説明

車載用スピーカ装置

【課題】内装材の剛性を向上させ得るとともに、複合スピーカの振動を内装材に効率的に伝達することができる車載用スピーカ装置を提供する。
【解決手段】本装置は、車両の内装材(天井基材20)に取り付けられる車載用スピーカ装置1であって、中高音域の音を出力するためのスピーカ部12及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部13を有する複合スピーカ14と、アクチュエータ部が取り付けられて複合スピーカを支持し且つ内装材に取り付けられる振動部材15と、を備え、振動部材を内装材に取り付けた状態で、複合スピーカは、スピーカ部が車室内側R1に配置され、且つアクチュエータ部が車室外側R2に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用スピーカ装置に関し、さらに詳しくは、内装材の剛性を向上させ得るとともに、複合スピーカの振動を内装材に効率的に伝達することができる車載用スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用スピーカ装置として、車両の天井基材にスピーカを取り付けてなるものが一般に知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、他の車載用スピーカ装置として、天井基材の車室外側の表面側に、天井剛性を向上させるためのサポート部材を取り付け、このサポート部材にスピーカを支持してなるものが知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−22546号公報
【特許文献2】特開2009−173071号公報
【特許文献3】特表2001−513722号公報
【特許文献4】特表2001−513723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、中高音域の音を出力するためのスピーカ部及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部を有する複合スピーカが開発されている。この複合スピーカを用いて車載用スピーカを構成する場合には、車両の内装材(例えば、天井基材、ドアトリム等)を振動板として利用して低音域の音を出力することが考えられる。このとき、内装材の剛性を適度に高めるとともに、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を内装材に効率的に伝える必要がある。よって、現状では、このような要求を満たす車載用スピーカ装置の出現が望まれている。なお、上記特許文献3及び4には、天井剛性を高めるためのサポート部材について記載されているが、スピーカの振動を天井基材に効率的に伝える技術については全く開示されていない。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、内装材の剛性を向上させ得るとともに、複合スピーカの振動を内装材に効率的に伝達することができる車載用スピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置であって、中高音域の音を出力するためのスピーカ部及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部を有する複合スピーカと、前記アクチュエータ部が取り付けられて前記複合スピーカを支持し且つ前記内装材に取り付けられる振動部材と、を備え、前記振動部材を前記内装材に取り付けた状態で、前記複合スピーカは、前記スピーカ部が車室内側に配置され、且つ前記アクチュエータ部が車室外側に配置されることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記複合スピーカは、前記アクチュエータ部が前記内装材から離間するように配置されることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記スピーカ部の車室内側を覆うように前記内装材に取り付けられるスピーカグリルを更に備え、該スピーカグリルは、前記アクチュエータ部を構成するフランジ部を前記振動部材に向かって押圧する押圧部を有することを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記スピーカ部の車室内側を覆うように前記内装材に取り付けられるスピーカグリルを更に備え、該スピーカグリルは、前記内装材に形成された前記複合スピーカの配置空間のうちの該複合スピーカが占有しない空間に進入する進入部を有することを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4記載において、前記振動部材は、前記内装材の車室外側の表面側に取