説明

車輪

【課題】スポークを無くすことにより、スポークの組み付け作業も不要となり、重量も低減することができ、座席フレーム部の回りの補修も常に容易に行なうことができ、しかも車椅子の走行中にスポーク間に使用者が手を挟み込んだりすることがない車輪を提供することである。
【解決手段】円周内を中空とした内輪1の外周に、円周内を中空とした外輪2を、ローラー3を介在させて回転自在に取り付け、前記外輪2の外周にタイヤ4を取り付けたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハブおよびスポ−クを有さない車輪であって、車椅子や荷物運搬車などに用いられるのに好ましい車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪としては、例えば図8に示したような車椅子用車輪が存在する。この車椅子用車輪は、リング状のリム31と、リム31の外周面に取り付けられたタイヤ32と、車軸33を支持するハブ34と、一端をハブ34のスポーク受け部35に嵌合され、他端をリム31のスポーク支持部36に嵌合された複数のスポーク37とを有している。図に示したスポーク受け部35は、60°間隔で形成されており、したがってこれらスポーク受け部35に嵌合するスポーク37の数は6本になるとしている(特許文献1)。
【0003】
このように構成された車椅子用車輪は、例えば図9に示したように、車椅子40に後輪(駆動輪)として装着するとしている。図9に示す車椅子40は、座席フレーム部41、前フレーム部42、肘当てフレーム部43、底フレーム部44、脚フレーム部45、背フレーム部46を有して構成され、背フレーム部46の下部に車輪30の車軸33を連結させたものとしている。
【0004】
したがって、従来の車輪では、車椅子40の座席フレーム部41の回りを補修する際においても、スポーク37間の間隔が広いことから、手を挿入することが可能となり補修を容易に行なうことができる。しかも、スポーク37はハブ34とリム31に嵌合できるように形成されていることから、スポーク37の一端をスポーク受け部35に刺し込み、スポーク37の他端にスポーク支持部36を嵌合することにより、容易な組み付け作業が可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−127701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の車輪では、スポーク37の容易な組み付け作業が可能になるとしても、スポーク37の組み付け作業が必要であることには変わりなく、このスポーク37の組み付け作業が面倒であり、しかもそのスポーク37の存在によって重量が増大するという問題点を有していた。
【0007】
また、従来の車輪では、車椅子に装着した場合、スポーク37間の間隔が広いことから、手を挿入させることが可能となり、座席フレーム部41の回りの補修を容易に行なうことができるとしても、そのスポーク37の存在によって、手の挿入が制限されることもあり、座席フレーム部41の回りの補修を常に容易に行なうことができるとは限らないという問題点を有していた。
【0008】
さらに、従来の車輪では、車椅子に装着した場合、車椅子の走行中にスポーク37間に使用者が手を挟み込んだりして危険であるという問題点を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、スポークを無くすことにより、スポークの組み付け作業も不要となり、重量も低減することができ、座席フレーム部の回りの補修も常に容易に行なうことができ、しかも車椅子の走行中にスポーク間に使用者が手を挟み込んだりすることがない車輪を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、この発明の車輪は、円周内を中空とした内輪1の外周に、円周内を中空とした外輪2を、ローラー3を介在させて回転自在に取り付け、前記外輪2の外周にタイヤ4を取り付けたものとしている。
【0011】
さらに、この発明の車輪は、前記外輪2の内周に凹溝6を形成したものとし、この凹溝6に前記ローラー3が転動自在に接触するようにして、前記内輪1の外周に回転自在に取り付けたものとしている。
【0012】
また、この発明の車輪は、前記内輪1の外周に凹溝5を形成したものとし、この凹溝5の両側壁5aに軸支される支持体8に転がり軸受9介して、前記ローラー3を軸支したものとしている
