説明

転造工具

【課題】緩み止め機能を発揮可能な形状のねじ山を確実かつ経済的に製造することができる転造工具を提供すること。
【解決手段】転造ダイス1は、複数の嵌合部加工歯22と、それら複数の嵌合部加工歯22の間に配設されるスリット加工歯23とを有する第2ダイス20と、その第2ダイス20の転造方向終端に始端を一致させると共にねじ山加工歯12を有する第1ダイス10とを備え、嵌合部加工歯22に隣接するスリット加工歯23の内の一方(緩み止めボルト51の頭部52側)のスリット加工歯23が他方のスリット加工歯23よりも嵌合部加工歯22に近接して配設されている。よって、被転造素材61を第2ダイス20で転造し、続けて第1ダイス10で転造することで、フランク面にスリット溝57を有する緩み止めボルト51を転造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造工具に関し、特に、緩み止め機能を発揮可能な形状のねじ山を確実かつ経済的に製造することができる転造工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじ部材を使用した締結部の緩み止め方法としては、例えば、おねじとめねじとの螺合面間にインサート材を介挿して、このインサート材を締結により塑性変形させて螺合面間に充塞させる方法や、予めおねじ又はめねじの表面に緩み止め剤を塗布しておき、この緩み止め材により螺合面間を接着固定する方法が一般的である。
【0003】
しかしながら、これらの方法では、締結作業の度にインサート材や緩み止め材を介挿したり塗布したりしなければならず、作業コストが嵩むばかりでなく、部品点数が増加して、その分、部品コストが嵩むという問題点があった。
【0004】
そこで、ねじ山の形状自体に緩み止め機能を持たせ、インサート材などの付加的な部品を不要とする技術が提案されている。例えば、特開2003−42130号公報には、ねじ山の一方のフランク面に径方向に延びるスリットが形成されたねじ部材(おねじ)が開示されている。このねじ部材によれば、締結時には、ねじ山がスリットの狭まる方向へ弾性変形して、その弾性復元力で相手のねじ山のフランク面を圧接することで、緩み止め機能を発揮する。
【特許文献1】特開2003−42130号公報(例えば、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したねじ山の形状は、あくまで机上での形状に過ぎず、このねじ山を確実かつ経済的に製造することが困難であるという問題点があった。即ち、ねじ山の形状は提案されているが、この形状のねじ山を製造する方法については開示されていなかった。例えば、この形状のねじ山を切削加工により製造すると、製造コストが嵩み、とうてい市販に耐えうるものではない。そのため、この形状のねじ山を備えるねじ部材(おねじ)は、未だ実用化されていない。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、緩み止め機能を発揮可能な形状のねじ山を確実かつ経済的に製造することができる転造工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の転造工具は、フランク面にスリットが延設され、めねじに螺合されると前記スリットが狭まる方向へ弾性変形し、その弾性復元力により前記めねじのフランク面を圧接することで緩み止め機能を発揮するおねじを、被転造素材の外周面に転造するものであって、第1ダイスと、第2ダイスとを備え、前記第1ダイスは、所定のピッチで列設されると共に前記おねじのねじ山に対応する山形形状に形成される複数のねじ山加工歯を有する第1転造歯形面を備え、前記第2ダイスは、前記ねじ山加工歯のピッチと同じピッチで列設される複数の嵌合部加工歯と、その嵌合部加工歯に並設される少なくとも1のスリット加工歯とを有する第2転造歯形面を備え、前記嵌合部加工歯は、前記ねじ山加工歯よりも歯底から歯先までの高さが低くされ、前記スリット加工歯は、隣接する一対の嵌合部加工歯の内の一方の嵌合部加工歯よりも他方の嵌合部加工歯に近接する位置に配設され、前記第1ダイスと第2ダイスとが前記ねじ山加工歯の始端と嵌合部加工歯の終端とを一致させた状態で転造方向に直列に配設されると共に、前記第2ダイスが第1ダイスよりも転造方向上流側に配設される。
【0008】
請求項2記載の転造工具は、請求項1記載の転造工具において、前記スリット加工歯は、前記一方の嵌合部加工歯と前記他方の嵌合部加工歯との間の中間位置よりも前記他方の嵌合部加工歯に近接し、かつ、前記他方の嵌合部加工歯から前記ピッチの1/8以上離間する位置に配設されている。
【0009】
請求項3記載の転造工具は、請求項1又は2に記載の転造工具において、前記第1ダイスの第1転造歯形面は、転造方向上流側へ向けて下降傾斜される第1食付き部と、その第1食付き部に連設される第1仕上げ部とを備え、前記第2転造歯形面の第2転造歯形面は、その転造方向始端側に位置する第2食付き部と、その第2食付き部に連設される第2仕上げ部とを備え、前記第2食付き部および第2仕上げ部の転造方向長さが、前記第1食付き部および第1仕上げ部の転造方向長さよりも短くされている。
【0010】
請求項4記載の転造工具は、請求項3記載の転造工具において、前記第1食付き部の転造方向始端におけるねじ山加工歯の歯先は、前記第2仕上げ部の嵌合部加工歯の歯先面よりも歯底側に後退して位置している。
【0011】
請求項5記載の転造工具は、請求項1から4のいずれかに記載の転造工具において、前記嵌合部加工歯とスリット加工歯とが同じ山形形状に構成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の転造工具によれば、第1ダイスが、おねじのねじ山に対応する山形形状に形成される複数のねじ山加工歯を有する第1転造歯形面を備え、第2ダイスが、ねじ山加工歯のピッチと同じピッチで列設される複数の嵌合部加工歯およびその嵌合部加工歯に並設されるスリット加工歯を有する第2転造歯形面を備えると共に、第2ダイスが第1ダイスよりも転造方向上流側に配設され、かつ、ねじ山加工歯の始端と嵌合部加工歯の終端とを一致させた状態で、これら第1ダイスと第2ダイスとが転造方向に直列に配設されている。
【0013】
よって、被転造素材は、まず、第2ダイスの第2転造歯形面を転動移動され、その第2転造歯形面の嵌合部加工歯およびスリット加工歯が外周面に食い込むことで、嵌合部下穴およびスリット下穴が外周面にそれぞれ凹設される。この第2ダイスの第2転造歯形面を通過すると、次いで、被転造素材は、その外周面に既に形成されている嵌合部下穴にねじ山加工歯を受け入れつつ、第1ダイスの第1転造歯形面を転動移動され、その第1転造歯形面のねじ山加工歯が嵌合部下穴に更に食い込まれる。
【0014】
このねじ山加工歯の食い込みにより、被転造素材の素材が押し退けられ、押し退けられた素材が、スリット下穴の両側から余肉として盛り上げられつつ、ねじ山加工歯のねじ溝に充填される。その結果、径方向に延びるスリットを有するおねじが被転造素材の外周面に転造される。
【0015】
この場合、本発明によれば、第2転造歯形面のスリット加工歯が、隣接する一対の嵌合部加工歯の内の一方の嵌合部加工歯よりも他方の嵌合部加工歯に近接する位置(即ち、他方の嵌合部加工歯の側へ片寄った位置)に配設される構成であるので、ねじ山加工歯の食い込みにより、被転造素材の素材が押し退けられる際には、スリット下穴に対して一方側(一方の嵌合部加工歯側)の余肉が他方側(他方の嵌合部加工歯側)の余肉よりも大きく盛り上げられ、この一方側の余肉により山の頂が形成される。その結果、フランク面にスリットが形成されたおねじが被転造素材の外周面に転造される。
【0016】
