転造平ダイス
【課題】ねじの転造後に、転造盤の固定面から容易に取り外すことができる転造平ダイスを提供する。
【解決手段】転造平ダイス1の押さえ面6にはエア注入口12が設けられている。転造盤に設置されたホルダの水平保持面に当接する底面には、複数のエア噴出口16,17が設けられている。さらにホルダの垂直保持面に密着される右側面4には、複数のエア噴出口15が設けられている。エア注入口12と、エア噴出口15,16,17との間は、第1流路20、第2流路21、第3流路22及び第4流路23を介して連通している。このような転造平ダイス1がホルダの保持面に密着して貼り付いてしまった場合、エア注入口12に圧縮エアを吹き込むことで、エア噴出口15,16,17から圧縮エアを勢いよく噴出させることができる。これにより転造平ダイス1をホルダから容易に取り外すことができる。
【解決手段】転造平ダイス1の押さえ面6にはエア注入口12が設けられている。転造盤に設置されたホルダの水平保持面に当接する底面には、複数のエア噴出口16,17が設けられている。さらにホルダの垂直保持面に密着される右側面4には、複数のエア噴出口15が設けられている。エア注入口12と、エア噴出口15,16,17との間は、第1流路20、第2流路21、第3流路22及び第4流路23を介して連通している。このような転造平ダイス1がホルダの保持面に密着して貼り付いてしまった場合、エア注入口12に圧縮エアを吹き込むことで、エア噴出口15,16,17から圧縮エアを勢いよく噴出させることができる。これにより転造平ダイス1をホルダから容易に取り外すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造盤に着脱可能に取り付けられる転造平ダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属の可塑性を利用して、二個又は数個の組合せからなる転造ダイスの間でワークを転がしながらねじ山を塑性加工する方法が知られている。この方法を転造という。転造は、切削加工よりも加工速度が速く、ねじ精度が良い上に、加工硬化によってねじ強度が向上する等の利点がある。例えば、一対の平ダイス間にワークを保持しつつ、各平ダイスを相互に反対方向に移動させてねじを転造する転造盤が知られている(例えば、特許文献1参照)。この転造盤には、一対のホルダ(固定面)が設置され、それらホルダに対して一対の平ダイスがワークの回転中心に対して互いに点対称となるように各々固定される。転造盤に固定する平ダイスとして、例えば、スプラインと溝部とを同時に転造加工することのできる転造ダイスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−305527号公報
【特許文献2】特開平5−253633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の転造盤でねじを繰り返し転造すると、平ダイスが転造盤のホルダに密着して貼り付いてしまい、取り外すのに時間がかかるという問題点があった。また、ホルダから平ダイスを無理に取り外そうとして、工具等で平ダイスやホルダを傷つけてしまうという問題点もあった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ねじの転造後に、転造盤の固定面から容易に取り外すことができる転造平ダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の転造平ダイスは、転造盤に着脱可能に固定される転造平ダイスであって、前記転造盤の固定面とは当接しない非当接面に設けられた第1の開口と、前記固定面に当接する当接面に設けられた少なくとも1個の第2の開口と、前記第1の開口と前記第2の開口とを連通させる流路とを備えている。
【0006】
また、請求項2に係る発明の転造平ダイスは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記第2の開口は、前記当接面に沿って設けられた溝に連通させている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明の転造平ダイスでは、転造盤の固定面とは当接しない非当接面に第1の開口が設けられている。固定面に当接する当接面には、少なくとも1個の第2の開口が設けられている。第1の開口と第2の開口との間は流路で連通している。このような転造平ダイスが転造盤の固定面に密着して貼り付いてしまった場合、例えば、第1の開口に流動体(例えば、空気や液体等)を勢いよく流し込む。すると、第1の開口に流し込まれた流動体は流路を介して第2の開口から流出しようとする。このとき、流動体は転造盤の固定面を押し離すように作用するため、転造平ダイスを浮かせることができる。従って、固定面に貼り付いた転造平ダイスを容易に取り外すことができる。
【0008】
また、請求項2に係る発明の転造平ダイスでは、請求項1に記載の発明の効果に加え、第2の開口から流出する流動体は溝に沿って流れるので、第2の開口から噴出する流動体を当接面に沿って行き渡らせることができる。従って、転造平ダイスの当接面を固定面からバランス良く浮かせることができるので、固定面に貼り付いた転造平ダイスを容易に取り外すことができる。また、溝は当接面を削ることによって形成されるため、第2の開口を掘削する場合に比べて廃棄する部分が少ない。従って、転造平ダイスの強度を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態である転造平ダイス1について、図面を参照して説明する。図1は、転造平ダイス1の斜視図であり、図2は、転造平ダイス1の平面図であり、図3は、転造平ダイス1の正面図であり、図4は、転造平ダイス1の右側面図であり、図5は、転造平ダイス1の左側面図であり、図6は、転造平ダイス1の底面図であり、図7は、ホルダ40の斜視図であり、図8は、ホルダ40の平面図であり、図9は、転造平ダイス1が固定されたホルダ40の平面図であり、図10は、転造平ダイス1が固定されたホルダ40の正面図であり、図11は、図9に示すA−A線矢視方向断面図である。なお、図1に示す転造平ダイス1は、軸状のワークの外周面におねじを転造する工具である。
