載置台およびそれを用いたプラズマ処理装置
【課題】溶射皮膜の修理頻度を低減することができる載置台およびそのような載置台を用いたプラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】基板Gにプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台3であって、基材5と、基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部6′と、載置部6′の周囲に設けられた、分割式のシールド部材7′とを具備し、載置部6′は、シールド部材7′の分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材43′と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、セラミックス部材43′が交換可能である。
【解決手段】基板Gにプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台3であって、基材5と、基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部6′と、載置部6′の周囲に設けられた、分割式のシールド部材7′とを具備し、載置部6′は、シールド部材7′の分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材43′と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、セラミックス部材43′が交換可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)製造用のガラス基板などの基板に対してドライエッチング等のプラズマ処理を施す処理チャンバ内において、基板を載置する載置台およびそれを用いたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPDや半導体の製造プロセスにおいては、被処理基板であるガラス基板に対して、ドライエッチング等のプラズマ処理が行われる。例えば、処理チャンバ内に設けられた載置台にガラス基板を載置した状態で載置台に高周波電力を供給することによってプラズマを生成し、そのプラズマによりガラス基板に対して所定のプラズマ処理を施す。このようなプラズマ処理に用いられる載置台としては耐プラズマ性等の観点から、表面にセラミックス溶射皮膜を形成したものが知られている。
【0003】
このような溶射皮膜はプラズマ処理に際しては、通常基板に覆われており、プラズマが直接到達することが防止されているが、ガラス基板の角部のオリエンテーションフラット部はガラス基板のオーバーラップ量が少なく、ガラス基板の置き位置誤差により、溶射皮膜の角部が露出し、溶射皮膜が削れる場合がある。
【0004】
一方、FPD用のガラス基板のプラズマ処理装置においては、載置台の周囲にセラミックス製のシールドリングが配置されるが、近年FPD用のガラス基板は大型の一途をたどり、一体に形成することが困難となっており、特許文献1に記載されているように、分割タイプのシールドリングが用いられている。
【0005】
しかしながら、このような分割タイプのシールドリングは、分割部品の組み付け公差によって、合わせ目部分に隙間が発生し、その隙間部分からプラズマが侵入して溶射皮膜が削れる場合がある。
【0006】
このようにして溶射皮膜が削れた場合には、従来、削れ部分についての部分修理または全剥離再溶射を実施して修理を行っているが、修理頻度が高く、修理コストが極めて高いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−115476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、溶射皮膜の修理頻度を低減することができる載置台およびそのような載置台を用いたプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、基材と、前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材とを具備し、前記載置部は、前記シールド部材の分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台を提供する。
【0010】
本発明の第2の観点では、基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、基材と、前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材とを具備し、前記載置部は、前記シールド部材の角部および分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台を提供する。
【0011】
上記第1、第2の観点において、前記溶射部は、基板を静電吸着する静電チャックを有する構成とすることができる。また、前記静電チャックは、基板を静電吸着するための直流電圧が印加される電極を有し、前記セラミックス部材は、前記電極に対応する高さ位置を含む上部と、前記電極に対応する高さ位置を含まない下部とを有し、前記上部が前記電極よりも外側に位置し、前記下部が前記上部よりも内側に突出していることが好ましい。さらに、前記基材が導電性であり、前記基材に高周波電力を供給する高周波電力供給手段をさらに有する構成とすることができる。前記セラミックス溶射皮膜と前記セラミックス部材は、アルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)から選択された材料で構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第3の観点では、基板を収容する処理チャンバと、前記処理チャンバ内で基板を載置する、前記第1、第2の観点のいずれかの構成を有する載置台と、前記処理チャンバ内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、前記処理チャンバ内で処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構と、前記処理チャンバ内を排気する排気機構とを具備することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置部にセラミック溶射皮膜を用いた載置台において、プラズマの損傷を受けやすい角部または/およびシールドリングの合わせ目に対応する部分に交換可能なセラミック部材を設けたので、プラズマによる損傷のほとんどをセラミックス部材が担い、溶射皮膜に損傷がほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る載置台が設けられたプラズマ処理装置を示す断面図。
