、フロントコーナーガラス2の外縁に外縁モールド7の嵌合溝7aが嵌め込まれる。この際に、フロントコーナーガラス2の嵌込み凹部3の周縁に接合モールド6が接着剤で接着されるとともに、フロントコーナーガラス2の外縁に外縁モールド7が接着剤で接着される。これにより、フロントコーナーガラス2に取付プレート4が一体に組み付けられるとともに、フロントコーナーガラス2の外縁に外縁モールド7が取り付けられる。この取付プレート4に、取付孔4b、4bを利用してアウトサイドミラー(不図示)が取り付けられる。
【0004】
すなわち、特許文献1の車両窓用ガラス板は、フロントコーナーガラス2に取り付けられるアウトサイドミラーの取付構造に係るものであり、車両窓用ガラス板の一部に嵌込み凹部を形成し、この嵌込み凹部を取付プレートによって完全に封止するドアミラー取付構造が開示されている。
【特許文献1】特開2005−263030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近の自動車では、車体が占める窓の面積を大きくしたいというデザイン上の要求から、フロントコーナーガラス(フロントサイドドアの前方の車体側に固定される略三角形形状の窓ガラス:フロントベンチガラスともいう)を大型化(車体の下側までガラスを延長)したいという要求がある。
【0006】
一方で、フロントコーナーガラスを前述の如く大型化すると、車体の外装に隠された部品(以下隠ぺい部品ともいう)の修理や交換時に、それまでは車体のフェンダを取り外すことで車両外側より作業可能であった隠ぺい部品、例えばステアリングメンバーの一部品が、フロントコーナーガラスの存在によって車体外側より修理や交換が困難または不能となる場合があった。
【0007】
よって、フロントコーナーガラスを大型化した場合には、前記隠ぺい部品の修理や交換時において、大型のフロントコーナーガラス全体を車体から取り外さなければならず、また、作業後にフロントコーナーガラスを再度取り付けなければならない。よって、その取り外し/取り付け作業に手間がかかるという問題があった。更に、フロントコーナーガラスの取り外し時にフロントコーナーガラスを傷つける場合があるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、窓用ガラス板の品質や意匠の自由度を確保しながら車両外側から車両窓用ガラス板を介して隠ぺい部品の修理や交換等を容易に行うことができる車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、車両の固定窓に用いられるガラス板の周縁部に樹脂製のモールドが固着されたモールド付き車両窓用ガラス板であって、該ガラス板の一部に切り欠き部又は孔部が形成され、該切り欠き部又は孔部に、開口部付きベース部材が取り付けられ、該ベース部材の開口部にキャップ部材が着脱自在に係合されて前記ベース部材の開口部キャップ部材封止されていることを特徴とする車両窓用ガラス板を提供する。
【0010】
本発明は、車両窓用ガラス板として、ガラス板の周縁部に樹脂製のモールドを射出成形により一体成形したモールド付き車両窓用ガラス板を対象としている。本発明では、このモールド付き車両窓用ガラス板の一部に切り欠き部又は孔部を形成し、この切り欠き部又は孔部に、開口部付きベース部材を取り付けるとともに、このベース部材の開口部にキャップ部材を着脱自在に係合させてベース部材の開口部を開放可能に封止する。隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整には、前記キャップ部材をベース部材の開口部から取り外し、この開口部から隠ぺい部品にアクセスして隠ぺい部品を修理する。
【0011】
すなわち、本発明は、車両窓用ガラス板全体を車体から取り外すのではなく、車両窓用ガラス板のうち、隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整において必要とする部分(キャップ部材)のみを取り外すようにした。要するに、前記必要とする部分の車両窓用ガラス板に切り欠き部又は孔部を形成し、この切り欠き部又は孔部に、開口部付きベース部材を取り付け、このベース部材の開口部にキャップ部材を着脱自在に係合させ、隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整にキャップ部材のみを取り外す。そして、ベース部材の開口部はキャップ部材によって封止されることから、キャップ部材は、車両窓用ガラス板の一部として構成される。
