説明

車速信号改竄検知装置、車速抑制装置、車速信号改竄検知方法及び車速抑制方法

【課題】車速信号が改竄されたことを検知する。また、車速信号が改竄されたときに、エンジン出力を抑制する。
【解決手段】コンピュータを内蔵した改竄検知ユニット18は、車速センサ14から出力される駆動輪12の回転速度に比例したパルス信号に応じた第1の車速V1を算出すると共に、GPSレシーバ16により測位される車両位置の変化又はGPSレシーバ16の出力信号から第2の車速V2を算出する。そして、改竄検知ユニット18は、第1の車速V1と第2の車速V2との比較に基づいて車速信号が改竄されていると判定したときに、警告表示装置22を作動させると共に、エンジンを電子制御するエンジン制御ユニット20に対して改竄検知信号を出力する。一方、エンジン制御ユニット20は、改竄検知信号を受信したときに、例えば、エンジンへの燃料噴射量を制限することで、エンジン出力を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速信号が改竄されたことを検知する車速信号改竄検知装置及び車速信号改竄検知方法、並びに、車速信号が改竄されたときに車速を抑制する車速抑制装置及び車速抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本国内の大型車両では、特開2003−148193号公報(特許文献1)に記載されるように、一定以上の車速で走行できなくするスピードリミッタの装着が義務付けられている。スピードリミッタは、車速が目標制限速度に達すると、エンジンへの燃料噴射量を制限して加速を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、様々な方法により車速信号を改竄すると、実際の車速が目標制限速度を超えても燃料噴射量が制限されず、スピードリミッタを違法解除できてしまう。
そこで、本発明は従来の問題点に鑑み、車速信号が改竄されたか否かを検知する車速信号改竄検知装置及び車速信号改竄検知方法を提供することを目的とする。また、本発明は従来の問題点に鑑み、車速信号が改竄されたことが検知されたときに、車速を抑制する車速抑制装置及び車速抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
コンピュータを内蔵したコントロールユニットが、駆動輪の回転速度に比例したパルス信号に応じた第1の車速を算出すると共に、車両位置の変化又はGPSレシーバの出力信号から第2の車速を算出する。そして、コントロールユニットが、第1の車速と第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されているか否かを判定する。
また、コンピュータを内蔵した第1のコントロールユニットが、駆動輪の回転速度に比例したパルス信号に応じた第1の車速を算出すると共に、車両位置の変化又はGPSレシーバの出力信号から第2の車速を算出する。そして、第1のコントロールユニットが、第1の車速と第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されていると判定したときに、コンピュータを内蔵した第2のコントロールユニットに対して改竄検知信号を出力する。一方、第2のコントロールユニットが、第1のコントロールユニットからの改竄検知信号を受信したときに、エンジン出力を抑制する。
【発明の効果】
【0006】
コントロールユニットにおいて、駆動輪の回転速度に比例したパルス信号に応じた第1の車速が算出されると共に、車両位置の変化又はGPSレシーバの出力信号から第2の車速が算出される。そして、コントロールユニットにおいて、第1の車速と第2の車速との比較に基づいて、車速信号が改竄されているか否かが判定される。このため、車速信号を改竄したことを検知することができる。
【0007】
また、第1のコントロールユニットにおいて、第1の車速と第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されていると判定されたときに、第2のコントロールユニットに対して改竄検知信号が出力される。一方、第2のコントロールユニットにおいて、改竄検知信号が受信されたときに、エンジン出力が抑制される。このため、車速信号を改竄したときには、エンジン出力抑制により加速が緩やかになるので、車速信号の改竄が行われることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】車速信号改竄検知装置及び車速抑制装置を搭載した車両の概要図
【図2】改竄検知ユニットに組み込まれた各種機能のブロック図
【図3】第1の車速算出処理のフローチャート
【図4】第2の車速算出処理のフローチャート
