説明

輸送用真空包装カバー

【課題】 基台上の物品の周囲を覆い、カバー内を減圧することで、物品を基台に固定するような真空包装カバーにおいて、比較的軽量で作業性がよく、また、物品の角部に引っ掛かりにくく、しかも、減圧時に空気溜りが生じにくくなるようにする。
【解決手段】 物品Wの外面を覆う上カバー6と、基台1の係合溝3に密着係合する下カバー7を備えた真空包装カバー2のうち、上カバー6を、ナイロン繊維の織布にポリウレタン樹脂をコーティングしたポリウレタン引布から構成し、ナイロン繊維の布地層8を内面側とし、ポリウレタン樹脂からなる合成樹脂層9を外面側にする。また、布地層8のナイロン繊維の繊度を210〜1000デニールとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば物品を輸送したりするときなどに、物品の外面を覆って外部と遮断すると同時に、物品を基台に固定する機能を有する輸送用真空包装カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば物品を梱包して保管したり輸送したりする場合に、格別な結束バンド等を使用しなくても物品を固定でき、また、物品の周囲を覆って内部を保護できるようにした技術として、基台上に載置した物品の周囲を気密性のある包被シートで覆い、この包被シートの周縁部を基台の周壁に密着させるとともに、物品と包被シート間の空気を抜いて減圧し、包被シート内外に圧力差を生じさせることにより物品を基台に押し付けて固定するような梱包技術が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平7−187130号公報
【0003】
またこの際、包被シートの周縁部と基台の密着性を良好にするため、包被シートの周縁部にエアの給排によって膨張・収縮可能な中空部を設けると同時に、基台に係合溝を設け、前記中空部を係合溝内に挿入して中空部を膨張させることにより、周縁部の密着性を高めるようにした技術も知られており(例えば、特許文献2参照。)、更に、時間経過とともに、物品と包被シート間に空気が入って真空度が低下する不具合を防止するため、基台または包被シートに太陽電池と真空吸引源を搭載し、輸送または保管時に真空度を一定に保持するような技術(例えば、特許文献3参照。)も知られている。
【特許文献2】特開平9−86539号公報
【特許文献3】特開平10−35719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記技術では、包被シートとして、気密性と適度な伸縮性が得られる柔らかなシート、例えば、プラスチックシートや、ゴムシートや、キャンバスシートにゴム引き或いはプラスチックコーティングした布材料等が使用される旨記載されているが、例えば、プラスチックシートやゴムシートの場合、気密性は十分であるものの、物品の種類等によって強度を満足させようとすると重量が重くなりがちで作業性が悪くなり、また、滑りが悪くなるため、例えば梱包品の角部に引っ掛かり易くなって、減圧時に角部にテンションが掛かってカバーが破損しがちになるような不具合があった。
また、梱包品にカバーを掛けて減圧する際、物品とカバーとの間に一度空気溜りができると、この箇所から空気を抜くことができず、梱包品とカバーとの密着性が悪くなるという問題もあった。
【0005】
一方、ゴム引き布またはプラスチックコーティングした布材料等を使用する場合、比較的軽量に成形できることから、作業性が良くなるものの、プラスチック層やゴム層が内側で、布層が外側になるような形態で使用すると、上記と同様の不具合、すなわち、梱包品の角部に引っ掛かり易くなったり、一度空気溜りができると、この箇所から空気を抜くことができなくなったりするような不具合があった。
【0006】
そこで本発明は、比較的軽量で作業性がよく、また、物品の周囲を覆う場合にも角部に引っ掛かりにくく、しかも、減圧時に空気溜りが生じにくくなって密着性のよいカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、基台上に載置した物品を袋状のシートで覆い、この袋状のシート内部を減圧して物品を基台上で気密に固定する輸送用真空包装カバーにおいて、輸送用真空包装カバーとして、前記基台上に載置される物品を覆う上カバーと、上カバーに連結されてなる下カバーとから構成し、前記下カバーには、基台に形成される係合溝に係合可能な係合部を設け、前記上カバーを、内面側の布地層と外面側の合成樹脂層とから構成した。
