説明

軸体仮固定機能を備えた直動案内装置

【課題】軸体への装着作業が容易で、そして動作の信頼性にも優れる軸体仮固定機能を備えた直動案内装置を提供すること。
【解決手段】軸体11と直動軸受12とからなる直動案内装置13、直動軸受の周囲に装着された両側面に開口14aを有する筒体14、中央部に軸体の直径よりも大きい直径の開口15を有し、筒体の両側面の各々に上端部16aが係止された一対の仮固定板16、16、そして仮固定板と筒体側面との間に配置された弾性体17を含む軸体仮固定機能を備えた直動案内装置であって、前記の筒体側面と仮固定板の上端部との係止が弾性部材18を介してなされていて、そして上記弾性体17が筒体側面の上記係止部位と開口14aとの間の位置に備えられた膨出頭部21aを有する第一の棒状体21の周囲に巻き回されたコイルバネであって、さらに仮固定板に第一の棒状体が貫通する第一の孔部31が形成されていることを特徴とする軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸体と直動軸受とからなる直動案内装置を備え、この軸体を仮固定する機能を有する直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸体を仮固定する機能を備えた直動案内装置(以下「軸体仮固定機能付き直動案内装置」と云うことがある)を、各種センサの位置決めに用いることは知られている。
【0003】
図10は、従来の軸体仮固定機能付き直動案内装置の構成を示す一部切り欠き正面図である。
【0004】
図10の軸体仮固定機能付き直動案内装置100は、軸体101と直動軸受102とからなる直動案内装置103、直動軸受102の周囲に装着された両側面に開口104a、104aを有する筒体(筒状のハウジング)104、中央部に軸体101の直径よりも大きい直径の開口105を有し、下端部106bの軸体101の長さ方向に沿う回転移動(図に記入した矢印109a、109bが示す方向への回転移動)が可能なように筒体104の両側面104b、104bのそれぞれに上端部106aが係止された一対の仮固定板106、106、そして各々の仮固定板106と筒体側面104bとの間に配置された弾性体(圧縮コイルバネ)107、107などから構成されている。これと同様の構成を有する軸体仮固定機能付き直動案内装置は、例えば、特許文献1に記載がある。
【0005】
図10の直動案内装置100は、各々の弾性体107の伸長作用により、上記仮固定板106の下端部106bが筒体側面104bから離れた位置に回転移動(矢印109aが示す方向に回転移動)して、仮固定板106の開口105の縁部と軸体101とが係合することにより軸体101が仮固定され、そして仮固定板106の下端部106bの筒体側面104bに接近する回転移動(矢印109bが示す方向への回転移動)により軸体101が仮固定から解放されるように構成されている。
【0006】
従って、これらの仮固定板106、106の両外側を把持することにより、各々の弾性体107が縮小し、各仮固定板106の下端部106bが筒体側面104bに接近するように回転移動して、軸体101の仮固定が解放される。これにより、軸体101と筒体104との相対移動が可能になる。そして、仮固定板106、106の把持を停止することにより、各々の弾性体107の伸長作用により、各仮固定板106の下端部106bが筒体側面104bから離れた位置に回転移動して、軸体101が仮固定される。これにより、軸体101と筒体104との相対移動が規制される。
【0007】
そして、この筒体104に、例えば、位置決めが必要とされるセンサを固定して、筒体104を、軸体101の仮固定を解放した状態で、軸体101の長さ方向に沿って移動させたのち、この軸体101を仮固定することにより、前記センサを筒体104と共に軸体101の長さ方向の所定の位置に位置決めすることができる。
【0008】
この直動案内装置100において、上記の筒体側面104bと仮固定板106の上端部106aとの係止は、この仮固定板106の上端部106aと、筒体104の頂面に固定されたフックプレート108の折り曲げ部108aとの係合によりなされている。
【0009】
このフックプレート108は、下記のように軸体101の仮固定をより確実とする機能を有している。
【0010】
前記の軸体101の仮固定は、仮固定板106の開口105の縁部と軸体101との係合により生じる静摩擦力によって実現されている。従って、例えば、筒体104に、前記静摩擦力を超える大きな力が付与されると、軸体101の仮固定が不十分となる場合がある。
【0011】
