説明

農作業機

【課題】動力伝達軸体が壊れにくい農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタに連結する機枠2と、この機枠2に対して可動する可動機枠11とを備える。機枠2は、第1入力軸10を回転可能に支持する第1入力軸支持部7を有する。可動機枠11は、第2入力軸20を回転可能に支持する第2入力軸支持部25を有する。可動機枠11には、前進作業時には前進作業状態となり、後進作業時には後進作業状態となる作業手段13を設ける。動力伝達軸体の軸方向一端部を第1入力軸10に接続し、その軸方向他端部を第2入力軸20に接続する。第2入力軸20は、水平方向に対して所定の傾斜角度θをもって傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達軸体が壊れにくい農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、第1入力軸を回転可能に支持する第1入力軸支持部を有し走行車に連結される機枠と、第2入力軸を回転可能に支持する第2入力軸支持部を有し機枠に対して可動する可動機枠と、この可動機枠に設けられ前進作業時には前進作業状態となり後進作業時には後進作業状態となる作業手段と、第1入力軸に軸方向一端部が接続されかつ第2入力軸に軸方向他端部が接続された屈曲可能な動力伝達軸体(ジョイント)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−352803号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、第2入力軸が水平であるため、動力伝達軸体の折れ角が大きくなり、動力伝達軸体が壊れやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、動力伝達軸体が壊れにくい農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、第1入力軸を回転可能に支持する第1入力軸支持部を有し、走行車に連結される機枠と、第2入力軸を回転可能に支持する第2入力軸支持部を有し、前記機枠に対して可動する可動機枠と、この可動機枠に設けられ、前進作業時には前進作業状態となり、後進作業時には後進作業状態となる作業手段と、前記第1入力軸に軸方向一端部が接続され、前記第2入力軸に軸方向他端部が接続された屈曲可能な動力伝達軸体とを備え、前記第2入力軸は、水平方向に対して所定の傾斜角度をもって傾斜しているものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、第1入力軸は、前後方向に沿って位置し、第2入力軸は、前記第1入力軸よりも低い位置に位置し、かつ、作業手段の前進作業状態時における後方視で左高右低の傾斜方向に沿って位置するものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、動力伝達軸体は、屈曲可能な屈曲部を軸方向両端側にそれぞれ有するものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、動力伝達軸体は、作業時に後方視で一直線状に位置するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2入力軸が水平方向に対して所定の傾斜角度をもって傾斜しているため、動力伝達軸体の折れ角が小さくなり、動力伝達軸体が壊れにくく、動力伝達軸体の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の前進作業時の平面図である。
【図2】同上農作業機の非作業時の平面図である。
【図3】同上農作業機の後退作業時の平面図である。
【図4】同上農作業機の前進作業時における動力伝達軸体の背面図である。
【図5】同上農作業機の後退作業時における動力伝達軸体の背面図である。
【図6】同上動力伝達軸体を取り外した状態の背面図である。
【図7】同上動力伝達軸体を取り外した状態の側面図である。
【図8】同上動力伝達軸体および作業手段の平面図である。
【図9】(a)が同上動力伝達軸体の背面図で、(b)が同上動力伝達軸体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1ないし図7において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部に連結して使用する畦塗り機(オフセット作業機)である。
【0015】
農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、トラクタの前進走行により圃場の畦に沿って進行方向である前方に向かって移動しながら、オフセット作業、すなわち例えば畦塗り作業(畦修復作業)をする。なお、圃場の隅部では、図3に示されるように、農作業機1は、トラクタの後進走行(バック走行)により圃場の畦に沿って進行方向である後方に向かって移動しながら畦塗り作業をする。
【0016】
農作業機1は、図示しないトラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結された固定機枠である機枠2を備えている。
【0017】
機枠2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結された3点連結部4を有している。3点連結部4は、トップマスト5およびロワアーム6等にて構成されている。
【0018】
機枠2は、第1入力軸支持部7を左右方向中央部の下側に有している。第1入力軸支持部7は、直線状の第1入力軸10を回転可能に支持している。第1入力軸10は、前後水平方向(略前後水平方向を含む、すなわち例えば水平方向に対して−15度〜+5度を含む意味である)に沿って位置している。第1入力軸10の先端部(前端部)には、トラクタのPTO軸が動力伝達手段を介して接続されており、PTO軸から出力される動力(回転力)が第1入力軸10に入力される。なお、第1入力軸支持部7はトラクタの大きさに応じて上下方向に回動調整可能となっており、この第1入力軸支持部7の回動調整によって第1入力軸10の向きが変更するようになっている。
