説明

近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物

【課題】380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、しかも優れた遮熱性を有する着色シート状物を提供すること。
【解決手段】日射を受ける表面層(A)と反射層(B)とを備える合成樹脂シート状物であって、
前記表面層(A)が780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有し、且つ380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有する着色層であり、且つ、
前記反射層(B)が780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上の日射反射率を有し、且つ発泡倍率が1.2〜5.0倍の発泡樹脂組成物からなる層である、
ことを特徴とする近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用インスツルメントパネル、ドアトリム、グローブボックス等の車輌用内装材や、駅、バス停、飛行場、野球場、サッカー場等のベンチの座面等の家具の表面材料、或いは、テント、オーニング、トラックタープといったシート状物として有用な近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌用内装材、特にインスツルメントパネル(インパネ)は、運転者の前面に配されるため、可視光線領域の光が反射して運転者が眩しく感じることは好ましいものではない。このような観点から、自動車のインパネには黒色等の色彩が付与された部材が一般的に使用されている。しかしながら、一般的に用いられるこれらの着色物は、可視光線領域以外の近赤外線領域の光も同時に吸収してしまうため、太陽光に曝された際にはその表面が加熱され車内の温度の上昇を招く。また、車内温度の上昇に伴い、空調機器を使用することによって結果的に燃費の悪化を招くこととなる。このような太陽光による車輌内の温度の上昇は、インパネに限らず、車輌用内装材のすべての着色物に生じる問題であった。
【0003】
また、野球場、サッカー場等の球技場においてもベンチ座面の色相が可視光線領域の光を反射するようなものは望ましくなく、また、テント、オーニング(ひさし)、トラックタープといったシート状物に関しても、場合によっては可視光領域の光を反射するようなものは人の目に眩しく好ましいものではない。そのため、これらのものにも着色物が使用されているが、前述の通り表面温度が上昇するという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、上記のような構造物の表面に遮熱性を有するフィルム又はシートを形成する技術が検討されており、例えば、特開2004−314596号公報(特許文献1)には、少なくとも反射層と着色層とを含み、該反射層の光に暴露される側に該着色層を積層してなるシートであって、該反射層は780〜1350nmの波長領域において60%以上の日射反射率を有し、且つ該着色層は780〜1350nmの波長領域において30%以上の光透過率を有するとともに、380〜780nmの波長領域において10〜80%の日射吸収率を有する、光線遮蔽効果を有する着色シートが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているようなシートは、遮熱性を有しているものの、その遮熱性能の点で必ずしも未だ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2004−314596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、しかも優れた遮熱性を有する着色シート状物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、日射を受ける着色された表面層と反射層とを備える合成樹脂シート状物において、反射層を特定の発泡倍率で発泡させて得られる発泡樹脂組成物からなる層とすることにより、驚くべきことに、反射層の780〜1600nmの近赤外線領域における日射反射率を飛躍的に向上させることができ、優れた遮熱性を有する着色シート状物が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の着色シート状物は、日射を受ける表面層(A)と反射層(B)とを備える合成樹脂シート状物であって、
前記表面層(A)が780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有し、且つ380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有する着色層であり、且つ、
前記反射層(B)が780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上の日射反射率を有し、且つ発泡倍率が1.2〜5.0倍の発泡樹脂組成物からなる層である、
ことを特徴とする近赤外線領域光反射性能を有するものである。
【0008】
また、本発明の着色シート状物においては、前記反射層(B)が70〜400μmの厚みを有することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の着色シート状物においては、前記発泡樹脂組成物が、合成樹脂100重量部に対して、300〜500nmの重量平均粒子径を有する酸化チタン3〜100重量部を含有するものであることが好ましい。
【0010】
