説明

載荷装置

【課題】磁石の吸引力及び吸着力の少なくとも一方を利用することで、錘部に作用する重力以上の外力を作用させることが可能な載荷装置を提供する。
【解決手段】電磁石3と、電磁石の一方側の端面3aに衝突させる磁性体からなる錘部2と、電磁石の他方側の端面3bに非磁性体の外殻41を介して隣接される打力部4とを備えている。
そして、錘部2と電磁石3と打力部4とが上から順に配列されるとともに、錘部2を吊り上げる吊り部11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対して外力を付与するための載荷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重錘を自由落下させて杭頭を打撃することで載荷をおこなう杭の急速載荷試験装置が知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
この急速載荷試験(スタナミック試験)は、静的載荷試験と動的載荷試験の欠点を解消するために考案された杭の載荷試験方法で、この方法によれば載荷時間を動的載荷試験の約10倍に当たる50〜200ms程度にすることで弾性波動の伝播による影響をなくし、静的載荷試験に近い信頼性の高い試験結果を得ることができる。
【0004】
この急速載荷試験の一例として、杭頭に荷重計を介してゴムやバネなどの緩衝材を載置し、その上に重錘を自由落下させて杭を打撃する方法がある。このように緩衝材を重錘と杭頭の間に介在させることによって、載荷時間を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−303570号公報
【特許文献2】特開平10−274576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、重錘を自由落下させることによって大きな荷重を作用させるには、重錘を高く持ち上げるか、重錘の重量を増加させる必要があり、装置が大型化する要因となる。
【0007】
また、特許文献2には、第1のコイルとその周囲を包囲する第2のコイルとの間に発生する電磁気的な反発力(ローレンツ力)を用いた載荷試験装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、このローレンツ力を利用した載荷装置は、力への変換効率が1%程度と非常に低いため、大きな荷重を作用させることが難しい。また、このローレンツ力を利用する構成では、コイル自体に押し付け力が作用するため、載荷荷重の設定を大きくすればコイルが破断するおそれがある。さらに、二つのコイルは磁場を打ち消しあうので、ローレンツ力自体が小さくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、磁石の吸引力及び吸着力の少なくとも一方を利用することで、錘部に作用する重力以上の外力を作用させることが可能な載荷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の載荷装置は、磁石部と、前記磁石部の一方側の端部に衝突させる磁性体からなる錘部と、前記磁石部の他方側の端部に非磁性体を介して隣接される打力部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記錘部は、前記磁石部に向けて前記錘部を誘導するガイド部に装着される構成とすることができる。また、前記錘部と前記磁石部と前記打力部とは、前記ガイド部に滑動可能に係留される構成とすることができる。
【0012】
また、前記錘部と前記磁石部と前記打力部とが上から順に配列されるとともに、前記錘部を吊り上げる吊り部を備えた構成であってもよい。さらに、前記磁石部は、柱状の芯部を有する電磁石であって、前記芯部の一端に前記錘部を衝突させる構成とすることもできる。
【0013】
また、前記磁石部は、胴体部の両側に一対のアーム部が並行に突設された芯部と前記胴体部及び前記アーム部のそれぞれに巻き付けられるコイルとを備えた電磁石であって、前記一対のアーム部の双方の端部に前記錘部を衝突させる構成とすることもできる。
【0014】
また、別の本発明の載荷装置は、錘部と、前記錘部の一端に芯部の一方側の端部を当接させる第1の電磁石と、前記第1の電磁石に対して同じ磁極が対峙する向きで配置される第2の電磁石とを備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、前記第1の電磁石と前記第2の電磁石は、胴体部の両側に一対のアーム部が並行に突設された芯部と、前記胴体部と前記アーム部のそれぞれに巻き付けられるコイルとを備えた構成とすることができる。
【0016】
