説明

転造ダイス

【課題】逃げ部における被転造部材とダイスの転造歯型との干渉を可及的に抑制して被転造部材の歯面に傷が生じることを防止できる極めて実用性に秀れた転造ダイスの提供。
【解決手段】被転造部材の外周面に転造歯型を当接させることで該外周面を塑性変形させ所望の歯形を転造する転造ダイスであって、前記転造歯型は食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cにより構成し、前記逃げ部Cには所定高さ位置における前記転造歯型の各歯部の歯厚Tが転造方向始端側から転造方向終端側に向かって漸減する歯厚漸減部を設け、この歯厚漸減部は、前記逃げ部Cにおける前記転造方向終端側の歯厚Tの漸減度合いが、前記転造方向始端側の歯厚Tの漸減度合いより大きな度合いとなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造ダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、転造ダイスに形成される転造歯型で略円筒形状の被転造部材(ワーク)を挟み込んで回転させながら圧力を加えることで、ウォームやねじの歯形(ねじ山)を塑性加工する転造平ダイス(食付き部、仕上げ部及び逃げ部が形成されている)、その他の転造ダイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
転造加工においては、転造ダイスの食付き部及び仕上げ部での加工時に被転造部材にかかった負荷を逃げ部で少しずつ開放することが一般的である。例えば逃げ部の形状を転造加工が進むほど(転造方向終端側ほど)前記転造歯型(刃先)が被転造部材から離間するように傾斜させ、即ち緩やかに逃がすことで前記負荷を少しずつ開放し、被転造部材が加工前の状態に戻ろうとする現象(スプリングバック)を徐々に生じさせる。通常は前記逃げ部の転造歯型(歯先)は一段傾斜の態様で形成されている。逃げ部をこのような形状とすることで、被転造部材の外形が略楕円化するなどの形状不良を防止できることが知られている。
【0004】
ところで、転造ダイスで塑性加工されるウォームやねじ等は、その歯形仕様によっては被転造部材の歯面に傷が入り易くなってしまう。
【0005】
歯面に傷が入った転造品は、使用時に、相手部品との干渉による動作音(振動音)が大きくなったり、振れ幅が大きくなったり、相手部品の摩耗による寿命に影響したりするなど、多くの問題を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−113740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発明者等の種々の検討の結果、転造ダイスの逃げ部において上記被転造部材の歯面に傷が生じていたことを見出し、これを解決すべくなされたもので、逃げ部における被転造部材とダイスの転造歯型との干渉を可及的に抑制して被転造部材の歯面に傷が生じることを防止できる極めて実用性に秀れた転造ダイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
被転造部材の外周面に転造歯型を当接させることで該外周面を塑性変形させ所望の歯形を転造する転造ダイスであって、前記転造歯型は食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cにより構成され、前記逃げ部Cには所定高さ位置における前記転造歯型の各歯部1の歯厚Tが転造方向始端側から転造方向終端側に向かって漸減する歯厚漸減部が設けられ、この歯厚漸減部は、前記逃げ部Cにおける前記転造方向終端側の歯厚Tの漸減度合いが、前記転造方向始端側の歯厚Tの漸減度合いより大きな度合いとなるように構成されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cにおける前記転造歯型の歯底2が転造方向終端側に向かって下り傾斜するように構成されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cの転造方向終端位置における前記転造歯型の歯先位置は、前記仕上げ部Bの転造方向終端位置における前記転造歯型の歯先位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.08倍〜0.3倍低くなるように構成されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0012】
また、請求項2,3いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cの転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置は、前記仕上げ部Bの転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.1倍〜0.4倍低くなるように構成されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0013】