そして、この発明の車輪は、前記内輪2の凹溝5の一側壁5aを、車椅子のフレーム21の適宜個所に取り付けたものとすることにより、車椅子の後車輪として使用するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
この発明の車輪は、以上に述べたように構成されており、スポークを無くすことにより、そのスポークの組み付け作業が不要となり、簡単に製作できるものとなり、しかも重量を低減することができるものとなり、車椅子や荷物運搬車などに用いられるのに非常に好ましいものとなる。
【0014】
また、この発明の車輪は、スポークを無くすことにより、車椅子に装着した場合には、その車椅子の座席フレームの回りの補修を常に容易に行なうことができ、非常に便利なものとなる。
【0015】
さらに、この発明の車輪は、車椅子に装着した場合、車椅子の走行中にスポーク間に手を挟み込んだりすることがなく、安全なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の車輪の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すこの発明の車輪の正面図である。
【図3】図2中のA−A線によるこの発明の車輪の縦面図である。
【図4】図1に示すこの発明の車輪の分解斜視図である。
【図5】図4中のこの発明の車輪の内輪のさらに詳細な分解斜視図である。
【図6】この発明の車輪の内輪と外輪との間に挟み込むローラーの斜視図である。
【図7】この発明の車輪を装着した車椅子の側面図である。
【図8】従来の車輪の一例を示す正面図である。
【図9】図8に示す従来の車輪を装着した車椅子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の車輪の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
この発明の車輪は、円周内を中空とした内輪1の外周に、円周内を中空とした外輪2を、ローラー3を介在させて回転自在に取り付け、前記外輪2の外周にタイヤ4を取り付けたものとしている。
【0019】
前記内輪1は、軽量で強度性に優れた材料、例えば合成樹脂繊維や炭素繊維の複合材料、アルミニウム合金、チタン合金、ジルコニウム合金などの軽金属からなるものとするのが好ましい。この内輪1の外周には凹溝5を形成し、この凹溝5には円周の八等分位置にそれぞれローラー3を取り付けている。前記ローラー3は、図示したものでは、八等分位置に取り付けたものとしたが、等分位置であれば特に限定されることはなく、作動性、強度性、耐久性などを考慮すると、六等分位置〜十六等分位置に取り付けたものとするのが好ましい。ローラー3の取り付け位置を、これより多くすると構造が複雑化したり、車輪の重量が重くなるので好ましくなく、これより少なくすると作動性、強度性、耐久性に劣るものとなるので好ましくない。
【0020】
前記外輪2は、前記内輪1と同様に、軽量で強度性に優れた材料、例えば合成樹脂繊維や炭素繊維の複合材料、アルミニウム合金、チタン合金、ジルコニウム合金などの軽金属からなるものとするのが好ましい。この外輪2の内周には凹溝6を形成したものとし、この凹溝6に前記ローラー3が転動自在に接触するようにして、前記内輪1の外周に回転自在に取り付けたものとしている。さらに、前記外輪2は、外周に凹溝7を形成したものとし、この凹溝7に前記タイヤ4を嵌め込むことにより、このタイヤ4を外輪2の外周に取り付けたものとしている。前記タイヤ4は、図示したものでは、空気入りタイヤとしているが、空気無しタイヤとしてもよい。なお、前記外輪2の凹溝6は、前記ローラー3が転動自在に接触するときに、接触摩擦を低減させるため、浅くしたものとするのが好ましい。
【0021】
前記ローラー3は、金属、合成樹脂、ゴムなどの各種の材料からなるものとすることができるが、弾力性、耐摩耗性、振動吸収性、駆動性などを考慮したうえで、車輪の用途に応じたものとすることができる。このローラー3は、図示したものでは、球状としているが、楕円球状、ロール状などとすることができる。そして、このローラー3は、前記内輪1の凹溝5の両側壁5aに軸支される支持体8に転がり軸受9介して軸支したものとしている。図示したものでは、前記支持体8をリベットとし、前記内輪1の凹溝5の両側壁5aのうちの一方に形成した嵌合部10a付きの貫通孔10からこのリベットを挿入して、このリベットの頭部8aを嵌合部10aに嵌合するようにし、前記リベットの胴部8bを前記ローラー3の中心孔3aに貫通させ、前記内輪1の凹溝5の両側壁5aのうちの他方に形成した貫通孔11に、前記リベットの足部8cを挿入して、この足部6cをかしめるか、この足部8cの先端に止め板12をビス止めすることにより、前記ローラー3を前記内輪1の凹溝5の両側壁5aに軸支したものとしている。