【0010】
はじめに、転造平ダイス1の構造について説明する。図1に示すように、転造平ダイス1は、先端側が鋭角に傾斜する略直方体状のダイス本体2を備えている。このダイス本体2は、合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料によって形成されている。ダイス本体2は、図1乃至図3に示すように、上面に形成された歯形面3、右側面4、左側面5(図2参照)、正面に形成された押さえ面6、背面7(図2参照)および底面8(図3参照)を備えている。
【0011】
まず、歯形面3について説明する。図1,図2に示すように、歯形面3には、ダイス本体2の幅方向に延設された複数のねじ山10が刻設されている。歯形面3は、図4に示すように、ダイス本体2の先端側から後端側に向かって3つの部位に分けられ、「食付部」である傾斜部101と、「仕上げ部」である平坦部102と、「逃げ部」である傾斜部103とからなる。
【0012】
次に、押さえ面6について説明する。図1,図4,図5に示すように、押さえ面6は、前方に向かって斜め下方に傾斜している。押さえ面6を正面から見た場合の右下部分には、圧縮エアを外部から吹き込むための正面視円形状のエア注入口12(図1,図3参照)が設けられている。このエア注入口12の径は、例えば、φ6に調整されている。エア注入口12には、ダイス本体2の長手方向に沿って略水平に延設された第1流路20の一端部が連通している。この第1流路20の径は、エア注入口12と同径に調整されている。第1流路20は、エア注入口12からダイス本体2の約1/3の長さに相当する位置まで延設されているが、ダイス本体2の後端側まで延設してもよい。このような押さえ面6には、転造平ダイス1を転造盤(図示外)のホルダ40(図9,10参照)に固定する際に、後述する上押さえブロック70(図10参照)が上側から当接するようになっている。
【0013】
次に、右側面4について説明する。図1,図4に示すように、右側面4の先端側の下部には、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるための4つのエア噴出口15が水平方向に所定間隔を空けて列設されている。このエア噴出口15の径は、エア注入口12よりも小さく調整され、例えば、φ4に調整されている。各エア噴出口15には、ダイス本体2の幅方向に沿って略水平に延設された第2流路21の一端部が各々連通している。この第2流路21の径は、エア噴出口15と同径に調整されている。これら4本の第2流路21は、左側面5の近傍まで各々延設されると共に、第1流路20に対して直交して各々連通している。従って、エア注入口12と、4つのエア噴出口15との間は、第1流路20及び第2流路21を介して各々連通している。このような右側面4は、転造平ダイス1を転造盤(図示外)のホルダ40(図7参照)に固定する際に、ホルダ40の垂直保持面45に当接するようになっている。
【0014】
次に、底面8について説明する。図6に示すように、底面8の先端側であって右側面4側(図6の上側)には、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるための4つのエア噴出口16が、ダイス本体2の長手方向に沿って所定間隔を空けて列設されている。他方、左側面5側にも、エア噴出口16と同様の4つのエア噴出口17が、ダイス本体2の長手方向に沿って所定間隔を空けて列設されている。つまり、4つのエア噴出口16と、4つのエア噴出口17とは、ダイス本体2の長手方向において同位置にそれぞれ配置されている。
【0015】
そして、各エア噴出口16には、垂直上方に延設された第3流路22の下端部が各々連通している。エア噴出口16の径は、エア注入口12よりも小さく調整され、例えば、φ4に調整されている。これら4本の第3流路22の各上端部は、第1流路20に対して直交して連通している。従って、エア注入口12と、4つのエア噴出口16との間は、第1流路20及び第3流路22を介して各々連通している。他方、各エア噴出口17には、底面8から垂直上方に延設された第4流路23の下端部が各々連通している。エア噴出口17の径は、エア注入口12よりも小さく調整され、例えば、φ4に調整されている。これら4本の第4流路23の各上端部は、4本の第2流路21に対して直交して各々連通している。従って、エア注入口12と、4つのエア噴出口17との間は、第1流路20、第2流路21及び第4流路23を介して各々連通している。
【0016】
このように、上記構造からなる転造平ダイス1では、ダイス本体2に設けられたエア注入口12と、エア噴出口15,16,17との間が、第1流路20、第2流路21、第3流路22及び第4流路23を介して各々連通している。従って、エア注入口12に圧縮エアを吹き込むことによって、図3に示すように、4つのエア噴出口15、4つのエア噴出口16及び4つのエア噴出口17から圧縮エアを勢いよく噴出させることができる。また、エア注入口12の径に比べて、エア噴出口15,16,17の径が小さく調整されていることによって、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアがエア噴出口15,16,17に配分よく分流される。そして、分流された圧縮エアを勢いよく噴出させることができる効果がある。
【0017】
