転写具
【課題】転写した箇所を視認し易く、且つその後消色することで転写した箇所を目立たなくし得る特性を有する転写具を提供する。
【解決手段】特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となる転写物たる粘着剤31と、発色状態にある前記転写物を可視光から遮光された状態で収納し、粘着剤31の前記発色状態を維持する遮光性容器たるリフィル2とを具備し、このリフィル2が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部を有していることを特徴とする。
【解決手段】特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となる転写物たる粘着剤31と、発色状態にある前記転写物を可視光から遮光された状態で収納し、粘着剤31の前記発色状態を維持する遮光性容器たるリフィル2とを具備し、このリフィル2が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部を有していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤等の転写物を転写対象面に転写する際に用いる転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、糊を紙等に塗布するための製品の一つとして、糊を塗布した後、当該糊の色が徐々に薄くなっていく特性を有するスティック糊が広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。このスティック糊においては、アルカリ性を呈する固形糊にpH指示薬を混合しておくことにより有色状態で密閉された筐体に収容されている。そして有色状態にある固形糊は塗布された後、空気に触れることによって前記pH指示薬の色が消えていく、すなわち消色していくものとなっている。このような糊は、塗布直後には塗布した箇所が使用者にとって明確に視認され得ることで塗り残しが生じた箇所が容易に判別できるという利点に加え、上記の通りその後無色となるために使用した箇所が目立たないという利点をも有し、これらの利点が使用者に広く用いられる大きな要因となっている。
【0003】
そして現在、粘着剤等の転写物を紙等に転写する転写具においても、粘着剤を転写した箇所がより明確に視認し得るように、より強く発色し、且つ転写後にはより目立たなくなるよう消色し得るものが求められている。
【0004】
ところで、光が照射されると変色するものの一例として、特定の波長の光が照射されることにより発色し、また別の特定の波長の光が照射されると無色となるという特性を有するフォトクロミック化合物が知られている。このフォトクロミック化合物の多くは、特定の波長の紫外光を照射することにより明確に発色し得るとともに、特定の波長の可視光を照射することにより無色となるという特性を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながらこのフォトクロミック化合物については、自然条件の光に照射されることで無色となる特性を有するものは知られているものの(例えば、特許文献2参照)、転写具のケース内にそのまま用いた場合では、遮光した状態を安定して維持することができないことから有色の状態を保持することができず、徐々に消色してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4499443号公報
【特許文献2】特許第4578623号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「コクヨ2011総合カタログ」、ステーショナリー編、コクヨ株式会社、2008年12月発行、P.519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような点を踏まえたものであり、光が照射されても変色せず、長期間安定して維持する転写具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち本発明に係る転写具は、光が照射されると変色する転写物と、前記転写物を遮光した状態で収納する遮光性容器とを具備し、この遮光性容器が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部を有していることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、遮光性容器内で変色する前の状態に安定して維持された転写物が転写される転写具を提供することができる。
【0012】
または、光を照射するとより目立たないように消色するとともに当該消色を安定して起こり得るようにするためには、転写物を、特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し可視光又は自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより可視光又は自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となるものとし、遮光性容器を、発色状態にある前記転写物を可視光又は自然条件下の光から遮光された状態で収納し、前記転写物の前記発色状態を維持し得るものとすることが望ましい。
【0013】
ここで、「自然条件下の光」とは、太陽光や室内灯に照射された条件下での光を意味する。具体的には可視光を主体とし、太陽光に含まれる5〜6%程度の紫外光や蛍光灯に含まれる微量の紫外光が含まれる光のことである。すなわち、太陽光と同じか、それ以下の割合で紫外光を含んでいる光のことを指す。
【0014】
加えて、本発明における「消色状態」とは、完全に無色となる態様のみならず、無色に近づくように退色している態様をも含むとともに、当該退色した態様のまま維持されている状態をも含む概念である。
【0015】
また、発色状態を安定して維持できるものを得るためには、フォトクロミック化合物が、例えばジアリールエテン系のフォトクロミック化合物であることが望ましいが、太陽光が照射される条件や室内灯が照射されているような自然条件下で安定して消色状態となるものであればよい。また勿論、上記のジアリールエテン系のフォトクロミック化合物のみならず、他の既存のもの、又は今後発見されるものであっても、「特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となる」という特性が満たされるものであればよい。
【0016】
このようなものであれば、遮光性容器内で発色状態に安定して維持された転写物が転写されることとなるので、フォトクロミック化合物自体の発色により転写物を転写した位置の確認が容易であり且つ転写時における転写物の転写位置がより容易に視認できるとともに、自然条件下の光のもとで転写物は消色状態となるので転写した跡を目立たなくし得る転写具を提供することができる。
【0017】
また、遮光接続部の構成は、例えば密閉構造としたり、格別の部材により被覆したりするなど種々の構成が考え得るが、外壁に配置された部品同士のみで構成でき、しかも部品同士の相対動作を有効に担保できる構成としては、この遮光接続部を、遮光性容器の外壁の厚み方向に重なる重なり面を有する重層接続部とする態様を挙げることができる。
【0018】
加えて、斯かる重層接続部を、転写物を巻回保持する巻回軸部と、巻回軸部を保持する容器本体との間に設けたものとすれば、遮光性容器の遮光性と動作性を両立することができる。
【0019】
また、上記した重層接続部を、転写物を転写対象物に転写するための転写ヘッドを露出した露出位置と、転写ヘッドを遮光した状態で被覆する遮光位置との間で動作可能に設けられたキャップに設けるようにすれば、開閉することにより最も光が入り易い当該箇所を確実に遮光することができる。
【0020】
そしてキャップに設けた重層接続部を有効に機能させるためには、このキャップを前記遮光位置でロックするロック部を設けておくことが望ましい。
【0021】
特に、使用者が転写具の非使用時に確実にキャップを遮光位置とするよう促すための構成として、ロック部が作動する遮光位置までキャップを動作させることを促すための遮光動作惹起部を設けておけば、使用者が誤ってキャップを露出位置とした状態で転写具を放置してしまうという不具合を有効に回避することができる。
【0022】
そして上述した遮光動作惹起部の具体的な構成としては、この遮光動作惹起部を、キャップを遮光位置の近傍で露出位置へ向けて弾性付勢する弾性付勢部を有する構成とすれば、使用者がキャップを遮光位置にし損ねた場合にはキャップが露出位置へ向けて付勢されることで遮光位置に成り得ない状態であることが使用者にとって明確に視認でき、改めて遮光位置とする操作を使用者に有効に促し得るものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、遮光性容器内で変色する前の状態に安定して維持された転写物が転写される転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観図。
【図2】同正面図。
【図3】同他の正面図。
【図4】同実施形態に係る転写具本体の構成説明図。
【図5】同スライダの正面図。
【図6】同リフィルの正面図。
【図7】同背面図。
【図8】図6に係る構成説明図。
【図9】図7に係る構成説明図。
【図10】同リフィルを示す一部を省略した平断面図
