農業用被覆シ―トのはぎ取り装置
【課題】 農地の畝などを被覆したシートのはぎ取り装置において、はぎ取ったシートを巻回し回収する巻き取りリールの操作を簡単にすること提供する。
【解決手段】 巻き取りリール8のクロスアーム13の一端を軸心に向けて傾斜可能に設け、レバー33を起こすことでクロスアーム13を傾斜させる構成とする。また、巻き取りリール8のシート入口に設置するガイドローラの向きを自在にし、巻き取りリール8及びレバー33を収納する枠体2の垂直カバー4を巻き取りリール8の回転駆動の断続機構に連繋させた。レバー操作によりクロスアーム13が位置を移動しても操作するレバー33の位置が巻き取りリール8に干渉されないので操作性が良い。巻回したシートを取り出すために垂直カバー4を開けるだけで、巻き取りリール8への回転駆動伝達が停止するので作業が簡単になる。
【解決手段】 巻き取りリール8のクロスアーム13の一端を軸心に向けて傾斜可能に設け、レバー33を起こすことでクロスアーム13を傾斜させる構成とする。また、巻き取りリール8のシート入口に設置するガイドローラの向きを自在にし、巻き取りリール8及びレバー33を収納する枠体2の垂直カバー4を巻き取りリール8の回転駆動の断続機構に連繋させた。レバー操作によりクロスアーム13が位置を移動しても操作するレバー33の位置が巻き取りリール8に干渉されないので操作性が良い。巻回したシートを取り出すために垂直カバー4を開けるだけで、巻き取りリール8への回転駆動伝達が停止するので作業が簡単になる。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
畑地などに形成する畝にマルチシートを覆って作物を栽培する方法において、育成、収穫に応じてシートをはぎ取る必要があり、この作業を作業機で行うようにしている。本考案は、はぎ取ったシートをリールに巻き取って回収するようにした農業用被覆シートのはぎ取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
畑地などの畝に被覆するマルチシ−ト(以下、シートという。)は長い帯状に形成されており、その使用に当ってはその両側縁を覆土によって軽く押え、雨水の影響や水分の蒸発を防ぐためのものである。シートが不必要になったときは、はぎ取り装置によってシートを引っ張ればシート両側の覆土が滑り落ちるので、そのまま容易にシートを回収できる。
タバコや馬鈴薯等のように作物の茎がシートから突出して残っている場合、シートがビニル系やポリエチレン系のものであるので破れる虞もあるが、上方に引上げながら引っ張ることにより作物の茎等をシートの下に導き、シートが裂けることを防いでいる。
【0003】
図16及び図17に示すように、従来のはぎ取り装置1は、はぎ取り装置1の枠体2を三点リンクでトラクタ3の後部に連結することによってトラクタ3に牽引される。枠体2は上面から後方に懸けて円弧状部を有し、円弧状部に対し一側面に側壁2a、他側面に垂直カバー4が取り付けられている。そして、この側壁2aに軸受5が取り付けられ、図示を略した補強材によって堅固に固定されている。
軸受5には回転軸6が挿通され、軸受5を固定した垂直カバー4の外側に露出した回転軸6の突出部には後述する大プーリー7が取り付けられる。また、軸受5から枠体2の内側に突出した回転軸6には、巻き取りリール8が装着されている。
【0004】
巻き取りリール8は、挿通軸9を有し、挿通軸9の一端に固着した中心から四方に延びる弯曲アーム10と、挿通軸9上を摺動するスライド環11に取り付け、かつ、四方に延びるヘ字状の前面アーム12と、各弯曲アーム10と各前面アーム12とをそれぞれ回動自在に連結するクロスアーム(枠組)13とから構成されている。また、スライド環11は十字状に四方に延びたアーム11aを備え、アーム11aに前面アーム12が挿通軸9に近接する方向に回動自在に設けられている。
そして、シートsを巻き取るときには、スライド環11を挿通軸9の他端に配してねじ14を締め付けることによって固定しておく。これにより、シートsの巻き取り空間が形成され、巻き取りリール8の径方向外周側において、弯曲アーム10の折れ曲がりと前面アーム12の折れ曲がりとにより巻き幅を広げている。
【0005】
なお、所定のクロスアーム13には弯曲アーム10側から前面アーム12に向かって延びる補助アーム15が設けられ、このクロスアーム13と補助アーム15との間でシートsの巻き始め端部を挟持する。
【0006】
また、枠体2の後部にコ字状フレーム16を略水平状態に突出し、コ字状フレーム16には巻き取りリール8の軸と平行な軸上で回転するガイドロ−ラ17が設けられている。
さらに、枠体2にはその前方下方に突出したサブソイラ18が幅方向及び高さ方向に調整可能に設けられ、使用状態において、はぎ取り装置1の荷重で土壌を掘り起こすようになっている。また、巻き取りリール8はユニバーサルジョイント19及び接続伝達手段を介してトラクタ3のPTO軸(駆動軸)により回転駆動される。
【0007】
図17に示すように、ユニバーサルジョイント19は入力軸20に連結される。入力軸20は一対の可変プーリーとこれに渡架したVベルトとで構成したベルト式無段変速機21に連結し、さらに無段変速機21に連結した一対のベベルギヤ22,22を介して枠体2の外部に設けたプーリー23に連結されており、これによって入力軸20の回転をプーリー23に伝えている。また、前述したように側壁2aの外側に露出した回転軸6の突出部には大プーリー7が取り付けられており、プーリー23と大プーリー7にベルト24が渡架されている。なお、枠体2の外側に設けたハンドル25は無段変速機21を操作するもので、可変プーリーの有効径を変化させて回転速度を調節する。
【0008】
次に、はぎ取り作業の説明を補足する。
ユニバ−サルジョイント19の連結は、トラクタ3とはぎ取り装置1とを連結した後で行う。サブソイラ18は長さ約10cm〜15cmが土中に入るように高さ調節する。また、畝の上方にはぎ取り装置1を位置させ、畝からはがしたシートsの端部をガイドロ−ラ17に掛け回し、さらに巻き取りリール8のクロスアーム13と補助アーム15との間に掛けてシ−トsの巻き始め端部を固定する。
【0009】
次に、トラクタ3を歩く位の速さで走行させ、トラクタ3の進行速度に合わせてハンドル25で巻き取りリール8の回転速度を調節する。シートsを巻き取った後は一旦動力を停止させてから垂直カバ−4を開き、巻き取りリール8のねじ14を緩めてスライド環11を挿通軸9に対し自由に摺動可能にさせる。そして、スライド環11を挿通軸9に沿って中へ移動させると、各前面アーム12と各クロスアーム13及び各弯曲アーム10と各クロスアーム13とがそれぞれリンクされていることにより、前面アーム12の外端は外方に向かって傾倒していき、複数のクロスアーム13の前面アーム12側の一端が挿通軸9周囲に寄せ集まる。これにより、巻き取りリール8の径が一側においてテーパ状に小さくなることで、巻回したシートsを巻き取りリール8から簡単に取り外すことができるようになる。