【0012】
以上により、本発明の車両窓用ガラス板によれば、車両外側から車両窓用ガラス板を介して隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整を容易に行うことができる。
【0013】
本発明によれば、前記ベース部材及び前記キャップ部材は、前記キャップ部材を前記ベース部材の開口部に挿入案内するためのガイド部がキャップ部材またはベース部材の少なくとも一方に形成されており、前記それぞれのガイド部は、前記キャップ部材を前記ベース部材が係合されたときに形成する前記車両窓用ガラス板のガラス面の法線方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0014】
前述の態様は、ガラス板面との法線方向にキャップ部材を取り出そうとしても、それぞれのガイド部がストッパの機能を果たすことから、キャップ部材をベース部材から容易に取り外すことはできない。これにより、フロントコーナーガラスからキャップ部材が意味もなく取り外されるのを防止することができる。
【0015】
本発明によれば、前記キャップ部材には、薄肉部が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、キャップ部材の車体の内側面に薄肉部を形成することでキャップ部材自体の剛性を弱め、キャップ部材を車両窓用ガラス板から取り外す場合には、キャップ部材に形成されている前記薄肉部に対応する車外側面を小型のハンマー、又はドライバの柄で叩き、その衝撃力で薄肉部を破壊する。
【0017】
本発明によれば、前記車両窓用ガラス板は、フロントコーナーガラスであって、前記ベース部材が前記モールドと一体成形されることが好ましい。
【0018】
本発明の車両窓用ガラス板をフロントコーナーガラスに用いることで、フロントコーナーガラスの設けられる車両前方ドア付近に近接して設けられるインパネ部やステアリング機構などの駆動部へのアクセス性を維持したまま、窓ガラスの下端線を下げることが容易になる。その結果、意匠設計の自由度が高まり、搭乗者から見た視野が広がり開放感の高い室内を提供が可能になる。
【0019】
また、ベース部材は、ガラス板周縁部へのモールドの成形時にインサート部品として同時成形することができる。これにより、ベース部材の取り付け工程が省略できるとともに品質、意匠に優れた枠体月車両窓用ガラス板を提供できる。
【0020】
本発明によれば、前記車両窓用ガラス板に印刷された黒色遮蔽層の内縁よりも外側の位置に切り欠き部又は孔部が設けられることが好ましい。
【0021】
一般に隠ぺい層は、窓用ガラス板の周縁部に設けられるが、前述の構成では、ベース部材やキャップ部材が黒色遮蔽層を包含されるように設けられるため部品が一体化、小型化することができる。これにより意匠上各部材が目立ち難くなり外観意匠の完成度を高めることができ、コスト的にも有利になる。
【0022】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1〜5のいずれかに記載の車両窓用ガラス板が車両の固定窓に用いられ、該車両窓用ガラス板の前記キャップ部材が取り外されることにより、車外から前記ベース部材の開口部を介して治具を挿入して車両の内部にある車体の外装に隠された隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整が可能なことを特徴とする車両窓用ガラス板の取付構造を提供する。
【0023】
本発明によれば、請求項1〜5のいずれかに記載の車両窓用ガラス板が取り付けられ、該車両窓用ガラス板の前記キャップ部材が取り外されることにより、前記ベース部材の開口部を介して車両の隠ぺい部品が取り付け、取り外し可能な車両窓用ガラス板の取付構造を提供する。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造によれば、窓用ガラス板の品質や意匠の自由度を確保しながら車両外側から車両窓用ガラス板を介して隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明に係る車両窓用ガラス板及び車両窓用ガラス板の取付構造の好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、実施の形態の車両窓用ガラス板であるフロントコーナーガラス10が適用された自動車12の左側フロントサイドドア14近傍の拡大図であり、図2は、フロントコーナーガラス10近傍の拡大図である。