【図11】同キャップの正断面図。
【図12】同転写具本体及びキャップを示す平断面図図。
【図13】図12に係る動作説明図。
【図14】同作用説明図。
【図15】同実施形態に係る動作説明図。
【図16】同上。
【図17】同上。
【図18】同実施形態の変形例に係る構成説明図。
【図19】図18に係る動作説明図。
【図20】同実施形態の他の変形例に係る構成説明図。
【図21】同要部に係る外観図。
【図22】同要部を示す正断面図。
【図23】図22に係る動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態に係る転写具は、図1に示すように、例えば転写物としてテープ状の基材32に塗工されたアクリル系粘着剤31を主体とする粘着剤31を採用し、所要の長さずつ送り出した粘着剤31を紙片等の対象物の表面に転写ヘッド22を押し付けた状態で表面に沿ってスライドさせることにより転写させて使用するものである。なお転写テープ3は、例えば樹脂製の長尺かつ薄肉な基材32の一方の面に予め転写物たる粘着剤31を塗布したものである。
【0027】
本実施形態の転写具1は、転写テープ3と、この転写テープ3を収容した遮光性容器たるリフィル2と、このリフィル2を保持し、使用者によって直接扱われる転写具本体1とを主たる構成部品としている。
【0028】
この本実施形態にて転写物として適用されている粘着剤31は、特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となるジアリールエテン系のフォトクロミック化合物を含むことにより、紫外光が照射されると発色状態となり自然条件下の光が照射されると消色状態となる特性を有する。
【0029】
またここで、「自然条件下の光」とは、太陽光や室内灯に照射された条件下での光を意味する。具体的には可視光を主体とし、太陽光に含まれる5〜6%程度の紫外光や蛍光灯に含まれる微量の紫外光が含まれる光のことである。すなわち、太陽光と同じか、それ以下の割合で紫外光を含んでいる光のことを指す。
【0030】
これより、転写テープ3の構成について説明する。粘着剤31は、主に添加対象物たるアクリル系粘着剤31を主体とし、このアクリル系粘着剤31の重量に対し、フォトクロミック化合物を0.005〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%添加されたものである。そしてこのフォトクロミック化合物は、本実施形態では、例えば波長365nmの紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となるジアリールエテン系のフォトクロミック化合物である。しかし勿論、前記の紫外光は、当該フォトクロミック化合物や本実施形態に用い得る他のフォトクロミック化合物が発色し得る波長の光であれば良く、斯かる紫外光の波長は前記の365nmに限定されることはない。本実施形態では具体的には当該ジアリールエテン系のフォトクロミック化合物の一例として、1,2−ビス(2−メチルベンゾ(b)チオフェン−3−イル)ヘキサフルオロシクロペンテン(1,2-Bis(2-methylbenzo(b)thiophen-3-yl)hexafluorocyclopentene)を使用している。しかし勿論、「紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となる」という特性を満たすジアリールエテン系のフォトクロミック化合物であれば、既存のものであっても、また勿論今後発見されるものであっても有効に適用し得る。また勿論、当該フォトクロミック化合物はジアリールエテン系のものの他、スピロピラン系のフォトクロミック化合物であっても良く、これらの化合物が混合されたものであっても良い。
【0031】
ここで、本実施形態に係る転写具は、光が照射されると消色する転写物たる粘着剤31と、粘着剤31を遮光した状態で収納する遮光性容器たるリフィル2とを具備し、このリフィル2が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部Xを有していることを特徴とする。具体的には、特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し可視光又は自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより可視光又は自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となる転写物たる粘着剤31と、発色状態にある前記転写物を可視光又は自然条件下の光から遮光された状態で収納し、粘着剤31の前記発色状態を維持する遮光性容器たるリフィル2とを具備し、このリフィル2が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部Xを有していることを特徴とするものである。
【0032】
続いて以下、この転写具の具体的な構成について、すなわち転写具本体1及びリフィル2の具体的な構成について説明する。
【0033】
転写具本体1は、図1〜図5に示すように、主にリフィル2を被覆している第一ケース11と、第一ケース11に回転可能に支持された繰出しギア部12及び巻取りギア部13と、第一ケース11にヒンジを介して開閉可能に取り付けられた第二ケース14と、リフィル2に係り合うとともに第二ケース14にスライド可能に支持されるスライダ15とを有している。
【0034】
第一ケース11は、例えば樹脂製の一体成型品であり、繰出しギア部12及び巻取りギア部13を取り付けている側壁部分の端部からU字状に周壁を起立させた形状をなし、U字状の周壁の中央側で第二ケース14を開閉可能に接続すると共にその接続箇所に対向する開口部分からリフィル2の一部を露出させてなる。
【0035】
繰出しギア部12は、特に図4に示すように、第一ケース11の正面視略中央に回転可能に取り付けられており、転写物である粘着剤31が転写される際の回転を巻取りギア部13に伝達する繰出しギア12aと、繰出しギア12aの中央部分に取り付けられリフィル2側に係り得る繰出しコア12bと、これら繰出しギア12a及び繰出しコア12bとの相対的な回転を許容する滑り機構12cとを有している。
【0036】
巻取りギア部13は、特に図4に示すように、繰出しギア12aに噛合する巻取りギア13aとこの巻取りギア13aから一体的に突出しリフィル2側に係り得る巻取りコア13bとを有している。
【0037】
第二ケース14は、特に図4に示すように、正面視中央に配置された円形状の窓穴141と、スライダ15側の一部を移動可能に収容する矩形状の開口であるつまみ保持部142と、スライダ15をスライド移動可能に保持するスライダ保持部143とを有している。窓穴141は、転写具の使用時にリフィル2の内部を視認するための開口である。つまみ保持部142は、開口の近傍に設けられたつまみ保持穴144と、スライダ15を一端側及び他端側で保持するための露出位置決め部145及び遮光位置決め部146とを有している。
【0038】
スライダ15は、特に図5に示すように、第二ケース14にスライド可能に取り付けられた例えば薄板状の樹脂による一体成型品であり、使用者に操作させるためのつまみ部16と、リフィル2に係り合うための係合穴17と、上述した窓穴141に連通したときにリフィル2の内部を視認させるための透過穴18と、係合穴17から他端側に延び、係合穴17がリフィル2側に係り得なかったときにリフィル2側に当接し得る乗り上げ板19とを有している。つまみ部16は、スライダ15を一端側から他端側へ移動させる際に主に機能する第一つまみ部161と、スライダ15を他端側から一端側へ移動させる際に機能する第二つまみ部162とを有している。第一つまみ部161は、他端側へスライダ15を移動させる際に使用者の指等に当接する第一つまみ163と、第一つまみ163が操作された際に第二ケース14側の露出位置決め部145との係り合いが解除される露出側突起164とを有している。第二つまみ部162は、一端側へスライダ15を移動させる際に使用者の指等に当接する第二つまみ165と、第二つまみ165が操作された際に第二ケース14側の遮光位置決め部146との係り合いが解除される遮光側突起166とを有している。
【0039】
リフィル2は、本実施形態に於いては本発明の遮光性容器に該当するものである。当該リフィル2は、図6〜図11に示すように、転写テープ3を収容しているリフィル本体20と、このリフィル本体20内で転写テープ3を直接巻回保持している巻回軸部21と、使用時に転写テープ3を紙等の対象物に押し付けるための転写ヘッド22と、リフィル本体20の他端側に移動可能に取り付けられ転写ヘッド22を被覆しているキャップ23とを有している。
【0040】
