説明

送電装置

【課題】送電装置の小型化を図るとともに複数の電子機器に対して電力伝送を行うことができる送電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
受電コイルに対して電磁誘導により非接触で電力を供給する送電コイルを筐体内に備える送電装置において、該筐体は2つの送電コイル13、23を収納するとともに、各送電コイル13、23の中心軸が略一致する状態と、各送電コイル13、23が重ならない状態に可動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受電装置に対して非接触で電力伝送を行う送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコンなどの電子機器に対して非接触で電力を伝送する方式が普及してきている。送電装置に内蔵される送電コイルから発生する交流磁場により、電子機器に内蔵される受電コイルに電力を伝送する。2台の電子機器に対して同時に電力を伝送するためには、送電コイルも2つ必要になる。
【0003】
特許文献1には、複数の携帯電話を同時に充電することができる送電装置が記載されている。複数の送電コイルを備える充電シートを設け、各送電コイルからそれぞれの携帯電話に対して電力伝送を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−6440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、それぞれの送電コイルは同じ平面上に配置する必要があるため、送電装置を小型化することができなかった。そのため、送電装置を移動させたり、持ち運んだりするときには不便であった。また、1台の電子機器に対してのみ電力伝送を行う際には、利用しない送電コイルのスペースがデッドスペースになってしまう。
【0006】
本発明はこのような問題を考慮してなされたものであり、送電装置の小型化を図るとともに複数の電子機器に対して電力伝送を行うことができる送電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような目的を達成するため、受電コイルに対して電磁誘導により非接触で電力を供給する送電コイルを筐体内に備える送電装置において、該筐体は2つの送電コイルを収納するとともに、各該送電コイルの中心軸が略一致する状態と、各該送電コイルが重ならない状態に可動するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、送電装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施例に係る送電装置の透過斜視図および断面図であり、筐体が開いた状態を示す図
【図2】本発明の第1の実施例に係る送電装置の透過斜視図および断面図であり、筐体が閉じた状態を示す図
【図3】本発明の第1の実施例に係る送電装置のブロック図
【図4】本発明の第1の実施例に係る送電装置に受電装置を載置したときの概略斜視図および断面図であり、筐体が開いた状態を示す図
【図5】本発明の第1の実施例に係る送電装置に受電装置を載置したときの概略斜視図および断面図であり、筐体が閉じた状態を示す図
【図6】本発明の第2の実施例に係る送電装置の概略斜視図および断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施例に係る送電装置であり、筐体が開いた状態を示す図である。図1(a)は送電装置の透過斜視図、図1(b)は図1(a)中のA−A線に沿った位置での送電装置の断面図を示すものである。
【0012】
送電装置10は、第1筐体11、第1の送電コイル13、第1基板15、永久磁石17、第2筐体21、第2の送電コイル23、第2基板25、ホール素子27、フレキシブル基板31を備える。第1筐体11には、第1の送電コイル13、第1基板15、永久磁石17が収納されている。第2筐体21には、第2の送電コイル23、第2基板25、ホール素子27が収納されている。第1基板15と第2基板25間は、フレキシブル基板31によって電気的に接続されている。
【0013】
第1基板15は、第1筐体11に固定されるとともに第1の送電コイル13を支持している。同様に第2基板25は、第2筐体21に固定されるとともに第2の送電コイル23を支持している。また、永久磁石17、ホール素子27はそれぞれ第1基板15、第2基板25上に実装されている。第1の送電コイル13と第2の送電コイル23の巻回方向は同一であり、それぞれ平面で薄型の構造となっている。各筐体11、21の表面は、平面状で互いに平行になるように構成されており、ここに受電装置を載置する。筐体11から筐体21を開いた状態において、第1筐体11の表面と第2筐体21の表面との間には段差部37ができる。また、第2筐体21の表面に凸状の段差部39が設けられている。