また、請求項4記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cの転造方向始端側には第一歯厚漸減部が設けられ、前記逃げ部Cの転造方向終端側には第二歯厚漸減部が設けられ、前記第一歯厚漸減部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置は、前記仕上げ部Bの転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.05倍〜0.2倍低くなるように構成され、前記第二歯厚漸減部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置は、前記第一歯厚漸減部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.05倍〜0.2倍低くなるように構成されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0014】
また、請求項5記載の転造ダイスにおいて、前記第一歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底2が所定の第一の傾斜角度で略直線状に下り傾斜する第一傾斜部4と、前記第二歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底2が前記第一傾斜部4の傾斜度合いより大きい度合いで下り傾斜する第二傾斜部5とが設けられていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0015】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記第一歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底2が所定の第一の傾斜角度で略直線状に下り傾斜する第一傾斜部4と、前記第二歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底2が前記第一の傾斜角度より大きい第二の傾斜角度で略直線状に下り傾斜する第二傾斜部5とが設けられていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0016】
また、請求項3〜7いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cの前記転造歯型の歯先3の傾斜角度は、前記第一傾斜部4の前記転造歯型の歯底2の前記第一の傾斜角度と同角度若しくは前記第一の傾斜角度より大きい角度に設定されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0017】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cの前記転造歯型の歯先3に、略平面状若しくは曲面状の面取り部7が設けられていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0018】
また、請求項9記載の転造ダイスにおいて、前記面取り部7は前記逃げ部Cの転造方向終端位置において、転造方向直角断面の歯厚方向で0.05mm以上の幅で面取りされ、且つ、前記面取り部7は前記逃げ部Cの転造方向終端位置から転造方向に、少なくとも3mmの長さ若しくは被転造部材の外周長の4分の1の長さのうち、短い方の長さ以上の範囲で設けられていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【0019】
また、請求項1〜10いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、この転造ダイスはウォームを形成するために用いられるものであって、前記転造歯型の歯部1の圧力角αは3°〜25°に設定されていることを特徴とする転造ダイスに係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、逃げ部における被転造部材とダイスの転造歯型との干渉を可及的に抑制して被転造部材の歯面に傷が生じることを防止できる極めて実用性に秀れた転造ダイスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】平ダイスの概略説明斜視図である。
【図2】本実施例の構成概略説明側面図である。
【図3】本実施例の要部の拡大概略説明側面図である。
【図4】従来例の要部の拡大概略説明側面図である。
【図5】本実施例の仕上げ部の転造方向終端位置の概略説明横断面図である。
【図6】本実施例の逃げ部のうち第一傾斜部の概略説明斜視図である。
【図7】本実施例の逃げ部(第一傾斜部と第二傾斜部)の概略説明斜視図である。
【図8】別例1の概略説明斜視図である。
【図9】別例2の拡大概略説明側面図である。
【図10】別例3の拡大概略説明側面図である。
【図11】別例4の第二傾斜部の転造方向終端位置部分の概略説明斜視図である。
【図12】往復転造用の平ダイス例と往復転造加工の概略説明図である。
【図13】別例5の構成概略説明側面図である。
【図14】実験例の実験条件及び実験結果を示す表である。
【図15】歯面に傷が生じた例(a)及び歯面に傷が生じていない例(b)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
