説明

軟質容器及びその密封方法

【課題】 見栄性を低下させたり、製造工程を複雑にしたりすることなく、蓋部材と容器本体との嵌合部における気密性を十分に確保し得る軟質容器及びその密封方法を提供する。
【解決手段】 軟質フィルムからなる筒状部材10の上端部にリング部材11を気密に融着し、下端部に底板部材12を気密に融着した有底円筒状の容器本体2と、容器本体2内に連通する吐出口27を有し、容器本体2のリング部材11に嵌合されて、容器本体2の開口部を閉塞する蓋部材3と、容器本体2と蓋部材3との嵌合部14、23に装着される導電性を有するシール部33とを備え、蓋部材3とリング部材11の嵌合部14、23間にシール部33が配置されるように蓋部材3をリング部材11に嵌合し、高周波誘導加熱装置の誘導リング41によりシール部33を加熱することによって、蓋部材3とリング部材11とを気密に融着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材等の高粘稠液を充填するのに好適な軟質容器及びその密封方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシーリング材を容器内に充填した充填体として、図12に示す充填体100のように、先端部にシーリング材101の吐出用の吐出口102を形成し、基端部を開放した硬質な筒状の容器本体103と、容器本体103の基端開口部に内嵌装着したプランジャー104と、吐出口102を封止する封止蓋105と、吐出口102を閉塞するように、容器本体103の内面に融着した封止フィルム106とを備えたものが広く採用されている。この充填体100では、封止蓋105を開放して封止フィルム106を切開してから、吐出口102に図示外のノズルを装着し、これを専用の吐出ガンに装着して、吐出ガンのレバー操作により、プランジャー104を容器本体103の内部先端側へ、シーリング材101に圧力を加えながら移動させることで、ノズルからシーリング材101を吐出できるように構成されている。
【0003】
このような構成の充填体100においては、プランジャー104とシーリング材101間の空気を略完全に外部に排出することができ、しかもプランジャー104と容器本体103間の気密性も十分に確保できるので、現在広く使用されているが、容器本体103が硬質であるため、シーリング材101を使い切った後に容器本体103を小さく潰すことができず、容器本体103の減容化に限界があり、廃棄物が嵩張るという問題があった。
【0004】
そこで、シーリング材等の高粘稠液を充填する軟質容器として、軟質フィルムからなる筒状部材の下端部に底板部材を融着し、上端部にリング部材を融着した有底円筒状の容器本体と、容器本体のリング部材に気密状に嵌合される蓋部材と、蓋部材に形成した吐出口を閉塞するように蓋部材の下面に融着した封止フィルムとを備え、前記充填体100と同様に、封止フィルム106を切開して吐出口を開口してから、吐出口にノズルを装着し、これを専用の吐出ガンに装着して、吐出ガンのレバー操作により、底板部材を蓋部材側へ、シーリング材に圧力を加えるとともに筒状部材を長さ方向に潰しながら移動させることで、ノズルからシーリング材を吐出できるように構成したものも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、この特許文献1には、蓋部材をリング部材に対して気密に嵌合固定するための嵌合構造として、蓋部材の外周部に下側へ向けて開口する環状溝からなる蓋側嵌合部を形成し、リング部材の上端部に該蓋側嵌合部に凹凸嵌合する環状の容器側嵌合部を形成したものを基本構造とし、この基本構造に対して、さらに次のような構成を付加したものが記載されている。即ち、(1)容器側嵌合部の上端部に環状溝を形成することで、リング部材に対する蓋部材の打栓時に、軟質容器内のシーリング材の一部を環状溝内に侵入させて気密性を高めるように構成したり、(2)容器側嵌合部の外周部に環状溝を形成するとともに、蓋部材の外周部にこの嵌合溝に凹凸嵌合する嵌合突部を形成したり、(3)蓋部材とリング部材とにわたってその外周部に封止テープを融着したりしたものが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−104448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1記載の発明は本出願人によるものであるが、実際に製造してみると、前記(1)(2)の構造では、リング部材と蓋部材との嵌合部分における気密性を十分に確保できず、(3)の構造では製造工程が複雑になるとともに、封止テープにより軟質容器の外観が低下するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