説明

軽油留分の脱硫方法および軽油留分の脱硫装置

【解決手段】軽油留分をt℃(280≦t≦360(℃))で2分割して得られる低沸点軽油留分を、H2/Oil比が70〜200Nm3/klで水素化処理する、低沸点軽油留分水素化処理工程(I)と、高沸点軽油留分を、H2/Oil比が200〜800Nm3/klで水素化処理する、高沸点軽油留分水素化処理工程(II)と、工程(I)及び(II)で得られた処理油を混合する工程(III)とを有し、工程(II)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、工程(I)の水素化処理で用いることを特徴とする軽油留分の脱硫方法。
【効果】本発明の脱硫方法により、水素ガス及びエネルギーを効率的に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油の脱硫方法および装置に関する。詳しくは、本発明は、高沸点軽油留分と低沸点軽油留分とをそれぞれ水素化脱硫して混合することにより、経済的に、軽油を高度に脱硫する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼル車からの排出ガス中の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)および粒子状物質の環境汚染への影響が問題になってきており、排ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物を減少させるために、ディーゼル軽油中の硫黄分を、0.05重量%(500ppm)以下とする品質基準が設けられている。そして、さらに硫黄分を減少させた超深度脱硫軽油の製造が求められている。
【0003】
ディーゼル燃料などに利用される軽油は、通常、図3に示されるように、脱硫前の軽油留分を水素とともに加熱炉で予熱した後、触媒を収容した水素化脱硫装置に導入して、水素化脱硫させることにより製造される。このような方法において、硫黄濃度をより低減させるためには、脱硫反応の反応温度を高くする、反応時間を長くするなど、反応条件を厳しくする必要がある。しかしながら、反応条件を厳しくすることによって高度な脱硫を行う場合には、得られる製品軽油に着色が生じたり、触媒寿命が短期化し、触媒使用量が増大するなどの問題がある。
【0004】
このような問題を解決するものとして、本願出願人は、原料軽油を複数の留分に分割し、それぞれの留分について脱硫処理を行い、この後に各留分を混合することにより、硫黄分が0.05重量%程度の低硫黄分の脱硫軽油を効率よく製造しうることを見出し、すでに提案している(特許文献1(特公平6−49873号公報)参照)。
【0005】
このような状況において、本願出願人は、さらに硫黄分の低減された軽油を、経済的に製造する方法について鋭意研究したところ、原料軽油を低沸点の留分と高沸点の留分とに分割し、それぞれを特定のH2/Oil比で処理し、高沸点留分の水素化処理で用いた水
素の未反応分を低沸点留分の水素化処理に用いることにより、高度に脱硫された脱硫軽油を経済的に効率よく製造しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】特公平6−49873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水素化処理触媒の使用量を抑制し、経済的に効率よく脱硫軽油を製造する、軽油留分の脱硫方法および軽油留分の脱硫装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の軽油留分の脱硫方法は、
軽油留分をカットポイントt℃(ただし、280≦t≦360(℃)を満たす)で2分割して得られる低沸点軽油留分を、H2/Oil比が70〜200Nm3/klを満たし、圧力が30〜70kg/cm2Gを満たす条件で水素化処理し、処理油を得る、低沸点軽
油留分水素化処理工程(I)と、
カットポイントt℃で2分割して得られる高沸点軽油留分を、H2/Oil比が200
〜800Nm3/klを満たし、圧力が40〜80kg/cm2Gを満たす条件で水素化処理し、処理油を得る、高沸点軽油留分水素化処理工程(II)と、
工程(I)で得られた処理油と、工程(II)で得られた処理油とを混合する工程(I
II)と
を有し、
工程(II)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、工程(I)の水素化処理で用い、
硫黄含有量が50ppm以下の脱硫軽油を得ることを特徴としている。
【0008】
このような軽油留分の脱硫方法では、低沸点軽油留分水素化処理工程(I)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、硫化水素を除去した後に、高沸点軽油留分水素化処理工程(II)の水素化処理で用いることが好ましく、軽油留分が、直留軽油留分であることも好ましい。
【0009】
本発明の軽油留分の脱硫装置は、
軽油留分から硫黄含有量が50ppm以下の脱硫軽油を製造する軽油留分の脱硫装置であって、
軽油留分をカットポイントt℃(ただし、280≦t≦360(℃)を満たす)で2分割して得られる低沸点軽油留分を水素化脱硫する、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)と、
カットポイントt℃で2分割して得られる高沸点軽油留分を水素化脱硫する、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)と
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から得られた処理油と、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から得られた処理油とを混合する手段(c)と
高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)に導入する手段(d)と
を有することを特徴としている。
【0010】
このような本発明の軽油留分の脱硫装置は、
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部から、硫化水素を除去する手段(e)と、
手段(e)から得られた、水素を含有し硫化水素を実質的に含まないガスを、高沸点軽油留分の水素化処理手段(b)に導入する手段(f)と
を有することが好ましい。
【0011】
さらに本発明の第二の軽油留分の脱硫装置は、
軽油留分から硫黄含有量が50ppm以下の脱硫軽油を製造する軽油留分の脱硫装置であって、
低沸点軽油留分を水素化処理する低沸点軽油留分水素化処理部と、
高沸点軽油留分を水素化処理する高沸点軽油留分水素化処理部と、
高沸点軽油留分水素化処理部の、水素を含有するガスを、低沸点軽油留分水素化処理部に導入する手段と
を有する脱硫塔と、
該脱硫塔から得られる、脱硫された低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを混合する手段と
からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軽油留分の脱硫方法によれば、系全体における水素使用量を削減し、水素およびエネルギーを効率的に用いることができ、しかも各留分に充分な水素化脱硫を施すことができ、高度に脱硫された脱硫軽油を製造することができる。また、このような本発明の方法によれば、軽油留分を一括して水素化脱硫する場合と比べて、少ない触媒量で経済的に充分な軽油留分を脱硫することができる。
【0013】
本発明の脱硫軽油は、本発明の脱硫軽油の製造方法により、低コストで好適に製造され、硫黄含量が充分に低減されており、ディーゼル自動車用燃料などとして好適に用いることができる。
【0014】