例えば、筒体104に対して、図の左方向に大きな力が付与されると、この筒体104は右側のフックプレート108と共に、左方向に移動する。このフックプレート108の移動により、右側の仮固定板106の上端部106aもまた左方向に移動する。その結果、右側の仮固定板106の傾斜角度が大きくなり、この仮固定板106の開口105の縁部と軸体101とが強固に係合する。この強固な係合により、右側の仮固定板106とその上端部106aに係止された筒体104との軸体101に沿う移動が規制されるため、軸体101は筒体104に確実に仮固定される。
【0012】
これとは逆に、筒体104に対して、図の右方向に大きな力が付与された際には、左側の仮固定板106の開口105の縁部と軸体101との強固な係合により、左側の仮固定板106とその上端部106aに係止された筒体104との軸体101に沿う移動が規制されるため、軸体101は筒体104に確実に仮固定される。
【0013】
このように、フックプレート108、108は、仮に筒体104に大きな力が付与された際にも、軸体101の確実な仮固定を可能とする機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−32047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図10の軸体仮固定機能付き直動案内装置100では、軸体101を筒体104から抜き出した場合(筒体104を軸体101から取り外した場合)に、各々の仮固定板106が筒体104から分離して脱落する。このため、筒体104を再び軸体101の周囲に装着する際には、各々の仮固定板106を元の配置に戻した状態で、軸体101を筒体104の透孔に挿入するという手間のかかる作業が必要になる。
【0016】
また、前記のように筒体104に大きな力が付与された際に、この力がフックプレート108の隅部108bを介して仮固定板106の上端部106a、すなわち仮固定板106と軸体101とが係合する位置から大きく離れた位置に付与される。このため、仮固定板106に大きなモーメント荷重が付与されて、この仮固定板106に弾性変形あるいは塑性変形を生じ易い。このような仮固定板106の変形は、軸体の高精度での仮固定を、長期の使用にて維持することを難しくする原因となる。
【0017】
このような仮固定板106の変形を防止するため、フックプレート108の曲げ部108aを下方に延長して、隅部108bを更に下方の位置に配置させると、仮固定板106の変形は抑制されるものの、延長された折り曲げ部108aに弾性変形あるいは塑性変形を生じ易くなる。このようなフックプレート108の折り曲げ部108aの変形もまた、軸体の高精度での仮固定を、長期の使用にて維持することを難しくする原因となる。
【0018】
このように、図10の軸体仮固定機能付き直動案内装置100は、その動作の信頼性が十分に高いとは云えない。
【0019】
本発明の課題は、軸体の周囲に装着する作業が容易で、そして動作の信頼性にも優れる軸体仮固定機能を備えた直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、軸体と直動軸受とからなる直動案内装置、直動軸受の周囲に装着された両側面に開口を有する筒体、中央部に上記軸体の直径よりも大きい直径の開口を有し、下端部の上記軸体の長さ方向に沿う回転移動が可能なように筒体の両側面のそれぞれに上端部が係止された一対の仮固定板、そして仮固定板と筒体側面との間に配置された弾性体を含み、この仮固定板の下端部が筒体側面から離れた位置に回転移動してその開口縁部と前記軸体とが係合することにより軸体が仮固定され、そして仮固定板の下端部の筒体側面に接近する回転移動により軸体が仮固定から解放されるようにされている軸体仮固定機能を備えた直動案内装置であって、筒体側面と仮固定板の上端部との係止が弾性部材を介してなされていて、そして上記弾性体が筒体側面の上記係止部位と開口との間の位置に備えられた膨出頭部を有する第一の棒状体の周囲に巻き回されたコイルバネであって、さらに仮固定板に第一の棒状体が貫通する第一の孔部が形成されていることを特徴とする軸体仮固定機能を備えた直動案内装置にある。
【0021】
上記本発明の装置の好ましい態様は、次の通りである。
(1)仮固定板の開口縁部と軸体とが係合した状態にて、第一の棒状体の膨出頭部が仮固定板に接触するように前記棒状体の長さが調節されている。
(2)膨出頭部を有する第一の棒状体がボルトである。
(3)筒体側面の上記係止部位に膨出頭部を有する第二の棒状体が備えられ、この第二の棒状体を貫通させる第二の孔部が仮固定板に形成されていて、そして上記弾性部材が第二の棒状体の膨出頭部と仮固定板との間にて前記棒状体の周囲に巻き回されたコイルバネである。更に好ましくは、膨出頭部を有する第二の棒状体がボルトである。