、見栄性を低下させたり、製造工程を複雑にしたりすることなく、蓋部材と容器本体との嵌合部における気密性を十分に確保し得る軟質容器及びその密封方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る軟質容器は、軟質フィルムからなる筒状部材の上端部にリング部材を気密に融着し、下端部に底板部材を気密に融着した有底円筒状の容器本体と、前記容器本体内に連通する吐出口を有し、容器本体のリング部材に嵌合されて、容器本体の開口部を閉塞する蓋部材と、前記容器本体と蓋部材との嵌合部に装着される導電性を有するシール部材とを備え、蓋部材とリング部材の嵌合部間にシール部材が配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、高周波誘導加熱によりシール部材を加熱することによって、蓋部材とリング部材とを気密に融着したものである。
【0010】
この軟質容器においては、シール部材が嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、高周波誘導加熱によりシール部材を加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着することで、蓋部材がリング部材に気密に固定されているので、軟質容器の外観を低下させることなく、蓋部材をリング部材に確実且つ容易に気密に固定することができる。特に、蓋部材とリング部材間にシール部材が挟持されるように蓋部材を加圧しながらシール部材を加熱すると、蓋部材及びリング部材がシール部材に十分に融着させることができるので好ましい。
【0011】
しかも、この軟質容器では、筒状部材が軟質フィルムで構成されているので、この筒状部材を長さ方向に潰しながら内容物を吐出することが可能となり、内容物を使い切った後の容器を大幅に減容化することが可能となる。また、底板部材及びリング部材を硬質素材で構成すると、高粘稠液を充填した状態で軟質容器が筒状に保形されるので、軟質容器の取扱性を向上できる。更に、この軟質容器では、容器本体として、軟質フィルムからなる筒状部材の下端部に底板部材を融着し、上端部にリング部材を融着したものを用いているので、底板部材及びリング部材を筒状部材とは別個に製作することが可能となり、底板部材及びリング部材の成形のための金型として、安価でしかも生産性に優れた小型なものを採用でき、しかも底板部材及びリング部材を外部メーカーに製造委託することも可能となるので、容器本体を製作するための設備経済上の負担を大幅に軽減できる。
【0012】
前記シール部材としては、蓋部材とリング部材間に配置可能なものであれば任意の形状に形成したものを採用でき、例えば蓋部材とリング部材との嵌合部分に適合した環状に形成したものや、蓋部材とリング部材との間から外側や内側へ食み出すような角形や円形などの任意の形状に形成したものを採用できる。シール部材の素材としては、導電性を有するものであれば任意の素材からなるものを採用でき、例えば銅やアルミニウムなどの金属材料や炭素からなる線材や箔、あるいはこれらの材料を合成樹脂材料に混練したものや、これらの材料を樹脂フィルム間にラミネートしたものを採用できる。また、前記シール部材は、軟質容器と別部材で構成することも可能であるが、軟質容器を構成する部材で構成することもできる。
【0013】
具体的には、前記吐出口を閉塞するように蓋部材の下面に封止フィルムを気密に融着し、この封止フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた封止フィルムを用い、シール部材として封止フィルムの外縁部に、蓋部材とリング部材との嵌合部間に延びるシール部を形成して、封止フィルムをシール部材として兼用できる。また、前記筒状部材を構成する軟質フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムを用い、シール部材として筒状部材の上端部に、蓋部材とリング部材との嵌合部間に延びるシール部を形成して、筒状部材を構成する軟質フィルムをシール部材として兼用できる。
【0014】
本発明に係る軟質容器の密封方法は、軟質フィルムからなる筒状部材の上端部にリング部材を気密に融着し、下端部に底板部材を気密に融着した有底円筒状の容器本体に、吐出口を有する蓋部材を気密に嵌合固定する軟質容器の密封方法であって、前記蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置可能な導電性を有するシール部材を用い、このシール部材が嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部材が挟持されるように相対的に蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部材を加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着するものである。
