説明

農業用塩化ビニル系樹脂フィルム

【課題】 ブリードの発生を十分に防止しつつベタツキの問題を改善した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、質量平均分子量が25000以上であるグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーを0.5〜2質量部、及び融点が100℃以上であるアマイド系化合物を0.1〜0.7質量部を含むことを特徴とする農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスやトンネル等の農業用施設の被覆材として有用な農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農業用のトンネル、農業用ハウス等の被覆材として、安価で透明性が良く、保温性及び強度に優れることから、塩化ビニル系樹脂フィルムが広く使用されている。しかしながら、塩化ビニル系樹脂フィルムには、フイルム同士が重なった際に付着し合うという性質が、ポリエチレンフィルム等に比べて大きいという欠点があり、展張ハウスを換気作業する際、巻き上げたフィルムのベタツキが多く作業し難いという問題や束ねて保管する場合にフィルム同士がくっつきやすいという問題(以下、ベタツキ性の問題と総称する)があった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特開2003−55516号公報(特許文献1)には、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、特定の有機酸性りん酸エステル金属塩を0.01〜0.5重量部、特定のモノマーを重合して得られた化合物を0.1〜5重量部添加したことを特徴とする農業用塩化ビニル系樹脂フィルムが開示されており、明細書中において質量平均分子量が8000のグリシジルメタクリレートのホモポリマーを添加することが記載されている。
【0004】
また、特開2001−316490号公報(特許文献2)には、少なくとも可塑剤及び安定剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる塩化ビニル系樹脂製フィルムであって、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタアクリレートのホモポリマー及び/又はコポリマーを0.1〜10重量部添加したことを特徴とする塩化ビニル系樹脂製フィルムが開示されており、明細書中において質量平均分子量が1000〜20000のグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーを添加することが記載されている。
【0005】
しかしながら、前記特許文献等に記載の従来の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、ベタツキ性の問題については改善されているものの、吹き出し白化(ブリード)を誘発する可能性があるという点で必ずしも未だ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2003−55516号公報
【特許文献2】特開2001−316490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ブリードの発生を十分に防止しつつベタツキ性の問題を改善した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムにおいて、質量平均分子量が大きい(25000以上)グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーと、融点が100℃以上であるアマイド系化合物とをそれぞれ所定量含有させることにより、ブリードの発生を十分に防止しつつベタツキ性の問題を改善した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、質量平均分子量が25000以上であるグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーを0.5〜2質量部、及び、融点が100℃以上であるアマイド系化合物を0.1〜0.7質量部を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムにおいては、前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーの質量平均分子量が28000〜100000であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムにおいては、前記アマイド系化合物がメチレンビスステアリルアマイドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブリードの発生を十分に防止しつつベタツキ性の問題を改善した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムをその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、質量平均分子量が25000以上であるグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーを0.5〜2質量部及び、融点が100℃以上であるアマイド系化合物を0.1〜0.7質量部を含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体であるポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルと他のモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマール酸、イタコン酸、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、高級ビニルエーテル等)との共重合樹脂、或いはこれらの樹脂の混合物が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられるグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーは、グリシジルアクリレートのホモポリマー及び/又はグリシジルメタクリレートのホモポリマーである。また、前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーの質量平均分子量が25000以上のものであり、好ましくは、28000〜100000のものである。前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーの質量平均分子量が25000未満では、経時変化によって前記農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの表面にブリード物が生じてしまう。他方、100000を超えると重合が均一に行えず、分子量のばらつきが大きくなる傾向にある。このようなグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーは特に制限されないが、例えば、溶液重合、懸濁重合等の重合方法により製造することができる。さらに、これらのグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
また、前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーの含有量としては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.5〜2質量部であり、好ましくは、0.7〜1.5質量部である。前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーの含有量が0.5質量部未満では、展張ハウスを換気作業する際等にフィルムのベタツキ性の問題が生じてしまう。他方、2質量部を超えても得られる効果は変わらず、添加量が増量したことによってコストアップとなり増量によるメリットがない。
【0017】