【0010】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のはぎ取り装置における巻き取り操作においては、シートsの張力によって次第に巻き取りリール8が締め付けられていくので、スライド環11のねじ14を緩めたときに勢いよく前面アーム12とクロスアーム13とが中心に向かって移動する虞があり、そのとき、ねじ14を操作した手などがこれらに接触しないように注意をする必要がある。
一方、ガイドロ−ラ17はコ字状フレーム16に軸着され略水平位置に固定された位置にあるので、当然、被覆したシートsを上方へはぎ取るときにガイドロ−ラ17にも張力による負荷が掛かる。
しかしながら、被覆したシートsの側方にトラクタ3を走行させ、横方向からシートsを引っ張り上げるようにするとシートsの誘導が困難になり、シートsに抵抗力が作用しシートsの巻き締めがきつくなる。このような状況においては、巻き取りリール8のクロスアーム13に大きな負荷が掛かることになる。
【0011】
このほかにも、シートsの終端が巻き取られたり、巻回したシートsが枠体2内で定量になったときは、作業工程の途中でも巻回したシートsを取り出す必要がある。また、シートsの巻回状態を点検するために垂直カバー4を開けることもある。
このようなとき、トラクタ3のはぎ取り装置1への動力伝達を切ってから枠体2の垂直カバー4を開け、シートsの回収や点検作業をするが、カバー4開閉時にいちいち動力伝達の切断操作を行うために作業員が動き回るのでは手間が掛かって作業性が悪いものであった。
【0012】
本考案は、巻回したシートの取扱いを容易にし、操作性、作業性の良い農業用被覆シートのはぎ取り装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記目的を達成するために、請求項1の考案は、トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、 枠体に回転自在に取り付けた前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径可能に構成し、前記巻き取りリールの軸方向一側の外側部に、前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径させるレバーを設けたことを特徴とする。
この構成において、レバーを巻き取りリールの外部から操作することができ、巻き取りリールの縮径側と操作した手との接触が回避され、巻き取りリールの縮径側から巻回されたシートを簡単に引き抜くことができる。
【0014】
請求項2の考案は、請求項1に記載の考案において、レバーは巻き取りリールの軸方向一側の外側部に回動自在に取り付けられ、該レバーを外方向に回動した時に、レバーの端部が巻き取りリールの軸方向一側中心部を該巻き取りリールの軸方向他側に向けて押圧し、前記一側中心部を移動させるように設けたことを特徴とする。
この構成では、レバー操作により巻き取りリールの軸方向一側中心部が内側に移動するので、縮径する動作が確実になる。
【0015】
請求項3の考案は、トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される、縮径構造となっている巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、 田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、 前記ガイドローラを前記シート挿入口に対して角度を変えるように設けたことを特徴とする。
この構成では、農業用被覆シートを引き剥す時の張力の方向に応じてガイドローラの向きを合わせることが可能である。
【0016】
請求項4の考案は、請求項3に記載の考案において、支持フレームの中間部とガイドローラを支持したフレームの軸着部周辺とにピン及び複数の孔による係合手段を設け、かつ、軸着部にばねを介挿してピンと、複数の孔のいずれかの孔とが嵌合するようにばね付勢して、前記ガイドローラの誘導角を選択的に変更するように設けたことを特徴とする。
この構成では、農業用被覆シートを引き剥す時の張力の方向に合わせてガイドローラの向きを係合手段により選択し固定するので、ガイドローラの向きが安定して巻き取り作業が円滑に行える。
【0017】
請求項5の考案は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の考案において、巻き取りリールをカバーする枠体の側面に垂直カバーを開閉自在に設け、該垂直カバーの開放によって前記巻き取りリールの動力伝達手段であるベルトに対し、テンション部材を遠退するように前記垂直カバーと該テンション部材を連繋したことを特徴とする。
この構成では、垂直カバーとテンション部材とをワイヤにより連結することで、垂直カバーを開くだけでテンション部材がベルトから離れて巻き取りリールの回転を停止することができる。
【0018】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すはぎ取り装置1は畑地等に敷設されたシートsを巻き取って回収するもので、はぎ取り装置1の枠体2内に巻き取りリール8が設けられている。枠体2の一側に側壁2aが設けられ、枠体2の他側に垂直カバー4が取り付けられている。垂直カバー4はヒンジ26(図10参照)により開閉自在に設けられている。この垂直カバー4を開くことにより枠体2内の巻き取りリール8を外部から取扱うことができる。
【0019】
はぎ取り装置1の枠体2の一側の側壁2aに軸受5が堅固に固着され、軸受5に軸支された回転軸6に巻き取りリール8が装着されている。
ここで、巻き取りリール8は概略回転軸6に嵌挿した挿通軸9と、挿通軸9の一端に固着された放射状に四方に延びる複数の背面アーム27と、挿通軸9の他端側に摺動自在に嵌挿したスライド環11と、スライド環11に起伏自在に枢着した四方に延びる複数の前面アーム12(枠組)と、各背面アーム27と各前面アーム12間に亘って、回動自在に枢着されたクロスアーム13(枠組)とからなっている。
これにより、巻き取りリール8は挿通軸9と回転軸6とをピン28で結合することで回転軸6と一体にされる。
また、回転軸6の枠体2の外側に突出した部分には大プーリー7が固定されている。
【0020】
巻き取りリール8の挿通軸9の他端に挿通されたスライド環11には、放射状に四方に延びるアーム11aが延設されている。そして、アーム11aに略ヘ字状の前面アーム12の基端が軸支され、前面アーム12と背面アーム27の各中間部位にクロスアーム13の両端がそれぞれ回転自在に枢着されている。各背面アーム27の中間部にはクロスアーム13の一端が軸支されているが、そのうちの一つの軸支箇所には補助アーム15を固着したホルダー29が回動自在に設けられ、補助アーム15はホルダー29と挿通軸9との間に調節したスプリング30によってクロスアーム13に圧接するように付勢されている。なお、前面アーム12の先端にはキャップ31が嵌められている。