一対の転造ダイスにより被転造部材を挟み込んで転造加工を行う。ここで、食付き部A及び仕上げ部Bにおける加工後、逃げ部Cにおいて被転造部材にかかる負荷を開放するに際し、転造方向始端側の歯厚漸減部において少しずつ負荷を開放しながら(被転造部材の外形が略楕円形状にならないようにし)、転造方向終端側の歯厚漸減部において一気に負荷を開放して転造歯型の歯厚方向に生じる隙間に被転造部材のスプリングバック分を逃がすことができる(転造方向終端側の歯厚漸減部においてはより歯厚が薄くなることで、この転造方向終端側の歯厚漸減部においては転造歯型と被転造部材との間の隙間が大きくなる)。よって、被転造部材と転造歯型との干渉を可及的に抑制することが可能となる。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、被転造部材の外周面に転造歯型を当接させることで該外周面を塑性変形させ所望の歯形を転造する転造ダイスであって、前記転造歯型は食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cにより構成され、具体的には図1,2に図示したように、転造方向始端側から順に食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cが連続して形成され、前記逃げ部Cは所定高さ位置(ダイス底面6を基準面とした場合の、歯先から歯底までの歯丈領域内の所定位置、例えば図7の直線D)における前記転造歯型の各歯部1の歯厚Tが転造方向始端側から転造方向終端側に向かって漸減する歯厚漸減部が設けられ、この歯厚漸減部は、前記逃げ部Cにおける前記転造方向終端側の歯厚Tの漸減度合いが、前記転造方向始端側の歯厚Tの漸減度合いより大きな度合いとなるように構成されているものである。ここで言う歯厚Tの漸減度合いは、転造方向の所定長さにおける歯厚Tの減少量として表される。
【0026】
具体的には、本実施例は図1に図示したような平ダイスXであって、被転造部材に対して所定の間隔で対向配置された一対の平ダイスXの対向面間に被転造部材を挟み込んで回転させながら圧力を加えることでウォーム若しくはねじの歯形(ねじ山)を形成するものである。
【0027】
具体的には、平ダイスXは、その転造歯型が設けられない底面6がダイス基準面に設定され、この底面6の反対側の上面に複数条の歯部1が所定間隔で転造方向に対して斜行状態に並設されて成る転造歯型を有し、この平ダイスXの転造歯型は、転造方向始端側から順に転造方向に対する傾斜角度が夫々異なる食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cが連続して設けられるものである。また、転造歯型は、予め所定の寸法に外形加工されたダイス母材を研削加工することで形成される。
【0028】
仕上げ部Bは転造方向において底面6(ダイス基準面)に平行な面に沿うものであり、食付き部Aは転造方向始端側に向かうほど底面側に傾斜する面に沿うものであり、逃げ部Cは転造方向終端側に向かうほど底面側に傾斜する面に沿うものである。
【0029】
従って、対向配置した一対の平ダイスXが互いに逆向きに相対移動することで、食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cにおいて間隔が異なることになり(具体的には仕上げ部Bにおいて最も間隔が狭まることになり)、この一対の平ダイスXに挟み込まれた被転造部材は、回転させられながら圧力を加えられることとなり、ウォーム若しくはねじの歯形(ねじ山)が形成される。
【0030】
本実施例においては歯部1の形状は歯先側に向かうほどその厚さ(歯厚T)が小さくなる断面視略台形状若しくは断面視略三角形状を成しており、一方、歯溝の形状は歯底側に向かうほどその幅が小さくなる断面視略台形状若しくは断面視略三角形状を成している。また、歯底2の隅部は歯部1側に凸となる断面視略円弧形状(略アール形状)としている。
【0031】
各部を具体的に説明する。
【0032】
本実施例は、逃げ部Cの転造方向始端側に所定の漸減度合いで前記歯厚Tが漸減する第一歯厚漸減部を設け、この第一歯厚漸減部の転造方向終端側に該第一歯厚漸減部の漸減度合いより大きな度合いで前記歯厚Tが漸減する第二歯厚漸減部を連設している。
【0033】
具体的には、図2,3に図示したように、第一歯厚漸減部としての転造歯型の歯底2が所定の第一の傾斜角度β1で略直線状に下り傾斜する第一傾斜部4と、第二歯厚漸減部としての転造歯型の歯底2が第一傾斜部4の傾斜度合いより大きい度合いで下り傾斜する第二傾斜部5とを連設している。より具体的には、本実施例の歯厚漸減部は、前記第一傾斜部4と第一の傾斜角度β1より大きい第二の傾斜角度β2で略直線状に下り傾斜する第二傾斜部5とを連設している。ここで言う傾斜度合いは、転造方向の所定長さにおける歯厚2の落ち量として表されるものであり、略直線状に下り傾斜する歯厚漸減部(傾斜部)については、前記のように傾斜角度(β1,β2等)で表しても良い。
【0034】
尚、歯厚漸減部は、図8に図示したように歯底を傾斜させずに歯部1の歯厚自体を薄くしたり(逃げ部の途中から研削砥石を歯厚方向等に移動させて薄く加工する)、図9に図示したように歯底を直線傾斜でなくダイス歯先方向に凸となる曲線状に形成しても良い。また、図10に図示したように第一傾斜部4と第二傾斜部5との間に第三傾斜部8等を設けて、二段に限らず三段以上で逃がす形状としても良い。この図10は、第一傾斜部4と第三傾斜部8が転造方向始端側の第一歯厚漸減部を構成し、第二傾斜部5が転造方向終端側の第二歯厚漸減部を構成する態様である。
【0035】