また、前記第1の電磁石と前記第2の電磁石とは、印加する電流の波形の制御が可能な通電制御部にそれぞれ接続されている構成であってもよい。さらに、2つの前記電磁石と前記錘部との離散を防止する離散防止手段を備えた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成された本発明の載荷装置は、磁石部を挟んで錘部と打力部とが配置されており、錘部によって付与される力は磁石部によって増加されて打力部に伝達される。
【0018】
すなわち、磁性体からなる錘部は、磁石部に近づくと磁石の吸引力によって速度を増して磁石部に衝突し、その増加した速度による運動エネルギーが打力部に伝達される。このため、錘部を打力部に直接、衝突させた場合に比べて、大きな力を打力部に伝達させることができる。
【0019】
さらに、磁石部に衝突した錘部は、磁石の吸着力によって磁石部に固定されるため、衝突後に錘部がリバウンドして意図しない方向に錘部が飛び跳ねる事態の発生を避けることができる。
【0020】
また、錘部を磁石部に向けて誘導するガイド部を設けることで、確実に錘部を磁石部に衝突させることができる。さらに、錘部と磁石部と打力部とがガイド部に滑動可能に係留されていれば、錘部の運動エネルギーを打力部に効率よく伝達させることができる。
【0021】
また、錘部を吊り上げる吊り部を設けることによって、錘部を自由落下させて打力部によって載荷をおこなうサイクルを容易に繰り返すことができる。
【0022】
さらに、磁石部が電磁石によって構成されていれば、磁力の大きさの調整をコイルの巻き数や印加する電流の大きさを変えることで、容易に調整することができる。また、電磁石であれば、芯部を衝撃に強い材料にすることができるため、耐久性を向上させることが可能となる。
【0023】
さらに、電磁石を胴体部とその両側のアーム部とによってU字状やコ字状に成形することで、磁場のループが形成され、電磁石の吸引力及び吸着力を増大させることができる。
【0024】
また、別の本発明の載荷装置は、2つの電磁石の対峙する面に同じ磁極を発生させて磁力による反発力を起こし、その反力を対象物に作用させる。このため、力の伝達が電磁石の芯部を介しておこなわれることになり、コイルを破損させることなく大きな力を対象物に作用させることができる。
【0025】
また、電磁石の磁力の反発力であれば、効率よく発生させることができる。特に、電磁石を胴体部とその両側のアーム部とによってU字状やコ字状に成形することで、磁場のループが形成され、電磁石の負の吸引力や負の吸着力を増大させることができる。
【0026】
さらに、電磁石を使った構成であれば、印加する電流の波形を変えることで、載荷する荷重の強度や載荷時間などを容易に調整することができる。
【0027】
また、2つの電磁石と錘部との離散を防止する離散防止手段を設けることによって、載荷後に電磁石と錘部とがばらばらに散乱する事態の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の載荷装置を備えた載荷試験装置の構成を示した説明図である。
【図2】実施例1の載荷装置の構成を説明する正面図である。
【図3】実施例1の載荷装置の構成を説明する側面図である。
【図4】実施例2の載荷装置を備えた載荷試験装置の構成を示した説明図である。
【図5】柱状の芯部を有する電磁石の磁束密度の分布を説明する図である。
【図6】実施例2の電磁石に印加する電流の様々な波形を説明する図である。
【図7】実施例3の載荷装置を備えた載荷試験装置の概略構成を示した説明図である。
【図8】実施例4の載荷装置を備えた載荷試験装置の概略構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態の載荷装置1を備えた杭5の載荷試験装置の構成を示した図である。すなわち、この載荷装置1によって外力を付与する対象物は、本実施の形態では杭5である。
【0031】
まず、構成から説明すると、この載荷装置1は、磁石部としての電磁石3と、電磁石3の上側の端面3a(一方側の端部)に衝突させる錘部2と、電磁石3の下側の端面3b(他方側の端部)に隣接される打力部4とを主に備えている。
【0032】
この電磁石3は、芯部としての円柱状の鉄芯31と、その鉄芯31の周囲に巻き付けられるコイル32とによって主に構成される。この鉄芯31の径及び長さは、発生させる磁力などに合わせて任意に設定することができる。例えば、錘部2を確実に衝突させることができるように、錘部2の幅(又は外径)と同程度の外径の鉄芯31を使用する。
【0033】
また、コイル32の巻き数も、発生させる磁力によって任意に設定することができる。このコイル32は、両端がそれぞれ電線32a,32bに接続されており、さらに、これらの電線32a,32bは電力の供給源となる電源33に接続される。