【0014】
筐体11から筐体21を開いた状態では、各送電コイルの中心軸間の距離は、各送電コイルの直径より大きくなるようにし、各送電コイルが重ならないように配置する。永久磁石17とホール素子27は、筐体11、21の開閉状態を検出するために設けられたものである。筐体11から筐体21を開いた状態において、永久磁石17とホール素子27はそれぞれ離れた場所に位置するため、ホール素子27は永久磁石17の磁束を検出しない。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施例に係る送電装置であり、筐体が閉じた状態を示す図である。図2(a)は送電装置の透過斜視図、図2(b)は図2(a)中のB−B線に沿った位置での送電装置の断面図を示すものである。
【0016】
筐体11から筐体21を閉じた状態では、各送電コイルの中心軸が一致する。また、永久磁石17と対向する位置にホール素子27がスライドするため、ホール素子27は、永久磁石17の磁束を検出する。このように、第2筐体21は第1筐体11に接続されるとともに、第1筐体11の内外にスライド移動可能に構成されている。これにより、第2の送電コイル23を第1の送電コイルが収納されている第1筐体11内に収納することができる。
【0017】
ここで本発明の第1の実施例に係る送電装置のブロック図を図3に示す。送電装置10は、第1の送電コイル13、第1の駆動回路19、第2の送電コイル23、第2の駆動回路29、検知手段33、制御回路35を備える。検知手段33は、永久磁石17、ホール素子27より構成されている。
【0018】
第1の駆動回路19および第2の駆動回路29には、直流電源から入力電圧Vinが供給される。検知手段33は、永久磁石17とホール素子27により筐体11、21の開閉状態を検知し、検知結果を制御回路35に供給する。各駆動回路19、29の動作は、一例としてマイコンなどで構成される制御回路35により制御される。第1の駆動回路19の出力端には第1の送電コイル13が接続され、第2の駆動回路29の出力端には第2の送電コイル23が接続される。各駆動回路19、29の出力は制御回路35により制御され、それぞれの送電コイルに交流電力を供給する。一例として、各駆動回路19、29はフルブリッジ回路やハーフブリッジ回路などにより構成される。
【0019】
次に、各送電コイル13、23の駆動方法について説明する。各駆動回路19、29は、筐体11、21の開閉状態に応じて異なる動作を行う。
【0020】
まず、筐体11から筐体21を開いた場合について説明する。図4は、本発明の第1の実施例に係る送電装置に受電装置を載置したときの図であり、筐体が開いた状態を示す図である。図4(a)は送電装置および受電装置の概略斜視図、図4(b)は図4(a)中のC−C線に沿った位置での送電装置および受電装置の断面図を示すものである。
【0021】
受電装置50、60には、それぞれ受電コイル51、61が内蔵されている。筐体11から筐体21を開いた状態のときには、第1筐体11の表面に受電装置50を、第2筐体21の表面に受電装置60をそれぞれ載置することができる。筐体11から筐体21を開いた状態においては、ホール素子27が永久磁石17の磁束を検出しないため、制御回路35は各駆動回路19、29を個別に制御する。
【0022】
第1筐体11に受電装置50が載置され、第1の送電コイル13と対向する位置に受電コイル51が配置されたとき、第1の駆動回路19は第1の送電コイル13に交流電力を供給する。そして、第1の送電コイル13から受電コイル51に電力が伝送される。第1筐体11に受電装置50が載置されていないとき、制御回路35は第1の送電コイル13への送電を停止するように第1の駆動回路19を制御する。
【0023】
第2筐体21に受電装置60が載置され、第2の送電コイル23と対向する位置に受電コイル61が配置されたとき、第2の駆動回路29は第2の送電コイル23に交流電力を供給する。そして、第2の送電コイル23から受電コイル61に電力が伝送される。第2筐体21に受電装置60が載置されていないとき、制御回路35は第2の送電コイル23への送電を停止するように第2の駆動回路29を制御する。
【0024】
このように、筐体11から筐体21を開いた状態においては、各受電装置50、60に同時に電力伝送を行うことができる。また、各受電装置50、60の負荷47、57の状態などに応じて、各送電コイル13、23を個別に制御することができる。
【0025】