また、図4に図示したような従来の一般的な平ダイスX’においては、仕上げ部B’は歯先3’と歯底2’とが平行であり、この仕上げ部B’の転造方向長さは被転造部材1.5回転分の長さとし、逃げ部C’の歯先3’及び歯底2’における傾斜部(歯厚漸減部)は一段のみであり、この逃げ部C’の転造方向長さは被転造部材2回転分の長さに設定している。この点、本実施例においては図3に図示したように、仕上げ部B(歯先3と歯底2とが平行な部分)の転造方向長さ(区間G)は同様に被転造部材1.5回転分の長さとしているが、逃げ部Cについては歯底2を次のような構成としている。即ち、第一傾斜部4の区間Hは被転造部材にかかる負荷を少しずつ開放するために第二傾斜部5の区間Iより長く、被転造部材2回転分の長さ以上に設定し、第二傾斜部5の区間Iは一気に負荷を開放するために被転造部材2回転分の長さ以内に設定している。具体的には、第一傾斜部4の区間Hは被転造部材3回転分の長さとし、第二傾斜部5の区間Iは被転造部材1回転分の長さとしている。区間Hが被転造部材2回転分の長さ未満であると被転造部材にかかった負荷がほとんど開放されずに残ってしまい、第二傾斜部5において一気に残りの負荷が開放されるために被転造部材が楕円になってしまう可能性があり、被転造部材2回転分〜4回転分の長さが適切であると考えられる。また、区間Iを被転造部材2回転分の長さより長くすると、歩みの影響で不完全ねじ(歯形)部が長くなる可能性があるため、好ましくは被転造部材0.125回転分〜1.5回転分の長さとしたほうがよい。
【0036】
また、逃げ部Cの転造歯型の歯先3の傾斜角度γは、第一傾斜部4の転造歯型の歯底2の第一の傾斜角度β1と同角度若しくは前記第一の傾斜角度β1より大きく設定している。発明者等は、前記歯先3の傾斜角度γが前記第一の傾斜角度β1と同角度未満であった場合、被転造部材の振れが大きくなってしまうという知見を得ているためである。本実施例においては、歯先3の傾斜角度γと歯底2の第一の傾斜角度β1を同角度に設定している。
【0037】
尚、逃げ部Cの転造歯型の歯先3も歯底2と同数段の傾斜構成として、歯先3の夫々の傾斜角度γを、第一傾斜部4領域においては第一の傾斜角度β1と同角度に設定し、第二傾斜部5領域においては第二の傾斜角度β2と同角度に設定しても良い。
【0038】
また、歯厚Tの漸減度合い(第一の傾斜角度β1及び第二の傾斜角度β2の設定)は、図14に図示したような後述する実験結果をもとに以下のように設定するのが好ましいと考えられる。尚、図5は仕上げ部Bの転造方向終端位置の概略説明横断面図、図6は逃げ部Cのうち第一傾斜部4の転造方向終端位置部分の概略説明斜視図(斜線部は、第一傾斜部の転造方向終端位置の断面)、図7は逃げ部C(第一傾斜部4と第二傾斜部5)の概略説明斜視図である。図7において前記逃げ部Cは所定高さ位置(ダイス底面6を基準面とした場合の、歯先から歯底までの歯丈領域内の所定位置、直線D)における前記転造歯型の各歯部1の歯厚Tが転造方向終端側に向かって漸減するように歯厚漸減部が形成されているのである。
【0039】
逃げ部Cの転造方向終端位置における転造歯型の歯先位置が、仕上げ部Bの転造方向終端位置における転造歯型の歯先位置に対し、転造歯型の歯丈L(歯先3と歯底2が平行な区間である仕上げ部Bにおける歯底2の最底部から歯先3までの長さ)の0.08倍〜0.3倍低くなるように設定する。
【0040】
即ち、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの転造方向終端位置における歯先落ち量Mが0.08L〜0.3Lとなるように歯先3の傾斜角度γを設定する。0.08L未満であると歯面に傷が生じ易く、0.3Lを超えると被転造部材の谷部の外形状が楕円になり易いからである。
【0041】
また、逃げ部Cの転造方向終端位置における転造歯型の歯底位置が、仕上げ部Bの転造方向終端位置における転造歯型の歯底位置に対し、転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.1倍〜0.4倍低くなるように設定する。
【0042】
即ち、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの転造方向終端位置における歯底落ち量、即ち逃げ部Cにおける歯底の総落ち量Nが0.1L〜0.4Lとなるように設定する。歯底の総落ち量Nが0.1L未満であると被転造部材の歯面や外周部(山部)に傷が生じ易くなったり、被転造部材の外形が楕円になり易く、0.4Lを超えると被転造部材にかかった負荷を少しずつ減らすことができず一気に負荷が開放されるために被転造部材の外形が楕円になり易いからである。
【0043】
本実施例においては、具体的には、第一傾斜部4の転造方向終端位置における転造歯型の歯底位置が、仕上げ部Bの転造方向終端位置における転造歯型の歯底位置に対し、転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.05倍〜0.2倍低くなるように設定し、第二傾斜部5の転造方向終端位置における転造歯型の歯底位置が、第一傾斜部4の転造方向終端位置における転造歯型の歯底位置に対し、転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈Lの0.05倍〜0.2倍低くなるように設定する。
【0044】