このように、本発明によれば、第2転造歯形面にスリット加工歯を設けると共に、第2転造歯形面を第1転造歯形面よりも転造方向上流側に配設する構成であるので、第1転造歯形面のねじ山加工歯によりおねじを転造する前に、被転造素材の外周面に予めスリット下穴を凹設しておくことができる。その結果、第1転造歯形面のねじ山加工歯が被転造素材の外周面に食い込む際に、スリット下穴の両側から余肉を盛り上げて、スリットを有するおねじを転造することができる。即ち、緩み止め機能を発揮するおねじを確実かつ経済的に転造することができるという効果がある。
【0017】
また、この場合、本発明によれば、ねじ山加工歯と同じピッチで列設されると共にねじ山加工歯よりも歯底から歯先までの高さが低くされる嵌合部加工歯を第2転造歯形面に設けると共に、ねじ山加工歯の始端と嵌合部加工歯の終端とを一致させた状態で第1ダイスと第2ダイスとを直列に配設する構成であるので、第1転造歯形面のねじ山加工歯によりおねじを転造する前に、被転造素材の外周面に予め嵌合部下穴を凹設し、その嵌合部下穴にねじ山加工歯を食い込ませつつ転造を行うことができる。即ち、嵌合部下穴が予め凹設されているので、その分、ねじ山加工歯による塑性加工量を低減して、ねじ山加工歯の耐久性の向上を図ることができるという効果がある。また、嵌合部下穴が予め凹設されていれば、その嵌合部下穴にねじ山加工歯が嵌り込みつつ被転造素材が第1転造歯形面を転動移動されるので、滑りの発生を抑制して、ねじ山の成形精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0018】
更に、本発明によれば、第1転造歯形面のねじ山加工歯を被転造素材の外周面に食い込ませ、押し退けられた素材を余肉として盛り上げてねじ山を転造する構成であるところ、上述した通り、ねじ山加工歯による転造の前に、第2転造歯形面によって嵌合部下穴とスリット下穴とを被転造素材の外周面に予め凹設しておく構成であるので、ねじ山加工歯が食い込む際にスリット下穴が塞がることを抑制して、緩み止め機能を十分に発揮可能なおねじを確実に製造することができるという効果がある。
【0019】
例えば、第2転造歯形面がスリット加工歯のみを有し、嵌合部加工歯が省略されている構成であると、スリット下穴の両側がそのスリット下穴の開口部に連なる平坦面となるので、被転造素材が第1転造歯形面を転動移動して、その外周面にねじ山加工歯が食い込む際には、その食い込みにより押し退けられた素材がスリット下穴へ流動して、スリット下穴が塞がれてしまう。即ち、転造されたおねじは、スリットが塞がれているので、緩み止め機能を十分に発揮することができない。
【0020】
これに対し、本発明によれば、スリット下穴の両側に嵌合部下穴が予め凹設されているので、被転造素材が第1転造歯形面を転動移動して、その外周面にねじ山加工歯が食い込む際には、スリット下穴の開口部よりも下側(穴底側)の部位(即ち、嵌合部下穴の穴底)をねじ山加工歯が押圧する(食い込む)ので、そのねじ山加工歯により押し退けられた素材を盛り上がり易くして、スリット下穴へ流動することを抑制することができる。よって、スリット下穴が塞がれることを抑制して、緩み止め機能を十分に発揮することができるおねじを転造することができる。
【0021】
請求項2記載の転造工具によれば、請求項1記載の転造工具の奏する効果に加え、スリット加工歯は、一方の嵌合部加工歯と他方の嵌合部加工歯との間の中間位置よりも他方の嵌合部加工歯に近接する位置に配設されているので、スリットの形成位置を、転造されたねじ山の中央(山の頂)からずらして、フランク面にスリットを形成することができる。その結果、緩み止め機能を十分に発揮できるおねじを転造することができるという効果がある。
【0022】
更に、本発明によれば、スリット加工歯は、他方の嵌合部加工歯からピッチの1/8以上離間する位置に配設されているので、スリットの形成位置が、転造されたねじ山の谷底側に近づき過ぎることを抑制して、緩み止め機能を十分に発揮できるおねじを転造することができるという効果がある。
【0023】
即ち、スリットの形成される位置がねじ山の谷底側に近すぎると、めねじに螺合された際、スリットが狭まる方向への弾性変形が不十分となり、弾性復元力によりめねじのフランク面を圧接する効果が弱くなる。これに対し、本発明では、上述のようにスリット加工歯の位置を設定したので、スリットの形成位置を適正とすることができる。よって、同じ締結荷重(軸力)であっても、スリットが狭まる方向への弾性変形を確保して、その弾性復元力によって、めねじのフランク面を強固に圧接させることができる。
【0024】
請求項3記載の転造工具によれば、請求項1又は2に記載の転造工具の奏する効果に加え、第2食付き部および第2仕上げ部の転造方向長さを、第1食付き部および第1仕上げ部の転造方向長さよりも短くする構成であるので、その分、転造時間を短縮して、おねじの製造コストを削減することができるという効果がある。また、第2食付き部および第2仕上げ部の転造方向長さを短くすることで、材料コスト及び加工コストを削減することができるので、その分、転造工具の製品コストを削減することができるという効果がある。
【0025】
請求項4記載の転造工具によれば、請求項3記載の転造工具の奏する効果に加え、第1食付き部の転造方向始端におけるねじ山加工歯の歯先が、第2仕上げ部の嵌合部加工歯の歯先面よりも歯底側に後退して位置する構成であるので、第2ダイスの第2転造歯形面から第1ダイスの第1転造歯形面へ被転造素材が受け渡される際には、第2転造歯形面の嵌合部加工歯によって被転造素材の外周面に形成されている嵌合部下穴の穴底と、第1転造歯形面の転造方向始端におけるねじ山加工歯の山頂との間に隙間を形成して、ねじ山加工歯の山頂が嵌合部下穴の穴底に衝突することを回避することができる。その結果、被転造素材の受け渡しをスムーズに行うことができ、滑りの発生による被転造素材の周方向位置の位置ずれを抑制することができるので、おねじを高精度に転造することができるという効果がある。
【0026】
請求項5記載の転造工具によれば、請求項1から3のいずれかに記載の転造工具の奏する効果に加え、嵌合部加工歯とスリット加工歯とを同じ山形形状に構成するので、優れた緩み止め機能を有するおねじを転造することができるという効果がある。
【0027】
即ち、スリット加工歯の歯底から歯先までの高さが嵌合部加工歯の歯底から歯先までの高さより低く過ぎると、スリット下穴の深さが嵌合部下穴の深さよりも浅くなり、嵌合部下穴にねじ山加工歯が食い込む際に、押し退けられた素材がスリット下穴へ流動し易くなるため、スリット下穴が塞がれてしまう。その結果、転造されたおねじは、スリットを狭める方向への弾性変形を十分に確保できないため、弾性復元力が不十分となり、めねじを強固に圧接することができない。よって、緩み止め機能を発揮することができない。
【0028】
一方、スリット加工歯の歯底から歯先までの高さが嵌合部加工歯の歯底から歯先までの高さより高過ぎると、スリット下穴の深さが嵌合部下穴の深さよりも深くなり、嵌合部下穴にねじ山加工歯が食い込む際に、スリット下穴の穴底側に素材が流動し易くなるため、余肉の盛り上がりと共に、スリット下穴(スリット)の開口側が拡開してしまう。その結果、転造されたおねじは、スリットが拡開されている分、めねじに螺合する際の抵抗が大きくなり、締結作業性が困難となる。
【0029】
これに対して、本発明によれば、嵌合部加工歯とスリット加工歯とを同じ山形形状に構成するので、転造されたおねじは、スリットの幅が適正となり、めねじに螺合する際は、抵抗が抑制されると共に、螺合された後は、その弾性復元力によりめねじを強固に圧接して、優れた緩み止め機能を発揮することができる。
【0030】
