説明

車室内暖房装置および車室内暖房方法

【課題】エンジンが暖まるまでの間、搭乗車が寒さに耐える必要をなくする。
【解決手段】中赤外線域の波長の光を放射するように構成された赤外線発生器11と、前記車両の燃料エンジン4を熱源とした車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として前記赤外線発生器11を点灯させる光源制御装置10とを具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車室内を暖房する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には車室内を暖房する車載暖房装置が一般的に設けられている。この種の車載暖房装置は、自動車のエンジンを冷却する冷却水(ラジエータ)、或いは、エンジンを空冷した空気を熱源として車室内を暖房している。このため、エンジン或いは冷却水が冷たい間は車室内を暖房することができないばかりか、調和空気の吹出口から冷たい空気が吹き出されてしまい、搭乗者が寒冷ショックを起こす恐れがある。そこで、従来の車載暖房装置においては、冷却水温等が所定温度(40℃〜60℃)に達するまでの間は暖房動作(より正確には送風機の作動)を禁止するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−16643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、エンジンを始動してから冷却水温が所定温度に達するまでには、一般に、5分から10分程度の時間がかかり、この時間の間、搭乗者は寒さを我慢しなければならず、特に、高齢者や体調を崩している者にとっては非常に苦痛であった。
また、車室内の寒さが耐えられない場合には、搭乗者は、前もってエンジンを始動させておき(いわゆる暖気運転)、車載暖房装置が稼働し始めた後に搭乗する必要があり、利便性が悪いばかりか、ガソリンを無駄に消費し、環境にも悪い。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、エンジンが暖まるまでの間、搭乗車が寒さに耐える必要のない車室内暖房装置および車室内暖房方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも中赤外線域の波長の光を放射するように構成された光源と、前記車両のエンジンを熱源とした車載暖房装置により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として前記光源を点灯させる点灯制御手段とを具備することを特徴とする車室内暖房装置を提供する。
【0005】
また本発明は、上記発明において、前記点灯制御手段は、前記エンジンの始動に伴って前記車両のバッテリ電源への充電が開始された後に、前記光源を点灯させることを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記発明において、前記点灯制御手段は、前記光源を点灯させてからの経過時間に応じて段階的に前記光源に供給する電力を下げることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記発明において、前記点灯制御手段は、前記光源を間欠的に点灯させることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記発明において、前記点灯制御手段は、前記車載暖房装置が暖気送風を開始したときに前記光源を消灯することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記発明において、二枚のガラス板が離間配置されて空気層が形成されると共に、当該空気層を外部に放出する貫通孔が形成されたカバーガラスが前記光の放射面に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記発明において、前記光源から放射された光を上下非対称に反射する反射板を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも中赤外線域の波長の光を放射するように光源を構成すると共に、この光源を車両の車室内に配置し、前記車両のエンジンを熱源とした車載暖房装置により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として利用することを特徴とする車室内暖房方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも中赤外線域の波長の光を放射する光源を車載暖房装置により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として点灯させるため、エンジンが暖まるまでの間、搭乗者が加温され、寒さに耐える必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車室内暖房装置1の機能的構成を示すブロック図である。