リフィル本体20は、同図に示すように、主にリフィル2の外壁をなすものであり、未使用の転写テープ3の残量を確認するための窓部201と、巻回軸部21の繰出しリール211を支持している繰出しリール支持部202と、同じく巻回軸部21の巻取りリール212を支持している巻取りリール支持部203と、キャップ23の動作範囲並びに動作軌跡を決定するために溝状に設けられた正面側レール204及び背面側レール205とを有している。窓部201は、第二ケース14の窓穴141及びスライダ15の透過穴18に連通したときにのみリフィル2の内部の一部が視認し得るように形成されている。繰出しリール支持部202は、繰出しリール211に対して凹凸係合しながら回転可能に保持しているものであり、正面視並びに背面視において繰出しリール211に重層する重なり面206を有している。巻取りリール支持部203は、巻取りリール212に対して凹凸係合しながら回転可能に保持しているものであり、正面視並びに背面視において巻取りリール212に重層する重なり面207を有している。正面側レール204は、リフィル本体20の他端側に溝状に設けられたものであり、他端側の先端部にはキャップ23の一部と係り合って当該キャップ23を他端側に位置付けた遮光位置(Q)で位置決めし得るロック部209を有するとともに、このロック部209の若干一端よりにはキャップ23の一部の弾性変形を促すための変形助長部208を有している。背面側レール205は、上述した正面側レール204と略同一の形状をなしており、キャップ23の一部を位置決めし得るロック部209を有しているが、変形助長部208は設けられていない。
【0041】
巻回軸部21は、特に図10に示すように、未使用の転写テープ3を巻回保持しておくための繰出しリール211と、いわゆる使用後の転写テープ3つまり粘着剤31を転写した後の基材32を巻回するための巻取りリール212とを有している。繰出しリール211は主に転写テープ3を保持する繰出しリール本体213と、リフィル本体20に対して正面視または背面視で重層し得る重なり面214とを有している。巻取りリール212は主に基材32を巻回する巻取りリール本体215と、リフィル本体20に対して正面視又は背面視で重層し得る重なり面216とを有している。ここで本実施形態では、繰出しリール211の重なり面214及び巻取りリール212の重なり面216が、リフィル本体20における繰出しリール支持部202の重なり面206及び巻取りリール支持部203の重なり面207に対し、リフィル2の外壁の厚み方向に互いに重層することにより、本発明に係る重層接続部及び遮光接続部Xを構成している。
【0042】
転写ヘッド22は,リフィル本体20からはみ出す位置まで転写テープ3を導くとともに転写時には転写テープ3とともに紙等の対象物に押し付けられるものであり、対象物に押し付けられる際の力が転写テープ3に均等に伝わるよう弾性変形可能に構成された転写ローラ22aと、この転写ローラ22aを回転可能に支持するローラ軸22bとを有している。
【0043】
キャップ23は、特に図11に示すように、リフィル本体20とともにリフィル2の外壁をなすとともに不使用時の転写ヘッド22を被覆しておくためのものである。このキャップ23は具体的に説明すると、転写物を転写対象物に転写するための転写ヘッド22を露出した露出位置(P)と、転写ヘッド22を遮光した状態で被覆する遮光位置(Q)との間で動作可能に設けられたもので、いわゆる半割構造をなす第一キャップ4及び第二キャップ5とを有している。第一キャップ4は、第二キャップ5との接合部分に設けられたリブ41と、リブ41の表面で直接第二キャップ5に重なり合う重なり面42と、内側に突出しリフィル本体20の正面側レール204及び背面側レール205に沿って摺動し得る摺動突起43と、正面側においてこの摺動突起43を支持し弾性変形可能な突起形状に成形された弾性付勢部44と、正面側に概略線状に突出することによりスライダ15に設けられた係合穴17と係合し得る係合突起45とを有している。そして摺動突起43は、正面側レール204に収容され得る正面側の摺動突起43Fと、背面側レール205に収容され得る背面側の摺動突起43Rとを有している。第二キャップ5は、第一キャップ4と略等しい外形をなすものであり、第一キャップ4のリブ41を収容し得るリブ収容部51と、リブ収容部51の表面で直接第一キャップ4に係り合う重なり面と52、内側に突出しリフィル本体20の正面側レール204及び背面側レール205に沿って摺動し得る摺動突起53と、正面側においてこの摺動突起53を支持し弾性変形可能な突起形状に成形された弾性付勢部54と、正面側に概略線状に突出することによりスライダ15の係合穴17と係合し得る係合突起55とを有している。摺動突起53は、正面側レール204に収容され得る正面側の摺動突起53Fと、背面側レール205に収容され得る背面側の摺動突起53Rとを有している。そして本実施形態では、このキャップ23を遮光位置(Q)とした際に第一キャップ4の重なり面と第二キャップ5の重なり面とを重層させることにより、本発明に係る遮光接続部X且つ重層接続部を構成している。
【0044】
しかして本実施形態では、図12〜図17に示すように、スライダ15に設けられたつまみ部16の操作により、キャップ23が図12及び図17に示す遮光位置(Q)と、図13及び図15に示す露出位置(P)との間で移動可能に構成されている。図12〜図14は、つまみ部16の動作によるキャップ23の挙動を示す便宜上、第一ケース11及びキャップ23以外のリフィル2の構成要素を省略した平断面を示している。
【0045】
先ず図12に示す遮光位置(Q)では、つまみ部16は第二ケース14のつまみ保持部142のつまみ保持穴144における他端側に位置付けられるとともに、第二つまみ部162の遮光側突起166はつまみ保持部142の遮光位置決め部146に係り合った状態となることによりスライダ15自体が他端側に位置決めされた状態となっている。そして同図に示す状態から第二つまみ部162の第二つまみ165を一端側に押圧すると、第二つまみ165は若干内方、すなわちリフィル2へ向けて弾性変形しながらスライダ15が一端側へ移動する。そのため当該弾性変形により内方へ動作した遮光側突起166は遮光位置決め部146との係り合いが解除される。しかる後につまみ部16がつまみ保持穴144の一端側へ到着するときには、第一つまみ部161の露出側突起164は表面にアールが施されているため、経過的に外方へ弾性変形しながら露出位置決め部145を円滑に乗り越え、当該露出位置決め部145と係り合うことによりスライダ15自体が一端側へ位置決めされる。これら一連の動作によるスライダ15の移動により、スライダ15の係合穴17に収容された係合突起45、55が動作することによりキャップ23が動作する。また他方、図13に示す露出位置(P)から図12に示す遮光位置(Q)へすべくスライダ15を動作させる場合の動作終端では、上述した遮光側突起166の他端側が傾斜面を設けたテーパ形状に形成されているため、遮光位置決め部146を円滑に乗り越え、確実に係り合う。
【0046】
ここで図14に示すように、万が一つまみ部16が他端側で無い位置で転写具本体1がリフィル2を収容する場合、同図のように、キャップ23の係合突起は係合穴17に収容され得ずにリフィル2の乗り上げ板19に乗り上げた状態となる。この場合には、つまみ部16を他端側へ動作することにより係合突起45、55上を乗り上げ板19が摺動することで、改めて係合突起45、55が係合穴17に収容される図12の状態となり、正確なキャップ23の動作が担保される。
【0047】
また本実施形態では、図15〜図17に示すように、スライダ15の動作により、キャップ23はリフィル本体20に対する向き、すなわち相対角度を維持しながらスライド動作を行ない得るものとなっている。これはキャップ23がスライダ15と係り合う係合突起45、55を設けた位置と、キャップ23がリフィル本体20と係り合う摺動突起43、53を設けた位置とが正面視異なる位置に設けていることと、スリット状の係合穴17内を直線状に突出した係合突起がスライダ15の動作に伴い回転動作を抑止されながら相対移動することによる。
【0048】
以下、同図においてスライダ15の動作に伴って起こるキャップ23の正面視の動作について説明する。図15に示された露出位置(P)にあるキャップ23を遮光位置(Q)へとすべくスライダ15を他端側へ動作させると、正面側レール204及び背面側レール205の形状に沿って摺動突起43、53が移動するため、動作開始後しばらくは第一キャップ4及び第二キャップ5が平行に動作し、しかる後にこれらが相寄る方向に動作する。このとき、係合突起45、55同士は互いに係合穴17にそってスライド方向と直交する方向に動作する。そして図16では、キャップ23を遮光位置(Q)とする手前でスライダ15を手放したときを示している。つまり同図に示した位置では、正面側の摺動突起43F、53Fは正面側レール204において狭いカーブ状に形成された変形助長部208にさしかかったとき、この変形助長部208によって正面側の摺動突起43F、53Fの向きが変えられる方向の力が働く。これにより摺動突起43F、53Fを支持している弾性変形部44、54が一時的に弾性変形をすることとなる。つまりこの弾性変形部44、54が弾性変形しているときにスライダ15を手放すと、この弾性変形部44、54の弾性反発力により第一キャップ4及び第二キャップ5はともに露出位置(P)側へ付勢され、使用者にとって遮光位置(Q)となり得ていないことが明確に視認し得る同図に示す状態となる。そして同図に示す状態を視認した使用者は次にはしっかりとキャップ23を遮光位置(Q)へとするように促され、図17に示す遮光位置(Q)へと動作させるようになる。そして図17では摺動突起43、53は正面側レール204、背面側レール205の他端縁に設けられたロック部209に挟まれることにより、キャップ23は遮光位置(Q)で確実に位置決めされる。
【0049】
つまり本実施形態では、このキャップ23の動作途中において一時的に露出位置(P)へ向けて弾性付勢する弾性付勢部44、54とこの弾性変形を助長する変形助長部208とにより、本発明に係る遮光動作惹起部Yを設けていることになっている。