また、本発明によれば、水素およびエネルギーを効率的に用いることができ、しかも各留分に充分な水素化脱硫を施すことができ、少ない触媒量で高度に脱硫された脱硫軽油を製造しうる、軽油留分の脱硫装置を提供することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、水素ガスおよびエネルギーを効率的に用いることができ、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを別個の水素化処理装置で処理する場合よりも、脱硫装置およびラインなどの周辺設備を削減することができ、装置構成を簡略化することができ、設備費、装置の制御およびメンテナンスの手間、装置面積などを削減することができ、経済的に軽油留分を高度に脱硫処理することのできる、優れた第二の軽油留分の脱硫装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
<軽油留分の脱硫方法>
本発明の軽油留分の脱硫方法では、軽油留分をカットポイントt℃(ただし、280≦t≦360、好ましくは300≦t≦340(℃)を満たす)で2分割して得られる低沸点軽油留分、すなわち終留点が該t℃程度以下である低沸点軽油留分と、カットポイントt℃で2分割して得られる高沸点留分、すなわち初留点が該t℃程度以上である高沸点軽油留分とを原料油として用いる。
【0017】
このような低沸点軽油留分および高沸点軽油留分は、原油の常圧蒸留などの過程で、当初から低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とに分離されて得られた各軽油留分であってもよく、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを含む軽油留分をt℃で分留して得たものであってもよい。
【0018】
本発明の軽油留分の脱硫方法において、原料油である各軽油留分が、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを含む軽油留分をt℃で分留して得たものである場合、分留前の軽油留分としては、沸点約200〜400℃程度のいわゆる軽油留分であれば特に限定されるものではなく、直留軽油、減圧軽油、分解軽油などの各種軽油留分、別工程において粗脱硫を行った各種軽油留分を含む軽油留分、これらの混合物などをいずれも好適に用いることができ、このうち本発明では、直留軽油あるいは直留軽油を含む軽油留分が特に好ましく用いられる。
【0019】
以下、軽油留分(高沸点軽油留分と低沸点軽油留分とを含む)を分留して得られる低沸点軽油留分および高沸点軽油留分を、原料油とする場合について、図1を参照して説明する。
【0020】
低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを含有する軽油留分は、ライン(21)より分留器(1)に導入されてカットポイントt℃(280≦t≦360、好ましくは300≦t≦340(℃)を満たす)で分留し、分留器(1)塔頂部からはカットポイントt℃の低沸点軽油留分が、分留器(1)塔底部からはカットポイントt℃の高沸点軽油留分がそれぞれ得られる。原料となる低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とは、特に限定されるものではないが、質量比(低沸点軽油留分:高沸点軽油留分)が9.5:0.5〜5:5、好ましくは8:2〜6:4程度であるのが好ましい。
【0021】
分留器(1)塔頂部より得られた低沸点軽油留分は、ライン(22)、ポンプ(3)、ライン(24)を通じ、後述するライン(34)からのリサイクル水素と共に、ライン(29)を経て加熱炉(5)に導入され、水素化処理温度まで加熱された後、ライン(31)を経て低沸点軽油留分水素化処理装置(7)に導入される。低沸点軽油留分水素化処理装置(7)にて水素化処理された低沸点軽油留分は、未反応の水素と共にライン(33)より得られる。
【0022】
低沸点軽油留分水素化処理装置(7)は、低沸点軽油留分の水素化脱硫を行う水素化処理触媒を内部に備えている。水素化処理触媒としては、従来灯軽油留分を水素化脱硫するために用いられる触媒がいずれも好ましく用いられ、たとえば、シリカまたはシリカ−アルミナを担体とし、これにNi、CoおよびMoから選ばれる2種以上の金属が硫化物として担持された触媒、たとえばいわゆるCo−Mo系、Ni−Mo系、Ni−Co−Mo系触媒などが好ましく用いられる。また、低沸点軽油留分の水素化処理に用いられる触媒は、このような、Ni、CoおよびMoから選ばれる2種以上の金属が硫化物としてシリカまたはシリカ−アルミナ担体に担持された触媒とともに、ゼオライト触媒を用いた2元触媒であってもよい。
【0023】
低沸点軽油留分の水素化処理は、H2/Oil比が70〜200Nm3/kl、好ましくは100〜150Nm3/kl、より好ましくは110〜140Nm3/klの条件で行うのが望ましい。一般に、低沸点軽油留分は、高沸点軽油留分よりも硫黄含有量が少なく、硫黄分が除去されやすい傾向にあるため、後述する高沸点軽油留分の水素化処理よりも低いH2/Oil比条件によっても、充分な脱硫を行うことができる。低沸点軽油留分の水
素化処理におけるH2/Oil比は、70Nm3/kl以上であると、充分な脱硫ができるため好ましく、また、200Nm3/kl以下であると経済的であり好ましい。
【0024】
低沸点留分の水素化処理における圧力条件は、特に限定されるものではないが、通常30〜70kg/cm2G、好ましくは40〜60kg/cm2G程度であるのが望ましい。
また、低沸点軽油留分の水素化処理における、低沸点軽油留分の液空間速度(LHSV)は、用いる触媒の種類、温度条件などにもより特に限定されるものではないが、通常1.5〜4hr-1好ましくは2〜3hr-1程度であるのが望ましい。
【0025】
低沸点軽油留分の水素化処理では、後述する高沸点軽油留分の水素化処理で用いられた未反応水素である、ライン(34)からのリサイクル水素を用いるが、該リサイクル水素としては、高沸点軽油留分の水素化処理で用いられた未反応水素分がそのまま用いられてもよく、アミン処理などの硫化水素除去処理の後に用いられてもよい。また、必要に応じて、リサイクル水素以外の水素ガス(メイクアップ水素)が併せて用いられてもよい。
以上のようにして、本発明の脱硫方法における低沸点軽油留分水素化処理工程(I)を行うことができる。
【0026】
一方、分離器(1)塔底部より得られた高沸点軽油留分は、ライン(23)、ポンプ(4)、ライン(25)、ライン(28)を経て、加熱炉(5)に導入される。このときライン(28)では、ライン(26)、コンプレッサー(2)、ライン(27)を通じて導入される高純度の水素(メイクアップ水素)と、ライン(42)からの硫化水素の除去されたリサイクル水素とが導入されて、高沸点軽油留分と混合されている。高沸点軽油留分は、水素と共に加熱炉(5)で水素化処理温度まで加熱され、ライン(30)を通じて高沸点軽油留分水素化処理装置(6)に導入されて水素化処理され、処理油は未反応の水素と共にライン(32)より得られる。
【0027】
高沸点軽油留分水素化処理装置(6)は、高沸点軽油留分の水素化脱硫を行う水素化処理触媒を内部に備えている。この水素化処理触媒としては、上述した低沸点軽油留分水素
化処理装置(7)において用いられる水素化処理触媒と同様に、従来灯軽油留分を水素化脱硫するために用いられる触媒がいずれも好ましく用いられ、たとえば、シリカまたはシリカ−アルミナを担体とし、これにNi、CoおよびMoから選ばれる2種以上の金属が硫化物として担持された触媒、たとえばいわゆるCo−Mo系、Ni−Mo系、Ni−Co−Mo系触媒などが好ましく用いられる。また、高沸点軽油留分の水素化処理には、このような、Ni、CoおよびMoから選ばれる2種以上の金属の硫化物が、シリカまたはシリカ−アルミナ担体に担持されてなる触媒と、ゼオライト触媒とからなる2元触媒が、より好ましく用いられる。2元触媒を構成するゼオライト触媒としては、たとえば、ZSM−5、Y型ゼオライト、モルデナイトなどが挙げられる。高沸点軽油留分の水素化処理に用いられる触媒は、単独で用いられてもよく、2種以上適宜混合して用いられてもよく、上述した低沸点軽油留分の水素化処理に用いられる触媒と同一であってもよく、異なっていてもよい。高沸点軽油留分の水素化処理に用いられる触媒が、低沸点軽油留分の水素化処理に用いられる触媒と同一である場合には、触媒のメイクアップ(追加的添加)、交換などの作業、管理が簡便であり好ましい。