【0019】
農作業機1は、機枠2に対して可動する可動機枠11と、機枠2と可動機枠11とを連結する連結手段12と、可動機枠11に設けられ畦塗り作業をする作業手段13とを備えている。
【0020】
連結手段12は、第1回動アーム16および第2回動アーム17を有している。各回動アーム16,17は、機枠2に回動可能に取り付けられている。また、機枠2には、前進作業状態の作業手段13のオフセット位置を調整するためのスライドアーム15が回動可能に取り付けられている。
【0021】
可動機枠11は、各回動アーム16,17が回動可能に取り付けられた第1フレーム部21と、この第1フレーム部に上下方向の軸23を中心として回動可能に取り付けられた第2フレーム部22とを有し、この第2フレーム部22に作業手段13が設けられている。そして、作業手段13は、機枠2に対して180度回動可能となっている。
【0022】
可動機枠11の第2フレーム部22は、図6および図7等に示されるように、作業手段13に対して回動しないミッションケース等の第2入力軸支持部25を有している。第2入力軸支持部25は、直線状の第2入力軸20を回転可能に支持している。つまり、第2入力軸支持部25は斜め上方を向いた傾斜面部26を有し、この傾斜面部26の中央部から第2入力軸20が斜め上方へ突出している。
【0023】
そして、第2入力軸20は、水平方向に対して所定の傾斜角度θをもって傾斜している。具体的には、第2入力軸20は、第1入力軸10よりも低い位置に位置し、かつ、作業手段13の前進作業状態時における後方視で左高右低の傾斜方向に沿って第1入力軸10よりも右の位置に位置している。
【0024】
換言すると、作業手段13の前進作業状態時(農作業機1の前進作業時)における後方視で、第2入力軸20は、その先端面(左端面)20aが第1入力軸10側を向くように、水平方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜している(図6参照)。なお、ここでいう所定の傾斜角度θは、例えば20度から30度の範囲内の角度である。
【0025】
そして、2箇所で屈曲可能でかつ軸方向に伸縮可能な動力伝達軸体(ジョイント)30によって、第1入力軸10と第2入力軸20とが連結されている。つまり、動力伝達軸体30の軸方向一端部が第1入力軸10に接続されかつ動力伝達軸体30の軸方向他端部が第2入力軸20に接続されており、この動力伝達軸体30によって第1入力軸10から第2入力軸20へと動力が伝達される。
【0026】
動力伝達軸体30は、図4、図5および図8等に示されるように、軸方向に伸縮可能な伸縮軸部31を軸方向中央側に有し、かつ、屈曲可能な屈曲部32,33を軸方向両端側にそれぞれ有している。つまり、動力伝達軸体30は、第1入力軸10に接続固定された軸方向一端側の屈曲部32と、第2入力軸20に接続固定された軸方向他端側の屈曲部33と、これら両屈曲部32,33同士を接続する伸縮軸部31とにて構成されている。
【0027】
ここで、図8に示されるように、伸縮軸部31は、アウターシャフト35と、このアウターシャフト35内にスライド可能に嵌合挿入されたインナーシャフト36とを有している。
【0028】
軸方向一端側である第1入力軸10側の屈曲部32は、第1ヨーク37と、第2ヨーク38と、第3ヨーク39と、第1ヨーク37および第2ヨーク38間に位置する第1スパイダ41と、第2ヨーク38および第3ヨーク39間に位置する第2スパイダ42とを有している。第1ヨーク37には、第1入力軸10の基端部(後端部)が接続固定されている。第3ヨーク39には、インナーシャフト36の端部が接続固定されている。
【0029】
軸方向他端側である第2入力軸20側の屈曲部33は、第1ヨーク47と、第2ヨーク48と、第3ヨーク49と、第1ヨーク47および第2ヨーク48間に位置する第1スパイダ51と、第2ヨーク48および第3ヨーク49間に位置する第2スパイダ52とを有している。第1ヨーク47には、第2入力軸20の先端部(左端部)が接続固定されている。第3ヨーク49には、アウターシャフト35の端部が接続固定されている。
【0030】
そして、前進作業時および後進作業時には第1入力軸10、動力伝達軸体30および第2入力軸20が同期回転し、この第2入力軸20から作業手段13へ動力が供給され、この作業手段13が作動する。なお、動力伝達軸体30は、安全カバー53にて覆われている。
【0031】
また、図4および図5に示されるように、作業手段13の前進作業状態時および後進作業状態時における後方視(背面視)で、動力伝達軸体30が一直線状(略一直線状を含む)に位置するようになっている。
【0032】
作業手段13は、前進作業時にはトラクタの後方部から一側方(右側方)に向かって突出して位置する前進作業状態となってトラクタの前進走行に基づいて前方に移動しながら畦塗り作業をし、後進作業時にはトラクタの後方部から他側方(左側方)に向かって突出して位置する後進作業状態となってトラクタの後進走行に基づいて後方に移動しながら畦塗り作業をし、運搬時等の非作業時にはトラクタの後方部に位置する格納非作業状態となるものである。
【0033】
つまり、作業手段13は、作業者の手動によって前進作業状態、格納非作業状態および後退作業状態に選択的に切り換え可能となっている。また、この農作業機1では、少なくとも前進作業状態のオフセット作業位置が変更可能となっている。なお、作業手段13を各状態に固定するための固定手段として、例えば第1ロック手段56および第2ロック手段57が設けられている。
【0034】