り付けられ、前記スピーカグリルは、前記内装材の車室内側の表面側に取り付けられ、該振動部材と該スピーカグリルとの間に該内装材が挟持されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車載用スピーカ装置によると、複合スピーカと、振動部材と、を備え、振動部材を内装材に取り付けた状態で、振動部材に支持される複合スピーカは、スピーカ部が車室内側に配置され、且つアクチュエータ部が車室外側に配置されるので、複合スピーカのスピーカ部から中高音域の音が車室内に出力されるとともに、複合スピーカのアクチュエータ部の振動は、振動部材で増幅されてから内装材に伝達され、この内装材の振動により低音域の音が車室内に出力される。したがって、振動部材により、内装材の剛性を向上させ得るとともに、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を内装材に効率的に伝達することができる。その結果、複合スピーカを用いて良質な音を出力させることができる。
また、前記複合スピーカは、前記アクチュエータ部が前記内装材から離間するように配置される場合は、アクチュエータ部は比較的自由に振動できる。そして、このアクチュエータ部の振動の大部分は、内装材に直接的に伝達されずに、振動部材に伝達されて増幅されてから内装材に伝達される。そのため、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を内装材に更に効率的に伝達することができる。また、車両から内装材を取り外すことなく内装材から複合スピーカを容易に脱着できるため、複合スピーカのメンテナンス性に優れる。
また、スピーカグリルを更に備え、該スピーカグリルが押圧部を有する場合は、スピーカグリルの押圧部により、アクチュエータ部を構成するフランジ部が振動部材に向かって押圧される。そのため、スピーカグリルを利用して、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を振動部材に更に効率的に伝達することができる。
また、スピーカグリルを更に備え、該スピーカグリルが進入部を有する場合は、スピーカグリルの進入部が、内装材に形成された複合スピーカの配置空間のうちの複合スピーカが占有しない空間に進入する。そのため、複合スピーカの配置空間で余分な隙間を低減して音の回り込みを防止できる。その結果、スピーカグリルを利用して、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を振動部材に更に効率的に伝達することができる。
さらに、前記振動部材が、前記内装材の車室外側の表面側に取り付けられ、前記スピーカグリルが、前記内装材の車室内側の表面側に取り付けられ、該振動部材と該スピーカグリルとの間に該内装材が挟持される場合は、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を内装材に更に効率的に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係る車載用スピーカ装置の縦断面図である。
【図2】実施例1に係る複合スピーカ及びスピーカグリルの斜視図である。
【図3】上記車載用スピーカを備える車両の模式図である。
【図4】実施例1に係る複合スピーカの端面図である。
【図5】上記複合スピーカの分解斜視図である。
【図6】上記複合スピーカの縦断面図である。
【図7】図6の振動板を取り外した状態でのVII矢視図である。
【図8】比較例に係る車載用スピーカ装置の縦断面図である。
【図9】実施例及び比較例に係る車載用スピーカ装置の音試験の結果を示すグラフである。
【図10】実施例2に係る車載用スピーカ装置の縦断面図である。
【図11】実施例2に係る複合スピーカ及びスピーカグリルの斜視図である。
【図12】実施例3に係る車載用スピーカ装置の縦断面図である。
【図13】実施例4に係る車載用スピーカ装置の縦断面図である。
【図14】実施例4に係る振動部材の斜視図である。
【図15】その他の形態の車載用スピーカ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.車載用スピーカ装置
本実施形態1.に係る車載用スピーカ装置は、車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置であって、中高音域の音を出力するためのスピーカ部及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部を有する複合スピーカと、アクチュエータ部が取り付けられて複合スピーカを支持し且つ内装材に取り付けられる振動部材と、を備え、振動部材を内装材に取り付けた状態で、複合スピーカは、スピーカ部が車室内側に配置され、アクチュエータ部が車室外側に配置されることを特徴とする(例えば、図1等参照)。