【0050】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る転写具はリフィル2に遮光接続部Xを設けることにより遮光性容器たるリフィル2内で消色前の発色状態に安定して維持された転写物である粘着剤31が転写されることとなるので、フォトクロミック化合物自体の発色により粘着剤31を転写した位置の確認が容易であり且つ転写時における粘着剤31の転写位置がより容易に視認できるとともに、可視光又は自然条件下の光のもとで消色することにより粘着剤31は消色状態となるので転写した跡を目立たなくし得るものとなっている。
【0051】
また、リフィル2の外壁に配置された部品同士のみの構成により遮光がなされ、しかも部品同士の相対動作を有効に担保できる構成として本実施形態では、この遮光接続部Xを、リフィル2の外壁の厚み方向に重なる重なり面42、52、206、207、214、216を有する重層接続部としている。
【0052】
加えて、斯かる重層接続部を、転写物たる粘着剤31、詳細には転写テープ3をともに構成する基材32を介して粘着剤31を巻回保持する巻回軸部21と、巻回軸部21を保持する容器本体との間に設けたものとすることで、リフィル2の遮光性と動作性を好適に両立させている。
【0053】
また、上記した重層接続部を、粘着剤31を転写対象物に転写するための転写ヘッド22を露出した露出位置(P)と、転写ヘッド22を遮光した状態で被覆する遮光位置(Q)との間で動作可能に設けられたキャップ23にも設けるようにすることで、開閉することにより最も光が入り易い当該箇所を確実に遮光している。
【0054】
そしてキャップ23に設けた重層接続部を有効に機能させるために本実施形態では、このキャップ23を遮光位置(Q)でロックするロック部209を設けている。
【0055】
特に本実施形態では、使用者が転写具の非使用時に確実にキャップ23を遮光位置(Q)とするよう促すための構成として、ロック部209が作動する遮光位置(Q)までキャップ23を動作させることを促すための遮光動作惹起部Yを設けているので、使用者が誤ってキャップ23を遮光位置(Q)と成り得ていない状態で転写具を放置してしまうという不具合を有効に回避している。
【0056】
そして上述した遮光動作惹起部Yの具体的な構成として本実施形態では、この遮光動作惹起部Yを、キャップ23を遮光位置(Q)の近傍で露出位置(P)へ向けて弾性付勢する弾性付勢部44、54を設けた構成とすることで、使用者がキャップ23を遮光位置(Q)にし損ねた場合にはキャップ23が露出位置(P)へ向けて付勢されることで遮光位置(Q)に成り得ない状態であることが使用者にとって明確に視認でき、改めて遮光位置(Q)とする操作を使用者に有効に促し得るものとなっている。
【0057】
<変形例>
以下に本実施形態の変形例を示す。当該変形例において、上記実施形態と同じ構成要素に該当するものには同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0058】
本変形例に係る転写具は、図18及び図19に示すように、上記実施形態と全く同じリフィル2を有したものであるが、転写具本体1Aが、対象物への押圧動作に応じてキャップ23を露出位置(P)へとし得る態様を示したものである。
【0059】
この転写具本体1は、リフィル2を主に収容する第一ケース11Aと、この第一ケース11Aにスライド可能に設けられた例えば概略四角筒状を成すスライダ15Aとを有している。このスライダ15Aは、第一ケース11Aにより常に他端側へ弾性付勢されるとともに、上記実施形態と同じ形状をなす係合穴17Aを有したものである。なおスライダ15Aが弾性付勢されながら支持される具体的構成は既存の構成であるので説明は省略する。
【0060】
そして係る転写具を紙等の対象物へ向けて押圧すると、スライダ15Aが第一ケース11Aによる弾性付勢に抗して一端側へ移動する。この移動に伴い、係合穴17Aの位置も一端側へ移動する。この係合穴17Aの移動により、キャップ23側の係合突起45、55並びに摺動突起43、53が一端側へと移動し、図19に示す露出位置(P)において転写ヘッド22はスライダ15から正面視若干はみ出した位置となり、円滑な転写が担保される。
【0061】
このような変形例であってもキャップ23を上記実施形態同様にスムースに動作させることにより、露出位置(P)における円滑な転写作業と遮光位置(Q)による確実な遮光とが担保される。
【0062】
<他の変形例>
上記実施形態並びに変形例では、本発明に係る遮光性容器を交換部品であるリフィル2とした態様をそれぞれ開示したが、遮光性容器はリフィル2に限られない。すなわち当該変形例の如く、使用者に直接把持され得る転写具本体1Bを遮光性容器としても良い。
【0063】
本変形に係る転写具は、図20〜図23に示すように、いわゆるノック動作によってキャップ23を互いに露出位置(P)、遮光位置(Q)への開閉し得るタイプのものである。この転写具は、図20に示すように、遮光性容器である転写具本体1Bと、この転写具本体1Bに収容されたリフィル2Bとを有している。転写具本体1Bは、主にリフィル2Bを支持する第一ケース11Bと、この第一ケース11Bに設けられ、ノック動作によるリフィル2Bの突没動作とキャップ10Bの開閉動作を司るノック機構15Bと、第一ケース11Bとともにリフィル2を収容し得る第二ケース14Bと、第一ケース11Bに開閉動作可能に設けられたキャップ10Bとを有している。
【0064】
しかして本変形例に係る遮光性容器たる転写具本体1Bでは、キャップ10Bと第一ケース11Bとに第一ケース11Bの外壁の厚み方向にそれぞれ重なり合う重なり面10B1、11B1、キャップ10Bと第二ケース14Bとにそれぞれ第二ケース14Bの外壁の厚み方向に重なり合う重なり面10B1、14B1を設けることにより、本発明に係る遮光接続部X且つ重層接続部を構成している。
【0065】
またリフィル2は例えば、おもに遮光性を有する樹脂によって外壁が構成されたリフィル本体20Bを主体としたもので、転写テープ3を巻回保持している図示しない巻回軸部を内蔵しつつ、転写テープ3を支持した転写ヘッド22のみを露出した形状としている。
【0066】
具体的には、図21に示すように、キャップ10Bの端部に重なり面10B1を設けておくことにより、図22に示す遮光位置(Q)では確実に転写具本体1内部に光が差し込まないようにするとともに、図23に示す露出位置(P)では図示しない転写ヘッド22による転写動作を妨げないように位置決めされるようにしている。
【0067】
このようなものであっても、上記実施形態並びに変形例と同様の効果を奏する。すなわち、不使用時に転写物たる粘着剤31に可視光又は自然条件下の光が当たってしまうことを有効に回避し得る転写具を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態並びに各変形例ではいずれもリフィル交換式の転写具に本発明を適用した態様を開示したが、勿論、転写具本体を遮光性容器とし、転写物や機構部品が交換不能に構成された態様の転写具に本発明を適用したものであってもよい。また粘着剤の具体的な組成やキャップを動作させる機構といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0070】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は粘着剤等の転写物を転写対象面に転写する際に用いる転写具として利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
2…遮光性容器(リフィル)
20…容器本体(リフィル本体)
209…ロック部
21…巻回軸部
22…転写ヘッド
23、10B…キャップ
31…転写物
42、52、206、207、214、216…重なり面
44…弾性付勢部
1B…遮光性容器(転写具本体)
10B1、11B1、14B1…重なり面
X…遮光接続部、重層接続部(遮光接続部)
Y…遮光動作惹起部
P…露出位置
Q…遮光位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤等の転写物を転写対象面に転写する際に用いる転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、糊を紙等に塗布するための製品の一つとして、糊を塗布した後、当該糊の色が徐々に薄くなっていく特性を有するスティック糊が広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。このスティック糊においては、アルカリ性を呈する固形糊にpH指示薬を混合しておくことにより有色状態で密閉された筐体に収容されている。そして有色状態にある固形糊は塗布された後、空気に触れることによって前記pH指示薬の色が消えていく、すなわち消色していくものとなっている。このような糊は、塗布直後には塗布した箇所が使用者にとって明確に視認され得ることで塗り残しが生じた箇所が容易に判別できるという利点に加え、上記の通りその後無色となるために使用した箇所が目立たないという利点をも有し、これらの利点が使用者に広く用いられる大きな要因となっている。
【0003】
そして現在、粘着剤等の転写物を紙等に転写する転写具においても、粘着剤を転写した箇所がより明確に視認し得るように、より強く発色し、且つ転写後にはより目立たなくなるよう消色し得るものが求められている。
【0004】