この図に示すように、車室内暖房装置1は、例えば補助席のレッグスペースや運転席のハンドルといった車室内に配置されて搭乗者の体を加温するものであり、熱源としての赤外線発生器11と、当該赤外線発生器11の点灯を制御する光源制御装置10とを備え、車両に搭載されているバッテリ電源2とバッテリ電源供給線3を介して接続され、当該バッテリ電源2から電力が供給される。このバッテリ電源供給線3は、車両の図示せぬキースイッチに連動してバッテリ電源2と導通し、車室内暖房装置1への電力供給が開始される。このバッテリ電源2への充電は、車両の動力源たる燃料エンジン4の動力をオルタネータ5が発電電力に変換することで行われている。
【0014】
また、燃料エンジン4にはエンジン排熱熱交換器4Aが内蔵され、このエンジン排熱熱交換機4Aとラジエータ6とが図示せぬ水回路により接続され、ラジエータ6がエンジン排熱を回収することで燃料エンジン4が水冷される。また、ラジエータ6と車載暖房装置7とが図示せぬ水回路により接続されており、ラジエータ6が回収したエンジン排熱が車載暖房装置7のヒータコア7Aにて車室内空気と熱交換し、暖められた空気(暖気)が当該車載暖房装置7の送風機7Bにより車室内に送風されて、車室内の暖房空調が行われる。
【0015】
さらに、車両には、上記ラジエータ6の冷却水温を検出して検出水温信号を出力する水温センサ(サーミスタ)8Aと、バッテリ電源供給線3或いはバッテリ電源2の電極(図示せず)に電気的に接続されてバッテリ電圧を検出し検出電源電圧信号を出力する電圧センサ8Bとを備えるセンサ部8が設けられている。上記水温センサ8Aが出力する検出水温信号は車載暖房装置7に送出されており、この車載暖房装置7にあっては、図示せぬ操作子が操作される等して暖房開始指示がなされたとしても、燃料エンジン4が十分に暖まるなどして検出水温が所定温度(例えば40℃〜60℃)に達するまで送風機7Bの作動を禁止して、暖房時における冷風の吹き出しを防止する。
【0016】
次いで、上記車室内暖房装置1の構成について詳述すると、光源制御装置10と赤外線発生器11とは、光源制御装置10から赤外線発生器11に点灯電力を供給する点灯電力供給線12を介して接続され、光源制御装置10が赤外線発生器11への点灯電力供給を制御することで赤外線発生器11の点灯が制御される。
上記光源制御装置10は、バッテリ電源供給線3から供給されるバッテリ電源の電力を変換して赤外線発生器11に点灯電力として供給する点灯電力回路10Aと、この点灯電力回路10Aの点灯電力の供給開始/停止および点灯電力の出力(ワット)を制御する点灯制御回路10Bとを備えている。
点灯制御回路10Bには、上記水温センサ8Aからの検出水温信号および電圧センサ8Bからの検出電源電圧信号がそれぞれ入力されており、点灯制御回路10Bは、これらの検出信号に基づいて、燃料エンジン4の始動時から車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として上記赤外線発生器11を点灯させるべく上記点灯電力回路10Aを制御するように構成されている。
【0017】
上記赤外線発生器11は、上記点灯電力が供給されて、少なくとも中赤外波長域の光を放射する中赤外線ランプ11Aと、赤外線発生器11の周囲の温度を検出して点灯制御回路10Bに検出温度信号を出力する温度センサ11Bとを備えている。なお、当該赤外線発生器11の機械的構成については後に詳述する。
【0018】
中赤外線ランプ11Aは、波長2.5μm〜4μmの範囲内にピーク波長を有する例えばカーボン(炭素)発光体を備えたランプとして構成されており、赤外線吸収波長ピークが中赤外波長域である3.5μm近傍にある皮膚や水、樹脂(すなわち車両搭乗者の体)が効率的に加温、加熱される。
このようなカーボンを発光体として使用することで中赤外線の放射量が多くなるため、投入電力に対して加熱に利用される電力の利用効率が高くなる。したがって、点灯電力を比較的低くしてバッテリ電源2の電力消費を抑えつつ高い加熱効果を得ることができる。
【0019】
また、光源として上記中赤外線ランプ11Aを用いることで放射される光に、可視光領域の光が含まれない(或いは非常に小さい)ため、車室内に配置した場合であっても、搭乗者に中赤外線ランプ11Aの発光を感じさせることがなく、また、中赤外線ランプ11Aの発光が中赤外線ランプ11Aのデザイン性を損なうこともない。さらに、赤外線発生器11にあっては、可視光領域の光が含まれない(或いは非常に小さい)こともあり、さらに、搭乗車の視界から外れた箇所に中赤外線ランプ11Aを配置するなどすれば、可視光をカットするためのフィルタやルーバが不要とすることもでき、装置コストを抑えることができる。