(4)弾性部材が、筒体側面と仮固定板の上端部との間に備えられたコイルバネである。
(5)軸体の外周面に長さ方向に延びる帯状平面もしくは溝が形成されていて、仮固定板の開口縁部が、前記軸体の断面の形状に対応する形状を有する。
【0022】
本発明はまた、軸体と直動軸受とからなる直動案内装置、直動軸受の周囲に装着された両側面に開口を有する筒体、中央部に上記軸体の直径よりも大きい直径の開口を有し、下端部の上記軸体の長さ方向に沿う回転移動が可能なように筒体の両側面のそれぞれに上端部が係止された一対の仮固定板、そして仮固定板と筒体側面との間に配置された弾性体を含み、この仮固定板の下端部が筒体側面から離れた位置に回転移動してその開口縁部と前記軸体とが係合することにより軸体が仮固定され、そして仮固定板の下端部の筒体側面に接近する回転移動により軸体が仮固定から解放されるようにされている軸体仮固定機能を備えた直動案内装置であって、筒体側面と仮固定板の上端部との係止が、筒体側面の開口よりも上側の位置に備えられた膨出頭部を有する第一の棒状体と仮固定板の上端部に形成された第一の孔部との係合によりなされていることを特徴とする軸体仮固定機能を備えた直動案内装置にもある。
【0023】
上記本発明の装置の好ましい態様は、次の通りである。
(1)仮固定板の開口縁部と軸体とが係合した状態にて、第一の棒状体の膨出頭部が仮固定板に接触するように前記棒状体の長さが調節されている。
(2)膨出頭部を有する第一の棒状体がボルトである。
(3)弾性体が、筒体側面の上記係止部位と開口との間の位置に備えられた第二の棒状体の周囲に巻き回されたコイルバネであって、この第二の棒状体を貫通させる第二の孔部が仮固定板に形成されている。更に好ましくは、第二の棒状体が膨出頭部を有するボルトである。
(4)軸体の外周面に長さ方向に延びる帯状平面もしくは溝が形成されていて、仮固定板の開口縁部が、前記軸体の断面の形状に対応する形状を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置は、軸体を筒体から抜き出した場合であっても、各々の仮固定板が筒体から分離することがないため、軸体の周囲に装着する作業が容易である。本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置はまた、筒体に大きな力が付与された際にも、仮固定板に弾性変形あるいは塑性変形を生じ難いため、軸体の高精度での仮固定を長期の使用にて維持すること可能であり、その動作の信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の構成例を示す正面図である。但し、右側の仮固定板16は、その一部分を切り欠いた状態で記入してある。
【図2】図1の軸体仮固定機能付き直動案内装置10の左側面図である。
【図3】図2に記入した切断線III−III線に沿って切断した軸体仮固定機能付き直動案内装置10の断面図である。但し、軸体11、第二の棒状体22、そして直動軸受12の球体12c、12c、〜は、断面として記入していない。
【図4】図1の軸体仮固定機能付き直動案内装置10を軸体11の仮固定を解放した状態で示す図である。
【図5】本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の別の構成例を示す一部切り欠き正面図である。
【図6】本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す一部切り欠き正面図である。
【図7】本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す側面図である。
【図8】本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す側面図である。
【図9】本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す正面図である。
【図10】従来の軸体仮固定機能付き直動案内装置の構成を示す一部切り欠き正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置を、添付の図面を用いて説明する。
【0027】
図1は、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の構成例を示す正面図である。図2は、図1の軸体仮固定機能付き直動案内装置10の左側面図である。図3は、図2に記入した切断線III−III線に沿って切断した軸体仮固定機能付き直動案内装置10の断面図である。そして図4は、図1の軸体仮固定機能付き直動案内装置10を軸体11の仮固定を解放した状態で示す図である。
