説明

透光性電磁波シールド膜の製造方法および透光性電磁波シールド膜

【課題】 高い電磁波シールド性に加えて、光散乱が小さく高い光透過率を有する電磁波シールド膜の製造方法において、安価で大量に製造できる透光性電磁波シールド膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 透明プラスチック基材上に接着剤層を有し、その上にメッシュ状の金属層を形成しているものであって、該金属メッシュ細線の断面形状が半円型であることを特徴とする。当該シールド膜は電磁波シールド性と光透過性を必要とするディスプレーパネル用フィルムに好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などのディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板などから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、光透過性を有する電磁波シールド膜およびその製造方法、並びに、プラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜およびこれを有するプラズマディスプレイ用光学フィルター、及びプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro−Magnetic Interference:EMI)が急増している。上記EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、これらの装置のオペレーターにも健康障害を与えることが指摘されている。このため、電子電気機器では、電磁波放出の強さを規格または規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
上記EMIの対策のためには電磁波をシールドする必要があるが、それには金属の電磁波を貫通させない性質を利用すればよいことは自明である。例えば、筐体を金属体または高導電体にする方法や、回路基板と回路基板との間に金属板を挿入する方法、ケーブルを金属箔で覆う方法などが採用されている。しかし、CRT、PDPなどではオペレーターが画面に表示される文字等を認識する必要があるため、ディスプレイにおける透明性が要求される。このため、前記の方法では、いずれもディスプレイ前面が不透明になることが多く、電磁波のシールド法としては不適切なものであった。
【0004】
特に、PDPは、CRT等と比較すると多量の電磁波を発生するため、より強い電磁波シールド能が求められている。電磁波シールド能は、簡便には表面抵抗値で表すことができる。例えば、CRT用の透光性電磁波シールド材料では、表面抵抗値は凡そ300Ω/sq以下であることが要求されるのに対し、PDP用の透光性電磁波シールド材料では、2.5Ω/sq以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、1.5Ω/sq以下とする必要性が高く、より望ましくは0.1Ω/sq以下という極めて高い導電性が要求されている。
また、透明性に関する要求レベルは、CRT用として凡そ70%以上、PDP用として80%以上が要求されており、さらにより高い透明性が望まれている。
【0005】
上記の問題を解決するために、以下に示されるように、開口部を有する金属メッシュを利用して電磁波シールド性と光透過性とを両立させる種々の材料・方法がこれまで提案されており、その代表的なものとして、フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュがある。
【0006】
<フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュ>
係る方法としては、フォトリソグラフィー法を利用して銅箔をエッチング加工し、透明基体上に銅メッシュを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。この方法をより詳しく述べると、まず、透明プラスチック基材に接着剤層を積層し、この上に金属箔を貼りあわせる。この際、金属箔と接着剤層との密着性を確保するために、金属箔はある程度粗く平滑でない、粗面化されたものを用いている。次に、フォトレジストを利用したケミカルエッチングプロセスによって、金属箔を所望のパターンにエッチング加工する。この様にして、透明プラスチックフィルム上に、細線でできた開口部面積の大きな金属のメッシュを形成することができる。但しこの際、金属箔を除去した部分には、接着剤層が剥き出しになっている。この接着剤層は粗面化された金属箔面の粗面形状が転写されている為、この状態のフィルムは、光を散乱させる性質を有している。特許文献1、2では、更に、接着層と屈折率の近い樹脂によって金属メッシュを接着層とを被覆する方法を開示しており、これにより上記光散乱を低減できる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−152385号公報
【特許文献2】特許第3570420号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のフォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュは、微細加工が可能であるため、高開口率(高透過率)のメッシュを作成することができ、強力な電磁波放出も遮蔽できるという利点を有する。その一方で、次のような問題を抱えていた。
金属箔と透明プラスチック基材間を接着していた接着層がエッチング後も粗面形状をしており、光散乱を引き起こしていた。このままでディスプレイに装着すると、ディスプレイの画像がすりガラスを介した画像のようにぼやけたものとなってしまうため、電磁波シールド性を有するディスプレーパネル用フィルムとしては利用できない問題があった。前記特許文献では、この問題を樹脂で被覆して粗面形状を平滑にすることによって解決しているものの、樹脂で被覆する際に、気泡が金属メッシュ面に一部生成する問題があり、この気泡を除くために、透明基板に加圧圧着させる工程が必要となる問題があった。この光散乱解消のための工程が、塗布及び長時間の加圧である必要があり、生産性の低下、大幅なコストアップ要因となり、改善が望まれていた。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高い電磁波シールド性を有し、光散乱が小さく高い光透過率を有する、電磁波シールド膜の製造方法であって、安価で大量に製造できる透過性電磁波シールド膜の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、上記製造方法により得られる透光性電磁波シールド膜を提供することにある。さらに本発明の別の目的は、上記透光性電磁波シールド膜を含んでなるプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜およびプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、光散乱が小さく、かつ、高い電磁波シールド性と高い透明性とを同時に得る観点から、鋭意検討した結果、光散乱の問題の解決手段は、メッシュを形成する金属細線の形状にも顕著に影響されることを認め、この現象の検討を行った結果から、上記目的は、以下の透光性電磁波シールド膜の製造方法および透光性電磁波シールド膜により効果的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、以下の製造方法により達成される。