ところで、光が照射されると変色するものの一例として、特定の波長の光が照射されることにより発色し、また別の特定の波長の光が照射されると無色となるという特性を有するフォトクロミック化合物が知られている。このフォトクロミック化合物の多くは、特定の波長の紫外光を照射することにより明確に発色し得るとともに、特定の波長の可視光を照射することにより無色となるという特性を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながらこのフォトクロミック化合物については、自然条件の光に照射されることで無色となる特性を有するものは知られているものの(例えば、特許文献2参照)、転写具のケース内にそのまま用いた場合では、遮光した状態を安定して維持することができないことから有色の状態を保持することができず、徐々に消色してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4499443号公報
【特許文献2】特許第4578623号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「コクヨ2011総合カタログ」、ステーショナリー編、コクヨ株式会社、2008年12月発行、P.519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような点を踏まえたものであり、光が照射されても変色せず、長期間安定して維持する転写具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち本発明に係る転写具は、光が照射されると変色する転写物と、前記転写物を遮光した状態で収納する遮光性容器とを具備し、この遮光性容器が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部を有していることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、遮光性容器内で変色する前の状態に安定して維持された転写物が転写される転写具を提供することができる。
【0012】
または、光を照射するとより目立たないように消色するとともに当該消色を安定して起こり得るようにするためには、転写物を、特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し可視光又は自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより可視光又は自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となるものとし、遮光性容器を、発色状態にある前記転写物を可視光又は自然条件下の光から遮光された状態で収納し、前記転写物の前記発色状態を維持し得るものとすることが望ましい。
【0013】
ここで、「自然条件下の光」とは、太陽光や室内灯に照射された条件下での光を意味する。具体的には可視光を主体とし、太陽光に含まれる5〜6%程度の紫外光や蛍光灯に含まれる微量の紫外光が含まれる光のことである。すなわち、太陽光と同じか、それ以下の割合で紫外光を含んでいる光のことを指す。
【0014】
加えて、本発明における「消色状態」とは、完全に無色となる態様のみならず、無色に近づくように退色している態様をも含むとともに、当該退色した態様のまま維持されている状態をも含む概念である。
【0015】
また、発色状態を安定して維持できるものを得るためには、フォトクロミック化合物が、例えばジアリールエテン系のフォトクロミック化合物であることが望ましいが、太陽光が照射される条件や室内灯が照射されているような自然条件下で安定して消色状態となるものであればよい。また勿論、上記のジアリールエテン系のフォトクロミック化合物のみならず、他の既存のもの、又は今後発見されるものであっても、「特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となる」という特性が満たされるものであればよい。
【0016】
このようなものであれば、遮光性容器内で発色状態に安定して維持された転写物が転写されることとなるので、フォトクロミック化合物自体の発色により転写物を転写した位置の確認が容易であり且つ転写時における転写物の転写位置がより容易に視認できるとともに、自然条件下の光のもとで転写物は消色状態となるので転写した跡を目立たなくし得る転写具を提供することができる。
【0017】
また、遮光接続部の構成は、例えば密閉構造としたり、格別の部材により被覆したりするなど種々の構成が考え得るが、外壁に配置された部品同士のみで構成でき、しかも部品同士の相対動作を有効に担保できる構成としては、この遮光接続部を、遮光性容器の外壁の厚み方向に重なる重なり面を有する重層接続部とする態様を挙げることができる。
【0018】
加えて、斯かる重層接続部を、転写物を巻回保持する巻回軸部と、巻回軸部を保持する容器本体との間に設けたものとすれば、遮光性容器の遮光性と動作性を両立することができる。
【0019】
また、上記した重層接続部を、転写物を転写対象物に転写するための転写ヘッドを露出した露出位置と、転写ヘッドを遮光した状態で被覆する遮光位置との間で動作可能に設けられたキャップに設けるようにすれば、開閉することにより最も光が入り易い当該箇所を確実に遮光することができる。
【0020】
そしてキャップに設けた重層接続部を有効に機能させるためには、このキャップを前記遮光位置でロックするロック部を設けておくことが望ましい。
【0021】
特に、使用者が転写具の非使用時に確実にキャップを遮光位置とするよう促すための構成として、ロック部が作動する遮光位置までキャップを動作させることを促すための遮光動作惹起部を設けておけば、使用者が誤ってキャップを露出位置とした状態で転写具を放置してしまうという不具合を有効に回避することができる。
【0022】
そして上述した遮光動作惹起部の具体的な構成としては、この遮光動作惹起部を、キャップを遮光位置の近傍で露出位置へ向けて弾性付勢する弾性付勢部を有する構成とすれば、使用者がキャップを遮光位置にし損ねた場合にはキャップが露出位置へ向けて付勢されることで遮光位置に成り得ない状態であることが使用者にとって明確に視認でき、改めて遮光位置とする操作を使用者に有効に促し得るものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、遮光性容器内で変色する前の状態に安定して維持された転写物が転写される転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観図。
【図2】同正面図。
【図3】同他の正面図。
【図4】同実施形態に係る転写具本体の構成説明図。
【図5】同スライダの正面図。
【図6】同リフィルの正面図。
【図7】同背面図。
【図8】図6に係る構成説明図。
【図9】図7に係る構成説明図。
【図10】同リフィルを示す一部を省略した平断面図
【図11】同キャップの正断面図。
【図12】同転写具本体及びキャップを示す平断面図図。
【図13】図12に係る動作説明図。
【図14】同作用説明図。
【図15】同実施形態に係る動作説明図。
【図16】同上。
【図17】同上。
【図18】同実施形態の変形例に係る構成説明図。
【図19】図18に係る動作説明図。
【図20】同実施形態の他の変形例に係る構成説明図。
【図21】同要部に係る外観図。
【図22】同要部を示す正断面図。
【図23】図22に係る動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態に係る転写具は、図1に示すように、例えば転写物としてテープ状の基材32に塗工されたアクリル系粘着剤31を主体とする粘着剤31を採用し、所要の長さずつ送り出した粘着剤31を紙片等の対象物の表面に転写ヘッド22を押し付けた状態で表面に沿ってスライドさせることにより転写させて使用するものである。なお転写テープ3は、例えば樹脂製の長尺かつ薄肉な基材32の一方の面に予め転写物たる粘着剤31を塗布したものである。
【0027】
本実施形態の転写具1は、転写テープ3と、この転写テープ3を収容した遮光性容器たるリフィル2と、このリフィル2を保持し、使用者によって直接扱われる転写具本体1とを主たる構成部品としている。
【0028】
この本実施形態にて転写物として適用されている粘着剤31は、特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となるジアリールエテン系のフォトクロミック化合物を含むことにより、紫外光が照射されると発色状態となり自然条件下の光が照射されると消色状態となる特性を有する。
【0029】
またここで、「自然条件下の光」とは、太陽光や室内灯に照射された条件下での光を意味する。具体的には可視光を主体とし、太陽光に含まれる5〜6%程度の紫外光や蛍光灯に含まれる微量の紫外光が含まれる光のことである。すなわち、太陽光と同じか、それ以下の割合で紫外光を含んでいる光のことを指す。
【0030】