【図2】図1のプラズマ処理装置に用いられる載置台の要部を拡大して示す平面図。
【図3】図1のプラズマ処理装置に用いられる載置台の要部を拡大して示す断面図。
【図4】静電チャックの角部がガラス基板で覆われた状態を示す平面図。
【図5】静電チャックの角部が露出した状態を示す平面図。
【図6】図1の載置台に用いられる静電チャックのセラミック部材を示す斜視図。
【図7】シールドリングを分割タイプとした載置台を示す斜視図。
【図8】シールドリングの分割片の合わせ目部分に隙間が生じた状態を示す図。
【図9】図7の載置台の要部を拡大して示す平面図。
【図10】図7の載置台の要部を拡大して示す断面図。
【図11】図7の載置台に用いられる静電チャックのセラミックス部材を示す斜視図。
【図12】図7の載置台の他の例の要部を拡大して示す平面図。
【図13】図12に示す載置台に用いられる静電チャックのセラミックス部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る載置台が設けられたプラズマ処理装置を示す断面図である。このプラズマ処理装置1は、FPD用ガラス基板Gの所定の処理を行う装置の断面図であり、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されている。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0016】
このプラズマ処理装置1は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形されたチャンバ2を有している。この処理チャンバ2内の底部には被処理基板であるガラス基板Gを載置するための載置台3が設けられている。
【0017】
載置台3は、絶縁部材4を介して処理チャンバ2の底部に支持されており、金属製の凸型の基材5と基材5の凸部5aの上に設けられたガラス基板Gを載置する載置部6と、載置部6および基材5の凸部5aの周囲に設けられた、絶縁性セラミックス、例えばアルミナからなる額縁状のシールドリング7と、基材5の周囲に設けられた絶縁性セラミックス、例えばアルミナからなるリング状の絶縁リング8とを有している。載置部6は後述するようにガラス基板を静電吸着する静電チャックを有している。
【0018】
チャンバ2の底壁、絶縁部材4および載置台3を貫通するように、その上へのガラス基板Gのローディングおよびアンローディングを行うための昇降ピン10が昇降可能に挿通されている。この昇降ピン10はガラス基板Gを搬送する際には、載置台3の上方の搬送位置まで上昇され、それ以外のときには載置台3内に没した状態となる。
【0019】
載置台3の基材5には、高周波電力を供給するための給電線12が接続されており、この給電線12には整合器13および高周波電源14が接続されている。高周波電源14からは例えば13.56MHzの高周波電力が載置台3の基材5に供給される。したがって、載置台3は下部電極として機能する。
【0020】
前記載置台3の上方には、この載置台3と平行に対向して上部電極として機能するシャワーヘッド20が設けられている。シャワーヘッド20は処理チャンバ2の上部に支持されており、内部に内部空間21を有するとともに、載置台3との対向面に処理ガスを吐出する複数の吐出孔22が形成されている。このシャワーヘッド20は接地されており、下部電極として機能する載置台3とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0021】
シャワーヘッド20の上面にはガス導入口24が設けられ、このガス導入口24には、処理ガス供給管25が接続されており、この処理ガス供給管25は処理ガス供給源28に接続されている。また、処理ガス供給管25には、開閉バルブ26およびマスフローコントローラ27が介在されている。処理ガス供給源28からは、プラズマ処理、例えばプラズマエッチングのための処理ガスが供給される。処理ガスとしては、ハロゲン系のガス、O2ガス、Arガス等、通常この分野で用いられるガスを用いることができる。
【0022】
処理チャンバ2の底部には排気管29が形成されており、この排気管29には排気装置30が接続されている。排気装置30はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これにより処理チャンバ2内を所定の減圧雰囲気まで真空引き可能なように構成されている。また、処理チャンバ2の側壁には基板搬入出口31が設けられており、この基板搬入出口31がゲートバルブ32により開閉可能となっている。そして、このゲートバルブ32を開にした状態で搬送装置(図示せず)によりガラス基板Gが搬入出されるようになっている。
【0023】
次に、載置台3の載置部6の構造について詳細に説明する。
図2は載置台3の載置部6を拡大して示す平面図、図3はそのA−A線による断面図である。これらの図に示すように、載置部6は、表面にセラミックス溶射皮膜41を有し、内部に電極42が埋設された溶射部である静電チャック40と、角部を構成するセラミック部材43とを備えている。電極42は、ガラス基板Gよりも若干小さい矩形状をなしており、例えば溶射で形成されている。電極42には給電線33が接続されており、給電線33には直流電源34が接続されていて、電極42に直流電源34からの直流電圧が印加されることにより、クーロン力等の静電吸着力によりガラス基板Gが吸着される。なお、電極42は板材であってもよい。
【0024】