なお、本発明によれば、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、しかも優れた遮熱性を有するという近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物を提供することが可能となる。そして、本発明の近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物は、可視光線領域の光を吸収し表面に暗色系の色彩が付与された着色シート状物でありながら白色等の明色のシート状物と同等の遮熱性能を発揮する。この理由については必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、380〜780nmの波長領域は可視光線領域と表現され、人間が肉眼で感じることのできる光である。また、可視光線領域の光の吸収率が高い(例えば、吸収率が90%以上である)と暗色を呈するものとなる。さらに、近赤外線領域の光は、一般に熱に変換されやすいと言われている。よって太陽光のうち近赤外線領域の光のみの吸収を抑え、透過又は反射させれば、着色シート状物でありながら表面での発熱が抑制されるのである。
【0011】
本発明の近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物においては、反射層を1.2〜5.0倍の発泡倍率で発泡させて得られる発泡樹脂組成物からなる層とすることにより、780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上という極めて高い日射反射率を有する反射層としている。そして、本発明の近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物は、780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上という極めて高い日射反射率を有する反射層の表面上に、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、且つ780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有する表面層が積層されたシート状物である。このようなシート状物に太陽光が入射した場合には、太陽光のうち可視光線領域の光は表面層(A)において高率で吸収され、また、表面層(A)を透過した光は反射層(B)により反射され、さらにその反射光は表面層(A)において高率で吸収される。そのため、本発明のシート状物は暗色系の色彩が付与されたものとなる。また、このような可視光線領域の光を吸収してもほとんど熱エネルギーに変換しないため、シート状物の遮熱性にはほとんど影響を与えない。一方、太陽光のうち物体に当たると熱エネルギーに変換しやすい近赤外線領域の光は、表面層(A)においてほとんど吸収されずに透過し、また、表面層(A)を透過した光は反射層(B)により反射され、さらにその反射光は表面層(A)においてほとんど吸収されずに透過し、外部に放出される。そのため、本発明のシート状物は優れた遮熱性を有し、しかも表面に暗色系の色彩が付与されたものでありながら白色等の明色のシート状物と同等の遮熱性能を有するものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、しかも優れた遮熱性を有する着色シート状物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
本発明の着色シート状物は、日射を受ける表面層(A)と反射層(B)とを備える合成樹脂シート状物であって、
前記表面層(A)が780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有し、且つ380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有する着色層であり、且つ、
前記反射層(B)が780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上の日射反射率を有し、且つ発泡倍率が1.2〜5.0倍の発泡樹脂組成物からなる層であるものである。
【0015】
<表面層(A)>
本発明にかかる表面層(A)は、780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有し、且つ380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有する着色層である。本発明にかかる表面層(A)に用いる合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの樹脂からなる熱可塑性エラストマー系樹脂が挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、風合い、耐光性及び加工性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂が好ましい。また、このような表面層(A)は、密着性及びリサイクル性の観点から、後述する反射層(B)を構成する合成樹脂と同一系の合成樹脂からなることが好ましい。このように表面層(A)及び反射層(B)が同一系の合成樹脂から構成される場合には、接着剤層を設けなくとも密着性が優れたものを得ることができる。また、このように表面層(A)及び反射層(B)が同一系の合成樹脂から構成される場合には、積層したものを分離せずにリサイクルを行うことができる点で有利である。
【0016】
そして、本発明にかかる表面層(A)は、例えば、前記合成樹脂を含有する樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0017】