これより、転写テープ3の構成について説明する。粘着剤31は、主に添加対象物たるアクリル系粘着剤31を主体とし、このアクリル系粘着剤31の重量に対し、フォトクロミック化合物を0.005〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%添加されたものである。そしてこのフォトクロミック化合物は、本実施形態では、例えば波長365nmの紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となるジアリールエテン系のフォトクロミック化合物である。しかし勿論、前記の紫外光は、当該フォトクロミック化合物や本実施形態に用い得る他のフォトクロミック化合物が発色し得る波長の光であれば良く、斯かる紫外光の波長は前記の365nmに限定されることはない。本実施形態では具体的には当該ジアリールエテン系のフォトクロミック化合物の一例として、1,2−ビス(2−メチルベンゾ(b)チオフェン−3−イル)ヘキサフルオロシクロペンテン(1,2-Bis(2-methylbenzo(b)thiophen-3-yl)hexafluorocyclopentene)を使用している。しかし勿論、「紫外光が照射されると発色し自然条件下の光が照射されると無色となる」という特性を満たすジアリールエテン系のフォトクロミック化合物であれば、既存のものであっても、また勿論今後発見されるものであっても有効に適用し得る。また勿論、当該フォトクロミック化合物はジアリールエテン系のものの他、スピロピラン系のフォトクロミック化合物であっても良く、これらの化合物が混合されたものであっても良い。
【0031】
ここで、本実施形態に係る転写具は、光が照射されると消色する転写物たる粘着剤31と、粘着剤31を遮光した状態で収納する遮光性容器たるリフィル2とを具備し、このリフィル2が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部Xを有していることを特徴とする。具体的には、特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し可視光又は自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより可視光又は自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となる転写物たる粘着剤31と、発色状態にある前記転写物を可視光又は自然条件下の光から遮光された状態で収納し、粘着剤31の前記発色状態を維持する遮光性容器たるリフィル2とを具備し、このリフィル2が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部Xを有していることを特徴とするものである。
【0032】
続いて以下、この転写具の具体的な構成について、すなわち転写具本体1及びリフィル2の具体的な構成について説明する。
【0033】
転写具本体1は、図1〜図5に示すように、主にリフィル2を被覆している第一ケース11と、第一ケース11に回転可能に支持された繰出しギア部12及び巻取りギア部13と、第一ケース11にヒンジを介して開閉可能に取り付けられた第二ケース14と、リフィル2に係り合うとともに第二ケース14にスライド可能に支持されるスライダ15とを有している。
【0034】
第一ケース11は、例えば樹脂製の一体成型品であり、繰出しギア部12及び巻取りギア部13を取り付けている側壁部分の端部からU字状に周壁を起立させた形状をなし、U字状の周壁の中央側で第二ケース14を開閉可能に接続すると共にその接続箇所に対向する開口部分からリフィル2の一部を露出させてなる。
【0035】
繰出しギア部12は、特に図4に示すように、第一ケース11の正面視略中央に回転可能に取り付けられており、転写物である粘着剤31が転写される際の回転を巻取りギア部13に伝達する繰出しギア12aと、繰出しギア12aの中央部分に取り付けられリフィル2側に係り得る繰出しコア12bと、これら繰出しギア12a及び繰出しコア12bとの相対的な回転を許容する滑り機構12cとを有している。
【0036】
巻取りギア部13は、特に図4に示すように、繰出しギア12aに噛合する巻取りギア13aとこの巻取りギア13aから一体的に突出しリフィル2側に係り得る巻取りコア13bとを有している。
【0037】
第二ケース14は、特に図4に示すように、正面視中央に配置された円形状の窓穴141と、スライダ15側の一部を移動可能に収容する矩形状の開口であるつまみ保持部142と、スライダ15をスライド移動可能に保持するスライダ保持部143とを有している。窓穴141は、転写具の使用時にリフィル2の内部を視認するための開口である。つまみ保持部142は、開口の近傍に設けられたつまみ保持穴144と、スライダ15を一端側及び他端側で保持するための露出位置決め部145及び遮光位置決め部146とを有している。
【0038】
スライダ15は、特に図5に示すように、第二ケース14にスライド可能に取り付けられた例えば薄板状の樹脂による一体成型品であり、使用者に操作させるためのつまみ部16と、リフィル2に係り合うための係合穴17と、上述した窓穴141に連通したときにリフィル2の内部を視認させるための透過穴18と、係合穴17から他端側に延び、係合穴17がリフィル2側に係り得なかったときにリフィル2側に当接し得る乗り上げ板19とを有している。つまみ部16は、スライダ15を一端側から他端側へ移動させる際に主に機能する第一つまみ部161と、スライダ15を他端側から一端側へ移動させる際に機能する第二つまみ部162とを有している。第一つまみ部161は、他端側へスライダ15を移動させる際に使用者の指等に当接する第一つまみ163と、第一つまみ163が操作された際に第二ケース14側の露出位置決め部145との係り合いが解除される露出側突起164とを有している。第二つまみ部162は、一端側へスライダ15を移動させる際に使用者の指等に当接する第二つまみ165と、第二つまみ165が操作された際に第二ケース14側の遮光位置決め部146との係り合いが解除される遮光側突起166とを有している。
【0039】
リフィル2は、本実施形態に於いては本発明の遮光性容器に該当するものである。当該リフィル2は、図6〜図11に示すように、転写テープ3を収容しているリフィル本体20と、このリフィル本体20内で転写テープ3を直接巻回保持している巻回軸部21と、使用時に転写テープ3を紙等の対象物に押し付けるための転写ヘッド22と、リフィル本体20の他端側に移動可能に取り付けられ転写ヘッド22を被覆しているキャップ23とを有している。
【0040】
リフィル本体20は、同図に示すように、主にリフィル2の外壁をなすものであり、未使用の転写テープ3の残量を確認するための窓部201と、巻回軸部21の繰出しリール211を支持している繰出しリール支持部202と、同じく巻回軸部21の巻取りリール212を支持している巻取りリール支持部203と、キャップ23の動作範囲並びに動作軌跡を決定するために溝状に設けられた正面側レール204及び背面側レール205とを有している。窓部201は、第二ケース14の窓穴141及びスライダ15の透過穴18に連通したときにのみリフィル2の内部の一部が視認し得るように形成されている。繰出しリール支持部202は、繰出しリール211に対して凹凸係合しながら回転可能に保持しているものであり、正面視並びに背面視において繰出しリール211に重層する重なり面206を有している。巻取りリール支持部203は、巻取りリール212に対して凹凸係合しながら回転可能に保持しているものであり、正面視並びに背面視において巻取りリール212に重層する重なり面207を有している。正面側レール204は、リフィル本体20の他端側に溝状に設けられたものであり、他端側の先端部にはキャップ23の一部と係り合って当該キャップ23を他端側に位置付けた遮光位置(Q)で位置決めし得るロック部209を有するとともに、このロック部209の若干一端よりにはキャップ23の一部の弾性変形を促すための変形助長部208を有している。背面側レール205は、上述した正面側レール204と略同一の形状をなしており、キャップ23の一部を位置決めし得るロック部209を有しているが、変形助長部208は設けられていない。
【0041】
巻回軸部21は、特に図10に示すように、未使用の転写テープ3を巻回保持しておくための繰出しリール211と、いわゆる使用後の転写テープ3つまり粘着剤31を転写した後の基材32を巻回するための巻取りリール212とを有している。繰出しリール211は主に転写テープ3を保持する繰出しリール本体213と、リフィル本体20に対して正面視または背面視で重層し得る重なり面214とを有している。巻取りリール212は主に基材32を巻回する巻取りリール本体215と、リフィル本体20に対して正面視又は背面視で重層し得る重なり面216とを有している。ここで本実施形態では、繰出しリール211の重なり面214及び巻取りリール212の重なり面216が、リフィル本体20における繰出しリール支持部202の重なり面206及び巻取りリール支持部203の重なり面207に対し、リフィル2の外壁の厚み方向に互いに重層することにより、本発明に係る重層接続部及び遮光接続部Xを構成している。
【0042】
転写ヘッド22は,リフィル本体20からはみ出す位置まで転写テープ3を導くとともに転写時には転写テープ3とともに紙等の対象物に押し付けられるものであり、対象物に押し付けられる際の力が転写テープ3に均等に伝わるよう弾性変形可能に構成された転写ローラ22aと、この転写ローラ22aを回転可能に支持するローラ軸22bとを有している。
【0043】