【0028】
図1〜図4に示す軸体仮固定機能付き直動案内装置10は、軸体11と直動軸受12とからなる直動案内装置13、直動軸受12の周囲に装着された両側面に開口14a、14aを有する筒体(筒状のハウジング)14、中央部に軸体11の直径よりも大きい直径の開口15を有し、下端部16bの軸体11の長さ方向に沿う回転移動(図3に記入した矢印19a、19bが示す方向への回転移動)が可能なように筒体14の両側面14b、14bのそれぞれに上端部16aが係止された一対の仮固定板16、16、そして各々の仮固定板16と筒体側面14bとの間に配置された弾性体17、17などから構成されている。
【0029】
直動案内装置10は、上記仮固定板16の下端部16bが筒体側面14bから離れた位置に回転移動(矢印19aが示す方向に回転移動)して、仮固定板16の開口15の縁部と軸体11とが係合することにより軸体11が仮固定され、そして仮固定板16の下端部16bの筒体側面14bに接近する回転移動(矢印19bが示す方向への回転移動)により軸体11が仮固定から解放されるように構成されている。
【0030】
そして、本発明の直動案内装置10は、筒体側面14bと仮固定板16の上端部16aとの係止が弾性部材18を介してなされていて、そして上記弾性体17が筒体側面14bの上記係止部位(図3:14c)と開口14aとの間の位置に備えられた膨出頭部21aを有する第一の棒状体21の周囲に巻き回されたコイルバネ(圧縮コイルバネ)であって、さらに仮固定板に第一の棒状体21が貫通する第一の孔部31が形成されていることに主な特徴がある。
【0031】
この直動案内装置10では、前記の仮固定板16、16の両外側を把持することにより、各弾性体17と各弾性部材(例、コイルバネ)18とが縮小し、各仮固定板16の下端部16bが筒体側面14bに接近するように回転移動して、軸体11の仮固定が解放される。これにより、軸体11と筒体14との相対移動が可能になる。そして、仮固定板16、16の把持を停止することにより、各弾性体17と各弾性部材18との伸長作用により、各仮固定板16の下端部16bが筒体側面14bから離れた位置に回転移動して、軸体11が仮固定される。これにより、軸体11と筒体14との相対移動が規制される。
【0032】
そして、この筒体14に、例えば、位置決めが必要とされるセンサを固定して、筒体14を、図4に示すように軸体11の仮固定を解放した状態で、軸体11の長さ方向に沿って移動させたのち、図3に示すように軸体11を仮固定することにより、前記センサを筒体14と共に軸体11の長さ方向の所定の位置に位置決めすることができる。
【0033】
本発明の直動案内装置10では、仮固定板16の開口15の縁部と軸体11との係合により生じる静摩擦力によって軸体11を仮固定するために必要とされる仮固定板16の下端部16bの回転移動を、各弾性体17と各弾性部材18との伸長作用により実現している。
【0034】
そして、筒体14に上記静摩擦力を超える大きな力が付与された際の筒体14の軸体11の長さ方向への移動を、筒体14の側面14bに備えられた第一の棒状体21の頭部21aを用いて規制することにより、軸体11の仮固定をより確実なものとしている。
【0035】
例えば、筒体14に対して、図3の左方向に大きな力が付与されると、この筒体14は右側の棒状体21の頭部21aと共に、左方向に移動する。この頭部21aの移動により、右側の仮固定板16の開口15よりも上側の部分もまた左方向に移動する。その結果、右側の仮固定板16の傾斜角度が大きくなり、この仮固定板16の開口15の縁部と軸体11とが強固に係合する。この強固な係合により、右側の仮固定板16とその上端部16aに係止された筒体14との軸体11の長さ方向への移動が規制されるため、軸体11は筒体14に確実に仮固定される。
【0036】
これとは逆に、筒体14に対して、図3の右方向に大きな力が付与されると、この筒体14は左側の棒状体21の頭部21aと共に、右方向に移動する。この頭部21aの移動により、左側の仮固定板16の傾斜角度が大きくなり、この仮固定板16の開口15の縁部と軸体11とが強固に係合する。この強固な係合により、左側の仮固定板16とその上端部16aに係止された筒体14との軸体11の長さ方向への移動が規制されるため、軸体11は筒体14に確実に仮固定される。
【0037】