また、本発明によれば、嵌合部加工歯とスリット加工歯とを同じ山形形状に構成するので、これら嵌合部加工歯とスリット加工歯とが異なる山形形状に構成される場合と比較して、第2ダイスの第2転造歯形面の加工を簡素化して、加工コストを削減することができ、その分、転造工具全体としての製品コストの削減を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における転造ダイス1を説明する図であり、(a)は、転造ダイス1の正面図であり、(b)は、転造ダイス1の側面図である。なお、図1(a)では、ねじ山加工歯12、嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23の山頂線を実線で図示する一方、谷底線を省略して図示している。
【0032】
まず、図1を参照して、転造ダイス1の全体構成について説明する。転造ダイス1は、円柱状の軸状素材として構成された被転造素材61(図3(a)参照)の外周面を塑性変形させて、スリット溝57(図6(b)参照)を有する緩み止めボルト51(図6(a)参照)を一度の転造加工により転造するための工具である。
【0033】
なお、図1では、一対の転造ダイス1(図1参照)の内、転造盤(図示せず)に固定される一方の転造ダイス1を図示しており、かかる一方の転造ダイス1に対して平行移動される他方の転造ダイス1の図示を省略している。
【0034】
転造ダイス1は、第1ダイス10と第2ダイス20とを備えており、第2ダイス20は、第1ダイス10よりも転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側、請求項1に記載の「上流側」に対応する。)に配設されている。
【0035】
また、後述する第2ダイス20の転造方向終端側(図1(a)左側)の嵌合部加工歯22の山頂の位置と、後述する第1ダイス10の転造方向始端側(図1(a)右側)のねじ山加工歯12の山頂の位置とは、転造方向(図1(a)左右方向)に直交する方向(図1(a)上下方向)において一致されている。
【0036】
第2ダイス20は、図1に示すように、転造に適した合金工具鋼または高速度工具鋼等の金属材料から略直方体状に形成されており、その一面側(図1(a)紙面手前側、図1(b)上側)には、被転造素材61(図3(a)参照)の外周面を転造して第1段転造部材62(図3(c)参照)を形成するための第2転造歯形面21が設けられている。
【0037】
第2転造歯形面21には、図1(a)及び図1(b)に示すように、第2ダイス20の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて、第2食付き部21a、第2仕上げ部21bおよび第2逃げ部21cが順に連続して設けられている。
【0038】
第2食付き部21aは、第2ダイス20の第2転造歯形面21を被転造素材61(図3(a)参照)の外周面に食い付かせる為の部位であり、いわゆる食付き部として用いられる。この第2食付き部21aは、図1(b)に示すように、第2ダイス20の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から第2仕上げ部21b側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で上昇傾斜して形成されている。
【0039】
第2仕上げ部21bは、第2食付き部21aによって転造された第1段転造部材62(図3(c)参照)の形状を仕上げるための部位であり、図1(b)に示すように、第2ダイス20の支持面24に対して略平行に形成されている。なお、支持面24は、転造盤(図示せず)に密着固定される平坦面である。また、第1段転造部材62(図3(c)参照)は、被転造素材61(図3(a)参照)が第2食付き部21aにより転造されたものであり、外周面に壁部大65及び壁部小66へと転造される突部が転造されている。
【0040】
第2逃げ部21cは、第2仕上げ部21bにより仕上げられて形成された第1段転造部材62(図3(c)参照)を第2ダイス20の第2転造歯形面21から排出するための部位であり、いわゆる逃げ部として用いられている。この第2逃げ部21cは、図1(b)に示すように、第2仕上げ部21bの終端から第2ダイス20の転造方向終端側(図1(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で下降傾斜して形成されている。
【0041】
これら第2食付き部21a、第2仕上げ部21b及び第2逃げ部21cで構成された第2転造歯形面21には、複数の嵌合部加工歯22及び複数のスリット加工歯23が刻設されている。
【0042】
嵌合部加工歯22は、後述するねじ山加工歯12が嵌合される嵌合凹部68(図4(a)参照)を被転造素材61(図3(a)参照)へ形成するための加工歯であり、スリット加工歯23は、後述するスリット溝57(図6(b)参照)となるねじ谷67(図4(a)参照)を被転造素材61(図3(a)参照)へ形成するための加工歯である。
【0043】
また、嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23は、図1(a)に示すように、互いに交互に配設されており、それぞれ第2食付き部21aの始端(図1右側)から第2逃げ部21cの終端(図1左側)へ向けて連続して形成されている。
【0044】
これら嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23は、図1(a)に示すように、それぞれ第2転造歯形面21の始端(図1(a)右側)から終端(図1(a)左側)へ向けて連続して形成されると共に、第2ダイス20の長手方向(図1左右方向)に対して、それぞれ転造方向(図1(a)左右方向)に対して所定の角度(本実施の形態では、約4°20′)で傾斜して刻設されている。
【0045】
なお、嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23は、第2ダイス20の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から第2ダイス20の転造方向終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて右傾斜(図1(a)上傾斜)して形成されている。
【0046】
よって、被転造素材61を第2ダイス20に配設する際に、頭部52(図6(a)参照)となる部位を第2ダイス20の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から第2ダイス20の転造方向終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向かって右側(図1(a)上側)に配設することで、凹部67(図4(a)参照)が凹設された第1段転造部材62(図3(c)参照)を転造することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、第2食付き部21aと第2仕上げ部21bとを合わせた長さが長さL2(図1(a)左右方向長さ)の寸法値に設定されており、後述する第1食付き部11aと第1仕上げ部11bとを合わせた長さ寸法値である長さL1よりも小さな値に設定されている(L2<L1)。なお、本実施の形態では、長さL2が約60mmに、長さL1が約70mmに設定されている。
【0048】
そのため、緩み止めボルト51の転造時間を短縮して、緩み止めボルト51(図6(a)参照)の製造コストを削減することができる。また、長さL2を小さな値に設定することで、第2ダイス20が小型化され、第2ダイス20の材料コスト及び加工コストを削減することができる。よって、一対の転造ダイス1を備えた転造工具の製品コストを削減することができる。
【0049】
第1ダイス10は、図1に示すように、転造に適した合金工具鋼または高速度工具鋼等の金属材料から略直方体状に形成されており、その一面側(図1(a)紙面手前側、図1(b)上側)には、第1段転造部材62(図3(c)参照)の外周面に緩み止めボルト51の転造を行うための第1転造歯形面11が設けられている。なお、第1段転造部材62は、被転造素材61が第2ダイス20によって転造されたものである。