【0034】
また、錘部2には、磁性体である鉄、鋼材などが使用できる。すなわち、錘部2は、電磁石3に吸引される材料によって例えば円柱状に成形される。さらに、この錘部2の上面には吊り金具21を取り付け、吊りワイヤなどの吊り部11によって吊り上げることができる形態にしておく。
【0035】
また、打力部4は、芯材42と、その芯材42を覆う非磁性体によって形成される外殻41とによって主に構成される。この芯材42には、鉄や鋼材などの磁性体又はコンクリートなどの非磁性体を使用することができる。
【0036】
また、外殻41は、ステンレスなどの非磁性体によって箱状に成形する。この外殻41は、電磁石3の下側の端面3bに打力部4を当接させた際に、打力部4が電磁石3に過度に吸引されない材料及び厚さに成形される。
【0037】
一方、杭5の載荷試験装置としては、この載荷装置1の他に、載荷装置1によって杭頭5aに作用する荷重の大きさを計測する荷重計6と、杭頭5aの沈下量などの変位を計測する変位計7とがある。
【0038】
この荷重計6には、ロードセルやひずみゲージなどが利用でき、そこから出力された出力値はケーブル62を通ってパソコン61に送られ、作用荷重として記録される。
【0039】
また、変位計7には、例えば光学式変位計が使用できる。この変位計7は、杭5の外周面に取り付けられたターゲット73にレーザ光を照射し、その反射光によってのターゲット73の鉛直方向の変位を計測する。この変位計7からの出力は、ケーブル72を通ってパソコン71に送られ、変位として記録される。
【0040】
次に、本実施の形態の載荷装置1を使った杭5の載荷試験方法、及びその作用について説明する。
【0041】
まず、図1に示すように、杭頭5aに荷重計6を設置し、ケーブル62によって荷重計6をパソコン61に繋ぐ。また、杭5の外周面にターゲット73を取り付け、そのターゲット73を視準可能な位置に変位計7を設置する。さらに、変位計7とパソコン71とをケーブル72で繋ぐ。
【0042】
そして、荷重計6の上に打力部4を設置する。また、打力部4の上に電磁石3を設置する。この電磁石3のコイル32の端部は、電線32a,32bを介して電源33に接続される。
【0043】
続いて、吊り部11によって吊り下げられた錘部2を電磁石3の真上に移動させる。この錘部2の下面と電磁石3の上面との距離は、杭5に作用させたい荷重の大きさによって調整する。
【0044】
そして、電源33によって電磁石3に電流を印加すると、電磁石3に磁力が生じ、その状態で錘部2を吊り部11から切り離して自由落下させる。
【0045】
このように構成された本実施の形態の載荷装置1は、電磁石3を挟んで錘部2と打力部4とが配置されており、錘部2によって付与される力は電磁石3を介して打力部4に伝達される。
【0046】
すなわち、磁性体からなる錘部2は自由落下して電磁石3に近づくと磁石の吸引力によって速度を増して電磁石3に衝突し、その増加した速度の2乗の運動エネルギーが打力部4に伝達される。
【0047】
他方、打力部4は、非磁性体である外殻41に覆われているため、電磁石3の吸引力や吸着力の影響を受けることがなく、増加した運動エネルギーに基づく速度によって杭頭5aに向けて推進する。
【0048】
このため、通常の自由落下の速度で錘部2を打力部4に直接、衝突させた場合に比べて、大きな力を打力部4から杭5に対して作用させることができる。
【0049】
さらに、電磁石3に衝突した錘部2は、磁石の吸着力によって電磁石3に固定されるため、衝突後に錘部2がリバウンドするのを防ぐことができる。すなわち、重錘を自由落下させて載荷する方法では、大きな重量の重錘が杭頭5aに衝突した後に跳ね上がって予測不能な動きをして周囲の機器や機材を損傷するおそれがあるため、リバウンドした重錘をキャッチする高価なキャッチング装置が必要であった。これに対して衝突後の錘部2が電磁石3に吸着されて固定されるのであれば、そのような高価なキャッチング装置は不要となり、安価に載荷装置1を製作することができる。
【0050】
また、載荷試験では、重錘が何度もリバウンドすることによって杭5に繰り返し荷重が作用すると解析が難しくなるが、錘部2を電磁石3に固定させるのであれば、錘部2のリバウンドが発生せず、意図しない力が杭5に繰り返し作用する状態を避けることができる。
【0051】
さらに、錘部2を吊り上げる吊り部11を設けることによって、錘部2を自由落下させて打力部4によって載荷をおこなうサイクルを容易に繰り返すことができる。
【0052】
また、磁石部が電磁石3によって構成されていれば、磁力の大きさの調整をコイル32の巻き数や印加する電流の大きさなどを変えることで、容易に調整することができる。
【0053】