【0011】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記複合スピーカは、アクチュエータ部が内装材から離間するように配置される形態(例えば、図1等参照)を挙げることができる。この複合スピーカとしては、例えば、(1)アクチュエータ部が内装材に形成された複合スピーカの配置空間内に配置されて内装材から離間するように配置される形態(例えば、図1等参照)、(2)アクチュエータ部が振動部材に形成された複合スピーカの配置空間内に配置されて内装材から離間するように配置される形態(例えば、図12等参照)を挙げることができる。
【0012】
上記(1)(2)形態では、例えば、上記複合スピーカは、スピーカ部の車室内側の端面が内装材の車室内側の端面(意匠面)より車室外側に位置するように配置されることができる(例えば、図12等参照)。これにより、複合スピーカを、内装材の車室内側の端面から車室内側に突出させずに配置でき、内装材の車室内側(意匠面側)の意匠性を向上させることができる。
【0013】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記スピーカ部の車室内側を覆うように内装材に取り付けられるスピーカグリルを更に備える形態(例えば、図1等参照)を挙げることができる。このスピーカグリルとしては、例えば、(1)アクチュエータ部を構成するフランジ部を振動部材に向かって押圧する押圧部を有する形態、(2)内装材に形成された複合スピーカの配置空間のうちの複合スピーカが占有しない空間に進入する進入部を有する形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0014】
上記押圧部及び/又は上記進入部は、例えば、スピーカグリルの内装材に対する取付け面側から外方に突出する突出部により構成されることができる。特に、突出部により押圧部及び進入部を兼用することが好ましい。また、上記進入部は、例えば、上記複合スピーカが占有しない空間の70〜100%(好ましくは80〜100%、特に90〜100%)を埋めることができる。さらに、上記(1)(2)形態では、例えば、上記振動部材は、内装材の車室外側の表面側に取り付けられ、スピーカグリルは、内装材の車室内側の表面側に取り付けられることができる。
【0015】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記複合スピーカは、隣り合う2つの磁極が互いに反対になるように一列に配設された一群の磁石と、一群の磁石の一方の磁極に相対するように配設された平板状の振動板と、磁石の配列方向に沿って配列されているとともに、振動板の磁極に相対する側の面に、隣り合う磁石間ならびに磁石とヨークとの間に生じる磁束と鎖交するように形成された複数のボイスコイルと、磁石における一対の磁極の他方に当接するとともに、磁石の配列方向に沿った1対の側縁部が振動板に向かう方向に屈曲されたヨークと、振動板の周縁部において振動板を支持するとともに、磁石およびヨークを収容するフレームと、フレームが固定されるアクチュエータ部と、アクチュエータ部とヨークとの問に設けられた弾性部材と、を備え、上記スピーカ部は、上記一群の磁石、振動板及びボイスコイルにより構成される形態(例えば、図4等参照)を挙げることができる。
【0016】
上記複合スピーカによると、磁石は、ヨーク及び弾性部材を介してアクチュエータ部に取り付けられているから、電気信号を入力することによってボイスコイルに生じる変動磁界と磁石の磁界との相互作用によって振動板と磁石とが振動し、これによって電気信号が音に変換される。ここで、磁石で生じた振動のうち、高周波数のものは弾性部材によって吸収されるが、低周波数のものは弾性部材を介してアクチュエータ部に伝達される。また振動板に生じた振動においても低周波数のものはフレームを介してアクチュエータ部に伝達される。これによって、中高音域の音は、スピーカ部を構成する振動板から前方に向かって出力され、低音域の音は、アクチュエータ部を介して出力される。
【0017】
上記弾性部材は、例えば、熱可塑性エラストマ、加硫ゴム、および軟質樹脂から選択される弾性材料を成形した弾性材料成形体、弾性材料を発泡させた弾性材料発泡体、並びに板バネから選択されることができる。これにより、磁石に生じた振動のうち、高周波数のものは、特に効果的に弾性部材によって吸収され、低周波数のものは、弾性部材によって効率良くアクチュエータ部に伝達される。
【0018】
上記振動板及び上記フレームのそれぞれは、例えば、アルミニウム合金から形成されていることができる。これにより、ボイスコイルに音信号を入力して生じた熱は、ボイスコイルから振動板へ、振動板からフレームへと伝達されて放散される。
【0019】