【0011】
(1)透明プラスチック基材上に接着剤層と、該接着剤層上に断面形状が半円型の金属細線のメッシュからなる金属層とを有し、かつ電磁波シールド性と光透過性を有することを特徴とする、ディスプレーパネル用フィルム。
(2)透明プラスチック基材上に接着剤層と、該接着剤層上にライン幅が18μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚みが4μm以上18μm以下で断面形状が半円型の金属細線のメッシュからなる金属層を有し、かつ電磁波シールド性と光透過性を有することを特徴とする、上記(1)に記載のディスプレーパネル用フィルム。
(3)上記金属が少なくとも表面が黒化処理された銅であり、かつ電磁波シールド性と透明性を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のディスプレイパネル用フィルム。
(4)透明プラスチック基材の金属メッシュと反対側の面に接着剤層を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
(5)透明プラスチック基材の金属メッシュの上に更に接着剤層を有することを特徴とする上記(1)〜(43)のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
(6)剥離可能な保護フィルムを有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
(7)赤外線遮蔽性、ハードコート性、反射防止性、妨眩性、静電気防止性、防汚性、紫外線カット性、ガスバリア性及び表示パネル破損防止性から選ばれるいずれか1つ以上のる機能を有している機能性透明層を有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
【0012】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のディスプレイパネル用フィルムを用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルター。
(9)上記(8)に記載のプラズマディスプレイパネル用光学フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
(10)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のディスプレイパネル用フィルムを用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
(11)透明プラスチック基材に接着層を介して金属箔を積層する工程と、該金属箔にケミカルエッチングプロセスによってライン幅が18μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚みが18μm以下である金属メッシュを形成する工程と、該金属メッシュ細線を部分的に溶解させることにより細線の断面形状を半円型とする工程とを含むことによって、電磁波シールド性と光透過性を有するディスプレーパネル用フィルムを製造することを特徴とするディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
(12)該金属メッシュ細線を部分的に溶解させる工程が酸化剤水溶液で該金属細線を処理する工程であることを特徴とする上記(11)に記載のディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
(13) 前記酸化剤水溶液が該水溶液中における電位が標準水素電極電位よりも卑である酸化剤水溶液であることを特徴とする上記(12)に記載のディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
(14)前記酸化剤水溶液が塩化第2鉄塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、次亜塩素酸塩及び過酸化水素から選ばれる少なくとも一つの酸化剤の水溶液であることを特徴とする上記(11)又は(12)に記載のディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
プラスチック基板上に接着剤層を介して断面が半円状の金属細線のメッシュ層を積層した本発明のディスプレーパネル用フィルムは、表面散乱によるヘーズが少なく、従って高透光性と高導電性を併せ有し、かつ安価に大量製造することができる。そのフィルムを用いた光学フィルム、透光性電磁波シールド膜、ディスプレーパネルも同様の効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の電磁波シールド性と光透過性を有するディスプレーパネル用フィルムの製造法およびディスプレーパネル用フィルムについて詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味として使用される。
【0015】
[透明プラスチック基材]
本発明の製造方法に用いられる透明プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
この透明プラスチック基材の厚みは、薄いと取扱性が悪く、厚いと可視光の透過率が低下するため5〜200μmが好ましい。さらに好ましくは、10〜130μmが、より好ましくは、40〜80μmである。
【0016】
ディスプレイ用の電磁波シールド材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルムおよびプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本発明におけるプラスチックフィルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0017】
本発明フィルムを透明基板に貼り付け、光学フィルターとして使用する際、ガラス板を用いることができ、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールド膜の用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、かつ端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0018】
[導電性金属部]
次に、本発明における金属箔部分、及び金属細線部分について説明する。
金属箔材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、またはこれらを組み合わせた合金を挙げることができる。導電性、価格等の観点から金属は、銅、アルミニウムまたはニッケルであることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属粒子として常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