さらに、電磁石3の柱状の鉄芯31を錘部2で打撃するのであれば、繰り返しの載荷にも耐えることができる耐久性の高い装置とすることができる。また、電磁石3であれば、電流の印加を止めるだけで、容易に錘部2を電磁石3の端面3aから切り離すことができる。
【実施例1】
【0054】
以下、前記した実施の形態とは別の形態としての実施例1について、図2,3を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0055】
この実施例1の載荷装置1Aは、図2,3に示すように、錘部2Aを電磁石3Aに向けて誘導するガイド部8を備えている。このガイド部8は、錘部2Aを挟んで平行に立設される棒状のガイド棒81,81と、その上端を連結する上枠82とを有している。
【0056】
このガイド棒81,81は表面が摩擦抵抗の少ない滑面に仕上げられた円柱であって、下端にストッパ81a,81aとなる拡幅部が形成されている。このストッパ81a,81aによって、後述するガイドリング23,35,44の脱落が防止される。
【0057】
また、上枠82の中央には、吊り部11Aが設けられる。この吊り部11Aは、上枠82から吊り下げられるウインチ111と、このウインチ111のワイヤの下端に取り付けられる電磁開閉爪112とを備えている。
【0058】
この電磁開閉爪112は、スイッチ(図示省略)の操作によって開閉する把持機構である。また、ウインチ111及び電磁開閉爪112は、電線113,114を介して制御部(図示省略)に接続されている。さらに、この制御部を介して、ウインチ111の巻き上げ、電磁開閉爪112の開閉などの操作がおこなわれる。
【0059】
また、図3に示すように、ガイド部8の背面側には、支持枠83が設けられている。そして、この支持枠83を介して自走式のベースマシン9にガイド部8が装着される。すなわち、ベースマシン9は、リーダ91と、そのリーダ91に沿って移動可能なスライダ92とを備えており、このスライダ92に支持枠83が固定される。
【0060】
また、この載荷装置1Aのガイド部8には、錘部2Aと電磁石3Aと打力部4Aとが滑動可能に係留される。すなわち、図2に示すように、錘部2Aの両側面からガイド棒81,81に向けて棒状のガイドアーム22,22が延出されており、ガイドアーム22,22の端部に固定された環状のガイドリング23,23にガイド棒81,81がそれぞれ挿通される。
【0061】
さらに、このガイドリング23の内径は、ガイド棒81の外径より大きく形成されており、ガイドリング23はほとんど抵抗を受けることなくガイド棒81に沿って移動できる。
【0062】
また、電磁石3Aにも、錘部2Aと同様のガイドアーム34,34とガイドリング35,35とが設けられている。さらに、打力部4Aにも、錘部2Aと同様のガイドアーム43,43とガイドリング44,44とが設けられている。
【0063】
次に、実施例1の載荷装置1Aを使った載荷方法、及びその作用について説明する。
【0064】
まず、図3に示すように、ベースマシン9のリーダ91を立てた状態で、杭5の周囲にまで移動させる。このように載荷装置1Aをベースマシン9に装着することによって、載荷装置1Aを任意の位置に容易に移動させることができる。
【0065】
また、移動の際は、錘部2Aの吊り金具21には、電磁開閉爪112が引っ掛けられており、ウインチ111に吊られた状態となっている。一方、打力部4Aは、ガイドリング44,44の下面がストッパ81a,81aの上面に当接される位置まで下がっており、電磁石3Aは、打力部4A上に載置された状態となっている。
【0066】
そして、杭5の周辺でベースマシン9を停止させた後に、スライダ92を上方に移動させるなどして載荷装置1Aが杭5の上方に配置されるように位置を調整する。
【0067】
続いて、スライダ92を下方に移動させて、打力部4Aを杭頭5aに載置させ、さらにスライダ92を下方に移動させて打力部4Aのガイドリング44,44とガイド棒81,81のストッパ81a,81aとを離隔させる。
【0068】
このガイドリング44とストッパ81aとの距離は、載荷中に打力部4Aに追従して下方に移動するガイドリング44がストッパ81aに衝突することがない距離に設定する。
【0069】
このように載荷装置1Aを上下動可能なベースマシン9のスライダ92に装着しておくことで、対象物となる杭5の高さに合わせた任意の高さに載荷装置1Aを配置することが容易にできる。
【0070】
そして、吊り部11Aのウインチ111を巻き上げることによって錘部2Aを所定の高さまで持ち上げ、電磁開閉爪112を開いて錘部2Aを自由落下させる。
【0071】
この錘部2Aは、ガイド部8に係留されたガイドリング23,23によってガイド棒81,81に沿って下降するため、確実に電磁石3Aの上面に衝突させることができる。
【0072】