上記ボイスコイルとしては、例えば、(1)磁石毎に形成されている形態、(2)磁石2個毎に形成されている形態等を挙げることができる。上記(1)形態によると、高音域の音質に優れる。また、上記(2)形態によると、簡易且つ安価なものとすることができる。
【0020】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記アクチュエータ部は、スピーカ部を構成する平板状の振動板に対して対向するように並設される平板部を有し、且つ、アクチュエータ部の一面が振動部材の平面部に接触するように振動板に取り付けられていることができる。これにより、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を振動部材に更に効率的に伝達することができる。
【実施例】
【0021】
以下、図面を用いて実施例1〜4により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例1〜4では、本発明に係る「車載用スピーカ装置」として、図3に示すように、車両のルーフパネル9の車室内側に対向して配置される天井基材20(本発明に係る「内装材」として例示する。)に取り付けられる車載用スピーカ装置を例示する。
【0022】
<実施例1>
(1)車載用スピーカ装置の構成
本実施例に係る車載用スピーカ装置11は、図1及び図2に示すように、中高音域の音を出力するためのスピーカ部12及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部13を有する複合スピーカ14と、アクチュエータ部13が取り付けられて複合スピーカ14を支持し且つ天井基材20の車室外側R2の表面側に取り付けられる平板状で樹脂製の振動部材15と、スピーカ部12の前面側(車室内側R1)を覆うように天井基材20の車室内側R1の表面側に取り付けられるスピーカグリル16と、を備えている。
【0023】
上記アクチュエータ部13は、スピーカ部12を構成する平板状の振動板1に対して対向して並設されるように平板状に形成されている。このアクチュエータ部13は、その一面が振動部材15の平面部に接触して振動部材15に取り付けられている。また、上記スピーカグリル16には、音を放出するための複数の貫通孔17が形成されている。
【0024】
上記振動部材15を天井基材20に取り付けた状態において、上記複合スピーカ14は、スピーカ部12が車室内側R1を向き、アクチュエータ部13が車室外側R2を向くように配置されるとともに、アクチュエータ部13が天井基材20に形成された貫通孔19(本発明に係る「複合スピーカの配置空間」として例示する。)内に配置されて天井基材20から離間するように配置される。
【0025】
なお、本実施例における上記振動部材15に対する複合スピーカ14の取付形態、上記天井基材20に対する振動部材15の取付形態、及び天井基材29に対するスピーカグリル16の取付形態としては、例えば、弾性フックによる係止、ビス止め、ネジ止め、接着等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、本実施例では、上記天井基材20として、樹脂シート、樹脂発泡体、又は繊維材、及びそれらの複合体を用いてなり、その車室内側の表面側に表皮材18が積層されてなるものを採用するものとする。
【0026】
上記複合スピーカ14は、図4〜図7に示すように、長辺が後述する磁石2の配列方向に沿った長方形の平面形状を有するシート状の振動板1と、磁極2S、2Nが振動板1の一方の面に相対するとともに、隣り合う2つの磁極2S、2Nが互いに反対となるように、一列に配設された一群の磁石2と、磁石2の配列方向に沿って配列されているとともに、S極の磁極2Sが振動板1側を向いている磁石2に相対向するように、換言すれば1個おきの磁石2に相対向するように、振動板1の磁極2Sに相対する側の面に設けられたボイスコイル3と、磁石2における振動板1に相対向していない側の磁極2N(2S)に当接するように配設されたヨーク4と、振動板1の周縁部において振動板1を支持するとともに、磁石2およびヨーク4を収容するフレーム5と、フレーム5が固定される平板状のアクチュエータ部13とを有する。このヨーク4とアクチュエータ部13との問には、弾性部材7が介装されている。なお、本実施例では、上記スピーカ部12は、上記磁石2、振動板1及びボイスコイル3等によって構成されている。
【0027】
上記磁石2のうち、磁極2Sが振動板1に相対向しているもの、換言すればボイスコイル3に相対向しているものについては、ヨーク4との間に鉄板8が挿入されて嵩上げされている。
【0028】
上記ヨーク4は、強磁性体から形成されているとともに、両側縁4Aが振動板1に向かって屈曲し、磁石2を収容する樋状の形態を有する。また、ヨーク4および磁石2とボイスコイル3との問には、磁石2および振動板1が振動したときに磁石2の磁極2S(2N)がボイスコイル3に直接当たらないように、不織布10が挿入されている。