本発明に用いられるアマイド系化合物は、融点が100℃以上のものであり、好ましくは130〜160℃のものである。前記アマイド系化合物の融点が100℃未満では、展張ハウスを換気作業する際等にフィルムのベタツキ性の問題が生じてしまう。他方、前記上限を超えるとフィルムの表面に発生するブリード物が多くなる傾向がある。このようなアマイド系化合物としては、例えば、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドが挙げられ、ブリード性の観点から、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイドが好ましく、メチレンビスステアリルアマイドが特に好ましい。また、これらのアマイド系化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
さらに、前記アマイド系化合物の含有量としては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1〜0.7質量部であり、好ましくは、0.2〜0.5質量部である。前記アマイド系化合物の含有量が0.1質量部未満では、展張ハウスを換気作業する際等にフィルムのベタツキ性の問題が生じてしまう。他方、0.7質量部を超えるとフィルムの表面に発生するブリード物が多くなる。
【0019】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得るための塩化ビニル系樹脂組成物においては、前記塩化ビニル系樹脂、前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマー及び前記アマイド系化合物の他に、必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤、防滴剤、防霧剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0020】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる可塑剤としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)等に代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチルエステル(DOA)、セバチン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤;トリメリット酸トリオクチルエステル(TOTM)に代表されるトリメリット酸エステル系可塑剤;ポリプロピレンアジペート等に代表されるポリエステル系可塑剤等の高分子系可塑剤の他のセバチン酸系可塑剤;塩素化パラフィン等の一般的な可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;植物油のエポキシ化物;エポキシ樹脂が挙げられる。このような植物油のエポキシ化物としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油が挙げられ、このようなエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸エチルヘキシル、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルジシクロヘキセンジエポキサイド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロルヒドリンの重縮合物等のエポキシ系可塑剤が挙げられる。また、これらの可塑剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。さらに、これらの可塑剤の添加量は、農業用フィルムの用途や可塑剤の種類に応じて適宜決定することができる。
【0021】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる熱安定剤としては、例えば、金属石鹸、有機ホスファイト系安定剤、β−ジケトン化合物等の通常使用される熱安定剤を挙げることができる。このような金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、オクトイン酸亜鉛が挙げられる。また、このような有機系ホスファイト系安定剤としては、例えば、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイトが挙げられる。さらに、このようなβ−ジケトン化合物としては、例えば、ジベンゾイルメタン、ステアリルベンゾイルメタンが挙げられる。また、これらの安定剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。さらに、これらの安定剤の添加量としては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0022】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキシサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス{4,6−ビス[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジル)ブチルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル}−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−tert−オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物等のヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。また、これらのヒンダードアミン系光安定剤としては、質量平均分子量が800〜2000程度のものが好ましい。さらに、これらの光安定剤の添加量としては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01〜0.3質量部が好ましい。
【0023】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる酸化防止剤としては、例えば、アルキルフェノール、アルキレンビスフェノール、アルキルフェノールチオエーテル、β,β’−チオプロピオン酸エステル、有機亜リン酸エステル、芳香族アミン、フェノール・ニッケル複合体が挙げられる。また、これらの酸化防止剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリロニトリル置換体が挙げられ、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−tert−オクチル−6−ベンゾトリアゾール)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリチレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等のオキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β’−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類が挙げられる。また、これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;流動パラフィン、ポリエチレンワックス類、塩素化炭化水素類等の炭化水素類;ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸モノグリセリド等の脂肪酸エステル;ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系滑剤;バリウムイソデシルホスフェート、カルシウムオクタデシルホスフェート等の有機リン酸金属塩系滑剤が挙げられる。また、これらの滑剤は、前記アマイド系化合物と1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる充填剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク等の無機充填剤;アルキルメタクリレートを主体とする重合体からなるアクリル系粒子等の有機系充填剤が挙げられる。また、これらの充填剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。さらに、これらの充填剤としては、平均粒径が0.5〜10μmのものが好ましい。