作業手段13は、回転しながら元畦の土を耕耘して盛り上げる盛土体(ロータリ)61と、盛土体61の進行方向後方で回転しながら盛土を締め固めて新畦を形成する畦形成体(ディスク)62と、盛土体61の進行方向前方で回転しながら元畦の上面を削る上面削り体63とを有している。これら盛土体61、畦形成体62および上面削り体63は、可動機枠11の第2フレーム部22によって回転可能に支持されている。
【0035】
そして、図8に示すように、上面削り体63は、チェーン65から動力を受けて回転する回転軸66と、この回転軸66に取り付けられた複数の切削爪67とを有している。
【0036】
盛土体61は、第2入力軸20に接続されたベベルギア68から動力を受けて回転する回転軸69と、この回転軸69に取り付けられた複数の耕耘爪70とを有している。
【0037】
畦形成体62は、回転軸69にベベルギア71、シャフト72およびスパーギア73を介して接続された回転軸74と、この回転軸74に取り付けられた畦形成部材75とを有している。畦形成部材75は、截頭円錐状の畦側面形成部76と、円筒状の畦上面形成部77とにて構成されている。
【0038】
また、図1等に示されるように、盛土体61は盛土体カバー78にて覆われ、畦形成体62は畦形成体カバー79にて覆われ、上面削り体63は上面削り体カバー80にて覆われている。
【0039】
なお、作業手段13の前進作業状態時には、上面削り体63、盛土体61および畦形成体62が前から後に向かって順に位置するが、後退作業状態になると、その順が逆になる。
【0040】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0041】
図1には作業手段13が前進作業状態に設定固定された状態が示されている。
【0042】
この状態で、トラクタが前進走行すると、作業手段13が進行方向(前方)に移動しながら畦塗り作業をする。
【0043】
つまり、トラクタ側からの動力が第1入力軸10、動力伝達軸体30および第2入力軸20によって作業手段13に伝達され、その結果、上面削り体63にて元畦の上面が削られ、盛土体61にて元畦の土が盛り上げられ、この盛土が畦形成体62にて締め固められて新畦が形成される。
【0044】
そして、畦塗り作業が進み、圃場の隅部に到達すると、作業手段13は、図2に示す格納非作業状態を経て、図3に示す後進作業状態に設定固定される。
【0045】
この状態で、トラクタが後進走行(バック走行)すると、作業手段13が進行方向(後方)に移動しながら畦塗り作業をする。つまり、前進作業時と同様、トラクタ側からの動力が第1入力軸10、動力伝達軸体30および第2入力軸20によって作業手段13に伝達され、その結果、上面削り体63にて元畦の上面が削られ、盛土体61にて元畦の土が盛り上げられ、この盛土が畦形成体62にて締め固められて新畦が形成される。こうして、畦の端部まで畦塗り作業を行うことができる。
【0046】
そして、農作業機1によれば、第2入力軸20が水平方向に対して所定の傾斜角度θをもって傾斜しているため、動力伝達軸体30の折れ角を最低限度に近づけることが可能で、動力伝達軸体30の折れ角が小さくなり、動力伝達軸体30が壊れにくく、動力伝達軸体30の耐久性の向上を図ることができる。
【0047】
つまり、図9(a)および(b)から明らかなように、第2入力軸20を水平にした場合に比べて、動力伝達軸体30の屈曲部33の折れ角A(<A´)が小さくなるとともに、動力伝達軸体30の屈曲部32の折れ角B(<B´)が小さくなる。その結果、衝撃等により動力伝達軸体30が破損しにくくなり、動力伝達軸体30の寿命を長くでき、不等速の防止にも効果が得られる。さらに例えば第2入力軸20を支持するミッションケースを回動可能に設ける構成等に比べて、構成を簡単にでき、軽量化および製造コストの低減等を図ることができる。
【0048】
また、動力伝達軸体30は、その折れ角が小さく、作業手段13の作業状態時における後方視で一直線状に位置するため、動力伝達軸体30の耐久性の向上をより一層図ることができる。
【0049】
なお、農作業機1は、オフセット作業として畦塗り作業をする畦塗り機には限定されず、例えば溝掘り作業をする溝掘り機等でもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 農作業機
2 機枠
7 第1入力軸支持部
10 第1入力軸
11 可動機枠
13 作業手段
20 第2入力軸
25 第2入力軸支持部
30 動力伝達軸体
32,33 屈曲部
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力軸を回転可能に支持する第1入力軸支持部を有し、走行車に連結される機枠と、
第2入力軸を回転可能に支持する第2入力軸支持部を有し、前記機枠に対して可動する可動機枠と、
この可動機枠に設けられ、前進作業時には前進作業状態となり、後進作業時には後進作業状態となる作業手段と、
前記第1入力軸に軸方向一端部が接続され、前記第2入力軸に軸方向他端部が接続された屈曲可能な動力伝達軸体とを備え、
前記第2入力軸は、水平方向に対して所定の傾斜角度をもって傾斜している
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
第1入力軸は、前後方向に沿って位置し、
第2入力軸は、前記第1入力軸よりも低い位置に位置し、かつ、作業手段の前進作業状態時における後方視で左高右低の傾斜方向に沿って位置する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
動力伝達軸体は、屈曲可能な屈曲部を軸方向両端側にそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
動力伝達軸体は、作業時に後方視で一直線状に位置する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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