本発明の直動案内装置10では、軸体11を筒体14から抜き出した場合(筒体14を軸体11から取り外した場合)であっても、各々の仮固定板16は、その第一の孔部31に収容された第一の棒状体21によって筒体14に支持されているため、筒体14から分離することはない。このため、本発明の直動案内装置10は、軸体11の周囲に容易に装着することができる。
【0038】
また、前記のように筒体14に大きな力が付与された際に、この力が第一の棒状体21の頭部21aの隅部21bを介して、仮固定板16の開口15に近接した位置、すなわち仮固定板16と軸体11とが係合する位置に近接した位置に付与される。従って、仮固定板16に付与されるモーメント荷重が小さく、この仮固定板16に弾性変形あるいは塑性変形を生じ難い。このため、本発明の直動案内装置10は、軸体の高精度での仮固定を長期の使用にて維持すること可能であり、その動作の信頼性に優れている。
【0039】
なお、仮固定板16の開口15の直径は、通常、軸体11の直径の1.001〜1.3倍の範囲内の値に設定される。
【0040】
また、第一の孔部31の仮固定板16の長さ方向(図4にて上下方向)の直径は、第一の棒状体21の直径よりも大きな値、好ましくは棒状体21の直径の1.01〜1.5倍の範囲内の値に設定される。一方、第一の孔部31の仮固定16の幅方向(図2にて左右方向)の直径は、棒状体21の直径よりも大きく、弾性体17の直径よりも小さな値に設定されている。これにより弾性体17の第一の孔部31への進入が妨げられている。なお、後に説明する第二の孔部32の直径も、第一の孔部31の直径と同様の値に設定されている。
【0041】
本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置10では、図3に示すように仮固定板16の開口15の縁部と軸体11とが係合した状態で、第一の棒状体21の膨出頭部21aが仮固定板16に接触するように棒状体21の長さが調節されていることが好ましい。これにより、前記のように筒体14に大きな力が付与された際に、直ちに仮固定板16の開口15の縁部と軸体11とを強固に係合させ、これと同時に筒体14と軸体11との相対移動を規制することが可能になる。
【0042】
膨出頭部を有する第一の棒状体の例としては、頭部を有するボルト、頭部を有するネジ、および頭部を持つピンなどが挙げられる。筒体への取り付けが容易であることから、頭部を有するボルトあるいは頭部を有するネジを用いることが好ましく、頭部の機械的な強度が大きいことから、頭部を有するボルトを用いることが特に好ましい。
【0043】
また、図3に示すように、筒体側面14bの上記係止部位14cに膨出頭部22aを有する第二の棒状体22が備えられ、この第二の棒状体22を貫通させる第二の孔部32が仮固定板16に形成されていて、そして上記弾性部材18が、第二の棒状体22の膨出頭部22aと仮固定板16との間にて棒状体22の周囲に巻き回されたコイルバネであることが好ましい。これにより、第二の棒状体22の周囲にコイルバネ(弾性部材)18を配置して、この棒状体22を仮固定板16の第二の孔部32を通して筒体14の側面に固定するという簡単な操作によって、筒体側面14bと仮固定板16の上端部16aとを係止することが可能になる。膨出頭部22aを有する第二の棒状体22としては、第一の棒状体21の場合と同様の理由により、頭部を有するボルトを用いることが特に好ましい。
【0044】
第一の棒状体(あるいは第二の棒状体)の数に特に制限はないが、その数が多いほど軸体仮固定機能付き直動案内装置の作製に手間がかかることから、第一の棒状体(あるいは第二の棒状体)の数は、1〜5本、特に1〜3本の範囲内にあることが好ましい。
【0045】
なお、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置が備える直動軸受としては、公知の直動軸受(球軸受あるいは滑り軸受)を用いることができる。
【0046】
図3に示す直動案内装置10の直動軸受12としては、外筒12a、外筒12aの内部に収容された筒状の球体保持器12b、そして球体保持器12bに各々回転可能に保持された複数個の球体12c、12c、〜を備える公知の球軸受(ボールブッシュ)が用いられている。この球軸受の球体保持器12bは、外筒12aの内周面に形成された周溝に収容された止め輪(スナップリング)12d、12dにより、その外筒12aの長さ方向への移動が防止されている。
【0047】
直動軸受12の筒体14の長さ方向への移動は、外筒12aの両端部を外周側にかしめることにより防止されている。直動軸受の筒体の長さ方向への移動は、例えば、直動軸受を筒体に圧入あるいは接着することによっても防止することができる。
【0048】