【0027】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる防滴剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸・二塩基酸エステル、ソルビトール脂肪酸・二塩基酸エステル、ジグリセリン脂肪酸・二塩基酸エステル等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルや多価アルコールと脂肪酸及び二塩基酸とのエステル;或いはこれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加された化合物が挙げられ、具体的には、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンステアレート・エチレンオキサイド2モル付加物、ソルビタンステアレート・プロピレンオキサイド3モル付加物、ソルビトールステアレート、ソルビトールステアレート・エチレンオキサイド3モル付加物、ジグリセリンパルミテート・エチレンオキサイド2モル付加物、ソルビタンステアレートアジペート・エチレンオキサイド2モル付加物、ジグリセリンパルミテートセバケート・プロピレンオキサイド3モル付加物、ソルビトールパルミテートアジペート・エチレンオキサイド3モル付加物等が挙げられる。また、これらの防滴剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、これらの防滴剤の添加量としては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.5〜6質量部が好ましい。
【0028】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物に添加することができる防霧剤としては、一分子中に含フッ素基と水酸基及びアルキレンオキサイド基からなる群から選択される少なくとも1種とを有する含フッ素化合物が挙げられる。このような含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基[Cn2n+1基]、パーフルオロアルコキシル基[Cn2n+1O基]、ポリフルオロアルキル基[Hmn2n+1-m基]、パーフルオロアルケニル基[Cn2n-1基]、ポリフルオロアルケニル基[Hmn2n-1-m基]が挙げられ(但し、式中のmは1〜3、nは3〜20の整数を示す)、このようなアルキレンオキサイド基としては、例えば、(C24O)n、(C36O)nが挙げられる(但し、式中のnは1〜30の整数を示す)。
【0029】
このような含フッ素化合物としては、例えば、下記示性式(1)〜(32):
(1) CF3(CF2)4OCOC(CH3)=CH2
(2) CF3(CF2)6(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(3) CF3(CF2)6COOCH=CH2
(4) CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
(5) CF3CF(CF3)(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2
(6) CF3(CF2)7SO2N(C3H7)(CH2)2OCOCH=CH2
(7) CF3(CF2)7(CH2)4OCOCH=CH2
(8) CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(9) CF3(CF2)7SO2N(C2H5)(CH2)2OCOCH=CH2
(10) CF3(CF2)7CONH(CH2)2OCOCH=CH2
(11) CF3CF(CF3)(CF2)6(CH2)3OCOCH=CH2
(12) CF3CF(CF3)(CF2)6CH2CH(OCOCH3)OCOC(CH3)=CH2
(13) CF3CF(CF3)(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
(14) CF3(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2
(15) CF3(CF2)6(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(16) CF3(CF2)6CONH(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(17) CF3CF(CF2Cl)(CF2)6CONHCONH=CH2
(18) H(CF2)10CH2OCOCH=CH2
(19) CF2Cl(CF2)10CH2OCOC(CH3)=CH2
(20) CF3CF(CF3)(CF2)5(CH2)2O(C2H4O)8CH3
(21) CF3CF(CF3)(CF2)5(CH2)2(OH)CH2O(C2H4O)10CH3
(22) CF3CF(CF3)(CF2)7CH2CH(OCH3)CH2O(C2H4O)10CH3
(23) CF3CF(CF3)(CF2)7CH2CH(OH)CH2O(C3H6O)10H
(24) CF3CF(CF3)(CF2)5CH2CH(OCOCH3)CH2O(C3H6O)8CH3
(25) CF3CF(CF3)(CF2)5SO2N(C2H5)(C2H4O)12H
(26) CF3CF(CF3)(CF2)3CON(C2H5)(C2H4O)8H
(27) CF3(CF2)7(CH2)2(OH)CH2O(C2H4O)10CH3
(28) CF3(CF2)9CH2CH(OCH3)CH2O(C2H4O)10CH3
(29) CF3(CF2)9CH2CH(OH)CH2O(C3H6O)10H
(30) CF3(CF2)7CH2CH(OCOCH3)CH2O(C3H6O)8CH3
(31) CF3(CF2)7SO2N(C2H5)(C2H4O)12H
(32) CF3(CF2)5CON(C2H5)(C2H4O)8H
により示される化合物が挙げられる。また、これらの含フッ素化合物の添加量としては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。
【0030】
本発明にかかる塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、前記塩化ビニル系樹脂、前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマー及び前記アマイド系化合物、必要に応じて更に可塑剤、熱安定剤、光安定剤等の各種添加剤を配合して均一に混合することによって得られる。また、本発明において、前記塩化ビニル系樹脂組成物を均一に混合する方法としては、特に制限されず、例えばヘンシェルミキサーを用いて均一に混合する方法が挙げられる。
【0031】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、前記塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー法、押出法、インフレーション法等の適宜の手段により、所望厚さのフィルムに成形することで得ることができる。フィルムの厚さについては、用途によって異なり一概には決められないが、0.05〜0.2mm程度が好ましい。
【0032】
また、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、片面又は両面に溶剤型、水系型、紫外線硬化型の塗料による塗膜を形成させても良い。このような溶剤型塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、塩化ビニル−アクリル樹脂系、セルロース樹脂系、フッ素樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系等の溶剤型塗料が挙げられる。また、このような水系型塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等の水系型塗料が挙げられる。さらに、このような紫外線硬化型塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、アクリル変性ウレタン樹脂系、アクリル変性エポキシ樹脂系、メルカプト誘導体系、エポキシ樹脂系等の紫外線硬化型塗料が挙げられる。
【0033】
さらに、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムにおいては、ハウスに展張した場合にハウスの外側に位置する面に、前述の塗料を塗布し、塗膜を形成させることにより防塵処理をすることができる。一方、ハウスの内側に位置する面には、前述の塗料にコロイダルシリカ等を添加した塗料を塗布し、塗膜を形成させることにより防滴性を付与する処理をすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムのベタツキ性及びブリード性はそれぞれ以下の方法により評価した。