【図5】改竄検知処理のフローチャート
【図6】エンジン制御ユニットに組み込まれた各種機能のブロック図
【図7】エンジン出力抑制処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。
図1は、車速信号改竄検知装置及び車速抑制装置を搭載した車両の概要を示す。
車両10において、変速機の出力軸から駆動輪12までの駆動力伝達系には、駆動輪12の回転速度に比例したパルス信号(正弦波又は矩形波)を出力する車速センサ14が取り付けられる。また、車両10の所定部位には、現在の車両位置(緯度,経度及び高度)を測位するGPS(Global Positioning System)レシーバ16が搭載される。なお、GPSレシーバ16としては、ナビゲーションシステムを構成するGPSレシーバを流用してもよい。
【0010】
車速センサ14から出力されるパルス信号(以下「車速パルス信号」という)は、コンピュータを内蔵した改竄検知ユニット18に入力されると共に、コンピュータを内蔵したエンジン制御ユニット20に入力される。GPSレシーバ16から出力される車両位置信号は、改竄検知ユニット18に入力される。改竄検知ユニット18とエンジン制御ユニット20とは、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して相互に接続される。また、改竄検知ユニット18及びエンジン制御ユニット20には、車速信号が異常であること(車速信号が改竄されていること)を警告する警告灯、及び、エンジン出力抑制中であることを表示する表示灯が取り付けられた警告表示装置22が接続される。ここで、警告表示装置22は、運転席に対面するコンビネーションメータに組み込むことができる。
【0011】
なお、改竄検知ユニット18が、コントロールユニット又は第1のコントロールユニットに該当する一方、エンジン制御ユニット20が、第2のコントロールユニットに該当する。
改竄検知ユニット18は、ROM(Read Only Memory)などに記憶された制御プログラムを実行することで、図2に示すように、第1の車速算出部18A,第2の車速算出部18B,改竄判定部18C,データ記録部18D,警告表示部18E及び改竄検知信号出力部18Fを夫々具現化する。
【0012】
第1の車速算出部18Aは、車速センサ14から車速パルス信号を常時入力し、時々刻々と変化する第1の車速V1を算出する。第2の車速算出部18Bは、GPSレシーバ16から一定時間ごとに車両位置を読み込み、車両位置の変化又はその出力信号から第2の車速V2を算出する。改竄判定部18Cは、第1の車速V1と第2の車速V2との比較に基づいて、車速信号(第1の車速V1)が改竄されているか否かを判定する。データ記録部18Dは、改竄判定部18Cにより車速信号が改竄されていると判定されたときに、フラッシュメモリ,ハードディスクなどの記憶装置18Gに改竄状態を特定可能な各種データを保存する。警告表示部18Eは、改竄判定部18Cにより車速信号が改竄されていると判定されたときに、警告表示装置22の警告灯を点灯させる。改竄検知信号出力部18Fは、改竄判定部18Cにより車速信号が改竄されていると判定されたときに、エンジン制御ユニット20に対して改竄検知信号を出力する。
【0013】
ここで、改竄検知ユニット18においては、例えば、サービス工場などで記憶装置18Gに保存された各種データを読み取れるようにすべく、データ読取装置24が着脱可能に接続できるようになっている。なお、改竄検知ユニット18とデータ読取装置24との接続は、電波や赤外線などを利用した無線通信によるものでもよい。また、データ読取装置24は、内部の不揮発性メモリ又はフラッシュメモリカードのような記録媒体に、改竄検知ユニット18から読み取った各種データをコピーして保存できる機能を有していてもよい。
【0014】
図3は、改竄検知ユニット18の第1の車速算出部18Aが、第1の所定時間ごとに繰り返し実行する第1の車速算出処理を示す。
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様。)では、第1の車速算出部18Aが、車速センサ14から車速パルス信号を読み込む。
ステップ2では、第1の車速算出部18Aが、車速パルス信号に応じた第1の車速V1を算出する。具体的には、第1の車速算出部18Aは、連続した2つの車速パルス信号の周期を計測し、その周期から周波数を算出する。そして、第1の車速算出部18Aは、車速パルス信号の周波数から第1の車速V1を算出する。なお、第1の車速V1は、任意の時点で参照可能とすべく、例えば、コンピュータの揮発性メモリに書き込んでおく(第2の車速V2も同様)。
【0015】