前記合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマー、アクリロニトリルモノマー等の塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が使用できる。これらのポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法に関しては特に制限されるものではないが、可塑剤を配合した際にペースト状のプラスチゾル状態を呈するエマルジョン重合法(乳化重合法)が特に好適に使用され、他にマイクロサスペンジョン重合法、ソープフリーエマルジョン重合法、サスペンジョン重合法(懸濁重合法)等を用いることも可能である。
【0018】
また、前記合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、前記樹脂組成物に更に可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては、通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されている化合物を使用することができ、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;トリオクチルトリメリテート(TOTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)等の脂肪酸エステル系可塑剤;ポリプロピレンアジペート等のポリエステル系可塑剤を使用することができる。
【0019】
さらに、このような可塑剤の添加量としては特に制限されるものではないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、25〜150重量部の範囲であることが好ましく、60〜100重量部であることがより好ましい。可塑剤が少なすぎるとペーストプラスチゾルのゾル粘度が高く、流動しにくく、良好な硬化膜が得られにくい傾向にある。他方、可塑剤が多すぎると、硬化膜そのものが柔らかくなり過ぎて使用時に軟化し、耐熱性が悪化する傾向にある。
【0020】
また、前記合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、前記樹脂組成物には、必要に応じて通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されている安定剤を添加することが好ましく、具体的にはBa−Zn系、Ca−Zn系、酸化亜鉛系等の金属安定剤を広範囲に使用することができる。さらに、前記樹脂組成物に、ヒンダートアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、酸化防止剤を添加してもよく、更には加工性を向上させるために、減粘剤、増粘剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0021】
前記合成樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用する場合、ポリウレタン系樹脂としては、ポリオール成分とイソシアネート成分の重合体の所謂ウレタン結合を有する樹脂を使用することができ、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリエステル/ポリエーテル共重合系ポリウレタン、ポリアミノ酸/ポリウレタン共重合樹脂或いはこれらの混合物を使用することができる。
【0022】
また、前記合成樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用する場合においては、特に直射日光に曝されるような用途であるいう観点から、特に耐光性の良好なポリウレタン系樹脂を使用することが好ましく、特にポリカーボネートジオール成分、無黄変型ジイソシアネート成分及び低分子鎖伸長剤等を反応させて得られる無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタンが好適に使用される。ポリカーボネートジオール成分としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート等を使用することができ、特にイソホロンジイソシアネート或いはイソホロンジイソシアネートを主体としたシクロヘキシルジイソシアネート又は/及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートとの混合物を使用することが好ましい。
【0023】
また、低分子鎖伸長剤としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジアミン、ヒドラジン誘導体等の活性水素原子を2個以上有する化合物が使用される。そして、このようにして重合されたポリウレタン系樹脂は通常の有機溶媒、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチル/n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、シクロヘキサノン等、或いはこれらの混合物に溶解させて、ポリウレタン溶液として使用される。
【0024】
さらに、前記合成樹脂としてポリウレタン系樹脂を使用する場合、前記樹脂組成物に必要に応じて、酸化防止剤、光安定化剤、耐電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を更に添加してもよい。
【0025】
前記合成樹脂として熱可塑性エラストマー系樹脂を使用する場合、熱可塑性エラストマー系樹脂としては、特にオレフィン系熱可塑性エラストマー(所謂TPO)が好適に使用される。具体的には、ポリオレフィン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム及び/又はエチレン−α−オレフィン・非共役ポリエン共重合ゴム、並びにプロピレン・エチレン共重合体及び/又はプロピレン・1−ブテン共重合体を動的に部分架橋したものであり、さらに詳しくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、EPDM(エチレンプロピレンターポリマー)を主成分とするオレフィン系樹脂とゴム成分とを混合し、動的に架橋させたものである。