図5は、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の別の構成例を示す一部切り欠き正面図である。
【0049】
図5の軸体仮固定機能付き直動案内装置50の構成は、第一の棒状体21の周囲に備えられた弾性体(コイルバネ)17が、筒体14に形成された凹部14dに部分的に収容されていること以外は図1〜図4に示す直動案内装置10と同様である。
【0050】
このように、筒体14の凹部14dに弾性体17を収容することにより、仮固定板16の下端部16bを僅かに回転移動させるだけで、軸体11の仮固定を解放することが可能になる。
【0051】
図6は、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す一部切り欠き正面図である。
【0052】
図6の軸体仮固定機能付き直動案内装置60の構成は、弾性部材18が、筒体側面14bと仮固定板16の上端部16aとの間に備えられたコイルバネ(引張コイルバネ)であること以外は図5の直動案内装置50と同様である。
【0053】
図6の直動案内装置60の場合には、筒体14の各側面14bと各仮固定板16の上端部16aとの間に備えられたコイルバネ(弾性部材)18が、筒体14に形成された透孔14eの内部で互いに連結された構成を有している。なお、筒体14の各側面14bと各仮固定板16の上端部16aとの間のそれぞれに(互いに連結されていない)コイルバネが備えられていてもよい。
【0054】
直動案内装置60では、仮固定板16の開口15の縁部と軸体11との係合により生じる静摩擦力によって軸体11を仮固定するために必要とされる仮固定板16の下端部16bの回転移動を、各弾性体(圧縮コイルバネ)17の伸長作用と、弾性部材(引張コイルバネ)18の縮小作用とにより実現している。
【0055】
図7は、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す側面図である。
【0056】
図7の軸体仮固定機能付き直動案内装置70の構成は、軸体11の外周面に長さ方向に延びる帯状平面11aが形成されていて、仮固定板16の開口15の縁部が、前記軸体11の断面の形状に対応する形状を有していること以外は図1〜図4に示す直動案内装置10と同様である。
【0057】
このような帯状平面11aの形成により、仮固定板16、そして仮固定板16の上端部16aに係止された筒体14の軸体周方向への回転を防止することができる。
【0058】
図8は、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す側面図である。
【0059】
図8の軸体仮固定機能付き直動案内装置80の構成は、軸体11の外周面に長さ方向に延びる溝11bが形成されていて、仮固定板16の開口15の縁部が、前記軸体11の断面の形状に対応する形状を有していること以外は図1〜図4に示す直動案内装置10と同様である。
【0060】
このような溝11bの形成によっても、仮固定板16、そして仮固定板16の上端部16aに係止された筒体14の軸体周方向への回転を防止することができる。
【0061】
図9は、本発明の軸体仮固定機能付き直動案内装置の更に別の構成例を示す正面図である。
【0062】
図9の軸体仮固定機能付き直動案内装置90は、軸体11と直動軸受(筒体14に収容されている)とからなる直動案内装置、直動軸受の周囲に装着された両側面に開口14a、14aを有する筒体14、中央部に軸体11の直径よりも大きい直径の開口15を有し、下端部16bの軸体11の長さ方向に沿う回転移動が可能なように筒体14の両側面14b、14bのそれぞれに上端部16aが係止された一対の仮固定板16、16、そして各々の仮固定板16と筒体側面14bとの間に配置された弾性体17、17などから構成されている。
【0063】
この直動案内装置90は、筒体側面14bと仮固定板16の上端部16aとの係止が、筒体側面14bの開口14aよりも上側の位置に備えられた膨出頭部21aを有する第一の棒状体21と仮固定板16の上端部16aに形成された第一の孔部31との係合によりなされていることに主な特徴がある。
【0064】
直動案内装置90では、前記の仮固定板16、16の両外側を把持することにより、各弾性体17が縮小し、各仮固定板16の下端部16bが筒体側面14bに接近するように回転移動して、軸体11の仮固定が解放される。これにより、軸体11と筒体14との相対移動が可能になる。そして、仮固定板16、16の把持を停止することにより、各弾性体17の伸長作用により、各仮固定板16の下端部16bが筒体側面14bから離れた位置に回転移動して、軸体11が仮固定される。これにより、軸体11と筒体14との相対移動が規制される。