図4は、改竄検知ユニット18の第2の車速算出部18Bが、第1の所定時間ごとに繰り返し実行する第2の車速算出処理を示す。
ステップ11では、第2の車速算出部18Bが、GPSレシーバ16から車両位置を読み込む。
ステップ12では、第2の車速算出部18Bが、GPSレシーバ16の出力信号に車速が含まれているか否かを判定する。即ち、GPSレシーバ16の種類によっては、その出力信号に車両位置のみならず車速が含まれているものがあるため、これを直接利用できるか否かを判定している。そして、第2の車速算出部18Bは、GPSレシーバ16の出力信号に車速が含まれていると判定すれば処理をステップ13へと進める一方(Yes)、GPSレシーバ16の出力信号に車速が含まれていないと判定すれば処理をステップ14へと進める(No)。
【0016】
ステップ13では、第2の車速算出部18Bが、GPSレシーバ16の出力信号から第2の車速V2を算出する。具体的には、第2の車速算出部18Bは、GPSレシーバ16の出力信号から車速を抽出し、これを第2の車速V2とする。
ステップ14では、第2の車速算出部18Bが、車両位置の変化から第2の車速V2を算出する。具体的には、第2の車速算出部18Bは、車両位置の変化から移動した距離Lを算出し、この距離Lを第1の所定時間で除算することで第2の車速V2を算出する。
【0017】
図5は、改竄検知ユニット18の改竄判定部18C,データ記録部18D,警告表示部18E及び改竄検知信号出力部18Fが協働して、第2の所定時間ごとに繰り返し実行する改竄検知処理を示す。なお、第2の所定時間は、第1の所定時間と同じにしてもよい。
ステップ21では、改竄判定部18Cが、第1の車速算出部18Aにより第1の車速V1が算出できたか否か、即ち、車速信号を改竄することを目的として車速センサ14が取り外されているか否かを判定する。そして、改竄判定部18Cは、第1の車速V1が算出できたと判定すれば処理をステップ22へと進める一方(Yes)、第1の車速V1が算出できないと判定すれば処理をステップ24へと進める(No)。ここで、改竄判定部18Cは、第1の車速V1が0(ゼロ)のときには、第1の車速V1が算出できたと判定する(以下同様)。
【0018】
ステップ22では、改竄判定部18Cが、第2の車速算出部18Bにより第2の車速V2が算出できたか否か、即ち、GPS衛星の電波受信状態などによりGPSレシーバ16が車両位置を測位できない状態であるか否かを判定する。そして、改竄判定部18Cは、第2の車速V2が算出できたと判定すれば処理をステップ23へと進める一方(Yes)、第2の車速V2が算出できないと判定すれば処理をステップ28へと進める(No)。
【0019】
ステップ23では、改竄判定部18Cが、第2の車速V2から第1の車速V1を減算した値が所定値Vtより大きいか否か(V2−V1>Vt)、即ち、第1の車速V1と第2の車速V2との差が所定値Vtより大きいか否かを判定する。ここで、所定値Vtは、車速信号が改竄されているか否かを判定するための閾値であって、例えば、第1の車速V1及び第2の車速V2の算出精度に応じて適宜設定される。そして、改竄判定部18Cは、第2の車速V2から第1の車速V1を減算した値が所定値Vtより大きいと判定すれば処理をステップ24へと進める一方(Yes)、第2の車速V2から第1の車速V1を減算した値が所定値Vt以下であると判定すれば処理を終了させる(No)。なお、改竄判定部18Cは、車速信号の改竄検知精度を向上させるべく、第2の車速V2から第1の車速V1を減算した値が所定値Vtより大きい状態が第3の所定時間連続したときに、車速信号が改竄されていると判定してもよい。
【0020】
ステップ24では、警告表示部18Eが、警告表示装置22の警告灯を点灯させる。
ステップ25では、改竄検知信号出力部18Fが、エンジン制御ユニット20に対して改竄検知信号を出力する。
ステップ26では、データ記録部18Dが、改竄検知継続中であるか否かを判定する。そして、データ記録部18Dは、改竄検知継続中であると判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、改竄検知継続中でないと判定すれば処理をステップ27へと進める(No)。
【0021】
ステップ27では、データ記録部18Dが、改竄検知が行なわれた時点を含む前後所定時間(十数秒〜数分程度)のGPSデータ(車両位置及びその時刻),第1の車速V1及び第2の車速V2を記憶装置18Gに保存する。
ステップ28では、データ記録部18Dが、第2の車速V2を算出できなくなる直前、即ち、GPSレシーバ16がGPS衛星からの電波を受信できなくなる直前のGPSデータ及び第2の車速V2を記憶装置18Gに保存する。
【0022】