【0008】
そして、物品を袋状のシートで覆い、下カバーの係合部を基台の係合溝に係合させた後、シート内部を減圧することにより、物品を基台上で気密に固定するが、この際、物品を覆う上カバーとして、内面側が布地層で外面側が合成樹脂層のカバーとすれば、全体の軽量化が図られるとともに、外面の合成樹脂層により気密性が保持され、また内面の布地層で物品との滑りが良くなって、角部に引っ掛かるような不具合が防止できる。また、内面側を布地層にすれば、カバーと物品との間の空気を抜いて減圧する際に、布地の通気性により空気溜りが生じにくくなり、カバーと物品との密着性を向上させることができる。
ここで、内面側が布地層で外面側が合成樹脂層のカバーとしては、例えば布地の表面に合成樹脂をコーティングしたものでも良く、布地の表面に合成樹脂をラミネートしたラミネート品でもよい。
また、布地としては、織布や編布等を使用することができ、繊維素材は天然繊維、合成繊維を問わない。また、合成樹脂の種類や厚み等は任意であるが、気密性が保持でき、且つ軽量で強度があることが好ましい。
なお、下カバーの素材は気密性が得られれば任意である。
【0009】
また本発明では、前記布地層の繊維の繊度を、210〜1000デニールとした。
このように、繊維の繊度を210〜1000デニールにすれば、布地の通気性が良好になるとともに、物品との摩擦抵抗が少なくなり好適である。
ここで繊度が210デニール未満であると、布地の通気性が悪くなり、その結果、カバー全体を物品に密着させ難くなり、1000デニールを超えると、滑り性が悪くなって物品の角部などに引っ掛かりやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
真空包装カバーの上カバーとして、内面側の布地層と外面側の合成樹脂層から構成することにより、軽量で作業性がよく、物品に被せたときも物品の角部に引っ掛かるような事態が抑制され、減圧時も空気溜りが発生しにくくなって物品との密着性を良好にすることができる。この際、布地の繊維の繊度を所定範囲にすることで、一層空気溜りの発生を抑制できるとともに、物品の角部に引っ掛かりにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は基台の一例を示す説明図、図2は図1のA−A線断面図、図3は本発明に係る真空包装カバーの一例の説明図、図4は上カバーの断面図、図5は下カバーの係合部を示す断面図、図6は基台上に載置した部品の周囲に真空包装カバーを掛けた状態の説明図、図7は下カバーの係合部の変形構成例を示す断面図である。
【0012】
本発明は、物品を基台に固定する際、物品の周囲を袋状のシートで覆い、その後、袋状シート内を減圧することにより、結束バンド等がなくても簡単に且つ確実に固定できるような技術における真空包装カバーの改良であり、軽量で作業性がよく、また、物品の周囲を覆う場合にも角部に引っ掛かりにくく、しかも、減圧時に空気溜りが生じにくくなって物品との密着性が良好になるようにされている。
【0013】
すなわち、この物品を固定するシステムは、図1に示す基台1と、図3に示す真空包装カバー2を備えており、図6に示すように、基台1上に物品Wを載置した後、物品Wの周囲を真空包装カバー2で覆い、後述する要領で真空包装カバー2の下端部を基台1に密着させ、その後、物品Wと真空包装カバー2の間の空気を抜いて減圧することにより、真空包装カバー2で物品Wを押え付けるように固定するものである。
【0014】
前記基台1は、図1に示すように、周縁部に沿って係合溝3を備えており、この係合溝3は、例えば図2に示すように、入り口側の幅が幅狭で、奥側の幅が幅広にされている。そして、係合溝3より内側の中央部が物品載置部4とされている。
また、係合溝3の外側領域の一部には、後述する真空包装カバー2の下カバー7のエア注入口栓13を通すための切欠凹部5が設けられている。
【0015】
真空包装カバー2は、図3に示すように、物品Wの周囲を覆うことができるような形状、サイズにされ、物品Wの外面を覆うことのできる上カバー6と、基台1の係合溝3に密着状に係合可能な係合部としての中空袋部12(図5)を有する下カバー7とが一体化されて構成されている。
【0016】