【0027】
図1に示すようにフロントサイドドア14は、自動車12の車体16の左側面に開閉自在に設けられ、このフロントサイドドア14の窓用開口部にサイドガラス18が開閉自在に設けられている。また、フロントサイドドア14の前部隅部には、自動車12の側方及び後方を確認するアウトサイドミラー20が設けられている。更に、実施の形態のフロントコーナーガラス10が、図2の如くフロントサイドドア14の前方で車体16の左側面に開口された固定窓用開口部22に設けられている。すなわち、このフロントコーナーガラス10は、車体16の窓用開口部22に嵌め込まれた固定の車両窓用ガラス板である。また、このフロントコーナーガラス10の正面向って右下隅部に、実施の形態の矩形状のキャップ部材24が取り付けられている。
【0028】
フロントコーナーガラス10は略三角形状に構成され、その周縁部には樹脂製のモールド26が一体成形されるとともに、このモールド26から所定量内側にかけて黒セラミック塗料による黒色遮蔽層28が印刷されている。なお、モールド26の材質としてはPVC(ポリ塩化ビニル)、TPO(オレフィン系エラストマー)、TPS(スチレン系エラストマー)等が知られている。
【0029】
このフロントコーナーガラス10は、車体16の窓用開口部22に不図示の複数本の固定用ピンを介して固定され、窓用開口部22とフロントコーナーガラス10との間の隙間が、図3に示すモールド26の周縁部に形成されたリップ部26Aによってシールされるようになっている。
【0030】
実施の形態のフロントコーナーガラス10は、図3の如く略三角形形状に形成されたガラス板30の周縁部に、樹脂製のモールド26を射出成形により一体成形したモールド付きガラス板(MAW(Module・Assy・Window):旭硝子(株)(登録商標)である。このモールド付きガラス板は、車両用窓において広く一般的に使用されている。
【0031】
また、実施の形態のフロントコーナーガラス10では、ガラス板30の左下隅部に、図2の破線で示す切り欠き部30Aが形成され、この切り欠き部30Aに、図3に示す開口部32A付きベース部材32が取り付けられている。そして、ベース部材32の開口部32Aにキャップ部材24が着脱自在に係合されてベース部32の開口部32Aが開放自在に封止されている。なお、本発明で着脱自在とは、キャップ部材の一部を破壊してキャップ部材を取り外すことも含み、このときのキャップは破壊により再利用できなくてもよいこととする。
【0032】
キャップ部材24の車内側には隠ぺい部品が設けられており、この隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整(以下修理等ともいう)には、キャップ部材24をベース部32の開口部32Aから取り外し、この開口部32Aから隠ぺい部品にアクセスして隠ぺい部品を修理等行うことが必要になることがある。開口部32Aもキャップ部材24と同様に矩形状に形成されている。なお、切り欠き部30Aに変えて孔部をガラス板30に設定してもよい。
【0033】
したがって、実施の形態のフロントコーナーガラス10では、隠ぺい部品の修理等において、フロントコーナーガラス10全体を車体16から取り外すのではなく、フロントコーナーガラス10のうち、隠ぺい部品の修理等において必要とする部分のみを取り外すようにしている。
【0034】
すなわち、前記必要とする部分のガラス板30に切り欠き部30Aを形成し、この切り欠き部30Aに、開口部32A付きベース部材32を取り付け、このベース部材32の開口部32Aにキャップ部材24を着脱自在に係合させ、隠ぺい部品の修理等の際にキャップ部材24のみを取り外す。そして、キャップ部材24を取り外すことにより車外側からアクセス可能に開放されたベース部材32の開口部32Aから隠ぺい部品にアクセスして隠ぺい部品を修理する。
【0035】
以上により、実施の形態のフロントコーナーガラス10によれば、車両外側からフロントコーナーガラス10を介して、すなわち、ベース部材32の開口部32Aから隠ぺい部品の修理等を容易に行うことができる。
【0036】
なお、ベース部材32の開口部32Aはキャップ部材24によって封止されることから、キャップ部材24は、フロントコーナーガラス10の一部として構成される。また、図3に示すように、ベース部材32も射出成形によりモールド26とともに一体成形することにより、フロントコーナーガラス10とベース部材32はモールド26により確実に封止される、また、製造工程が簡素化することができ製造コストを削減する観点からも好ましい。