次に、転造平ダイス1を転造盤に保持させるためのホルダ40について説明する 図7乃至図9に示すように、ホルダ40は、合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料によって形成された側面視L字型のブロック体である。ホルダ40は、平面視長方形の板である台座部41と、当該台座部41の幅方向一端部から垂直上方に立設された板状の垂直保持部42とから構成されている。台座部41の上面には、転造平ダイス1の底面8が密着して当接する水平保持面44が形成されている。他方、垂直保持部42の内面には、転造平ダイス1の右側面4が密着して当接する垂直保持面45が形成されている。即ち、水平保持面44及び垂直保持面45からなるL字型の保持面に、転造平ダイス1を密着させることによって確実に保持するのである。
【0018】
また、ホルダ40の正面46には、3つの固定穴52が水平方向に所定間隔を空けて列設されている。固定穴52の内側にはめねじが形成されている。L字型の右側面47の下部には、2つの固定穴53(図8参照)が横方向に並んで設けられている。固定穴53の内側にはめねじが形成されている。L字型の左側面48の下部には、2つの固定穴54(図8参照)が横方向に並んで設けられている。固定穴51の内側にはめねじが形成されている。さらに、水平保持面44の右押さえブロック61側であって、垂直保持部42の垂直保持面45の近傍には、固定穴51が設けられている。固定穴51の内側にはめねじが形成されている。
【0019】
そして、上記構成からなるホルダ40の左右両側には、右押さえブロック61と、左押さえブロック62とが着脱可能に各々固定される。右押さえブロック61は板状に形成され、その下部には厚み方向に貫通する2つの貫通穴65(図8参照)が設けられている。これら貫通穴65の位置は、ホルダ40の右側面47に設けられた2つの固定穴53の位置に各々対応している。他方、左押さえブロック62も、右押さえブロック61と同様に板状に形成され、その下部には厚み方向に貫通する2つの貫通穴66(図8参照)が設けられている。これら貫通穴66の位置は、ホルダ40の左側面48に設けられた2つの固定穴54の位置に各々対応している。
【0020】
次に、ホルダ40への転造平ダイス1の固定方法について説明する。まず、図9、図10に示すように、ホルダ40の右側面47に右押さえブロック61を密着して当接させ、固定ねじ67(図9参照)を貫通穴65に挿入し、固定穴53に締め付ける。こうして、右側面47に右押さえブロック61が固定される。他方、ホルダ40の左側面48に左押さえブロック62を密着して当接させ、固定ねじ68(図9参照)を貫通穴66に挿入し、固定穴54に締め付ける。こうして、左側面48に左押さえブロック62が固定される。
【0021】
次いで、図9乃至図11に示すように、ホルダ40の水平保持面44に転造平ダイス1を載せる。このとき、転造平ダイス1の先端側が右押さえブロック61側に向くように載せる。さらに、転造平ダイス1の底面8を水平保持面44に密着させ、転造平ダイス1の右側面4を垂直保持面45に密着させ、転造平ダイス1の背面7を左押さえブロック62の内面に密着させる。そして、転造平ダイス1の押さえ面6と、右押さえブロック61の内面との間に側面視台形状の上押さえブロック70をはめ込む。次いで、その上押さえブロック70に設けられた貫通穴(図示外)に固定ねじ75を挿入し、その下端側をホルダ40の水平保持面44に設けられた固定穴51(図8参照)に締め付ける。これにより、転造平ダイス1の押さえ面6が、上押さえブロック70によって上側から押さえられるので、転造平ダイス1は、下向き及び左押さえブロック62側に向かって付勢される。
【0022】
次いで、図10に示すように、ホルダ40の正面46と、転造平ダイス1の左側面5との間に、3枚の保持板80を各々固定する。この保持板80は長方形状の板部材であり、その長手方向両端にはネジ穴(図示外)が設けられている。そして、保持板80の下端部に設けられたネジ穴を介して、固定ねじ86をホルダ40の正面に設けられた固定穴52に締め付ける。一方、保持板80の上端部に設けられたネジ穴に固定ネジ85を締め付けると共に、その固定ネジ85の先端を転造平ダイス1の左側面5に押し当てる。こうして、転造平ダイス1がホルダ40に対して強固に固定される。そして、ホルダ40に固定された転造平ダイス1と、他方のホルダ(図示外)に固定された転造平ダイス(図示外)との間にワークが保持され、互いに反対方向に移動させることによってねじが転造される。
【0023】
次に、転造平ダイス1をホルダ40から取り外す方法について説明する。図10に示すホルダ40から転造平ダイス1を取り外す場合、ホルダ40から上押さえブロック70、右押さえブロック61、左押さえブロック62および3枚の保持板80を順次取り外す。ところが、転造盤でねじを繰り返し転造すると、転造平ダイス1がホルダ40に密着して貼り付いてしまうことがある。この場合、工具等を使ってホルダ40から転造平ダイス1を無理に取り外そうとすると、転造平ダイス1やホルダ40を傷つけてしまう。
【0024】
そこで、ホルダ40に貼り付いた転造平ダイス1のエア注入口12に対して、圧縮エアを噴出するエアガン(図示外)のノズルを差し込み、圧縮エアを瞬時に吹き込む。すると、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアは、ダイス本体2の内部に設けられた第1流路20、第2流路21、第3流路22、第4流路23に流れる。そして、垂直保持面45に密着する右側面4に設けられた各エア噴出口15から圧縮エアが勢いよく噴出する。他方、水平保持面44に密着する底面8に設けられた各エア噴出口16,17から圧縮エアが勢いよく噴出する。これにより、右側面4は垂直保持面45から強制的に引き離され、底面8も水平保持面44から強制的に引き離されるので、転造平ダイス1がホルダ40に対して浮くので、ホルダ40から簡単に取り外すことができる。
