説明

軟口蓋安定器

【課題】
外科手術などの侵襲的治療法によらずに、鼾防止効果が優れていて、装着中に脱落せず、咽頭反射による窒息のおそれがなく、咬合を阻害せず、大量生産が可能で、歯形の印象採取及び転写が不要で、形状寸法の調整が容易な、軟口蓋型の鼾及び閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する器具を提供する。
【解決手段】
軟口蓋へ当接するように後方へ突出させて、固有口腔へ配置する制振部材と、該制振部材を保持して口蓋へ沿うように湾曲するアーチ部と、該アーチ部の左右両端へ配置して左右の臼後空隙へ収容する一対の顎通過部と、該顎通過部から前方へ屈曲して口腔前庭へ収容するアーム部と、を有する保持部材と、該アーチ部へ固設して、硬口蓋へ沿うように湾曲し、前端が該顎通過部よりも前方に位置する反力板と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術などの侵襲的治療法によらずに、軟口蓋型の鼾を防止するために、口腔へ着脱自在に装着する鼾防止器具に関するものである。また、本発明の鼾防止器具には、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するものを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
鼾は、睡眠中に鼻、口峡、咽頭などの空気の通り道が狭窄されたときに、これらの組織が呼吸の気流によって振動して騒音を発生するものである。鼾の発生源のなかでも特に軟口蓋は、豚の鳴き声のような音色の大きな騒音を発生させて、周囲の人達の安眠を妨害する。この鼾は軟口蓋型の鼾と呼ばれている。
【0003】
軟口蓋型の鼾は、呼吸の気流によって、軟口蓋及びその縁辺である口蓋帆や、その縁辺の一部である口蓋垂が振動するために発生する。睡眠中には、軟口蓋の筋肉群が弛緩するので軟口蓋型の鼾が発生しやすい。
【0004】
また、軟口蓋や舌根が、仰臥したときに咽頭腔へ垂れ下がって気道を狭めると、閉塞型の睡眠時無呼吸症候群の原因になる。睡眠時無呼吸症候群は睡眠時呼吸障害とも呼ばれ、罹患すると低酸素血症や断続的覚醒を招いて睡眠不足となり、居眠り、思考力低下など、日常生活に悪影響をもたらす症状が現れる。その症状が高じると、血管収縮、凝固能亢進、内分泌異常が発生し、ひいては高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などをもたらすと言われている。
【0005】
外科手術などの侵襲的治療法によらずに軟口蓋型の鼾を防止するために、口腔へ着脱可能に装着する器具が考案されている。特許文献1及び特許文献2の鼾防止器具は、留め金(クラスプ)を上顎の歯へ引っ掛けて、その留め金と結合しているボタン状又は板状の部材を軟口蓋の下面へ押し付けるものである。また、特許文献3の鼾ストレス解放具は、軟口蓋の下面へ押し付けるための後部部材を備えたU字形マウスピースを上顎の歯列弓へ嵌合させるものである。また、閉塞型の睡眠時無呼吸を防止するための器具である特許文献4の歯列マウスピースは、下顎を前進させるためのU字形マウスピースを上顎及び下顎の歯列弓へ嵌合させるものである。
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2の鼾防止器具は、留め金を使用者の歯の形状寸法に適合させるために、歯の型取り(印象採取)をして歯列模型を製作する必要があり、使用者個々の口腔の形状寸法に適合するように1個ずつ製作しなければならない。このため大量生産は困難であり、製作及び形状調整に時間と手間がかかるという課題がある。また、留め金と歯との間に隙間があると、鼾防止器具が上顎から脱落して鼾防止効果が失われるという課題がある。
【0007】
特許文献3の鼾ストレス解放具も、特許文献4の歯列マウスピースも、U字形マウスピースを使用者の歯列弓へ密着させるために、印象採取をして歯列模型を製作する必要又は既製品のマウスピースを加熱して歯形を転写する必要があり、1個ずつ製作又は形状調整しなければならない。このため、製作及び形状調整に時間と手間がかかるという課題がある。また、U字形マウスピースと歯列との間に隙間があると、器具が上顎から脱落して鼾防止効果又は睡眠時無呼吸の防止効果が失われるという課題がある。また、加熱して歯形を転写するタイプのマウスピースは耐熱性が乏しく、加熱消毒によって変形するという課題がある。
【0008】
特許文献1及び特許文献2の鼾防止器具も、特許文献3の鼾ストレス解放具も、軟口蓋の下面へ部材を押し付けて軟口蓋を押し上げるものである。このため、軟口蓋の縁辺である口蓋帆及び口蓋垂の振動を完全には防止できないという課題がある。また、嚥下運動や発声の際に、口蓋帆張筋及び口蓋咽頭筋が緊張して軟口蓋が下降すると、軟口蓋へ押し付けている部材が軟口蓋へ食い込んで、粘膜を傷つけ苦痛が生じるという課題がある。また、下降する軟口蓋によって、軟口蓋へ押し付けている部材が圧迫されるため、器具が上顎から脱落するおそれがある。器具が上顎から脱落するか、又は軟口蓋へ押し付けている部材が軟口蓋から離脱すると、鼾防止効果が損なわれる。また、脱落した器具が咽頭腔へ侵入し、気道を塞いで呼吸を阻害するおそれがある。また、睡眠中に器具が咽頭の粘膜又は扁桃腺へ接触すると、咽頭反射によって嘔吐し、窒息するおそれがある。
【0009】
特許文献3の鼾ストレス解放具は、U字形マウスピースと歯列との間に隙間があると、軟口蓋へ押し付けるための後部部材が上下方向へ揺動する。このため、後部部材が軟口蓋から離脱して鼾防止効果が失われるという課題がある。
【0010】
特許文献4の歯列マウスピースは、舌根による気道の閉塞を防止するために、下顎を通常の咬合位置よりも前進させることから、咬合が不自然になって不快感や不眠をもたらすという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許4669459号公報
【特許文献2】特表2006−527031号公報
【特許文献3】米国特許5915385号公報
【特許文献4】特開平7−241341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、外科手術などの侵襲的治療法によらずに、鼾防止効果が優れていて、装着中に脱落せず、咽頭反射による窒息のおそれがなく、咬合を阻害せず、大量生産が可能で、歯形の印象採取及び転写が不要で、形状寸法の調整が容易な、軟口蓋型の鼾及び閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、上記の課題の解決手段を説明する。
なお、本明細書中に特段の記載がない限り、本発明の軟口蓋安定器に関する上下、前後の方向は、口腔へ装着したときに、頭頂へ向かう方向を「上方」と呼び、その反対側の頸へ向かう方向を「下方」と呼ぶ。口腔から呼気が吐出される方向を「前方」と呼び、その反対側の後頭部へ向かう方向を「後方」と呼ぶ。また、この「上方」及び「下方」に概ね直角の方向を「水平方向」と呼ぶ。
【0014】
本明細書に記載する「固有口腔」は、歯列弓及び歯槽の内側にあって、口蓋と口底に囲まれた空間である。「口腔前庭」は、歯列弓及び歯槽の外側にあって、頬と口唇に囲まれた馬蹄形の空隙である。また、「臼後空隙」は、上顎と下顎の間にあって、歯槽の後端の歯肉と翼下顎ヒダとに囲まれた間隙である。上顎と下顎を固く咬合したときも、臼後空隙が固有口腔と口腔前庭を連通させている。
【0015】
請求項1に記載したとおり、本発明の軟口蓋安定器は、
口腔へ着脱自在に装着する器具であって、
軟口蓋へ当接するように後方へ突出させて、固有口腔へ配置する制振部材と、
該制振部材を保持して口蓋へ沿うように湾曲するアーチ部と、該アーチ部の左右両端へ配置して左右の臼後空隙へ収容する一対の顎通過部と、該顎通過部から前方へ屈曲して口腔前庭へ収容するアーム部と、を有する保持部材と、
該アーチ部へ固設して、硬口蓋へ沿うように湾曲し、前端が該顎通過部よりも前方に位置する反力板と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、請求項2に記載したとおり、
前記制振部材及び/又は前記保持部材へ固設し、前記反力板の前端よりも後方へ配置した支持突起を、
さらに備えることを特徴とする。
【0017】
さらに好ましくは、請求項3に記載したとおり、
前記制振部材が、上下方向へ撓むように弾性を備えていることを特徴とする。
【0018】
さらに好ましくは、請求項4に記載したとおり、
前記支持突起が、上下方向へ伸縮するように弾性を備えていることを特徴とする。
【0019】
さらに好ましくは、請求項5に記載したとおり、
前記制振部材の後端部が、口蓋垂の背面及び側面を包囲するように水平方向へ湾曲していることを特徴とする。
【0020】
さらに好ましくは、請求項6に記載したとおり、
前記支持突起及び/又は反力板が、上顎と下顎を咬合したときに舌へ摩擦することを特徴とする。
【0021】
さらに好ましくは、請求項7に記載したとおり、
前記制振部材が、凹面が上方へ向いて外周が軟口蓋へ当接する制振吸盤であることを特徴とする。
【0022】
さらに好ましくは、請求項8に記載したとおり、
前記支持突起が、凹面が下方へ向いて外周が舌へ当接するように固有口腔へ配置する支持吸盤であることを特徴とする。
【0023】
さらに好ましくは、請求項9に記載したとおり、