【0029】
(2)車載用スピーカ装置の作用
次に、上記構成の車載用スピーカ装置11の作用について説明する。上述の複合スピーカ14によると、ボイスコイル3に電気信号が入力されると、ボイスコイル3に変動磁界が生じ、この変動磁界が磁石2の磁界と相互作用して振動板1が振動する。ここで、磁石2もアクチュエータ部13に直接固定されてなく、弾性部材7を介して取り付けられているから、振動板1が振動すると同時に磁石2も振動する。これによって電気信号は音に変換される。
【0030】
上記振動板1で発生した音のうち、中高音域の音は、図4において矢印Aに示すように、前方、言い換えれば図4における上方(車室内側R1)に直接伝搬される。そして、複合スピーカ14のスピーカ部12から中高音域の音が車室内に出力される。一方、振動板1で発生した音のうち、低音域の音は同図において矢印Bに示すようにフレーム5を通してアクチュエータ部13に伝搬される。また、磁石2の振動のうち、高周波のものは弾性部材7で吸収されてアクチュエータ部13には伝わらないが、低周波のものは、同図において矢印Cに示すように、後方、言い換えれば同図における下方(車室外側R2)に向かって、弾性部材7を介してアクチュエータ部13に伝搬されてアクチュエータ部13が振動する。そして、このアクチュエータ部13の振動は、振動部材15で増幅されつつ天井基材20に伝達されて天井基材20の振動により低音域の音が車室内に出力される。
【0031】
(3)実施例1の効果
以上より、本実施例1の車載用スピーカ装置11によると、複合スピーカ14と振動部材15とを備えて構成し、振動部材15を天井基材20に取り付けた状態で、振動部材15に支持される複合スピーカ14を、スピーカ部12が車室内側R1を向き、アクチュエータ部13が車室外側R2を向くように配置したので、複合スピーカ14のスピーカ部12から中高音域の音が車室内に出力されるとともに、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動は、振動部材15で増幅されてから天井基材20に伝達され、天井基材20の振動により低音域の音が車室内に出力される。したがって、振動部材15により、天井基材20の剛性を向上させ得るとともに、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材20に効率的に伝達することができる。その結果、複合スピーカ14を用いて良質な音を出力させることができる。また、複合スピーカ14は、1台で高音も低音も忠実に再生できるから、ウーハなどの低音再生用のスピーカを別に設ける必要がない。また、振動板1は平板状であってコーン状ではないから、コーン型スピーカと比較して遥かに薄くできる。
【0032】
また、本実施例1では、複合スピーカ14を、アクチュエータ部13が天井基材20から離間するように配置したので、アクチュエータ部13は比較的自由に振動できる。そして、アクチュエータ部13の振動の殆どは、天井基材20に直接に伝達されずに、振動部材15に伝達されて増幅されてから天井基材20に伝達される。そのため、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材20に更に効率的に伝達することができる。また、図1中に仮想線で示すように、車両に対して天井基材20を取り外すことなく天井基材20から複合スピーカ14を容易に脱着できるため、複合スピーカ14のメンテナンス性に優れる。
【0033】
また、本実施例1では、振動部材15の端部を、天井基材20の車室外側の表面側に取り付け、スピーカグリル22の端部を、天井基材20の車室内側の表面側に取り付け、振動部材15とスピーカグリル22との間に天井基材20が挟持させたので、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材20に更に効率的に伝達することができる。
【0034】
さらに、本実施例1では、アクチュエータ部13を、スピーカ部12を構成する平板状の振動板1に対して対向して並設されるように平板状に形成するとともに、このアクチュエータ部13の一面が振動部材15の平面部に接触するように振動部材15に取り付けたので、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材15に更に効率的に伝達することができる。
【0035】
(4)実施例1の音試験結果
ここで、実施例1の車載用スピーカ装置11と比較例の車載用スピーカ装置111との音試験結果を比較する。なお、上記音試験としては、JISC5532のスピーカ試験方法を採用した。また、上記比較例に係る車載用スピーカ装置111としては、図8に示すように、実施例1の車載用スピーカ装置11を構成する振動部材15を用いずに、複合スピーカ14のアクチュエータ部13を直接に天井基材20の車室外側の表面側に取り付けてなるものを採用した。