【0015】
ここで、前述のように封止フィルムをシール部材として兼用する場合には、前記蓋部材として、吐出口を閉塞するように封止フィルムを下面に気密に融着したものを用いるとともに、封止フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた封止フィルムを用い、前記シール部材として封止フィルムの外縁部にシール部を形成し、このシール部が蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部が挟持されるように相対的に蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部を加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着することになる。
【0016】
また、筒状部材を構成する軟質フィルムをシール部材として兼用する場合には、前記筒状部材を構成する軟質フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムを用い、シール部材として筒状部材の上端部にシール部を形成し、このシール部が蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部が挟持されるように相対的に蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部を加熱して、蓋部材とリング部とを気密に融着することになる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る軟質容器及びその密封方法によれば、シール部材が嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部材が挟持されるように蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部材を加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着するので、軟質容器の外観を低下させることなく、蓋部材をリング部材に確実且つ容易に気密に固定することができる。
【0018】
また、この軟質容器によれば、筒状部材を軟質フィルムで構成しているので、内容物を使い切った後の容器を大幅に減容化できること、底板部材及びリング部材を硬質素材で構成することにより、軟質容器の取扱性を向上できること、底板部材及びリング部材を筒状部材とは別個に製作することが可能となり、容器本体を製作するための設備経済上の負担を大幅に軽減できること、などの効果が得られる。
【0019】
ここで、シール部材は、軟質容器を構成する部材とは別部材で構成することも可能であるが、吐出口を閉塞する封止フィルムや筒状部材を構成する軟質フィルムをシール部材として兼用させると、軟質容器を構成する部品点数を少なくでき、しかも軟質容器を製造するに当たり、蓋部材とリング部材との嵌合部間へシール部材を装着するための工程を省略することが可能となるので、軟質容器の製造工程を複雑にすることなく、蓋部材をリング部材に気密に融着固定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1〜図3、図10に示すように、軟質容器1は、軟質フィルムからなる筒状部材10の上端部にリング部材11を気密に融着し、下端部に底板部材12を気密に融着した有底円筒状の容器本体2と、容器本体2内に連通する吐出口27を有し、リング部材11に嵌合されて、容器本体2の開口部13を閉塞する蓋部材3と、外周部に蓋部材3とリング部材11の嵌合部14、23間に配置されるシール部33を有し、蓋部材3の下面に融着されて吐出口27を閉鎖する導電性を有する封止フィルム4とを備え、容器本体2内に内容物5を充填した状態で、蓋部材3とリング部材11の嵌合部14、23間にシール部33が配置されるように蓋部材3をリング部材11に嵌合し、蓋部材3とリング部材11間にシール部33が挟持されるように蓋部材3を加圧しながら、高周波誘導加熱装置の誘導コイル41によりシール部33を加熱して、蓋部材3とリング部材11とを気密に融着し、内容物5を密封するように構成したものである。
【0022】
内容物5としては、シーリング材や接着剤や塗料などの高粘稠液が好適であるが、マヨネーズやジャムなどの食品類などの高粘稠液や、高粘稠液以外の液状やゲル状の内容物をこの軟質容器1に収容することも可能である。
【0023】