【0025】
なお、上記説明において、図1に示すエア注入口12が本発明の「第1の開口」に相当し、エア噴出口15,16,17が本発明の「第2の開口」に相当する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の転造平ダイス1は、転造盤のホルダ40に固定して使用されるものである。転造平ダイス1には、圧縮エアを内部に吹き込むためのエア注入口12が設けられている。そして、ホルダ40の水平保持面44に密着される底面8には、内部に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるためのエア噴出口16,17が設けられている。さらに、ホルダ40の垂直保持面45に密着される右側面4には、内部に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるためのエア噴出口15が設けられている。そして、エア注入口12と、エア噴出口15,16,17との間は、第1流路20、第2流路21、第3流路22、第4流路23を介して連通している。ここで、転造盤でねじを繰り返し転造した後で、転造平ダイス1がホルダ40に密着して貼り付いてしまった場合、エア注入口12に圧縮エアを吹き込む。これにより、エア噴出口15,16,17から勢いよく噴出させることができるので、転造平ダイス1をホルダ40から簡単に取り外すことができる。
【0027】
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、圧縮エアを噴出させるエア噴出口の数や形状は上記実施形態に限定されない。そこで、エア噴出口の数や形状を変更した第1変形例及び第2変形例について、図12乃至図15を参照して説明する。図12は、第1変形例である転造平ダイス100の右側面図であり、図13は、第1変形例である転造平ダイス100の正面図であり、図14は、第2変形例である転造平ダイス200の底面図であり、図15は、図14に示すB−B線矢視方向断面図である。
【0028】
まず、第1変形例について説明する。図12に示す第1変形例である転造平ダイス100は、押さえ面6に設けられた1つのエア注入口120に対し、エア噴出口160を底面8に1つだけ備えている。図12,図13に示すように、エア注入口120とエア噴出口160との間は、第1流路121、第2流路122によって連通している。従って、エア注入口120から圧縮エアを吹き込むことによって、第1流路121、第2流路122を介して、エア噴出口160から圧縮エアを噴出させることができる。よって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0029】
次に、第2変形例について説明する。図14に示す第2変形例である転造平ダイス200は、押さえ面6に設けられた1つのエア注入口220に対し、底面8側から見た形状がコの字形であるエア噴出溝260を底面8に備えている。具体的には、エア注入口220には、水平方向に延設された第1流路221の一端部が連通し、当該第1流路221の他端部には、垂直方向に延設された第2流路(図示外)の上端部が直交して連通している。さらに、その第2流路の下端部に設けられた開口222に対して、底面8に設けられたエア噴出溝260の長手方向中間部が連通している。そして、エア噴出溝260は開口222に連通する位置から、左右両側に分かれて屈曲すると共に後端側に向かって各々延設されている。従って、エア注入口220から吹き込まれた圧縮エアは、第1流路221及び第2流路を流れ、開口222を介してエア噴出溝260から勢いよく噴出する。よって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、エア噴出溝260のような溝形状は、転造平ダイス1のエア噴出口16,17を複数堀削する場合に比べて加工し易い。さらに、底面8を削るだけでよいので、底面8の後端側までエア噴出溝260を伸ばすことも可能である。この場合、転造平ダイス200全体をホルダ40から浮かせることができる。また、エア噴出溝260は、上記実施形態のエア噴出口15,16,17に比べて、転造平ダイス1の内部に穴を空けないので、転造平ダイスの強度を保持できる。
【0031】
また、上記実施形態では、エア注入口12に圧縮エアを吹き込むが、流動体であればよく、例えば、液体でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】転造平ダイス1の斜視図である。
【図2】転造平ダイス1の平面図である。
【図3】転造平ダイス1の正面図である。
【図4】転造平ダイス1の右側面図である。
【図5】転造平ダイス1の左側面図である。
【図6】転造平ダイス1の底面図である。
【図7】ホルダ40の斜視図である。
【図8】ホルダ40の平面図である。
【図9】転造平ダイス1が固定されたホルダ40の平面図である。
【図10】転造平ダイス1が固定されたホルダ40の正面図である。
【図11】図9に示すA−A線矢視方向断面図である。
【図12】変形例である転造平ダイス100の右側面図である。
【図13】変形例である転造平ダイス100の正面図である。
【図14】変形例である転造平ダイス200の底面図である。
【図15】図14に示すB−B線矢視方向断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 転造平ダイス
2 ダイス本体
4 右側面
5 左側面
6 押さえ面
8 底面
12 エア注入口
15 エア噴出口
16 エア噴出口
17 エア噴出口
20 第1流路
21 第2流路
22 第3流路
23 第4流路