【0026】
また、前記合成樹脂として熱可塑性エラストマー系樹脂を使用する場合、前記樹脂組成物に必要に応じて、酸化防止剤、光安定化剤、耐電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を更に添加してもよい。
【0027】
本発明にかかる表面層(A)は、近赤外線領域の光を高率で透過させ、可視光線領域の光を吸収するような着色層である。すなわち、このような表面層(A)は、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有することが必要である。このように表面層(A)が380〜780nm可視光線領域で80%以上の日射吸収率を有することにより、本発明の着色シート状物は人間が感知できる光を実質的に吸収することができる。
【0028】
また、このような表面層(A)の日射吸収率は780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満(好ましくは10%未満)であることが必要である。日射吸収率が30%以上であると、入射光が反射層(B)に到達する前に表面層(A)が吸収してしまうとともに、反射層(B)で反射された反射光を表面層(A)の外側に到達する前に表面層(A)が吸収してしまうため、結果的に着色シート状物が蓄熱することになる。
【0029】
さらに、このような表面層(A)の日射透過率は780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上であることが必要である。すなわち、780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を維持するためには、近赤外線領域の光を反射又は透過させる必要があるが、近赤外線領域の光を反射させようとすると、一部380〜780nmの可視光線領域においても反射性を発現するため、暗色系の色彩が付与されたものを得ることが困難である。そのため、本発明においては、このような表面層(A)の日射透過率を780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上とすることが必要となる。
【0030】
なお、着色シート状物、表面層(A)及び反射層(B)の日射吸収率、日射透過率及び日射反射率(以下場合により、これらを日射特性と総称する)は以下に示す方法によって測定することができる。すなわち、先ず、表面層(A)又は反射層(B)からなる単層シート、或いは表面層(A)及び反射層(B)を備えるシート状物(複層シート)を試料とし、自記分光光度計を用いて、アルミナ白色基板を反射率100%とし、各波長での反射率(分光反射率)を測定する。そして、JIS A5759付表3を用いて、分光反射率に各波長での重価係数を乗じた値の和を計算し、日射反射率を導き出すことができる(分光日射反射率試験法)。また、前記試料について、自記分光光度計を用いて、試料を入れない状態での透過率を100%とし、各波長での透過率(分光透過率)を測定する。そして、JIS A5759付表3を用いて、分光透過率に各波長での重価係数を乗じた値の和を計算し、日射透過率を導き出すことができる。さらに、得られた日射反射率及び日射透過率の値から、下記数式:
(日射吸収率)=100%−(日射反射率)−(日射透過率)
を用いて計算することにより、日射吸収率を導き出すことができる。
【0031】
本発明にかかる表面層(A)の厚みは、30〜250μmの範囲であることが好ましく、50〜200μmの範囲であることがより好ましい。表面層(A)の厚みが前記下限未満では、充分に可視光線領域の光を吸収することができず、暗色系の色彩を付与することが困難となる傾向にある。他方、表面層(A)の厚みが前記上限を超えると、近赤外線領域の日射吸収率を30%未満に確保して日射透過率を50%以上に維持することが難しくなる傾向にあり、表面層(A)での蓄熱が発生して着色シート状物の熱反射性能が阻害されやすくなる傾向にあるため好ましくない。
【0032】
本発明にかかる表面層(A)は、前記合成樹脂を含有する樹脂組成物を用いて形成することができる。このような表面層(A)を形成するための樹脂組成物は、前記合成樹脂及び各種添加剤の他に、以下説明するような近赤外線領域の光を透過する特殊顔料を含有していてもよい。このように近赤外線領域の光を透過させる特殊顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリノン・ペリレン系顔料、インジゴ・チオインジゴ系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインノリドン系顔料、イソインドリン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アゾメチン系顔料、アゾメチンアゾ系顔料が挙げられる。これらの特殊顔料の中でも、可視光線領域における光の吸収性、及び近赤外線領域における光の透過性のバランスという観点から、特にアゾ系顔料、ペリレン系顔料が好ましい。
【0033】
また、これらの特殊顔料の添加量としては、前記合成樹脂100重量部に対し、1〜5重量部の範囲であることが好ましい。添加量が1重量部未満では、可視光線領域で暗色になりにくい傾向にあり、他方、5重量部を超えると、近赤外線領域における日射吸収率が増加して得られる着色シート状物の近赤外線領域光反射性能が損なわれやすくなる傾向にある。
【0034】
なお、本発明にかかる表面層(A)を形成するための樹脂組成物は、前述した各成分を計量の上、ディゾルバーミキサー等の混合攪拌機で均質混合させることにより得られる。さらに、このような樹脂組成物は、必要に応じて、未分散物を取り除く目的で濾過してもよく、気泡を取り除くために減圧脱泡してもよい。
【0035】
<反射層(B)>