【0021】
挿通軸9の先端には軸受ブラケット32により軸32aが設けられ、レバー33が、その一端近傍において軸32aに軸支され回動自在に取り付けられている。
図1ないし図3に示すように、レバー33の一端にはスライド環11(のアーム11a)を軸方向に押すローラ34が取り付けられ、また、レバー33の他端にはレバー33を操作する取手35が設けられている。レバー33の内部にはストッパ36が設けられ、ストッパ36は取手35と間隔を置いて平行な把持部36aと、レバー33内に位置してその長手方向に移動可能な作用部36bとからなっている。
【0022】
ストッパ36の作用部36bの途中に横方向に突出するピン37が設けられ、このピン37はレバー33の側壁に穿設された長孔33aに挿通して、ストッパ36をレバー33の長手方向に移動可能に案内する。また、レバー33内にあってピン37とレバー33の座面33bとの間には押しばね38が介挿されており、ストッパ36をローラ34側に付勢する。
図1に示すようにレバー33が倒れている状態において、ストッパ36の作用部36bの先端はスライド環11に固設したフランジ39の孔に進入して、スライド環11を挿通軸9の先端に位置決め固定する。ストッパ36の把持部36aを持ってストッパ36を引き上げるとストッパ36の作用部36bがフランジ39の孔から抜け出るので、レバー33は枢着点32aを中心として回動自在となる。
【0023】
次に、ガイドロ−ラ17の構造を説明する。
図7、図8に示すように、枠体2の後方にはシートs取り込み用の開口(入口)40が設けられ、開口40の左右両側からアーム41が後方に向かって平行に延び、2つのアーム41はガイドロ−ラ17の取り付け位置において下方に湾曲してから中央に向かって湾曲し中央で連結して枠体42を構成している。図7に示すように、枠体42の下方部分全体形状は後方から見て緩やかなW形状になっており、ガイドロ−ラ17の誘導角が変化したときのシートsの通過路を干渉しないようになっている。
また、枠体42の下方位置中央部にはブラケットによる垂直面43が形成され、垂直面43にボルト孔44とその周縁に複数の位置決め孔45が形成されている。位置決め孔45はボルト孔44の直下方に1つ穿設され、この位置決め孔45の左右方向にボルト孔44を中心とした円弧上位置に所定間隔をあけて他の位置決め孔45が設けられている。
【0024】
ガイドロ−ラ17を支持するフレーム46は矩形状に形成され、その一辺の中央部にボルト47によって枠体42に結合させ、かつ、ボルト47のヘッドとフレーム46との間にばね48を介挿することによってフレーム46を弾性支持する。さらに、フレーム46の中央近傍に溶着したピン49を枠体42に形成した3つの位置決め孔45の内の1つに嵌入して、フレーム46の位置(角度)を選択する。
【0025】
ガイドローラ17の誘導角を変更するときは、ピン49を別の位置決め孔45に差し変える。すなわち、図8、図9に示すように、フレーム46をばね48のばね力に抗して前方に引っ張りながら、今まで嵌挿されていた位置決め孔45からピン49を抜き、ガイドロ−ラ17の誘導角を変えてからピン49を嵌挿できる他の位置決め孔45に差し込む。これによって、例えば、ガイドロ−ラ17は図7の2点鎖線で示す左傾斜の位置に設定することができる。また、右に傾斜するように設定することもできる。
なお、図7では省略してあるが図8に示すように、枠体42のアーム41を補強する支持アーム50が枠体2とアーム41の下部中央との間に、伸縮可能に渡架されている。
【0026】
次に、巻き取りリール8の回転操作構造を図10(a)、(b)及び、図11を参照して説明する。
前述したように、巻き取りリール8の回転伝達構造は前述したように、入力軸20の回転力は、可変プーリーとプーリー間に渡架したVベルトからなる無段変速機21と一対のベベルギヤ20,20とを順次経由して枠体2外側のプーリー23を回転させる。プーリー23と巻き取りリール8の回転軸6に取り付けた大プーリー7にベルト24が渡架されているので、プーリー23の回転を大プーリー7に伝達することによって巻き取りリール8は回転される。
【0027】
図11に示すように、L字状テンション(テンション部材)51をL字の角部付近で枠体2の側壁2aに枢着し、L字状テンション51の一端にばね52を反時計方向に回動するように付勢するように取り付け、L字状テンション51の他端にはベルト24の外側からこれに圧接するようにテンションプーリー53を取り付ける。
【0028】
この構造において、枠体2の側壁2aにワイヤ54を沿わせ、その一端をL字状テンション51の一端に取り付け、ワイヤ54の他端は枠体2の中を横切り反対側の垂直カバー4の開閉部に枢着したヘ字状のプレート55に接続してある。
垂直カバー4をヒンジ26を中心に開放した時にワイヤ54を引っ張り(図10(a)の状態)、ばね52の付勢力に抗してL字状テンション51を時計方向に回動し、これによってテンションプーリー53をベルト24から離すように作動させる。これによってベルト24の緊張が緩みプーリー23からの回転伝達は中断される。垂直カバー4を閉じると、ワイヤ54はばね52の付勢力でL字状テンション51を反時計方向に回動する方向に引き出される。
【0029】
次に、はぎ取り装置1の作用について説明する。
畝に被覆されたシートsを巻き取りリール8に巻回する場合は、図3に示す位置にあるレバー33を取手35とストッパ36の把持部36aを持ち、ストッパ36を取手35側に引くと、フランジ39の孔からストッパ36の作用部36bが外れるので、レバー33を図4に示すように回動させることができる。レバー33を引き起こすとローラ34によってスライド環11を内方に押すので、スライド環11は内側に移動してクロスアーム13が中心に傾く。この間にクロスアーム13と補助アーム15との間にシートsの巻き始め端部を挟持する。そして、スライド環11及びクロスアーム13を元に戻すと同時に、レバー33を倒し、ストッパ36の作用部36bをフランジ39の孔に嵌入させる。
ここで、図1に示す前面アーム12とアーム11aの第1の軸支位置Aとクロスアーム13と前面アームとの第2の軸支位置Bとでは、巻き取りリール8の軸方向に対して同じか、または第2の軸支位置Bの方が外側に配置される位置の場合、巻き付けたシートsを回収するときにシートsの張力に逆らわずにレバー33を引き起こすことができるので、スライド環11をそのように固定する。
【0030】
以上で巻き取りリール8の準備が完了し、トラクタ3を畝に沿って走行させながら、図5に示すように、巻き取りリール8を前方に回転させてシートsを巻き取る。そして、巻き取りが完了したならば、前述した手順と同様にレバー33を手前に引き起こす(図6参照)。これにより、前面アーム12等を折り畳み、巻回したシートsを巻き取りリール8の横方向から外す。