上カバー6は、図4に示すように、内面側に布地層8を、外面側に合成樹脂層9を備えたシートであり、このように物品Wに接触する内面側を布地層8にすることで、物品Wと接する側に樹脂やゴム等の素材を用いた場合に較べて物品Wとの間の摩擦抵抗が少なく、滑りが良好になるため、物品Wの角部等に引っ掛かりにくくなったり、エア溜りが生じにくくなる。その上、繊維と繊維との間に空気層が存在するため、カバー2と物品W間の空気を抜き易く、エア溜りが生じにくくなって物品Wのほぼ周囲全域に上カバー26を密着させることができる。更に、減圧前に物品Wと上カバー6との間にエア溜りが生じていたとしても、布地層8の空気層を介してエア溜りの空気が抜かれて、物品Wに上カバー6を密着させることができる。
この際、布地層8の繊維は天然繊維でも合成繊維でも良いが、繊維の繊度を210〜1000デニールにすることが好ましい。
これは、210デニール未満にすると、布地の通気性が悪くなり、1000デニールを超えると、滑り性が悪くなって物品の角部などに引っ掛かりやすくなるからである。
【0017】
また、合成樹脂層9の厚みは、一般的に0.3mm程度の厚みがあれば、気密性を保持することができる。そして厚みをあまり厚くすると、重くなったり、加工しにくくなるため、気密性や耐久性の保持を図りつつ、可能な限り軽量化が図られるよう決定することが好ましい。
なお、上カバー6の所定箇所には、減圧する際にエアを吸引するためのエア吸引口栓11が設けられている。
【0018】
前記下カバー7は、図5に示すように、空気の給排によって膨張・収縮自在な中空袋部12を有しており、この中空袋部12は、収縮時には、基台1の係合溝3内に楽に挿入可能とされ、膨張時には、係合溝3の内壁に密着可能にされている。
そして、このような下カバー7の素材としては、例えば天然ゴムシートや合成ゴムシート等のゴム素材や合成樹脂素材やゴム引布や樹脂引布等が適用可能である。そして、この下カバー7には、中空袋部12内に空気を供給するためのエア注入口栓13が設けられており、例えば、このエア注入口栓13の位置は、前述の基台1の切欠凹部5の位置に対応している。
なお、この下カバー6の素材の厚みも、一般的に0.2mm程度であれば、係合溝3の内壁に多少の凹凸があっても追随して密着することができるため、給気するエアの圧力や材質等を勘案して適切に決定する。
なお、中空袋部12の表面に段差が形成されると、その箇所の密着性が悪くなってエア洩れが発生するため、例えば、周縁方向に沿って延出する中空袋部12の端部を接合して無端状にする場合、接合部表面に段差が生じないようシームレス状に処理することが好ましい。
【0019】
以上のような上カバー6と下カバー7は、例えば熱融着あるいは接着等によって気密状に連結されている。
【0020】
次に、以上のような基台1や真空包装カバー2を使用した物品の梱包方法等について説明する。
図6に示すように、基台1の物品載置部4上に物品Wを載置し、その上から真空包装カバー2を掛けて周囲を覆うとともに、真空包装カバー2の下カバー7の中空袋部12を基台1の係合溝3内に入れ、エア注入口栓13を切欠凹部5に通す。
この際、物品Wに角部が存在しても、上カバー6との滑りが良好なため、例えばすべての中空袋部12を係合溝3内に入れるため、所定箇所のカバー2を下方に引張っても、上カバー6が引っ掛からず、スムーズに入れることができる。また、真空包装カバー2をゴム等の素材から成形することに較べて軽量であるため、楽に取り扱うことができる。
【0021】
そして、すべての中空袋部12が係合溝3内に挿入されると、エア注入口栓13からエアを注入して中空袋部12を膨らませて係合溝3に密着させ、真空包装カバー2の下端部を封止した後、エア吸引口栓11からエアを吸引して真空包装カバー2内を減圧する。
すると、カバー2と物品W間の滑りが良いことに加えて、カバー2内面側の布地層8の通気性が良いため、カバー2と物品W間に空気溜りが生じ難い上、減圧すると物品Wのほぼ周囲全体にカバー2が密着する。
【0022】
この結果、物品Wはカバー2によって基台1に押し付けられた状態で固定される。
このため、物品Wの形状の如何に拘わらず、また、結束バンド等がなくても固定できるようになり、梱包作業が楽に行われるとともに、作業の手間が省かれる。
なお、シリコンや滑剤、撥水剤等をカバー2の内側にコーティングし、カバー2と物品W間の滑り性を向上させてもよい。
【実施例】
【0023】
布地層8と合成樹脂層9とからなる上カバー6として、ナイロン繊維織布の表面にポリウレタン樹脂をコーティングしたポリウレタン引布を使用し、物品Wを覆う際に、布地層8が内面側に、合成樹脂層9が外面側に位置するようにしたものを本発明の実施例1とした。