キャップ23は、特に図11に示すように、リフィル本体20とともにリフィル2の外壁をなすとともに不使用時の転写ヘッド22を被覆しておくためのものである。このキャップ23は具体的に説明すると、転写物を転写対象物に転写するための転写ヘッド22を露出した露出位置(P)と、転写ヘッド22を遮光した状態で被覆する遮光位置(Q)との間で動作可能に設けられたもので、いわゆる半割構造をなす第一キャップ4及び第二キャップ5とを有している。第一キャップ4は、第二キャップ5との接合部分に設けられたリブ41と、リブ41の表面で直接第二キャップ5に重なり合う重なり面42と、内側に突出しリフィル本体20の正面側レール204及び背面側レール205に沿って摺動し得る摺動突起43と、正面側においてこの摺動突起43を支持し弾性変形可能な突起形状に成形された弾性付勢部44と、正面側に概略線状に突出することによりスライダ15に設けられた係合穴17と係合し得る係合突起45とを有している。そして摺動突起43は、正面側レール204に収容され得る正面側の摺動突起43Fと、背面側レール205に収容され得る背面側の摺動突起43Rとを有している。第二キャップ5は、第一キャップ4と略等しい外形をなすものであり、第一キャップ4のリブ41を収容し得るリブ収容部51と、リブ収容部51の表面で直接第一キャップ4に係り合う重なり面と52、内側に突出しリフィル本体20の正面側レール204及び背面側レール205に沿って摺動し得る摺動突起53と、正面側においてこの摺動突起53を支持し弾性変形可能な突起形状に成形された弾性付勢部54と、正面側に概略線状に突出することによりスライダ15の係合穴17と係合し得る係合突起55とを有している。摺動突起53は、正面側レール204に収容され得る正面側の摺動突起53Fと、背面側レール205に収容され得る背面側の摺動突起53Rとを有している。そして本実施形態では、このキャップ23を遮光位置(Q)とした際に第一キャップ4の重なり面と第二キャップ5の重なり面とを重層させることにより、本発明に係る遮光接続部X且つ重層接続部を構成している。
【0044】
しかして本実施形態では、図12〜図17に示すように、スライダ15に設けられたつまみ部16の操作により、キャップ23が図12及び図17に示す遮光位置(Q)と、図13及び図15に示す露出位置(P)との間で移動可能に構成されている。図12〜図14は、つまみ部16の動作によるキャップ23の挙動を示す便宜上、第一ケース11及びキャップ23以外のリフィル2の構成要素を省略した平断面を示している。
【0045】
先ず図12に示す遮光位置(Q)では、つまみ部16は第二ケース14のつまみ保持部142のつまみ保持穴144における他端側に位置付けられるとともに、第二つまみ部162の遮光側突起166はつまみ保持部142の遮光位置決め部146に係り合った状態となることによりスライダ15自体が他端側に位置決めされた状態となっている。そして同図に示す状態から第二つまみ部162の第二つまみ165を一端側に押圧すると、第二つまみ165は若干内方、すなわちリフィル2へ向けて弾性変形しながらスライダ15が一端側へ移動する。そのため当該弾性変形により内方へ動作した遮光側突起166は遮光位置決め部146との係り合いが解除される。しかる後につまみ部16がつまみ保持穴144の一端側へ到着するときには、第一つまみ部161の露出側突起164は表面にアールが施されているため、経過的に外方へ弾性変形しながら露出位置決め部145を円滑に乗り越え、当該露出位置決め部145と係り合うことによりスライダ15自体が一端側へ位置決めされる。これら一連の動作によるスライダ15の移動により、スライダ15の係合穴17に収容された係合突起45、55が動作することによりキャップ23が動作する。また他方、図13に示す露出位置(P)から図12に示す遮光位置(Q)へすべくスライダ15を動作させる場合の動作終端では、上述した遮光側突起166の他端側が傾斜面を設けたテーパ形状に形成されているため、遮光位置決め部146を円滑に乗り越え、確実に係り合う。
【0046】
ここで図14に示すように、万が一つまみ部16が他端側で無い位置で転写具本体1がリフィル2を収容する場合、同図のように、キャップ23の係合突起は係合穴17に収容され得ずにリフィル2の乗り上げ板19に乗り上げた状態となる。この場合には、つまみ部16を他端側へ動作することにより係合突起45、55上を乗り上げ板19が摺動することで、改めて係合突起45、55が係合穴17に収容される図12の状態となり、正確なキャップ23の動作が担保される。
【0047】
また本実施形態では、図15〜図17に示すように、スライダ15の動作により、キャップ23はリフィル本体20に対する向き、すなわち相対角度を維持しながらスライド動作を行ない得るものとなっている。これはキャップ23がスライダ15と係り合う係合突起45、55を設けた位置と、キャップ23がリフィル本体20と係り合う摺動突起43、53を設けた位置とが正面視異なる位置に設けていることと、スリット状の係合穴17内を直線状に突出した係合突起がスライダ15の動作に伴い回転動作を抑止されながら相対移動することによる。
【0048】
以下、同図においてスライダ15の動作に伴って起こるキャップ23の正面視の動作について説明する。図15に示された露出位置(P)にあるキャップ23を遮光位置(Q)へとすべくスライダ15を他端側へ動作させると、正面側レール204及び背面側レール205の形状に沿って摺動突起43、53が移動するため、動作開始後しばらくは第一キャップ4及び第二キャップ5が平行に動作し、しかる後にこれらが相寄る方向に動作する。このとき、係合突起45、55同士は互いに係合穴17にそってスライド方向と直交する方向に動作する。そして図16では、キャップ23を遮光位置(Q)とする手前でスライダ15を手放したときを示している。つまり同図に示した位置では、正面側の摺動突起43F、53Fは正面側レール204において狭いカーブ状に形成された変形助長部208にさしかかったとき、この変形助長部208によって正面側の摺動突起43F、53Fの向きが変えられる方向の力が働く。これにより摺動突起43F、53Fを支持している弾性変形部44、54が一時的に弾性変形をすることとなる。つまりこの弾性変形部44、54が弾性変形しているときにスライダ15を手放すと、この弾性変形部44、54の弾性反発力により第一キャップ4及び第二キャップ5はともに露出位置(P)側へ付勢され、使用者にとって遮光位置(Q)となり得ていないことが明確に視認し得る同図に示す状態となる。そして同図に示す状態を視認した使用者は次にはしっかりとキャップ23を遮光位置(Q)へとするように促され、図17に示す遮光位置(Q)へと動作させるようになる。そして図17では摺動突起43、53は正面側レール204、背面側レール205の他端縁に設けられたロック部209に挟まれることにより、キャップ23は遮光位置(Q)で確実に位置決めされる。
【0049】
つまり本実施形態では、このキャップ23の動作途中において一時的に露出位置(P)へ向けて弾性付勢する弾性付勢部44、54とこの弾性変形を助長する変形助長部208とにより、本発明に係る遮光動作惹起部Yを設けていることになっている。
【0050】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る転写具はリフィル2に遮光接続部Xを設けることにより遮光性容器たるリフィル2内で消色前の発色状態に安定して維持された転写物である粘着剤31が転写されることとなるので、フォトクロミック化合物自体の発色により粘着剤31を転写した位置の確認が容易であり且つ転写時における粘着剤31の転写位置がより容易に視認できるとともに、可視光又は自然条件下の光のもとで消色することにより粘着剤31は消色状態となるので転写した跡を目立たなくし得るものとなっている。
【0051】
また、リフィル2の外壁に配置された部品同士のみの構成により遮光がなされ、しかも部品同士の相対動作を有効に担保できる構成として本実施形態では、この遮光接続部Xを、リフィル2の外壁の厚み方向に重なる重なり面42、52、206、207、214、216を有する重層接続部としている。
【0052】
加えて、斯かる重層接続部を、転写物たる粘着剤31、詳細には転写テープ3をともに構成する基材32を介して粘着剤31を巻回保持する巻回軸部21と、巻回軸部21を保持する容器本体との間に設けたものとすることで、リフィル2の遮光性と動作性を好適に両立させている。
【0053】
また、上記した重層接続部を、粘着剤31を転写対象物に転写するための転写ヘッド22を露出した露出位置(P)と、転写ヘッド22を遮光した状態で被覆する遮光位置(Q)との間で動作可能に設けられたキャップ23にも設けるようにすることで、開閉することにより最も光が入り易い当該箇所を確実に遮光している。
【0054】
そしてキャップ23に設けた重層接続部を有効に機能させるために本実施形態では、このキャップ23を遮光位置(Q)でロックするロック部209を設けている。
【0055】
特に本実施形態では、使用者が転写具の非使用時に確実にキャップ23を遮光位置(Q)とするよう促すための構成として、ロック部209が作動する遮光位置(Q)までキャップ23を動作させることを促すための遮光動作惹起部Yを設けているので、使用者が誤ってキャップ23を遮光位置(Q)と成り得ていない状態で転写具を放置してしまうという不具合を有効に回避している。
【0056】
そして上述した遮光動作惹起部Yの具体的な構成として本実施形態では、この遮光動作惹起部Yを、キャップ23を遮光位置(Q)の近傍で露出位置(P)へ向けて弾性付勢する弾性付勢部44、54を設けた構成とすることで、使用者がキャップ23を遮光位置(Q)にし損ねた場合にはキャップ23が露出位置(P)へ向けて付勢されることで遮光位置(Q)に成り得ない状態であることが使用者にとって明確に視認でき、改めて遮光位置(Q)とする操作を使用者に有効に促し得るものとなっている。
【0057】
<変形例>