容器本体2について説明すると、柔軟フィルムからなる円筒状の筒状部材10が設けられ、筒状部材10の上端部には筒状部材10よりも硬質なリング部材11が一体的に設けられ、筒状部材10の下端部の内側には筒状部材10よりも硬質な略円板状の底板部材12が一体的に設けられ、容器本体2の上端部にはリング部材11により開口部13が形成され、容器本体2の下端部は底板部材12により閉鎖されている。
【0024】
筒状部材10は、軟質フィルムを丸めて両側縁部を重ね合わせ、重ね合わせた部分をヒートシールや超音波シールや高周波誘導シールなどにより融着させることにより筒状になしたものである。筒状部材10は、その全長にわたって同一径に構成することも可能であるが、筒状に成形するときに使用する円筒状又は円柱状のマンドレルから抜き取り易くするため、一端側を縮径させた緩やかなテーパ筒状に構成することが好ましい。また、後述のように底板部材12をリング部材11に内嵌させて、内容物5としての内容物5を略完全に使い切れるように構成するため、筒状部材10のうちの小径な下端部に底板部材12を固定し、大径な上端部にリング部材11を固定することが好ましい。但し、この筒状部材10は、押し出し成形等により製作することも可能である。また、底板部材12及びリング部材11をインサートインジェクションにより、筒状部材10の両端部に一体化することも可能である。
【0025】
筒状部材10を構成する軟質フィルムは、小さく潰すことができる柔軟なものであれば任意の素材からなるものを使用でき、樹脂フィルムのみからなる単層構造又は複層構造のフィルム材でもよいし、アルミニウム箔などの金属箔を樹脂フィルム間にラミネートした複層構造のフィルム材を用いてもよい。本実施例では、アルミニウム箔を樹脂フィルム間に積層した3層構造乃至4層構造のフィルム材を用い、このフィルム材を筒状に丸めた状態で、側縁を重ね合わせてヒートシールすることで筒状に製作されている。樹脂フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのヒートシール可能な熱可塑性樹脂が好適に利用できる。また、内外の樹脂フィルムは、同種の素材で構成してもよいが、内面側と外面側とでは使用条件が異なるので、使用条件に応じた素材からなる樹脂フィルムを用いることが好ましい。例えば、内容物5として、シーリング材を容器本体2に充填する場合には、内面側の樹脂フィルムとしては、シーリング材との接触により変質等しないポリエチレンやポリプロピレンのフィルムを用い、外面側の樹脂フィルムとしては、強度面やガスバリヤ性を重視してポリエステルやナイロンのフィルムを用いることが望ましい。
【0026】
リング部材11及び底板部材12は、筒状部材10との融着性を考慮して、筒状部材10の内面側を構成する樹脂材料と同種の素材で構成され、射出成形等により筒状部材10とは別個に成形されている。このようにリング部材11及び底板部材12を筒状部材10とは別個に製作すると、リング部材11及び底板部材12を生産性に優れた小型な金型で製作することが可能となるとともに、リング部材11及び底板部材12を容器本体2とは別の成形専用の設備にて製作できるので、設備経済上の負担を大幅に少なくできる。
【0027】
図2〜図4に示すように、リング部材11の上部には容器側嵌合部14が上方へ突出状に形成され、リング部材11の途中部には大径部11aが形成され、下半部には小径部11bが形成されている。大径部11aと小径部11b間には段部11cが形成され、小径部11bの下端部外周面には下側へ行くに縮径するテーパ面11dが形成されている。筒状部材10の上端部に対するリング部材11の固定は、筒状部材10の上端部をテーパ面11dで案内しながら、上端が段部11cに当接するまで小径部11bに外嵌させ、その後筒状部材10を小径部11bに外面側から加熱融着して、気密に固定することになる。
【0028】
底板部材12の外周部には上方へ延びる環状の縦壁部12aが形成され、筒状部材10の上端部に対する底板部材12の固定は、筒状部材10の下端部の内側に嵌込んで、外面側から筒状部材10を縦壁部12aに加熱融着することにより、気密に固定されている。底板部材12の縦壁部12aの外径は、リング部材11の内径よりもやや小径に構成され、筒状部材10を潰しながら内容物5を使い切った状態で、図3に仮想線で示しように、底板部材12がリング部材11内に嵌り込んで、軟質容器1内の内容物5の略全部を使い切れるように構成されている。
【0029】
リング部材11及び底板部材12と筒状部材10との融着は、ヒートシールや超音波シールや高周波誘導シールなどにより行われ、この融着により1乃至複数の連続的な環状のシール線を形成することにより気密状に融着されている。
【0030】