セラミックス溶射皮膜41およびセラミックス部材43の構成材料としては、例えばアルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)を挙げることができ、両者はこれらから選択された材料であれば同じ材料であっても異なる材料であっても構わない。コスト面からはアルミナ(Al2O3)が好ましいが、プラズマ耐性を重視する場合には、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)が好ましい。なお、セラミックス溶射皮膜41およびセラミックス部材43の構成材料としては、これら材料に限らず、他の誘電体セラミックスであってもよい。
【0025】
静電チャック40を有する載置部6の角部には上記セラミックス部材43に対応する切り欠きが形成されており、その部分に上記セラミックス部材43が嵌め込まれ、シールドリング7により押さえつけられている。
【0026】
図4の平面図に示すように、載置部6の角部6aは、通常であればガラス基板Gで覆われており、オリエンテーションフラットFが存在する角部が位置した場合でもガラス基板Gに覆われるように設計されている。しかしながら、オリエンテーションフラットFが存在する角部はオーバーラップマージンが小さく、図5に示すように、わずかな基板Gの置き位置のずれにより載置部6の角部6aが露出してプラズマに曝され、プラズマによる損傷を受ける場合がある。従来はこのようなプラズマに曝される角部もセラミックス溶射皮膜で構成されていたため、角部がプラズマによって損傷される度毎に、溶射皮膜の修理のために再溶射処理する必要があり、修理頻度が高く、修理コストが高いものとなっていた。
【0027】
これに対して、角部6aをセラミックス部材43で構成した場合には、角部へのプラズマの損傷をほとんどセラミックス部材43が担うため、損傷した場合はセラミックス部材43の交換で対応することができ、溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。また、このような点を考慮すると、プラズマ損傷をほとんど受けないセラミックス溶射皮膜41を安価なアルミナ(Al2O3)で構成し、プラズマ損傷のほとんどを担うセラミックス部材43をプラズマ耐性の高いイットリア(Y2O3)またはフッ化イットリウム(YF3)で構成することにより、過剰なコスト上昇を招くことなくプラズマ耐性を向上させることができる。
【0028】
このセラミックス部材43は、図6に示す斜視図に示すように、その上部43aが静電チャック40の電極42に掛からないように小径となっており、電極が存在しない下部43bは組み付け性を考慮して大径となっている。
【0029】
次に、このように構成されるプラズマ処理装置1における処理動作について説明する。
まず、ゲートバルブ32を開いて、ガラス基板Gを搬送アーム(図示せず)により基板搬入出口31を介してチャンバ2内へと搬入し、載置台3の静電チャック6上に載置する。この場合に、昇降ピン10を上方に突出させて支持位置に位置させ、搬送アーム上のガラス基板Gを昇降ピン10の上に受け渡す。その後、昇降ピン10を下降させてガラス基板Gを載置台3の静電チャック6上に載置する。
【0030】
その後、ゲートバルブ32を閉じ、排気装置30によって、チャンバ2内を所定の真空度まで真空引きする。そして、直流電源34から静電チャック40の電極42に電圧を印加することにより、ガラス基板Gを静電吸着する。そして、バルブ26を開放して、処理ガス供給源28から処理ガスを、マスフローコントローラ27によってその流量を調整しつつ、処理ガス供給管25、ガス導入口24を通ってシャワーヘッド20の内部空間21へ導入し、さらに吐出孔22を通って基板Gに対して均一に吐出し、排気量を調節しつつチャンバ2内を所定圧力に制御する。
【0031】
この状態で高周波電源14から整合器13を介してプラズマ生成用の高周波電力を載置台3の基材5に供給し、下部電極としての載置台3と上部電極としてのシャワーヘッド20との間に高周波電界を生じさせて、処理ガスのプラズマを生成し、このプラズマによりガラス基板Gにプラズマ処理を施す。
【0032】
この際に、上述したように、ガラス基板Gの角部にオリエンテーションフラットFが形成されている場合には、図5に示すようにガラス基板Gの載置位置がずれて、角部6aがプラズマに曝されて損傷を受けることがあるが、その部分がセラミックス溶射皮膜であれば修理のために再度溶射処理を行う必要がある。本実施形態ではその部分にセラミックス部材43が設けられており、角部へのプラズマの損傷をほとんどセラミックス部材43が担うため、セラミックス部材43の交換で対応することができ、セラミックス溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【0033】
また、セラミックス部材43の上部43aが電極42に掛からないように小径となっており、電極42は従来と同様の形状のままとすることができるので、静電吸着の際のガラス基板Gへの電界の影響や直流電圧印加部への影響を回避することができる。また、下部43bを大径とすることにより、安定性を高くして部材の組み付け性を良好にすることができる。
【0034】
次に、載置台3の他の例について説明する。
ここでは、分割タイプのシールドリング7′を使用している。具体的には、図7に示すように、4つの分割片51を組み立ててシールドリング7′を構成している。
【0035】
この場合には、分割片51の組み付け公差によって、図8に示すように、分割片51の合わせ目部分52に隙間が発生し、その隙間部分からプラズマが侵入する場合がある。
【0036】
ここでは、このような際における溶射皮膜の損傷を防止することができる載置部6′を用いる。図9は載置部6′を用いた載置台の要部を示す平面図、図10はそのB−B線による断面図である。これらの図に示すように、載置部6′は載置部6と同様、セラミックス溶射皮膜41および電極42からなる静電チャック40を有しているが、載置部6とは異なり、合わせ目部分52に対応する位置にセラミックス部材43′が配置されている。このセラミックス部材43′は前記セラミックス部材43と同様に構成することができる。載置部6′には、合わせ目部分52に対応する位置に切り欠きが形成されており、その部分に上記セラミックス部材43′が嵌め込まれ、シールドリング7′により押さえつけられている。この場合のセラミックス部材43′の形状は図11の斜視図に示すように、同じくその上部43a′が静電チャック40の電極42に掛からないように小径となっており、電極が存在しない下部43b′は組み付け性を考慮して大径となっている。