【0050】
第1転造歯形面11には、図1(a)及び図1(b)に示すように、第1ダイス10の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて、第1食付き部11a、第1仕上げ部11bおよび第1逃げ部11cが順に連続して設けられている。
【0051】
第1食付き部11aは、第1ダイス10の第1転造歯形面11を第1段転造部材62(図3(c)参照)の外周面に食い付かせる為の部位であり、いわゆる食付き部として用いられる。この第1食付き部11aは、図1(b)に示すように、第1ダイス10の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から第1仕上げ部11b側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で上昇傾斜して形成されている。
【0052】
第1仕上げ部11bは、第1食付き部11aによって転造された緩み止めボルト51(図4(c)参照)の形状を仕上げるための部位であり、図1(b)に示すように、第1ダイス10の支持面14に対して略平行に形成されている。なお、支持面14は、転造盤(図示せず)に密着固定される平坦面である。
【0053】
第1逃げ部11cは、第1仕上げ部11bにより仕上げられた緩み止めボルト51(図4(c)参照)を第1ダイス10の第1転造歯形面11から排出するための部位であり、いわゆる逃げ部として用いられている。この第1逃げ部11cは、図1(b)に示すように、第1仕上げ部11bの終端から第1ダイス10の転造方向終端側(図1(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で下降傾斜して形成されている。
【0054】
これら第1食付き部11a、第1仕上げ部11b及び第1逃げ部11cで構成された第1転造歯形面11には、図1(a)に示すように、複数のねじ山加工歯12が刻設されている。これら複数のねじ山加工歯12は、第1段転造部材62(図3(c)参照)を転造して緩み止めボルト51(図4(c)参照)を形成するための加工歯であり、それぞれ食付き部11aの始端(図1右側)から逃げ部11cの終端(図1左側)へ向けて連続して形成されている。
【0055】
ねじ山加工歯12は、図1(a)に示すように、それぞれ第1転造歯形面11の始端(図1(a)右側)から終端(図1(a)左側)へ向けて連続して形成されると共に、第1ダイス10の長手方向(図1左右方向)に対して、それぞれ所定のリード角(本実施の形態では、約4°20′)で傾斜して刻設されている。なお、本実施の形態では、第1食付き部11aと第1仕上げ部11bとを合わせた長さ寸法値が長さL1に設定されている。
【0056】
なお、ねじ山加工歯12は、第1ダイス10の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から第1ダイス10の転造方向終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向けて右傾斜(図1(a)上傾斜)して形成されている。
【0057】
よって、被転造素材61を第2ダイス20に配設する際に、頭部52(図6(a)参照)となる部位を第2ダイス20の転造方向始端側(図1(a)及び図1(b)右側)から第2ダイス20の転造方向終端側(図1(a)及び図1(b)左側)へ向かって右側(図1(a)上側)に配設することで、右ねじの緩み止めボルト51(図6(a)参照)を転造することができる。
【0058】
次いで、図2を参照して、第2仕上げ部21b及び第1仕上げ部11bの詳細構成について説明する。図2(a)は、図1(a)のIIa−IIa線における第2仕上げ部21bの部分拡大断面図であり、図2(b)は、図1(a)のIIb−IIb線における第1仕上げ部11bの部分拡大断面図である。なお、図2(a)及び図2(b)には、理解を容易とするために図1(a)のIIa−IIa線及び図1(a)のIIb−IIb線における断面の一部分が図示されている。
【0059】
上述したように、第2転造歯形面21の第1仕上げ部11bには、複数の嵌合部加工歯22及び複数のスリット加工歯23がそれぞれ交互に刻設されている。それら複数の嵌合部加工歯22は、図2(a)に示すように、それぞれ転造方向に直交する方向(図2(a)左右方向)にピッチP1の間隔を開けて配設されており、同様に複数のスリット加工歯23は、それぞれ転造方向に直交する方向(図2(a)左右方向)にピッチP1の間隔を開けて配設されている。
【0060】
また、嵌合部加工歯22に隣接して配設される一対のスリット加工歯23の内の一側(図2(a)右側)のスリット加工歯23は、図2(a)に示すように、嵌合部加工歯22から距離P2の間隔を開けて配設され、他側(図2(a)左側)のスリット加工歯23は、嵌合部加工歯22から距離P3の間隔を開けて配設されている。なお、距離P3は、距離P2より小さな寸法値に設定されている(P3<P2)。
【0061】
また、上述した一側(図2(a)右側)のスリット加工歯23は、図2(a)に示すように、転造方向に対して反対方向(転造方向終端側から転造始端側へ向かう方向、図2(a)手前から紙面奥方向)に向かって嵌合部加工歯22の右側(図2(a)右側)に配設されるスリット加工歯23を示しており、他側(図2(a)左側)のスリット加工歯23は、転造方向に対して反対方向に向かって嵌合部加工歯22の左側(図2(a)左側)に配設されるスリット加工歯23を示している。
【0062】
即ち、転造方向に対して反対方向(転造方向終端側から転造始端側へ向かう方向、図2(a)手前から紙面奥方向)に向かって嵌合部加工歯22の左側(図2(a)左側)に配設されるスリット加工歯23は、転造方向に対して反対方向に向かって嵌合部加工歯22の右側(図2(a)右側)に配設されるスリット加工歯23より嵌合部加工歯22に近接して配設されている。
【0063】
本実施の形態では、上述した嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23によって、後述する第1段転造部材62(図3(c)参照)が転造され、その第1段転造部材62の外周面に壁部大65(図3(c)参照)と、壁部小66(図3(c)参照)と、その壁部小66と壁部大65との間に配設される凹部67(図3(c)参照)とが形成される。それら壁部大65と壁部小66と凹部67とをねじ山加工歯12にて転造するので、荷重支持部55(図6(b)参照)と弾性変形部56(図6(b)参照)とスリット溝57(図6(b)参照)とを有する緩み止め機能を十分に発揮できる緩み止めボルト51(図6(b)参照)を転造することができる。なお、緩み止めボルト51(図6(a)参照)の緩み止めの作用については、図6を参照して後述する。
【0064】
嵌合部加工歯22は、図2(a)に示すように、山頂部(図2(a)上側突部)と谷底(図2(a)下側凹部)とをつなぐ一対のフランク面22aを備えており、スリット加工歯23は、山頂部(図2(a)上側突部)と谷底(図2(a)下側凹部)とをつなぐ一対のフランク面23aを備えている。
【0065】
図2(a)に示すように、この嵌合部加工歯22のフランク面22aと、そのフランク面22aに対面するスリット加工歯23のフランク面23aとは角度θ2の傾斜角度を有して配設され、嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23の高さは、高さ寸法H2とされて、嵌合部加工歯22とスリット加工歯23とを同じ山形形状に構成するので、緩み止め機能を有する緩み止めボルト51(図6(a)参照)を転造することができる。
【0066】