蓋部材3は、図1〜図5に示すように、リング部材11に挿入される摺動筒部20と、摺動筒部20の下端部から内側へ延びて容器本体2の開口部13を閉鎖する蓋本体21と、摺動筒部20の上端部から外側へ延びる鍔部22とから一体的に形成されている。鍔部22にはリング部材11の容器側嵌合部14に外嵌合する環状溝からなる蓋側嵌合部23が下方へ向けて開口するように形成されている。蓋本体21の略中央部には上方へ突出する吐出部28が形成され、吐出部28内には容器本体2内に連通する吐出口27が形成されている
【0031】
リング部材11に対して蓋部材3を打栓するときに、容器本体2内に空気が残留しなしようにするため、蓋部材3の摺動筒部20の下端外周面には下方へ向けて縮径するテーパ部25が形成され、摺動筒部20の途中部には下端が容器本体2内に開口し、上端部が鍔部22付近まで延びるガス抜き用の溝部26が円周方向に間隔をあけて形成されている。
【0032】
封止フィルム4は、図6に示すように、導電性を有するアルミニウム箔などの金属箔30を樹脂フィルム31、32間にラミネートした複層構造に構成されている。樹脂フィルム31、32の素材としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのヒートシール可能な熱可塑性樹脂が好適に利用できる。また、樹脂フィルム31、32は、同種の素材で構成してもよいが、容器本体2の内部側に配置される樹脂フィルム31はリング部材11との相溶性に優れたものを採用し、外部側に配置される樹脂フィルム32は蓋部材3との相溶性に優れたものを採用することが好ましい。本実施例では、ポリエチレンからなる樹脂フィルム層と、アルミニウム箔からなる金属箔層と、ポリエチレンからなる樹脂フィルム層の三層構造に構成されている。
【0033】
この封止フィルム4は、図3〜図5に示すように、吐出口27を閉鎖するように蓋本体21の底面に融着されるとともに、摺動筒部20に沿って上方へ延びて蓋部材3とリング部材11との嵌合部14、23間まで延設され、封止フィルム4の外周部には嵌合部14、23間に配置される環状のシール部33が形成されている。このシール部33は、蓋部材3をリング部材11に対して気密に嵌合固定するときに、後述のようにして蓋部材3及びリング部材11に気密に融着されている。尚、軟質容器1から内容物5を取り出す際には、吐出口27内の封止フィルム4を切開して、吐出部28に図示外のノズルを取付け、ノズルから内容物5を吐出させることになる。
【0034】
次に、容器本体2に対する内容物5を充填して密封する方法について説明する。
【0035】
先ず、図7(a)に示すように、容器本体2を縦向きにして内容物5の注入管40を容器本体2の奥部内まで挿入し、この状態で注入管40から内容物5を注入しながら、容器本体2を注入管40と相対的に下降させ、内容物5に気泡が入らないように、容器本体2に内容物5を必要量だけ注入する。内容物5を注入した状態で、図7(b)に示すように、内容物5の液面は、内容物5の粘度が高いことから、中央部が盛り上がった山形状になる。次に、図7(c)に示すように、内容物5を注入した容器本体2の筒状部材10の途中部を図示外の押圧部材により押圧して、内容物5の液面を隆起させ、注入した内容物5の見かけ上の注入量を多めに調整する。このとき、内容物5の液面は、注入時の山形状を略維持した状態で隆起する。
【0036】
次に、押圧部材による押圧を解放してから、予め封止フィルム4を下面に融着した蓋部材3を図示外の打栓手段により下方へ突き出して、筒状部材10を元の形状に復帰させながら、図7(d)に示すように、容器本体2のリング部材11に蓋部材3の摺動筒部20を挿入させることになる。このとき蓋部材3は、先ず図8に示すように、内容物5の液面の頂部に密着し、次に液面の頂部を潰しながら、つまり液面と蓋部材3との密着部分を外周側へ広げながら、内容物5の液面に密着するので、蓋部材3と内容物5間の空気は排出され、更に蓋部材3がリング部材11に挿入され始めると、ガス抜き用の溝部26内において、封止フィルム4とリング部材11間に隙間が形成され、この隙間を通って外部に略完全に排出され、図9に示すように、蓋部材3がリング部材11に挿入される。
【0037】
また、このとき蓋部材3がリング部材11内に押し込まれ、図3に示すように、蓋部材3の蓋側嵌合部23にリング部材11の容器側嵌合部14が嵌合されるとともに、封止フィルム4のシール部33が嵌合部14、23間に配置されることになる。尚、筒状部材10は柔軟な膜体で構成しているので、押圧部材による筒状部材10の押圧を解放しないで、押圧部材の押圧力よりも大きな力で蓋部材3をリング部材11に挿入し、打栓することもできる。
【0038】