【0028】
高沸点軽油留分の水素化処理は、H2/Oil比が200〜800Nm3/kl、好ましくは300〜600Nm3/kl、より好ましくは350〜550Nm3/klの条件で行うのが望ましい。一般に、高沸点軽油留分は、低沸点軽油留分よりも硫黄含有量が多く、硫黄分が除去されにくい傾向にあるため、低沸点軽油留分の水素化処理よりも高いH2
Oil比条件によって脱硫を行うのが望ましく、H2/Oil比が200〜800Nm3/klの条件において好適に脱硫を行うことができる。
【0029】
高沸点留分の水素化処理における圧力条件は、特に限定されるものではないが、通常40〜80kg/cm2G、好ましくは50〜70kg/cm2G程度であるのが望ましい。
また、高沸点軽油留分の水素化処理における、高沸点軽油留分の液空間速度(LHSV)は、用いる触媒の種類、温度条件などにもよるものであって特に限定されるものではないが、通常0.3〜3hr-1好ましくは1〜2hr-1程度であるのが望ましい。
【0030】
高沸点軽油留分の水素化処理で用いられる水素は、ライン(26)、コンプレッサー(2)、ライン(27)を通じて系外から導入される高純度の水素ガス(メイクアップ水素)のみでもよく、系外からのメイクアップ水素とライン(42)からの硫化水素の除去されたリサイクル水素との両方が用いられてもよいが、水素純度の高い水素を用いるのが望ましい。具体的には、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)に導入される前の高沸点軽油留分に混合される水素ガス(2種以上の水素ガスが混合される場合にはその合計)は、純度の高いものであるのが望ましく、高沸点軽油留分に混合される水素ガス中の水素含有量が、90モル%以上、好ましくは93モル%以上、より好ましくは95モル%以上であるのが望ましい。
【0031】
本発明においては、高沸点軽油留分の水素化処理に用いられる水素ガスは、低沸点軽油留分の水素化処理に用いられる水素ガス以上の水素純度を有しているのが好ましい。
また、高沸点軽油留分に混合される水素ガスは、硫化水素含有量が2モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であるのが望ましく、硫化水素を実質的に含有しないのが特に好ましい。高沸点軽油留分の水素化処理に、水素ガスとして高沸点軽油留分および/または低沸点軽油留分の水素化処理で用いた未反応水素をリサイクルして用いる場合には、アミン処理装置などの硫化水素除去手段により、水素化処理で生じた硫化水素が充分に除去された水素ガスを用いるのが望ましい。
【0032】
高沸点軽油留分水素化処理装置(6)において水素化処理された処理油は、ライン(32)を通じて、未反応の水素および水素化処理で生成した硫化水素と共に、気液分離器(8)に導入される。気液分離器(8)では、塔頂部よりライン(34)を通じて未反応の
水素および水素化処理で生成した硫化水素を含む気体成分が得られ、塔底部よりライン(35)を通じて、水素化処理された高沸点軽油留分である処理油が得られる。
【0033】
以上のようにして、本発明の脱硫方法における高沸点軽油留分水素化処理工程(II)を行うことができる。
気液分離器(8)よりライン(34)を通じて得られた、未反応の水素を主成分とし水素化処理で生成した硫化水素を含有する気体は、上述した低沸点軽油留分の水素化処理に用いられる。この未反応の水素を主成分とする気体は、図1に示されるように、そのまま低沸点軽油留分の流路(24)に導入してもよく、また、適宜硫化水素を除去した後低沸点軽油留分の流路に導入してもよい。
【0034】
気液分離器(8)よりライン(35)を通じて得られた、水素化処理された高沸点軽油留分である処理油は、低沸点軽油留分水素化処理装置(7)よりライン(33)を通じて得られた水素化処理された低沸点軽油留分である処理油と合流して混合され、気液分離器(9)へと導入される。このようにして、本発明の脱硫方法における、工程(I)で得られた処理油と、工程(II)で得られた処理油とを混合する工程(III)を行うことができる。すなわち、気液分離器(9)へは、低沸点軽油留分の水素化処理油と、高沸点軽油留分の水素化処理油と、低沸点軽油留分の水素化処理工程における未反応水素および生成した硫化水素とからなる混合流体が導入される。
【0035】
気液分離器(9)では、導入された混合流体が気液分離され、液体成分として、低沸点軽油留分の水素化処理油および高沸点軽油留分の水素化処理油からなる脱硫軽油が、ライン(37)を通じて得られる。また、気液分離器(9)において気体成分に同伴された軽油留分は、気液分離器(11)において気体成分から分離され、ライン(43)を通じて気液分離器(9)からの液体成分と合流され、ライン(37)を通じて得られる脱硫軽油の一部となる。ライン(37)から得られた脱硫軽油は、良好な水素化脱硫がなされており、通常、硫黄含有量が500ppm以下、好ましくは50ppm以下に高度に脱硫されている。
【0036】
一方、気液分離器(9)からライン(36)を通じて得られる気体成分は、低沸点軽油留分の水素化処理工程における未反応水素を主成分としており、低沸点軽油留分の水素化処理工程で生成した硫化水素を含有している。この気体成分は、ライン(36)からエアフィンクーラーなどの冷却器(10)に導入されて冷却された後、ライン(38)、気液分離器(11)、ライン(39)を経て、アミン処理装置などの硫化水素除去装置(12)へ導入される。硫化水素除去装置では、気体中の硫化水素成分が除去される。
【0037】
硫化水素除去装置(12)よりライン(40)を経て得られる気体成分は、水素を主成分とし硫化水素が除去された気体であって、高純度の水素ガスとなっている。この水素ガスは、気液分離器(13)、ライン(41)、コンプレッサー(14)およびライン(42)を通じて、リサイクル水素として、水素化処理前の高沸点軽油留分に導入・混合され、高沸点軽油留分の水素化処理反応に用いられる。
【0038】
このような本発明の軽油留分の脱硫方法は、用いる装置を特に限定するものではないが、以上詳述した図1に示されるような本発明の第一の軽油留分の脱硫装置により行うことも好ましく、また、後述する図2に示されるような本発明の第二の軽油留分の脱硫装置により行うことも好ましい。
【0039】
このような本発明の軽油留分の脱硫方法によれば、低沸点軽油留分の水素化処理工程(I)と、高沸点軽油留分の水素化処理工程(II)とを、それぞれ特定のH2/Oil比
で行うため、系全体の水素使用量を適度に節約しながら、各留分に充分な水素化脱硫を施
すことができる。また、高沸点軽油留分の水素化処理工程(II)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、低沸点軽油留分の水素化処理工程(I)で用いるため、系全体における水素使用量を削減することができ、水素を効率的に用いることができる。また、このように低沸点軽油留分の水素化処理工程と高沸点軽油留分の水素化処理工程とで水素ガスを共有して用いることにより、未反応水素をリサイクルするためのコンプレッサーを共有することができ、それぞれの工程で独立に水素をリサイクル使用する場合と比べて、設備およびエネルギーを節約することができるため経済的である。
【0040】