構成部材の全部又は一部を被覆する弾性発泡被覆材をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の軟口蓋安定器は、口腔へ着脱自在に装着するものであり、口腔のどの部位にも固着する必要はない。本発明の軟口蓋安定器は、左右一対の顎通過部を左右の臼後空隙へ収容し、顎通過部よりも内側の部分を固有口腔へ収容し、この顎通過部よりも外側の部分を口腔前庭へ収容して、口腔へ装着する。この顎通過部は、制振部材よりも外側へ一つずつ別々に配置して、片方を左の臼後空隙へ収容し、他方を右の臼後空隙へ収容する。顎通過部の太さは、上顎と下顎を咬合したときに臼後空隙へ収容できる程度にする。
【0025】
本発明の軟口蓋安定器を構成する制振部材は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに、軟口蓋へ当接するように位置を調整して固有口腔へ収容する。この制振部材は、軟口蓋の下面だけへ当接させても良く、軟口蓋の縁辺である口蓋帆や口蓋垂へ当接させても良く、軟口蓋の下面と縁辺の両方へ当接させても良い。
【0026】
この制振部材の位置を調整するための具体的な方法としては、あらかじめ形状寸法を調節した制振部材を保持部材へ接合する方法が例示される。また、保持部材を湾曲もしくは屈曲させることにより、制振部材と保持部材との接合部を前進もしくは後退させ、又は上昇もしくは下降させる方法も例示される。また、制振部材を湾曲させることにより、制振部材の後端を上昇もしくは下降させ、又は左右方向へ移動させる方法も例示される。ただし、これらの例示には限定されない。
【0027】
また、個々の使用者によって形状寸法が異なる口腔へ保持部材の各部分を適合させるための具体的な方法としては、保持部材を変形させて、顎通過部の外端にある屈曲部分の位置を内側又は外側へ移動させることにより、顎通過部同士の間隔を調整する方法が例示される。また、上下方向へ蛇行するようにアーム部を湾曲又は屈曲させることにより、アーム部の余剰寸法を縮める方法も例示される。保持部材の平面形状は、左右のアーム部が連続しない略「C」字形でも良く、左右のアーム部が馬蹄形に連続する略「D」字形でも良い。平面形状が略「C」字形の保持部材の場合は、アーム部の端部を切除することにより、余剰寸法を解消する方法も例示される。ただし、これらの例示には限定されない。
【0028】
本発明の軟口蓋安定器を構成する反力板は、口蓋へ沿うように湾曲する。反力板には、舌又は軟口蓋によって圧迫されても塑性変形しない程度の強度を備える。
【0029】
請求項2の発明に係る軟口蓋安定器を構成する支持突起は、固有口腔へ配置する場合は、下端部を舌及び/又は口底へ当接させる。この支持突起を口腔前庭へ配置する場合は、頬の内面及び/又は口腔前庭の底部へ当接させる。前後方向における支持突起の位置は反力板の前端よりも後方である。保持部材のアーム部へ固設する場合は、顎通過部に近い位置が好ましい。この支持突起が一つだけの場合は固有口腔へ配置する。支持突起が複数の場合は、固有口腔へ配置しても良く、口腔前庭へ配置しても良く、固有口腔と口腔前庭の両方へ配置しても良い。
【0030】
請求項3の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、弾性を備えた制振部材は、嚥下運動又は発声の際に下降する軟口蓋によって上方から圧迫されたときに、後端部が一時的に下降する程度の弾性を備えている。その制振部材が圧迫から解放されたときは、後端部が上昇して元の位置へ復帰する。
【0031】
請求項4の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、弾性を備えた支持突起は、口を閉じて上下方向から圧迫すると収縮して高さが短くなり、口を開けて圧迫を解放すると上下方向へ伸張して元の高さに回復する程度の弾性を備えている。この弾性を備えた支持突起を固有口腔へ配置する場合は、下端部が舌及び/又は口底へ当接し、口腔前庭へ配置する場合は、下端部が口腔前庭の底部へ当接する。
【0032】
請求項5の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、後端部が水平方向へ湾曲している制振部材は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触しないようにして、湾曲部を後方へ向けて口峡へ挿入する。この水平方向へ湾曲している部分は口蓋垂の背面及び側面を包囲する。軟口蓋安定器を口腔へ装着してから何度か唾液を嚥下することによって、軟口蓋が上下方向へ往復運動して、水平方向へ湾曲している制振部材の内側へ口蓋垂が挿入される。口蓋垂の挿入状態は、口を開けて鏡に映して確認すると良い。
【0033】
請求項6の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、舌へ摩擦する支持突起及び/又は反力板は、固有口腔へ配置する。舌へ摩擦する部分の面積を広くするほど、摩擦力が高まるので好ましい。また、この舌へ摩擦する支持突起及び/又は反力板の下面に微細な凹凸を分布させた場合は、その凹凸が舌との摩擦力及び粘着力を高めるので好ましい。また、弾性を備えた材料又は表面が柔軟な材料を用いた場合は、舌を損傷しないので好ましい。
【0034】
請求項7の発明に係る軟口蓋安定器を構成する制振吸盤は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに軟口蓋へ当接するようにして固有口腔へ配置し、軟口蓋へ吸着させる。軟口蓋安定器を口腔へ装着してから何度か唾液を嚥下することによって、軟口蓋が下降して制振吸盤の凹面を圧迫するので、制振吸盤が軟口蓋へ吸着する。軟口蓋の吸着状態は、口を開けて鏡に映して確認すると良い。制振吸盤を透明にした場合は、鏡に映したときに軟口蓋の密着具合が見えるので好ましい。この制振吸盤に柔軟性の高い材料を用いた場合は、軟口蓋の粘膜を保護して吸着効果を高めるので好ましい。複数個の制振部材を配置する場合は、その全部を制振吸盤にしても良く、他の形態の制振部材と混在させても良い。
【0035】
請求項8の発明に係る軟口蓋安定器を構成する支持吸盤は、固有口腔へ配置して舌へ吸着させる。口腔へ装着してから何度か唾液を嚥下することによって、舌背が上昇して支持吸盤の凹面を圧迫するので、支持吸盤が舌へ吸着する。舌の吸着状態は舌の感覚によって把握できる。この支持吸盤に柔軟性の高い材料を用いた場合は、舌を保護して吸着効果を高めるので好ましい。複数個の支持突起を配置する場合は、その全部を支持吸盤にしても良く、他の形態の支持突起と混在させても良い。
【0036】
請求項9の発明に係る軟口蓋安定器を構成する弾性発泡被覆材の発泡形態は、連続発泡でも独立発泡でも良い。独立発泡を採用した場合は、構成部材の成分の溶出と腐食を防止できるので好ましい。
【発明の効果】
【0037】
弛緩状態の軟口蓋は、呼吸の気流によって自由に振動して軟口蓋型の鼾を発生する。しかし、軟口蓋へ物体が当接すると、振動が制止される。本発明の軟口蓋安定器は、制振部材が軟口蓋へ当接し、軟口蓋の振動を制止して軟口蓋型の鼾を防止する。
【0038】
咽頭の粘膜又は扁桃腺を圧迫すると、咽頭反射を起こして吐き気を催す。しかし、軟口蓋の下面及び縁辺は比較的鈍感な部位なので、制振部材を軟口蓋へ当接させても、咽頭反射は起こらない。また、「課題を解決するための手段」に例示した方法などによって、制振部材が咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触しないように調整できるので、本発明の軟口蓋安定器は、咽頭反射による苦痛や不快感を防止し、睡眠中の嘔吐を防止して、快適かつ安全に使用できる。
【0039】
本発明の軟口蓋安定器は、左右一対の顎通過部の外端が、それぞれ臼後空隙付近の頬の内面及び/又は口腔前庭の底部へ当接して、アーチ部によって斜め上方から伝達される荷重を支持する支点になり、下方への落下と左右への転倒が防止される。また、顎通過部が歯槽の後端の歯肉と翼下顎ヒダとに挟まれ、前後方向への移動も防止される。また、その支点よりも前方へ配置した反力板の前部が硬口蓋へ当接することによって、軟口蓋安定器の回動が防止され、支点の後方に位置する制振部材の下降も阻止される。これらのことによって、嚥下運動などの際に軟口蓋が下降したときも、軟口蓋安定器の落下と回動及び転倒が防止され、制振部材が軟口蓋へ当接し続ける。よって、本発明の軟口蓋安定器は、軟口蓋型の鼾を確実に防止できる。また、反力板が硬口蓋へ当接することによって、顎通過部よりも前方に位置するアーム部の上昇を防止するので、軟口蓋が下降したときもアーム部が口腔前庭の頂部へ食い込まずに、快適に使用できる。
【0040】
また、本発明の軟口蓋安定器は、固有口腔へ配置する部分と口腔前庭へ配置する部分を顎通過部が連絡していて、歯を覆う部材を必要とせずに、全ての構成部材がつながっている。顎通過部は臼後空隙へ収まる細さなので、歯ぎしりなどによって上顎と下顎を固く咬合しても、咬合圧力が作用しない。よって、本発明の軟口蓋安定器は、歯及び臼後空隙を圧迫しないので、不快感がなく、咬合を阻害するおそれもなく、快適に使用できる。また、咬合圧力による部材の変形や破断のおそれもないので、安全に使用できる。また、本発明の軟口蓋安定器は、マウスピースもしくはアーチワイヤーなどの歯列矯正具又は義歯を装着している場合でも、それらの装着具と干渉せずに、口腔内で共存させて使用できる。