こうして、蓋部材3を打栓してから、図10に示すように、高周波誘導加熱装置の誘導コイル41に、例えば900kHzの周波数で2.5kWの電力を供給しながら、この誘導コイル41を蓋部材3の上面に0.2〜0.4MPaの押圧力で1.5〜2.5秒間圧接させ、蓋部材3とリング部材11間にシール部33を挟持しながら、誘導コイル41によりシール部33の金属箔30を発熱させ、金属箔30によりシール部33の樹脂フィルム31、32及びその付近の蓋部材3及びリング部材11を加熱溶融させて、蓋部材3及びリング部材11をシール部33に融着し、蓋部材3をリング部材11に気密状に固定することになる。押圧力は、0.2MPa未満では、融着不良が発生し、0.4MPaを超える場合には、蓋部材3やリング部材11が変形するので、0.2〜0.4MPaに設定することが好ましく、圧接時間は1.5秒未満の場合には、融着不良が発生し、2.5秒を超える場合には、過融着により蓋部材3やリング部材11が変形するので、1.5〜2.5秒間に設定することが好ましい。但し、蓋部材3とリング部材11との嵌合部分の容器内部側に配置される封止フィルム4を加熱して、蓋部材3とリング部材11とを融着することもできるし、蓋部材3とリング部材11との嵌合部分の開口端までシール部33を延ばして、開口側端部のシール部33を加熱して、蓋部材3とリング部材11とを融着することもできる。
【0039】
このようにして容器本体2内に内容物5を注入し打栓した軟質容器1においては、蓋部材3付近における空気の残留を効果的に防止でき、残留空気による内容物5の劣化や硬化を効果的に防止することが可能となる。また、シール部33の樹脂フィルム31、32が蓋部材3及びリング部材11にそれぞれ融着することで、嵌合部14、23間における気密性を十分に確保できるので、蓋部材3とリング部材11間の僅かな隙間から、外気が侵入することによる、内容物5の硬化や品質劣化を効果的に防止できる。それ故、例えば、内容物5として湿気硬化性組成物からなるシーリング材を充填した場合でも、容器本体2内への湿気の侵入を確実に防止して、湿気による内容物5の硬化を防止できる。
【0040】
尚、本実施例では、封止フィルム4の外周部にシール部33を形成して、これを蓋部材3とリング部材11の嵌合部14、23間に配置させたが、次のように構成することもできる。但し、封止フィルムとしては、蓋本体21の下面にのみ融着される封止フィルム35を設けることになる。
【0041】
図11(a)に示す軟質容器1Aのように、筒状部材10に代えて、段部11cよりも上側へ延びる筒状部材10Aを設け、シール部33に代えて、筒状部材10Aの上端部に蓋部材3とリング部材11の嵌合部14、23間に配置されるシール部33Aを形成することも可能である。
【0042】
また、図11(b)に示す軟質容器1Bのように、筒状部材10に代えて、上端部をリング部材11に内嵌させてリング部材11の内面に融着した筒状部材10Bを設け、シール部33に代えて、筒状部材10Bの上端部にシール部33Bを形成することもできる。
【0043】
更に、図11(c)に示す軟質容器1Cのように、シール部33を封止フィルム4や筒状部材10とは別個の部材からなるシール部材34で構成することも可能である。この場合には、シール部材34として、封止フィルム4や筒状部材10と同様に、アルミニウム箔などの金属箔を合成樹脂シートでラミネートしたラミネートフィルムからなるものを採用することもできるし、アルミニウムや銅などの金属材料や炭素などの導電性材料をリング状に形成したものを採用することもできる。また、導電性材料を合成樹脂材料に混練して、リング状に成形したものを採用することもできる。更にまた、これらの導電性材料をリング部材11又は蓋部材3の嵌合部にインサート成形や真空蒸着などにより一体的に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】内容物を充填した軟質容器の斜視図
【図2】軟質容器要部の分解斜視図
【図3】内容物を充填した軟質容器要部の縦断面図
【図4】内容物を充填した軟質容器のリング部材付近の要部縦断面図
【図5】封止フィルムを除去した状態での蓋部材の側面図
【図6】封止フィルムの積層構造を示す縦断面図
【図7】(a)〜(d)は軟質容器に対して内容物を充填し密封する方法の説明図
【図8】容器本体に対する蓋部材の打栓途中の説明図
【図9】容器本体に対する蓋部材の打栓途中の説明図
【図10】容器本体に対する蓋部材の融着時の説明図
【図11】(a)〜(c)は他の構成の軟質容器のリング部材付近の要部縦断面図
【図12】従来の技術に係るシーリング材充填容器の縦断面図
【符号の説明】
【0045】
1 軟質容器 2 容器本体
3 蓋部材 4 封止フィルム
5 内容物
10 筒状部材 11 リング部材
11a 大径部 11b 小径部
11c 段部 11d テーパ面
12 底板部材 12a 縦壁部
13 開口部 14 容器側嵌合部
20 摺動筒部 21 蓋本体
22 鍔部 23 蓋側嵌合部