即ち、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置における歯底落ち量N1が0.05L〜0.2Lとなるように第一の傾斜角度β1を設定し、逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置からの第二傾斜部5の転造方向終端位置における歯底落ち量N2が0.05L〜0.2Lとなるように第二の傾斜角度β2を設定する。歯底落ち量N1が0.05L未満であると被転造部材の歯面や外周部(山部)に傷が生じ易くなったり、ワークの外形が楕円になり易く、0.2Lを超えると被転造部材にかかった負荷を少しずつ減らすことができず一気に負荷が開放されるために被転造部材の外形が楕円になり易いからである。歯底落ち量N2が0.05L未満であると、これは第一傾斜部4と第二傾斜部5との差が少なすぎることとなり、このために従来の一段形状とほとんど変わらず本発明の効果が得られなくなり(歯面に傷が生じ易くなり)、また、スプリングバックが完全に取り除かれないうちに転造加工が終了し、被転造部材がダイスの逃げ部終端位置から離間する時点で一気に負荷が開放されてスプリングバックし、よって被転造部材の歯面や外周部に傷がついてしまう。また、0.2Lを超えると、これは第二の傾斜角度β2が大きくなることであって、第一傾斜部4と第二傾斜部5とが急激な角度差をもって連設されることとなり、よってワークに傷が生じやすくなるからである。
【0045】
以上の点を踏まえて、本実施例である実験例1においては、歯丈Lを1.925mm、逃げ部Cにおける歯先3の落ち量Mを0.4mm(0.208L)、歯先3の傾斜角度γを0.35°としている。また歯厚漸減部を次のような構成として歯底の総落ち量Nが0.6mm(0.312L)となるように設定している。具体的には、歯底の第一傾斜部4は第一の傾斜角度β1を0.35°(γ=β1)に設定して、その区間Hは被転造部材3回転分の長さとして歯底の落ち量N1を0.3mm(0.156L)としている。また、前記歯底の第一傾斜部4に連設して歯底の第二傾斜部5を設け、この歯底の第二傾斜部5は第二の傾斜角度β2を1.04°に設定して、その区間Iは被転造部材1回転分の長さとして歯底の落ち量N2を0.3mm(0.156L)としている。
【0046】
また、図14の他の実験例で示したように、仕上げ部Bの転造方向終端位置における転造歯型の歯先位置及び歯底位置、第一傾斜部4の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置、第二傾斜部5の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置それぞれが上記に示した適正な範囲内であれば、歯面の傷の防止効果だけでなく、被転造部材の外形が楕円になる等、他の点でも効果を発揮できる。
【0047】
また、歯面の傷を考慮した場合、図11に図示した別例4のように、前記逃げ部Cの前記転造歯型の歯先3に面取り部7を設けることで、一層歯面の傷を防止することが可能である。この面取りは前記逃げ部Cの歯先3の全域に設けても良いが、必ずしも全域に設ける必要はなく、終端位置に僅かに設けてあれば歯面の傷の防止効果を発揮する。より好ましくは、前記面取り部7は逃げ部Cの転造方向終端位置において、転造方向直角断面の歯厚方向で0.05mm以上の幅で面取りされ(以下、面取り幅という。)、且つ、前記面取り部7は逃げ部Cの転造方向終端位置から転造方向に、少なくとも3mmの長さ若しくは被転造部材の外周長の4分の1の長さ(ワークの4分の1回転分の長さ)のうち、短い方の長さ以上の範囲で設けると良い。面取りの形状は略平面状としても十分傷防止の効果があるが、歯部1の外方に凸となる曲線状に形成するとより効果的である。本実施例では、図11に図示するように外観上略三角形を成す略平面状で、逃げ部Cの転造方向終端位置において面取り幅を0.08mmとして、転造方向にワークの1回転分の長さとなる面取り部7を設けた(図14で示した本実験例2においては、本実験例1と同じ仕様で面取り部7のみを設けた構成である。)。
【0048】
また、本実施例は、前記転造ダイスにおける歯部1の形状は歯先側に向かうほどその厚さ(歯厚T)が小さくなる断面視略台形状を成しており、一方、歯溝の形状は歯底側に向かうほどその幅が小さくなる断面視略台形状を成している形状であり、この転造歯型によってウォームを形成しており、図5に示す転造歯型の歯部1の圧力角αが3°〜25°の場合に特に有効であると考えられる。3°より小さい場合には歯部形状が台形でなく略矩形となり第二傾斜部5において歯底を急激に傾斜させて逃げるようにしても歯厚方向の隙間がほとんど生じなくなるからである。本実施例の第二傾斜部5を形成する際には、第一傾斜部4を形成する場合より研削砥石を深く(ダイスの底面方向に)押し付けてより深い歯溝を形成するように研削することで歯厚を薄くしているため、圧力角αが小さいほど、ダイスの歯型が矩形状となり、より深く押し付けないとダイスの歯厚が薄くならず、歯底落ち量を大きくしても歯厚方向の隙間がほとんど確保できず、本発明の効果が得られない。また、25°を超える場合には研削砥石を押し付ける深さをさほど深くしなくても歯厚方向の隙間が大きく確保できるため、逃げ部は通常の仕様(一段逃げ)でも転造ダイスの逃げ部端面において今回の課題であるワークの歯面に傷が生じ難いからである。
【0049】