また、錘部2Aによって打撃された電磁石3Aも、ガイド棒81,81に沿って押し下げられ、電磁石3Aを介して錘部2Aから外力が伝達される打力部4Aも、ガイド棒81,81に沿って押し下げられて杭5に載荷をおこなう。
【0073】
なお、実施例1(図2,3)では、前記実施の形態で説明した荷重計6及び変位計7の図示は省略しているが、杭5の載荷試験をおこなう場合は、前記実施の形態と同様に測定をおこなうことになる。
【0074】
このように、錘部2Aを電磁石3Aに向けて誘導するガイド部8を設けることで、確実に錘部2Aを電磁石3Aの鉄芯31に衝突させることができる。さらに、錘部2Aと電磁石3Aと打力部4Aとがガイド部8に滑動可能に係留されていれば、正確な位置で互いを衝突させることができるうえに、ガイド部8との抵抗によるエネルギー損失が少ないため、錘部2Aと電磁石3Aとによって発生させた運動エネルギーを打力部4Aに効率よく伝達させることができる。
【0075】
また、ガイド部8に係留させることによって、載荷装置1Aを移動させる際や載荷中に錘部2Aと電磁石3Aと打力部4Aとがばらばらにならず、一つのまとまりのある装置として取り扱うことができるので、作業性に優れている。さらに、重量の大きな錘部2Aが杭頭5aから落下して、杭5やその周辺の資機材を損傷させることがない。
【0076】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0077】
以下、前記した実施の形態とは別の形態としての実施例2について、図4−6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態及び実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0078】
この実施例2では、2つの電磁石30A,30Bを備えた載荷装置10Aについて説明する。
【0079】
この載荷装置10Aは、図4に示すように、錘部20Aと、錘部20Aの下端に当接させる第1の電磁石30Aと、第1の電磁石30Aとは磁極が発生する向きが反対となる第2の電磁石30Bとを主に備えている。
【0080】
この錘部20Aは、反力を確保するための部材であるため、磁性体又は非磁性体のいずれの材料であっても利用することができる。
【0081】
また、電磁石30A,30Bは、芯部としての円柱状の鉄芯31と、その鉄芯31の周囲に巻き付けられるコイル32とによって主に構成される。この鉄芯31の径及び長さは、発生させる磁力に合わせて任意に設定することができる。さらに、鉄芯31は、螺旋状のコイル32の上下からそれぞれ突出可能な長さに成形される。
【0082】
そして、上側に配置される電磁石30Aは、例えばコイル32の上端から延びる電線32aを通電制御部33Aの正極331に接続し、コイル32の下端から延びる電線32bを通電制御部33Aの負極332に接続する。この接続状態で通電制御部33Aから電流を電磁石30Aに印加すると、上側の端面3aがS極となり、下側の端面3bがN極となる。
【0083】
これに対して下側に配置される電磁石30Bは、コイル32の上端から延びる電線32bを通電制御部33Bの負極332に接続し、コイル32の下端から延びる電線32aを通電制御部33Bの正極331に接続する。この接続状態で通電制御部33Bから電流を電磁石30Bに印加すると、上側の端面3aがN極となり、下側の端面3bがS極となる。
【0084】
このように、上側に配置する電磁石30Aと、下側に配置する電磁石30Bとは、同じ磁極が対峙する向きで当接される。なお、電磁石30A,30Bに発生させる磁極の向きは、上述した例とはそれぞれ逆向きであってもよい。
【0085】
また、杭頭5aには荷重計6を配置し、ケーブル62を介してパソコン61に接続する。また、杭5の外周面にはターゲット73を貼り付け、変位計7で変位測定をおこなう。
【0086】
さらに、錘部20Aと2つの電磁石30A,30Bと荷重計6とは、離散防止手段としてのガイド管80の内部に収容する。このガイド管80は、杭頭5aに載置可能な外径であって、内径は錘部20A、電磁石30A,30B及び荷重計6の外径よりも僅かに大きく形成されている。
【0087】
また、ガイド管80の側面には、電線32a,32b及びケーブル62を引き出すための穴80a,・・・が穿孔されている。そして、穴80a,・・・から引き出された電線32a,32b及びケーブル62は、載荷による影響を受けることがない状態で通電制御部33A,33B及びパソコン61に接続される。
【0088】
次に、実施例2の載荷装置10Aを使った杭5の載荷試験方法、及びその作用について説明する。
【0089】