【0041】
また、本発明の軟口蓋安定器には、歯冠を覆う部材も、歯へ嵌合させる部材も必要としないので、歯形の印象採取及び転写が不要であり、歯列模型の製作も不要である。また、本発明の軟口蓋安定器は、口腔へ直接に試着して構成部材の適合状態を把握し、口腔から取り出して、プライヤーなどの汎用工具を用いて容易に構成部材の形状を調整できる。よって、本発明の軟口蓋安定器は、大量生産が可能であり、耐熱材料の使用が可能であり、特別な器具や技能を必要とせずに、短時間で使用者個々の口腔へ適合できる。
【0042】
本発明の軟口蓋安定器は、口腔前庭へ収容するアーム部が、頬の内面と、歯列及び/又は歯肉へ当接もしくは摩擦して、水平方向及び上下方向への軟口蓋安定器の移動を防止する。このことによって、口を開けていても、閉じていても、寝返りをしても、あくび又は嚥下運動をしても、咳又はクシャミをしても、本発明の軟口蓋安定器は口腔から脱落せずに口腔内の定位置に保持される。また、アーム部を含む保持部材の幅が口峡よりも広いので、軟口蓋安定器を飲み込むおそれがない。
【0043】
本発明の軟口蓋安定器は、アーム部又は反力板を指で摘んで口腔へ出し入れできるので、装着及び取り外しが容易である。また、「課題を解決するための手段」に例示した方法などによって、保持部材を使用者の口腔へ適合させて、制振部材の位置を調整した後は、保持部材の各部分を口腔内の所定の位置へ収容すると、同時に制振部材が軟口蓋へ当接する。よって、本発明の軟口蓋安定器は、装着の度に構成部材の形状寸法を調整する必要はない。
【0044】
本発明の軟口蓋安定器は構成が簡素であり、留め金状又はマウスピース状の装着具を用いる従来の器具に比べて軽量である。よって、重圧感がなく快適に装着でき、携帯性に優れていて、洗浄も容易である。また、熱湯や蒸気で消毒しても変形や破損のおそれが無く、耐熱材料を使用した場合は、更に高い温度の加熱消毒にも耐えられる。
【0045】
よって、本発明の軟口蓋安定器は、外科手術などの侵襲的治療法によらずに、鼾防止効果が優れていて、装着中に脱落せず、咽頭反射による窒息のおそれがなく、咬合を阻害せず、大量生産が可能で、歯形の印象採取及び転写が不要で、形状寸法の調整が容易な、軟口蓋型の鼾及び閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する器具を実現するものである。
【0046】
請求項2の発明に係る軟口蓋安定器は、口を大きく開けたときも、支持突起が口腔へ当接及び/又は摩擦して、保持部材の落下を防止する。支持突起が頬の内面へ摩擦する場合、又は支持突起を吸盤状にして頬の内面へ吸着させる場合は、口を極端に大きく開けても保持部材が落下しないので、特に効果的に脱落を防止できる。また、軟口蓋が下降して制振部材を圧迫したときに、最も後側に配置した支持突起が支点になって、その支点よりも前方へ配置した反力板の前部が硬口蓋へ当接する。このことによって、軟口蓋が下降したときの回動を防止して、制振部材が軟口蓋へ当接し続ける。また、軟口蓋が下降したときの顎通過部への圧迫力が、支持突起へ分散される。よって、顎通過部が当接する部位の痛みを防止して、特に快適に使用できる。
【0047】
請求項3の発明に係る軟口蓋安定器は、弾性を備えた制振部材が軟口蓋へ当接し、上方から圧迫されたときに制振部材の後端部が下降し、圧迫から解放されたときに上昇する。このことによって、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときは、弾性を備えた制振部材の後端部が一時的に下降する。軟口蓋が上昇したときには、弾性を備えた制振部材の後端部は元の位置へ復帰する。よって、請求項3の発明に係る軟口蓋安定器は、嚥下運動及び発声を阻害せずに制振部材が軟口蓋へ当接し続けて、軟口蓋型の鼾を特に効果的に防止できる。また、制振部材が当接する部位の軟口蓋の損傷を効果的に防止できる。
【0048】
請求項4の発明に係る軟口蓋安定器は、上下方向から圧迫されたときに弾性を備えた支持突起が収縮し、その圧迫から解放されたときに弾性を備えた支持突起が上下方向へ伸張する。このことによって、口を閉じたときは、弾性を備えた支持突起が上下方向へ収縮してスムーズに咬合できる。口を開けたときは、弾性を備えた支持突起が上下方向へ伸張して、軟口蓋安定器の落下を防止する。また、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときも、弾性を備えた支持突起が一時的に収縮する。軟口蓋が上昇したときには、弾性を備えた支持突起は上下方向へ伸張する。よって、請求項4の発明に係る軟口蓋安定器は、口を開けたときも、口を閉じたときも、軟口蓋から圧迫されたときも、その圧迫から解放された後も、制振部材が軟口蓋へ当接し続けて、軟口蓋型の鼾を特に効果的に防止できる。また、支持突起及び制振部材が当接する部位の軟口蓋の損傷を効果的に防止できる。
【0049】
請求項5の発明に係る軟口蓋安定器は、水平方向へ湾曲している制振部材の後端部が口蓋垂の背面及び側面を包囲して、口蓋垂の移動及び振動を防止する。また、左右の臼後空隙へ収容した顎通過部が、後方への制振部材の移動を防止する。このことによって、仰臥したときに後方へ垂れ下がろうとする口蓋垂を制振部材の後端部が支持して、咽頭腔への口蓋垂の沈下を防止する。よって、請求項5の発明に係る軟口蓋安定器は、口蓋垂の振動に起因する軟口蓋型の鼾及び口蓋垂の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止できる。
【0050】
請求項6の発明に係る軟口蓋安定器は、上顎と下顎を咬合したときに支持突起及び/又は反力板が舌へ摩擦する。また、左右の臼後空隙へ収容した顎通過部が、後方への支持突起の移動を防止する。このことによって、仰臥したときに後方へ垂れ下がろうとする舌根を支持突起が保持して、咽頭腔への舌根の沈下を防止する。よって、請求項6の発明に係る軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸及び軟口蓋型の鼾を防止できる。
【0051】
請求項7の発明に係る軟口蓋安定器は、制振吸盤が軟口蓋へ吸着するので、軟口蓋の振動を防止し、軟口蓋安定器の脱落も防止する。また、左右の臼後空隙へ収容した顎通過部が、後方への制振吸盤の移動を防止する。このことによって、仰臥したときに後方へ垂れ下がろうとする軟口蓋を制振吸盤が保持して、咽頭腔への軟口蓋の沈下を防止する。よって、請求項7の発明に係る軟口蓋安定器は、軟口蓋の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸及び軟口蓋型の鼾を防止できる。
【0052】
また、請求項7の発明に係る軟口蓋安定器は、嚥下運動によって下降させた軟口蓋へ制振吸盤を吸着させて、その後は軟口蓋が下降した状態を維持し、上気道を拡張するので、特にスムーズに鼻から呼吸できる。なお、嚥下運動によって軟口蓋を下降させても制振吸盤へ吸着し難い場合は、嚥下運動と同時にアーム部又は反力板の前部を指で摘んで下方へ押し下げると良い。こうすると、顎通過部及び/又は支持突起が支点になって、その支点よりも後方に位置している制振吸盤が上昇し、下降する軟口蓋の下面と制振吸盤の凹面が密着して、より確実に吸着する。
【0053】
請求項8の発明に係る軟口蓋安定器は、支持吸盤が舌へ吸着する。また、左右の臼後空隙へ収容した顎通過部が、後方への支持吸盤の移動を防止する。このことによって、仰臥したときに後方へ垂れ下がろうとする舌根を支持吸盤が保持して、咽頭腔への舌根の沈下を防止する。よって、請求項8の発明に係る軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸及び軟口蓋型の鼾を特に効果的に防止できる。
【0054】
請求項9の発明に係る軟口蓋安定器は、弾性を備えた発泡被覆材が口腔へ柔軟に当接するので、粘膜の損傷を特に効果的に防止できる。また、弾性発泡被覆材の表面に分布する微細な凹凸が、口腔の粘膜との摩擦力及び粘着力を高める。よって、請求項9の発明に係る軟口蓋安定器は、保持部材及び/又は支持突起を弾性発泡被覆材で被覆した場合は、口腔からの脱落をより確実に防止できる。また、弾性発泡被覆材で制振部材を被覆した場合は、軟口蓋の振動及び咽頭腔への沈下をより確実に防止できる。また、舌へ摩擦する支持突起及び/又は反力板を弾性発泡被覆材で被覆した場合は、咽頭腔への舌根の沈下をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例1の斜視図
【図2】実施例1に係る軟口蓋安定器の装着状態を示す口腔の開口正面図
【図3】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例2の斜視図
【図4】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例3の斜視図
【図5】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例4の斜視図
【図6】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例5の斜視図
【図7】実施例5に係る軟口蓋安定器の装着状態を示す口腔の矢状断面図