尚、前述したように、本実施例では転造方向始端側から順に食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cが連続して形成される構成として図1,2等に図示しているが、図12に図示したように往復転造に適用可能な構成としても良い。具体的には、転造方向において底面6(ダイス基準面)に平行な面に沿う仕上げ部(B,b)の転造方向両端側に転造方向外方側(転造方向始端側もしくは転造方向終端側)に向かうほど底面側に傾斜する面に沿う夫々同仕様の逃げ部にして食付き部を形成する構成としても良い。このような構成とすることで、ダイスの一方向移動時のみの転造加工でなく往復移動時の転造加工が可能となり、転造加工効率が向上する。特に転造加工時の歩みが発生しづらい材質の被転造部材を用いる場合に往復転造は非常に有効である。往復転造を行う場合、被転造部材は所定位置に回転自在に支持され、転造加工時のダイスの移動の向きに応じて回転する。例えば、被転造部材Wが所定位置に供給されて図示しないセンタ部材で該被転造部材Wを回転自在に支持し、実線で記載した一対のダイスYが夫々互いに逆向きに黒矢印の向きに移動して転造加工する。この時被転造部材Wは被転造部材Wの近傍に図示した黒矢印の向きに回転する。転造加工後のダイスYの位置は二点鎖線で記載したダイスYにて表している。次いで被転造部材Wを転造加工前の素材と入れ替えて、二点鎖線で記載した一対のダイスYが夫々前記と逆向きに即ち白抜き矢印の向きに移動して転造加工する。この時被転造部材Wは被転造部材Wの近傍に図示した白抜き矢印の向きに回転する。転造加工後のダイスYの位置は図示していない。
【0050】
図中、A,B,Cは実線で記載したダイスYにより転造加工が行われた場合(ダイスの移動の向きと被転造部材Wの回転の向きが黒矢印の向きで表される場合)の食付き部A、仕上げ部B、逃げ部Cを示し、このときの逃げ部Cにおける第一歯厚漸減部(第一傾斜部)の区間をH、第二歯厚漸減部(第二傾斜部)の区間をIとして示している。また、a,b,cは二点鎖線で記載したダイスYにより転造加工が行われた場合(ダイスの移動の向きと被転造部材Wの回転の向きが白抜き矢印の向きで表される場合)の食付き部a、仕上げ部b、逃げ部cを示し、このときの逃げ部cにおける第一歯厚漸減部(第一傾斜部)の区間をh、第二歯厚漸減部(第二傾斜部)の区間をiとして示している。
【0051】
その他、図中BとAとの間、もしくはBとCとの間に、転造方向外方側(転造方向始端側もしくは転造方向終端側)に向かうほど底面側に傾斜する面に沿う中間仕上げ部に相当する部分を設けても良い。
【0052】
尚、本実施例は平ダイスXに本発明を適用した例であるが、図13に図示したよう略円筒状の外周の一部が切欠されたような形状の所謂欠円ダイスQに適用した別例5においても同様である。前述した平ダイスXの場合についての説明は、欠円ダイスQについても適用できる。欠円ダイスQはその回転方向が転造方向であり、前記ダイスの転造歯型は、転造方向始端側から順に、回転軸Oから歯先までの距離r(以下、半径rという。)が夫々異なる食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cが連続して設けられるものである。また、転造歯型は、予め所定の寸法に外形加工されたダイス母材を研削加工することで形成される。
【0053】
仕上げ部Bは転造方向において半径rが一定な周面に沿うものであり、食付き部Aは転造方向始端側に向かうほど半径rが小さくなる周面に沿うものであり、逃げ部Cは転造方向終端側に向かうほど半径rが小さくなる周面に沿うものである。
【0054】
従って、対向配置した一対の欠円ダイスQが同期して回転することで、食付き部A、仕上げ部B及び逃げ部Cにおいて間隔が異なることになり(具体的には仕上げ部Bにおいて最も間隔が狭まることになり)、この一対の欠円ダイスQに挟み込まれた被転造部材は、回転させられながら圧力を加えられることとなり、ウォーム若しくはねじの歯形(ねじ山)が形成される。
【0055】
尚、前記欠円ダイスの場合、平ダイスXにおいて歯底の傾斜の基準となる底面(ダイス基準面)を前記欠円ダイスの回転軸Oと読み替えれば良い。即ち、逃げ部Cにおける所定高さ位置は、回転軸Oを基準とした場合の歯先から歯底までの歯丈領域内の所定位置と解釈すれば良く、その高さ位置において歯厚が薄くなっている。
【0056】
具体的には別例5においては、歯先落ち量Mはr1(回転軸Oから逃げ部Cの転造方向始端位置における歯先3までの距離)−r2(回転軸Oから逃げ部Cの転造方向終端位置における歯先3までの距離)で求めることができる。また、仕上げ部Bの転造方向終端位置から第一傾斜部4の転造方向終端位置までの歯底落ち量(平ダイスXにおける、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置における歯底落ち量N1に相当)は、r3(回転軸Oから逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向始端位置における歯底2までの距離)−r4(回転軸Oから逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置における歯底2までの距離)で求めることができる。また、第一傾斜部4の転造方向終端位置から第二傾斜部5の転造方向終端位置までの歯底落ち量(平ダイスXにおける、逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置からの第二傾斜部5の転造方向終端位置における歯底落ち量N2に相当)は、r4(回転軸Oから逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置における歯底2までの距離)−r5(回転軸Oから逃げ部Cの第二傾斜部5の転造方向終端位置における歯底2までの距離)で求めることができる。また、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの転造方向終端位置における歯底落ち量、即ち、逃げ部Cにおける歯底の総落ち量Nは、前記N1とN2の和で求めることもできるし、r3(回転軸Oから逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向始端位置における歯底2までの距離)−r5(回転軸Oから逃げ部Cの第二傾斜部5の転造方向終端位置における歯底2までの距離)で求めることもできる。尚、図中、θ1は逃げ部Cの範囲、θ2は第一傾斜部4の範囲(平ダイスXにおける区間Hに相当)、θ3は第二傾斜部5の範囲(平ダイスXにおける区間Iに相当)である。