即ち、スリット加工歯23の歯底から歯先までの高さが嵌合部加工歯22の歯底から歯先までの高さより低過ぎると、後述する凹部67(図3(c)参照)の深さが後述する嵌合凹部68(図3(c)参照)の深さよりも浅くなり、嵌合凹部68にねじ山加工歯12が食い込む際に、押し退けられた素材が凹部67へ流動し易くなるため、凹部67が塞がれてしまう。
【0067】
その結果、転造された緩み止めボルト51の弾性変形部56(図6(c)参照)は、スリット溝57(図6(c)参照)を狭める方向への弾性変形を十分に確保できないため、弾性復元力が不十分となり、ナットN(図6(c)参照)のフランク面Na1,Na2を強固に圧接することができない。よって、緩み止め機能を十分に発揮することができない。
【0068】
一方、スリット加工歯23の歯底から歯先までの高さが嵌合部加工歯22の歯底から歯先までの高さより高過ぎると、凹部67(図3(c)参照)の深さが嵌合凹部68(図3(c)参照)の深さよりも深くなり、嵌合凹部68にねじ山加工歯が食い込む際に、凹部67に素材が流動し易くなるため、余肉の盛り上がりと共に、凹部67の開口側が拡開してしまう。その結果、転造された緩み止めボルト51は、スリット溝57が拡開されている分、ナットNに螺合する際の抵抗が大きくなり、締結作業性が困難となる。
【0069】
これに対して、本実施の形態によれば、嵌合部加工歯22とスリット加工歯23とを同じ山形形状に構成するので、転造された緩み止めボルト51(図6(a)参照)は、スリット溝57(図6(c)参照)の幅が適正となり、ナットN(図6(c)参照)に螺合する際は、抵抗が抑制されると共に、螺合された後は、その弾性変形部56(図6(c)参照)の弾性復元力によりナットNを強固に圧接して、優れた緩み止め機能を発揮することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、嵌合部加工歯22とスリット加工歯23とを同じ山形形状に構成するので、これら嵌合部加工歯22とスリット加工歯23とが異なる山形形状に構成される場合と比較して、第2ダイス20(図1(a)参照)の第2転造歯形面21の加工を簡素化して、加工コストを削減することができ、その分、転造ダイス1(図1(a)参照)全体としての製品コストの削減を図ることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、ピッチP1、距離P2及び距離P3がそれぞれ約0.35mm、約0.22mm、約0.13mmに設定されており、角度θ2が約60°に設定され、高さ寸法H2が約0.11mmに設定されている。
【0072】
第1転造歯形面11には、上述したように、複数のねじ山加工歯12が刻設されており、それら複数のねじ山加工歯12は、図2(b)に示すように、転造方向に直交する方向(図2(b)左右方向)にピッチP1の間隔を開けて配設されている。そのねじ山加工歯12は、図2(b)に示すように、山頂部(図2(b)上側突部)と谷底(図2(b)下側凹部)とをつなぐ一対のフランク面12aを備えている。それら一対のフランク面12aは、略平坦面状に構成されている。
【0073】
よって、後述する緩み止めボルト51(図6(a)参照)のねじ部54(図6(b)参照)がねじ山加工歯12のよって転造されるので、ねじ部54のフランク面が緩み止めボルト51の軸心を含む断面において、略直線状に構成される。
【0074】
一対のフランク面12aの一方と、その一方のフランク面12aに対面する他のねじ山加工歯12のフランク面12aとは角度θ1の傾斜角度を有して配設されており、ねじ山加工歯12の高さは、高さ寸法H1とされている。なお、また、本実施の形態では、角度θ1が約60°に設定され、高さ寸法H1が約0.24mmに設定されている。
【0075】
次いで、図3から図5を参照して、被転造素材61が緩み止めボルト51へ転造される過程について説明する。図3(a)から図3(c)は、図1(a)のIIIa−IIIa線からIIIc−IIIc線における第2転造歯形面21の部分拡大断面図であり、図4(a)から図4(c)は、図1(a)のIVa−IVa線からIVc−IVc線における第1転造歯形面11の部分拡大断面図である。また、図5は、図4(a)のVで示した第1食付き部11aの部分拡大図であり、理解を容易とするために第2仕上げ部21bを2点鎖線にて図示している。
【0076】
なお、図3(a)から図3(c)では、図面の簡素化のために図1(a)のIIa−IIa線及び図1(a)のIIc−IIc線における断面の一部分を省略して図示しており、図4(a)から図4(c)では、図面の簡素化のために図1(a)のIVa−IVa線及び図1(a)のIVc−IVc線における断面の一部分を省略して図示している。
【0077】
また、図3(a)から図3(c)及び図4(a)から図4(c)では、図面の簡素化のために、被転造素材61を狭持する一対の転造ダイス1の内の一方の転造ダイス1のみを図示し、他方の図示を省略している。また、図3及び図4では、被転造素材61、被転造中間部材61a、第1段転造部材62、第1段転造中間部材62a及び緩み止めボルト51を図示する一方、図5では、第1段転造部材62を省略して図示している。
【0078】
本実施の形態では、第2ダイス20(図1参照)によって、被転造素材61が第1段転造部材62へと転造され、その第1段転造部材62が第1ダイス10(図1参照)によって緩み止めボルト51へと転造される。
【0079】
被転造素材61は、回転可能に軸支されており、その被転造素材61の両側に一対の転造ダイス1(図1参照)がそれぞれ配設され、それら一対の転造ダイス1が相対的に平行移動されることで、図3(a)に示すように、第2食付き部21aに刻設される嵌合部加工歯22の山頂部(図3(a)上側先端部)及びスリット加工歯23の山頂部(図3(a)上側先端部)に被転造素材61が狭持されて転動される。
【0080】
そして、被転造素材61が転造方向に転動されると、図3(b)に示すように、被転造素材61の外周面が変形された被転造中間部材61aが転造される。その後、被転造中間部材61aを第2食付き部21aの転造方向終端(図1(a)左側端部)まで転動させることで、図3(c)に示すように、第1段転造部材62が転造される。なお、被転造中間部材61aは、第2食付き部21aにて転造されている途中の状態の部材である。
【0081】
ここで、第1段転造部材62の構成について説明する。第1段転造部材62は、図3(c)に示すように、壁部大65と、壁部小66と、凹部67と、嵌合凹部68とを備えると共にそれら壁部大65、壁部小66、凹部67及び嵌合凹部68から一体に構成されている。
【0082】
壁部大65は、第1段転造部材62の外周面に螺旋状に連続して突設され、第1ダイス10にて転造されることで緩み止めボルト51の荷重支持部55へと変形される部位であり、壁部小66は、第1段転造部材62の外周面に螺旋状に連続して突設され、第1ダイス10にて転造されることで緩み止めボルト51の弾性変形部56へと変形される部位である。
【0083】
凹部67は、壁部小66と壁部大65との間に凹設され、第1ダイス10にて転造されることで緩み止めボルト51のスリット溝57へと変形される部位であり、嵌合凹部68は、壁部小66と壁部大65との間に凹設され、第1ダイス10のねじ山加工歯12が嵌合されることで第1段転造部材62を案内すると共にねじ部54の谷底へと変形される部位である。
【0084】
なお、図3(c)に示すように、壁部大65の突設高さ(図3(c)上下方向寸法値)は、壁部小66の突設高さ(図3(c)上下方向寸法値)よりも高く設定されると共に、壁部大65の断面と壁部小66の断面とは、略相似形状に構成されている。よって、壁部大65の断面の面積は壁部小66の断面の面積より大きな面積となる。
【0085】
ここで、図5に示すように、第1食付き部11aの転造方向始端(図1右側端)に位置するねじ山加工歯12の山頂部(以下、「第1食い付き始端山頂部」と称す。)と、第2仕上げ部21bの転造方向終端(図1右側端)に位置する嵌合部加工歯22の山頂部(以下、「第2仕上げ終端山頂部」と称す。)とは、転造方向に直交する方向(図5左右方向)において位置を略同一としている。