各筐体11、21に受電装置が載置されているか否かを検出するのはどのような方法を用いてもよい。例えば、制御回路35は、受電装置の有無を確認するためのパルス信号を所定の期間において生成する。このパルス信号により駆動回路を駆動し、送電コイルはパルス信号に応じた周波数で駆動される。このときの送電コイルに流れる電流などに基づいて、送電コイルと対向する位置に受電装置が載置されているか否かを検出する。そして、送電コイルと対向する位置に受電装置が載置されているのを検出した場合に、その送電コイルに交流電力を供給するようにすればよい。
【0026】
次に、筐体11から筐体21を閉じた場合について説明する。図5は、本発明の第1の実施例に係る送電装置に受電装置を載置したときの図であり、筐体が閉じた状態を示す図である。図5(a)は送電装置および受電装置の概略斜視図、図5(b)は図5(a)中のD−D線に沿った位置での送電装置および受電装置の断面図を示すものである。
【0027】
筐体11から筐体21を閉じた状態のときには、第2筐体21は、第1筐体11の内部に収納される。このとき、第1の送電コイル13と第2送電コイル23の中心軸は略一致している。受電装置50は、第1筐体11の表面に載置する。筐体11から筐体21を閉じた状態においては、ホール素子27が永久磁石17の磁束を検出するため、制御回路35は各駆動回路19、29を同期して制御する。
【0028】
第1筐体11に受電装置50が載置され、第1の送電コイル13と対向する位置に受電コイル51が配置されたとき、各駆動回路19、29はそれぞれ各送電コイル13、23に交流電力を供給する。そして、各送電コイル13、23から発生する交流磁場により、受電コイル51に電力が伝送される。第1筐体11に受電装置50が載置されていないとき、制御回路35は各送電コイル13、23への送電を停止するように各駆動回路19、29を制御する。
【0029】
このように、筐体11から筐体21を閉じた状態においては、2つの送電コイル13、23から1つの受電コイル51に対して電力伝送を行うことができる。各送電コイル13、23を用いることで、一方の送電コイルのみを用いるときより、受電コイル51に対してより大きな電力を伝送することができる。効率よく電力伝送を行うために、制御回路35は、第1の送電コイル13および第2の送電コイル23から受電コイル51へ貫く交流磁束の向きが常に同方向となるように各駆動回路19、29を制御することが好ましい。また、1台の受電装置に対してのみ電力伝送を行う際には、筐体11から筐体21を閉じた状態にして行うため、送電装置10をコンパクトにすることができ、広いスペースを必要とすることがない。また、筐体11から筐体21を閉じた状態にすることで、送電装置10を持ち運んだり、移動したりするときには利便性がよい。
【0030】
また、第2筐体21は、第1筐体11の内部から引き出される構造になっている。そのため、筐体11から筐体21を開いた状態において、第1筐体11の表面と第2筐体21の表面との間には段差部37ができる。段差部37は、第1筐体11の表面より第2筐体21の表面が低くなるように構成されている。この段差部37と受電装置60の側面とを合わせることにより、第2の送電コイル23と受電コイル61の位置合わせを行うことができる。また、第1筐体11の表面との間でなくても、第2筐体21の表面に凸状の段差部39を設けてもよい。また、2つの凸状の段差部を非平行に設けることで、受電装置60を所定の位置に容易に載置することができる。このような位置合わせのための凸状の段差部は、第1筐体11の表面に設けてもよい。
【0031】
なお、筐体11、21の開閉状態を検知するための検知手段33として永久磁石17とホール素子27を用いたが、各送電コイル13、23の中心軸が略一致する状態と、各送電コイル13、23が重ならない状態とを判別できればどのような方法を用いてもよい。例えば、メカスイッチやMRセンサ、フォトインタラプタなどを利用してもよい。また、筐体11、21は、互いにスライド可能に連結するよう構成したが、各筐体11、21の構成はこのような例に限定するものではない。例えば、各筐体間をヒンジで接続して、筐体を折り畳み可能に連結するような構成にしてもよい。筐体を折り畳んで重ね合わせたときには、各送電コイルの中心軸が略一致するように各送電コイルを配置し、各送電コイルを同期して制御する。各筐体を折り畳まないときには、各送電コイルが重ならないように各送電コイルを配置し、各送電コイルを個別に制御する。このように、筐体は、各筐体11、21内に配置された各送電コイルの中心軸が略一致する状態と、各該送電コイルが重ならない状態に可動するように構成すればよい。
【実施例2】
【0032】
図6は、本発明の第2の実施例に係る送電装置である。図6(a)は送電装置および受電装置の概略斜視図、図6(b)は図6(a)中のE−E線に沿った位置での筐体が開いた状態の送電装置および受電装置の断面図、図6(c)は図6(a)中のE−E線に沿った位置での筐体が閉じた状態の送電装置および受電装置の断面図を示すものである。なお、第1の実施例と同じ機能を有する部位には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0033】