また、このような本発明の軽油留分の脱硫方法では、低沸点軽油留分水素化処理装置(7)の触媒層として用いられる触媒と、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)の触媒層として用いられる触媒との合計量は、軽油留分を一括して水素化脱硫する場合と比べて、少ない量とすることができ、経済的である。このような効果は、本発明では、脱硫に関する挙動の異なる高沸点軽油留分および低沸点軽油留分に対し、それぞれ必要充分な脱硫処理が施され、触媒がむだなく用いられることによる。
【0041】
さらに、本発明では、高沸点軽油留分の水素化処理工程(II)で用いた未反応水素の少なくとも一部を、低沸点軽油留分の水素化処理工程(I)で用いるため、水素化処理前の低沸点軽油留分と混合する水素がすでにある程度の熱量を有しており、加熱炉におけるエネルギーを削減することができる。またさらに本発明では、低沸点軽油留分水素化処理工程における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、高沸点軽油留分水素化処理工程(II)で用いることにより、水素をより効率的に用いることができ、脱硫軽油の製造コストを削減することができる。
【0042】
本発明の脱硫軽油は、上述した本発明の脱硫軽油の製造方法により、低コストで好適に製造され、硫黄含量が充分に低減されており、ディーゼル自動車用燃料などとして好適に用いることができる。
【0043】
<軽油留分の脱硫装置>
本発明の第一の軽油留分の脱硫装置は、
軽油留分をカットポイントt℃(ただし、280≦t≦360(℃)を満たす)で2分割して得られる低沸点軽油留分を水素化脱硫する、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)と、
カットポイントt℃で2分割して得られる高沸点軽油留分を水素化脱硫する、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)と
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から得られた処理油と、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から得られた処理油とを混合する手段(c)と
高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)に導入する手段(d)とを有している。具体的には、たとえば、上述した軽油留分の脱硫方法において説明した図1に示されるように、
低沸点軽油留分を水素化脱硫する、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)として、低沸点軽油留分水素化処理装置(7)を、
高沸点軽油留分を水素化脱硫する、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)として、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)を、
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から得られた処理油と、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から得られた処理油とを混合する手段(c)として、各処理油を合流する、ライン(33)およびライン(35)を、
高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)に導入する手段(d)として、ライン(34)をそれぞれ有している。
【0044】
このような本発明の第一の軽油留分の脱硫装置によれば、高沸点軽油留分と低沸点軽油留分とをそれぞれ個別に好適に水素化脱硫処理することができ、しかも高沸点軽油留分の水素化処理手段(b)から排出された未反応の水素を、低沸点軽油留分の水素化処理手段(a)において有効に活用することができる。また、このような本発明の軽油留分の脱硫装置は、上述した本発明の軽油留分の脱硫方法に好適に用いることができる。
【0045】
また、このような本発明の第一の軽油留分の脱硫装置においては、
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部から、硫化水素を除去する手段(e)と、
手段(e)から得られた、水素を含有し硫化水素を実質的に含まないガスを、高沸点軽油留分の水素化処理手段(b)に導入する手段(f)とを有することも好ましい。
【0046】
具体的には、たとえば、上述した軽油留分の脱硫方法において説明した図1に示されるように、
硫化水素を除去する手段(e)として、アミン処理装置などの硫化水素除去装置(12)を、
手段(e)から得られた、水素を含有し硫化水素を実質的に含まないガスを、高沸点軽油留分の水素化処理手段(b)に導入する手段(f)として、ライン(40)、気液分離器(13)、ライン(41)、コンプレッサー(14)およびライン(42)をそれぞれ有するのが好ましい。
【0047】
このような軽油留分の脱硫装置では、低沸点軽油留分の水素化処理手段(a)から排出された未反応の水素を、硫化水素を除去後に高純度で高沸点軽油留分の水素化処理手段(b)に導入することができ、円滑に高沸点軽油留分の水素化処理を行うことができ、より効率的に系内の水素を利用でき、経済的である。
【0048】
次に、本発明の第二の軽油留分の脱硫装置について、図2を参照して説明する。本発明の第二の軽油留分の脱硫装置は、
低沸点軽油留分を水素化処理する低沸点軽油留分水素化処理部(17)と、
高沸点軽油留分を水素化処理する高沸点軽油留分水素化処理部(16)と、
高沸点軽油留分水素化処理部の、水素を含有するガスを、低沸点軽油留分水素化処理部に導入する手段(18)と
を有する脱硫塔(15)と、
該脱硫塔から得られる、脱硫された低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを混合する手段(32)、(33)とからなる。
【0049】
以下、本発明の第二の軽油留分の脱硫装置を用いて、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを含有する軽油留分を脱硫する場合について、図2を参照して具体的に説明する。
低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを含有する軽油留分を、ライン(21)より分留器(1)に導入して分留し、ライン(22)より低沸点軽油留分を、ライン(23)より高沸点軽油留分をそれぞれ得て、原料油とする。
【0050】
得られた低沸点軽油留分は、ライン(22)、ポンプ(3)、ライン(24)を通じて加熱炉(5)に導入され、水素化処理温度まで加熱された後、ライン(31)を経て脱硫塔(15)の低沸点軽油留分水素化処理部(17)に導入される。
【0051】
また、得られた高沸点軽油留分は、ライン(23)、ポンプ(4)、ライン(25)、ライン(28)を経て、加熱炉(5)に導入される。このときライン(28)では、ライン(26)、コンプレッサー(2)およびライン(27)を通じて導入される高純度の水
素(メイクアップ水素)と、ライン(42)からの硫化水素の除去されたリサイクル水素とが導入されて、高沸点軽油留分と混合されている。このようにして高沸点軽油留分は、水素と共に加熱炉(5)に導入されて水素化処理温度まで加熱され、ライン(30)を通じて脱硫塔(15)の高沸点軽油留分水素化処理部(16)に導入される。
【0052】
脱硫塔(15)は、上部に高沸点軽油留分水素化処理部(16)を、下部に低沸点軽油留分水素化処理部(17)を有しており、高沸点軽油留分水素化処理部(16)と低沸点軽油留分水素化処理部(17)は、それぞれ各軽油留分を水素化処理する触媒層を有している。高沸点軽油留分水素化処理部(16)と低沸点軽油留分水素化処理部(17)の間には、高沸点軽油留分水素化処理部(16)内の、水素を含有するガスを、低沸点軽油留分水素化処理部(17)に導入する手段であるガス通過部(18)を有している。ガス通過部(18)は、処理油を通過せず、水素を含有するガスを通過するものであって、具体的には、チムニートレイ、ガス透過膜などの手段を採用することができる。