【0037】
一方、図3、図4に示すようにキャップ部材24の車内側面24Aには、一対の係合部34、36が対向する短辺側に形成されるとともに、キャップ部材24の中心25に対して点対象位置に形成されている。係合部34は三本の爪部34A、34A、34Aから構成され、これらの爪部34Aの先端部が、ベース部材32の内側エッジ部(ベース部材の係合部)32Bに係合される。また、係合部36も三本の爪部36A、36A、36Aから構成され、これらの爪部36Aの先端部が、ベース部材32の内側エッジ部(ベース部材の係合部)32Bに係合される。
【0038】
更に、キャップ部材24及びベース部材32には、フロントコーナーガラス10のガラス板30の面の法線方向に対して所定角度傾斜した方向にキャップ部材24をベース部材32の開口部32Aに挿入案内するための所定角度傾斜したガイド部38、40が形成されている。
【0039】
すなわち、キャップ部材24の車内側面24Aには、前記傾斜した一対のガイド部38、38が対向する長辺側に形成されるとともにキャップ部材24の中心25に対して点対象位置に離間して形成されている。
【0040】
また、ベース部材32のガイド部40は、ガイド部38、38に対向した位置にベース部材32と一体に形成されている。このガイド部40、40(図3では一つのガイド部40のみ図示)は、そのガイド面40A、40Aがガイド部38の傾斜方向と同方向に形成されている。
【0041】
したがって、ガイド部38をガイド部40のガイド面40Aに当接し、前記傾斜方向にキャップ部材24を押し込んで行くと、ガイド部40がガイド面40Aに沿って摺動することにより、キャップ部材24がベース部材32の開口部32Aに挿入されていく。そして、係合部34の三本の爪部34A、34A、34Aの先端部が、ベース部材32の内側エッジ部32Bに乗り上げて係合するとともに、係合部36の三本の爪部36A、36A、36Aの先端部が、ベース部材32の内側エッジ部32Bを乗り上げて係合することにより、キャップ部材24がベース部材32の開口部32Aに取り付けられる。
【0042】
ところで、ベース部材32の開口部32Aに取り付けられたキャップ部材24をフロントコーナーガラス10から取り外そうとした場合、通常であれば、ガラス板30の面の法線方向にキャップ部材24を引き抜いて取り出そうとするのが一般的である。
【0043】
しかしながら、実施の形態のキャップ部材24及びベース部材32には、フロントコーナーガラスのガラス板30の面の法線方向に対して傾斜した方向に、キャップ部材24をベース部材32の開口部32Aに挿入案内するためのガイド部38、40が形成されているため、前記法線方向にキャップ部材24を取り出そうとしても、それぞれのガイド部38、40がストッパの機能を果たすことから、キャップ部材24をフロントコーナーガラス10から取り外すことはできない。また、ガラス板30の面に対して傾斜した方向であっても、取り外し可能な方向はガイドと平行な方向に限定され、これ以外の方向では容易にキャップ部材24を取り外すことはできない。これにより、フロントコーナーガラス10からキャップ部材24が意味もなく取り外されるのを防止することができる。つまり、着脱自在なキャップ部材24を備えても車両の防盗性を損なうことはない。ここでは、キャップ部材24の取り外し方向を傾斜した方向にする例を示したが、本発明はこれに限定されず、キャップ部材24の取り外し方向をガラス板30の面の法線方向からずらすことで同様の効果を得ることが可能になる。
【0044】
また、実施の形態のキャップ部材24は図4に示すように、車内側面24Aに円形の薄肉部42と、この薄肉部42に連設する4本の溝44、44…が形成されている。
【0045】
ここで、フロントコーナーガラス10からキャップ部材24が意味もなく取り外されるのを確実に防止するための構造は、キャップ部材24がベース部材32の開口部32Aに強固に係合し、取り外し用の治具を用いても取り外し不能になる構造が好ましい。
【0046】
これを実現するには、キャップ部材24及びベース部材32にそれぞれ形成されている係合部が、ラチェット機構の如く、取り付け方向には係合動作を許容し、取り外し方向には係合解除動作を規制する形状とすることがよい。しかしながら、この形状とすると、フロントコーナーガラス10からキャップ部材24を取り外すことは容易でない。ここでは、キャップ部材のガイド部材38とベース部材のガイド部材40をともに備える態様を示したが、係合解除動作を規制する係合形状であれば、ガイド部材はキャップ部材とベース部材の何れか少なくとも一方に備えればよい。