【図8】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例6の斜視図
【図9】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例7の斜視図
【図10】本発明の軟口蓋安定器に係る実施例8の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に、本発明の軟口蓋安定器の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0057】
図1は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例1を斜め後方から見たときの斜視図である。実施例1は、アーチ部22及び一対の顎通過部24及び一対のアーム部26を有する平面形状が略「C」字形の保持部材20と、アーチ部22へ固設した制振部材10及び反力板40と、左右のアーム部26の前端から下方へ突出する一対の支持突起30を備えていて、全体が左右対称形である。
【0058】
本発明の軟口蓋安定器を構成する各部材の材料には、例えば、鉄、ステンレス、アルミ合金、チタン合金、ニッケル合金などの金属、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル、PET、ABS、EVAなどの合成樹脂、例えば、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴムなどの合成ゴムが例示される。また、エラストマー、強化ガラス、強化セラミックスも例示される。また、弾性を備えた発泡材料、繊維状の素材を編んでワイヤー状又はベルト状に加工した材料も例示される。また、これらの材料を積層構造にしたものも例示される。ただし、これらの例示には限定されない。
【0059】
実施例1は、硬質シリコーンゴムで全体を一体成型しており、保持部材20と反力板40は、ステンレス製の芯材を入れた積層構造である。図1は、保持部材20と制振部材10及び反力板40との接合部2箇所のうち、左側の接合部を破断面表示している。図1の陰影部分はシリコーンゴムの破断面を現しており、その中にステンレス製の芯材が収められている様子を図示している。実施例1は、表面全体がシリコーンゴム製なので、口腔粘膜や舌との摩擦力を高め、粘膜の損傷を防止している。
【0060】
本発明の軟口蓋安定器を構成する制振部材の形態には、例えば、線状、棒状、板状、円盤状、環状、球状、乳頭状、管状、板バネ状、コイルバネ状、ワイヤー状、ベルト状が例示される。また、湾曲部又は屈曲部が後方へ向く「U」字状、「V」字状、「J」字状も例示される。ただし、これらの例示には限定されない。また、本発明の軟口蓋安定器を構成する反力板の形態には、例えば、板状、棒状、円盤状、環状、管状が例示される。また、凹面が硬口蓋へ向いて硬口蓋へ吸着する吸盤も例示される。ただし、これらの例示には限定されない。制振部材及び反力板とアーチ部との接続方法は、一体成形しても良く、分離不能に固着しても良く、例えばネジ止め、嵌め合わせなどの方法によって着脱可能に継ぎ合わせても良い。
【0061】
実施例1は、左右の顎通過部24よりも内側にあるアーチ部22と制振部材10及び反力板40が、顎通過部24よりもやや上方へ隆起していて、口腔へ装着したときに口蓋の湾曲面へ沿う。制振部材10及び反力板40は、ともに平面形状が略「U」字形の薄板であり、互いの両腕部を向き合わせてアーチ部22と一体成型している。反力板40は硬口蓋へ沿うように湾曲していて、その前端は顎通過部24及び支持突起30よりも前方へ延びて、前歯の裏側へ到達する。よって、実施例1の軟口蓋安定器は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときに支持突起30が上顎からの脱落を防止し、反力板40の前端が硬口蓋へ当接して、回動による制振部材10の下降を防止するので、弾性を備えた制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。
【0062】
請求項2及び請求項4の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、支持突起の形態には、例えば、棒状、板状、円盤状、環状、球状、乳頭状、袋状、筒状、管状、コイルバネ状、板バネ状が例示される。また、湾曲部又は屈曲部が下方へ向く「U」字状、「V」字状、「J」字状も例示される。また、口腔前庭へ配置し、凹面が頬の内面へ向いて頬肉へ吸着する吸盤も例示される。また、弾性を備えた支持突起の素材には、例えば、ゴム又はエラストマーが例示される。また、例えば、袋状、コイルバネ状、板バネ状の形態によって弾性を備えても良い。ただし、これらの例示には限定されない。この支持突起の固設方法は、制振部材及び/又は保持部材と分離不能に一体成形しても良く、分離不能に固着しても良く、例えばネジ止め、嵌め合わせなどの方法によって着脱可能に継ぎ合わせても良い。
【0063】
実施例1の支持突起30は、芯材がない硬質シリコーンゴム製の湾曲板であり、その湾曲板の両端はアーム部26と一体化して、アーム部26との間に転倒「D」字形の空隙を形成している。この弾性を備えた支持突起30は、口を閉じたときは上下方向へ収縮して、口を開けたときに上下方向へ伸張する。また、口を閉じていても、開けていても、支持突起30及びアーム部26の外側面が頬の内面へ摩擦して支持力を維持する。よって、実施例1の軟口蓋安定器は、口を開けても口腔から脱落せず、制振部材が軟口蓋へ当接し続けて、特に効果的に軟口蓋型の鼾を防止できる。また、支持突起が当接する部位の口腔前庭の粘膜の損傷を効果的に防止できる。
【0064】
請求項3の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、弾性を備えた制振部材の材料には、例えば、前述した合成樹脂、前述した合成ゴム、エラストマーが例示される。また、弾性を備えた発泡材料も例示され、繊維状の素材を編んでワイヤー状又はベルト状にした材料も例示される。また、例えば、金属又は強化セラミックスなどの剛性材料で製作した制振部材と保持部材及び/又は反力板との間に、弾性を備えたバネ状又はゴム状の関節部材を挟んで接合する方法も例示される。ただし、これらの例示には限定されない。
【0065】
請求項5の発明に係る軟口蓋安定器を構成する、後端部が水平方向へ湾曲している制振部材の形態には、平面形状が、例えば、環状、「U」字状、「J」字状のものが例示される。ただし、これらの例示には限定されない。
【0066】
実施例1の制振部材10は、芯材がない硬質シリコーンゴム製の薄板であり、弾性を備えている。制振部材の後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときに下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。また、実施例1の制振部材の後端部12は、水平方向へ「U」字形に湾曲している。この制振部材10は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口蓋帆へ当接し、後端部12が口蓋垂の背面及び側面を包囲し、左右の顎通過部24が前後方向への制振部材10の移動を防止する。よって、実施例1の軟口蓋安定器は、弾性を備えている制振部材10が口蓋帆へ当接し続け、水平方向へ湾曲している制振部材の後端部12が口蓋垂の移動及び振動を防止して、口蓋帆及び口蓋垂の振動に起因する軟口蓋型の鼾と、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する。
【0067】
実施例1は、工具又は手指で保持部材の芯材を変形させて、顎通過部24の外端にある屈曲部の位置を内側へ移動させると、顎通過部24同士の間隔が狭まり、屈曲部の位置を外側へ移動させると、顎通過部24同士の間隔が拡がる。このことによって、左右の顎通過部24同士及び左右のアーム部26同士の間隔を容易に調整できる。また、アーチ部22も、反力板40も、隆起具合及び湾曲具合を調整できる。また、保持部材20を変形させて、制振部材10と保持部材20との接合部を前進もしくは後退又は上昇もしくは下降させられる。よって、使用者個々の口腔の形状寸法に容易に適合させて口腔へ収容できる。
【0068】
図2は、実施例1に係る軟口蓋安定器を装着した口腔を大きく開口したときの正面図である。アーム部26は上顎の口腔前庭940へ収容されている。支持突起30の内側面は歯列と歯肉へ摩擦し、外側面は頬の内面へ摩擦している。支持突起30の下端部は、上顎と下顎を咬合したときに、口腔前庭940の底部である下顎の歯肉と頬肉との間の溝へ当接する。
【0069】
保持部材20は、顎通過部24の外端が2箇所とも概ね直角に屈曲しており、顎通過部24が臼後空隙950へ収容されている。臼後空隙950の後端には、翼下顎ヒダ952がある。顎通過部24よりも内側にあるアーチ部22は、口蓋へ沿って固有口腔930へ収容されている。反力板40は硬口蓋902へ沿うように湾曲しており、保持部材20との接合部は2箇所とも硬口蓋902の後端付近に配置されている。制振部材10は、軟口蓋904へ沿って後方へ突出して、口峡へ挿入されている。制振部材10は口蓋帆906へ当接しており、水平方向へ湾曲している後端部12が口蓋垂908の背面及び側面を包囲している。制振部材の後端部12は咽頭後壁及び扁桃腺へ接触しないように、咽頭腔920へ僅かに突出している。