本発明にかかる反射層(B)は、発泡倍率が1.2〜5.0倍の発泡樹脂組成物からなる層である。そして、このような反射層(B)においては、780〜1600nmの近赤外線領域における日射反射率が85%以上であることが必要である。このように反射層(B)が780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上の日射反射率を有することにより、表面層(A)を透過してきた近赤外線領域光を高率で反射し、その結果、シート状物に近赤外線領域光反射性能を付与することができる。そのため、本発明によれば、優れた遮熱性を有するシート状物を得ることができる。また、近赤外線領域光反射性能を更に向上させるという観点から、前記日射反射率が90%以上であることが好ましい。なお、従来は、780〜1600nmの近赤外線領域における日射反射率が85%以上という極めて高い日射反射率を有する反射層を得ることは困難であり、特に反射層の厚みが薄い場合(例えば250μm以下の場合)にはこのように極めて高い日射反射率を有する反射層を得ることはできなかった。しかしながら、本発明においては、後述する樹脂組成物を1.2〜5.0倍(より好ましくは1.4〜3.0倍)の発泡倍率で発泡させて反射層(B)を形成することによって、近赤外線領域における日射反射率を飛躍的に向上させ、このように極めて高い日射反射率を有する反射層(B)を得ることができる。発泡倍率とは、発泡樹脂組成物の発泡前の樹脂組成物に対する体積比(倍率)のことをいい、発泡倍率が1.2倍未満では、反射層(B)の近赤外線領域における日射反射率を十分に向上させることができない。他方、発泡倍率が5.0倍を超えると、得られるシート状物の引張強度といった力学的物性が低下する。
【0036】
本発明にかかる反射層(B)の厚みは70〜400μmの範囲であることが好ましく、70〜250μmの範囲であることがより好ましく、100〜150μmの範囲であることが特に好ましい。反射層(B)の厚みが前記下限未満では、十分な日射反射率が確保しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると製造コストが高くなるのみならず、シート全体の重量も重くなるという問題が生じやすい傾向にある。
【0037】
本発明にかかる反射層(B)に用いる合成樹脂としては、前述の表面層(A)に用いる合成樹脂と同様の樹脂が使用される。そして、本発明にかかる反射層(B)は、前記合成樹脂を含有する樹脂組成物を1.2〜5.0倍の発泡倍率で発泡させることにより形成することができる。このように前記樹脂組成物を発泡させる方法としては、例えば、(i)樹脂組成物中に化学発泡剤を添加し、化学発泡剤により合成樹脂を発泡させる方法、(ii)不活性ガスを高圧下において樹脂組成物中に混入させる方法、(iii)樹脂組成物を機械的に攪拌することにより不活性ガスを混入させる方法を採用することができる。これらの方法の中でも、均一で細かな発泡構造を有する反射層を形成するという観点から、化学発泡剤により合成樹脂を発泡させる方法が好ましい。
【0038】
このような化学発泡剤としては、公知の化学発泡剤を適宜使用することができ、特に限定されないが、例えば、ADCA(アゾジカルボン酸アミド)、OBSH(4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)、DPT(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン)等の有機系分解型の化学発泡剤が挙げられる。
【0039】
本発明にかかる反射層(B)を形成するための樹脂組成物は、前記合成樹脂及び各種添加剤の他に、以下説明するような顔料を含有していてもよい。このような顔料としては、例えば、酸化チタン系白色顔料が挙げられる。また、酸化チタン系白色顔料としては、ルチル型及びアナターゼ型のいずれの酸化チタンも使用可能であるが、ルチル型の酸化チタンが好ましい。さらに、このような酸化チタンの重量平均粒子径は300〜500nmの範囲であることが好ましい。重量平均粒子径が前記範囲内にある酸化チタンを用いることにより、反射層(B)の近赤外線領域における日射反射率を更に向上させることができる。この理由については必ずしも明らかではないが、光の波長と同程度の粒子による光の散乱現象であるミー散乱が波長の半分程度の粒子径を有する粒子用いる場合に散乱効率が高くなることに起因するものと推察される。
【0040】
また、このような酸化チタンの添加量としては、前記合成樹脂100重量部に対し、3〜100重量部の範囲であることが好ましく、10〜30重量部の範囲であることがより好ましい。添加量が前記下限未満では反射層の日射反射率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えて添加してもそれほどの日射反射率の向上が認められず、かえってシート状物の力学的物性に問題が生じる場合がある。なお、このような酸化チタン系白色顔料は、あらかじめ可塑剤等に分散させたトーナー状態で配合してもよい。
【0041】
また、本発明にかかる反射層(B)を形成するための樹脂組成物は、前記合成樹脂、各種添加剤及び顔料の他に、必要に応じて、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセル等の充填剤を含有していてもよい。
【0042】
また、本発明にかかる反射層(B)を形成するための樹脂組成物は、前述した各成分を計量の上、ディゾルバーミキサー等の混合攪拌機で均質混合させることにより得られる。さらに、このような樹脂組成物は、必要に応じて、未分散物を取り除く目的で濾過してもよく、気泡を取り除くために減圧脱泡してもよい。
【0043】
<着色シート状物>
本発明の着色シート状物は、前記表面層(A)と前記反射層(B)とを備えており、近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物である。そして、本発明の着色シート状物は、前記表面層(A)と前記反射層(B)とを積層することにより得ることができる。