さらに、中赤外線ランプ11Aにあっては、中赤外線光の放射加熱(輻射熱)により搭乗者の体が加熱されるため、ランプが点灯されてからすぐに、対象物の体を温めることができる。また、赤外線ヒータなどに一般的に用いられているハロゲンランプでは、点灯時の突入電流が定格電流の数倍にも達し過電流対策が必要となるばかりか、バッテリ電源2に対する負荷が大きく、さらに、有害物質であるハロゲンガスを微量に含んでいるが、中赤外線ランプ11Aにあっては、突入電流がほぼゼロであるため、過電流対策が必要なく装置コストを安価に抑えることができ、また、バッテリ電源2に対する負荷も低減されるため、点灯/消灯を頻繁に行っても問題がなく、さらには、ハロゲンフリーの環境負荷の少ないランプを提供することが可能となる。
【0020】
次に、車室内暖房装置1の動作を説明する。
上述したように、上記光源制御装置10の点灯制御回路10Bは、燃料エンジン4の始動時から車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として上記赤外線発生器11を点灯させるべく点灯電力回路10Aによる点灯電力の供給/停止を制御している。図2は、点灯電力供給/停止処理のフローチャートである。
【0021】
この点灯電力供給/停止処理にあっては、点灯制御回路10Bは、先ず、点灯開始条件の1つである燃料エンジン4の始動を検出すべく、検出電源電圧信号に基づいて、バッテリ電圧がオルタネータ5の稼働時の電圧になったか否かを判断する(ステップS1)。詳述すると、燃料エンジン4が始動されると、燃料エンジン4の動力が図示せぬエンドレスベルト等の伝達機構を介してオルタネータ5に伝達され、オルタネータ5によるバッテリ電源2の充電が開始され、バッテリ電源2の出力端電圧、すなわち、バッテリ電源供給線3の電圧が上昇する。一般に、ガソリンエンジン車にあっては、12Vのバッテリ電圧がオルタネータ5の稼働によって14Vまで上昇する。したがって、ガソリンエンジン車にあっては、バッテリ電圧が14Vに上昇したか否かを検出することで、ガソリンエンジンが始動されたか否かを検出することが可能となる。なお、ガソリンエンジン車によっては、バッテリ電圧が上記12V以外に、例えば24Vや36Vのものがある。この場合にも、オルタネータ5の稼働によってバッテリ電圧が所定電圧まで上昇したか否かに基づいてガソリンエンジンが始動されたか否かを検出可能である。
【0022】
なお、燃料エンジン4のイグニッション(点火)を車両のキー操作から検出することで、燃料エンジン4の始動開始を検出することも可能であるが、燃料エンジン4の始動時にバッテリ電源2から図示せぬスタータに比較的大きな電流が流れるため、上記のように、オルタネータ5稼働によるバッテリ電圧の上昇を検出し、これを点灯開始条件とすることで、バッテリ電源2への負荷を低減させることが望ましい。
【0023】
さて、ステップS1における判断の結果、バッテリ電圧がオルタネータ5の稼働時の電圧になっていない場合には(ステップS1:No)、燃料エンジン4が始動されていない事を示すため、点灯制御回路10Bは、燃料エンジン4の始動を監視すべく処理手順をステップS1に戻す。また、バッテリ電圧がオルタネータ5の稼働時の電圧になっている場合(ステップS1:Yes)、燃料エンジン4が始動されている事を示すため、点灯制御回路10Bは、車載暖房装置7によって車室内が暖められているか否かを判断すべく、検出水温信号に基づいて、冷却水温度が所定温度以下か否かを判断する(ステップS2)。この所定温度は、車載暖房装置7の送風機7Bが送風を開始するための条件温度(例えば40℃〜60℃)であり、冷却水温度が所定温度以下である場合には(ステップS2:Yes)、車載暖房装置7による車室内の暖房が未だ行われていない事を示すため、点灯制御回路10Bは、赤外線発生器11に点灯電力を供給して点灯させる(ステップS3)。
【0024】
また、冷却水温度が所定温度をこえている場合には(ステップS2:No)、車載暖房装置7によって車室内の暖房が行われている事を示す。そこで、点灯制御回路10Bは、温度センサ11Bから出力された検出温度信号に基づいて、赤外線発生器11の周囲の温度が所定温度をこえているか否かを判断し(ステップS4)、所定温度以下である場合には(ステップS4:No)、本車室内暖房装置1の加温対象の周囲が十分には温められていないことを示すため、赤外線発生器11への点灯電力供給を開始(継続)する(ステップS3)。また、赤外線発生器11の周囲の温度が所定温度をこえている場合には(ステップS4:Yes)、本車室内暖房装置1の加温対象の周囲が十分に温められていることを示すため、赤外線発生器11への点灯電力供給を停止して消灯させる(ステップS5)。
【0025】
以上の処理により、燃料エンジン4の始動時から車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として上記赤外線発生器11を点灯されて搭乗者の体を加温するため、車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間、搭乗者は寒さを耐える必要がない。なお、上記ステップS2においては、車載暖房装置7の送風機7Bの稼働状況を検出することで、車載暖房装置7によって車室内が暖められているか否かを判断するようにしても良い。