40 ホルダ
44 水平保持面
45 垂直保持面
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造盤に着脱可能に取り付けられる転造平ダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属の可塑性を利用して、二個又は数個の組合せからなる転造ダイスの間でワークを転がしながらねじ山を塑性加工する方法が知られている。この方法を転造という。転造は、切削加工よりも加工速度が速く、ねじ精度が良い上に、加工硬化によってねじ強度が向上する等の利点がある。例えば、一対の平ダイス間にワークを保持しつつ、各平ダイスを相互に反対方向に移動させてねじを転造する転造盤が知られている(例えば、特許文献1参照)。この転造盤には、一対のホルダ(固定面)が設置され、それらホルダに対して一対の平ダイスがワークの回転中心に対して互いに点対称となるように各々固定される。転造盤に固定する平ダイスとして、例えば、スプラインと溝部とを同時に転造加工することのできる転造ダイスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−305527号公報
【特許文献2】特開平5−253633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の転造盤でねじを繰り返し転造すると、平ダイスが転造盤のホルダに密着して貼り付いてしまい、取り外すのに時間がかかるという問題点があった。また、ホルダから平ダイスを無理に取り外そうとして、工具等で平ダイスやホルダを傷つけてしまうという問題点もあった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ねじの転造後に、転造盤の固定面から容易に取り外すことができる転造平ダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の転造平ダイスは、転造盤に着脱可能に固定される転造平ダイスであって、前記転造盤の固定面とは当接しない非当接面に設けられた第1の開口と、前記固定面に当接する当接面に設けられた少なくとも1個の第2の開口と、前記第1の開口と前記第2の開口とを連通させる流路とを備えている。
【0006】
また、請求項2に係る発明の転造平ダイスは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記第2の開口は、前記当接面に沿って設けられた溝に連通させている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明の転造平ダイスでは、転造盤の固定面とは当接しない非当接面に第1の開口が設けられている。固定面に当接する当接面には、少なくとも1個の第2の開口が設けられている。第1の開口と第2の開口との間は流路で連通している。このような転造平ダイスが転造盤の固定面に密着して貼り付いてしまった場合、例えば、第1の開口に流動体(例えば、空気や液体等)を勢いよく流し込む。すると、第1の開口に流し込まれた流動体は流路を介して第2の開口から流出しようとする。このとき、流動体は転造盤の固定面を押し離すように作用するため、転造平ダイスを浮かせることができる。従って、固定面に貼り付いた転造平ダイスを容易に取り外すことができる。
【0008】
また、請求項2に係る発明の転造平ダイスでは、請求項1に記載の発明の効果に加え、第2の開口から流出する流動体は溝に沿って流れるので、第2の開口から噴出する流動体を当接面に沿って行き渡らせることができる。従って、転造平ダイスの当接面を固定面からバランス良く浮かせることができるので、固定面に貼り付いた転造平ダイスを容易に取り外すことができる。また、溝は当接面を削ることによって形成されるため、第2の開口を掘削する場合に比べて廃棄する部分が少ない。従って、転造平ダイスの強度を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態である転造平ダイス1について、図面を参照して説明する。図1は、転造平ダイス1の斜視図であり、図2は、転造平ダイス1の平面図であり、図3は、転造平ダイス1の正面図であり、図4は、転造平ダイス1の右側面図であり、図5は、転造平ダイス1の左側面図であり、図6は、転造平ダイス1の底面図であり、図7は、ホルダ40の斜視図であり、図8は、ホルダ40の平面図であり、図9は、転造平ダイス1が固定されたホルダ40の平面図であり、図10は、転造平ダイス1が固定されたホルダ40の正面図であり、図11は、図9に示すA−A線矢視方向断面図である。なお、図1に示す転造平ダイス1は、軸状のワークの外周面におねじを転造する工具である。
【0010】
はじめに、転造平ダイス1の構造について説明する。図1に示すように、転造平ダイス1は、先端側が鋭角に傾斜する略直方体状のダイス本体2を備えている。このダイス本体2は、合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料によって形成されている。ダイス本体2は、図1乃至図3に示すように、上面に形成された歯形面3、右側面4、左側面5(図2参照)、正面に形成された押さえ面6、背面7(図2参照)および底面8(図3参照)を備えている。
【0011】
まず、歯形面3について説明する。図1,図2に示すように、歯形面3には、ダイス本体2の幅方向に延設された複数のねじ山10が刻設されている。歯形面3は、図4に示すように、ダイス本体2の先端側から後端側に向かって3つの部位に分けられ、「食付部」である傾斜部101と、「仕上げ部」である平坦部102と、「逃げ部」である傾斜部103とからなる。
【0012】