【0086】
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、嵌合部加工歯22(図2(a)参照)のフランク面22aとそのフランク面22aに対面するスリット加工歯23のフランク面23aとの成す角度θ2と、ねじ山加工歯12(図2(b)参照)のフランク面12aとそのフランク面12aに対面するスリット加工歯23のフランク面23aとの成す角度θ1とは、略同一の角度(θ1≒θ2、本実施の形態では、60°)に設定されている。また、隣接する嵌合部加工歯22の間隔はピッチP1に設定されており、同様に、隣接するねじ山加工歯12の間隔はピッチP1に設定されている。
【0087】
そのため、嵌合部加工歯22により転造された隣接する嵌合凹部68の間隔は、図4(a)に示すように、ねじ山加工歯12の間隔と略同一の間隔にて配設され、その嵌合凹部68の断面形状は、ねじ山加工歯12と略相似形状に構成されている。よって、嵌合凹部68は、ねじ山加工歯12の山頂側の部位に嵌合される。その結果、第1段転造部材62の第1ダイス10に対する位置(転造方向に直交する方向の位置、図4(a)左右方向)のずれを防止して、緩み止めボルト51を精度良く転造することができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、第1段転造部材62の嵌合凹部68にねじ山加工歯12を食い込ませつつ転造を行うことができるので、その分、ねじ山加工歯12による塑性加工量を低減して、ねじ山加工歯12の耐久性の向上を図ることができる。
【0089】
更に、本実施の形態によれば、ねじ山加工歯12による転造の前に、嵌合部加工歯22及びスリット加工歯23によって嵌合凹部68と凹部67とを被転造素材61の外周面に転造する構成であるので、ねじ山加工歯12が嵌合凹部68に食い込むことで凹部67が塞がることを抑制して、緩み止め機能を十分に発揮可能な緩み止めボルト51を確実に製造することができる。
【0090】
例えば、第2転造歯形面21がスリット加工歯23のみを有し、嵌合部加工歯22が省略されている構成であると、凹部67の両側がその凹部67の開口部に連なる平坦面となる。そのため、被転造素材61が第1転造歯形面11を転動して、その外周面にねじ山加工歯12が食い込む際には、その食い込みにより押し退けられた素材が凹部67へ流動して、凹部67が塞がれてしまう。即ち、転造された緩み止めボルト51は、スリット溝57が塞がれているので、緩み止め機能を十分に発揮することができない。
【0091】
これに対し、本実施の形態によれば、凹部67の両側に嵌合凹部68が予め凹設されているので、被転造素材61が第1転造歯形面11を転動して、その嵌合凹部68にねじ山加工歯12が食い込む際には、凹部67の開口部よりも下側(支持面14側)の部位(即ち、嵌合凹部68の谷底)にねじ山加工歯12が食い込むので、そのねじ山加工歯12により押し退けられた素材を盛り上がり易くして、凹部67へ流動することを抑制することができる。よって、ねじ部54が塞がれることを抑制して、緩み止め機能を十分に発揮することができる緩み止めボルト51を転造することができる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、転造方向に対して反対方向(転造方向終端側から転造始端側へ向かう方向、図2(a)紙面手前から奥方向)に向かって嵌合部加工歯22の左側(図2(a)左側)に配設されるスリット加工歯23が転造方向に対して反対方向に向かって嵌合部加工歯22の右側(図2(a)右側)に配設されるスリット加工歯23より嵌合部加工歯22に近接して配設されているので、図4(a)に示すように、ねじ山加工歯12の食い込みにより、被転造素材61の素材が押し退けられる際には、壁部大65が壁部小66よりも大きく盛り上げられる。
【0093】
そのため、図4(c)に示すように、この壁部大65が変形されて形成される荷重支持部55がねじ部54の山頂を形成する。その結果、ねじ部54のフランク面にスリット溝57が形成された緩み止めボルト51が転造される。
【0094】
ここで、例えば、支持面14,24側(図5下側)から第1転造歯形面11及び第2転造歯形面21側(図5上側)へ向かって、第1食い付き始端山頂部が、第2仕上げ終端山頂部より突出している構成とした場合には、第1段転造部材62が第1食付き部11aへ転動する際に、第1食い付き始端山頂部に衝突する。よって、ピッチ誤差が大きくなり、転造精度が悪化するという不具合が生じる。
【0095】
これに対して、本実施の形態では、図5に示すように、第1転造歯形面11及び第2転造歯形面21側(図5上側)から支持面14,24側(請求項4に記載の「歯底側」に対応する。)(図5下側)へ向かって、第1食い付き始端山頂部が第2仕上げ終端山頂部より下がっている。
【0096】
即ち、図5に示すように、第2仕上げ終端山頂部と支持面24(図1参照)との間の寸法値は高さ寸法H4とされており、第1食い付き始端山頂部と支持面14(図1参照)との間の寸法値は、高さ寸法H4より小さな寸法値である高さ寸法H3とされている。
【0097】
よって、一対の転造ダイス1(図1参照)にて第1段転造部材62(図4(a)参照)が狭持された状態において、対向して配設される一対の第1食い付き始端山頂部の間隔が、対向して配設される一対の第2仕上げ終端山頂部の間隔より広くなるので、第1段転造部材62が第1食付き部11aへ転動する際に第1食い付き始端山頂部に衝突することを防止することができる。その結果、ピッチ誤差を小さくすることができるので、緩み止めボルト51の転造精度を確保することができる。
【0098】
また、同様に、第1段転造部材62が第1食付き部11aへ転動する際に第1食い付き始端山頂部に衝突することを防止することができるので、衝突による第1ダイス10の摩滅を防止して第1ダイス10の寿命を延長することができる。
【0099】
また、第2ダイス20から排出された第1段転造部材62が第1食付き部11a上を転動されて、図4(b)に示すように、第1段転造部材62の外周面(壁部大65、壁部小66及び凹部67)が変形されて第1段転造中間部材62aが転造される。なお、第1段転造中間部材62aは、第1食付き部11aにて転造されている途中の状態の部材である。
【0100】
そして、第1食付き部11aの転造方向終端(図1(a)左側端)まで、第1段転造中間部材62aが転動され、図4(c)に示すように、緩み止めボルト51が転造される。その緩み止めボルト51は、第1仕上げ部11b上を転動され、表面が滑らかに仕上げられた後に第1逃げ部11c上を転動されて、第2ダイス20から排出される。
【0101】
上述したように、本実施の形態によれば、第2転造歯形面21にスリット加工歯23を設けると共に、第2転造歯形面21を第1転造歯形面11よりも転造方向始端側(請求項1に記載の「上流側」に対応する。)に配設する構成であるので、第1転造歯形面11のねじ山加工歯12によりねじ部54を転造する前に、被転造素材61を転造して外周面に凹部67が凹設された第1段転造部材62を予め転造しておくことができる。
【0102】
その結果、第1転造歯形面11のねじ山加工歯12が第1段転造部材62の凹部67に食い込む際に、凹部67の両側の壁部大65及び壁部小66から余肉を盛り上げて、スリット溝57を有する緩み止めボルト51を転造することができる。即ち、緩み止め機能を発揮する緩み止めボルト51を確実かつ経済的に転造することができる。
【0103】
次いで、図6を参照して、緩み止めボルト51について説明する。図6(a)は、緩み止めボルト51の正面図であり、図6(b)は、緩み止めボルト51の部分拡大図であり、図6(c)は、ナットNに螺合された緩み止めボルト51の部分断面図である。