【0036】
図9に示すように、実施例1の車載用スピーカ装置11では、比較例の車載用スピーカ装置111に比べて、低音域の音(周波数25〜150Hzの音)で高い音圧を示した。したがって、振動部材15による振動増幅効果が確認された。
【0037】
<実施例2>
次に、本実施例2に係る車載用スピーカ装置の構成について説明する。なお、本実施例2の車載用スピーカ装置では、上記実施例1に係る車載用スピーカ装置11と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点であるスピーカグリルについて詳説する。
【0038】
(1)車載用スピーカ装置の構成
本実施例に係る車載用スピーカ装置21は、図10及び図11に示すように、複合スピーカ14と、振動部材15と、スピーカ部12の前面側(車室内側R1)を覆うように天井基材20の車室内側R1の表面側に取り付けられるスピーカグリル22と、を備えている。
【0039】
上記スピーカグリル22には、天井基材20に対する取付け面側から外方に突出する複数(図中2つ)の突出部23(本発明に係る「押圧部」及び「進入部」として例示する。)が設けられている。そして、スピーカグリル22及び振動部材15を天井基材20に取り付けた状態において、スピーカグリル22の突出部23は、アクチュエータ部13のフランジ部13aを振動部材15に向かって押圧するとともに、天井基材20の貫通孔19のうちの複合スピーカ14が占有しない空間に進入して空間の大部分を埋める。また、スピーカグリル22には、音を放出するための複数の貫通孔24が形成されている。
【0040】
(2)車載用スピーカ装置の作用・効果
上記構成の車載用スピーカ装置21によると、上記実施例1に係る車載用スピーカ装置11と略同様の作用・効果を奏することに加えて、スピーカグリル22の突出部23により、アクチュエータ部13を構成するフランジ部13aを振動部材15に向かって押圧する押圧機能を発揮させるようにしたので、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材15に更に効率的に伝達することができる。また、スピーカグリル22の突出部23により、天井基材20の貫通孔19のうちの複合スピーカ14が占有しない空間を埋める空間埋め機能を発揮させるようにしたので、貫通孔19で余分な隙間を低減して音の回り込みを防止できる。その結果、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材15に更に効率的に伝達することができる。
【0041】
(3)実施例2の音試験の結果
ここで、実施例2の車載用スピーカ装置21と比較例の車載用スピーカ装置111との音験結果を比較する。図9に示すように、実施例2の車載用スピーカ装置21では、比較例の車載用スピーカ装置111に比べて、低音域の音(周波数25〜150Hzの音)で高い音圧を示し、高音域の音(周波数3000〜7000Hzの音)で高い音圧を示した。したがって、振動部材15による振動増幅効果が確認されるとともに、スピーカグリル22の突出部23による振動増幅効果及び音の回り込み防止効果が確認された。
【0042】
<実施例3>
次に、本実施例3に係る車載用スピーカ装置の構成について説明する。なお、本実施例3の車載用スピーカ装置では、上記実施例1に係る車載用スピーカ装置11と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である振動部材及びスピーカグリルについて詳説する。
【0043】
(1)車載用スピーカ装置の構成
本実施例に係る車載用スピーカ装置31は、図12に示すように、複合スピーカ14と、アクチュエータ部13が取り付けられて複合スピーカ14を支持し且つ天井基材20の車室外側R2の表面側に取り付けられる樹脂製の振動部材32と、スピーカ部12の前面側(車室内側R1)を覆うように天井基材20の車室内側R1の表面側に取り付けられるスピーカグリル33と、を備えている。
【0044】
上記振動部材32の天井基材20に対する取付け面側には、複合スピーカ14を収納するための収納凹部34(複合スピーカの配置空間)が形成されている。この収納凹部34の底面にアクチュエータ部13の一面が接触するようにアクチュエータ部13が振動部材32に取り付けられている。そして、振動部材32を天井基材20に取り付けた状態において、複合スピーカ14は、アクチュエータ部13が振動部材32の収納凹部34内に配置されて天井基材20から離間するように配置される。また、複合スピーカ14は、スピーカ部12の車室内側R1の端面12aが天井基材20の車室内側R1の端面20a(意匠面)より車室外側R2に位置するように配置される。