【0053】
ライン(30)を通じて脱硫塔(15)の高沸点軽油留分水素化処理部(16)に水素ガスと共に導入された高沸点軽油留分は、高沸点軽油留分水素化処理部(16)内の触媒層で水素化処理され、処理油はライン(32)より得られる。また、高沸点軽油留分水素化処理部(16)において、未反応の水素ガスを主成分とし、水素化処理で生成した硫化水素を含むガス状成分は、ガス通下部(18)を通じて、低沸点軽油留分水素化処理部(17)へ導入される。
【0054】
ライン(31)を通じて脱硫塔(15)の低沸点軽油留分水素化処理部(17)に導入された低沸点軽油留分は、ガス通下部(18)を通じて高沸点軽油留分水素化処理部(16)から導入された水素を含有するガス状成分と混合され、低沸点軽油留分水素化処理部(17)内の触媒層で水素化処理される。この処理油である脱硫された低沸点軽油留分と、未反応水素と生成した硫化水素とを含む混合流体は、脱硫塔(15)塔底部よりライン(33)を通じて得られる。
【0055】
ライン(33)は、ライン(32)と合流し、これにより脱硫された低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とが混合される。脱硫された低沸点軽油留分、脱硫された高沸点軽油留分、未反応の水素および生成した硫化水素を含有する流体は、気液分離器(9)へと導入される。気液分離器(9)では、導入された混合流体が気液分離され、脱硫された低沸点軽油留分と脱硫された高沸点軽油留分とを含む脱硫軽油が、液体成分としてライン(37)より得られる。また、気液分離器(9)において気体成分に同伴された軽油留分は、気液分離器(11)において気体成分から分離され、ライン(43)を通じて気液分離器(9)からの液体成分と合流され、ライン(37)を通じて得られる脱硫軽油の一部となる。ライン(37)から得られた脱硫軽油は、良好な水素化脱硫がなされており、通常、硫黄含有量が500ppm以下、好ましくは50ppm以下に高度に脱硫されている。
【0056】
また、気液分離器(9)からは、未反応の水素および生成した硫化水素を含有する気体成分が、ライン(36)より得られる。この気体成分中の水素は、硫化水素の除去後に系内にリサイクルされるのが望ましい。この場合、気体成分は、ライン(36)からエアフィンクーラーなどの冷却器(10)に導入されて冷却された後、ライン(38)、気液分離器(11)、ライン(39)を経て、アミン処理装置などの硫化水素除去装置(12)へ導入される。硫化水素除去装置では、気体中の硫化水素成分が除去される。
【0057】
硫化水素除去装置(12)よりライン(40)を経て得られる気体成分は、水素を主成分とし硫化水素が除去された気体であって、高純度の水素ガスとなっている。この水素ガスは、気液分離器(13)、ライン(41)、コンプレッサー(14)およびライン(42)を通じて、リサイクル水素として、水素化処理前の高沸点軽油留分に導入・混合され
、高沸点軽油留分の水素化処理反応に用いることができる。
【0058】
このようにして、本発明の第二の軽油留分の脱硫装置を用いて軽油留分を好適に脱硫処理することができる。
上述の脱硫塔(15)において、高沸点軽油留分水素化処理部(16)内の触媒層および、低沸点軽油留分水素化処理部(17)内の触媒層を構成する触媒としては、通常灯軽油留分を水素化脱硫する触媒がいずれも好ましく用いられ、たとえば、シリカまたはシリカ−アルミナを担体とし、これにNi、CoおよびMoから選ばれる2種以上の金属が硫化物として担持された触媒、たとえばいわゆるCo−Mo系、Ni−Mo系、Ni−Co−Mo系触媒などが好ましく用いられる。また、低沸点軽油留分の水素化処理に用いられる触媒は、このような、Ni、CoおよびMoから選ばれる2種以上の金属が硫化物としてシリカまたはシリカ−アルミナ担体に担持された触媒とともに、ゼオライト触媒を用いた2元触媒であってもよい。高沸点軽油留分水素化処理部(16)内の触媒層と、低沸点軽油留分水素化処理部(17)内の触媒層とでは、同じ触媒が用いられてもよく、異なる触媒が用いられてもよい。
【0059】
このような本発明の第二の軽油留分の脱硫装置を用いると、脱硫塔(15)において、高沸点軽油留分の水素化処理に用いた水素ガスの未反応分を、直接低沸点軽油留分の水素化処理に用いるため、高沸点軽油留分の水素化処理における反応圧力と低沸点軽油留分の水素化処理における反応圧力との差を、比較的小さくすることができ、装置の制御が容易になる。
【0060】
また、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを別個の水素化処理装置で処理する場合よりも、脱硫装置およびラインなどの周辺設備を削減することができ、装置構成を簡略化することができるため、設備費、装置の制御、メンテナンスの手間、装置面積などを削減することができ、経済的に軽油留分を高度に脱硫処理することができる。
【0061】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1
図1に示す装置により、表1に示す原料軽油留分を処理した。
まず、表1に示す性状の原料軽油留分を、分留器(1)に導入し、カットポイント320℃で2分割し、低沸点軽油留分と、高沸点軽油留分とを得た。このとき、得られた低沸点軽油留分の量は、原料軽油に対して70容量%であった。
【0063】
次いで、得られた高沸点軽油留分を、ライン(26)より導入したメイクアップ水素(水素純度:100%、流量:55Nl/h)および、コンプレッサー(14)で昇圧したライン(42)からのリサイクル水素(水素純度:85%、流量:51Nl/h)と混合した後、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(4)により、300cc/h(液空間速度1.5hr-1)の流量で高沸点軽油留分水素化処理装置(6)に導入し、水素化処理を行った。
【0064】
高沸点軽油留分水素化処理装置(6)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒200ccをあらかじめ充填しており、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)の触媒層入り口温度は350℃、圧力は60kg/cm2Gであった。
【0065】
次いで、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)の下部からライン(32)を通じて排出した水素化処理物を、気液分離器(8)に導入して、水素を主成分とする気体と水素化処
理高沸点軽油とに分離した。
【0066】
また、分離器(1)より得た低沸点軽油留分は、気液分離器(8)で分離した水素を主成分とする気体(水素流量:86Nl/h)と混合した後、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(3)により、700cc/h(液空間速度2.0hr-1)の流量で低沸点軽油留分水素化処理装置(7)に導入し、水素化処理を行った。
【0067】
低沸点軽油留分水素化処理装置(7)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒350ccをあらかじめ充填しており、低沸点軽油留分水素化処理装置(7)の触媒層入り口温度は350℃、圧力は50kg/cm2Gであった。
【0068】
低沸点軽油留分水素化処理装置(7)の下部からライン(33)を通じて排出した水素化処理物は、ライン(35)からの水素化処理高沸点軽油と混合した後、気液分離器(9)にて、水素を主成分とする気体成分と水素化処理油とに分離した。