25 テーパ部 26 溝部
27 吐出口 28 吐出部
30 金属箔 31 樹脂フィルム
32 樹脂フィルム 33 シール部
1A 軟質容器 10A 筒状部材
33A シール部
1B 軟質容器 10B 筒状部材
33B シール部
1C 軟質容器 34 シール部材
35 封止フィルム
40 注入管 41 誘導コイル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質フィルムからなる筒状部材の上端部にリング部材を気密に融着し、下端部に底板部材を気密に融着した有底円筒状の容器本体と、
前記容器本体内に連通する吐出口を有し、容器本体のリング部材に嵌合されて、容器本体の開口部を閉塞する蓋部材と、
前記容器本体と蓋部材との嵌合部に装着される導電性を有するシール部材と、
を備え、蓋部材とリング部材の嵌合部間にシール部材が配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、高周波誘導加熱によりシール部材を加熱することによって、蓋部材とリング部材とを気密に融着したことを特徴とする軟質容器。
【請求項2】
前記吐出口を閉塞するように蓋部材の下面に封止フィルムを気密に融着し、この封止フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた封止フィルムを用い、前記シール部材として封止フィルムの外縁部に、蓋部材とリング部材との嵌合部間に延びるシール部を形成した請求項1記載の軟質容器。
【請求項3】
前記筒状部材を構成する軟質フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムを用い、前記シール部材として筒状部材の上端部に、蓋部材とリング部材との嵌合部間に延びるシール部を形成した請求項1記載の軟質容器。
【請求項4】
軟質フィルムからなる筒状部材の上端部にリング部材を気密に融着し、下端部に底板部材を気密に融着した有底円筒状の容器本体に、吐出口を有する蓋部材を気密に嵌合固定する軟質容器の密封方法であって、
前記蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置可能な導電性を有するシール部材を用い、このシール部材が嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部材が挟持されるように相対的に蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部材を加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着することを特徴とする軟質容器の密封方法。
【請求項5】
前記蓋部材として、吐出口を閉塞するように下面に封止フィルムを気密に融着したものを用いるとともに、封止フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた封止フィルムを用い、前記シール部材として封止フィルムの外縁部にシール部を形成し、このシール部が蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部が挟持されるように相対的に蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部を加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着する請求項4記載の軟質容器の密封方法。
【請求項6】
前記筒状部材を構成する軟質フィルムとして、導電性を有する金属箔の両面にリング部材と蓋部材とに相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムを用い、シール部材として筒状部材の上端部にシール部を形成し、このシール部が蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置されるように蓋部材をリング部材に嵌合し、蓋部材とリング部材間にシール部が挟持されるように相対的に蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置によりシール部を加熱して、蓋部材とリング部とを気密に融着する請求項4記載の軟質容器の密封方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−36218(P2006−36218A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214153(P2004−214153)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】