【0019】
上記金属部において、コントラストを高くし、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色されるのを防止する観点からは、金属部は銅であることが好ましく、少なくともその表面が黒化処理されたものであることがさらに好ましい。黒化処理は、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、リン酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中で、95℃で2分間処理することにより黒化処理を行うことができる。
【0020】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、本発明の透光性電磁波シールド膜(導電性金属部)の表面抵抗値は、10Ω/sq以下であることが好ましく、2.5Ω/sq以下であることがより好ましく、1.5Ω/sq以下であることがさらに好ましく、0.1Ω/sq以下であることが最も好ましい。
【0021】
本発明における金属部は、透光性電磁波シールド材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、これらの幾何学図形からなるメッシュ状であることがさらに好ましい。
本発明においては正方形からなる格子状のメッシュ形態であることが最も好ましい。
【0022】
透光性電磁波シールド材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下であることが好ましく、線間隔は100μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、その線幅が20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は15μm未満であることがさらに好ましい。
【0023】
金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上13μm以下であることがより好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましく、3〜7μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。
【0024】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。また、「開口率」とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。尚、本発明における金属銀部の開口率について特に上限の限定はないが、表面抵抗値および線幅値との関係から、上記開口率としては、98%以下であることが好ましい。
【0025】
本発明では、接着剤層上に設けられた導電性金属層の金属細線のメッシュの断面形状が半円型であることが特長である。通常の金属メッシュ作製方法、例えばフォトリソグラフィックな手段のみでは、このような断面は得られない。フォトリソグラフィーによれば、典型的には、支持体を下に金属部(細線部)を上にした場合の金属細線部の断面形状は、上底が下底よりも短い梯形(台形)である。本発明ではフォトリソグラフィックな手段で形成された金属メッシュを金属溶解性(金属腐食性)水溶液で処理を行う。この処理では、金属の微細構造部、すなわち最も多くみられる梯形断面の場合には、その上底と斜辺のなす頂角部が、溶解速度が速く、したがって頂角部が丸みを帯びてきて半円状の断面を呈するようになる。
金属メッシュ細線を部分的に溶解させる酸化剤水溶液としてはメッシュを構成する金属細線に対して腐食性を有する酸化剤水溶液であればいずれでも適用できる。
【0026】
好ましい酸化剤水溶液としては水溶液に不活性電極を浸漬して標準単極電極(標準刊行電極や標準水素電極)と組み合わせて測定した酸化電位が標準水素電極電位よりも卑である酸化剤水溶液である水溶液である。
【0027】
このような酸化剤水溶液に用いられる酸化剤としては、第2鉄塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、次亜塩素酸塩及び過酸化水素が挙げられる。特に適用されるメッシュの金属細線が銅、銀などの貴のイオン化傾向の金属であることから、塩化第2鉄塩,硝酸第2鉄塩,硫酸第2鉄塩などの水溶性第2鉄塩、過マンガン酸塩、過酸化水素が好ましく、中でも塩化第2鉄塩が好ましい。上記核化合物の塩の形は水溶性であれば如何なる形でもよいが、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましい。
また、EDTAなどの金属に配位する配位子を共存させることは、腐食性を制御することができ好ましい。
酸化剤水溶液のpHは、水溶性と溶解性(腐食性)が維持される範囲で選択されるが、賛成であることがこのましく、pH4以下,とりわけpH3以下であることが好ましい。
酸化剤水溶液中の酸化剤の濃度は、0.0001〜1モル/リットル、好ましくは 0.001〜0.1モル/リットルである。
【0028】
[接着剤]
本発明で用いられる、透明プラスチック基材と金属箔を貼りあわせる接着剤について説明する。
【0029】
該接着剤の主成分となるポリマーとしては、以下に示す熱可塑性樹脂が代表的なものとしてあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィドが使用可能である。
【0030】
また、アクリルポリマーが使用でき、それを構成するモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、などの(メタ)アクリル酸エステルの他に、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチルアクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピドリドンなどの親水性官能基含有モノマーが挙げられる。これらのモノマーを共重合して得られるアクリル酸エステルポリマーの重量平均分子量は、開始剤の濃度やメルカプト化合物などの連鎖移動剤の濃度の調整により可能で、500以上のものが選択される。これらのポリマーを硬化剤を使って硬化させる場合、分子の末端または側鎖に活性水素を有する官能基を導入することにより達成される。1分子中に少なくとも2個以上のイソシアン酸エステル基を有するイソシアネート化合物が効果的で、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリス-(トリレンジイソシアネート)などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートを使用することができる。本発明で使用する樹脂には必要に応じて粘着性付与剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤や膨潤剤などの添加剤を配合してもよい。