【0047】
そこで、実施の形態のフロントコーナーガラス10では、キャップ部材24の車内側面24Aに薄肉部42と、この薄肉部42に連設する4本の溝44、44…を形成することでキャップ部材24自体の剛性を弱め、キャップ部材24をフロントコーナーガラス10から取り外す場合には、キャップ部材24に形成されている薄肉部42に対応する車外側面24Bを小型のハンマー、又はドライバの柄で叩き、その衝撃力を薄肉部42から溝部44、44…に伝播させて、溝部44、44…に亀裂を生じさせることによりキャップ部材24全体を破壊する。
【0048】
このキャップ部材24では、キャップ部材24を破壊してフロントコーナーガラス10から取り外すことになるが、フロントコーナーガラス10からキャップ部材24が意味もなく取り外されるのを確実に防止することができる。なお、キャップ部材24に薄肉部42及び溝44を形成する場合には、薄肉部42はキャップ部材24の略中央部に形成し、この薄肉部42から4本の溝部44、44…を放射状に形成することが好ましい。溝44の本数は1本でもよいが、複数本形成すればキャップ部材24を破壊し易くなるので好ましい。また、キャップ部材24の材料は、破壊容易性からみてプラスチックが好ましい。材料は公知のプラスチック材料が適用可能であるが、ポリアミド、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、AES(アクリロニトリル・エチレン-プロピレンゴム・スチレン)などが好適に利用できる。また、ここでは、薄肉部42から溝部44、44をキャップ部材24の車内側面24Aに設ける例を示したが、外観意匠や防盗性を損ねない範囲で車外側面に設けることも可能である。
【0049】
更に、ベース部材32の開口部32Aにキャップ部材24を取り付けた際に、図3の如くベース部材32の周囲に形成されているモールド26の車外側面26Bとキャップ部材24の車外側面24Bとを面一にすれば、キャップ部材24をフロントコーナーガラス10から取り出し難くなるのでより好ましい。
【0050】
更にまた、車両窓用ガラス板としてフロントコーナーガラス10に適用すると、キャップ部材24をフロントコーナーガラス10から取り外す(破壊する)ことで、車体の内側がむき出しとなり、この内側に配置されている、図3のステアリングメンバーを車軸に固定するためのボルト(隠ぺい部品)46を車両外側から取り外すことができるので便利である。また、車外側から他の隠ぺい部品にアクセスすることもできる。
【0051】
更に、キャップ部材24は、図2に示すようにフロントコーナーガラス10に印刷された黒色遮蔽層28の内縁よりも外側の位置に設けられた切り欠き部又は孔部に取り付けられるベース部材32に係合されることが好ましい。
【0052】
モールド付きガラス板の黒色遮蔽層28の内側は、ガラス板30の透明部分であり、この透明部分にキャップ部材24を取り付けようとすると、透明部分に切り欠き部又は孔を形成し、この切り欠き部又は孔にベース部材32を設けなければならないので、ベース部材32及びキャップ部材24を透明部材で構成したとしてもベース部材の車内側に係合した部分を車外側からも視認でき、ガラス板30の透明部分の外観を損ねるなどの問題がある。
【0053】
そこで、実施の形態のフロントコーナーガラス10は、黒色遮蔽層28よりも外側の位置、すなわち、モールド26が形成されている位置にキャップ部材24を取り付けることで、ガラス板30の透明部分の外観を維持するようにしている。
【0054】
また、モールド26の色にキャップ部材24の色を合わせることにより、キャップ部材24がモールド26に同化するため、キャップ部材24の存在を隠すことができる。なお、モールド26の色は通常黒色である。
【0055】
以上のように本実施の態様は、ベース部材やキャップ部材が黒色遮蔽層を包含されるように設けられるため部品が一体化、小型化することができる。これにより意匠上各部材が目立ち難くなり外観意匠の完成度を高めることができ、コスト的にも有利になる。
【0056】
一方、実施の形態では、上述したフロントコーナーガラス10が取り付けられた車両窓用ガラス板の取付構造を提供する。すなわち、フロントコーナーガラス10が取り付けられ、フロントコーナーガラス10のキャップ部材24が取り外されることにより、ベース部材32の開口部32Aを介して車両の隠ぺい部品の修理等が可能なことを特徴とする車両窓用ガラス板の取付構造を提供する。