【0065】
直動案内装置90では、仮固定板16の開口15の縁部と軸体11との係合により生じる静摩擦力によって軸体11を仮固定するために必要とされる仮固定板16の下端部16bの回転移動を、各弾性体17の伸長作用により実現している。
【0066】
そして、筒体14に上記静摩擦力を超える大きな力が付与された際の筒体14の軸体11の長さ方向への移動を、筒体14の側面14bに備えられた第一の棒状体21の頭部21aを用いて規制することにより、軸体11の仮固定をより確実なものとしている。
【0067】
本発明の直動案内装置90では、軸体11を筒体14から抜き出した場合(筒体14を軸体11から取り外した場合)であっても、各々の仮固定板16は、その第一の孔部31に収容された第一の棒状体21によって筒体14に支持されているため、筒体14から分離することはない。このため、本発明の直動案内装置90は、軸体11の周囲に容易に装着することができる。
【0068】
また、前記のように筒体14に大きな力が付与された際に仮固定板16に付与されるモーメント荷重の大きさは、仮固定板16と第一の棒状体21の頭部21aの隅部21bとの接触位置、すなわち筒体14への第一の棒状体21の付設位置と仮固定板16の第一の孔部31との形成位置とを軸体14の側に近づけることによって小さくすることが可能である。このようにして、仮固定板16と第一の棒状体21の頭部21aの隅部21bとの接触位置を軸体11の側に近づけても、図10の従来の直動案内装置100でフックプレート108の折り曲げ部108aを延長する場合とは異なり、第一の棒状体21に弾性変形や塑性変形が生じ易くなることはない。このため、本発明の直動案内装置90は、軸体の高精度での仮固定を長期の使用にて維持すること可能であり、その動作の信頼性に優れている。
【0069】
直動案内装置90においては、前記の弾性体17が、筒体側面14bの上記係止部位(図9:14c)と開口14aとの間の位置に備えられた第二の棒状体22の周囲に巻き回されたコイルバネであって、この第二の棒状体22を貫通させる第二の孔部32が仮固定板16に形成されていることが好ましい。第二の棒状体22の利用により、コイルバネ(弾性体)17の設置、すなわち直動案内装置90の組み立てが容易になる。これ以外の好ましい態様は、図1〜図4に示す直動案内装置10の場合と同様である。
【符号の説明】
【0070】
10、50、60、70、80、90 軸体仮固定機能を備えた直動案内装置
11 軸体
11a 帯状平面
11b 溝
12 直動軸受
12a 外筒
12b 球体保持器
12c 球体
12d 止め輪
13 直動案内装置
14 筒体
14a 筒体の開口
14b 筒体の側面
14c 係止部位
14d 凹部
14e 透孔
15 仮固定板の開口
16 仮固定板
16a 仮固定板の上端部
16b 仮固定板の下端部
17 弾性体
18 弾性部材
19a、19b 仮固定板16の下端部16bの回転移動の方向を示す矢印
21 第一の棒状体
21a 膨出頭部
21b 隅部
22 第二の棒状体
22a 膨出頭部
31 第一の孔部
32 第二の孔部
100 軸体仮固定機能を備えた直動案内装置
101 軸体
102 直動軸受
103 直動案内装置
104 筒体
104a 筒体の開口
104b 筒体の側面
105 仮固定板の開口
106 仮固定板
106a 仮固定板の上端部
106b 仮固定板の下端部
107 弾性体
108 フックプレート
108a 折り曲げ部
108b 隅部
109a、109b 仮固定板106の下端部106bの回転移動の方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と直動軸受とからなる直動案内装置、該直動軸受の周囲に装着された両側面に開口を有する筒体、中央部に上記軸体の直径よりも大きい直径の開口を有し、下端部の上記軸体の長さ方向に沿う回転移動が可能なように該筒体の両側面のそれぞれに上端部が係止された一対の仮固定板、そして該仮固定板と筒体側面との間に配置された弾性体を含み、該仮固定板の下端部が筒体側面から離れた位置に回転移動してその開口縁部と前記軸体とが係合することにより軸体が仮固定され、そして仮固定板の下端部の筒体側面に接近する回転移動により軸体が仮固定から解放されるようにされている軸体仮固定機能を備えた直動案内装置であって、
筒体側面と仮固定板の上端部との係止が弾性部材を介してなされていて、そして上記弾性体が筒体側面の上記係止部位と開口との間の位置に備えられた膨出頭部を有する第一の棒状体の周囲に巻き回されたコイルバネであって、さらに仮固定板に第一の棒状体が貫通する第一の孔部が形成されていることを特徴とする軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項2】