まず、図4に示すように、杭頭5aに荷重計6、電磁石30B、電磁石30A、錘部20Aを順に積み上げ、ガイド管80を被せる。そして、電磁石30Aの電線32a,32bを穴80aから引き出して通電制御部33Aに繋ぐ。また、電磁石30Bの電線32a,32bも穴80aから引き出して通電制御部33Bに繋ぐ。
【0090】
さらに、荷重計6のケーブル62も穴80aから引き出してパソコン61に繋ぐ。また、杭5の外周面にターゲット73を取り付け、そのターゲット73を視準可能な位置に変位計7を設置し、変位計7とパソコン71とをケーブル72で繋ぐ。
【0091】
そして、通電制御部33A,33Bを同期させて同時に電磁石30A,30Bに電流を印加すると、電磁石30Aの下側の端面3bにN極が発生し、電磁石30Bの上側の端面3aにN極が発生することによって、電磁石30A,30B間に反発力が生じる。
【0092】
この反発力(負の吸引力)の概略の大きさは、電磁石30A,30Bの吸引力の算出方法に基づいて算定することができる。この電磁石30A,30Bの吸引力は、磁束密度の2乗及び吸引面の面積に比例する。
【0093】
そこで、図5に電磁石30A,30Bの磁束密度の分布を示した。この図5を見ると、磁束密度が中心部から外縁部に向けて大きくなることがわかる。ここで、曲線M1は、30A(アンペア)の電流を電磁石30A,30Bに流したときの磁束密度の分布で、破線AM1はその平均値を示している。一方、曲線M2は、200A(アンペア)の電流を電磁石30A,30Bに流したときの磁束密度の分布で、破線AM2はその平均値を示している。
【0094】
この図5に示すように、電磁石30A,30Bに印加する電流の大きさを調整することで、電磁石30A,30B間の反発力の大きさを調整することができる。
【0095】
また、図6には、通電制御部33A,33Bによって供給される3種類の電流の波形を例示した。例えば、図6(a)に示す矩形状の波形の電流を断続的に電磁石30A,30Bに流す場合は、一定時間だけ一定の大きさの反発力を杭5に作用させることができる。
【0096】
また、図6(b)に示すように放物線状の波形の電流を電磁石30A,30Bに流す場合は、時間が経過するに従って徐々に増加し最大値を通過した後に徐々に減少する反発力を杭5に作用させることができる。
【0097】
さらに、図6(c)に示すように傾斜状の波形の電流を電磁石30A,30Bに流す場合は、時間が経過するに従って増加する反発力を杭5に作用させることができる。
【0098】
このように実施例2の載荷装置10Aは、柱状の鉄芯31,31同士を当接させた2つの電磁石30A,30Bの対峙する端面3b,3aに、同じ磁極を発生させることで磁力による反発力(負の吸引力)を発生させ、その反力を杭5に作用させる。
【0099】
このため、力の伝達が鉄芯31,31を介しておこなわれることになり、コイル32,32を破損させることなく大きな力を杭5に作用させることができる。すなわち、コイルのローレンツ力を利用する方法で載荷する場合は、コイルを介して力が伝達されることになるので、大きな力を杭5に作用させると、コイルが損傷するおそれがあるが、磁石の反発力を利用する実施例2の載荷装置10Aであれば、コイル32,32に大きな力が作用して破損することがない。
【0100】
また、コイルのローレンツ力を利用する方法で載荷する場合は、二つのコイルによる磁場が打ち消しあうため、ローレンツ力自体が小さくなって大きな力を発生させることができないが、電磁石30A,30Bの磁力の反発力であれば、印加する電流に基づいて効率よく発生させることができる。さらに、電磁石30A,30Bであれば、印加する電流の大きさを変更するだけで、反発力の大きさを変更することができる。
【0101】
また、通電制御部33A,33Bによって印加する電流の波形を変えることで、載荷する荷重の強度や載荷時間などを調整することができる。このため、静的載荷試験や急速載荷試験などの様々な載荷パターンに応じた試験をおこなうことができる。
【0102】
さらに、2つの電磁石30A,30Bと錘部20Aとの離散を防止するガイド管80を設けることによって、反発力によって持ち上げられた電磁石30Aと錘部20Aとが落下したときに杭頭5aから脱落してばらばらに散乱する事態を防ぐことができる。
【0103】
また、電磁石30A,30B間の反発力によって載荷をおこなうのであれば、錘部20Aを吊り上げる吊り部11を設ける必要がなく、簡素な構成にすることができる。
【0104】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0105】
以下、前記した実施の形態とは別の形態としての実施例3について、図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態及び他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0106】