【実施例2】
【0070】
図3は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例2を斜め後方から見たときの斜視図である。実施例2は、アーチ部22及び一対の顎通過部24及び一対のアーム部26を有する平面形状が略「C」字形の保持部材20と、この保持部材20へ接合した制振吸盤18と、この保持部材20へ固設した反力板40と、左右のアーム部26の後部から下方へ突出する一対の支持突起30を備えていて、全体が左右対称形である。アーム部26は左右一対であり、前側の中央部で前端同士が向き合っている。
【0071】
実施例2は、保持部材20及び支持突起30及び反力板40を硬質シリコーンゴムで一体成型している。実施例2の制振部材10は、軟質シリコーンゴム製の制振吸盤18であり、アーチ部22の中央部分へ固着して接合している。
【0072】
実施例2は、アーチ部22と反力板40が、顎通過部24よりもやや上方へ隆起していて、口腔へ装着したときに口蓋の湾曲面へ沿う。反力板40は硬口蓋へ沿うように上方へ反る湾曲板であり、その前端は支持突起30よりも前方へ延びて、前歯の裏側へ到達する。よって、実施例2の軟口蓋安定器は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときに支持突起30が上顎からの脱落を防止し、反力板40の前端が硬口蓋へ当接して、回動による制振部材の下降を防止するので、制振吸盤18が軟口蓋からの圧迫に対抗して軟口蓋へ当接し続ける。そして、軟口蓋が上昇して平常位置へ復帰した後も、制振吸盤18が軟口蓋へ吸着し続ける。また、反力板40がアーム部26の上昇を防止するので、口腔前庭の頂部へアーム部26が食い込まずに、特に快適に使用できる。また、この反力板40の下面は、上顎と下顎を咬合したときに舌へ摩擦し、左右の顎通過部24が前後方向への反力板40の移動を防止するので、咽頭腔への舌根の沈下を防止する。よって、実施例2の軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸も防止できる。
【0073】
実施例2の支持突起30は、アーム部26の後部から下方へ突出する半月形であり、アーム部26よりもやや厚くしてある。この支持突起30の下端部は、上顎と下顎を咬合したときに口腔前庭の底部へ当接する。また、口を閉じていても、開けていても、支持突起30の外側面が頬の内面へ摩擦して支持力を維持する。
【0074】
制振吸盤18は、口腔へ装着したときに凹面が軟口蓋へ向いて、その凹面の外周は全体が軟口蓋へ当接する。唾液を嚥下すると、軟口蓋が下降して凹面を圧迫するので、制振吸盤18は軟口蓋へ吸着する。嚥下運動と同時にアーム部26を指で摘んで下方へ押し下げると、支持突起30が支点になって、その支点よりも後方に位置している制振吸盤18が上昇し、下降する軟口蓋の下面と制振吸盤18の凹面が密着して、より確実に吸着する。よって、実施例2の軟口蓋安定器は、制振吸盤18が軟口蓋へ吸着して軟口蓋型の鼾を防止し、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸も防止する。また、制振吸盤18が軟口蓋へ吸着して軟口蓋安定器の脱落も防止する。また、制振吸盤18が軟口蓋を下降させたまま保持して、上気道を拡張するので、鼻から特にスムーズに呼吸できる。
【実施例3】
【0075】
図4は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例3を斜め後方から見たときの斜視図である。実施例3は、アーチ部22及び一対の顎通過部24及び一つのアーム部26を有する平面形状が略「D」字形の保持部材20と、このアーチ部22へ接合した制振部材10及び反力板40と、アーム部26の後部から下方へ突出する一対の支持突起30を備えていて、全体が左右対称形である。
【0076】
請求項9の発明に係る軟口蓋安定器を構成する弾性発泡被材は、軟口蓋安定器の構成部材の全部又は一部を被覆する。この弾性発泡被覆材は構成部材へ密着しても良く、構成部材との間に隙間を空けて構成部材を包囲しても良い。この弾性発泡被覆材の材料には、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリ塩化ビニル、発泡EVAなどの熱可塑性樹脂が例示される。また、例えば、発泡ゴムや、発泡エラストマーも例示される。ただし、これらの例示には限定されない。
【0077】
実施例3は、チタン合金製の線材で各構成部材を形成し、ニトリルブチルゴム系の独立発泡ゴム製の弾性発泡被覆材50で全体を被覆している。図4は、チタン合金製の線材である保持部材20及び制振部材10、反力板40の一部を露出させて破断面表示しており、陰影は弾性発泡被覆材50の表面を表し、その弾性発泡被覆材50の破断面を白く表示している。アーチ部22へ一体成型した制振部材10と反力板40は、外周をチタン合金製の線材で環状に形成し、その環状の線材及び内空を弾性発泡被覆材50で被覆して、長円形の板状に成型している。反力板40を被覆する弾性発泡被覆材50は、線材の下側の部分を上側の部分よりも厚くしてある。
【0078】
実施例3は、アーチ部22と制振部材10及び反力板40が、顎通過部24よりもやや上方へ隆起していて、口腔へ装着したときに口蓋の湾曲面へ沿う。反力板40は硬口蓋へ沿うように湾曲していて、その前端は支持突起30よりも前方へ延びて、前歯の裏側へ到達する。よって、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときに支持突起30が上顎からの脱落を防止し、反力板40の前端が硬口蓋へ当接して、回動による制振部材の下降を防止するので、弾性を備えた制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。そして、軟口蓋が上昇して平常位置へ復帰した後も、制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。反力板40がアーム部26の上昇も防止するので、口腔前庭の頂部及び上唇小体へアーム部26が食い込まずに、特に快適に使用できる。
【0079】
また、実施例3の反力板40の下面は、上顎と下顎を咬合したときに舌へ摩擦し、左右の顎通過部24が前後方向への反力板40の移動を防止するので、咽頭腔への舌根の沈下を防止する。よって、実施例3の軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸も防止できる。制振部材10は軟口蓋の下面へ当接し、制振部材の後端部12は口蓋垂及びその付近の口蓋帆へ当接して、軟口蓋型の鼾を防止する。チタン合金製の線材が弾性を備えているので、制振部材の後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときに下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。
【0080】
実施例3の支持突起30は、アーム部26の後部から下方へ突出する「V」字形である。この支持突起30の下端部は、上顎と下顎を咬合したときに口腔前庭の底部へ当接する。また、口を閉じていても、開けていても、支持突起30の外側面が頬の内面へ摩擦して支持力を維持する。
【0081】
チタン合金製の線材と発泡ゴム製の弾性発泡被覆材50で全体を構成したことによって、実施例3の軟口蓋安定器は極めて軽量である。また、弾性を備えた発泡被覆材50の表面に分布する微細な凹凸が摩擦力及び粘着力を高めている。よって、特に効果的に軟口蓋の振動を防止でき、特に効果的に上顎からの脱落を防止できる。また、この弾性発泡被覆材50は、口腔の粘膜へ柔軟に当接するので、粘膜の損傷を特に効果的に防止できる。
【0082】
実施例3は、上下方向へ蛇行している支持突起30の「V」字形の屈曲部の屈折角度をプライヤーなどの工具で変化させて、保持部材20の前後方向の幅を容易に調整できる。また、保持部材を変形させ、左右の顎通過部24の外端にある屈曲部の位置を内側又は外側へ移動させて、左右の顎通過部24同士及び左右のアーム部26同士の間隔を容易に調整できる。また、アーチ部22の隆起具合も、制振部材10及び反力板40の湾曲具合も、工具又は手指で容易に変形させて調整できる。このことによって、制振部材10及び反力板40の位置も容易に調整できるので、使用者個々の口腔の形状寸法に適合させて口腔へ収容できる。
【実施例4】
【0083】
図5は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例4を斜め後方から見たときの斜視図である。実施例4は、一対のアーチ部22及び一対の顎通過部24及び一対のアーム部26を有する平面形状が略「C」字形の保持部材20と、この保持部材20に固設した反力板40と、この保持部材20及び反力板40へ接合した制振部材10を備え、反力板40から下方へ突出する2個の「U」字形の支持突起30を前後方向へ並べて配置していて、全体が左右対称形である。
【0084】
実施例4は、アルミ合金製のパイプで保持部材20及び反力板40を一体成形し、ブチルゴム系の独立発泡ゴム製の弾性発泡被覆材50で被覆している。一対のアーチ部22及び反力板40は、アルミ合金製のパイプを偏平に加工している。後端部12が水平方向へ「U」字形に湾曲している制振部材10はステンレス製であり、保持部材20との間にチタンニッケル合金製の形状記憶コイルバネ14を挟んで接合している。2個の「U」字形の支持突起30は、その両端を反力板40の下面へ固着した発泡ゴム製の湾曲板である。