【0037】
このような載置部6′の構成とすることにより、プラズマ処理の際にプラズマがシールドリング7′の隣接する分割片51の合わせ目52から侵入した場合でも、プラズマに曝されて損傷を受けるのは、ほぼセラミックス部材43′のみであり、セラミック部材43′の交換で対応することができ、溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【0038】
次に、載置台3のさらに他の例について説明する。
ここでは、上記例と同様に分割タイプのシールドリング7′を使用しており、分割片51の合わせ目部分52に隙間が発生してプラズマ損傷が生じるおそれがあり、かつ載置部の角部にもプラズマ損傷が生じるおそれがある場合に対応可能な載置部の構成を用いている。
【0039】
図12は載置台のさらに他の例を示す平面図である。この図に示すように、載置部6″は、載置部6、6′とは異なり、合わせ目部分52に対応する位置から角部6a″にかけてセラミックス部材43″が配置されている。このセラミックス部材43″は前記セラミックス部材43、43′と同様に構成することができる。載置部6″には、予め合わせ目部分52に対応する位置から角部6a″にかけての切り欠きが形成されており、その部分に上記セラミックス部材43″が嵌め込まれ、シールドリング7′により押さえつけられている。この場合のセラミックス部材43″の形状は図13の斜視図に示すように、同じくその上部43a″が電極42に掛からないように小径となっており、電極が存在しない下部43b″は組み付け性を考慮して大径となっている。
【0040】
このような載置部6″の構成とすることにより、プラズマ処理の際にプラズマがシールドリング7′の隣接する分割片51の合わせ目52から侵入した場合や、角部6a″がプラズマに曝された場合でも、プラズマに曝されて損傷を受けるのは、ほぼセラミックス部材43″のみであり、セラミック部材43″の交換で対応することができ、溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をFPD用のガラス基板のプラズマ処理に適用した場合について示したが、これに限るものではなく、他の種々の基板に対して適用可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、静電チャックを用いた載置台の載置部を例として示したが、必ずしも静電チャックを用いる必要はなく、載置部が単にセラミックス溶射皮膜で形成されている場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1;プラズ処理装置
2;処理チャンバ
3;載置台
5;基材
6,6′,6″;載置部
6a;角部
7,7′;シールドリング
14;高周波電源
20;シャワーヘッド
28;処理ガス供給源
34;直流電源
40;静電チャック
41;セラミックス溶射皮膜
42;電極
43,43′,43″;セラミックス部材
43a,43a′,43a″;上部
43b,43b′,43b″;下部
51;分割片
52;合わせ目部分
F;オリエンテーションフラット
G;ガラス基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)製造用のガラス基板などの基板に対してドライエッチング等のプラズマ処理を施す処理チャンバ内において、基板を載置する載置台およびそれを用いたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPDや半導体の製造プロセスにおいては、被処理基板であるガラス基板に対して、ドライエッチング等のプラズマ処理が行われる。例えば、処理チャンバ内に設けられた載置台にガラス基板を載置した状態で載置台に高周波電力を供給することによってプラズマを生成し、そのプラズマによりガラス基板に対して所定のプラズマ処理を施す。このようなプラズマ処理に用いられる載置台としては耐プラズマ性等の観点から、表面にセラミックス溶射皮膜を形成したものが知られている。
【0003】
このような溶射皮膜はプラズマ処理に際しては、通常基板に覆われており、プラズマが直接到達することが防止されているが、ガラス基板の角部のオリエンテーションフラット部はガラス基板のオーバーラップ量が少なく、ガラス基板の置き位置誤差により、溶射皮膜の角部が露出し、溶射皮膜が削れる場合がある。
【0004】
一方、FPD用のガラス基板のプラズマ処理装置においては、載置台の周囲にセラミックス製のシールドリングが配置されるが、近年FPD用のガラス基板は大型の一途をたどり、一体に形成することが困難となっており、特許文献1に記載されているように、分割タイプのシールドリングが用いられている。
【0005】
しかしながら、このような分割タイプのシールドリングは、分割部品の組み付け公差によって、合わせ目部分に隙間が発生し、その隙間部分からプラズマが侵入して溶射皮膜が削れる場合がある。
【0006】
このようにして溶射皮膜が削れた場合には、従来、削れ部分についての部分修理または全剥離再溶射を実施して修理を行っているが、修理頻度が高く、修理コストが極めて高いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−115476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、溶射皮膜の修理頻度を低減することができる載置台およびそのような載置台を用いたプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、基材と、前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材とを具備し、前記載置部は、前記シールド部材の分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台を提供する。
【0010】