【0057】
これにより、実施の形態の車両窓用ガラス板の取付構造によれば、実施の形態のフロントコーナーガラス10を使用することにより、車両外側からフロントコーナーガラス10を介して隠ぺい部品の修理等を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の車両窓用ガラス板は、フロントコーナーガラスを備えた自動車に好適に適用できる。また、フロントコーナーガラスと同様に、固定窓など着脱の難しいガラス板を貫通した反対側にアクセスが必要な用途であれば、サイドガラス、リアガラス、リアクォーターガラス、リアコーナーガラスなどにも本発明の車両窓用ガラス板を適用することができる。更に、本発明と同様な用途であれば建築用、鉄道用、船舶用、航空機用等の窓用ガラス板にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態のフロントコーナーガラスが取り付けられた自動車の前部左側面図
【図2】図1に示したフロントコーナーガラスの拡大図
【図3】図1のフロントコーナーガラスに対するキャップ部材の取付構造を示した断面図
【図4】図3に示したキャップ部材の車内側面を示した斜視図
【図5】自動車のドアサイドミラーをフロントサイドドアに取り付けたドアミラー取付構造体の説明図
【符号の説明】
【0060】
10…フロントコーナーガラス、12…自動車、14…左側フロントサイドドア、16…車体、18…サイドガラス、20…アウトサイドミラー、22…窓用開口部、24…キャップ部材、24A…車内側面、25…キャップ部材の中心、26…モールド、26A…リップ部、28…遮蔽層、30…ガラス板、30A…切り欠き部、32…ベース部材、32A…開口部、32B…内側エッジ部、34…係合部、34A…爪部、36…係合部、36A…爪部、38…ガイド部、40…ガイド部、40A…ガイド面、42…薄肉部、44…溝、46…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の固定窓に用いられるガラス板の周縁部に樹脂製のモールドが固着されたモールド付き車両窓用ガラス板であって、
該ガラス板の一部に切り欠き部又は孔部が形成され、該切り欠き部又は孔部に、開口部付きベース部材が取り付けられ、該ベース部材の開口部にキャップ部材が着脱自在に係合されて前記ベース部材の開口部キャップ部材封止されていることを特徴とする車両窓用ガラス板。
【請求項2】
前記ベース部材及び前記キャップ部材は、前記キャップ部材を前記ベース部材の開口部に挿入案内するためのガイド部がキャップ部材またはベース部材の少なくとも一方に形成されており、前記それぞれのガイド部は、前記キャップ部材を前記ベース部材が係合されたときに形成する前記車両窓用ガラス板のガラス面の法線方向に対して傾斜している請求項1に記載の車両窓用ガラス板。
【請求項3】
前記キャップ部材には、薄肉部が形成されている請求項1、又は2に記載の車両窓用ガラス板。
【請求項4】
前記車両窓用ガラス板は、フロントコーナーガラスであって、前記ベース部材が前記モールドと一体成形される請求項1、2又は3のいずれかに記載の車両窓用ガラス板。
【請求項5】
前記車両窓用ガラス板に印刷された黒色遮蔽層の内縁よりも外側の位置に切り欠き部又は孔部が設けられる請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の車両窓用ガラス板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車両窓用ガラス板が車両の固定窓に用いられ、該車両窓用ガラス板の前記キャップ部材が取り外されることにより、車外から前記ベース部材の開口部を介して治具を挿入して車両の内部にある車体の外装に隠された隠ぺい部品の取り付け、取り外し及び調整が可能なことを特徴とする車両窓用ガラス板の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−83397(P2010−83397A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256580(P2008−256580)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)