【0085】
実施例4は、アーチ部22と反力板40が、顎通過部24よりもやや上方へ隆起していて、口腔へ装着したときに口蓋の湾曲面へ沿う。反力板40は硬口蓋へ沿うように湾曲していて、その前端は支持突起30よりも前方へ延びて、前歯の裏側へ到達する。よって、実施例4の軟口蓋安定器は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときに支持突起30が上顎からの脱落を防止し、反力板40の前端が硬口蓋へ当接して、回動による制振部材の下降を防止するので、弾性を備えた制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。そして、軟口蓋が上昇して平常位置へ復帰した後も、制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。また、反力板40がアーム部26の上昇も防止するので、口腔前庭の頂部へアーム部26が食い込まずに、特に快適に使用できる。
【0086】
実施例4の2個の支持突起30は、固着部から下方へ突出している「U」字形の湾曲板である。この弾性を備えた支持突起30は、口を閉じたときは上下方向へ収縮していて、口を開けたときに上下方向へ伸張する。よって、実施例4の軟口蓋安定器は、口を開けても口腔から脱落せず、制振部材10が軟口蓋へ当接し続けて、特に効果的に軟口蓋型の鼾を防止できる。また、この支持突起30は、下面の全体に微細な凹凸が分布して摩擦力及び粘着力を高めている。また、上顎と下顎を咬合したときに、この支持突起30の下面が舌へ摩擦し、左右の顎通過部24が前後方向への支持突起30の移動を防止する。よって、実施例4の軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を特に効果的に防止できる。また、支持突起30が当接する舌の粘膜の損傷を特に効果的に防止できる。
【0087】
実施例4の制振部材10は、保持部材20との間にコイルバネ14を挟んで接合しているので上下方向へ揺動可能である。この弾性を備えた制振部材10の後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときにコイルバネ14の弾性によって一時的に下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。また、実施例4の制振部材10は、平面形状が「U」字形の湾曲部分を備えている。この制振部材10は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口蓋帆へ当接して、水平方向へ湾曲している後端部12が口蓋垂の背面及び側面を包囲し、左右の顎通過部24が前後方向への制振部材10の移動を防止する。よって、実施例4の軟口蓋安定器は、口蓋帆及び口蓋垂の振動に起因する軟口蓋型の鼾を防止し、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する。
【0088】
アルミ合金製のパイプで保持部材20及び反力板40を一体成形し、弾性発泡被覆材50で被覆したことによって、実施例4の軟口蓋安定器は極めて軽量である。また、弾性を備えた発泡被覆材50の表面に分布する微細な凹凸が摩擦力及び粘着力を高めている。よって、特に効果的に口腔からの脱落を防止できる。また、この弾性発泡被覆材50は、口腔の粘膜へ柔軟に当接するので、粘膜の損傷を特に効果的に防止できる。また、独立発泡ゴム製の弾性発泡被覆材50が、アルミ合金製の保持部材20及び反力板40からの成分の溶出及び腐食を防止している。
【0089】
実施例4は、プライヤーなどの工具でアルミ合金製のパイプを変形させて、反力板40の前部にある湾曲部の曲率半径と、アーチ部22と反力板40との接合部の交差角度を調整することにより、左右方向の幅を容易に調整できる。また、左右の顎通過部24の外端にある屈曲部の位置を内側又は外側へ移動できる。このことによって、左右の顎通過部24同士及び左右のアーム部26同士の間隔を容易に調整でき、使用者個々の口腔の形状寸法に適合させて口腔へ収容できる。また、顎通過部24の内側にある保持部材20も、反力板40も、工具又は手指で芯材を容易に変形させて、隆起具合及び湾曲具合を調整できる。また、制振部材の後端部12は、形状記憶コイルバネ14を引き延ばすと後方へ移動でき、形状記憶コイルバネ14を加熱すると元の位置に復元できる。このことによって、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口峡へ挿入して口蓋垂を包囲するように、制振部材の後端部12の位置を調整できる。
【実施例5】
【0090】
図6は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例5を斜め後方から見たときの斜視図である。実施例5は、アーチ部22及び一対の顎通過部24及び一つのアーム部26を有する平面形状が略「D」字形の保持部材20と、このアーチ部22の中央部へ接合した制振部材10及び反力板40と、アーチ部22の中央部から下方へ突出する一つの支持吸盤38を備えていて、全体が左右対称形である。
【0091】
実施例5では、保持部材20はシリコーンゴム製であり、制振部材10及び反力板40は硬質クロロプレンゴム製の薄板である。アーチ部22の中央部分には軟質シリコーンゴム製の支持吸盤38を接合している。
【0092】
実施例5の保持部材20は、上顎の歯列弓よりもやや小さ目に製作している。また、顎通過部24を他の部分よりもやや細くしている。上顎の歯槽の後端の歯肉へ左右の顎通過部24を係合させ、アーム部26を前方へ引張して上顎の歯列弓へ係合させると、シリコーンゴム製の保持部材20に張力が発生する。このことによって、上顎の歯列弓の外周へ顎通過部24及びアーム部26が密着する。よって、実施例5の軟口蓋安定器は、使用者個々の口腔の形状寸法に適合させて口腔へ収容でき、上顎からの脱落を特に確実に防止できる。
【0093】
実施例5の制振部材10及び反力板40は一体成型していて、外周が長円形の薄板である。反力板40は硬口蓋902へ沿うように湾曲しており、反力板40の前端は支持吸盤38よりも前方に位置している。よって、実施例5の軟口蓋安定器は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときに吸盤状の支持突起30が上顎からの脱落を防止し、反力板40の前端が硬口蓋へ当接して、回動による制振部材の下降を防止するので、弾性を備えた制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。そして、軟口蓋が上昇して平常位置へ復帰した後も、制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。また、反力板40がアーム部26の上昇も防止するので、口腔前庭の頂部及び上唇小体へアーム部26が食い込まずに、特に快適に使用できる。
【0094】
支持吸盤38は、口腔へ装着したときに凹面が舌へ向いて、その凹面の外周は全体が舌へ当接する。唾液を嚥下すると、舌背が隆起して凹面を圧迫するので、支持吸盤38は舌へ吸着する。また、左右の顎通過部24及びアーム部26が、前後方向への支持吸盤38の移動を防止する。よって、実施例5の軟口蓋安定器は、支持吸盤38が舌へ吸着して、舌根の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する。
【0095】
実施例5の制振部材10は、硬質ゴム製の薄板に穴を設けたものであり、弾性を備えている。この制振部材の後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときに一時的に下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。また、実施例5の制振部材10は、平面形状が「U」字形の湾曲部分を備えている。この制振部材10は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口蓋帆へ当接して、水平方向へ湾曲している後端部12が口蓋垂の背面及び側面を包囲し、左右の顎通過部24が前後方向への制振部材10の移動を防止する。よって、実施例5の軟口蓋安定器は、口蓋帆及び口蓋垂の振動に起因する軟口蓋型の鼾を防止し、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する。
【0096】
図7は、実施例5に係る軟口蓋安定器の装着状態を示す口腔の矢状断面図である。軟口蓋安定器を見やすくするために、歯列及び歯肉の一部を省略して図示している。保持部材のアーム部26は、上顎の口腔前庭940へ収容している。アーチ部22は固有口腔930へ収容していて、支持吸盤38の凹面は舌へ吸着している。支持吸盤38の軸状部分が、制振部材10と反力板40との中間部及び保持部材20のアーチ部22に設けた穴を貫通して、これらの各部材を接合している。保持部材20と支持吸盤38の接合部は、硬口蓋902の後端付近に配置している。制振部材10は、この接合部から軟口蓋904に沿って後方へ突出させて、口峡へ挿入している。制振部材10は、穴の左右の部分が口蓋帆906へ当接しており、水平方向へ湾曲している後端部12が、口蓋垂908の背面及び側面を包囲している。制振部材の後端部12は、咽頭後壁及び扁桃腺へ接触しないように、咽頭腔920へ僅かに突出している。反力板40は硬口蓋902へ沿うように上方へ反って湾曲しており、反力板40の前端は顎通過部24及び支持吸盤38よりも前方に位置している。