第2の実施例に係る送電装置は、第1の実施例に係る送電装置に、一対の筐体11、21が閉じる方向に付勢力を発生させる弾性体41をさらに設けたものである。弾性体41は、その一端が第1筐体11に、他端が第2筐体21に接続されている。これにより、図中のX方向、すなわち筐体11、21が閉じる方向に付勢力が生じるように構成されている。弾性体41は、一例としてバネやゴムなどにより構成される。また、第1筐体11の表面と第2筐体21の表面との間には、段差部37が設けられている。段差部37は、第1筐体11の表面より第2筐体21の表面が低くなるように構成されている。第2筐体21の表面には、凸状の段差部39を設けられている。段差部37、39は、それぞれ略平行に設けられている。
【0034】
筐体11から筐体21を開いて第2筐体21の表面に受電装置60を載置したとき、図6(a)および(b)に図示したように、筐体11から筐体21を閉じる方向に付勢力が生じる。弾性体41によって生じるこの付勢力によって、段差部37、39の間に受電装置60を挟持することができる。これにより、第2筐体21の表面に受電装置60を載置した状態で、受電装置60を使用したり、送電装置10を移動させたりしても、受電装置60の位置がずれてしまうことがなくなる。すなわち、第2の送電コイル23に対する受電コイル61の位置を固定して電力伝送することが可能となる。電力伝送効率を向上させるため、各段差部37、39の間に受電装置60を固定したときに、第2の送電コイル23と受電コイル61の中心軸が略一致するよう各コイルを配置することが好ましい。第2筐体21の表面に受電装置60が載置されないときは、図6(c)に図示したように、弾性体41によって生じる付勢力により筐体11から筐体21を閉じ、送電装置10をコンパクトにすることができる。筐体11から筐体21を閉じたときには、各送電コイル13、23の中心軸が略一致するとともに、各送電コイル13、23を同時に駆動することで、より大きな電力を伝送することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 送電装置
11 第1筐体
13 第1の送電コイル
15 第1基板
17 永久磁石
19 第1の駆動回路
21 第2筐体
23 第2の送電コイル
25 第2基板
27 ホール素子
29 第2の駆動回路
31 フレキシブル基板
33 検知手段
35 制御回路
37、39 段差部
41 弾性体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイルに対して電磁誘導により非接触で電力を供給する送電コイルを筐体内に備える送電装置において、
該筐体は2つの送電コイルを収納するとともに、各該送電コイルの中心軸が略一致する状態と、各該送電コイルが重ならない状態に可動するように構成されていることを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記筐体の可動状態を検知する検知手段と、該検知手段の検出結果に基づいて各前記送電コイルを制御する制御回路を備え、
該制御手段は、各該送電コイルの中心軸が略一致する状態のときに各前記送電コイルを同時に駆動し、各該送電コイルが重ならない状態のときに各前記送電コイルを個別に駆動する請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記筐体が互いにスライド可能に連結された一対の筐体から構成され、前記筐体が閉じた状態のときに各前記送電コイルの中心軸が略一致し、前記筐体が開いた状態のときに各前記送電コイルが重ならないようにスライド移動する請求項1または2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記筐体が開いた状態のときに、前記一対の筐体間に段差部が設けられている請求項3に記載の送電装置。
【請求項5】
前記筐体が閉じる方向に付勢力を発生させる弾性体をさらに備え、前記段差部は一方の筐体の表面より他方の筐体の表面が低くなるように構成され、該他方の筐体は表面に前記段差部に対して略平行に配置された凸部を備える請求項4に記載の送電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213278(P2012−213278A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77664(P2011−77664)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)