本発明の第2の観点では、基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、基材と、前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材とを具備し、前記載置部は、前記シールド部材の角部および分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台を提供する。
【0011】
上記第1、第2の観点において、前記溶射部は、基板を静電吸着する静電チャックを有する構成とすることができる。また、前記静電チャックは、基板を静電吸着するための直流電圧が印加される電極を有し、前記セラミックス部材は、前記電極に対応する高さ位置を含む上部と、前記電極に対応する高さ位置を含まない下部とを有し、前記上部が前記電極よりも外側に位置し、前記下部が前記上部よりも内側に突出していることが好ましい。さらに、前記基材が導電性であり、前記基材に高周波電力を供給する高周波電力供給手段をさらに有する構成とすることができる。前記セラミックス溶射皮膜と前記セラミックス部材は、アルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)から選択された材料で構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第3の観点では、基板を収容する処理チャンバと、前記処理チャンバ内で基板を載置する、前記第1、第2の観点のいずれかの構成を有する載置台と、前記処理チャンバ内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、前記処理チャンバ内で処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構と、前記処理チャンバ内を排気する排気機構とを具備することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置部にセラミック溶射皮膜を用いた載置台において、プラズマの損傷を受けやすい角部または/およびシールドリングの合わせ目に対応する部分に交換可能なセラミック部材を設けたので、プラズマによる損傷のほとんどをセラミックス部材が担い、溶射皮膜に損傷がほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る載置台が設けられたプラズマ処理装置を示す断面図。
【図2】図1のプラズマ処理装置に用いられる載置台の要部を拡大して示す平面図。
【図3】図1のプラズマ処理装置に用いられる載置台の要部を拡大して示す断面図。
【図4】静電チャックの角部がガラス基板で覆われた状態を示す平面図。
【図5】静電チャックの角部が露出した状態を示す平面図。
【図6】図1の載置台に用いられる静電チャックのセラミック部材を示す斜視図。
【図7】シールドリングを分割タイプとした載置台を示す斜視図。
【図8】シールドリングの分割片の合わせ目部分に隙間が生じた状態を示す図。
【図9】図7の載置台の要部を拡大して示す平面図。
【図10】図7の載置台の要部を拡大して示す断面図。
【図11】図7の載置台に用いられる静電チャックのセラミックス部材を示す斜視図。
【図12】図7の載置台の他の例の要部を拡大して示す平面図。
【図13】図12に示す載置台に用いられる静電チャックのセラミックス部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る載置台が設けられたプラズマ処理装置を示す断面図である。このプラズマ処理装置1は、FPD用ガラス基板Gの所定の処理を行う装置の断面図であり、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されている。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0016】
このプラズマ処理装置1は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形されたチャンバ2を有している。この処理チャンバ2内の底部には被処理基板であるガラス基板Gを載置するための載置台3が設けられている。
【0017】
載置台3は、絶縁部材4を介して処理チャンバ2の底部に支持されており、金属製の凸型の基材5と基材5の凸部5aの上に設けられたガラス基板Gを載置する載置部6と、載置部6および基材5の凸部5aの周囲に設けられた、絶縁性セラミックス、例えばアルミナからなる額縁状のシールドリング7と、基材5の周囲に設けられた絶縁性セラミックス、例えばアルミナからなるリング状の絶縁リング8とを有している。載置部6は後述するようにガラス基板を静電吸着する静電チャックを有している。
【0018】
チャンバ2の底壁、絶縁部材4および載置台3を貫通するように、その上へのガラス基板Gのローディングおよびアンローディングを行うための昇降ピン10が昇降可能に挿通されている。この昇降ピン10はガラス基板Gを搬送する際には、載置台3の上方の搬送位置まで上昇され、それ以外のときには載置台3内に没した状態となる。
【0019】
載置台3の基材5には、高周波電力を供給するための給電線12が接続されており、この給電線12には整合器13および高周波電源14が接続されている。高周波電源14からは例えば13.56MHzの高周波電力が載置台3の基材5に供給される。したがって、載置台3は下部電極として機能する。
【0020】
前記載置台3の上方には、この載置台3と平行に対向して上部電極として機能するシャワーヘッド20が設けられている。シャワーヘッド20は処理チャンバ2の上部に支持されており、内部に内部空間21を有するとともに、載置台3との対向面に処理ガスを吐出する複数の吐出孔22が形成されている。このシャワーヘッド20は接地されており、下部電極として機能する載置台3とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0021】