【実施例6】
【0097】
図8は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例6を斜め前方から見たときの斜視図である。実施例6は、一対のアーチ部22及び一対の顎通過部24及び一つのアーム部26を有する平面形状が略「D」字形の保持部材20と、この保持部材20へ固設した一対の反力板40と、アーム部26の後部から下方へ突出する一対の袋状の支持突起30と、反力板40の前端から後方へ延びて下方へ突出する一つの支持突起30と、その支持突起30と一体成形した一対の制振部材10を備えている。
【0098】
実施例6は、パイプ状の保持部材20及び板状の反力板40を高密度ポリエチレンで一体成型している。実施例6には、2種類の弾性を備えた支持突起を配置している。一対の制振部材10及び中央部に配置した一つの支持突起30は、熱硬化性樹脂を含浸させたカーボン繊維製の編みワイヤーを熱硬化させて一体成形しており、舌又は軟口蓋によって圧迫されると撓む程度の弾性を備えている。それぞれの制振部材の後端部12には、シリコーンゴム製の球体を固着している。アーム部26の後部から下方へ突出する一対の支持突起30は、内部に空気を封入した袋状のクロロプレンゴムであり、ゴム風船のように柔軟で弾性を備えている。図8は、左側の袋状の支持突起30の一部を破断面表示して、空気室に陰影を描いている。
【0099】
実施例6は、一対のアーチ部22及び反力板40が、顎通過部24よりもやや上方へ隆起していて、口腔へ装着したときに口蓋の湾曲面へ沿う。反力板40は、上面が硬口蓋へ沿う一対の湾曲板であり、下面は上面に略平行する板状である。この上面と下面との間に前後方向へ細長い一対の溝を形成する曲面によって、上面と下面とがつながっている。それぞれの溝には、前後方向へ長い長円形の穴を設けている。反力板40の前端は、顎通過部24及び一対の袋状の支持突起30よりも前方にある。よって、実施例6の軟口蓋安定器は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときに2種類の支持突起30が上顎からの脱落を防止し、反力板40の前端が硬口蓋へ当接して、回動による制振部材の下降を防止するので、弾性を備えた制振部材10が軟口蓋からの圧迫に対抗して軟口蓋へ当接し続ける。そして、軟口蓋が上昇して平常位置へ復帰した後も、制振部材10が軟口蓋へ当接し続ける。また、反力板40がアーム部26の上昇も防止するので、口腔前庭の頂部及び上唇小体へのアーム部26の食い込みを防止して、快適に使用できる。
【0100】
アーム部26へ固着した袋状の支持突起30は弾性を備えていて、口を閉じたときは上下方向へ収縮して下端部が上昇し、口を開けたときは上下方向へ伸張して下端部が下降する。また、口を閉じていても、開けていても、袋状の支持突起30の外側面が頬の内面へ摩擦して支持力を維持する。よって、実施例6の軟口蓋安定器は、口を開けても口腔から脱落せず、制振部材が軟口蓋へ当接し続けて、特に効果的に軟口蓋型の鼾を防止できる。また、袋状の支持突起30は、口腔前庭の粘膜の損傷を特に効果的に防止する。
【0101】
実施例6のカーボン繊維製の支持突起30は、反力板40の前端で後方へ折り返して、下方へ突出する。この支持突起30の2本の棒状部分も弾性を備えていて、上顎と下顎を咬合したときに舌に押されて支持突起30の下端が上昇し、口を開けたときに支持突起30の下端が下降する。実施例6の軟口蓋安定器は、カーボン繊維製の支持突起30が弾性変形して下端がスムーズに上下動するので咬合を阻害せず、口を開けても口腔から脱落しない。よって、制振部材10が軟口蓋へ当接し続けて、特に効果的に軟口蓋型の鼾を防止できる。また、この支持突起30は、上顎と下顎を咬合したときに支持突起30の下端部が舌根を圧迫して、舌を前方へ向けて押し出す。また、左右の顎通過部24が、後方への支持突起30の移動を防止するので、仰臥したときに後方へ垂れ下がろうとする舌根を保持して、咽頭腔への沈下を防止する。よって、実施例6の軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を特に効果的に防止できる。
【0102】
カーボン繊維製の支持突起30へ一体成形した制振部材10は、反力板40の溝へ挿入している部分に、外側へ突出する突起を備えている。この突起は、反力板40に設けた長円形の穴へ嵌合している。反力板40の溝及び長円形の穴へ嵌合した状態の制振部材10及び支持突起30は、上下方向及び水平方向のいずれの方向にもズレないので、保持部材20から脱落しない。この制振部材10及び支持突起30は弾性を備えていて、手指で外側から中央へ向けて押して、左右の制振部材10同士の間隔を狭めると、反力板40の溝へ容易に着脱できる。よって、実施例6の軟口蓋安定器は、一体成形した制振部材10及び支持突起30を容易に交換できるので、使用者個々の口腔へ適合する形状寸法の構成部材を容易に組み合わせることができる。この弾性を備えている制振部材10は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口蓋帆へ当接し、後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときに一時的に下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。この支持突起30へ一体成形した制振部材の後端部12を水平方向へ「U」字形又は「J」字形に湾曲させて、口蓋垂の背面及び側面を包囲しても良い。
【0103】
実施例6の保持部材20は熱可塑性樹脂である高密度ポリエチレン製なので、加熱してからプライヤーなどの工具で変形させて、顎通過部24の外端にある屈曲部の位置を内側又は外側へ移動することにより、左右方向の幅及び前後方向の幅を容易に調整できる。また、実施例6のアーム部26は上下方向へ蛇行しているので、この蛇行部分の湾曲具合を調整することにより、アーム部26の長さを伸縮できる。このことによって、使用者個々の口腔の形状寸法に適合させて口腔へ収容できる。
【実施例7】
【0104】
図9は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例7を斜め前方から見たときの斜視図である。実施例7は、アーチ部22及び一対の顎通過部24及び一つのアーム部26を有する平面形状が略「C」字形で非対称形の保持部材20と、このアーチ部22の後部から後方へ突出する略「U」字形の制振部材10と、その制振部材10へ一体成型して下方へ突出する筒状の支持突起30を備えている。また、アーム部26の後部には、吸盤状の支持突起30を左右一対に配置して、アーム部26へ着脱自在に嵌合している。
【0105】
実施例7では、保持部材20はステンレス製である。一体成型した制振部材10と筒状の支持突起30とは、表面に微細な凹凸が分布する発泡ゴム製であり、口腔の粘膜との摩擦力及び粘着力を高めている。また、制振部材10及び支持突起30は、舌又は軟口蓋によって圧迫されると収縮する程度の弾性を備えている。吸盤状の支持突起30は軟質シリコーンゴム製である。
【0106】
実施例7の吸盤状の支持突起30は、凹面が頬の内面へ向いていて頬肉へ吸着する。よって、実施例7の軟口蓋安定器は、口をどんなに大きく開けても口腔から脱落せず、制振部材が軟口蓋へ当接し続けて、特に効果的に軟口蓋型の鼾を防止できる。
【0107】
実施例7の筒状の支持突起30は発泡ゴム製で弾性を備えていて、口を閉じたときは上下方向へ収縮して、口を開けたときに上下方向へ伸張する。よって、実施例7の軟口蓋安定器は、口を開けても口腔から脱落せず、制振部材10が軟口蓋へ当接し続けて、特に効果的に軟口蓋型の鼾を防止できる。また、上顎と下顎を咬合したときに筒状の支持突起30の下面が舌へ摩擦し、左右の顎通過部24が前後方向への支持突起30の移動を防止する。よって、実施例7の軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を特に効果的に防止できる。また、筒状の支持突起30は、前壁に楕円形の穴を設けていて、その穴と筒状部分の内空が連通しているので、口腔からスムーズに呼吸できる。
【0108】
実施例7の制振部材10は発泡ゴム製で弾性を備えていて、上下方向へ伸縮可能である。この制振部材の後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときに一時的に下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。また、実施例7の制振部材10は、平面形状が「U」字形の湾曲部分を備えている。この制振部材10は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口蓋帆へ当接して、水平方向へ湾曲する後端部12が口蓋垂の背面及び側面を包囲する。よって、実施例7の軟口蓋安定器は、口蓋帆及び口蓋垂の振動に起因する軟口蓋型の鼾を防止し、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する。