【0069】
気液分離器(9)にて分離した、水素を主成分とする気体成分は、硫化水素除去装置(12)にて硫化水素を0.1%以下の濃度に除去した後、上述した高沸点軽油留分水素化処理のリサイクル水素として使用した。また、気液分離器(9)にて気体成分に同伴された軽油留分は、気液分離器(II)で液体成分として分離し、気液分離器(9)で得た水素化処理油と合流した。合流した水素化処理油は、製品脱硫軽油としてライン(37)より得た。ライン(37)から得られた製品脱硫軽油の硫黄濃度は、50wtppmであった。
また、ライン(32)における水素化処理高沸点軽油、ライン(33)における水素化処理低沸点軽油について、それぞれ一部抜き出して硫黄濃度を測定した。
【0070】
高沸点軽油留分水素化処理および低沸点軽油留分水素化処理の処理条件(反応条件)と、各水素化処理油中の硫黄濃度の測定結果を表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

比較例1
実施例1で用いた原料軽油留分を、図3に示す装置により、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とに分留することなく処理した。
【0073】
まず、ライン(26)より導入したメイクアップ水素(水素純度:100%、流量:60Nl/h)および、コンプレッサー(14)で昇圧下ライン(42)からのリサイクル水素(水素純度:85%、流量:140Nl/h)が合流した、ライン(44)からの水素ガスと、原料軽油留分とを混合した後、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(3)により、1000cc/h(液空間速度1.43hr-1)の流量で、軽油留分水素化処理装置(19)に導入し、水素化処理を行った。
【0074】
軽油留分水素化処理装置(19)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒700ccをあらかじめ充填しており、軽油留分水素化処理装置(19)の触媒層入り口温度は350℃、圧力は60kg/cm2Gであった。
【0075】
次いで、軽油留分水素化処理装置(19)の下部からライン(33)を通じて排出した水素化処理物を、気液分離器(11)に導入して、水素を主成分とする気体と水素化処理軽油とに分離した。気液分離器(11)にて分離した水素を主成分とする気体は、硫化水素除去装置(12)にて硫化水素を0.1%以下の濃度に除去した後、上述したリサイクル水素として使用した。また、気液分離器(11)にて分離した水素化処理軽油は、脱硫軽油としてライン(37)より得た。ライン(37)から得た脱硫軽油の硫黄濃度は50wtppmであった。
【0076】
軽油留分水素化処理の処理条件(反応条件)と脱硫軽油の硫黄濃度の測定結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

比較例2
実施例1と同様にカットポイント320℃で2分割し、低沸点軽油留分と、高沸点軽油留分とを得た。このとき、得られた低沸点軽油留分の量は、原料軽油に対して70容量%であった。
【0078】
得られた低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを、図3に示す装置によりそれぞれ別個に処理し、低沸点水素化処理軽油と高沸点水素化処理軽油とを製造した後、得られた低沸点水素化処理軽油と高沸点水素化処理軽油とを混合して脱硫軽油を得た。
高沸点軽油留分の水素化処理条件(反応条件)、低沸点軽油留分の水素化処理条件、各水素化処理軽油中の硫黄濃度および脱硫軽油の硫黄濃度を表4に示す。
【0079】
【表4】

同等の硫黄濃度の脱硫軽油を製造した実施例1と比較例1とにおいて、系全体で使用した触媒の総量を比較すると、実施例1では550ccであったのに対し、比較例1では700ccを要した。このような実施例1と比較例1との結果より、軽油留分を低沸点軽油留分と高沸点軽油留分に分留して別々に水素化処理し、得られた水素化処理油を混合することで触媒の使用量を低減することが可能であることが示され、実施例1では少ない触媒量で50wtppm硫黄濃度の脱硫軽油を経済的に製造できたことがわかった。
【0080】
また、実施例1と比較例2の結果から、高沸点軽油留分水素化処理装置で使用した水素の未反応分を低沸点軽油留分水素化処理装置で使用する、すなわちリサクル水素を共有する実施例1では、水素を共有しない比較例2と比較して、系全体における水素の使用量(リサイクル水素量)を削減できるため、硫化水素除去装置、ポンプ動力ならびにコンプレッサー動力などの負荷を低減でき、経済的であることがわかる。また、水素を共有する実施例1では、比較例2と比較して、リサイクルコンプレッサー、硫化水素除去装置などの設備を削減することができ、装置コストを低減できるため、経済的に50wtppm硫黄濃度の脱硫軽油が得られることがわかる。
【0081】
実施例2
図1に示す装置により、実施例1で用いた原料軽油留分を処理した。
まず、実施例1で用いた表1に示す性状の原料軽油留分を、分留器(1)に導入し、カットポイント347℃で2分割し、低沸点軽油留分と、高沸点軽油留分とを得た。このとき、得られた低沸点軽油留分の量は、原料軽油に対して80容量%であった。
【0082】
次いで、得られた高沸点軽油留分を、ライン(26)より導入したメイクアップ水素(水素純度:100%、流量:58Nl/h)および、コンプレッサー(14)で昇圧したライン(42)からのリサイクル水素(水素純度:85%、流量:54Nl/h)と混合した後、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(4)により、200cc/h(液空間速度0.5hr-1)の流量で高沸点軽油留分水素化処理装置(6)に導入し、水素化処理を行った。
【0083】
高沸点軽油留分水素化処理装置(6)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒400ccをあらかじめ充填しており、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)の触媒層入り口温度は355℃、圧力は60kg/cm2Gであった。
【0084】
次いで、高沸点軽油留分水素化処理装置(6)の下部からライン(32)を通じて排出した水素化処理物を、気液分離器(8)に導入して、水素を主成分とする気体と水素化処理高沸点軽油とに分離した。
【0085】
また、分離器(1)より得た低沸点軽油留分は、気液分離器(8)で分離した水素を主成分とする気体(水素流量:98Nl/h)と混合した後、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(3)により、800cc/h(液空間速度1.7hr-1)の流量で低沸点軽油留分水素化処理装置(7)に導入し、水素化処理を行った。
【0086】
低沸点軽油留分水素化処理装置(7)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒470ccをあらかじめ充填しており、低沸点軽油留分水素化処理装置(7)の触媒層入り口温度は355℃、圧力は50kg/cm2Gであった。
【0087】
低沸点軽油留分水素化処理装置(7)の下部からライン(33)を通じて排出した水素化処理物は、ライン(35)からの水素化処理高沸点軽油と混合した後、気液分離器(9)にて、水素を主成分とする気体成分と水素化処理油とに分離した。
【0088】
気液分離器(9)にて分離した、水素を主成分とする気体成分は、硫化水素除去装置(12)にて硫化水素を0.1%以下の濃度に除去した後、上述した高沸点軽油留分水素化処理のリサイクル水素として使用した。また、気液分離器(9)にて気体成分に同伴された軽油留分は、気液分離器(11)で液体成分として分離し、気液分離器(9)で得た水素化処理油と合流した。合流した水素化処理油は、製品脱硫軽油としてライン(37)より得た。ライン(37)から得られた製品脱硫軽油の硫黄濃度は、10wtppmであっ