これに対して、上カバー6の素材がゴム製のものを比較例1とし、上カバー6の素材として、上記ポリウレタン引布の表裏面を逆にしたもの、すなわち、内面側が合成樹脂層9で、外面側が布地層8になるように使用したものを比較例2とした。
【0024】
この結果、気密性については、実施例1、比較例1、比較例2ともすべて良好であったが、減圧時の空気溜りの出来易さ(部分的な密着の悪さ)、物品との間の滑り性については、比較例1、比較例2とも悪く、梱包品の角部に引っ掛かかったり、減圧時に角部にテンションがかかり易いため、カバーが損傷する場合があり、また作業時の取扱い性(軽さ、ハンドリング)については、特にゴム製の場合が悪かったが、実施例1の場合は、いずれも良好であった。
以上のことから、本発明の有効性が確認できた。
【0025】
ところで、下カバー7の中空袋部12を係合溝3に入れる際の容易化を図り、また、係合溝3との密着性を高めるため、中空袋部12の形態を図7に示すようにしても良い。
ここで、図7(a)は、中空袋部12の袋内に自立補助片14を一体に設けた例であり、このような自立補助片14を設けることにより、係合溝3内に挿入する作業の容易化を図ることができる。ここで、自立補助片14としては、例えば不織布や軟質性発泡体を使用することができる。
また、図7(b)は、中空袋部12の外側に嵌め込み可能で且つ係合溝3内に挿入可能な伸縮自在な保持枠15を設けた例であり、中空袋部12を膨らませることにより、間接的に保持枠15を膨らませ、保持枠15の外面を係合溝3の内壁に密着させるようにしたものである。特に、下カバー7としてゴムを使用した場合、強度を高めようとすればするほど厚みが増し、その結果、中空袋部12の目地部(溶着部)の段差が大きくなり、係合溝3の内壁との密着性が悪くなる場合があるので、そのような場合に好適である。
【0026】
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、真空包装カバー2の形状や、下カバー7の係合部としての中空袋部12の具体的構成等は例示である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
物品の保管や輸送時等において、真空包装カバーを用いて基台に物品を固定する際、物品の角部などに引っ掛かったり、減圧時にテンションがかかって破損したりするような不具合を防止でき、しかも軽量で取扱い易いため、作業性が極めて良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】基台の一例を示す説明図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】本発明に係る真空包装カバーの一例の説明図
【図4】上カバーの断面図
【図5】下カバーの係合部を示す断面図
【図6】基台上に載置した部品の周囲に真空包装カバーを掛けた状態の説明図
【図7】下カバーの係合部の変形構成例を示す断面図
【符号の説明】
【0029】
1…基台、2…真空包装カバー、3…係合溝、6…上カバー、7…下カバー、8…布地層、9…合成樹脂層、12…中空袋部、W…物品。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に載置した物品を袋状のシートで覆い、この袋状のシート内部を減圧して物品を基台上で気密に固定する輸送用真空包装カバーであって、この輸送用真空包装カバーは、前記基台上に載置される物品を覆う上カバーと、上カバーに連結されてなる下カバーとからなり、前記下カバーは、基台に形成される係合溝に係合可能な係合部を備え、前記上カバーは、内面側の布地層と外面側の合成樹脂層とから構成されることを特徴とする輸送用真空包装カバー。
【請求項2】
前記布地層の繊維の繊度は、210〜1000デニールであることを特徴とする請求項1記載の輸送用真空包装カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−193167(P2006−193167A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4951(P2005−4951)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】