この実施例3では、前記実施の形態の載荷装置1の電磁石3を、別の形態の電磁石300に変更した載荷装置1Bについて説明する。
【0107】
この電磁石300は、コ字形又はU字形などに成形された芯部としての鉄芯301と、その鉄芯301に巻き付けられるコイル302a,302b,302cとを主に備えている。
【0108】
この鉄芯301は、打力部4上に水平に延設される胴体部301cと、その両側から上方に向けて並行に突設される一対のアーム部301a,301bとを備えている。なお、このアーム部301a,301bと胴体部301cとは、略直交している。
【0109】
また、アーム部301a,301bと胴体部301cには、それぞれコイル302a,302b,302cが巻き付けられる。ここで、アーム部301aに巻き付けられるコイル302aは、上端を電源の負極に接続し、下端を正極に接続する。また、これとは反対にアーム部301bに巻き付けられるコイル302bは、上端を正極に接続し、下端を負極に接続する。このため、アーム部301aの上端面はN極となり、アーム部301bの上端面はS極となる。
【0110】
また、胴体部301cに巻き付けられたコイル302cによっても磁場が発生する。なお、鉄芯301cの下端面には、コイル302cを保護するために打力部4に向けた突起部303,303が設けられており、打力部4の上面とコイル302cとは接触しないようになっている。
【0111】
このように、電磁石300を胴体部301cとその両側のアーム部301a,301bとによってU字状やコ字状に成形することで、略直交する3方向の磁場が生成され、ループ状につながったこれらの磁場によって電磁石300の吸引力及び吸着力が増大されることになる。
【0112】
そして、錘部2を落下させると、一対のアーム部301a,301bの双方の上端面からの吸引力によって錘部2は加速されて、増加した速度でアーム部301a,301bに衝突して大きな力を打力部4に伝達させることができる。
【0113】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0114】
以下、前記した実施例2,3とは別の形態としての実施例4について、図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態及び他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0115】
この実施例4では、実施例2の載荷装置10Aの電磁石30A,30Bを、実施例3で説明した電磁石300と同様の構成の電磁石300A,300Bに変更した載荷装置10Bについて説明する。
【0116】
この電磁石300A,300Bは、上側が第1の電磁石300Aとなり、下側が第2の電磁石300Bとなる。そして、電磁石300Aの下向きのアーム301a,301bに対して、同じ磁極を発生させる電磁石300Bの上向きのアーム部301a,301bがそれぞれ対峙される。
【0117】
このように電磁石300A,300Bを胴体部301cとその両側のアーム部301a,301bとによってU字状やコ字状に成形することで、打ち消されることのない磁場のループが形成され、電磁石300A,300Bの反発力(負の吸引力)を増大させることができる。
【0118】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0119】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0120】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、打設後の杭5に対して載荷装置1,1A,1B,10A,10Bを使って載荷試験をおこなう場合について説明したが、これに限定されるものではなく、軟弱地盤を対象物として地盤改良をおこなう場合や、杭5を対象物として杭打ちをおこなう場合などにも、本発明の載荷装置1,1A,1B,10A,10Bを利用することができる。
【0121】
また、前記実施の形態及び実施例では、鉛直方向の載荷をおこなう場合について説明したが、これに限定されるものではなく、水平方向など他の方向の載荷にも利用することができる。例えば、前記実施の形態及び実施例1,3の載荷装置1,1A,1Bを利用して、錘部2,2Aをピストン移動させる機構を追加することによって、鉛直方向以外の載荷もおこなうことができるようになる。さらに、電磁石30A,30B(300A,300B)間の反発力を利用する実施例2(4)の載荷装置10A(10B)であれば、そのまま横向きにして錘部20Aの移動を制限する構成を加えることによって、鉛直方向以外の載荷もおこなうことができるようになる。