【0109】
実施例7は、プライヤーなどの工具で略「C」字形の保持部材20を変形させて、顎通過部24の外端にある屈曲部の位置を内側又は外側へ移動させることにより、顎通過部24同士の間隔を調整して、左右方向の幅を容易に変更できる。また、アーム部26の湾曲具合を調整することにより、前後方向の幅を容易に変更できる。よって、使用者個々の口腔の形状寸法に適合させて口腔へ収容できる。また、発泡ゴムで一体成型した制振部材10と支持突起30へ挿通した「U」字形の保持部品27を、保持部材20の後部へステンレス製のネジ28で留めて、着脱可能に接合している。この制振部材10及び支持突起30は、ネジ留め部分を離脱させて保持部品27を取り外し、保持部材20に沿って前方へ移動させると、アーム部26の端部から取り出せる。また、吸盤状の支持突起30も、保持部材20に沿って前方へ移動させると、アーム部26の端部から取り出せる。よって、実施例7の軟口蓋安定器は、一体成型した制振部材10及び支持突起30と、吸盤状の支持突起30を交換可能であり、使用者個々の口腔へ適合する形状寸法のものを装着できる。
【実施例8】
【0110】
図10は、本発明の軟口蓋安定器に係る実施例8を斜め後方から見たときの斜視図である。実施例8は、アーチ部22及び一対の顎通過部24及び一対のアーム部26を有する平面形状が略「C」字形の保持部材20と、この保持部材20の中央部から後方へ突出する制振部材10と、その制振部材10へ一体成形して下方へ突出する支持突起30と、その制振部材10及び支持突起30へ一体成形して前方へ突出する反力板40を備えていて、全体が左右対称形である。
【0111】
実施例8では、保持部材20はアルミ合金製であり、その表面を弾性を備えた発泡被覆材50で被覆している。保持部材20は、アーム部26がパイプ状であり、顎通過部24及びアーチ部22が扁平な板状になっている。一体成形した制振部材10及び支持突起30及び反力板40は、表面に微細な凹凸が分布する発泡ゴム製の湾曲板であり、舌又は軟口蓋によって圧迫されると撓む程度の弾性を備えている。また、この支持突起30は、左右の側壁がそれぞれ渦巻状に内側へ巻き込んでいて、前後方向に長い渦巻状の空隙を形成している。反力板40は硬口蓋へ沿うように湾曲しており、反力板40の前端は支持突起30よりも前方に配置している。
【0112】
実施例8の支持突起30は、保持部材20との接合部から下方へ突出する発泡ゴム製の湾曲板である。この弾性を備えた支持突起30は、口を閉じたときは上下方向へ収縮して、口を開けたときに上下方向へ伸張する。また、嚥下運動又は発声によって軟口蓋が下降したときは、弾性を備えた支持突起30の高さが一時的に収縮する。軟口蓋が上昇したときには、弾性を備えた支持突起30は上下方向へ伸張する。よって、実施例8の軟口蓋安定器は、口を開けても口腔から脱落せず、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときも、その圧迫から解放された後も、制振部材10が軟口蓋へ当接し続けて、軟口蓋型の鼾を効果的に防止できる。また、上顎と下顎を咬合したときに、支持突起30の下面が舌へ摩擦し、左右の顎通過部24が前後方向への支持突起30の移動を防止する。よって、実施例8の軟口蓋安定器は、舌根の沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を効果的に防止できる。また、支持突起30が当接する舌の粘膜の損傷を特に効果的に防止できる。また、支持突起30は、前後方向へ連通する細長い渦巻状の空隙を形成しているので、口腔からスムーズに呼吸できる。また、支持突起30の上部に長方形の穴を設けて、扁平な板状になっているアーチ部22の中央部分へ嵌め合わせ接合して、制振部材10及び支持突起30及び反力板40の回動を防止している。
【0113】
実施例8の制振部材10は発泡ゴム製で弾性を備えており、舌へ当接する支持突起30と一体成形した略水平の板状部分であり、上下方向へ昇降可能である。制振部材の後端部12は、嚥下運動又は発声によって軟口蓋から圧迫されたときに一時的に下降し、その圧迫から解放されたときに上昇して、軟口蓋へ当接し続ける。この制振部材10は、咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口峡へ挿入して、軟口蓋の下面及び口蓋帆及び口蓋垂へ当接する。よって、実施例8の軟口蓋安定器は、口蓋帆及び口蓋垂の振動に起因する軟口蓋型の鼾を防止し、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸を防止する。また、この発泡ゴムに水を含ませてから口腔へ装着すると、口峡の粘膜の乾燥を防止できる。この制振部材10の後端付近に穴を明け、後端部12を水平方向へ湾曲する線状部分にして、口蓋垂の背面及び側面を包囲させると、制振部材10が咽頭の粘膜及び扁桃腺へ接触せずに口蓋帆へ当接し、左右の顎通過部24が前後方向への制振部材10の移動を防止して、口蓋帆及び口蓋垂の咽頭腔への沈下に起因する閉塞型の睡眠時無呼吸をより確実に防止する。
【0114】
発泡ゴム製の弾性発泡被覆材50でアルミ合金製の保持部材20を被覆したことによって、実施例8の軟口蓋安定器は極めて軽量である。また、弾性を備えた発泡被覆材50の表面に分布する微細な凹凸が、口腔の粘膜との摩擦力及び粘着力を高めていて、特に効果的に口腔からの脱落を防止できる。また、この弾性発泡被覆材50は、口腔の粘膜へ柔軟に当接するので、粘膜の損傷を特に効果的に防止できる。
【0115】
実施例8の保持部材20は、プライヤーなどの工具でアルミ合金製のパイプを変形させて、顎通過部24の外端にある屈曲部の位置を内側又は外側へ移動することにより、左右の顎通過部24同士及び左右のアーム部26同士の間隔を容易に調整できる。また、アーチ部22も、工具又は手指で容易に変形できる。このことによって、制振部材10及び支持突起30の位置も容易に調整できるので、使用者個々の口腔の形状寸法に適合させて口腔へ収容できる。
【符号の説明】
【0116】
10 制振部材
12 制振部材の後端部
14 コイルバネ
18 制振吸盤
20 保持部材
22 保持部材のアーチ部
24 保持部材の顎通過部
26 保持部材のアーム部
27 保持部品
28 ネジ
30 支持突起
38 支持吸盤
40 反力板
50 弾性発泡被覆材
902 硬口蓋
904 軟口蓋
906 口蓋帆
908 口蓋垂
920 咽頭腔
930 固有口腔
940 口腔前庭
950 臼後空隙
952 翼下顎ヒダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟口蓋へ当接するように後方へ突出させて、固有口腔へ配置する制振部材と、
該制振部材を保持して口蓋へ沿うように湾曲するアーチ部と、該アーチ部の左右両端へ配置して左右の臼後空隙へ収容する一対の顎通過部と、該顎通過部から前方へ屈曲して口腔前庭へ収容するアーム部と、を有する保持部材と、
該アーチ部へ固設して、硬口蓋へ沿うように湾曲し、前端が該顎通過部よりも前方に位置する反力板と、
を備えることを特徴とする軟口蓋安定器。
【請求項2】
前記制振部材及び/又は前記保持部材へ固設し、前記反力板の前端よりも後方へ配置した支持突起を、
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の軟口蓋安定器。
【請求項3】
前記制振部材が、上下方向へ撓むように弾性を備えていることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の軟口蓋安定器。
【請求項4】
前記支持突起が、上下方向へ伸縮するように弾性を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軟口蓋安定器。
【請求項5】
前記制振部材の後端部が、口蓋垂の背面及び側面を包囲するように水平方向へ湾曲していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の軟口蓋安定器。
【請求項6】
前記支持突起及び/又は反力板が、上顎と下顎を咬合したときに舌へ摩擦することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の軟口蓋安定器。
【請求項7】
前記制振部材が、凹面が上方へ向いて外周が軟口蓋へ当接する制振吸盤であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の軟口蓋安定器。
【請求項8】
前記支持突起が、凹面が下方へ向いて外周が舌へ当接するように固有口腔へ配置する支持吸盤であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の軟口蓋安定器。
【請求項9】
構成部材の全部又は一部を被覆する弾性発泡被覆材をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の軟口蓋安定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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