【0044】
このように反射層(B)と表面層(A)とを積層する方法としては、各種の方法が選択可能である。例えば、はじめに反射層(B)をシート状に成形しておき、その一方の面に直接表面層(A)を形成して複層構造とすることが可能である。逆に、はじめに表面層(A)を形成しておき、その一方の面に反射層(B)を積層することも可能である。また、両層をあらかじめシート状に形成し、接着剤或いは熱により積層することもでき、さらには両層間に他の基材等の第3の層を介在させてもよい。
【0045】
また、例えば、表面層(A)、反射層(B)の両層にポリ塩化ビニル系樹脂ペーストプラスチゾルを用いて両層を直接積層する場合、離型性を有する紙(剥離紙)又はフィルム上に表面層(A)(又は反射層(B))を適宜手法により指定厚みにコーティングし、加熱固化した後、再度、反射層(B)(又は表面層(A))を適宜手法により指定厚みにコーティングし、加熱固化した後、剥離紙又はフィルムから剥離することにより、積層シート状物の成形することが可能である。なお、ポリ塩化ビニル樹脂に限らず、両層が直接積層される層構造が機能性、製造の観点から最も好ましい。
【0046】
これらの手法により表面層(A)と反射層(B)を積層させることにより、太陽光全体を構成する波長のうち発熱に寄与する近赤外線領域において高い反射率を有し、且つ可視光線領域において表面層(A)が吸収率を有することにより暗色系の色彩を呈し、人間には眩しくない構造のシート状物が得られる。
【0047】
なお、本発明の着色シート状物においては、必要に応じて最表面に防汚層を設けてもよい。防汚層は、本願出願の目的とする可視光線吸収性能、或いは近赤外線反射性能に悪影響を及ぼさないように考慮し、溶剤系、水系或いは紫外線硬化型塗料からなる防汚塗料を塗工することによって形成することができる。
【0048】
このような防汚塗料のうち溶剤系塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、セルロース樹脂系、フッ素樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系等の塗料が使用できる。
【0049】
また、このような防汚塗料のうち水系塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗料が使用できる。
【0050】
さらに、このような防汚塗料のうち紫外線硬化型塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、アクリル変性ウレタン樹脂系、アクリル変性エポキシ樹脂系、メルカプト誘導体系、エポキシ樹脂系等の塗料が使用できる。
【0051】
また、本発明の着色シート状物においては、前記表面層(A)に意匠性を付与するために凸凹のシボ加工を施してもよい。このようなシボ加工は、エンボスロール等による加工や離形紙等によるもの等、通常の合成皮革を得る際に行うシボ加工と同じ手法によって施すことができる。
【0052】
また、本発明の着色シート状物においては、前記反射層(B)の裏面に織布や不織布等の繊維質基材を設けてもよい。繊維質基材は、本発明にかかる反射層(B)及び表面層(A)を離型紙上で形成したシート状物の反射層(B)側に接着剤でラミネートしてもよいし、反射層(B)を形成する樹脂組成物を繊維質基材に含浸させる等の方法で繊維質基材上に反射層(B)を形成させてもよい。特に、ベンチ等の座面表面材料として使用する場合、このような形態とすることが好適である。また、表面層(A)、反射層(B)及び繊維質基材層の裏面(繊維質基材層側)に、さらに他の樹脂層を設けてもよい。特にテント等の膜構造物用シート状物として使用する場合は、このような形態とすることが好適である。
【0053】
さらに、本発明の着色シート状物は、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ウレタン発泡体等の成形体の表面に、前記成形体の表面と前記反射層(B)の裏面に接するようにして積層して用いることができる。特にインスツルメントパネル、ドアパネル等の用途に用いる場合は、このような形態とすることが好適である。このように成形体に着色シート状物を積層する方法は、着色シート状物の反射層(B)側に接着剤を用いて成形体に接着させてもよいし、例えばウレタン発泡体に積層する場合には着色シート状物に対し直接ウレタン発泡体を注入発泡させてもよい。
【0054】
このように、本発明の着色シート状物に繊維質基材や成形体を設けることにより、シート状物の形状保持性、引裂強度、引張強度が高まり、且つ使用時の耐久性や加工性が向上する。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例においては、樹脂、顔料、充填剤及び各種添加剤としてそれぞれ以下のものを用いた。
ポリ塩化ビニル系樹脂:新第一塩ビ社製「PX−QHPN」
ウレタン系樹脂:大日精化工業社製「レザミン NE−8875」
アクリル系樹脂:溶剤型アクリル樹脂、東栄化成社製「アクリナールXC#9000」
熱可塑性エラストマー樹脂:三井化学社製「ミラストマー N−8030」
オレフィン系樹脂:LDPE、プライムポリマー社製「ウルトゼックス 2022L」
可塑剤:イソノニルフタレート、積水化学工業社製
発泡剤:ADCA系熱分解型化学発泡剤、大塚化学社製「ユニフォームAZ」
安定剤1:Ba−Zn系熱安定剤、旭電化工業社製「FL−54」
安定剤2:酸化防止剤、旭電化工業社製「AO−60」
顔料1:酸化チタン微粒子、重量平均粒子径:410nm、テイカ社製「チタニックスWP0042」
顔料2:黒色顔料、BASF AG社製「パリオゲンブラックS−0084」
顔料3:黒色顔料、レジノカラー工業社製「DPF−T−7939B」
顔料4:黒色顔料、Shepherd社製「ARCTIC Black 10C909」