【0031】
図12に示すように、トラクタ3を畝に跨がって走行させながらシートsを上方にはぎ取る場合、ガイドローラ17を水平位置にして巻き取って行く。また、図13、図14に示すように、トラクタ3を管理路56に走行させて畝と畝に跨がる幅広のシートsを側方からはぎ取る場合、ガイドロ−ラ17をシートsが敷設された方向に傾斜するように調節し、シートsを円滑に巻き取っていく。
また、図15に示すように、畝の幅の大きさがトラクタ3の幅より大きいときには、トラクタ3を畝上に走行させ、ガイドロ−ラ17をシートsをはぎ取る側に傾かせてシートsを前方斜め上方にはぎ取ることもできる。
【0032】
このようにしてはぎ取ったシートsを巻き取りリール8に巻回していき、定量になったときに、巻回したシートsを取り出すため、枠体2の垂直カバー4を開ける。垂直カバー4にはワイヤ54が接続され、垂直カバー4の開度によってワイヤ54が引っ張られ、L字状テンション51が回動してテンションプーリー53がベルト24から離れる。これにより、大プーリー7への伝達が中断され、いちいちトラクタ3からの駆動源を切る必要がなく、操作が簡単になる。
【0033】
【考案の効果】
本考案は、以上のように構成したものであり、請求項1の考案では、はぎ取り装置に備えた巻き取りリールの縮径側に設けたレバーを操作し、巻き取りリールの縮径側から巻回されたシートを簡単に引き抜くことができるので、操作性が良く、巻き取りリールとレバーが空間を共有していないので互いに干渉せず操作の的確性が向上する。
また、請求項2の考案では、レバーを外方向に回動した時にレバーの端部が巻き取りリールの中心部を押圧するので、巻き取りリールが内側に移動し易くなり、操作を確実なものにする。
【0034】
請求項3の考案では、ガイドローラを支持した矩形状フレームを軸着させたので、巻き取り装置の入口に設けたガイドローラを回動させて傾斜させることができ、シートを引き剥す時の張力の方向に応じてガイドローラの向きを合わせることが可能である。これによりトラクタを畝に沿わせて走行させ側方からのシートのはぎ取り作業も円滑に行え、シートの張力の影響を抑えることができる。
請求項4の考案では、ガイドローラを傾斜して位置決め固定させる係合手段を備えたので、ガイドローラの向きが安定して巻き取り作業が円滑に行え、シートの張力の影響を抑えることができる。
【0035】
請求項5の考案では、垂直カバーとテンション部材が連繋されているので、垂直カバーを開けることによりベルトからテンション部材が離れて動力伝達が中断され、いちいち動力伝達の駆動源を切ることもなくシートの回収、はぎ取り作業を続行することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による実施の形態の農業用被覆シートのはぎ取り装置の巻き取りリールの側面図である。
【図2】図1に示す巻き取りリールに付設したレバーの側面図である。
【図3】図1に示すレバーの取り付け構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示す巻き取りリールの操作手順を説明する側面図である。
【図5】図1に示す巻き取りリールにシートを巻回するときの状態を説明する斜視図である。
【図6】図1に示す巻き取りリールから巻回したシートを外すときの状態を説明する模式図である。
【図7】本考案による実施の形態のはぎ取り装置のガイドローラの取付構造をシート入口側から見た正面図である。
【図8】図7のガイドローラの取付構造の側面図である。
【図9】図8のガイドローラの動作を説明する側面図である。
【図10】本考案による実施の形態の巻き取りリールの駆動機構を(a)、(b)により説明する動力伝達部の平面図である。
【図11】図10に示す巻き取りリールの駆動機構のベルト掛けを説明する動力伝達部の側面図である。
【図12】本考案による実施の形態のトラクタの使用状態とシートと畝の関係を示す後面図である。
【図13】本考案による実施の形態のトラクタを畝に並行に走行させたときのはぎ取り作業を説明する模式図である。
【図14】図13のシートはぎ取り作業を示す後面図である。
【図15】本考案による他の実施の形態のシートはぎ取り作業を示す後面図である。
【図16】従来の、トラクタに連結したシートはぎ取り装置の側面図である。
【図17】図16に示すシートはぎ取り装置の平面図である。
【符号の説明】
1 はぎ取り装置
3 トラクラ
4 垂直カバー
8 巻き取りリール
13 枠組(クロスアーム)
17 ガイドローラ
33 レバー
40 入口(開口)
42 枠体
46 フレーム
48 ばね
51 テンション部材
s 被覆シート
【0001】
【考案の属する技術分野】
畑地などに形成する畝にマルチシートを覆って作物を栽培する方法において、育成、収穫に応じてシートをはぎ取る必要があり、この作業を作業機で行うようにしている。本考案は、はぎ取ったシートをリールに巻き取って回収するようにした農業用被覆シートのはぎ取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
畑地などの畝に被覆するマルチシ−ト(以下、シートという。)は長い帯状に形成されており、その使用に当ってはその両側縁を覆土によって軽く押え、雨水の影響や水分の蒸発を防ぐためのものである。シートが不必要になったときは、はぎ取り装置によってシートを引っ張ればシート両側の覆土が滑り落ちるので、そのまま容易にシートを回収できる。
タバコや馬鈴薯等のように作物の茎がシートから突出して残っている場合、シートがビニル系やポリエチレン系のものであるので破れる虞もあるが、上方に引上げながら引っ張ることにより作物の茎等をシートの下に導き、シートが裂けることを防いでいる。
【0003】
図16及び図17に示すように、従来のはぎ取り装置1は、はぎ取り装置1の枠体2を三点リンクでトラクタ3の後部に連結することによってトラクタ3に牽引される。枠体2は上面から後方に懸けて円弧状部を有し、円弧状部に対し一側面に側壁2a、他側面に垂直カバー4が取り付けられている。そして、この側壁2aに軸受5が取り付けられ、図示を略した補強材によって堅固に固定されている。
軸受5には回転軸6が挿通され、軸受5を固定した垂直カバー4の外側に露出した回転軸6の突出部には後述する大プーリー7が取り付けられる。また、軸受5から枠体2の内側に突出した回転軸6には、巻き取りリール8が装着されている。
【0004】
巻き取りリール8は、挿通軸9を有し、挿通軸9の一端に固着した中心から四方に延びる弯曲アーム10と、挿通軸9上を摺動するスライド環11に取り付け、かつ、四方に延びるヘ字状の前面アーム12と、各弯曲アーム10と各前面アーム12とをそれぞれ回動自在に連結するクロスアーム(枠組)13とから構成されている。また、スライド環11は十字状に四方に延びたアーム11aを備え、アーム11aに前面アーム12が挿通軸9に近接する方向に回動自在に設けられている。