仮固定板の開口縁部と軸体とが係合した状態にて、第一の棒状体の膨出頭部が仮固定板に接触するように該棒状体の長さが調節されている請求項1に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項3】
膨出頭部を有する第一の棒状体がボルトである請求項1もしくは2に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項4】
筒体側面の上記係止部位に膨出頭部を有する第二の棒状体が備えられ、この第二の棒状体を貫通させる第二の孔部が仮固定板に形成されていて、そして上記弾性部材が第二の棒状体の膨出頭部と仮固定板との間にて該棒状体の周囲に巻き回されたコイルバネである請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項5】
膨出頭部を有する第二の棒状体がボルトである請求項4に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項6】
弾性部材が、筒体側面と仮固定板の上端部との間に備えられたコイルバネである請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項7】
軸体の外周面に長さ方向に延びる帯状平面もしくは溝が形成されていて、仮固定板の開口縁部が、該軸体の断面の形状に対応する形状を有する請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項8】
軸体と直動軸受とからなる直動案内装置、該直動軸受の周囲に装着された両側面に開口を有する筒体、中央部に上記軸体の直径よりも大きい直径の開口を有し、下端部の上記軸体の長さ方向に沿う回転移動が可能なように該筒体の両側面のそれぞれに上端部が係止された一対の仮固定板、そして該仮固定板と筒体側面との間に配置された弾性体を含み、該仮固定板の下端部が筒体側面から離れた位置に回転移動してその開口縁部と前記軸体とが係合することにより軸体が仮固定され、そして仮固定板の下端部の筒体側面に接近する回転移動により軸体が仮固定から解放されるようにされている軸体仮固定機能を備えた直動案内装置であって、
筒体側面と仮固定板の上端部との係止が、筒体側面の開口よりも上側の位置に備えられた膨出頭部を有する第一の棒状体と仮固定板の上端部に形成された第一の孔部との係合によりなされていることを特徴とする軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項9】
仮固定板の開口縁部と軸体とが係合した状態にて、第一の棒状体の膨出頭部が仮固定板に接触するように該棒状体の長さが調節されている請求項8に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項10】
膨出頭部を有する第一の棒状体がボルトである請求項8もしくは9に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項11】
弾性体が、筒体側面の上記係止部位と開口との間の位置に備えられた第二の棒状体の周囲に巻き回されたコイルバネであって、この第二の棒状体を貫通させる第二の孔部が仮固定板に形成されている請求項8乃至10のうちのいずれかの項に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項12】
第二の棒状体が膨出頭部を有するボルトである請求項11に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。
【請求項13】
軸体の外周面に長さ方向に延びる帯状平面もしくは溝が形成されていて、仮固定板の開口縁部が、該軸体の断面の形状に対応する形状を有する請求項8乃至12のうちのいずれかの項に記載の軸体仮固定機能を備えた直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−286079(P2010−286079A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141494(P2009−141494)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【出願人】(597137682)トークシステム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】