以下に本実施形態の変形例を示す。当該変形例において、上記実施形態と同じ構成要素に該当するものには同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0058】
本変形例に係る転写具は、図18及び図19に示すように、上記実施形態と全く同じリフィル2を有したものであるが、転写具本体1Aが、対象物への押圧動作に応じてキャップ23を露出位置(P)へとし得る態様を示したものである。
【0059】
この転写具本体1は、リフィル2を主に収容する第一ケース11Aと、この第一ケース11Aにスライド可能に設けられた例えば概略四角筒状を成すスライダ15Aとを有している。このスライダ15Aは、第一ケース11Aにより常に他端側へ弾性付勢されるとともに、上記実施形態と同じ形状をなす係合穴17Aを有したものである。なおスライダ15Aが弾性付勢されながら支持される具体的構成は既存の構成であるので説明は省略する。
【0060】
そして係る転写具を紙等の対象物へ向けて押圧すると、スライダ15Aが第一ケース11Aによる弾性付勢に抗して一端側へ移動する。この移動に伴い、係合穴17Aの位置も一端側へ移動する。この係合穴17Aの移動により、キャップ23側の係合突起45、55並びに摺動突起43、53が一端側へと移動し、図19に示す露出位置(P)において転写ヘッド22はスライダ15から正面視若干はみ出した位置となり、円滑な転写が担保される。
【0061】
このような変形例であってもキャップ23を上記実施形態同様にスムースに動作させることにより、露出位置(P)における円滑な転写作業と遮光位置(Q)による確実な遮光とが担保される。
【0062】
<他の変形例>
上記実施形態並びに変形例では、本発明に係る遮光性容器を交換部品であるリフィル2とした態様をそれぞれ開示したが、遮光性容器はリフィル2に限られない。すなわち当該変形例の如く、使用者に直接把持され得る転写具本体1Bを遮光性容器としても良い。
【0063】
本変形に係る転写具は、図20〜図23に示すように、いわゆるノック動作によってキャップ23を互いに露出位置(P)、遮光位置(Q)への開閉し得るタイプのものである。この転写具は、図20に示すように、遮光性容器である転写具本体1Bと、この転写具本体1Bに収容されたリフィル2Bとを有している。転写具本体1Bは、主にリフィル2Bを支持する第一ケース11Bと、この第一ケース11Bに設けられ、ノック動作によるリフィル2Bの突没動作とキャップ10Bの開閉動作を司るノック機構15Bと、第一ケース11Bとともにリフィル2を収容し得る第二ケース14Bと、第一ケース11Bに開閉動作可能に設けられたキャップ10Bとを有している。
【0064】
しかして本変形例に係る遮光性容器たる転写具本体1Bでは、キャップ10Bと第一ケース11Bとに第一ケース11Bの外壁の厚み方向にそれぞれ重なり合う重なり面10B1、11B1、キャップ10Bと第二ケース14Bとにそれぞれ第二ケース14Bの外壁の厚み方向に重なり合う重なり面10B1、14B1を設けることにより、本発明に係る遮光接続部X且つ重層接続部を構成している。
【0065】
またリフィル2は例えば、おもに遮光性を有する樹脂によって外壁が構成されたリフィル本体20Bを主体としたもので、転写テープ3を巻回保持している図示しない巻回軸部を内蔵しつつ、転写テープ3を支持した転写ヘッド22のみを露出した形状としている。
【0066】
具体的には、図21に示すように、キャップ10Bの端部に重なり面10B1を設けておくことにより、図22に示す遮光位置(Q)では確実に転写具本体1内部に光が差し込まないようにするとともに、図23に示す露出位置(P)では図示しない転写ヘッド22による転写動作を妨げないように位置決めされるようにしている。
【0067】
このようなものであっても、上記実施形態並びに変形例と同様の効果を奏する。すなわち、不使用時に転写物たる粘着剤31に可視光又は自然条件下の光が当たってしまうことを有効に回避し得る転写具を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態並びに各変形例ではいずれもリフィル交換式の転写具に本発明を適用した態様を開示したが、勿論、転写具本体を遮光性容器とし、転写物や機構部品が交換不能に構成された態様の転写具に本発明を適用したものであってもよい。また粘着剤の具体的な組成やキャップを動作させる機構といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0070】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は粘着剤等の転写物を転写対象面に転写する際に用いる転写具として利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
2…遮光性容器(リフィル)
20…容器本体(リフィル本体)
209…ロック部
21…巻回軸部
22…転写ヘッド
23、10B…キャップ
31…転写物
42、52、206、207、214、216…重なり面
44…弾性付勢部
1B…遮光性容器(転写具本体)
10B1、11B1、14B1…重なり面
X…遮光接続部、重層接続部(遮光接続部)
Y…遮光動作惹起部
P…露出位置
Q…遮光位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が照射されると変色する転写物と、
前記転写物を遮光した状態で収納する遮光性容器とを具備し、
この遮光性容器が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部を有していることを特徴とする転写具。
【請求項2】
前記転写物が特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し可視光又は自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となるものであり、
前記遮光性容器が発色状態にある前記転写物を可視光又は自然条件下の光から遮光された状態で収納し、前記転写物の前記発色状態を維持し得るものである請求項1記載の転写具。
【請求項3】
遮光接続部が、前記遮光性容器の外壁の厚み方向に重なる重なり面を有する重層接続部である請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記重層接続部を、転写物を巻回保持する巻回軸部と、巻回軸部を保持する容器本体との間に設けている請求項3記載の転写具
【請求項5】
前記遮光接続部を、転写物を転写対象物に転写するための転写ヘッドを露出した露出位置と、転写ヘッドを遮光した状態で被覆する遮光位置との間で動作可能に設けられたキャップに設けている請求項1、2、3又は4記載の転写具。
【請求項6】
前記キャップを前記遮光位置でロックするロック部を設けている請求項5記載の転写具。
【請求項7】
前記ロック部が作動する前記遮光位置まで前記キャップを動作させることを促すための遮光動作惹起部を有している請求項6記載の転写具。
【請求項8】
前記遮光動作惹起部が、前記キャップを前記遮光位置の近傍で前記露出位置へ向けて弾性付勢する弾性付勢部を有している請求項7記載の転写具。
【請求項1】
光が照射されると変色する転写物と、
前記転写物を遮光した状態で収納する遮光性容器とを具備し、
この遮光性容器が、外壁に配置された部品同士の接合部を外方から遮光し得るように構成している遮光接続部を有していることを特徴とする転写具。
【請求項2】
前記転写物が特定の波長を有する紫外光が照射されると発色し可視光又は自然条件下の光が照射されると無色となるフォトクロミック化合物を含むことにより自然条件下の光が照射されると発色状態から消色状態となるものであり、
前記遮光性容器が発色状態にある前記転写物を可視光又は自然条件下の光から遮光された状態で収納し、前記転写物の前記発色状態を維持し得るものである請求項1記載の転写具。
【請求項3】
遮光接続部が、前記遮光性容器の外壁の厚み方向に重なる重なり面を有する重層接続部である請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記重層接続部を、転写物を巻回保持する巻回軸部と、巻回軸部を保持する容器本体との間に設けている請求項3記載の転写具
【請求項5】
前記遮光接続部を、転写物を転写対象物に転写するための転写ヘッドを露出した露出位置と、転写ヘッドを遮光した状態で被覆する遮光位置との間で動作可能に設けられたキャップに設けている請求項1、2、3又は4記載の転写具。
【請求項6】
前記キャップを前記遮光位置でロックするロック部を設けている請求項5記載の転写具。
【請求項7】
前記ロック部が作動する前記遮光位置まで前記キャップを動作させることを促すための遮光動作惹起部を有している請求項6記載の転写具。
【請求項8】
前記遮光動作惹起部が、前記キャップを前記遮光位置の近傍で前記露出位置へ向けて弾性付勢する弾性付勢部を有している請求項7記載の転写具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−95126(P2013−95126A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243152(P2011−243152)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
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