【0035】
(i)農業用塩化ビニル系樹脂フィルムのベタツキ性
先ず、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを用いて屋外に長さ5mのトンネルハウス(間口1.5m)を作り、トンネルハウスを密閉し、7日間放置した。次に、放置後の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムのハウスの内側に位置する面どうしを圧着(手動ゴムローラーで3回圧着し水抜き)し、70℃で2時間乾燥後、3cm幅にカットして試料を得た。次いで、得られた試料を剥離する際の平均荷重を万能型引張試験機(東洋精機社製)を用いて測定した。なお、試料を剥離する際の平均荷重が50g以下である場合を合格(○)と評価し、50gを超える場合を不合格(×)と評価した。
【0036】
(ii)農業用塩化ビニル系樹脂フィルムのブリード性
先ず、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを50℃で5時間熱処理し、20℃雰囲気下で1ヶ月放置した。そして、放置後の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの表面状態を目視にて確認して評価した。なお、評価は下記の基準にしたがって判定した。
◎:全くブリード物がない。
○:若干ブリードしているが問題ない。
□:ブリードがはっきりと確認できる。
△:ブリード物が多い。
×:ブリード物がかなり多い。
【0037】
(実施例1)
先ず、ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度:1400)100質量部、ジ−2−エチルヘキシルフタレート48質量部、トリキシレニルホスフェート3質量部、液状Ba−Zn系複合熱安定剤1質量部、粉末状Ba−Zn系複合熱安定剤1質量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(Viosorb
130:共同薬品社製)0.1質量部、ソルビタンステアレート2質量部、メチレンビスステアリルアマイド(融点:147℃)0.2質量部、フッ素系防霧剤(DS−401:ダイキン工業社製)0.1質量部、ヒンダートアミン系光安定剤(LA−63:旭電化工業社製)0.1質量部、及びグリシジルメタクリレートホモポリマー1(平均質量分子量:30000)1質量部を配合し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)を用いて10分間攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。次に、得られた塩化ビニル系樹脂組成物を175℃に加熱溶融してロール混練りし、次いで、カレンダー装置によって厚さ0.1mmのフィルムに成形して、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0038】
(実施例2)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにグリシジルメタクリレートホモポリマー2(平均質量分子量:50000)1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0039】
(実施例3)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにグリシジルメタクリレートホモポリマー3(平均質量分子量:90000)1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0040】
(実施例4)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにグリシジルメタクリレートホモポリマー4(平均質量分子量:100000)1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0041】
(比較例1)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにグリシジルメタクリレートホモポリマー5(平均質量分子量:8000)1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0042】
(比較例2)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにグリシジルメタクリレートホモポリマー6(平均質量分子量:15000)1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0043】
(比較例3)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにグリシジルメタクリレートホモポリマー7(平均質量分子量:20000)1質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0044】
(比較例4)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにエポキシ化大豆油(W−100EL:大日本インキ工業社製)2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0045】
(比較例5)
グリシジルメタクリレートホモポリマー1の代わりにビスフェノールAジグリシジルエーテル(エピコート828:油化シェルエポキシ社製)2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0046】
(比較例6)
メチレンビスステアリルアマイドの代わりにエルカ酸アマイド(融点:82℃)0.2質量部を配合した以外は実施例2と同様にして農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0047】
実施例1〜4及び比較例1〜6で得られた各農業用塩化ビニル系樹脂フィルムについて、ベタツキ性及びブリード性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に記載した結果からも明らかなように、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム(実施例1〜4)は、ブリードの発生を十分に防止しつつベタツキ性の問題が改善されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、ブリードの発生を十分に防止しつつベタツキ性の問題を改善した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することが可能となる。
【0051】
したがって、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、農業用ハウスやトンネル等の農業用施設の被覆材として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムであって、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、質量平均分子量が25000以上であるグリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーを0.5〜2質量部、及び、融点が100℃以上であるアマイド系化合物を0.1〜0.7質量部を含むことを特徴とする農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記グリシジル(メタ)クリレートのホモポリマーの質量平均分子量が28000〜100000であることを特徴とする請求項1に記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記アマイド系化合物がメチレンビスステアリルアマイドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。

【公開番号】特開2006−321828(P2006−321828A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143603(P2005−143603)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】