ステップ29では、データ記録部18Dが、第1の車速V1又はその最高速度Vmaxを記憶装置18Gに時系列で保存する。なお、最高速度Vmaxを保存するようにすれば、記憶装置18Gの記憶領域の消費を抑制することができる。
ステップ30では、データ記録部18Dが、第2の車速算出部18Bにより第2の車速V2が算出できるようになったか否かを判定する。そして、改竄判定部18Cは、第2の車速V2が算出できるようになったと判定すれば処理をステップ31へと進める一方(Yes)、第2の車速V2が相変わらず算出できないと判定すれば処理をステップ29へと戻す(No)。
【0023】
ステップ31では、データ記録部18Dが、最新のGPSデータ,第1の車速V1及び第2の車速V2を記憶装置18Gに保存する。
かかる改竄検知ユニット18によれば、車速センサ14から出力される車速パルス信号に応じた第1の車速V1が算出されると共に、GPSレシーバ16により測位された車両位置の変化又はGPSレシーバ16の出力信号から第2の車速V2が算出される。そして、第1の車速V1と第2の車速V2との比較に基づいて、車速信号が改竄されているか否かが判定される。車速信号が改竄されていると判定されれば、その旨を車両運転者などに警告すべく、警告表示装置22の警告灯が点灯される。また、車速信号が改竄されていると判定されれば、燃料噴射量の制限などによりエンジン出力を抑制すべく、エンジン制御ユニット20に対して改竄検知信号が出力される。さらに、車速信号が改竄されていると判定されれば、車速改竄を検知した時点を含む前後所定時間のGPSデータ,第1の車速V1及び第2の車速V2が記憶装置18Gに保存される。ここで、車速改竄を検知した時点を含む前後所定時間のGPSデータなどは、車速改竄検知継続中には保存されないため、記憶装置18Gの記憶領域を徒に消費することを抑制できる。
【0024】
第1の車速V1が算出できないときには、例えば、スピードリミッタを違法解除することを目的として、車速センサ14を取り外し、又は、その出力信号を遮断した可能性があると考えられる。このため、第1の車速V1が算出できないときには、車速信号の改竄判定と同様に、警告表示装置22の警告灯が点灯されると共に、エンジン制御ユニット20に対して改竄検知信号が出力される。
【0025】
ここで、車速信号の改竄検知原理について説明する。
車速信号が改竄されていないときには、第1の車速V1と第2の車速V2とは略同一の速度を示す。しかし、スピードリミッタ解除のために車速信号が改竄されると、第1の車速V1と第2の車速V2との間に乖離が生じる。このため、第1の車速V1と第2の車速V2との差が所定値Vtより大きくなったときに、車速信号が改竄されていると検知することができる。なお、車速信号の改竄においては、第1の車速V1を実際の車速よりも小さく改竄することが常であるため、第1の車速V1と第2の車速V2との差の絶対値を考慮する必要はない。
【0026】
ところで、GPSの特性として、GPSレシーバ16にGPS衛星からの電波が届かず、GPSレシーバ16が車両位置を測位できなくなってしまうことが考えられる。この場合には、車両位置を測位できなくなる直前のGPSデータ及び第2の車速V2が記憶装置18Gに保存されると共に、GPSレシーバ16が車両位置を測位できるようになるまでの第1の車速V1又はその最高速度Vmaxが記憶装置18Gに順次保存される。また、GPSレシーバ16が車両位置を測位できるようになれば、最新のGPSデータ,第1の車速V1及び第2の車速V2が記憶装置18Gに保存される。このため、改竄検知ユニット18にデータ読取装置24を接続して、記憶装置18Gに保存された各種データを読み出して解析することで、GPSレシーバ16が故意に取り外されたか否かを判断することができる。
【0027】
改竄検知ユニット18の記憶装置18Gは有限の記憶領域を有しているため、データ読取装置24からデータ削除指示があったとき、又は、所定期間が経過したときに、各種データが削除されるようにすればよい。また、記憶装置18Gにおいて、リングバッファ形式で所定数のデータを保存するようにしてもよい。さらに、記憶装置18Gに保存された各種データは、容易に改竄されないようにすべく、暗号化された状態で保存されていてもよい。
【0028】
一方、エンジン制御ユニット20は、ROMなどに記憶された制御プログラムを実行することで、図6に示すように、エンジン出力抑制部20A及び警告表示部20Bを夫々具現化する。
エンジン出力抑制部20Aは、改竄検知ユニット18からの改竄検知信号を受信したとき、又は、改竄検知ユニット18との通信が正常でないとき、エンジン出力を抑制する。警告表示部20Bは、エンジン出力抑制部20Aによりエンジン出力が抑制されているときに、警告表示装置22の表示灯を点灯させる。なお、エンジン出力抑制部20Aは、車速センサ14から出力された車速パルス信号に基づくスピードリミット処理を併せて実行する。