顔料5:黒色顔料、Shepherd社製「ARCTIC Black 411」
顔料6:黒色顔料、東海カーボン社製「トーカブラック#8500/F」。
【0056】
(I)ペースト状プラスチゾル及び成形用組成物の調製
樹脂、顔料、充填剤及び各種添加剤を、それぞれ表1及び表2に記載の通りの組成となるように混合して成形用のペースト状プラスチゾル及び樹脂組成物を調製した。
【0057】
すなわち、反射層(B1〜B9)及び表面層(A1〜A5)成形用に、エマルジョン重合ポリ塩化ビニル(PX−QHPN、新第一塩ビ社製)に、発泡剤、顔料、可塑剤(ジイソノニルフタレート)及び安定剤(熱安定剤)をそれぞれ表1及び表2に記載の通りの組成となるように配合し、ディゾルバーミキサーにて均一に混合して成形用のペースト状プラスチゾルを調製した。
【0058】
また、表面層(A6)及び反射層(B10)成形用に、ポリカーボネートジオールとイソシアネートとの重合体であるポリウレタン系樹脂(レザミン NE−8875、大日精化工業(株)社製)に溶剤として酢酸エチルを加え、その後、発泡剤及び顔料をそれぞれ表1及び表2に記載の通りの組成となるように配合し、ディゾルバーミキサーにて均一に混合して成形用の樹脂組成物を調製した。
【0059】
さらに、表面層(A7)成形用に、アクリル系樹脂(アクリナールXC#9000、東栄化成社製)に顔料を表2に記載の通りの組成となるように配合し、ディゾルバーミキサーにて均一に混合して成形用の樹脂組成物を調製した。
【0060】
また、表面層(A8)及び反射層(B11)成形用に、熱可塑性エラストマー(ミラストマー N8030、三井化学(株)社製)に発泡剤、安定剤(酸化防止剤)及び顔料をそれぞれ表1及び表2に記載の通りの組成となるようにドライブレンドして成形用の樹脂組成物を調製した。
【0061】
また、表面層(A9)及び反射層(B12)成形用に、オレフィン系樹脂(ウルトゼックス 2022L、プライムポリマー社製)に発泡剤、安定剤(酸化防止剤)及び顔料をそれぞれ表1及び表2に記載の通りの組成となるように配合しドライブレンドして成形用の樹脂組成物を調製した。
【0062】
(II)単層シートの作製
表面層及び反射層の日射特性を評価するために、以下に示すようにして表面層(A1〜A9)及び反射層(B1〜B12)の単層シートを作製した。
【0063】
すなわち、反射層(B1〜B9)及び表面層(A1〜A5)成形用のペースト状プラスチゾルを、それぞれ表1及び表2に記載の通りの厚みとなるように、ナイフコーティング法により離型紙上にコーティングし、140℃で2分間加熱し、次いで195℃で3分間加熱した。その後、冷却して離型紙を剥離し、反射層(B1〜B9)及び表面層(A1〜A5)の単層シートをそれぞれ作製した。
【0064】
また、表面層(A6、A7)及び反射層(B10)成形用の樹脂組成物を、それぞれ表1及び表2に記載の通りの厚みとなるように、ナイフコーティング法により離型紙上にコーティングし、80℃の熱風で乾燥した。その後、冷却して離型紙を剥離し、表面層(A6、A7)及び反射層(B10)の単層シートをそれぞれ作製した。
【0065】
さらに、表面層(A8、A9)及び反射層(B11、B12)成形用の樹脂組成物を、Tダイ押出機にてそれぞれ表1及び表2に記載の通りの厚みとなるように押出し、表面層(A8、A9)及び反射層(B11、B12)の単層シートをそれぞれ作製した。
【0066】
なお、得られた反射層(B1〜B12)の単層シートの厚み及び発泡倍率を表1にそれぞれ示す。また、得られた表面層(A1〜A9)の単層シートの色相及び厚みを表2にそれぞれ示す。
【0067】
(III)日射特性の評価
以下の方法によって、反射層(B1〜B12)及び表面層(A1〜A9)の単層シートの日射特性(日射吸収率、日射透過率、日射反射率)を評価した。すなわち、先ず、反射層(B1〜B12)及び表面層(A1〜A9)の単層シートを試料とし、自記分光光度計U−4000(日立製作所社製)を用いて、アルミナ白色基板を反射率100%とし、各波長での反射率(分光反射率)を測定した。そして、JIS A5759付表3を用いて、分光反射率に各波長での重価係数を乗じた値の和を計算し、日射反射率を導き出した(分光日射反射率試験法)。
【0068】
次に、前記単層シートを試料とし、自記分光光度計U−4000(日立製作所社製)を用いて、試料を入れない状態での透過率を100%とし、各波長での透過率(分光透過率)を測定した。そして、JIS A5759付表3を用いて、分光透過率に各波長での重価係数を乗じた値の和を計算し、日射透過率を導き出した。
【0069】
次いで、得られた日射反射率及び日射透過率の値から、下記数式:
(日射吸収率)=100%−(日射反射率)−(日射透過率)
を用いて計算することにより、日射吸収率を導き出した。
【0070】
なお、反射層(B1〜B12)の単層シートについては、780〜1600nmの近赤外線領域における日射反射率を評価した。得られた結果を表1に示す。また、表面層(A1〜A9)の単層シートについては、380〜780nmの可視光線領域における日射吸収率、並びに780〜1600nmの近赤外線領域における日射吸収率及び日射透過率を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
(IV)実施例1〜10及び比較例1〜7
表面層(A1〜A5)成形用のペースト状プラスチゾルを、それぞれ表3及び表4に記載の通りの層構成及び厚みとなるように、ナイフコーティング法により離型紙上にコーティングして140℃で2分間加熱した。その後、このような表面層の上に反射層(B1〜B9)成形用のペースト状プラスチゾルを、それぞれ表3及び表4に記載の通りの層構成及び厚みとなるように、ナイフコーティング法によりコーティングして195℃で3分間加熱した。そして、冷却した後に離型紙を剥離して着色シート状物(複層シート)をそれぞれ作製した(実施例1〜6、比較例1〜7)。
【0074】