【0045】
上記スピーカグリル33には、天井基材20に対する取付け面側から外方に突出する複数(図中2つ)の突出部35(本発明に係る「押圧部」及び「進入部」として例示する。)が設けられている。そして、スピーカグリル33及び振動部材32を天井基材20に取り付けた状態において、スピーカグリル33の突出部35は、アクチュエータ部13のフランジ部13aを振動部材32に向かって押圧するとともに、天井基材20の貫通孔19及び振動部材32の収納凹部34のうちの複合スピーカ14が占有しない空間に進入して空間の大部分を埋める。また、スピーカグリル33には、音を放出するための複数の貫通孔36が形成されている。
【0046】
(2)車載用スピーカ装置の作用・効果
上記構成の車載用スピーカ装置31によると、上記実施例1に係る車載用スピーカ装置11と略同様の作用・効果を奏することに加えて、スピーカグリル33の突出部35により、アクチュエータ部13を構成するフランジ部13aを振動部材32に向かって押圧する押圧機能を発揮させるようにしたので、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材32に更に効率的に伝達することができる。また、スピーカグリル33の突出部35により、天井基材20の貫通孔19及び振動部材32の収納凹部34のうちの複合スピーカ14が占有しない空間を埋める空間埋め機能を発揮させるようにしたので、貫通孔19及び収納凹部34で余分な隙間を低減して音の回り込みを防止できる。その結果、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材32に更に効率的に伝達することができる。
【0047】
また、本実施例3では、複合スピーカ14を、天井基材20の車室内側R1の端面20aから車室内側R1に突出させないように配置したので、スピーカグリル33の天井基材20の車室内側R1に突出する部位の厚さを比較的小さなものにでき、天井基材20の車室内側(意匠面側)の意匠性を向上させることができる。
【0048】
<実施例4>
次に、本実施例4に係る車載用スピーカ装置の構成について説明する。なお、本実施例4の車載用スピーカ装置では、上記実施例1に係る車載用スピーカ装置11と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である振動部材及びスピーカグリルについて詳説する。
【0049】
(1)車載用スピーカ装置の構成
本実施例に係る車載用スピーカ装置41は、図13及び図14に示すように、複合スピーカ14と、アクチュエータ部13が取り付けられて複合スピーカ14を支持し且つ天井基材20の車室外側R2の表面側に取り付けられる樹脂製の振動部材42と、スピーカ部12の前面側(車室内側R1)を覆うように天井基材20の車室内側R1の表面側に取り付けられるスピーカグリル43と、を備えている。
【0050】
上記振動部材42は、アクチュエータ部13の一面が接触するようにアクチュエータ部13が取り付けられる平板部42aと、この平板部42aの両側縁から立ち上がる立上げ部42bと、各立上げ部42bから側方に延びるフランジ部42cと、を有している。この振動部材42の平板部42a及び各立上げ部42bによって、複合スピーカ14を収納するための収納空間44(複合スピーカの配置空間)が形成されている。そして、振動部材42を天井基材20に取り付けた状態において、複合スピーカ14は、アクチュエータ部13が振動部材42の収納空間44内に配置されて天井基材から離間するように配置される。また、複合スピーカ14は、スピーカ部12の車室内側R1の端面12aが天井基材20の車室内側R1の端面20a(意匠面)より車室外側R2に位置するように配置される。
【0051】
上記スピーカグリル43には、天井基材20に対する取付け面側から外方に突出する複数(図中2つ)の突出部45(本発明に係る「押圧部」及び「進入部」として例示する。)が設けられている。そして、スピーカグリル43及び振動部材42を天井基材20に取り付けた状態において、スピーカグリル43の突出部45は、アクチュエータ部13のフランジ部13aを振動部材42に向かって押圧するとともに、天井基材20の貫通孔19及び振動部材42の収納空間44のうちの複合スピーカ14が占有しない空間に進入して空間の大部分を埋める。また、スピーカグリル43には、音を放出するための複数の貫通孔46が形成されている。
【0052】
(2)車載用スピーカ装置の作用・効果