シャワーヘッド20の上面にはガス導入口24が設けられ、このガス導入口24には、処理ガス供給管25が接続されており、この処理ガス供給管25は処理ガス供給源28に接続されている。また、処理ガス供給管25には、開閉バルブ26およびマスフローコントローラ27が介在されている。処理ガス供給源28からは、プラズマ処理、例えばプラズマエッチングのための処理ガスが供給される。処理ガスとしては、ハロゲン系のガス、O2ガス、Arガス等、通常この分野で用いられるガスを用いることができる。
【0022】
処理チャンバ2の底部には排気管29が形成されており、この排気管29には排気装置30が接続されている。排気装置30はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これにより処理チャンバ2内を所定の減圧雰囲気まで真空引き可能なように構成されている。また、処理チャンバ2の側壁には基板搬入出口31が設けられており、この基板搬入出口31がゲートバルブ32により開閉可能となっている。そして、このゲートバルブ32を開にした状態で搬送装置(図示せず)によりガラス基板Gが搬入出されるようになっている。
【0023】
次に、載置台3の載置部6の構造について詳細に説明する。
図2は載置台3の載置部6を拡大して示す平面図、図3はそのA−A線による断面図である。これらの図に示すように、載置部6は、表面にセラミックス溶射皮膜41を有し、内部に電極42が埋設された溶射部である静電チャック40と、角部を構成するセラミック部材43とを備えている。電極42は、ガラス基板Gよりも若干小さい矩形状をなしており、例えば溶射で形成されている。電極42には給電線33が接続されており、給電線33には直流電源34が接続されていて、電極42に直流電源34からの直流電圧が印加されることにより、クーロン力等の静電吸着力によりガラス基板Gが吸着される。なお、電極42は板材であってもよい。
【0024】
セラミックス溶射皮膜41およびセラミックス部材43の構成材料としては、例えばアルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)を挙げることができ、両者はこれらから選択された材料であれば同じ材料であっても異なる材料であっても構わない。コスト面からはアルミナ(Al2O3)が好ましいが、プラズマ耐性を重視する場合には、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)が好ましい。なお、セラミックス溶射皮膜41およびセラミックス部材43の構成材料としては、これら材料に限らず、他の誘電体セラミックスであってもよい。
【0025】
静電チャック40を有する載置部6の角部には上記セラミックス部材43に対応する切り欠きが形成されており、その部分に上記セラミックス部材43が嵌め込まれ、シールドリング7により押さえつけられている。
【0026】
図4の平面図に示すように、載置部6の角部6aは、通常であればガラス基板Gで覆われており、オリエンテーションフラットFが存在する角部が位置した場合でもガラス基板Gに覆われるように設計されている。しかしながら、オリエンテーションフラットFが存在する角部はオーバーラップマージンが小さく、図5に示すように、わずかな基板Gの置き位置のずれにより載置部6の角部6aが露出してプラズマに曝され、プラズマによる損傷を受ける場合がある。従来はこのようなプラズマに曝される角部もセラミックス溶射皮膜で構成されていたため、角部がプラズマによって損傷される度毎に、溶射皮膜の修理のために再溶射処理する必要があり、修理頻度が高く、修理コストが高いものとなっていた。
【0027】
これに対して、角部6aをセラミックス部材43で構成した場合には、角部へのプラズマの損傷をほとんどセラミックス部材43が担うため、損傷した場合はセラミックス部材43の交換で対応することができ、溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。また、このような点を考慮すると、プラズマ損傷をほとんど受けないセラミックス溶射皮膜41を安価なアルミナ(Al2O3)で構成し、プラズマ損傷のほとんどを担うセラミックス部材43をプラズマ耐性の高いイットリア(Y2O3)またはフッ化イットリウム(YF3)で構成することにより、過剰なコスト上昇を招くことなくプラズマ耐性を向上させることができる。
【0028】
このセラミックス部材43は、図6に示す斜視図に示すように、その上部43aが静電チャック40の電極42に掛からないように小径となっており、電極が存在しない下部43bは組み付け性を考慮して大径となっている。
【0029】
次に、このように構成されるプラズマ処理装置1における処理動作について説明する。
まず、ゲートバルブ32を開いて、ガラス基板Gを搬送アーム(図示せず)により基板搬入出口31を介してチャンバ2内へと搬入し、載置台3の静電チャック6上に載置する。この場合に、昇降ピン10を上方に突出させて支持位置に位置させ、搬送アーム上のガラス基板Gを昇降ピン10の上に受け渡す。その後、昇降ピン10を下降させてガラス基板Gを載置台3の静電チャック6上に載置する。
【0030】
その後、ゲートバルブ32を閉じ、排気装置30によって、チャンバ2内を所定の真空度まで真空引きする。そして、直流電源34から静電チャック40の電極42に電圧を印加することにより、ガラス基板Gを静電吸着する。そして、バルブ26を開放して、処理ガス供給源28から処理ガスを、マスフローコントローラ27によってその流量を調整しつつ、処理ガス供給管25、ガス導入口24を通ってシャワーヘッド20の内部空間21へ導入し、さらに吐出孔22を通って基板Gに対して均一に吐出し、排気量を調節しつつチャンバ2内を所定圧力に制御する。
【0031】
この状態で高周波電源14から整合器13を介してプラズマ生成用の高周波電力を載置台3の基材5に供給し、下部電極としての載置台3と上部電極としてのシャワーヘッド20との間に高周波電界を生じさせて、処理ガスのプラズマを生成し、このプラズマによりガラス基板Gにプラズマ処理を施す。
【0032】
この際に、上述したように、ガラス基板Gの角部にオリエンテーションフラットFが形成されている場合には、図5に示すようにガラス基板Gの載置位置がずれて、角部6aがプラズマに曝されて損傷を受けることがあるが、その部分がセラミックス溶射皮膜であれば修理のために再度溶射処理を行う必要がある。本実施形態ではその部分にセラミックス部材43が設けられており、角部へのプラズマの損傷をほとんどセラミックス部材43が担うため、セラミックス部材43の交換で対応することができ、セラミックス溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【0033】