また、表面層(A6、A7)成形用の樹脂組成物を、表3に記載の通りの層構成及び厚みとなるように、ナイフコーティング法により離型紙上にコーティングして80℃の熱風で乾燥した。その後、このような表面層の上に反射層(B10)成形用の樹脂組成物を、表3に記載の通りの層構成及び厚みとなるように、ナイフコーティング法によりコーティングして80℃の熱風で乾燥した。そして、冷却した後に離型紙を剥離して着色シート状物をそれぞれ作製した(実施例7、実施例8)。
【0075】
さらに、表面層(A8、A9)及び反射層(B11、B12)成形用の樹脂組成物を、層比の変更が可能な2種2層T−ダイ押出機にてそれぞれ表3に記載の通りの層構成及び厚みとなるように共押出し、着色シート状物をそれぞれ作製した(実施例9、実施例10)。
【0076】
なお、実施例1〜10で得られた着色シート状物及び比較例1〜7で得られた着色シート状物の表面色相及び厚みを、表3及び表4にそれぞれ示す。
【0077】
(V)着色シート状物の日射特性、遮熱性及び眩しさの評価
以下の方法によって、実施例1〜10及び比較例1〜7で得られた着色シート状物の遮熱性及び眩しさを評価した。また、着色シート状物の日射特性は、単層シートにおける日射特性の評価方法と同様の方法により評価した。なお、日射特性については、380〜780nmの可視光線領域における日射吸収率、日射透過率及び日射反射率、並びに780〜1600nmの近赤外線領域における日射吸収率、日射透過率及び日射反射率を評価した。得られた結果を表3及び表4にそれぞれ示す。
【0078】
(i)遮熱性の評価(太陽光暴露温度上昇試験)
巾200mm、長さ300mm、厚さ0.3mmの鋼板の上に実施例及び比較例で得られた着色シート状物(複層シート)を鋼板と同じ大きさにして貼付けて試料を得た。また、カーボンブラックを含有するポリ塩化ビニル系樹脂シート(厚み:400μm、組成:表面層(A5)と同一)を巾200mm、長さ300mm、厚さ0.3mmの鋼板の上に鋼板と同じ大きさにして貼付けてリファレンス用の試料を得た。そして、厚み30mmの発泡ポリスチレンで作製した上面が開口した箱(高さ150mm、巾240mm、長さ340mm)の底面に、これらの試料を載置し、箱の上面に厚み1.5mmのソーダガラス板を乗せて、箱内部のシート表面の温度を熱電対で測定しつつ、北関東8月の晴天の日に太陽光に暴露した。その後、シート表面の温度を観測し、温度が一定になった所の温度をそれぞれ測定し、試料の表面温度Tとリファレンス用の試料の表面温度Tとの差(T−T)をΔT(℃)として記録した。なお、ΔT(℃)の値が大きいほど遮熱性が優れていると言える。
【0079】
(ii)眩しさの評価
巾200mm、長さ300mm、厚さ0.3mmの鋼板の上に実施例及び比較例で得られた着色シート状物(複層シート)を鋼板と同じ大きさにして貼付けて試料を得た。そして、晴天下において、試料を斜め45度に傾け、1mの距離から肉眼で観察し、眩しさを感じるか否かを下記の基準で評価した。
A:反射が感じられず、眩しさは無い。
B:ほとんど反射は感じられないが、長時間見ていると疲れる。
C:光が反射してきて、眩しさが感じられる。
D:非常に眩しく感じられ、長時間目を向けていられない。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
表3及び表4に示した結果から明らかなように、本発明の着色シート状物(実施例1〜10)においては、表面層(A)の可視光線領域の光の吸収が大きいために眩しくなく、シートの近赤外線領域の光の反射が大きいため、太陽光に曝されたときのシート表面の温度上昇が少ないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明によれば、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、しかも優れた遮熱性を有する着色シート状物を提供することが可能となる。
【0084】
したがって、本発明の着色シート状物は、車輌用インスツルメントパネル、ドアトリム、グローブボックス等の車輌用内装材や、駅、バス停、飛行場、野球場、サッカー場等のベンチの座面等の家具の表面材料、或いは、テント、オーニング、トラックタープといったシート状物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射を受ける表面層(A)と反射層(B)とを備える合成樹脂シート状物であって、
前記表面層(A)が780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率を有し、780〜1600nmの近赤外線領域において50%以上の日射透過率を有し、且つ380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有する着色層であり、且つ、
前記反射層(B)が780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上の日射反射率を有し、且つ発泡倍率が1.2〜5.0倍の発泡樹脂組成物からなる層である、
ことを特徴とする近赤外線領域光反射性能を有する着色シート状物。
【請求項2】
前記反射層(B)が70〜400μmの厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の着色シート状物。
【請求項3】
前記発泡樹脂組成物が、合成樹脂100重量部に対して、300〜500nmの重量平均粒子径を有する酸化チタン3〜100重量部を含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の着色シート状物。

【公開番号】特開2009−255487(P2009−255487A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120557(P2008−120557)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】