【0026】
また、点灯制御回路10Bは、赤外線発生器11を点灯させてから消灯させるまでの間、赤外線発生器11の点灯タイミングからの時間経過に応じて点灯電力を減少させている。詳述すると、図3に示すように、本実施形態では、点灯タイミングt0においては例えば80Wの点灯電力を赤外線発生器11に供給し、1分経過後のタイミングt1においては、50Wまで点灯電力を低下させ、さらに、点灯タイミングt0から3分経過後のタイミングt2においては30Wまで点灯電力を低下させ、この点灯電力で車載暖房装置7から暖気が吹き出され始めるタイミングt3まで赤外線発生器11を点灯させている。
このように、点灯開始時には比較的大きな点灯電力で赤外線発生器11を点灯させて搭乗者の体を加温して皮膚や衣服などの温度を上昇させ、その後、点灯電力を次第に低下させることで、赤外線発生器11の点灯によるバッテリ電源2への負荷を低減させつつ暖房(加温)効果を十分に維持することが可能となる。
【0027】
さらに、赤外線発生器11にあっては、上述の通り、ハロゲンランプなどと比べて点灯開始時の突入電流が小さいため、点灯制御回路10Bは、赤外線発生器11を頻繁に点灯/消灯させることが可能である。したがって、点灯制御回路10Bが、赤外線発生器11を点灯させた後に、点灯/消灯を比較的短い時間間隔(例えば1秒)で繰り返して搭乗者の体を間欠的に加温することで、扇風機等で用いられる、いわゆる首振り効果により、搭乗者により一層の暖かさを感じさせることができる。
【0028】
次いで、車室内暖房装置1の機械的構成について詳述する。
図4は車室内暖房1の構成を使用の一態様と共に示す図であり、図5は車室内暖房装置1の赤外線発生器11の構成を示す斜視図である。なお、これらの図には、車両の助手席50の足下の空間、いわゆるレッグスペース51に配置して好適な車室内暖房装置1を示す。
【0029】
図4に示すように、車室内暖房装置1の光源制御装置10は箱形に構成され、レッグスペース51の壁面に嵌め込まれて配置され、車両側のバッテリ電源供給線3や信号線と電気配線により接続されている。また、車室内暖房装置1の赤外線発生器11は、レッグスペース51のうち、助手席50の正面に配置されたグローブ・ボックス(ダッシュボード)52の下方に設置され、助手席50に搭乗した搭乗者の脚60の膝60Aからつま先60Bにかけて中赤外線光を照射して温めるものである。
この赤外線発生器11は、図5に示すように、両端に口金を有する棒状の中赤外線ランプ体11Aと、この中赤外線ランプ11Aが放射する中赤外光を正面に向けて反射する反射板100と、これら中赤外線ランプ11Aおよび反射板100を収容する正面が開口した箱形の筐体101とを備えた、いわゆる、ラインヒータとして構成されており、この筐体101の正面の開口にはカバーガラス102が取り付けられ、また、筐体101の正面には上記温度センサ11Bが取り付けられている。
【0030】
カバーガラス102は、図6に示すように、枠体103に2枚のガラス板104および105が隙間を有して嵌め込まれ、これらのガラス板104、105の間に空気層107が形成された二重構造となっており、ガラス板104が光源制御装置10の内側(中赤外線ランプ11A)に面する側に配置されるように赤外線発生器11に取り付けられる。また、上記ガラス板104には、可視光をカットし赤外域の光を透過する赤外域透過材料106が塗布されており、赤外線発生器11からの可視光線の放射を抑制する。なお、中赤外線ランプ11Aの光源がカーボンを発光体とし、さらに、レッグスペース51に赤外線発生器11を配置する場合には、可視光成分が少なく、なおかつ、中赤外線ランプ11Aが搭乗者の視界から外れた箇所に位置するため、赤外域透過材料106に塗布する必要はないが、この赤外域透過材料106を塗布することで、赤外線発生器11から放射される可視光成分をより完全に遮蔽することができる。
また、上記枠体103には、上記空気層107に貯まった熱気を外部に放出するための貫通孔108が複数箇所に形成されている。このように、カバーガラス102を空気層107を有する二重構造とすると共に、空気層107の熱気が外部に放出される構造とすることで、ガラスの熱伝導率より空気の熱伝導率の方が非常に小さいため、光源制御装置10の点灯時に装置内の温度が上昇しても、装置内の熱がガラス板104を介して空気層107に伝達されて、当該空気層107に熱気として蓄えられると共に当該熱気が貫通孔108を通じて外部に放出される。これにより、外側のガラス板105が熱くなり難くなるため、カバーガラス102に搭乗者が触れたとしても火傷等を防止することができ、また、搭乗者との間に十分なスペースが確保できない狭い場所にも設置することができる。
【0031】