また、セラミックス部材43の上部43aが電極42に掛からないように小径となっており、電極42は従来と同様の形状のままとすることができるので、静電吸着の際のガラス基板Gへの電界の影響や直流電圧印加部への影響を回避することができる。また、下部43bを大径とすることにより、安定性を高くして部材の組み付け性を良好にすることができる。
【0034】
次に、載置台3の他の例について説明する。
ここでは、分割タイプのシールドリング7′を使用している。具体的には、図7に示すように、4つの分割片51を組み立ててシールドリング7′を構成している。
【0035】
この場合には、分割片51の組み付け公差によって、図8に示すように、分割片51の合わせ目部分52に隙間が発生し、その隙間部分からプラズマが侵入する場合がある。
【0036】
ここでは、このような際における溶射皮膜の損傷を防止することができる載置部6′を用いる。図9は載置部6′を用いた載置台の要部を示す平面図、図10はそのB−B線による断面図である。これらの図に示すように、載置部6′は載置部6と同様、セラミックス溶射皮膜41および電極42からなる静電チャック40を有しているが、載置部6とは異なり、合わせ目部分52に対応する位置にセラミックス部材43′が配置されている。このセラミックス部材43′は前記セラミックス部材43と同様に構成することができる。載置部6′には、合わせ目部分52に対応する位置に切り欠きが形成されており、その部分に上記セラミックス部材43′が嵌め込まれ、シールドリング7′により押さえつけられている。この場合のセラミックス部材43′の形状は図11の斜視図に示すように、同じくその上部43a′が静電チャック40の電極42に掛からないように小径となっており、電極が存在しない下部43b′は組み付け性を考慮して大径となっている。
【0037】
このような載置部6′の構成とすることにより、プラズマ処理の際にプラズマがシールドリング7′の隣接する分割片51の合わせ目52から侵入した場合でも、プラズマに曝されて損傷を受けるのは、ほぼセラミックス部材43′のみであり、セラミック部材43′の交換で対応することができ、溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【0038】
次に、載置台3のさらに他の例について説明する。
ここでは、上記例と同様に分割タイプのシールドリング7′を使用しており、分割片51の合わせ目部分52に隙間が発生してプラズマ損傷が生じるおそれがあり、かつ載置部の角部にもプラズマ損傷が生じるおそれがある場合に対応可能な載置部の構成を用いている。
【0039】
図12は載置台のさらに他の例を示す平面図である。この図に示すように、載置部6″は、載置部6、6′とは異なり、合わせ目部分52に対応する位置から角部6a″にかけてセラミックス部材43″が配置されている。このセラミックス部材43″は前記セラミックス部材43、43′と同様に構成することができる。載置部6″には、予め合わせ目部分52に対応する位置から角部6a″にかけての切り欠きが形成されており、その部分に上記セラミックス部材43″が嵌め込まれ、シールドリング7′により押さえつけられている。この場合のセラミックス部材43″の形状は図13の斜視図に示すように、同じくその上部43a″が電極42に掛からないように小径となっており、電極が存在しない下部43b″は組み付け性を考慮して大径となっている。
【0040】
このような載置部6″の構成とすることにより、プラズマ処理の際にプラズマがシールドリング7′の隣接する分割片51の合わせ目52から侵入した場合や、角部6a″がプラズマに曝された場合でも、プラズマに曝されて損傷を受けるのは、ほぼセラミックス部材43″のみであり、セラミック部材43″の交換で対応することができ、溶射皮膜の損傷をほとんど生じないようにすることができる。このため、溶射皮膜の修理頻度を著しく低減することができ、載置台3の修理コストを極めて低いものとすることができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をFPD用のガラス基板のプラズマ処理に適用した場合について示したが、これに限るものではなく、他の種々の基板に対して適用可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、静電チャックを用いた載置台の載置部を例として示したが、必ずしも静電チャックを用いる必要はなく、載置部が単にセラミックス溶射皮膜で形成されている場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1;プラズ処理装置
2;処理チャンバ
3;載置台
5;基材
6,6′,6″;載置部
6a;角部
7,7′;シールドリング
14;高周波電源
20;シャワーヘッド
28;処理ガス供給源
34;直流電源
40;静電チャック
41;セラミックス溶射皮膜
42;電極
43,43′,43″;セラミックス部材
43a,43a′,43a″;上部
43b,43b′,43b″;下部
51;分割片
52;合わせ目部分
F;オリエンテーションフラット
G;ガラス基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、
基材と、
前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、
前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材と
を具備し、
前記載置部は、前記シールド部材の分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、
前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台。
【請求項2】
基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、
基材と、