次に、押さえ面6について説明する。図1,図4,図5に示すように、押さえ面6は、前方に向かって斜め下方に傾斜している。押さえ面6を正面から見た場合の右下部分には、圧縮エアを外部から吹き込むための正面視円形状のエア注入口12(図1,図3参照)が設けられている。このエア注入口12の径は、例えば、φ6に調整されている。エア注入口12には、ダイス本体2の長手方向に沿って略水平に延設された第1流路20の一端部が連通している。この第1流路20の径は、エア注入口12と同径に調整されている。第1流路20は、エア注入口12からダイス本体2の約1/3の長さに相当する位置まで延設されているが、ダイス本体2の後端側まで延設してもよい。このような押さえ面6には、転造平ダイス1を転造盤(図示外)のホルダ40(図9,10参照)に固定する際に、後述する上押さえブロック70(図10参照)が上側から当接するようになっている。
【0013】
次に、右側面4について説明する。図1,図4に示すように、右側面4の先端側の下部には、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるための4つのエア噴出口15が水平方向に所定間隔を空けて列設されている。このエア噴出口15の径は、エア注入口12よりも小さく調整され、例えば、φ4に調整されている。各エア噴出口15には、ダイス本体2の幅方向に沿って略水平に延設された第2流路21の一端部が各々連通している。この第2流路21の径は、エア噴出口15と同径に調整されている。これら4本の第2流路21は、左側面5の近傍まで各々延設されると共に、第1流路20に対して直交して各々連通している。従って、エア注入口12と、4つのエア噴出口15との間は、第1流路20及び第2流路21を介して各々連通している。このような右側面4は、転造平ダイス1を転造盤(図示外)のホルダ40(図7参照)に固定する際に、ホルダ40の垂直保持面45に当接するようになっている。
【0014】
次に、底面8について説明する。図6に示すように、底面8の先端側であって右側面4側(図6の上側)には、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるための4つのエア噴出口16が、ダイス本体2の長手方向に沿って所定間隔を空けて列設されている。他方、左側面5側にも、エア噴出口16と同様の4つのエア噴出口17が、ダイス本体2の長手方向に沿って所定間隔を空けて列設されている。つまり、4つのエア噴出口16と、4つのエア噴出口17とは、ダイス本体2の長手方向において同位置にそれぞれ配置されている。
【0015】
そして、各エア噴出口16には、垂直上方に延設された第3流路22の下端部が各々連通している。エア噴出口16の径は、エア注入口12よりも小さく調整され、例えば、φ4に調整されている。これら4本の第3流路22の各上端部は、第1流路20に対して直交して連通している。従って、エア注入口12と、4つのエア噴出口16との間は、第1流路20及び第3流路22を介して各々連通している。他方、各エア噴出口17には、底面8から垂直上方に延設された第4流路23の下端部が各々連通している。エア噴出口17の径は、エア注入口12よりも小さく調整され、例えば、φ4に調整されている。これら4本の第4流路23の各上端部は、4本の第2流路21に対して直交して各々連通している。従って、エア注入口12と、4つのエア噴出口17との間は、第1流路20、第2流路21及び第4流路23を介して各々連通している。
【0016】
このように、上記構造からなる転造平ダイス1では、ダイス本体2に設けられたエア注入口12と、エア噴出口15,16,17との間が、第1流路20、第2流路21、第3流路22及び第4流路23を介して各々連通している。従って、エア注入口12に圧縮エアを吹き込むことによって、図3に示すように、4つのエア噴出口15、4つのエア噴出口16及び4つのエア噴出口17から圧縮エアを勢いよく噴出させることができる。また、エア注入口12の径に比べて、エア噴出口15,16,17の径が小さく調整されていることによって、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアがエア噴出口15,16,17に配分よく分流される。そして、分流された圧縮エアを勢いよく噴出させることができる効果がある。
【0017】
次に、転造平ダイス1を転造盤に保持させるためのホルダ40について説明する 図7乃至図9に示すように、ホルダ40は、合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料によって形成された側面視L字型のブロック体である。ホルダ40は、平面視長方形の板である台座部41と、当該台座部41の幅方向一端部から垂直上方に立設された板状の垂直保持部42とから構成されている。台座部41の上面には、転造平ダイス1の底面8が密着して当接する水平保持面44が形成されている。他方、垂直保持部42の内面には、転造平ダイス1の右側面4が密着して当接する垂直保持面45が形成されている。即ち、水平保持面44及び垂直保持面45からなるL字型の保持面に、転造平ダイス1を密着させることによって確実に保持するのである。
【0018】
また、ホルダ40の正面46には、3つの固定穴52が水平方向に所定間隔を空けて列設されている。固定穴52の内側にはめねじが形成されている。L字型の右側面47の下部には、2つの固定穴53(図8参照)が横方向に並んで設けられている。固定穴53の内側にはめねじが形成されている。L字型の左側面48の下部には、2つの固定穴54(図8参照)が横方向に並んで設けられている。固定穴51の内側にはめねじが形成されている。さらに、水平保持面44の右押さえブロック61側であって、垂直保持部42の垂直保持面45の近傍には、固定穴51が設けられている。固定穴51の内側にはめねじが形成されている。
【0019】