【0104】
なお、図6(b)及び図6(c)に示す軸部53は、紙面に向かって左側に頭部52が配設された状態を図示している。また、図6(b)及び図6(c)では、理解を容易とするために、荷重支持部55、弾性変形部56及びスリット溝57の形状を誇張して図示している。
【0105】
緩み止めボルト51は、上述したように、一対の転造ダイス1(図1(a)及び図1(b)参照)により転造される右ねじの転造ボルトであり、図6(a)に示すように、頭部52と軸部53とを備えている。その軸部53の外周面には、ねじ部54がピッチP1の間隔で連続して螺旋状に刻設されている。
【0106】
即ち、緩み止めボルト51は、頭部52側(図6(a)左側)から軸部53側(図6(a)右側)に向かって時計周りに回転されると、頭部52側(図6(a)左側)から軸部53側(図6(a)右側)に螺進する。
【0107】
ねじ部54は、図6(b)に示すように、ねじ部54の山頂部を形成する荷重支持部55と、その荷重支持部55に対して頭部52と反対側(図6(a)右側)に配設される弾性変形部56と、その弾性変形部56と荷重支持部55との間に凹設されるスリット溝57とを備えており、これら荷重支持部55、弾性変形部56及びスリット溝57は、軸部53の外周面上に連続して螺旋状に刻設されると共に一体に構成されている。即ち、スリット溝57は、ねじ部54のフランク面に凹設されている。
【0108】
上述したように、緩み止めボルト51のスリット溝57は、凹部67を有する第1段転造部材62を第1ダイス10のねじ山加工歯12で両側(荷重支持部55及び弾性変形部56の両側)から挟み込まれることで転造されているので、弾性変形部56は、弾性変形された部位を有しており復元力が作用している。そのため、第1ダイス10から排出された緩み止めボルト51は、図6(b)に示すように、一対の第1ダイス10に狭持されている状態(図4(c)参照)と比較して、弾性変形部56の形状が復元されスリット溝57が開いた形状に構成される。
【0109】
ここで、本実施の形態によれば、スリット加工歯23は、一側(転造時に頭部52が配設される側、図1(a)上側および図2(a)左側)の嵌合部加工歯22と他側(転造時に頭部52が配設される側と反対側、図1(a)下側および図2(a)右側)の嵌合部加工歯22との間の中間位置よりも他側の嵌合部加工歯22に近接する位置に配設されているので、スリット溝57の形成位置を、転造されたねじ部54の山頂部から他側へずらすことができる。
【0110】
そのため、図6(c)に示すように、緩み止めボルト51のねじ部54をナットNと締結した際には、荷重支持部55がナットNのフランク面Naの内、頭部52側と反対側に向いたフランク面Na1に押し付けられ、荷重支持部55がナットNのフランク面Na1に押し付けられることで生じる隙間(バックラッシュ)分、弾性変形部56が変形してフランク面Na1に対面するフランク面Na2に当接される。なお、ナットNのフランク面Na1,Na2は、ナットNの軸心を含んだ断面における断面線が略直線状に構成され、ねじ山加工歯12のフランク面12aに対応した形状とされている。
【0111】
即ち、ナットNのフランク面Na1,Na2と緩み止めボルト51のねじ部54との間に隙間(バックラッシュ)が発生することを抑制して、緩み止め機能を発揮させることができる。よって、緩み止め機能を十分に発揮できる緩み止めボルト51を転造することができる。
【0112】
更に、本実施の形態によれば、スリット加工歯23は、他方の嵌合部加工歯22から距離P3だけ離間した位置に配設されているので、スリット溝57の形成位置が、転造されたねじ部54の谷底側に近づき過ぎることを抑制して、緩み止め機能を十分に発揮できる緩み止めボルト51を転造することができる。
【0113】
即ち、スリット溝57の形成される位置がねじ部54の谷底側に近すぎると、緩み止めボルト51がナットNに螺合された際、スリット溝57が狭まる方向への弾性変形部56の弾性変形量が不足して、弾性変形部56の弾性復元力によりナットNのフランク面Na1,Na2を押圧する効果が弱くなる。
【0114】
これに対し、本実施の形態では、上述のようにスリット加工歯23の位置を設定したので、スリット溝57の形成位置を適正とすることができる。よって、同じ締結荷重(軸力)であっても、スリット溝57が狭まる方向への弾性変形部56の弾性変形量を確保して、その弾性復元力によって、ナットNのフランク面Na1,Na2を強固に押圧することができる。
【0115】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0116】
例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例を示すものであり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0117】
上記実施の形態では、スリット加工歯23及び嵌合部加工歯22の高さが略同一の寸法値として設定される場合を説明したが、スリット加工歯23の高さを嵌合部加工歯22の高さの約0.8倍から約1.2倍の範囲の値に設定することが好ましい。
【0118】
例えば、スリット加工歯23の高さを嵌合部加工歯22の高さの約0.8倍未満の値に設定した場合には、上述したように、凹部67(図3(c)参照)の深さが嵌合凹部68(図3(c)参照)の深さよりも浅くなり、嵌合凹部68にねじ山加工歯12が食い込む際に、押し退けられた素材が凹部67へ流動し易くなるため、凹部67が塞がれてしまう。その結果、転造された緩み止めボルト51の弾性変形部56(図6(c)参照)は、弾性変形を十分に確保できないため、緩み止め機能を十分に発揮することができないという不具合がある。
【0119】
また、例えば、スリット加工歯23の高さを嵌合部加工歯22の高さの約1.2倍より大きな値に設定した場合には、上述したように、凹部67(図3(c)参照)の深さが嵌合凹部68(図3(c)参照)の深さよりも深くなり、嵌合凹部68にねじ山加工歯が食い込む際に、凹部67に素材が流動し易くなるため、余肉の盛り上がりと共に、凹部67の開口側が拡開してしまう。その結果、転造された緩み止めボルト51は、スリット溝57が拡開されている分、ナットNに螺合する際の抵抗が大きくなり、締結作業性が困難となるという不具合がある。
【0120】
これに対して、本実施の形態では、スリット加工歯23の高さを嵌合部加工歯22の高さの約0.8倍から約1.2倍の範囲の値に設定するので、スリット溝57(図6(c)参照)の幅が適正となり、上述した不具合が解消されて、優れた緩み止め機能を発揮することができる。
【0121】
さらに、スリット加工歯23の高さを嵌合部加工歯22の高さの約0.9倍から約1.1倍の範囲の値に設定するのが好ましい。この場合、さらに、スリット溝57(図6(c)参照)の幅を適正として、優れた緩み止め機能を発揮することができる。
【0122】
また、上記実施の形態では、ねじ山加工歯12が略平坦面状に形成されるフランク面12aを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、フランク面12aの形状を曲面状に盛り上げて構成しても良い。
【0123】
即ち、荷重支持部55のフランク面を転造するフランク面12aを曲面状に盛り上げて構成し、荷重支持部55のフランク面を曲面状に凹ませた形状に転造しても良い。この場合、ナットNのフランク面Na1が略平坦に構成されているので、そのフランク面Na1に曲面状に構成されるフランク面の両端のみが当接されるので、当接面積が減少する。
【0124】
よって、締結力(ボルトの軸力)が同一であっても当接圧力を大きくして、緩み止めボルト51の緩み止め効果を向上させることができる。また、同様に、弾性変形部56の弾性力が同一であっても当接圧力を大きくして、緩み止めボルト51の緩み止め効果を向上させることができる。