た。
【0089】
また、ライン(32)における水素化処理高沸点軽油、ライン(33)における水素化処理低沸点軽油について、それぞれ一部抜き出して硫黄濃度を測定した。
高沸点軽油留分水素化処理および低沸点軽油留分水素化処理の処理条件(反応条件)と、各水素化処理油中の硫黄濃度の測定結果を表5に示す。
【0090】
【表5】

比較例3
実施例1で用いた表1に示す性状の原料軽油留分を、カットポイント347℃で2分割し、低沸点軽油留分と、高沸点軽油留分とを得た。このとき、得られた低沸点軽油留分の量は、原料軽油に対して80容量%であった。
【0091】
得られた低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを、比較例2と同様に、図3に示す装置によりそれぞれ別個に処理し、低沸点水素化処理軽油と高沸点水素化処理軽油とを製造した後、得られた低沸点水素化処理軽油と高沸点水素化処理軽油とを混合して、硫黄濃度が10wtppmの脱硫軽油を得た。
【0092】
高沸点軽油留分の水素化処理条件(反応条件)、低沸点軽油留分の水素化処理条件、各水素化処理軽油中の硫黄濃度および脱硫軽油の硫黄濃度を表6に示す。
【0093】
【表6】

実施例2と比較例3の結果から、高沸点軽油留分水素化処理装置で使用した水素の未反応分を低沸点軽油留分水素化処理装置で使用する、すなわちリサクル水素を共有する実施例2では、水素を共有しない比較例3と比較して、系全体における水素の使用量(リサイクル水素量)を削減できるため、硫化水素除去装置、ポンプ動力ならびにコンプレッサー動力などの負荷を低減でき、経済的であることがわかる。また、水素を共有する実施例2では、比較例3と比較して、リサイクルコンプレッサー、硫化水素除去装置などの設備を削減することができ、装置コストを低減できるため、経済的に10wtppm硫黄濃度の脱硫軽油が得られることがわかる。
【0094】
実施例3
実施例1における脱硫軽油の製造に引き続き、そのまま運転を180日間継続して行った。
【0095】
運転に伴って、触媒上へのコーク析出などにより触媒の活性が徐々に低下するため、運転初期の水素化処理物中の硫黄濃度を維持するように、高沸点軽油留分水素化処理装置および低沸点軽油留分水素化処理装置内の触媒層入り口温度を徐々に上げた。触媒層入り口温度の制御は加熱炉における流体への加熱量を制御することで行った。
【0096】
180日間にわたって水素化処理高沸点軽油と水素化処理低沸点軽油の硫黄濃度はそれぞれ運転初期とほぼ同じ103wtppm、27wtppmに制御したところ、180日目において、高沸点軽油留分水素化処理装置の触媒層入り口温度は354.6℃、低沸点軽油留分水素化処理装置内の触媒層入り口温度は352.6℃であった。
【0097】
比較例4
比較例2における脱硫軽油の製造に引き続き、そのまま運転を180日間継続して行った。
【0098】
運転に伴って、触媒上へのコーク析出などにより触媒の活性が徐々に低下するため、運転初期の水素化処理物中の硫黄濃度を維持するように、各軽油留分水素化処理装置内の触媒層入り口温度を徐々に上げた。触媒層入り口温度の制御は加熱炉における流体への加熱量を制御することで行った。
【0099】
180日間にわたって、水素化処理高沸点軽油と水素化処理低沸点軽油の硫黄濃度はそ
れぞれ運転初期とほぼ同じ104wtppm、26wtppmに制御したところ、180日目において、高沸点軽油留分の水素化処理装置内における触媒層入り口温度は358.6℃、低沸点軽油留分の水素化処理装置内における触媒層入り口温度は352.6℃であった。
【0100】
実施例3と比較例4の結果、低沸点軽油留分の水素化処理においては、実施例3と比較例4の結果で触媒層入り口温度の経時間変化に大きな差はなかったが、高沸点軽油留分の水素化処理では、比較例4における反応温度が実施例3よりもはるかに高かった。これより、比較例4では実施例3よりも、高沸点軽油留分水素化処理装置で使用した触媒の劣化が大きいことがわかった。
【0101】
この結果より、実施例3のように高沸点軽油留分水素化処理装置で使用した水素の未反応分を低沸点軽油留分水素化処理装置で使用することで、すなわちリサクル水素を共有し、メイクアップ水素を高沸点軽油留分水素化処理装置から導入することで、触媒の劣化を低減でき、有利であることがわかった。このような効果は、実施例3では、高沸点軽油留分の水素化処理装置に供給される水素(メイクアップ水素とリサイクル水素の合計量)中のメイクアップ水素の割合が比較例4よりも大きく、水素純度が高いため、水素化処理反応がより円滑に進行し、高沸点軽油留分の水素化処理触媒上にコークが付着するのを抑制できるためと考えられる。
【0102】
このように、実施例3と比較例4より、水素を共有し、リサイクルして脱硫軽油を製造すると、水素を共有しない場合よりも触媒寿命が延長でき、長期間にわたって水素化処理高沸点軽油が生産できるため経済的であることがわかる。
【0103】
実施例4
実施例1で用いた原料軽油留分を、高沸点軽油留分水素化処理部(16)および低沸点軽油留分水素化処理部(17)を有する脱硫塔(15)を有する図2に示す装置により処理した。
【0104】
なお、脱硫塔(15)上部の高沸点軽油留分水素化処理部(16)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒200ccを充填しており、脱硫塔(15)下部の低沸点軽油留分水素化処理部(17)には、触媒層として、予備硫化処理したCo−Mo触媒350ccを充填していた。また、脱硫塔(15)内の高沸点軽油留分水素化処理部(16)と低沸点軽油留分水素化処理部(17)の間には、ガス通過部(18)として、高沸点軽油留分水素化処理部(16)のガス状成分を低沸点軽油留分水素化処理部(17)へと通過させるチムニートレイが設けられていた。
【0105】
まず、実施例1で用いた表1に示す性状の原料軽油留分を、分留器(1)に導入し、カットポイント320℃で2分割し、低沸点軽油留分と、高沸点軽油留分とを得た。このとき、得られた低沸点軽油留分の量は、原料軽油に対して70容量%であった。
【0106】
次いで、得られた高沸点軽油留分を、ライン(26)より導入したメイクアップ水素(水素純度:100%、流量:57Nl/h)および、コンプレッサー(14)で昇圧したライン(42)からのリサイクル水素(水素純度:85%、流量:40Nl/h)と混合した後、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(4)により、300cc/h(液空間速度1.5hr-1)の流量で、脱硫塔(15)上部の高沸点軽油留分水素化処理部(16)に導入し、水素化処理を行った。このとき、高沸点軽油留分水素化処理部(16)の触媒層入り口温度は350℃、圧力は60kg/cm2Gであった。
【0107】
高沸点軽油留分水素化処理部(16)における水素化処理物は、下方よりライン(32
)を通じて排出した。また、高沸点軽油留分水素化処理部(16)における未反応水素を含有するガス状成分は、ガス通過部(18)より低沸点軽油留分水素化処理部(17)に導入した。
【0108】
また、分留器(1)より得た低沸点軽油留分を、加熱炉(5)にて所定の温度まで加熱し、ポンプ(3)により、700cc/h(液空間速度2.0hr-1)の流量で、脱硫塔(15)下部の低沸点軽油留分水素化処理部(17)に導入し、水素化処理を行った。このとき、低沸点軽油留分水素化処理部(17)の触媒層入り口温度は350℃であった。
【0109】
低沸点軽油留分水素化処理部(17)の下部からライン(33)を通じて排出した水素化処理物は、ライン(32)からの水素化処理高沸点軽油と混合した後、気液分離器(9)にて、水素を主成分とする気体成分と水素化処理油とに分離した。