そして、上記構成からなるホルダ40の左右両側には、右押さえブロック61と、左押さえブロック62とが着脱可能に各々固定される。右押さえブロック61は板状に形成され、その下部には厚み方向に貫通する2つの貫通穴65(図8参照)が設けられている。これら貫通穴65の位置は、ホルダ40の右側面47に設けられた2つの固定穴53の位置に各々対応している。他方、左押さえブロック62も、右押さえブロック61と同様に板状に形成され、その下部には厚み方向に貫通する2つの貫通穴66(図8参照)が設けられている。これら貫通穴66の位置は、ホルダ40の左側面48に設けられた2つの固定穴54の位置に各々対応している。
【0020】
次に、ホルダ40への転造平ダイス1の固定方法について説明する。まず、図9、図10に示すように、ホルダ40の右側面47に右押さえブロック61を密着して当接させ、固定ねじ67(図9参照)を貫通穴65に挿入し、固定穴53に締め付ける。こうして、右側面47に右押さえブロック61が固定される。他方、ホルダ40の左側面48に左押さえブロック62を密着して当接させ、固定ねじ68(図9参照)を貫通穴66に挿入し、固定穴54に締め付ける。こうして、左側面48に左押さえブロック62が固定される。
【0021】
次いで、図9乃至図11に示すように、ホルダ40の水平保持面44に転造平ダイス1を載せる。このとき、転造平ダイス1の先端側が右押さえブロック61側に向くように載せる。さらに、転造平ダイス1の底面8を水平保持面44に密着させ、転造平ダイス1の右側面4を垂直保持面45に密着させ、転造平ダイス1の背面7を左押さえブロック62の内面に密着させる。そして、転造平ダイス1の押さえ面6と、右押さえブロック61の内面との間に側面視台形状の上押さえブロック70をはめ込む。次いで、その上押さえブロック70に設けられた貫通穴(図示外)に固定ねじ75を挿入し、その下端側をホルダ40の水平保持面44に設けられた固定穴51(図8参照)に締め付ける。これにより、転造平ダイス1の押さえ面6が、上押さえブロック70によって上側から押さえられるので、転造平ダイス1は、下向き及び左押さえブロック62側に向かって付勢される。
【0022】
次いで、図10に示すように、ホルダ40の正面46と、転造平ダイス1の左側面5との間に、3枚の保持板80を各々固定する。この保持板80は長方形状の板部材であり、その長手方向両端にはネジ穴(図示外)が設けられている。そして、保持板80の下端部に設けられたネジ穴を介して、固定ねじ86をホルダ40の正面に設けられた固定穴52に締め付ける。一方、保持板80の上端部に設けられたネジ穴に固定ネジ85を締め付けると共に、その固定ネジ85の先端を転造平ダイス1の左側面5に押し当てる。こうして、転造平ダイス1がホルダ40に対して強固に固定される。そして、ホルダ40に固定された転造平ダイス1と、他方のホルダ(図示外)に固定された転造平ダイス(図示外)との間にワークが保持され、互いに反対方向に移動させることによってねじが転造される。
【0023】
次に、転造平ダイス1をホルダ40から取り外す方法について説明する。図10に示すホルダ40から転造平ダイス1を取り外す場合、ホルダ40から上押さえブロック70、右押さえブロック61、左押さえブロック62および3枚の保持板80を順次取り外す。ところが、転造盤でねじを繰り返し転造すると、転造平ダイス1がホルダ40に密着して貼り付いてしまうことがある。この場合、工具等を使ってホルダ40から転造平ダイス1を無理に取り外そうとすると、転造平ダイス1やホルダ40を傷つけてしまう。
【0024】
そこで、ホルダ40に貼り付いた転造平ダイス1のエア注入口12に対して、圧縮エアを噴出するエアガン(図示外)のノズルを差し込み、圧縮エアを瞬時に吹き込む。すると、エア注入口12に吹き込まれた圧縮エアは、ダイス本体2の内部に設けられた第1流路20、第2流路21、第3流路22、第4流路23に流れる。そして、垂直保持面45に密着する右側面4に設けられた各エア噴出口15から圧縮エアが勢いよく噴出する。他方、水平保持面44に密着する底面8に設けられた各エア噴出口16,17から圧縮エアが勢いよく噴出する。これにより、右側面4は垂直保持面45から強制的に引き離され、底面8も水平保持面44から強制的に引き離されるので、転造平ダイス1がホルダ40に対して浮くので、ホルダ40から簡単に取り外すことができる。
【0025】
なお、上記説明において、図1に示すエア注入口12が本発明の「第1の開口」に相当し、エア噴出口15,16,17が本発明の「第2の開口」に相当する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の転造平ダイス1は、転造盤のホルダ40に固定して使用されるものである。転造平ダイス1には、圧縮エアを内部に吹き込むためのエア注入口12が設けられている。そして、ホルダ40の水平保持面44に密着される底面8には、内部に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるためのエア噴出口16,17が設けられている。さらに、ホルダ40の垂直保持面45に密着される右側面4には、内部に吹き込まれた圧縮エアを噴出させるためのエア噴出口15が設けられている。そして、エア注入口12と、エア噴出口15,16,17との間は、第1流路20、第2流路21、第3流路22、第4流路23を介して連通している。ここで、転造盤でねじを繰り返し転造した後で、転造平ダイス1がホルダ40に密着して貼り付いてしまった場合、エア注入口12に圧縮エアを吹き込む。これにより、エア噴出口15,16,17から勢いよく噴出させることができるので、転造平ダイス1をホルダ40から簡単に取り外すことができる。
【0027】