【0022】
なお、前記内輪1の凹溝5のローラー3の取り付け位置には、前記ローラー3の落し穴13を形成したものとし、この落し穴13にあらかじめローラー3を落し込んでおき、前記ローラー3を前記内輪1の凹溝5の両側壁5aに軸支するときに、前記落し穴13からローラー3を持ち上げて、前記外輪2の内周の凹溝6に転動自在に接触するようにしている。
【0023】
以上のように構成されたこの発明の車輪は、例えば図7に示したように、車椅子の後車輪として使用される。
【0024】
この発明の車輪を車椅子の後車輪として使用するには、前記内輪1の凹溝5の一側壁5aを、車椅子のフレーム21の適宜個所に取り付けたものとしている。
【0025】
図示した車椅子は、背景技術で説明したものと同様の車椅子であり、そのフレーム21は、座席フレーム部21a、前フレーム部21b、肘当てフレーム部21c、底フレーム部21d、脚フレーム部21e、背フレーム部21fから構成されている。
【0026】
前記車椅子のフレーム21にこの発明の車輪を取り付けるには、底フレーム部21dの両側の適宜個所に、それぞれ内輪1の凹溝5の一側壁5aを溶接したり、ボルト止め等して固着し、背フレーム部21fの両側の適宜個所に、前記底フレーム部21dと同様に、それぞれ内輪1の凹溝5の一側面5aを溶接したり、ボルト止め等して固着すればよい。このようにすると、この発明の車輪は、フレーム21の側部の何処にでも固着することができるので、車椅子への取り付けが非常に簡単なものとなる。
【0027】
この発明の車輪は、以上に述べたように構成されており、スポークをまったく無くすことができるので、そのスポークの組み付け作業が不要となり、簡単に製作できるものとなる。
【0028】
さらに、この発明の車輪は、スポークをまったく無くすことができるので、ハブも不要となり、重量を低減することができるものとなり、車椅子や荷物運搬車などに用いると、これらの車椅子や荷物運搬車なども軽量化することができ非常に好ましいものとなる。なお、この発明の車輪は、スポ−クおよびハブに代えて、ローラーが必要となるが、このローラーは、スポ−クおよびハブに比べれば軽量で、前記したように取り付け個数が限定されることはないとしても、例えば実施態様に示したように、八等分位置に取り付けたものとすれば、作動性、強度性、耐久性などに充分なものとなるので、重量もあまり増加することはない。
【0029】
また、この発明の車輪は、スポークを無くすことにより、車椅子に装着した場合には、その車椅子の座席フレームの回りの補修を常に容易に行なうことができ、非常に便利なものとなり、さらに走行中においても、使用者がスポーク間に手を挟み込んだりすることがなく、安全なものとなる。
【符号の説明】
【0030】
1 内輪
2 外輪
3 ローラー
4 タイヤ
5 凹溝
5a 側壁
6 凹溝
8 支持体
9 転がり軸受
21 フレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周内を中空とした内輪(1)の外周に、円周内を中空とした外輪(2)を、ローラー(3)を介在させて回転自在に取り付け、前記外輪(2)の外周にタイヤ(4)を取り付けたことを特徴とする車輪。
【請求項2】
前記外輪(2)の内周に凹溝(6)を形成したものとし、この凹溝(6)に前記ローラー(3)が転動自在に接触するようにして、前記内輪(1)の外周に回転自在に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の車輪。
【請求項3】
前記内輪(1)の外周に凹溝(5)を形成したものとし、この凹溝(5)の両側壁(5a)に軸支される支持体(8)に転がり軸受(9)介して、前記ローラー(3)を軸支したことを特徴とする請求項2記載の車輪。
【請求項4】
前記内輪(2)の凹溝(5)の一側壁(5a)を、車椅子のフレーム(21)の適宜個所に取り付けたものとすることにより、車椅子の後車輪として使用するようにしたことを特徴とする請求項3記載の車輪。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−131313(P2012−131313A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284259(P2010−284259)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000111731)ハンマーキャスター株式会社 (17)