上記構成の車載用スピーカ装置41によると、上記実施例1に係る車載用スピーカ装置11と略同様の作用・効果を奏することに加えて、スピーカグリル43の突出部45により、アクチュエータ部13を構成するフランジ部13aを振動部材42に向かって押圧する押圧機能を発揮させるようにしたので、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材42に更に効率的に伝達することができる。また、スピーカグリル43の突出部45により、天井基材20の貫通孔19及び振動部材42の収納空間44のうちの複合スピーカ14が占有しない空間を埋める空間埋め機能を発揮させるようにしたので、貫通孔19及び収納空間44で余分な隙間を低減して音の回り込みを防止できる。その結果、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を振動部材42に更に効率的に伝達することができる。
【0053】
また、本実施例4では、複合スピーカ14を、天井基材20の車室内側R1の端面20aから車室内側R1に突出させないように配置したので、スピーカグリル43の天井基材20の車室内側R1に突出する部位の厚さを比較的小さなものにでき、天井基材20の車室内側(意匠面側)の意匠性を向上させることができる。
【0054】
尚、本発明においては、上記実施例1〜4に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1〜4では、アクチュエータ部13が天井基材20から離間して直接に接触しないように配置される複合スピーカ14を備える車載用スピーカ装置11,21,31,41を例示したが、これに限定されず、例えば、図15に示すように、アクチュエータ部13が天井基材20と振動部材15との間に挟持されて天井基材20に直接に接触するように配置される複合スピーカ14を備える車載用スピーカ装置11’としてもよい。
【0055】
さらに、上記実施例1〜4では、天井基材20に取り付けられる車載用スピーカ装置11,21,31,41を例示したが、これに限定されず、例えば、ドアトリム、フロアトリム、インストルメントパネル、コンソールボックス、ピラー、サンバイザ等に取り付けられる車載用スピーカ装置としてもよい。
【0056】
さらに、上記実施例1〜4では、樹脂製の振動部材15を例示したが、これに限定されず、例えば、金属部材や非金属部材であってもよい。
【0057】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0058】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0060】
11,11’,21,31,41;車載用スピーカ装置、12;スピーカ部、13;アクチュエータ部、14;複合スピーカ、15,32,42;振動部材、16,22,33,43;スピーカグリル、19;貫通孔、20;天井基材、23,35,45;突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置であって、
中高音域の音を出力するためのスピーカ部及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部を有する複合スピーカと、
前記アクチュエータ部が取り付けられて前記複合スピーカを支持し且つ前記内装材に取り付けられる振動部材と、を備え、
前記振動部材を前記内装材に取り付けた状態で、前記複合スピーカは、前記スピーカ部が車室内側に配置され、且つ前記アクチュエータ部が車室外側に配置されることを特徴とする車載用スピーカ装置。
【請求項2】
前記複合スピーカは、前記アクチュエータ部が前記内装材から離間するように配置される請求項1記載の車載用スピーカ装置。
【請求項3】
前記スピーカ部の車室内側を覆うように前記内装材に取り付けられるスピーカグリルを更に備え、該スピーカグリルは、前記アクチュエータ部を構成するフランジ部を前記振動部材に向かって押圧する押圧部を有する請求項1又は2に記載の車載用スピーカ装置。
【請求項4】
前記スピーカ部の車室内側を覆うように前記内装材に取り付けられるスピーカグリルを更に備え、該スピーカグリルは、前記内装材に形成された前記複合スピーカの配置空間のうちの該複合スピーカが占有しない空間に進入する進入部を有する請求項1又は2に記載の車載用スピーカ装置。
【請求項5】
前記振動部材は、前記内装材の車室外側の表面側に取り付けられ、前記スピーカグリルは、前記内装材の車室内側の表面側に取り付けられ、該振動部材と該スピーカグリルとの間に該内装材が挟持される請求項3又は4に記載の車載用スピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−244104(P2011−244104A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112590(P2010−112590)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(599081255)株式会社エフ・ピー・エス (13)
【Fターム(参考)】