さて、前掲図5に示すように、赤外線発生器11の筐体101の両端面には、当該赤外線発生器11をグローブ・ボックス52の下方で支持する支持部材109を受ける受け部110が形成されており、これら支持部材109により支持された状態では、両端の支持部材109を結ぶ直線X−X’線を中心として赤外線発生器11が回転・位置決め可能になされている。また、前掲図4および図5に示すように、筐体101の下側には、把持部105が設けられており、赤外線発生器11を回転させて位置決めするための把持部105が設けられており、これにより、搭乗者は赤外線発生器11の中赤外線の照射箇所を所望に調整することができる。なお、上記支持部材109に耐震構造を持たせることで、赤外線発生器11に車両の振動が伝導するのを防止し、中赤外線ランプ11Aを保護する構成が望ましい。
【0032】
ここで、前掲図4に示すように車室内暖房装置1が車室内に設置された場合、赤外線発生器11から搭乗者のつま先60B付近までの距離W1よりも膝60までの距離W2の方が長くなる。したがって、赤外線発生器11の正面から均等な分布で中赤外線光を照射すると、光は距離の2乗に比例して減衰するため、つま先60Bより膝60Aの加温効果が弱くなり、加温効果のムラが生じる。
そこで、本実施形態では、赤外線発生器11から放射される光を均等分布にするのではなく、赤外線発生器11の上側により多くの光が振り分けられるように光の分布を上下非対称とする反射板100を備える構成としている。図7は、反射板100の構成を示す断面図である。反射板100は、赤外波長域での反射率が高いアルミニウムを用いて構成されている。また、この反射板100は、図7に示すように、主反射部120Aと、上方副反射部120Bと、下方反射部120Cとを有している。主反射部120Aは双曲面Yに沿った形状に形成され、また、この双曲面Yの曲率中心Oに上記中赤外線ランプ11Aが配置されており、主反射部120Aが中赤外線ランプ11Aから放射された光を反射して略平行光化する。
【0033】
また、上方副反射部120Bは、双曲面Yのうち中赤外線ランプ11Aよりも下側の領域に設けられ、当該双曲面Yの内側に突出するように、当該双曲面Yの曲率よりも大きな曲率を有する形状になされている。したがって、双曲面Yでは正面に向けて反射される光線K1が、上方副反射部120Bによって反射されて上方に向かう光線K1’となる。これにより、赤外線発生器11の上側に振り分けられる光が多くなる。
また、下方反射部120Cは、双曲面Yよりも曲率が小さく、なおかつ、下方に向けて延びる形状に形成されており、これにより、双曲面Yでは正面に向けて反射される光線K2が、下方反射部120Bによって反射されて下方に向かう光線K2’となり、つま先60Bに向けて照射される。
このように、光を正面に向けて反射する主反射部120Aと、上方に向けて反射する上方副反射部120Bと、下方に向けて反射する下方反射部120Cとを有して反射板100を構成することで、膝60A方向へ照射される光量を多くすると共に、膝60Aからつま先60Bにかけて光を照射することが可能となる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、中赤外線域の波長の光を放射する赤外線発生器11と、車両の燃料エンジン4を熱源とした車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として赤外線発生器11を点灯させる点灯制御回路10Bとを備える構成とした。これにより、中赤外線域の波長の光を熱源として利用するため、バッテリ電源2の電力消費を抑えつつ高い加熱効果を得ることができ、また、搭乗者に発光を感じさせることがない。さらに、このような光源を車載暖房装置7により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として点灯させるため、搭乗者が寒さに耐える必要もない。
【0035】
また、本実施形態によれば、点灯制御回路10Bは、燃料エンジン4の始動に伴って車両のバッテリ電源2への充電が開始された後に、赤外線発生器11を点灯させるため、燃料エンジン4の点火時にバッテリ電源2からスタータに大電流が流れた後に、赤外線発生器11が点灯するため、バッテリ電源2に過大な負荷を与えることがない。
また、本実施形態によれば、点灯制御回路10Bは、赤外線発生器11を間欠的に点灯させるため、搭乗者に効率的に暖かさを感じさせることができる。
また、本実施形態によれば、点灯制御回路10Bは、赤外線発生器11を点灯させてからの経過時間に応じて段階的に、当該赤外線発生器11に供給する点灯電力を下げるため、赤外線発生器11の点灯によるバッテリ電源2への負荷を低減させつつ、十分な暖房効果を維持することが可能となる。
また、本実施形態によれば、二枚のガラス板104。105が離間配置されて空気層107が形成されると共に、当該空気層107を外部に放出する貫通孔108が形成されたカバーガラス102を赤外線発生器11の筐体101の光放射面に設けたため、搭乗者が触れたときの火傷等を防止することができ、また、中赤外線ランプ11Aが露出しないため高い安全性が維持される。