そして、シートsを巻き取るときには、スライド環11を挿通軸9の他端に配してねじ14を締め付けることによって固定しておく。これにより、シートsの巻き取り空間が形成され、巻き取りリール8の径方向外周側において、弯曲アーム10の折れ曲がりと前面アーム12の折れ曲がりとにより巻き幅を広げている。
【0005】
なお、所定のクロスアーム13には弯曲アーム10側から前面アーム12に向かって延びる補助アーム15が設けられ、このクロスアーム13と補助アーム15との間でシートsの巻き始め端部を挟持する。
【0006】
また、枠体2の後部にコ字状フレーム16を略水平状態に突出し、コ字状フレーム16には巻き取りリール8の軸と平行な軸上で回転するガイドロ−ラ17が設けられている。
さらに、枠体2にはその前方下方に突出したサブソイラ18が幅方向及び高さ方向に調整可能に設けられ、使用状態において、はぎ取り装置1の荷重で土壌を掘り起こすようになっている。また、巻き取りリール8はユニバーサルジョイント19及び接続伝達手段を介してトラクタ3のPTO軸(駆動軸)により回転駆動される。
【0007】
図17に示すように、ユニバーサルジョイント19は入力軸20に連結される。入力軸20は一対の可変プーリーとこれに渡架したVベルトとで構成したベルト式無段変速機21に連結し、さらに無段変速機21に連結した一対のベベルギヤ22,22を介して枠体2の外部に設けたプーリー23に連結されており、これによって入力軸20の回転をプーリー23に伝えている。また、前述したように側壁2aの外側に露出した回転軸6の突出部には大プーリー7が取り付けられており、プーリー23と大プーリー7にベルト24が渡架されている。なお、枠体2の外側に設けたハンドル25は無段変速機21を操作するもので、可変プーリーの有効径を変化させて回転速度を調節する。
【0008】
次に、はぎ取り作業の説明を補足する。
ユニバ−サルジョイント19の連結は、トラクタ3とはぎ取り装置1とを連結した後で行う。サブソイラ18は長さ約10cm〜15cmが土中に入るように高さ調節する。また、畝の上方にはぎ取り装置1を位置させ、畝からはがしたシートsの端部をガイドロ−ラ17に掛け回し、さらに巻き取りリール8のクロスアーム13と補助アーム15との間に掛けてシ−トsの巻き始め端部を固定する。
【0009】
次に、トラクタ3を歩く位の速さで走行させ、トラクタ3の進行速度に合わせてハンドル25で巻き取りリール8の回転速度を調節する。シートsを巻き取った後は一旦動力を停止させてから垂直カバ−4を開き、巻き取りリール8のねじ14を緩めてスライド環11を挿通軸9に対し自由に摺動可能にさせる。そして、スライド環11を挿通軸9に沿って中へ移動させると、各前面アーム12と各クロスアーム13及び各弯曲アーム10と各クロスアーム13とがそれぞれリンクされていることにより、前面アーム12の外端は外方に向かって傾倒していき、複数のクロスアーム13の前面アーム12側の一端が挿通軸9周囲に寄せ集まる。これにより、巻き取りリール8の径が一側においてテーパ状に小さくなることで、巻回したシートsを巻き取りリール8から簡単に取り外すことができるようになる。
【0010】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のはぎ取り装置における巻き取り操作においては、シートsの張力によって次第に巻き取りリール8が締め付けられていくので、スライド環11のねじ14を緩めたときに勢いよく前面アーム12とクロスアーム13とが中心に向かって移動する虞があり、そのとき、ねじ14を操作した手などがこれらに接触しないように注意をする必要がある。
一方、ガイドロ−ラ17はコ字状フレーム16に軸着され略水平位置に固定された位置にあるので、当然、被覆したシートsを上方へはぎ取るときにガイドロ−ラ17にも張力による負荷が掛かる。
しかしながら、被覆したシートsの側方にトラクタ3を走行させ、横方向からシートsを引っ張り上げるようにするとシートsの誘導が困難になり、シートsに抵抗力が作用しシートsの巻き締めがきつくなる。このような状況においては、巻き取りリール8のクロスアーム13に大きな負荷が掛かることになる。
【0011】
このほかにも、シートsの終端が巻き取られたり、巻回したシートsが枠体2内で定量になったときは、作業工程の途中でも巻回したシートsを取り出す必要がある。また、シートsの巻回状態を点検するために垂直カバー4を開けることもある。
このようなとき、トラクタ3のはぎ取り装置1への動力伝達を切ってから枠体2の垂直カバー4を開け、シートsの回収や点検作業をするが、カバー4開閉時にいちいち動力伝達の切断操作を行うために作業員が動き回るのでは手間が掛かって作業性が悪いものであった。
【0012】
本考案は、巻回したシートの取扱いを容易にし、操作性、作業性の良い農業用被覆シートのはぎ取り装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記目的を達成するために、請求項1の考案は、トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、 枠体に回転自在に取り付けた前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径可能に構成し、前記巻き取りリールの軸方向一側の外側部に、前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径させるレバーを設けたことを特徴とする。
この構成において、レバーを巻き取りリールの外部から操作することができ、巻き取りリールの縮径側と操作した手との接触が回避され、巻き取りリールの縮径側から巻回されたシートを簡単に引き抜くことができる。
【0014】
請求項2の考案は、請求項1に記載の考案において、レバーは巻き取りリールの軸方向一側の外側部に回動自在に取り付けられ、該レバーを外方向に回動した時に、レバーの端部が巻き取りリールの軸方向一側中心部を該巻き取りリールの軸方向他側に向けて押圧し、前記一側中心部を移動させるように設けたことを特徴とする。
この構成では、レバー操作により巻き取りリールの軸方向一側中心部が内側に移動するので、縮径する動作が確実になる。
【0015】
請求項3の考案は、トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される、縮径構造となっている巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、 田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、 前記ガイドローラを前記シート挿入口に対して角度を変えるように設けたことを特徴とする。
この構成では、農業用被覆シートを引き剥す時の張力の方向に応じてガイドローラの向きを合わせることが可能である。