【0029】
図7は、エンジン制御ユニット20のエンジン出力抑制部20A及び警告表示部20Bが協働して、第4の所定時間ごとに繰り返し実行するエンジン出力抑制処理を示す。
ステップ41では、エンジン出力抑制部20Aが、改竄検知信号を受信したか否かを判定する。そして、エンジン出力抑制部20Aは、改竄検知信号を受信したと判定すれば処理をステップ43へと進める一方(Yes)、改竄検知信号を受信していないと判定すれば処理をステップ42へと進める(No)。
【0030】
ステップ42では、エンジン出力抑制部20Aが、改竄検知ユニット18との通信が正常であるか否かを判定する。ここで、改竄検知ユニット18との通信が正常であるか否かは、例えば、改竄検知ユニット18から所定信号が定期的に送信されているか否かを介して判定することができる。そして、エンジン出力抑制部20Aは、通信が正常であると判定すれば処理を終了させる一方(Yes)、通信が正常でないと判定すれば処理をステップ43へと進める(No)。
【0031】
ステップ43では、エンジン出力抑制部20Aが、例えば、エンジンへの燃料噴射量を制限することで、エンジン出力を抑制する。
ステップ44では、警告表示部20Bが、警告表示装置22の表示灯を点灯させる。
かかるエンジン制御ユニット20によれば、改竄検知ユニット18からの改竄検知信号を受信したときには、エンジン出力が抑制される。このとき、車速信号異常によりエンジン出力が抑制中であることを表示すべく、警告表示装置22の表示灯が点灯される。また、改竄検知ユニット18から改竄検知信号が出力されないようにこれを取り外すと、改竄検知ユニット18との通信が正常でなくなるため、エンジン出力が抑制される。このときも、車速信号異常によりエンジン出力が抑制中であることを表示すべく、警告表示装置22の表示灯が点灯される。
【0032】
そして、車両運転者などは、スピードリミッタを違法解除すべく車速信号を改竄しても、エンジン出力抑制により加速が緩やかになるため、車速信号の改竄をすべきでないと考えるようになる。このため、車速信号の改竄が行われることを抑制できる。
なお、改竄検知ユニット18及びエンジン制御ユニット20は、一体型であってもよい。但し、改竄検知ユニット18とエンジン制御ユニット20を別体型とすれば、エンジン制御ユニット20の制御プログラムを多少変更することで、既存の車両に本発明を容易に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 車両
12 駆動輪
14 車速センサ
16 GPSレシーバ
18 改竄検知ユニット
18A 第1の車速算出部
18B 第2の車速算出部
18C 改竄判定部
18D データ記録部
18E 警告表示部
18F 改竄検知信号出力部
18G 記憶装置
20 エンジン制御ユニット
20A エンジン出力抑制部
20B 警告表示部
22 警告表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪の回転速度に比例したパルス信号を出力する車速センサと、
車両位置を測位するGPSレシーバと、
コンピュータを内蔵したコントロールユニットと、
を含んで構成され、
前記コントロールユニットは、前記車速センサから出力されたパルス信号に応じた第1の車速を算出すると共に、前記GPSレシーバにより測位された車両位置の変化又は前記GPSレシーバの出力信号から第2の車速を算出し、前記第1の車速と前記第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されているか否かを判定することを特徴とする車速信号改竄検知装置。
【請求項2】
前記コントロールユニットは、前記第1の車速と前記第2の車速との差が所定値より大きくなったときに、車速信号が改竄されていると判定することを特徴とする請求項1記載の車速信号改竄検知装置。
【請求項3】
車速信号が改竄されていることを警告する警告灯を更に備え、
前記コントロールユニットは、車速信号が改竄されていると判定したときに、前記警告灯を点灯させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車速信号改竄検知装置。
【請求項4】
前記コントロールユニットは、前記第1の車速が算出できないときに、前記警告灯を点灯させることを特徴とする請求項3記載の車速信号改竄検知装置。
【請求項5】
前記コントロールユニットは、車速信号が改竄されていると判定したときに、エンジンを電子制御するエンジン制御ユニットに対して改竄検知信号を出力することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の車速信号改竄検知装置。