【0110】
気液分離器(9)にて分離した、水素を主成分とする気体成分は、硫化水素除去装置(12)にて硫化水素を0.1%以下の濃度に除去した後、上述した高沸点軽油留分水素化処理のリサイクル水素として使用した。また、気液分離器(9)にて気体成分に同伴された軽油留分は、気液分離器(11)で液体成分として分離し、気液分離器(9)で得た水素化処理油と合流した。合流した水素化処理油は、製品脱硫軽油としてライン(37)より得た。ライン(37)から得られた製品脱硫軽油の硫黄濃度は、50wtpbmであった。
また、ライン(32)における水素化処理高沸点軽油、ライン(33)における水素化処理低沸点軽油について、それぞれ一部抜き出して硫黄濃度を測定した。
【0111】
高沸点軽油留分水素化処理および低沸点軽油留分水素化処理の処理条件(反応条件)と、各水素化処理油中の硫黄濃度の測定結果を表7に示す。
【0112】
【表7】

実施例4では、図2に示す装置を用いて、実施例1と同様に効率的な水素化処理が行えることがわかった。また、実施例4では、図2に示す装置を用いて、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを1基の脱硫塔で同時に処理するため、脱硫装置を複数用いる場合と比較して装置を簡略化でき、設備面積を削減でき、脱硫装置間の配管などの周辺設備が不要となり、熱効率にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の軽油留分の脱硫方法によれば、低沸点軽油留分の水素化処理工程(I)と、高沸点軽油留分の水素化処理工程(II)とを、それぞれ特定のH2/Oil比で行い、高
沸点軽油留分の水素化処理工程(II)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、低沸点軽油留分の水素化処理工程(I)で用いるため、系全体における水素使用量を削減し、水素およびエネルギーを効率的に用いることができ、しかも各留分に充分な水素化脱硫を施すことができ、高度に脱硫された脱硫軽油を製造することができる。また、このような本発明の方法によれば、軽油留分を一括して水素化脱硫する場合と比べて、少ない触媒量で経済的に充分な軽油留分を脱硫することができる。
【0114】
本発明の脱硫軽油は、本発明の脱硫軽油の製造方法により、低コストで好適に製造され、硫黄含量が充分に低減されており、ディーゼル自動車用燃料などとして好適に用いることができる。
【0115】
また、本発明によれば、水素およびエネルギーを効率的に用いることができ、しかも各留分に充分な水素化脱硫を施すことができ、少ない触媒量で高度に脱硫された脱硫軽油を製造しうる、軽油留分の脱硫装置を提供することができる。
【0116】
さらに、本発明によれば、水素ガスおよびエネルギーを効率的に用いることができ、低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを別個の水素化処理装置で処理する場合よりも、脱硫装置およびラインなどの周辺設備を削減することができ、装置構成を簡略化することができ、設備費、装置の制御およびメンテナンスの手間、装置面積などを削減することができ、経済的に軽油留分を高度に脱硫処理することのできる、優れた第二の軽油留分の脱硫装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、実施例1の概略工程図である。
【図2】図2は、実施例4の概略工程図である。
【図3】図3は、比較例1の概略工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽油留分をカットポイントt℃(ただし、280≦t≦360(℃)を満たす)で2分割して得られる低沸点軽油留分を、H2/Oil比が70〜200Nm3/klを満たし、圧力が30〜70kg/cm2Gを満たす条件で水素化処理し、処理油を得る、低沸点軽
油留分水素化処理工程(I)と、
カットポイントt℃で2分割して得られる高沸点軽油留分を、H2/Oil比が200
〜800Nm3/klを満たし、圧力が40〜80kg/cm2Gを満たす条件で水素化処理し、処理油を得る、高沸点軽油留分水素化処理工程(II)と、
工程(I)で得られた処理油と、工程(II)で得られた処理油とを混合する工程(III)と
を有し、
工程(II)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、工程(I)の水素化処理で用い、
硫黄含有量が50ppm以下の脱硫軽油を得ることを特徴とする軽油留分の脱硫方法。
【請求項2】
低沸点軽油留分水素化処理工程(I)における未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、硫化水素を除去した後に、高沸点軽油留分水素化処理工程(II)の水素化処理で用いる、請求項1に記載の軽油留分の脱硫方法。
【請求項3】
軽油留分が、直留軽油留分であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の軽油留分の脱硫方法。
【請求項4】
軽油留分から硫黄含有量が50ppm以下の脱硫軽油を製造する軽油留分の脱硫装置であって、
軽油留分をカットポイントt℃(ただし、280≦t≦360(℃)を満たす)で2分割して得られる低沸点軽油留分を水素化脱硫する、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)と、
カットポイントt℃で2分割して得られる高沸点軽油留分を水素化脱硫する、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)と
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から得られた処理油と、高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から得られた処理油とを混合する手段(c)と
高沸点軽油留分水素化処理手段(b)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部を、低沸点軽油留分水素化処理手段(a)に導入する手段(d)と
を有することを特徴とする軽油留分の脱硫装置。
【請求項5】
低沸点軽油留分水素化処理手段(a)から排出される未反応水素を含むガスの少なくとも一部から、硫化水素を除去する手段(e)と、
手段(e)から得られた、水素を含有し硫化水素を実質的に含まないガスを、高沸点軽油留分の水素化処理手段(b)に導入する手段(f)と
を有する、請求項4に記載の軽油留分の脱硫装置。
【請求項6】
軽油留分から硫黄含有量が50ppm以下の脱硫軽油を製造する軽油留分の脱硫装置であって、
低沸点軽油留分を水素化処理する低沸点軽油留分水素化処理部と、
高沸点軽油留分を水素化処理する高沸点軽油留分水素化処理部と、
高沸点軽油留分水素化処理部の、水素を含有するガスを、低沸点軽油留分水素化処理部に導入する手段と
を有する脱硫塔と、
該脱硫塔から得られる、脱硫された低沸点軽油留分と高沸点軽油留分とを混合する手段

からなることを特徴とする軽油留分の脱硫装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−46693(P2009−46693A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306117(P2008−306117)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【分割の表示】特願2002−543615(P2002−543615)の分割
【原出願日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】