【0016】
請求項4の考案は、請求項3に記載の考案において、支持フレームの中間部とガイドローラを支持したフレームの軸着部周辺とにピン及び複数の孔による係合手段を設け、かつ、軸着部にばねを介挿してピンと、複数の孔のいずれかの孔とが嵌合するようにばね付勢して、前記ガイドローラの誘導角を選択的に変更するように設けたことを特徴とする。
この構成では、農業用被覆シートを引き剥す時の張力の方向に合わせてガイドローラの向きを係合手段により選択し固定するので、ガイドローラの向きが安定して巻き取り作業が円滑に行える。
【0017】
請求項5の考案は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の考案において、巻き取りリールをカバーする枠体の側面に垂直カバーを開閉自在に設け、該垂直カバーの開放によって前記巻き取りリールの動力伝達手段であるベルトに対し、テンション部材を遠退するように前記垂直カバーと該テンション部材を連繋したことを特徴とする。
この構成では、垂直カバーとテンション部材とをワイヤにより連結することで、垂直カバーを開くだけでテンション部材がベルトから離れて巻き取りリールの回転を停止することができる。
【0018】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すはぎ取り装置1は畑地等に敷設されたシートsを巻き取って回収するもので、はぎ取り装置1の枠体2内に巻き取りリール8が設けられている。枠体2の一側に側壁2aが設けられ、枠体2の他側に垂直カバー4が取り付けられている。垂直カバー4はヒンジ26(図10参照)により開閉自在に設けられている。この垂直カバー4を開くことにより枠体2内の巻き取りリール8を外部から取扱うことができる。
【0019】
はぎ取り装置1の枠体2の一側の側壁2aに軸受5が堅固に固着され、軸受5に軸支された回転軸6に巻き取りリール8が装着されている。
ここで、巻き取りリール8は概略回転軸6に嵌挿した挿通軸9と、挿通軸9の一端に固着された放射状に四方に延びる複数の背面アーム27と、挿通軸9の他端側に摺動自在に嵌挿したスライド環11と、スライド環11に起伏自在に枢着した四方に延びる複数の前面アーム12(枠組)と、各背面アーム27と各前面アーム12間に亘って、回動自在に枢着されたクロスアーム13(枠組)とからなっている。
これにより、巻き取りリール8は挿通軸9と回転軸6とをピン28で結合することで回転軸6と一体にされる。
また、回転軸6の枠体2の外側に突出した部分には大プーリー7が固定されている。
【0020】
巻き取りリール8の挿通軸9の他端に挿通されたスライド環11には、放射状に四方に延びるアーム11aが延設されている。そして、アーム11aに略ヘ字状の前面アーム12の基端が軸支され、前面アーム12と背面アーム27の各中間部位にクロスアーム13の両端がそれぞれ回転自在に枢着されている。各背面アーム27の中間部にはクロスアーム13の一端が軸支されているが、そのうちの一つの軸支箇所には補助アーム15を固着したホルダー29が回動自在に設けられ、補助アーム15はホルダー29と挿通軸9との間に調節したスプリング30によってクロスアーム13に圧接するように付勢されている。なお、前面アーム12の先端にはキャップ31が嵌められている。
【0021】
挿通軸9の先端には軸受ブラケット32により軸32aが設けられ、レバー33が、その一端近傍において軸32aに軸支され回動自在に取り付けられている。
図1ないし図3に示すように、レバー33の一端にはスライド環11(のアーム11a)を軸方向に押すローラ34が取り付けられ、また、レバー33の他端にはレバー33を操作する取手35が設けられている。レバー33の内部にはストッパ36が設けられ、ストッパ36は取手35と間隔を置いて平行な把持部36aと、レバー33内に位置してその長手方向に移動可能な作用部36bとからなっている。
【0022】
ストッパ36の作用部36bの途中に横方向に突出するピン37が設けられ、このピン37はレバー33の側壁に穿設された長孔33aに挿通して、ストッパ36をレバー33の長手方向に移動可能に案内する。また、レバー33内にあってピン37とレバー33の座面33bとの間には押しばね38が介挿されており、ストッパ36をローラ34側に付勢する。
図1に示すようにレバー33が倒れている状態において、ストッパ36の作用部36bの先端はスライド環11に固設したフランジ39の孔に進入して、スライド環11を挿通軸9の先端に位置決め固定する。ストッパ36の把持部36aを持ってストッパ36を引き上げるとストッパ36の作用部36bがフランジ39の孔から抜け出るので、レバー33は枢着点32aを中心として回動自在となる。
【0023】
次に、ガイドロ−ラ17の構造を説明する。
図7、図8に示すように、枠体2の後方にはシートs取り込み用の開口(入口)40が設けられ、開口40の左右両側からアーム41が後方に向かって平行に延び、2つのアーム41はガイドロ−ラ17の取り付け位置において下方に湾曲してから中央に向かって湾曲し中央で連結して枠体42を構成している。図7に示すように、枠体42の下方部分全体形状は後方から見て緩やかなW形状になっており、ガイドロ−ラ17の誘導角が変化したときのシートsの通過路を干渉しないようになっている。
また、枠体42の下方位置中央部にはブラケットによる垂直面43が形成され、垂直面43にボルト孔44とその周縁に複数の位置決め孔45が形成されている。位置決め孔45はボルト孔44の直下方に1つ穿設され、この位置決め孔45の左右方向にボルト孔44を中心とした円弧上位置に所定間隔をあけて他の位置決め孔45が設けられている。
【0024】
ガイドロ−ラ17を支持するフレーム46は矩形状に形成され、その一辺の中央部にボルト47によって枠体42に結合させ、かつ、ボルト47のヘッドとフレーム46との間にばね48を介挿することによってフレーム46を弾性支持する。さらに、フレーム46の中央近傍に溶着したピン49を枠体42に形成した3つの位置決め孔45の内の1つに嵌入して、フレーム46の位置(角度)を選択する。
【0025】
ガイドローラ17の誘導角を変更するときは、ピン49を別の位置決め孔45に差し変える。すなわち、図8、図9に示すように、フレーム46をばね48のばね力に抗して前方に引っ張りながら、今まで嵌挿されていた位置決め孔45からピン49を抜き、ガイドロ−ラ17の誘導角を変えてからピン49を嵌挿できる他の位置決め孔45に差し込む。これによって、例えば、ガイドロ−ラ17は図7の2点鎖線で示す左傾斜の位置に設定することができる。また、右に傾斜するように設定することもできる。
なお、図7では省略してあるが図8に示すように、枠体42のアーム41を補強する支持アーム50が枠体2とアーム41の下部中央との間に、伸縮可能に渡架されている。
【0026】
次に、巻き取りリール8の回転操作構造を図10(a)、(b)及び、図11を参照して説明する。