【請求項6】
前記コントロールユニットは、車速信号が改竄されていると判定したときに、その判定時点を含む前後所定時間の車両位置,時刻,第1の車速及び第2の車速を保存することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の車速信号改竄検知装置。
【請求項7】
前記コントロールユニットは、前記GPSレシーバによる車両位置の測位ができなくなったときに、車両位置の測位ができなくなる直前の車両位置及び第2の車速を保存すると共に、車両位置の測位ができないときの第1の車速及びその最高速度を保存することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の車速信号改竄検知装置。
【請求項8】
駆動輪の回転速度に比例したパルス信号を出力する車速センサと、
車両位置を測位するGPSレシーバと、
コンピュータを内蔵した第1のコントロールユニットと、
コンピュータを内蔵した第2のコントロールユニットと、
を含んで構成され、
前記第1のコントロールユニットは、前記車速センサから出力されたパルス信号に応じた第1の車速を算出すると共に、前記GPSレシーバにより測位された車両位置の変化又は前記GPSレシーバの出力信号から第2の車速を算出し、前記第1の車速と前記第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されていると判定したときに、前記第2のコントロールユニットに対して改竄検知信号を出力する一方、
前記第2のコントロールユニットは、前記第1のコントロールユニットからの改竄検知信号を受信したときに、エンジン出力を抑制すること
を特徴とする車速抑制装置。
【請求項9】
前記第1のコントロールユニットは、前記第1の車速と前記第2の車速との差が所定値より大きくなったときに、車速信号が改竄されていると判定することを特徴とする請求項8記載の車速抑制装置。
【請求項10】
車速信号が改竄されていることを警告する警告灯を更に備え、
前記第1のコントロールユニットは、車速信号が改竄されていると判定したときに、前記警告灯を点灯させることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の車速抑制装置。
【請求項11】
前記第1のコントロールユニットは、前記第1の車速が算出できないときに、前記警告灯を点灯させることを特徴とする請求項10記載の車速抑制装置。
【請求項12】
前記第1のコントロールユニットは、前記第1の車速が算出できないときに、前記第2のコントロールユニットに対して改竄検知信号を出力することを特徴とする請求項8〜請求項11のいずれか1つに記載の車速抑制装置。
【請求項13】
前記第2のコントロールユニットは、前記第1のコントロールユニットとの通信が正常でないときに、エンジン出力を抑制することを特徴とする請求項8〜請求項12のいずれか1つに記載の車速抑制装置。
【請求項14】
エンジン出力が抑制されていることを表示する表示灯を更に備え、
前記第2のコントロールユニットは、前記エンジン出力を抑制したときに、前記表示灯を点灯させることを特徴とする請求項8〜請求項13のいずれか1つに記載の車速抑制装置。
【請求項15】
コンピュータを内蔵したコントロールユニットが、駆動輪の回転速度に比例したパルス信号に応じた第1の車速を算出すると共に、車両位置の変化又はGPSレシーバの出力信号から第2の車速を算出し、前記第1の車速と前記第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されているか否かを判定することを特徴とする車速信号改竄検知方法。
【請求項16】
コンピュータを内蔵した第1のコントロールユニットが、駆動輪の回転速度に比例したパルス信号に応じた第1の車速を算出すると共に、車両位置の変化又はGPSレシーバの出力信号から第2の車速を算出し、前記第1の車速と前記第2の車速との比較に基づいて車速信号が改竄されていると判定したときに、コンピュータを内蔵した第2のコントロールユニットに対して改竄検知信号を出力する一方、
前記第2のコントロールユニットが、前記第1のコントロールユニットからの改竄検知信号を受信したときに、エンジン出力を抑制すること
を特徴とする車速抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126273(P2012−126273A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280038(P2010−280038)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】