【0057】
よって、逃げ部Cの範囲(θ1の範囲)において歯先落ち量M(=r1−r2)を0.08L〜0.3L(Lは転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈)に設定し、平ダイスXにおける区間Hに相当する第一傾斜部4の範囲が被転造部材2回転分の長さ以上、より好ましくは2回転分〜4回転分の長さとなるようにθ2を設定して、この範囲における歯底落ち量N1(=r3−r4)を0.05L〜0.2L(Lは転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈)に設定し、また、平ダイスXにおける区間Iに相当する第二傾斜部5の範囲が被転造部材2回転分の長さ以下、より好ましくは0.125回転分〜1.5回転分の長さとなるようにθ3を設定して、この範囲における歯底落ち量N2(=r4−r5)を0.05L〜0.2L(Lは転造歯型の仕上げ部Bにおける歯丈)に設定することで、平ダイスと同様にワークの歯面に傷が生じることを防止できる。
【0058】
本実施例は上述のように構成したから、食付き部A及び仕上げ部Bにおける加工後、逃げ部Cにおいて被転造部材にかかる負荷を開放するに際し、転造方向始端側の歯厚漸減部において少しずつ負荷を開放しながら(被転造部材の外形が略楕円形状にならないようにし)、転造方向終端側の歯厚漸減部において一気に負荷を開放して転造歯型の歯厚方向に生じる隙間に被転造部材のスプリングバック分を逃がすことができる(転造方向終端側の歯厚漸減部においてはより歯厚が薄くなることで、この転造方向終端側の歯厚漸減部においては転造歯型と被転造部材との間の隙間が大きくなる)。よって、被転造部材と転造歯型との干渉を可及的に抑制することが可能となる。
【0059】
よって、本実施例は、逃げ部における被転造部材とダイスの転造歯型との干渉を可及的に抑制して被転造部材の歯面に傷が生じることを防止できるものとなる。
【0060】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0061】
即ち、圧力角、歯先落ち量及び歯底落ち量を種々変化させて歯面に傷が生じたりその他の問題が生じるか否かを確認した。図14に実験条件及び実験結果を示す。
【0062】
実験例は全てウォームを形成したものであり、実験例1は上記本実施例の構成であり、実験例2は上記別例4の構成であり、実験例5は上記別例5の構成である。尚、実験例5は欠円ダイスであり、他の実験例は平ダイスである。
【0063】
実験例4及び6においては、図15(a)に示すように被転造部材(ワーク)の歯面に傷が生じることが確認された。尚、実験例3,8及び10においては、ワークの歯面に傷は生じなかったものの、ワークの外形やワークの谷部の外形状が楕円化することが確認された。これらの実験結果より、歯先落ち量または歯底落ち量など、逃げ部の構成が適切な範囲外の場合、歯面の傷以外の問題が生じることが確認できた。
【0064】
実験例1,2,5,7及び9においては、図15(b)に例示するように歯面に傷が生ずるということもなく、またワークの外形やワークの谷部の外形状が楕円化することもなく、良好な転造品を得られることが確認された。
【0065】
以上から、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの転造方向終端位置における歯先落ち量Mは0.08L〜0.3Lに設定するのが好ましく、仕上げ部Bの転造方向終端位置からの逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置における歯底落ち量N1は0.05L〜0.2L、逃げ部Cの第一傾斜部4の転造方向終端位置からの第二傾斜部5の転造方向終端位置における歯底落ち量N2は0.05L〜0.2Lに設定するのが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0066】
1 歯部
2 歯底
3 歯先
4 第一傾斜部
5 第二傾斜部
7 面取り部
A 食付き部
B 仕上げ部
C 逃げ部
L 歯丈
T 歯厚
α 圧力角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転造部材の外周面に転造歯型を当接させることで該外周面を塑性変形させ所望の歯形を転造する転造ダイスであって、前記転造歯型は食付き部、仕上げ部及び逃げ部により構成され、前記逃げ部には所定高さ位置における前記転造歯型の各歯部の歯厚が転造方向始端側から転造方向終端側に向かって漸減する歯厚漸減部が設けられ、この歯厚漸減部は、前記逃げ部における前記転造方向終端側の歯厚の漸減度合いが、前記転造方向始端側の歯厚の漸減度合いより大きな度合いとなるように構成されていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項2】