前述したように、巻き取りリール8の回転伝達構造は前述したように、入力軸20の回転力は、可変プーリーとプーリー間に渡架したVベルトからなる無段変速機21と一対のベベルギヤ20,20とを順次経由して枠体2外側のプーリー23を回転させる。プーリー23と巻き取りリール8の回転軸6に取り付けた大プーリー7にベルト24が渡架されているので、プーリー23の回転を大プーリー7に伝達することによって巻き取りリール8は回転される。
【0027】
図11に示すように、L字状テンション(テンション部材)51をL字の角部付近で枠体2の側壁2aに枢着し、L字状テンション51の一端にばね52を反時計方向に回動するように付勢するように取り付け、L字状テンション51の他端にはベルト24の外側からこれに圧接するようにテンションプーリー53を取り付ける。
【0028】
この構造において、枠体2の側壁2aにワイヤ54を沿わせ、その一端をL字状テンション51の一端に取り付け、ワイヤ54の他端は枠体2の中を横切り反対側の垂直カバー4の開閉部に枢着したヘ字状のプレート55に接続してある。
垂直カバー4をヒンジ26を中心に開放した時にワイヤ54を引っ張り(図10(a)の状態)、ばね52の付勢力に抗してL字状テンション51を時計方向に回動し、これによってテンションプーリー53をベルト24から離すように作動させる。これによってベルト24の緊張が緩みプーリー23からの回転伝達は中断される。垂直カバー4を閉じると、ワイヤ54はばね52の付勢力でL字状テンション51を反時計方向に回動する方向に引き出される。
【0029】
次に、はぎ取り装置1の作用について説明する。
畝に被覆されたシートsを巻き取りリール8に巻回する場合は、図3に示す位置にあるレバー33を取手35とストッパ36の把持部36aを持ち、ストッパ36を取手35側に引くと、フランジ39の孔からストッパ36の作用部36bが外れるので、レバー33を図4に示すように回動させることができる。レバー33を引き起こすとローラ34によってスライド環11を内方に押すので、スライド環11は内側に移動してクロスアーム13が中心に傾く。この間にクロスアーム13と補助アーム15との間にシートsの巻き始め端部を挟持する。そして、スライド環11及びクロスアーム13を元に戻すと同時に、レバー33を倒し、ストッパ36の作用部36bをフランジ39の孔に嵌入させる。
ここで、図1に示す前面アーム12とアーム11aの第1の軸支位置Aとクロスアーム13と前面アームとの第2の軸支位置Bとでは、巻き取りリール8の軸方向に対して同じか、または第2の軸支位置Bの方が外側に配置される位置の場合、巻き付けたシートsを回収するときにシートsの張力に逆らわずにレバー33を引き起こすことができるので、スライド環11をそのように固定する。
【0030】
以上で巻き取りリール8の準備が完了し、トラクタ3を畝に沿って走行させながら、図5に示すように、巻き取りリール8を前方に回転させてシートsを巻き取る。そして、巻き取りが完了したならば、前述した手順と同様にレバー33を手前に引き起こす(図6参照)。これにより、前面アーム12等を折り畳み、巻回したシートsを巻き取りリール8の横方向から外す。
【0031】
図12に示すように、トラクタ3を畝に跨がって走行させながらシートsを上方にはぎ取る場合、ガイドローラ17を水平位置にして巻き取って行く。また、図13、図14に示すように、トラクタ3を管理路56に走行させて畝と畝に跨がる幅広のシートsを側方からはぎ取る場合、ガイドロ−ラ17をシートsが敷設された方向に傾斜するように調節し、シートsを円滑に巻き取っていく。
また、図15に示すように、畝の幅の大きさがトラクタ3の幅より大きいときには、トラクタ3を畝上に走行させ、ガイドロ−ラ17をシートsをはぎ取る側に傾かせてシートsを前方斜め上方にはぎ取ることもできる。
【0032】
このようにしてはぎ取ったシートsを巻き取りリール8に巻回していき、定量になったときに、巻回したシートsを取り出すため、枠体2の垂直カバー4を開ける。垂直カバー4にはワイヤ54が接続され、垂直カバー4の開度によってワイヤ54が引っ張られ、L字状テンション51が回動してテンションプーリー53がベルト24から離れる。これにより、大プーリー7への伝達が中断され、いちいちトラクタ3からの駆動源を切る必要がなく、操作が簡単になる。
【0033】
【考案の効果】
本考案は、以上のように構成したものであり、請求項1の考案では、はぎ取り装置に備えた巻き取りリールの縮径側に設けたレバーを操作し、巻き取りリールの縮径側から巻回されたシートを簡単に引き抜くことができるので、操作性が良く、巻き取りリールとレバーが空間を共有していないので互いに干渉せず操作の的確性が向上する。
また、請求項2の考案では、レバーを外方向に回動した時にレバーの端部が巻き取りリールの中心部を押圧するので、巻き取りリールが内側に移動し易くなり、操作を確実なものにする。
【0034】
請求項3の考案では、ガイドローラを支持した矩形状フレームを軸着させたので、巻き取り装置の入口に設けたガイドローラを回動させて傾斜させることができ、シートを引き剥す時の張力の方向に応じてガイドローラの向きを合わせることが可能である。これによりトラクタを畝に沿わせて走行させ側方からのシートのはぎ取り作業も円滑に行え、シートの張力の影響を抑えることができる。
請求項4の考案では、ガイドローラを傾斜して位置決め固定させる係合手段を備えたので、ガイドローラの向きが安定して巻き取り作業が円滑に行え、シートの張力の影響を抑えることができる。
【0035】
請求項5の考案では、垂直カバーとテンション部材が連繋されているので、垂直カバーを開けることによりベルトからテンション部材が離れて動力伝達が中断され、いちいち動力伝達の駆動源を切ることもなくシートの回収、はぎ取り作業を続行することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による実施の形態の農業用被覆シートのはぎ取り装置の巻き取りリールの側面図である。
【図2】図1に示す巻き取りリールに付設したレバーの側面図である。
【図3】図1に示すレバーの取り付け構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示す巻き取りリールの操作手順を説明する側面図である。
【図5】図1に示す巻き取りリールにシートを巻回するときの状態を説明する斜視図である。
【図6】図1に示す巻き取りリールから巻回したシートを外すときの状態を説明する模式図である。
【図7】本考案による実施の形態のはぎ取り装置のガイドローラの取付構造をシート入口側から見た正面図である。
【図8】図7のガイドローラの取付構造の側面図である。
【図9】図8のガイドローラの動作を説明する側面図である。
【図10】本考案による実施の形態の巻き取りリールの駆動機構を(a)、(b)により説明する動力伝達部の平面図である。