【0125】
また、上記実施の形態では、第1ダイス10と第2ダイス20とを連接する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1ダイス10と第2ダイス20とを一体に構成しても良い。
【0126】
この場合、第1ダイス10と第2ダイス20とを組み合わせる必要がなくなるので、第1ダイス10と第2ダイス20との組み付け位置のばらつきを抑えることができる。よって、転造ダイス1により転造される緩み止めボルト51の転造精度のばらつきを抑えて、緩み止めボルト51の寸法精度を安定させることができる。
【0127】
また、上記実施の形態では、一対の第1ダイス10がそれぞれ第1逃げ部11cを備える場合を説明したが、一対の第1ダイス10の内、一方の第1ダイス10の第1逃げ部11cを省略して構成することは当然可能である。
【0128】
また、上記実施の形態では、一対の第2ダイス20がそれぞれ第2逃げ部21cを備える場合を説明したが、一対の第2ダイス20内、一方の第2ダイス20の第2逃げ部21cを省略して構成することは当然可能である。
【0129】
また、上記実施の形態では、距離P3がピッチP1の約0.37倍(約0.13/0.35倍、約2.97/8倍)の値にて構成される場合を説明したが、距離P3をピッチP1の約0.125倍(約1/8倍)倍以上かつ約0.5倍までの範囲の値に設定するのが好ましい(例えば、P1=約0.35mm、約0.04mm<P3<約0.175mm)。
【0130】
例えば、距離P3をピッチP1の約0.125倍(約1/8倍)未満の値に設定した場合には、スリット溝57がねじ部54の歯底に近接して形成されるので、弾性変形部56の弾性変形量を十分に確保することができず、緩み止め効果が十分に発揮されないという不具合がある。
【0131】
また、例えば、距離P3をピッチP1の約0.5倍より大きな値に設定した場合には、弾性変形部56がねじ部54の山頂部を構成すると共にスリット溝57がねじ部54の頭部52に対面するフランク面に形成されるので、緩み止め効果が発揮されないという不具合がある。即ち、緩み止めボルト51がナットNに締結されると、緩み止めボルト51の螺進によって、ねじ部54の山頂部を構成する弾性変形部56がナットNのフランク面Na1に押圧され、スリット溝57と荷重支持部55とをナットNのフランク面Na1と弾性変形部56との間で狭圧する。そのため、ナットNのフランク面Na2と弾性変形部56との間に隙間(バックラッシュ)が生じて緩み止め効果が発揮されないのである。
【0132】
これに対し、本実施の形態では、距離P3をピッチP1の約0.125倍(約1/8倍)以上約0.5倍までの範囲の値に設定しているので、上述した不具合が解消されて、緩み止め効果が十分に発揮することができる。
【0133】
さらに、距離P3をピッチP1の約0.31倍以上かつ約0.43倍までの範囲の値に設定するのが好ましい(例えば、P1=約0.35mm、約0.11mm<P3<約0.15mm)。この場合、スリット溝57がねじ部54の山頂部近くに形成されるので、弾性変形部56の弾性変形量を十分に確保して、緩み止め効果を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一実施の形態における転造ダイスを説明する図であり、(a)は、転造ダイス1の正面図であり、(b)は、転造ダイスの側面図である。
【図2】(a)は、図1(a)のIIa−IIa線における第2仕上げ部の部分拡大断面図であり、(b)は、図1(a)のIIb−IIb線における第1仕上げ部の部分拡大断面図である。
【図3】(a)から(c)は、図1(a)のIIIa−IIIa線から図1(a)のIIIc−IIIc線における第2転造歯形面の部分拡大断面図である。
【図4】(a)から(c)は、図1(a)のIVa−IVa線から図1(a)のIVc−IVc線における第1転造歯形面の部分拡大断面図である。
【図5】図4(a)のVで示した第1食付き部の部分拡大図である。
【図6】(a)は、緩み止めボルトの正面図であり、(b)は、緩み止めボルトの部分拡大図であり、(c)は、ナットに螺合された緩み止めボルトの部分断面図である。
【符号の説明】
【0135】
1 転造ダイス
10 第1ダイス
11 第1転造歯形面
11a 第1食付き部
11b 第1仕上げ部
12 ねじ山加工歯
20 第2ダイス
21 第2転造歯形面
21a 第2食付き部
21b 第2仕上げ部
22 嵌合部加工歯
23 スリット加工歯
51 緩み止めボルト(おねじ)
57 スリット溝(スリット)
61 被転造素材
P1 ピッチ
L1 長さ(第1食付き部および第1仕上げ部の転造方向長さ)
L2 長さ(第2食付き部および第2仕上げ部の転造方向長さ)
N ナット(めねじ)
Na2 フランク面(めねじのフランク面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランク面にスリットが延設され、めねじに螺合されると前記スリットが狭まる方向へ弾性変形し、その弾性復元力により前記めねじのフランク面を圧接することで緩み止め機能を発揮するおねじを、被転造素材の外周面に転造する転造工具であって、
第1ダイスと、第2ダイスとを備え、
前記第1ダイスは、所定のピッチで列設されると共に前記おねじのねじ山に対応する山形形状に形成される複数のねじ山加工歯を有する第1転造歯形面を備え、
前記第2ダイスは、前記ねじ山加工歯のピッチと同じピッチで列設される複数の嵌合部加工歯と、その嵌合部加工歯に並設される少なくとも1のスリット加工歯とを有する第2転造歯形面を備え、
前記嵌合部加工歯は、前記ねじ山加工歯よりも歯底から歯先までの高さが低くされ、
前記スリット加工歯は、隣接する一対の嵌合部加工歯の内の一方の嵌合部加工歯よりも他方の嵌合部加工歯に近接する位置に配設され、
前記第1ダイスと第2ダイスとが前記ねじ山加工歯の始端と嵌合部加工歯の終端とを一致させた状態で転造方向に直列に配設されると共に、前記第2ダイスが第1ダイスよりも転造方向上流側に配設されることを特徴とする転造工具。
【請求項2】
前記スリット加工歯は、前記一方の嵌合部加工歯と前記他方の嵌合部加工歯との間の中間位置よりも前記他方の嵌合部加工歯に近接し、かつ、前記他方の嵌合部加工歯から前記ピッチの1/8以上離間する位置に配設されていることを特徴とする請求項1記載の転造工具。
【請求項3】
前記第1ダイスの第1転造歯形面は、転造方向上流側へ向けて下降傾斜される第1食付き部と、その第1食付き部に連設される第1仕上げ部とを備え、
前記第2転造歯形面の第2転造歯形面は、その転造方向始端側に位置する第2食付き部と、その第2食付き部に連設される第2仕上げ部とを備え、
前記第2食付き部および第2仕上げ部の転造方向長さが、前記第1食付き部および第1仕上げ部の転造方向長さよりも短くされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の転造工具。
【請求項4】
前記第1食付き部の転造方向始端におけるねじ山加工歯の歯先は、前記第2仕上げ部の嵌合部加工歯の歯先面よりも歯底側に後退して位置していることを特徴とする請求項3記載の転造工具。
【請求項5】
前記嵌合部加工歯とスリット加工歯とが同じ山形形状に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の転造工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−257482(P2009−257482A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107503(P2008−107503)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)