請求項1記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部における前記転造歯型の歯底が転造方向終端側に向かって下り傾斜するように構成されていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項3】
請求項2記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部Cの転造方向終端位置における前記転造歯型の歯先位置は、前記仕上げ部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯先位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部における歯丈の0.08倍〜0.3倍低くなるように構成されていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項4】
請求項2,3いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置は、前記仕上げ部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部における歯丈の0.1倍〜0.4倍低くなるように構成されていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項5】
請求項4記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部の転造方向始端側には第一歯厚漸減部が設けられ、前記逃げ部の転造方向終端側には第二歯厚漸減部が設けられ、前記第一歯厚漸減部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置は、前記仕上げ部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部における歯丈の0.05倍〜0.2倍低くなるように構成され、前記第二歯厚漸減部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置は、前記第一歯厚漸減部の転造方向終端位置における前記転造歯型の歯底位置に対し、前記転造歯型の仕上げ部における歯丈の0.05倍〜0.2倍低くなるように構成されていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項6】
請求項5記載の転造ダイスにおいて、前記第一歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底が所定の第一の傾斜角度で略直線状に下り傾斜する第一傾斜部と、前記第二歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底が前記第一傾斜部の傾斜度合いより大きい度合いで下り傾斜する第二傾斜部とが設けられていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記第一歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底が所定の第一の傾斜角度で略直線状に下り傾斜する第一傾斜部と、前記第二歯厚漸減部としての前記転造歯型の歯底が前記第一の傾斜角度より大きい第二の傾斜角度で略直線状に下り傾斜する第二傾斜部とが設けられていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項8】
請求項3〜7いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部の前記転造歯型の歯先の傾斜角度は、前記第一傾斜部の前記転造歯型の歯底の前記第一の傾斜角度と同角度若しくは前記第一の傾斜角度より大きい角度に設定されていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、前記逃げ部の前記転造歯型の歯先に、略平面状若しくは曲面状の面取り部が設けられていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項10】
請求項9記載の転造ダイスにおいて、前記面取り部は前記逃げ部の転造方向終端位置において、転造方向直角断面の歯厚方向で0.05mm以上の幅で面取りされ、且つ、前記面取り部は前記逃げ部の転造方向終端位置から転造方向に、少なくとも3mmの長さ若しくは被転造部材の外周長の4分の1の長さのうち、短い方の長さ以上の範囲で設けられていることを特徴とする転造ダイス。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の転造ダイスにおいて、この転造ダイスはウォームを形成するために用いられるものであって、前記転造歯型の歯部の圧力角は3°〜25°に設定されていることを特徴とする転造ダイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−115862(P2012−115862A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266534(P2010−266534)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000115120)ユニオンツール株式会社 (44)