【図11】図10に示す巻き取りリールの駆動機構のベルト掛けを説明する動力伝達部の側面図である。
【図12】本考案による実施の形態のトラクタの使用状態とシートと畝の関係を示す後面図である。
【図13】本考案による実施の形態のトラクタを畝に並行に走行させたときのはぎ取り作業を説明する模式図である。
【図14】図13のシートはぎ取り作業を示す後面図である。
【図15】本考案による他の実施の形態のシートはぎ取り作業を示す後面図である。
【図16】従来の、トラクタに連結したシートはぎ取り装置の側面図である。
【図17】図16に示すシートはぎ取り装置の平面図である。
【符号の説明】
1 はぎ取り装置
3 トラクラ
4 垂直カバー
8 巻き取りリール
13 枠組(クロスアーム)
17 ガイドローラ
33 レバー
40 入口(開口)
42 枠体
46 フレーム
48 ばね
51 テンション部材
s 被覆シート
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、枠体に回転自在に取り付けた前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径可能に構成し、前記巻き取りリールの軸方向一側の外側部に、前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径させるレバーを設けたことを特徴とする農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項2】 レバーは巻き取りリールの軸方向一側の外側部に回動自在に取り付けられ、該レバーを外方向に回動した時に、レバーの端部が巻き取りリールの軸方向一側中心部を該巻き取りリールの軸方向他側に向けて押圧し、前記一側中心部を移動させるように設けたことを特徴とする請求項1記載の農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項3】 トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される、縮径構造となっている巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、前記ガイドローラを前記シート挿入口に対して角度を変えるように設けたことを特徴とする農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項4】 支持フレームの中間部とガイドローラを支持したフレームの軸着部周辺とにピン及び複数の孔による係合手段を設け、かつ、軸着部にばねを介挿してピンと、複数の孔のいずれかの孔とが嵌合するようにばね付勢して、前記ガイドローラの誘導角を選択的に変更するように設けたことを特徴とする請求項3記載の農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項5】 巻き取りリールをカバーする枠体の側面に垂直カバーを開閉自在に設け、該垂直カバーの開放によって前記巻き取りリールの動力伝達手段であるベルトに対し、テンション部材を遠退するように前記垂直カバーと該テンション部材を連繋したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項1】 トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、枠体に回転自在に取り付けた前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径可能に構成し、前記巻き取りリールの軸方向一側の外側部に、前記巻き取りリールの軸方向一側を縮径させるレバーを設けたことを特徴とする農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項2】 レバーは巻き取りリールの軸方向一側の外側部に回動自在に取り付けられ、該レバーを外方向に回動した時に、レバーの端部が巻き取りリールの軸方向一側中心部を該巻き取りリールの軸方向他側に向けて押圧し、前記一側中心部を移動させるように設けたことを特徴とする請求項1記載の農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項3】 トラクラ等に連結され、該トラクタ等の出力によって回転駆動される、縮径構造となっている巻き取りリールと、該巻き取りリールをカバーする枠体とを備え、田畑等に敷設した農業用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記枠体のシート挿入口に設けた農業用被覆シートのはぎ取り装置において、前記ガイドローラを前記シート挿入口に対して角度を変えるように設けたことを特徴とする農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項4】 支持フレームの中間部とガイドローラを支持したフレームの軸着部周辺とにピン及び複数の孔による係合手段を設け、かつ、軸着部にばねを介挿してピンと、複数の孔のいずれかの孔とが嵌合するようにばね付勢して、前記ガイドローラの誘導角を選択的に変更するように設けたことを特徴とする請求項3記載の農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【請求項5】 巻き取りリールをカバーする枠体の側面に垂直カバーを開閉自在に設け、該垂直カバーの開放によって前記巻き取りリールの動力伝達手段であるベルトに対し、テンション部材を遠退するように前記垂直カバーと該テンション部材を連繋したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の農業用被覆シートのはぎ取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【登録番号】実用新案登録第3064504号(U3064504)
【登録日】平成11年9月16日(1999.9.16)
【発行日】平成12年1月21日(2000.1.21)
【考案の名称】農業用被覆シ―トのはぎ取り装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平11−3887
【出願日】平成11年6月2日(1999.6.2)
【出願人】(390010928)株式会社デリカ (4)
【登録日】平成11年9月16日(1999.9.16)
【発行日】平成12年1月21日(2000.1.21)
【考案の名称】農業用被覆シ―トのはぎ取り装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平11−3887
【出願日】平成11年6月2日(1999.6.2)
【出願人】(390010928)株式会社デリカ (4)
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