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、圧縮エアを噴出させるエア噴出口の数や形状は上記実施形態に限定されない。そこで、エア噴出口の数や形状を変更した第1変形例及び第2変形例について、図12乃至図15を参照して説明する。図12は、第1変形例である転造平ダイス100の右側面図であり、図13は、第1変形例である転造平ダイス100の正面図であり、図14は、第2変形例である転造平ダイス200の底面図であり、図15は、図14に示すB−B線矢視方向断面図である。
【0028】
まず、第1変形例について説明する。図12に示す第1変形例である転造平ダイス100は、押さえ面6に設けられた1つのエア注入口120に対し、エア噴出口160を底面8に1つだけ備えている。図12,図13に示すように、エア注入口120とエア噴出口160との間は、第1流路121、第2流路122によって連通している。従って、エア注入口120から圧縮エアを吹き込むことによって、第1流路121、第2流路122を介して、エア噴出口160から圧縮エアを噴出させることができる。よって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0029】
次に、第2変形例について説明する。図14に示す第2変形例である転造平ダイス200は、押さえ面6に設けられた1つのエア注入口220に対し、底面8側から見た形状がコの字形であるエア噴出溝260を底面8に備えている。具体的には、エア注入口220には、水平方向に延設された第1流路221の一端部が連通し、当該第1流路221の他端部には、垂直方向に延設された第2流路(図示外)の上端部が直交して連通している。さらに、その第2流路の下端部に設けられた開口222に対して、底面8に設けられたエア噴出溝260の長手方向中間部が連通している。そして、エア噴出溝260は開口222に連通する位置から、左右両側に分かれて屈曲すると共に後端側に向かって各々延設されている。従って、エア注入口220から吹き込まれた圧縮エアは、第1流路221及び第2流路を流れ、開口222を介してエア噴出溝260から勢いよく噴出する。よって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、エア噴出溝260のような溝形状は、転造平ダイス1のエア噴出口16,17を複数堀削する場合に比べて加工し易い。さらに、底面8を削るだけでよいので、底面8の後端側までエア噴出溝260を伸ばすことも可能である。この場合、転造平ダイス200全体をホルダ40から浮かせることができる。また、エア噴出溝260は、上記実施形態のエア噴出口15,16,17に比べて、転造平ダイス1の内部に穴を空けないので、転造平ダイスの強度を保持できる。
【0031】
また、上記実施形態では、エア注入口12に圧縮エアを吹き込むが、流動体であればよく、例えば、液体でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】転造平ダイス1の斜視図である。
【図2】転造平ダイス1の平面図である。
【図3】転造平ダイス1の正面図である。
【図4】転造平ダイス1の右側面図である。
【図5】転造平ダイス1の左側面図である。
【図6】転造平ダイス1の底面図である。
【図7】ホルダ40の斜視図である。
【図8】ホルダ40の平面図である。
【図9】転造平ダイス1が固定されたホルダ40の平面図である。
【図10】転造平ダイス1が固定されたホルダ40の正面図である。
【図11】図9に示すA−A線矢視方向断面図である。
【図12】変形例である転造平ダイス100の右側面図である。
【図13】変形例である転造平ダイス100の正面図である。
【図14】変形例である転造平ダイス200の底面図である。
【図15】図14に示すB−B線矢視方向断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 転造平ダイス
2 ダイス本体
4 右側面
5 左側面
6 押さえ面
8 底面
12 エア注入口
15 エア噴出口
16 エア噴出口
17 エア噴出口
20 第1流路
21 第2流路
22 第3流路
23 第4流路
40 ホルダ
44 水平保持面
45 垂直保持面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転造盤に着脱可能に固定される転造平ダイスであって、
前記転造盤の固定面とは当接しない非当接面に設けられた第1の開口と、
前記固定面に当接する当接面に設けられた少なくとも1個の第2の開口と、
前記第1の開口と前記第2の開口とを連通させる流路と
を備えたことを特徴とする転造平ダイス。
【請求項2】
前記第2の開口は、前記当接面に沿って設けられた溝に連通させていることを特徴とする請求項1に記載の転造平ダイス。
【請求項1】
転造盤に着脱可能に固定される転造平ダイスであって、
前記転造盤の固定面とは当接しない非当接面に設けられた第1の開口と、
前記固定面に当接する当接面に設けられた少なくとも1個の第2の開口と、
前記第1の開口と前記第2の開口とを連通させる流路と
を備えたことを特徴とする転造平ダイス。
【請求項2】
前記第2の開口は、前記当接面に沿って設けられた溝に連通させていることを特徴とする請求項1に記載の転造平ダイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−131864(P2009−131864A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308335(P2007−308335)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
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