【0031】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレートなども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。本発明で使用する樹脂組成物には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
【0032】
接着剤層となるポリマーの軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好適で、150℃以下がより好ましい。電磁波シールド性接着フィルムの用途から、使用される環境が通常60℃以下であるので接着剤の軟化温度は、60〜120℃がさらに好ましい。一方、ポリマーの重量平均分子量は、500以上100万以下のものを使用するのが好ましい。分子量が300未満では接着剤組成物の凝集力が低すぎるため被着体への密着性が低下し、100万を超えると有機溶剤等での剥離や膨潤が困難となる。本発明で使用する接着剤層の屈折率は、1.45〜1.70の範囲のものを使用するのが好ましい。この屈折率の選択は本発明で使用するプラスチックフィルムと接着剤層の屈折率が異なると、可視光透過率が低下するためであり、さらに、屈折率が好ましくは1.45〜1.60であると可視光透過率の低下が少なく良好であるためである。上述したポリマーの屈折率はこの範囲内にある。接着剤層の塗布厚みに特に制約はないが、0.05μm〜50μmが好ましく、0.1μm〜30μmがより好ましく、0.5μm〜10μmが更により好ましい。
【0033】
[電磁波シールド膜以外の機能性膜]
本発明では、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層にさらに電磁波シールド機能を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波シールド材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層;ノングレアー層またはアンチグレアー層(共にぎらつき防止機能を有する);近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層;特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層;指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層;傷のつき難いハードコート層;衝撃吸収機能を有する層;ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、本発明の電磁波シールド膜を構成する乳剤層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
これらの複合機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイパネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板などの透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルター(または単にフィルター)と呼ぶ。
【0034】
反射防止機能を付与した反射防止層を形成する方法としては、外光の反射を抑えてコントラストの低下を抑えるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、またはイオンビームアシスト法等で単層或いは多層に積層させる方法やアクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層或いは多層に機能性層上に積層させる方法等がある。
【0035】
また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。さらに、必要であればノングレアー層またはアンチグレアー層を設けることもできる。ノングレアー層やアンチグレアー層を形成する方法としては、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。この際、インキの硬化は熱硬化或いは光硬化等を用いることができる。また、ノングレア処理またはアンチグレア処理をしたフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。さらに必要で有ればハードコート層を設けることもできる。
【0036】
近赤外線吸収層は、具体的には、金属錯体化合物等の近赤外線吸収色素を含有する層、または、銀スパッタ層等である。ここで銀スパッタ層は、誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで、近赤外線、遠赤外線から電磁波まで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層は誘電体として酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等を含む。上記金属層に含まれる金属としては銀或いは銀−パラジウム合金が一般的である。上記銀スパッタ層は、通常、誘電体層よりはじまり3層、5層、7層或いは11層程度積層した構成を有する。
【0037】
PDPにおいては、青色を発光する蛍光体は青色以外に僅かであるが赤色を発光する特性を有している為、青色に表示されるべき部分が紫がかった色で表示されるという問題がある。上記特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層は、この対策として発色光の補正を行う層であり、595nm付近の光を吸収する色素を含有する。
【0038】
本発明の製造方法で得られる透光性電磁波シールド膜は、良好な電磁波シールド性および透光性を有するため、透光性電磁波シールド材料として用いることができる。さらに、回路配線などの各種の導電性配線材料として用いることもできる。特に本発明の透光性電磁波シールド膜は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)などのディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板など、特にプラズマディスプレイパネルで用いられる透光性電磁波シールド膜として好適に用いることができる。
【0039】
上述の通り、本発明の透光性電磁波シールドは、プラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜として好適に用いることができる。このため、本発明の透光性電磁波シールド膜を含んでなるプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜を用いて形成されたプラズマディスプレイパネルは、高電磁波シールド能、高コントラストおよび高明度であり、且つ低コストで作製することができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0041】
[実施例1]