【0122】
また、前記実施の形態及び実施例1では、磁石部として電磁石3,3Aを使用したが、これに限定されるものではなく、磁石部として永久磁石を使用することもできる。
【0123】
さらに、前記実施の形態及び実施例1,3では、非磁性体の外殻41で覆われた打力部4,4Aについて説明したが、これに限定されるものではなく、板状の非磁性体を電磁石3(3A)と打力部4(4A)との間に介在させて磁力を減衰する構成であってもよい。
【0124】
また、前記実施の形態及び実施例では、打力部4,4A又は電磁石30B,300Bの力を杭頭5aに直接、伝達させる構成としたが、これに限定されるものではなく、打力部4,4A又は電磁石30B,300Bと杭頭5aとの間にゴムやバネなどの緩衝材を介在させてもよい。
【0125】
さらに、前記実施例2では、離散防止手段としてガイド管80について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば実施例1で説明したガイド部8に類似する構成の離散防止手段やキャッチング装置に相当する構成の離散防止手段などであってもよい。
【符号の説明】
【0126】
1,1A 載荷装置
11,11A 吊り部
2,2A 錘部
3,3A 電磁石(磁石部)
3a,3b 端面(端部)
31 鉄芯(芯部)
32 コイル
4,4A 打力部
41 外殻(非磁性体)
8 ガイド部
10A 載荷装置
20A 錘部
30A (第1の)電磁石
30B (第2の)電磁石
33A,33B 通電制御部
80 ガイド管(離散防止手段)
1B 載荷装置
300 電磁石(磁石部)
301 鉄芯(芯部)
301a,301b アーム部
301c 胴体部
302a−302c コイル
10B 載荷装置
300A (第1の)電磁石
300B (第2の)電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石部と、前記磁石部の一方側の端部に衝突させる磁性体からなる錘部と、前記磁石部の他方側の端部に非磁性体を介して隣接される打力部とを備えたことを特徴とする載荷装置。
【請求項2】
前記錘部は、前記磁石部に向けて前記錘部を誘導するガイド部に装着されることを特徴とする請求項1に記載の載荷装置。
【請求項3】
前記錘部と前記磁石部と前記打力部とは、前記ガイド部に滑動可能に係留されることを特徴とする請求項2に記載の載荷装置。
【請求項4】
前記錘部と前記磁石部と前記打力部とが上から順に配列されるとともに、前記錘部を吊り上げる吊り部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の載荷装置。
【請求項5】
前記磁石部は、柱状の芯部を有する電磁石であって、前記芯部の一端に前記錘部を衝突させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の載荷装置。
【請求項6】
前記磁石部は、胴体部の両側に一対のアーム部が並行に突設された芯部と前記胴体部及び前記アーム部のそれぞれに巻き付けられるコイルとを備えた電磁石であって、前記一対のアーム部の双方の端部に前記錘部を衝突させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の載荷装置。
【請求項7】
錘部と、前記錘部の一端に芯部の一方側の端部を当接させる第1の電磁石と、前記第1の電磁石に対して同じ磁極が対峙する向きで配置される第2の電磁石とを備えたことを特徴とする載荷装置。
【請求項8】
前記第1の電磁石と前記第2の電磁石は、胴体部の両側に一対のアーム部が並行に突設された芯部と、前記胴体部と前記アーム部のそれぞれに巻き付けられるコイルとを備えていることを特徴とする請求項7に記載の載荷装置。
【請求項9】
前記第1の電磁石と前記第2の電磁石とは、印加する電流の波形の制御が可能な通電制御部にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の載荷装置。
【請求項10】
2つの前記電磁石と前記錘部との離散を防止する離散防止手段を備えたことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の載荷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−59026(P2011−59026A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211224(P2009−211224)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(595067442)システム計測株式会社 (27)
【Fターム(参考)】