また、中赤外線ランプ11Aから放射された光を反射板100が上下非対称に反射するようにしたため、加温対象の距離に応じて光量を増減され、加温のムラを防止することができる。
【0036】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、中赤外線ランプ11Aとして、両端に口金を有する棒状の中赤外線ランプ体11Aを用いて、いわゆるラインヒータとしたが、これに限らず、片口金型であり内部に反射板を備えたランプを用いて、いわゆる小型のスポットヒータを構成しても良い。このように、中赤外線ランプ11Aを小型のスポットヒータとすることで、図8に示すように、車室内のフロントピラーの上方P1や、バックミラーの取付部付近P2、ハンドルP3、グローブ・ボックス(ダッシュボード)の下方P4、上記車載暖房装置7のコントロールパネルP5、インスツルメントパネル内部、或いは、セレクタレバー(チェンジレバー)の周辺P6、フロントドアの内側P7、また、後部座席の搭乗者を温めるために、運転席や助手席の背面や、それら座席間の間、リアドアの内側といった、比較的設置スペースが狭い箇所に設けることが可能である。
【0037】
また例えば、上述した実施形態では、中赤外線ランプ11Aの光源として、カーボンを発光体とした光源について説明したが、これに限らず、例えばセラミックを発光体に用いたランプ等の任意のランプを用いることができる。また、中赤外線ランプ11Aとしては、少なくとも中赤外域の波長の光を放射するように構成されたものであれば、例えば、近赤外域から中赤外域までの波長の光を放射するハロゲンランプや他のランプを用いることが可能である。この場合には、搭乗者に中赤外線ランプ11Aの発光を感じさせないために、可視光をカットするフィルタを設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る車室内暖房装置の構成を示すブロック図。
【図2】点灯電力供給/停止処理のフローチャート。
【図3】点灯時の点灯電力制御を説明するための図。
【図4】車室内暖房装置の構成を使用の態様とともに示す図。
【図5】赤外線発生器の構成を示す図。
【図6】カバーガラスの構成を示す断面図。
【図7】反射板の構成を示す断面図。
【図8】車室内暖房装置の設置場所の態様を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1 車室内暖房装置
2 バッテリ電源
4 燃料エンジン
7 車載暖房装置
10 光源制御装置
10B 点灯制御回路
11 赤外線発生器
11A 中赤外線ランプ
100 反射板
102 カバーガラス
107 空気層
108 貫通孔
120A 主反射部
120B 上方副反射部
120C 下方反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中赤外線域の波長の光を放射するように構成された光源と、
前記車両のエンジンを熱源とした車載暖房装置により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として前記光源を点灯させる点灯制御手段と
を具備することを特徴とする車室内暖房装置。
【請求項2】
前記点灯制御手段は、前記エンジンの始動に伴って前記車両のバッテリ電源への充電が開始された後に、前記光源を点灯させることを特徴とする請求項1に記載の車室内暖房装置。
【請求項3】
前記点灯制御手段は、前記光源を点灯させてからの経過時間に応じて段階的に前記光源に供給する電力を下げることを特徴とする請求項1または2に記載の車室内暖房装置。
【請求項4】
前記点灯制御手段は、前記光源を間欠的に点灯させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車室内暖房装置。
【請求項5】
二枚のガラス板が離間配置されて空気層が形成されると共に、当該空気層を外部に放出する貫通孔が形成されたカバーガラスが前記光の放射面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車室内暖房装置。
【請求項6】
前記光源から放射された光を上下非対称に反射する反射板を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車室内暖房装置。
【請求項7】
少なくとも中赤外線域の波長の光を放射するように光源を構成すると共に、この光源を車両の車室内に配置し、前記車両のエンジンを熱源とした車載暖房装置により車室内が暖められるまでの間の補助熱源として利用することを特徴とする車室内暖房方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−230256(P2007−230256A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50699(P2006−50699)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)