透明プラスチック基材として厚さ50μmの透明PETフィルムを用い、その上に接着層となるエポキシ系接着シート(ニカフレックスSAF;ニッカン工業(株)製)を介して厚さ12μmの電解銅箔の粗化面が接着側になるようにして、ラミネートして貼り合せた。得られた銅箔付きPETフィルムにフォトリソ工程(レジストフィルム貼付け−露光−現像−ケミカルエッチング−レジストフィルム剥離)を経て、ライン幅15μm、ライン間隔300μmの銅の格子状メッシュを得た。得られたメッシュ細線断面形状は、上底が14μmの台形状であった。
【0042】
これを更に、0.01モル/リットル塩化鉄(III)を含有する水溶液にゆっくりした攪拌のもとで1分浸漬処理した。得られたメッシュの細線部断面形状は、もとの梯形断面の上縁稜部の溶解進行が速いために底面の径が14μmで高さが 11μmの半円形であった。上記塩化鉄(III)を含有する水溶液は、塩化第2鉄を用いて調整した。
次いで、上記銅メッシュ上にアクリル系粘着剤層を設け、ガラス板に貼り合せた。これを0.4MPa、20分(室温)の加圧処理をオートクレーブにて行った。
【0043】
(比較例1)
塩化鉄溶液での処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のサンプルを得た。
(加圧処理は、実施例1と同様に、0.4MPa、20分(室温)の加圧処理をオートクレーブにて行った。)
(比較例2)
加圧処理条件を、0.4MPa、60℃、120分の長時間のオートクレーブ処理とした以外は、比較例1と同様にして、比較例2のサンプルを作成した。
【0044】
<評価法>
(開口率)メッシュの線幅を測定し、(ピッチー線幅)×(ピッチー線幅)/(ピッチ×ピッチ)から、開口率を求めた。
(表面抵抗)三菱化学製低抵抗率計ロレスタにて、表面抵抗率を測定した。
(ヘイズ)日本電色製ヘイズメーターにて、PET基板の銅メッシュサンプルのヘイズを測定した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から判るように、実施例1に示した本発明の方法では、メッシュの光散乱(ヘイズ)低減を容易に行うことが可能である。このような低ヘイズの銅メッシュを得るには、従来の方法では、比較例1〜3の加熱圧着時間―ヘイズ関係に示されるように長時間に渡る加熱圧着工程が必須であった。
【0047】
さらに、実施例1において、得られた金属メッシュを 0.01モル/リットル塩化鉄(III)を含有する水溶液に代えて0.01モル/リットル次亜塩素酸水溶液を使用し、同様にゆっくりした攪拌のもとで1分浸漬処理したところ同様の半円形状の断面のメッシュが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチック基材上に接着剤層と、該接着剤層上に断面形状が半円型の金属細線のメッシュからなる金属層とを有し、かつ電磁波シールド性と光透過性を有することを特徴とする、ディスプレーパネル用フィルム。
【請求項2】
透明プラスチック基材上に接着剤層と、該接着剤層上にライン幅が18μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚みが4μm以上18μm以下で断面形状が半円型の金属細線のメッシュからなる金属層を有し、かつ電磁波シールド性と光透過性を有することを特徴とする、請求項1に記載のディスプレーパネル用フィルム。
【請求項3】
上記金属が少なくとも表面が黒化処理された銅であり、かつ電磁波シールド性と透明性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイパネル用フィルム
【請求項4】
透明プラスチック基材の金属メッシュと反対側の面に接着剤層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
【請求項5】
透明プラスチック基材の金属メッシュの上に更に接着剤層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
【請求項6】
剥離可能な保護フィルムを有することを特徴とする請求1〜5のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
【請求項7】
赤外線遮蔽性、ハードコート性、反射防止性、妨眩性、静電気防止性、防汚性、紫外線カット性、ガスバリア性及び表示パネル破損防止性から選ばれるいずれか1つ以上の機能を有している機能性透明層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のディスプレーパネル用フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイパネル用フィルムを用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルター。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマディスプレイパネル用光学フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイパネル用フィルムを用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
透明プラスチック基材に接着層を介して金属箔を積層する工程と、該金属箔にケミカルエッチングプロセスによってライン幅が18μm以下、ライン間隔が100μm以上、ライン厚みが18μm以下である金属メッシュを形成する工程と、該金属メッシュ細線を部分的に溶解させることにより細線の断面形状を半円型とする工程とを含むことによって、電磁波シールド性と光透過性を有するディスプレーパネル用フィルムを製造することを特徴とするディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
【請求項12】
該金属メッシュ細線を部分的に溶解させる工程が酸化剤水溶液で該金属細線を処理する工程であることを特徴とする請求項11に記載のディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記酸化剤水溶液が該水溶液中における電位が標準水素電極電位よりも卑である酸化剤水溶液であることを特徴とする請求項12に記載のディスプレーパネル用フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記酸化剤水溶液が塩化第2鉄塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、次亜塩素酸塩及び過酸化水素から選ばれる少なくとも一つの酸化剤の水溶液であることを特徴とする請求項11又は12に記載のディスプレーパネル用フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−339526(P2006−339526A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164468(P2005−164468)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】