前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、
前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材と
を具備し、
前記載置部は、前記シールド部材の角部および分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、
前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台。
【請求項3】
前記溶射部は、基板を静電吸着する静電チャックを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の載置台。
【請求項4】
前記静電チャックは、基板を静電吸着するための直流電圧が印加される電極を有し、
前記セラミックス部材は、前記電極に対応する高さ位置を含む上部と、前記電極に対応する高さ位置を含まない下部とを有し、
前記上部が前記電極よりも外側に位置し、前記下部が前記上部よりも内側に突出していることを特徴とする請求項3に記載の載置台。
【請求項5】
前記基材が導電性であり、前記基材に高周波電力を供給する高周波電力供給手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項6】
前記セラミックス溶射皮膜と前記セラミックス部材は、アルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)から選択された材料で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項7】
基板を収容する処理チャンバと、
前記処理チャンバ内で基板を載置する、前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の構成を有する載置台と、
前記処理チャンバ内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、
前記処理チャンバ内で処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構と、
前記処理チャンバ内を排気する排気機構と
を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項1】
基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、
基材と、
前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、
前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材と
を具備し、
前記載置部は、前記シールド部材の分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、
前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台。
【請求項2】
基板にプラズマ処理を施す処理チャンバ内で基板を載置する載置台であって、
基材と、
前記基材の上に形成され、その上に基板が載置される載置部と、
前記載置部の周囲に設けられた、分割式のシールド部材と
を具備し、
前記載置部は、前記シールド部材の角部および分割部分に対応する部位を構成するセラミックス部材と、それ以外の部分を構成する、表面にセラミックス溶射皮膜を有する溶射部とからなり、
前記セラミックス部材が交換可能であることを特徴とする載置台。
【請求項3】
前記溶射部は、基板を静電吸着する静電チャックを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の載置台。
【請求項4】
前記静電チャックは、基板を静電吸着するための直流電圧が印加される電極を有し、
前記セラミックス部材は、前記電極に対応する高さ位置を含む上部と、前記電極に対応する高さ位置を含まない下部とを有し、
前記上部が前記電極よりも外側に位置し、前記下部が前記上部よりも内側に突出していることを特徴とする請求項3に記載の載置台。
【請求項5】
前記基材が導電性であり、前記基材に高周波電力を供給する高周波電力供給手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項6】
前記セラミックス溶射皮膜と前記セラミックス部材は、アルミナ(Al2O3)、イットリア(Y2O3)、およびフッ化イットリウム(YF3)から選択された材料で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項7】
基板を収容する処理チャンバと、
前記処理チャンバ内で基板を載置する、前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の構成を有する載置台と、
前記処理チャンバ内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、
前記処理チャンバ内で処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構と、
前記処理チャンバ内を排気する排気機構と
を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−110438(P2013−110438A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−25396(P2013−25396)
【出願日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【分割の表示】特願2007−135194(P2007−135194)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【分割の表示】特願2007−135194(P2007−135194)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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